特許第6042598号(P6042598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6042598-空気入りラジアルタイヤ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042598
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】空気入りラジアルタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/00 20060101AFI20161206BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20161206BHJP
   B60C 17/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B60C15/00 B
   B60C9/00 G
   B60C17/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-42303(P2011-42303)
(22)【出願日】2011年2月28日
(65)【公開番号】特開2012-179943(P2012-179943A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2014年2月5日
【審判番号】不服2015-18293(P2015-18293/J1)
【審判請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 雅文
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 尾崎 和寛
【審判官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−69774(JP,A)
【文献】 特開2009−120981(JP,A)
【文献】 特開2009−255881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C15/
B60C9/
B60C17/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のビードコア間にトロイド状に延在する1枚以上のカーカスプライからなるカーカスを骨格とし、該カーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルトを備える空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記カーカスプライコードが、セルロース繊維からなるフィラメントとナイロンからなるフィラメントとを撚り合わせてなるハイブリッドコードであり、
前記ハイブリッドコードの総dtex数に対するナイロンのdtex数の比率が20〜50%であり、グリーンタイヤ内での前記ハイブリッドコードの、170℃における熱収縮率が1.0%以上4.0%以下であって、175℃における熱収縮率と165℃における熱収縮率との差が1.2%以下であり、
前記カーカスプライのうち少なくとも1枚が、前記ビードコア間に延在する本体部と、該ビードコアの周りでタイヤ幅方向内側から外側に向かい折り返された折返し部とからなり、該折返し部端が前記ベルトのタイヤ半径方向内側に挿入されてなり、かつ、該折返し部が該ベルトのタイヤ半径方向内側に挿入されている部分のタイヤ幅方向長さである、該折返し部端の挿入長さが、10〜23mmの範囲であることを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
グリーンタイヤ内での前記ハイブリッドコードの170℃における熱収縮率を、タイヤ周方向に等間隔に10点測定したときの、最大値と最小値との差が0.55%以内である請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
製品タイヤから抜き出した前記ハイブリッドコードの、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)が0.10cN/dtex以上であり、かつ、25℃における3%歪時の引張弾性率が12cN/dtex以上である請求項1または2記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
ランフラットタイヤである請求項1〜3のうちいずれか一項記載の空気入りラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りラジアルタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、カーカスの補強コードおよび配置条件の改良に係る空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
高性能タイヤやランフラットタイヤのカーカスコードとしては、従来より一般に、レーヨンに代表されるセルロース繊維が使用されている。しかし、レーヨンについては、製造過程における環境汚染が問題となっており、製造するメーカーが減少して、これに伴い価格が上昇している。そのため、環境問題への対応やスペック最適化の要請に基づき、カーカスプライコードとして、レーヨンに代えて、レーヨンを含むハイブリッドコードを使用することが提案されている。
【0003】
一方で、タイヤ構造に関しては、近年、転がり抵抗の改良の観点から、構造を簡素化する方向で検討が進められており、プライ構造として、1枚のカーカスプライを用い、これをビードコアの周りで折り返して、その折返し端をトレッド部に配置されたベルトの内側に配置する構造(いわゆる、エンベロープ構造)を採用するケースが増えてきている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−030712号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ハイブリッドコードを使用したカーカスプライを、上記1枚のカーカスプライを用いたエンベロープ構造に適用すると、ラジアルフォースバリエーション(RFV)やフラットスポットが悪化してしまう場合があり、問題となっていた。ここで、RFVとは、タイヤ半径方向の力の変動の大きさを示し、タイヤのユニフォミティの指標の一つである。また、フラットスポットとは、タイヤが走行により発熱した後、荷重がかかったままの状態で冷却されることによりタイヤの真円度が崩れ、再度走行し始める時に振動が発生する現象をいう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、レーヨン等のセルロース繊維を用いたハイブリッドコードをカーカスプライに用いて、これをエンベロープ構造に適用した際の、RFVやフラットスポットの悪化を抑制した空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、上記RFVやフラットスポットの悪化が、エンベロープ構造におけるカーカスプライの折り返し端の、ベルト下への挿入量の不足に起因することを見出し、この挿入量およびハイブリッドコードの材質を適切に規定することで上記問題が解消できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の空気入りラジアルタイヤは、左右一対のビードコア間にトロイド状に延在する1枚以上のカーカスプライからなるカーカスを骨格とし、該カーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルトを備える空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記カーカスプライコードが、セルロース繊維からなるフィラメントとナイロンからなるフィラメントとを撚り合わせてなるハイブリッドコードであり、
前記ハイブリッドコードの総dtex数に対するナイロンのdtex数の比率が20〜50%であり、グリーンタイヤ内での前記ハイブリッドコードの、170℃における熱収縮率が1.0%以上4.0%以下であって、175℃における熱収縮率と165℃における熱収縮率との差が1.2%以下であり、
前記カーカスプライのうち少なくとも1枚が、前記ビードコア間に延在する本体部と、該ビードコアの周りでタイヤ幅方向内側から外側に向かい折り返された折返し部とからなり、該折返し部端が前記ベルトのタイヤ半径方向内側に挿入されてなり、かつ、該折返し部が該ベルトのタイヤ半径方向内側に挿入されている部分のタイヤ幅方向長さである、該折返し部端の挿入長さxが、10〜23mmの範囲であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、グリーンタイヤ内での前記ハイブリッドコードの170℃における熱収縮率を、タイヤ周方向に等間隔に10点測定したときの、最大値と最小値との差が0.55%以内であることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明においては、製品タイヤから抜き出した前記ハイブリッドコードの、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)が0.10cN/dtex以上であり、かつ、25℃における3%歪時の引張弾性率が12cN/dtex以上であることが好ましい。本発明のタイヤは、ランフラットタイヤとして好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記構成としたことで、レーヨン等のセルロース繊維を用いたハイブリッドコードをカーカスプライに用いて、これをエンベロープ構造に適用した際の、RFVやフラットスポットの悪化を抑制した空気入りラジアルタイヤを実現することが可能となった。本発明のタイヤにおいてはレーヨンの使用量を削減できるので、本発明のタイヤは、環境性にも優れているといえる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の空気入りラジアルタイヤの一例を示す幅方向片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の空気入りラジアルタイヤの一例としての、ランフラットタイヤを示す幅方向片側断面図を示す。図示する本発明のタイヤは、左右一対のビード部1と、ビード部1から夫々タイヤ半径方向外側に連なる一対のサイドウォール部2と、一対のサイドウォール部2間に跨って延び接地部を形成するトレッド部3とを有し、一対のビード部1間にトロイド状に延在してこれら各部1,2,3を補強する1枚以上のカーカスプライからなるカーカス4と、サイドウォール部2においてカーカス4の内側に配置された断面三日月状のサイド補強ゴム層5と、を備えている。
【0014】
また、図示するタイヤにおいては、ビード部1内に夫々埋設されたリング状のビードコア6のタイヤ半径方向外側に、ビードフィラー7が配置されており、カーカス4のクラウン部のタイヤ半径方向外側には、2枚のベルト層からなるベルト8が配置されている。さらに、ベルト8のタイヤ半径方向外側には、ベルト8の全体を覆うベルト補強層9Aと、このベルト補強層9Aの両端部のみを覆う一対のベルト補強層9Bとが配置されている。
【0015】
図示する例では、カーカス4は、互いに平行に配列された複数のカーカスプライコードをコーティングゴムで被覆してなるカーカスプライの1枚から構成されるが、本発明のタイヤにおいて、カーカス4のプライ数は、これに限られるものではない。図示するように、本発明のタイヤは、カーカス4を構成するカーカスプライのうち少なくとも1枚が、一対のビードコア6間にトロイド状に延在する本体部14Aと、各ビードコア6の周りでタイヤ幅方向内側から外側に向かい折り返された折返し部14Bとからなり、この折返し部14B端がベルト8のタイヤ半径方向内側に挿入されてなる、いわゆるエンベロープ構造を有する。
【0016】
本発明においては、上記折返し部14B端の、ベルト8のタイヤ半径方向内側への挿入長さxが、10〜23mm、好適には10〜20mm、より好適には12〜20mmの範囲内である点が重要である。カーカスが上記エンベロープ構造、特には、図示するような1枚のカーカスプライからなるエンベロープ構造を有する場合に、上記折返し部14B端の挿入長さxを上記範囲に規定したことで、後述する特定材質のハイブリッドコードとの組合せと併せて、本発明の所期の効果を得ることが可能となった。ベルト8の内側への上記折返し部14B端の、挿入長さxが不足すると接地形状が変化することにより、また、挿入長さxが長すぎるとベルトの反りが大きくなることから、いずれにしてもRFVやフラットスポットが悪化してしまう。
【0017】
本発明においては、上記カーカス構造の採用と併せて、カーカスプライコードとして、セルロース繊維からなるフィラメントとナイロンからなるフィラメントとを撚り合わせてなるハイブリッドコードを用いる。高性能タイヤやランフラットタイヤ等におけるカーカスプライコードとして、従来のレーヨンコードに代えて、かかるハイブリッドコードを用いるものとしたことで、レーヨンの使用量を削減して、環境性に優れたタイヤとすることが可能となった。
【0018】
また、レーヨンやリヨセル等のセルロース繊維は、熱収縮応力は高くないが高剛性であり、ナイロンは低剛性であるが熱収縮応力が高いので、これらを組み合わせることで、高い熱収縮応力を有し、かつ、初期の剛性が低いハイブリッドコードが得られる。本発明においては、かかるハイブリッドコードをカーカスプライコードとして用いたことで、特にランフラットタイヤとした場合には、通常走行時の縦バネの上昇を抑えて乗り心地性を良好に保持しつつ、ランフラット走行時のタイヤの撓みを抑制してランフラット走行耐久性を向上させることができるものである。
【0019】
さらに、本発明においては、ハイブリッドコードを構成する2種の有機繊維として、セルロース繊維およびナイロンの組み合わせを用いたことで、ディップコード作製時の接着剤として、従来から一般に使用されているレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)を用いたRFL系接着剤液を使用することができ、1種類の接着剤による処理で接着性を確保できるとのメリットも得られる。ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)などの、ポリエステルまたはアラミドをベースとする有機繊維は、その化学的性質のためにゴムに対する接着性が乏しく、接着を確保するためには、例えば、ブロックドイソシアネートまたはエポキシ樹脂等による前処理が必要とされ、接着剤塗布加工時の工数が多くなってしまう。また、アラミド繊維やポリケトン繊維を使用する場合、セルロース繊維やナイロン繊維に比べ疲労性に劣るので、疲労性を確保するためには、撚り加工で高撚りにしなければならなくなり、撚り加工の工数が増加するだけでなく、ハイブリッドコードにした際の径が太くなりすぎてしまう場合もある。結果として、セルロース繊維およびナイロン以外の他の有機繊維の組合せでは、2種類の接着剤を用いなければ接着性を確保できず、また、2種類の接着剤を用いた場合、ディップ処理の工数が多くなるとともに、2種類の接着剤を混合することで副反応が生ずる可能性があり、いずれにしても、実用上、十分なものではない。
【0020】
本発明においては、上記ハイブリッドコードの総dtex数に対するナイロンのdtex数の比率が20〜50質量%、特には30〜40質量%であって、かつ、グリーンタイヤ内でのハイブリッドコードの170℃における熱収縮率が、1.0%以上4.0%以下、特には2.0%以上3.0%以下であることが好ましい。ハイブリッドコードにおけるナイロンの比率がこの範囲より小さいと、ハイブリッドコードとしての熱収縮応力が小さくなり、この範囲より大きいと引張弾性率が低くなり、いずれも好ましくない。ハイブリッドコードにおけるナイロンの比率をこの範囲とすることで、高弾性であるセルロース繊維が50%以上含まれるものとなるので、タイヤ耐久性の向上に寄与できる。また、ナイロンの比率が20%未満で、コードの熱収縮率が1.0%未満であると、加硫時のコードの収縮が小さすぎて、成型時のビード折り返し部におけるカーカスプライコードのたるみが解消されず、タイヤのラジアルフォースバリエーション(RFV)が大きくなってしまう。一方、コードの熱収縮率が4.0%を超えると、加硫時のプライコードの過剰な熱収縮による締め付けのため、コード近傍のゴムの厚みが不均一となり、RFVが大きくなってしまう。
【0021】
また、本発明においては、グリーンタイヤ内での上記ハイブリッドコードの170℃における熱収縮率を、タイヤ周方向に等間隔に10点測定したときの、最大値と最小値との差が0.55%以内、特には0.5%以内、さらには0.4%以内であることが好ましい。この差は小さいほど好ましく、上記範囲を超えると、RFVの悪化を招くため好ましくない。
【0022】
さらに、本発明においては、グリーンタイヤ内での上記ハイブリッドコードの、175℃における熱収縮率と165℃における熱収縮率との差が、1.2%以下、特には0.8%以下であることが好ましい。これは、タイヤの加硫温度近傍における熱収縮率の変動が小さいほど、ユニフォミティの悪化を抑制できるためである。よって、この差は小さいほど好ましく、上記範囲を超えると、RFVの悪化を招くため、好ましくない。
【0023】
さらにまた、本発明においては、製品タイヤから抜き出したハイブリッドコードの、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)が、0.10cN/dtex以上であることが好ましい。この範囲の熱収縮応力を有するものとすることで、上述したようなランフラットタイヤにおける通常走行時の乗り心地性とランフラット走行耐久性とを、高度に両立させることができる。製品タイヤから抜き出したハイブリッドコードの、177℃における熱収縮応力が0.10cN/dtex未満であると、ランフラット走行耐久性が不十分となる。この熱収縮応力は高いほど良く、例えば、0.12〜0.25cN/dtexである。ここで、タイヤ引抜きコードの177℃における熱収縮応力は、カーカスコードのうちビードコアで挟まれた区間のコードを引抜き、5℃/分の昇温スピードで加熱して、177℃時にコードに発生する応力として得ることができる。
【0024】
また、かかるハイブリッドコードとしては、製品タイヤから抜き出したコードとして、25℃における1%歪時の引張弾性率が45cN/dtex以下、特には18〜35cN/dtexであって、25℃における3%歪時の引張弾性率が12cN/dtex以上、特には15〜30cN/dtexであることが好ましい。低歪時においては縦バネを小さくしたいので、1%歪時の引張弾性率は、タイヤ引抜きコードで45cN/dtex以下が好適である。これは、例えば、レーヨンの同引張弾性率の値以下に相当する。一方、高歪時においては撓みを抑制する効果を得るために、好適には3%歪時の引張弾性率を、タイヤ引抜きコードで12cN/dtex以上とする。これは、例えば、レーヨンの同引張弾性率の値同等以上に相当する。
【0025】
なお、本発明において、上記ハイブリッドコードの熱収縮応力および引張弾性率を調整する方法としては、接着剤処理(ディップ処理)時におけるテンションや温度を制御する方法が挙げられ、例えば、高いテンションを掛けながらディップ処理を行うことで、コードの熱収縮応力の値を大きくすることができる。また、低い温度でディップ処理を行うことで、コードの熱収縮応力の値を大きくすることができる。すなわち、各有機繊維において固有の物性値範囲はあるものの、上記ディップ処理条件を制御することにより、その範囲内で物性値を調整して、所望の物性を有するハイブリッドコードを得ることができるものである。
【0026】
また、本発明においては、上記ハイブリッドコードを構成する2種の有機繊維の下撚り数が30〜60回/10cmであり、該ハイブリッドコードの上撚り数が25〜60回/10cmであることが好ましい。上記ハイブリッドコードの撚り数および上撚り数をこの範囲内とすることで、目的の引張弾性率を実現することができる。
【0027】
本発明のタイヤにおいては、上記カーカスに係る条件を満足することのみが重要であり、それ以外のタイヤ構造の詳細や各部材の材質などについては特に制限されず、従来公知のもののうちから適宜選択して構成することができる。
【0028】
例えば、ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して10°〜40°で傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなり、2枚のベルト層は、ベルト層を構成するコードが互いに赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト8を構成する。図示する例では、ベルト8は2枚のベルト層からなるが、本発明のタイヤにおいては、ベルト8を構成するベルト層の枚数はこれに限られるものではない。また、ベルト補強層9A,9Bは、通常、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列したコードのゴム引き層からなるが、本発明においては、ベルト補強層9A,9Bの配設は必須ではなく、別の構造のベルト補強層を配設することもできる。
【0029】
さらに、本発明のタイヤにおいて、トレッド部3の表面には適宜トレッドパターンが形成されており、最内層にはインナーライナー(図示せず)が形成されている。また、本発明のタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を変えた空気、もしくは窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
タイヤサイズ225/45R17にて、図1に示すようなサイド補強タイプのランフラットタイヤを作製した。カーカスは、下記表中に示す仕様の1枚のカーカスプライからなり、その折返し部端がベルトのタイヤ半径方向内側に挿入されてなる、いわゆるエンベロープ構造を有するものとした。また、ベルトは、タイヤ周方向に対し±30°の角度にて互いに交錯配置された2層のベルト層からなるものとした。
【0031】
<RFV測定>
各供試タイヤをリムサイズ7 1/2Jのリムに組み、内圧200kPa、負荷荷重4410Nの条件下で、JASO C 607(2000)に規定されたユニフォミティ測定方法に従って、ラジアルフォースバリエーション(RFV)を測定した。結果は、比較例1のタイヤのRFVを100として指数表示した。指数値が小さいほど、タイヤのユニフォミティ(均一性)が高いことを示し、良好である。その結果を、下記の表中に併せて示す。
【0032】
【表1】
【0033】
上記表中に示すように、レーヨンからなるフィラメントとナイロンからなるフィラメントとを撚り合わせてなるハイブリッドコードをカーカスプライコードとして用い、カーカスプライの折返し部端のベルト下への挿入長さを10〜23mmとした各実施例の供試タイヤにおいては、RFVが低い値に抑制されていることが確かめられた。これに対し、カーカスプライの折返し部端の挿入長さを25mmとした比較例2では、挿入長さが長いために、タイヤセンター部領域と比較してショルダー部領域がタイヤ径方向に高い形状となることから、RFVが悪化していることがわかる。
【符号の説明】
【0034】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 カーカス
5 サイド補強ゴム層
6 ビードコア
7 ビードフィラー
8 ベルト
9A,9B ベルト補強層
図1