(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
以下の(1)〜(3)を必須成分として含有し、水存在下、回転速度4000rpm以上の撹拌でタンパク質含有飲食品にゲル化性を付与することを特徴とする、タンパク質含有飲食品用のゲル化剤;
(1)キサンタンガム、
(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガム、
(3)前記(1)キサンタンガムと、(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガムの総量100質量部に対して、15〜400質量部のλカラギナン及び/又はκ2カラギナン。
【背景技術】
【0002】
飲食品にゲル化性を付与する(ゲル化させる)ゲル化剤として、寒天、ゼラチン、カラギナン及びジェランガムなどの各種ゲル化剤が用いられている。しかし、飲食品を凝固させるゲル化機能を発揮させるためには、ゲル化剤を含有する飲食品を、一旦80℃以上に加熱後、ゲル化温度まで冷却する必要があり、ゲル状飲食品の調製に通常1〜3時間程の時間を要していた。特に、ゼラチンでは、冷却に一晩かかる場合があった。
【0003】
上記常法は、工業規模でゲル状飲食品を製造する場合に有効な手段である。しかし、家庭や病院内で手軽にゲル状飲食品を調製したい場合に、製造方法が煩雑である、喫食可能となるまでに長時間を要し、その場で直ぐに喫食できないといった問題を抱えていた。
例えば、食物を噛み砕き、飲み込むという一連の動作に障害をもつ、いわゆる咀嚼・嚥下困難者の誤嚥防止を目的として、飲食品を増粘・ゲル化させる技術が用いられるが、喫食毎に上記調理工程をとることは咀嚼・嚥下困難者本人やその介護者にかかる負担が非常に大きい。更に、調理時に火傷の恐れがあるなど、使い勝手が悪いものであった。
【0004】
当該従来技術に鑑み、撹拌により飲食品にゲル化性を付与する技術が特許文献1及び2に開示されている。
具体的には、キサンタンガム2〜40重量部に対し、グルコマンナン98〜60重量部の割合で粉体混合した混合物をゲル化剤として用い、5000rpm以上の撹拌で飲食品にゲル化性を付与する技術(特許文献1)、及びキサンタンガム1〜50%、ジェランガム90〜10%、グァーガム50〜1%の配合比のゲル化剤をデンプン含有食品に添加し、4500rpm以上の撹拌で飲食品を半固形化する技術(特許文献2)が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示された技術は水やお茶のような単純系の飲食品を、特許文献2に開示された技術はデンプンを含有する飲食品をゲル化させることが可能である。しかし、特許文献1及び2のいずれの技術をもってしても、室温下でタンパク質を含有する飲食品をゲル化させることはできず、タンパク質を含有する飲食品を簡便にゲル化させることができるゲル化剤が求められていた。なお、特許文献1に開示されたゲル化剤を用いて調製されたゲル状飲食品は、付着性が強く、喫食した際に咽頭にへばりつきやすいという課題を抱えていた。特に、咀嚼・嚥下困難者は筋肉の衰えなどから食塊を咽頭から食道へ送り込む機能が低下しており、付着性が大きい食品はスムースに咽頭相を通過させることができず、咀嚼・嚥下困難者用のゲル化剤として不十分であった。また、特許文献2に開示された技術は、酵素を含むため、食品本来の味を損ねてしまう、デンプン含有食品以外の飲食品をゲル化させることができず、汎用性が低いといった課題を抱えていた。
【0006】
特許文献3には、固体状組成物(ゲル化剤)に、温度40℃以下の液体を加えて撹拌混合し、嚥下困難者に適したゲル状食品を調製する技術が開示されている。具体的には、Na型カラギナン、タンパク質、糖質及びカルシウム化合物を必須成分とし、更にタンパク質及びカルシウム化合物を特定の配合割合に調整した固体状組成物(ゲル化剤)が開示されている。
特許文献3に開示された技術は、カラギナンの中でも特に溶解性を高めたNa型カラギナンを用いることを必須構成要件としており、通常のカラギナンを用いた場合はゲル化が困難である。また、Na型カラギナン含量に応じて、ゲル化剤中のタンパク質及びカルシウム化合物を厳密に調整する必要があり、添加対象の飲食品中に含まれるタンパク質やカルシウム化合物によって食感が大きく変わるといった問題を抱えていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術に鑑み、本発明ではタンパク質を含有する飲食品に簡便にゲル化性を付与可能なゲル化剤、及びそれを用いたタンパク質含有ゲル状飲食品の製造方法を提供することを目的とする。
具体的には、0〜70℃の温度帯のタンパク質含有飲食品に添加するか、または当該タンパク質含有飲食品を添加した後、水存在下、回転速度4000rpm以上の撹拌を行うことで、別途加熱や冷却工程を要せず、簡便に当該飲食品にゲル化性を付与することができるゲル化剤、及びそれを用いたタンパク質含有ゲル状飲食品の製造方法を提供することを目的とする。かかる点、本発明の目的は、利便性の高いインスタントゲル化剤を提供することにもある。
【0009】
更に、本発明では咀嚼・嚥下困難者の喫食に適したゲル状飲食品を調製可能なゲル化剤、及びそれを用いたタンパク質含有ゲル状飲食品の製造方法を提供することを目的とする。具体的には咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすいような良好な食塊形成性を有し、また、口腔及び咽頭への付着性が小さいタンパク質含有ゲル状飲食品を調製可能なゲル化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、0〜70℃の飲食品に下記(1)〜(3)を必須成分とするゲル化剤を添加するか、または当該ゲル化剤に上記飲食品を添加し、水存在下、回転速度4000rpm以上の撹拌を行うことで、別途加熱や冷却工程を要せず、簡便にタンパク質含有飲食品にゲル化性を付与できること、及び咀嚼・嚥下困難者の喫食に適した食感とレオロジー特性を付与できることを見出して本発明に至った;
(1)キサンタンガム、
(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガム、
(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナン。
【0011】
本発明は、以下の態様を有する、タンパク質含有飲食品用のゲル化剤に関する;
(I-1).以下の(1)〜(3)を必須成分として含有し、水存在下、回転速度4000rpm以上の撹拌でタンパク質含有飲食品にゲル化性を付与することを特徴とする、タンパク質含有飲食品用のゲル化剤;
(1)キサンタンガム、
(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガム、
(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナン。
(I-2).(1)キサンタンガムを3〜65質量%の割合で含有する(I-1)記載のゲル化剤。
(I-3).(1)キサンタンガム100質量部に対して、(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガムを総量で10質量部以上150質量部未満の割合で含有する、(I-1)または(I-2)に記載するゲル化剤。
(I-4).(1)キサンタンガム、並びに(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガムの総量100質量部に対して、(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナンを総量で15〜400質量部の割合で含有する、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載するゲル化剤。
(I-5).更に(4)ジェランガム及び/又は寒天を含有する、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載するゲル化剤。
(I-6).(1)キサンタンガム、並びに(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガムの総量100質量部に対して、(4)ジェランガム及び/又は寒天を総量で5〜300質量部の割合で含有する、(I-5)に記載するゲル化剤。
(I-7).粉末状または顆粒状を有する(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載するゲル化剤。
(I-8).タンパク質含有飲食品が牛乳、濃厚流動食(総合栄養食品)又は経腸栄養剤である、(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載のゲル化剤。
(I-9).タンパク質含有ゲル状飲食品100質量%中に含まれる(1)キサンタンガム、並びに(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガムの総量が0.1〜2質量%となるように、タンパク質含有飲食品に用いられる(I-1)乃至(I-8)のいずれかに記載のゲル化剤。
【0012】
また本発明は、以下の態様を有する、タンパク質含有ゲル状飲食品の製造方法に関する;
(II-1).タンパク質含有飲食品に下記の(1)〜(3)またはこれらを含有する(I-1)乃至(I-8)のいずれかに記載のゲル化剤を添加するか、または下記の(1)〜(3)の混合物または上記ゲル化剤にタンパク質含有飲食品を添加し、水存在下、回転速度4000rpm以上の撹拌を行うことを特徴とする、タンパク質含有ゲル状飲食品の製造方法;
(1)キサンタンガム、
(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガム、
(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナン。
(II-2).タンパク質含有飲食品が牛乳、濃厚流動食(総合栄養食品)又は経腸栄養剤である、(II-1)に記載する製造方法。
(II-3).タンパク質含有ゲル状飲食品100質量%中の(1)キサンタンガム、並びに(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガムの総量が0.1〜2質量%となるように、(1)〜(3)またはこれらを含有する(I-1)乃至(I-8)のいずれかに記載のゲル化剤を用いる(II-1)または(II-2)に記載する製造方法。
【発明の効果】
【0013】
第一の効果として、本発明のゲル化剤を用いることで、加熱及び冷却工程をとることなく、短時間で簡便にタンパク質含有ゲル状飲食品を調製することができる。具体的には、本発明のゲル化剤を0〜70℃の温度帯のタンパク質含有飲食品に添加するか、または当該タンパク質含有飲食品を上記ゲル化剤に添加した後、水存在下、家庭用のミキサーやフードプロセッサーを用いて回転速度4000rpm以上の撹拌を行うことで、タンパク質含有飲食品にゲル化性を付与することができる。
【0014】
本発明のゲル化剤を用いる第二の効果として、タンパク質を含有する飲食品に対して、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適した食感やレオロジー特性を付与することができる。
具体的には、咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすいような良好な食塊形成性を有し、また、口腔及び咽頭への付着性が小さいタンパク質含有ゲル状飲食品を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(I)タンパク質含有飲食品用のゲル化剤
本発明は、タンパク質含有飲食品用のゲル化剤に関する発明である。
本発明において、ゲル化する対象のタンパク質含有飲食品は、タンパク質を含有する飲食品であればよく、具体的には、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、カゼイン、豆乳、大豆等の動物性または植物性のタンパク質を含有した飲食品をいう。
【0017】
タンパク質含有飲食品の形状は特に制限なく、固形状、半固形状(半流動状)、及び流動状などの形状を有するものが含まれる。但し、ゲル状飲食品を製造するためには、飲食品の水分含量を所定量以上に調整することが好ましい。かかる水分含量としては、制限されないが、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上を例示することができる。例えば、タンパク質含有飲食品が半固形状(半流動状)または流動状の形状を有し、水分含量が所定量以上である場合は、そのままゲル状飲食品の製造に使用することができるが、タンパク質含有飲食品が固形状または半固形状(半流動状)の形状を有し、水分含量が所定量よりも低い場合は、撹拌前、好ましくはゲル化剤を添加する前に、別途水分を添加して水分含量が所定量以上になるように調整することが好ましい。
【0018】
タンパク質含有飲食品中のタンパク質含量としては、タンパク質含有ゲル状飲食品を製造する直前の飲食物、つまり、タンパク質含有飲食品の水分含量が所定量に満たない場合は、水分含量を調整した後の飲食物中のタンパク質含量として、1質量%以上、好ましくは2〜15質量%を例示することができる。当該タンパク質含量は、調製されたタンパク質含有ゲル状組成物中のタンパク質含量に相当する。
【0019】
タンパク質を2質量%以上含有する飲食品は、水やお茶等の飲食品と異なり、固形分含量が高く、増粘多糖類が水和・膨潤しにくく、さらにタンパク質との相互作用のため、均一なゲルを形成させることが困難な場合があるが、本発明のゲル化剤を用いた場合は、回転速度4000rpm以上の撹拌条件で撹拌するといった極めて簡便な操作を行うことで、タンパク質含有飲食品の組成に関係なく容易にゲル化性を付与することができる。
【0020】
本発明のゲル化剤は、下記の3種を必須成分として用いることを特徴とする。
(1)キサンタンガム、
(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガム、
(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナン。
【0021】
キサンタンガムは、キサントモナス・キャンペストリス(
Xanthomonas campestris)が菌体外に生産する多糖類であり、D−マンノース、D−グルコース、D−グルクロン酸で構成されている。主鎖はβ−1,4結合しているD−グルコースからなり、側鎖は主鎖のD−グルコース残基1つおきにD−マンノース2分子とD−グルクロン酸が結合している。側鎖の末端にあるD−マンノースはピルビン酸塩となっている場合がある。また、主鎖に結合したD−マンノースのC−6位はアセチル化されている場合がある。なお、キサンタンガムの分子量は大きく、制限はされないものの、一般的に300万付近とされている。キサンタンガムは冷水に溶解し、他の多糖類に比べて低濃度で高い粘度を示す。キサンタンガムは単独ではゲルを形成しないが、本発明では、(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガム、並びに(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナンを併用することで、タンパク質含有飲食品に簡便にゲル化性を付与することができる。
商業上入手可能なキサンタンガム製剤として、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンエース[登録商標]」を例示することができる。
【0022】
ゲル化剤中、キサンタンガムは3〜65質量%、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは5〜40質量%含有することが望ましい。
【0023】
本発明で用いるグルコマンナンは、コンニャク芋に含まれる多糖類であり、制限はされないものの、一般的にD−グルコースとD−マンノースがほぼ、1:1.6のモル比で、β−1,4結合により重合した難消化性の多糖類であり、その分子量は約100万〜200万とされている。
ローカストビーンガムは、β−D−マンノースの主鎖がβ−1,4結合、α−D−ガラクトースの側鎖がα−1,6結合した多糖類であり、制限はされないものの、一般的にマンノースとガラクトースの比率が約4:1であるとされている。
【0024】
本発明のゲル化剤は、キサンタンガム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上150質量部未満のグルコマンナン及び/又はローカストビーンガム(両方使用する場合は、両方の総量を意味する。以下、同じ。)、更に好ましくは50〜140質量部のグルコマンナン及び/又はローカストビーンガムを併用できる。
上記割合でキサンタンガムとグルコマンナン及び/又はローカストビーンガムを併用することで、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適したゲル状のタンパク質含有飲食品、特には付着性が低減され、飲み込みやすいゲル状のタンパク質含有飲食品を提供することができる。
【0025】
本発明のゲル化剤は、上記(1)及び(2)に加えて、更に(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナンを併用することを特徴とする。
カラギナンは、紅藻類海藻より得られる多糖類で、D−ガラクトースが交互にα−1,3、β−1,4結合した直鎖状多糖類で、分子中の硫酸基結合部位とアンヒドロ構造の相違により、主としてκ(カッパ)タイプ、ι(イオタ)タイプ、λ(ラムダ)タイプの3種に大別される。本発明では、カラギナンの中でも、λ(ラムダ)カラギナン及びκ2(カッパツー)カラギナンを用いることを特徴とする。
本発明において、κ2カラギナンとは、κカラギナンの分子の一部がιカラギナンで置換されたカラギナンをいう。具体的には、κカラギナンの分子構造中にιカラギナンの構造を一部有する、すなわちκカラギナンとιカラギナンがハイブリッド化していることを特徴とするカラギナンである。置換の程度としては、ιカラギナンの構造がκカラギナン中に一部置換されておればよく、その置換率は1〜49%程度、好ましくは10〜40%を挙げることができる。このように、κ2カラギナンは、κカラギナンとは相違する物質であり、例えば、本発明においてκ2カラギナンに代えてκカラギナンを用いた場合は、タンパク質含有飲食品をゲル化させることができない。
商業上入手可能なλカラギナン製剤として「カラギニンCSL−2(F)」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、κ2カラギナン製剤として、「ビストップ[登録商標]D−4032」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を例示することができる。
【0026】
(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナンの添加量は、対象飲食品のタンパク質含量に応じて適宜調整することが可能であるが、具体的には、ゲル化剤中に含まれる、(1)キサンタンガムと、(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガムの総量100質量部に対して、(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナン(両方使用する場合は、両方の総量を意味する。以下、同じ。)が15〜400質量部、好ましくは20〜350質量部、更に好ましくは20〜300質量部となるように添加することが望ましい。
【0027】
本発明のゲル化剤は、好ましくは、更にジェランガム及び/又は寒天を併用することが望ましい。ジェランガム及び/又は寒天を併用することで、比較的高温帯(30〜70℃)で喫食されるタンパク質含有飲食品の食塊形成性を格段に向上させることが可能である。
ジェランガム及び/又は寒天の添加量は、対象飲食品のタンパク質含量に応じて適宜調整することが可能であるが、具体的には、ゲル化剤中に含まれる、(1)キサンタンガムと、(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガムの総量100質量部に対して、ジェランガム及び/又は寒天(両方使用する場合は、両方の総量を意味する。以下、同じ。)が5〜300質量部、好ましくは10〜250質量部、更に好ましくは10〜200質量部となるように添加することが望ましい。
【0028】
本発明のゲル化剤は、下記(1)〜(3)の多糖類、必要に応じて、ジェランガム及び/又は寒天、更にデキストリン等の賦形剤を粉体混合して調製可能である。
(1)キサンタンガム、
(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガム、
(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナン。
更に、本発明のゲル化剤は造粒により顆粒化されていることが望ましい。例えば上記粉体混合物を、任意のバインダー液(例えば、イオン交換水や、デキストリン、ガム質、金属塩を含有する水溶液)を用いて造粒する方法が挙げられる。造粒方法としては、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、圧縮造粒、押出し造粒等の造粒機械を用いて実施できる。また、粉末状のゲル化剤、若しくは前記方法によって得られる造粒物(顆粒状のゲル化剤)を各種打錠機により打錠して、錠剤化することもできる。
以上のように、本発明のゲル化剤は、粉末状、顆粒状、または錠剤状を有することができる。
【0029】
かくして得られた本発明のゲル化剤は、ゲル化する対象のタンパク質含有飲食品に添加するか、または本発明のゲル化剤に当該タンパク質含有飲食品を添加し、その後、水存在下、回転速度4000rpm以上の撹拌条件で撹拌する工程を有する、タンパク質含有ゲル状飲食品の製造に用いられることを特徴とする。
ここでタンパク質含有飲食品に対する本発明のゲル化剤の配合割合は、ゲル状飲食品に求められる食感やレオロジー特性によって適宜調整することができ、制限されないものの、最終的に調製されるタンパク質含有ゲル状飲食品100質量%中の含有割合に換算して、通常、(1)キサンタンガム、並びに(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガムの総量が0.1〜2質量%、好ましくは0.2〜1.8質量%、更に好ましくは0.25〜1.5質量%となるような割合を挙げることができる。
【0030】
0〜70℃の温度帯のタンパク質含有飲食品にゲル化性を付与する撹拌条件としては、具体的には、4000rpmの回転速度で1分間程度以上、またはそれに相当する撹拌条件を挙げることができる。4000rpmの回転速度で1分間程度以上の条件に相当する撹拌条件としては、制限されないが、10000rpmの回転速度で10秒程度以上、好ましくは30秒程度以上の撹拌を例示することができる。なお、撹拌時間の上限は、ゲル化性付与という目的が達成できる限り、特に制限されないが、手軽にゲル化性を付与できるという本発明の目的から、5分程度以内、好ましくは3分程度以内を例示することができる。一般的には、家庭用ミキサー、フードプロセッサー、ハンドミキサー、ブレンダー、クッキングカッター、プロペラ撹拌機等の機器を用いて撹拌することで実現できる。
【0031】
また本発明において「水存在下・・・撹拌する」とは、飲食物に最初から含まれている水分、またはゲル状飲食品を調製するために飲食品に別途添加した水分の存在下で、飲食品を撹拌することを意味する。水分含有量としては、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上を例示することができる。
【0032】
本発明のゲル化剤は、0〜70℃、好ましくは4〜60℃の温度帯のタンパク質含有飲食品に簡便にゲル化性を付与できる(ゲル化できる)という利点を有する。通常、飲食品にゲル化性を付与するためには、ゲル化剤を含有した飲食品を80℃以上に加熱後、ゲル化温度まで冷却する必要があったが、本発明では、0〜70℃の通常ゲルを形成しない温度帯の飲食品であっても、対象飲食品に簡便にゲル化性を付与することが可能である。具体的には、本発明のゲル化剤は、30〜70℃、好ましくは30〜60℃の温度帯で用いても冷却工程を経ることなく、対象飲食品にゲル化性を付与することができる。また、4〜45℃、更には4〜25℃と低温帯の飲食品であっても簡便にゲル化性を付与することができる。なお、タンパク質含有飲食品が70℃を超える場合でも、本発明のゲル化剤は使用可能である。
本発明において「ゲル化」または「ゲル化性」とは、静置状態において、自重で流動しない状態または性質をいう。この意味で、本発明において「ゲル化性を付与する」とは、「保形性を付与する」と言い換えることもできる。
【0033】
咀嚼・嚥下困難者用飲食品は、咀嚼・嚥下困難者やその介護者がベットサイドや家庭内で対象飲食品に増粘剤やゲル化剤を添加し、汎用の調理機器を用いて調製される場合が多い。かかる点、本発明のゲル化剤は、家庭用ミキサーやブレンダーを用いて実施でき、特別な加熱設備や冷却設備が不要であるため、ベットサイドや家庭で容易に咀嚼・嚥下困難者用飲食品が調製できるという利点を有する。
なお、本発明のゲル化剤はタンパク質含有飲食品と混合後、水存在下、回転速度4000rpm以上で撹拌することでゲル化効果を奏する。一方で、手撹拌のような弱い撹拌では、所望のゲルを調製することができない。
【0034】
本発明のゲル化剤は、特に咀嚼・嚥下困難者用のゲル化剤として有用性が高い。
ゲル状飲食品が咀嚼・嚥下困難者用食品として適用される際は、以下の食感やレオロジー特性が求められる。1)適度なかたさを有すること、2)食塊形成性(咀嚼後の食品のまとまりやすさ)に優れること、3)口腔及び咽頭への付着性が小さいこと、及び4)保水性が高いこと(離水が少ないこと)。特に、咀嚼・嚥下困難者は筋肉の衰えなどから食塊を咽頭から食道へ送り込む機能が低下しており、口腔・咽頭相において食塊がばらばらにならないこと(食塊形成性)や、スムースに咽頭相を通過することが可能な付着性の小ささが飲み込みやすさの重要な要素となる。かかる点、本発明のゲル化剤を用いることで、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適した食感やレオロジー特性を有するゲル状のタンパク質含有飲食品を提供できる。
【0035】
上記の1)に関して、ユニバーサルデザインフード(UDF)では、かたさによって以下の区分に分類されている。
区分1:容易にかめる / かたさ500000N/m
2以下
区分2:歯ぐきでつぶせる / かたさ50000N/m
2以下
区分3:舌でつぶせる / かたさ20000N/m
2以下
区分4:かまなくてよい / かたさ5000N/m
2以下
ユニバーサルデザインフード(UDF)は、日本介護食品協議会が、利用者が選択する際の目安として、食品を「かたさ」や「粘度」に応じて4段階に区分したものである。区分選択の目安は、ユニバーサルデザインフード自主規格 第2版(日本介護食品協議会)を参照することができる。
本発明では、ゲル化剤の添加量を適宜調整することで、各区分に応じた「かたさ」を対象飲食品に付与することができる。
【0036】
本発明のゲル化剤は、濃厚流動食(総合栄養食品)又は経腸栄養剤向けのゲル化剤として好適である。なお、濃厚流動食は、1kcal/ml程度の濃度に調整され、長期間の単独摂取によっても著しい栄養素の過不足が生じないように、各栄養素の質的構成が考慮されている栄養食品である。当該濃厚流動食には、天然濃厚流動食、人工濃厚流動食、及び混合濃厚流動食が含まれる。また、経腸栄養剤は、経腸栄養法(経鼻栄養法、胃瘻・空腸瘻栄養法など)で注入される栄養剤である。これらの濃厚流動食(総合栄養食品)や経腸栄養剤は、咀嚼・嚥下困難者用の食事代替や栄養補給を目的として用いられるが、タンパク質、糖質及び脂質を多種・高含量含むため、通常のゲル化剤では均一にゲル化させることが非常に困難である。かかる濃厚流動食(総合栄養食品)又は経腸栄養剤であっても、本発明のゲル化剤を用いることで、加熱及び冷却工程を必要とせず、回転速度4000rpm以上の撹拌条件で撹拌するといった簡便な工程のみで、ゲル状の濃厚流動食(総合栄養食品)又は経腸栄養剤を提供できる点で、本発明のゲル化剤は、濃厚流動食(総合栄養食品)又は経腸栄養剤向けのゲル化剤として有用性が高い。
【0037】
(II)タンパク質含有ゲル状飲食品の製造方法
本発明は、簡便にゲル状のタンパク質含有飲食品を製造する方法にも関する。具体的には、タンパク質含有飲食品に下記(1)〜(3)を添加するか、またはこれらの混合物にタンパク質含有飲食品を添加した後、水存在下、回転速度4000rpm以上の撹拌条件で撹拌することを特徴とする、ゲル状のタンパク質含有飲食品の製造方法に関する。
(1)キサンタンガム、
(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガム、
(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナン。
上記タンパク質含有ゲル状飲食品の製造は、上記(1)〜(3)の成分を含有するゲル化剤(合剤)、好ましくは(I)の欄で説明した本発明のゲル化剤を使用することで簡便に実施することができる。本発明では、かかる製造工程において、タンパク質含有飲食品に上記(1)〜(3)の成分(好ましくは、本発明のゲル化剤)を添加するか、またはこれらの混合物(好ましくは、本発明のゲル化剤)にタンパク質含有飲食品を添加した後の加熱工程が不要であるという利点を有する。
【0038】
タンパク質含有飲食品に対する(1)〜(3)成分の添加量は、求められる食感やレオロジー特性によって適宜調整することができるが、具体的には、最終的に調製されるタンパク質含有ゲル状飲食品100質量%中に含まれる(1)キサンタンガム、並びに(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガムの総量が0.1〜2質量%、好ましくは0.2〜1.8質量%、更に好ましくは0.25〜1.5質量%となるように添加することが望ましい。また、上記3成分を含む組成物として前述する本発明のゲル化剤を使用する場合も、同様に、タンパク質含有ゲル状飲食品100質量%中に含まれる(1)キサンタンガム、並びに(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガムの総量が0.1〜2質量%、好ましくは0.2〜1.8質量%、更に好ましくは0.25〜1.5質量%となるように、本発明のゲル化剤を添加することが望ましい。
【0039】
タンパク質含有飲食品のゲル化をより効率的に行うためには、ゲル化する前にタンパク質含有飲食品の水分含量を50質量%以上に調整することが望ましい。
例えば、タンパク質含有飲食品の水分含量が50質量%未満の場合は、本発明のゲル化剤を添加する際に、別途水分を添加することで、タンパク質含有飲食品の水分含量を50質量%以上に調整することが可能である。ここで本発明がゲル化する対象のタンパク質含有飲食品は(I)の欄で前述した通りである。例えばタンパク質含有飲食品のタンパク質含量は、水分含量を調整した後の飲食品、つまりゲル化する直前の飲食品中のタンパク質含量に換算して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2〜15質量%である。当該タンパク質含量は、調製されるタンパク質含有ゲル状飲食品中のタンパク質含量に相当する。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、文中の「UDF」とは、ユニバーサルデザインフードの略称である。
【0041】
実験例1 タンパク質含有飲食品のゲル化(1)
牛乳(タンパク質含量3.3質量%、水分含量87.4質量%)に対するゲル化試験を行った。
20℃に調温した牛乳100g及び各種ゲル化剤(表1:実施例1−1〜1−3、比較例1−1〜1−4)をミキサー(ジュースミキサー/TESCOM社製)に投入し、回転速度10000rpmで30秒間撹拌した。一方、比較例1−5は、20℃に調温した牛乳に、表1に示すゲル化剤を添加後、手撹拌(回転速度240rpm、30秒間)した。ミキサーまたは手撹拌で撹拌後、調製した試料を容器に充填し、室温で30分間静置後に、ゲル化の有無、レオロジー特性(かたさ)及び食感(付着性と食塊形成性)を評価した。結果を表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
評価項目
(ゲル化の有無):ミキサーで撹拌後、試料を高さ60mmの花形容器に35mmまで充填し、室温で30分間静置後のゲル化の状態を目視観察した。ゲル化したもの(静置状態において自重で流動しないもの)を○、ゲル化しなかったもの(静置状態において自重で流動するもの)を×とした。
(かたさ):ミキサーで撹拌後の試料を直径40mm、高さ15mmのステンレスシャーレに満量充填し、テクスチャーアナライザーを使用して、直径20mm、高さ8mm樹脂製のプランジャーを用い、圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで一軸圧縮測定した。圧縮時の最大応力をかたさとした。ミキサーで撹拌後、室温で30分間静置後の試料を測定した。
(付着性):ミキサーで撹拌後、室温で30分間静置後の試料について、喫食した際の喉へのはりつきを官能評価した。
(食塊形成性):ミキサーで撹拌後、室温で30分間静置後の試料について、喫食した際の口腔内でのまとまり感(形の保持力)を官能評価した。
【0045】
(1)キサンタンガム、(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガム、並びに(3)λカラギナンを含有する、本発明のゲル化剤(実施例1−1〜1−3)は、20℃の牛乳であっても、加熱及び冷却工程をとることなく、撹拌のみの極めて簡便な操作で牛乳にゲル化性を付与することができた(ゲル化することができた)。得られたゲル状飲食品(ゲル状牛乳)は良好な食塊形成性を有し、かつ付着性も小さく、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適する食感であった。また得られたゲルは均一であった。
また、実施例1−1〜1−3で得られたゲル状飲食品(ゲル状牛乳)は、舌でつぶせるかたさ(UDFの区分3:かたさ20000N/m
2以下に相当)であり、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適するレオロジー特性であった。特に、実施例1−2は非常に良好なレオロジー特性を有した。更に実施例1−1〜1−3で得られたゲル状飲食品(ゲル状牛乳)は、保水性にも優れており、1時間以上放置しても離水は見られなかった。
図1に実施例1−1で調製されたゲル状飲食品(ゲル状牛乳)の写真を示す。容器からの型離れがよく、極めて良好な保形性を有することが見て取れる。
【0046】
比較例1−1は、実施例1−1からλカラギナンを除いた例である。表2から明らかなように、牛乳にゲル化性を付与することができなかった(ゲル化させることができなかった)。
比較例1−2は、特許文献1に開示された咀嚼・嚥下補助剤を用いた例である。本咀嚼・嚥下補助剤を用いた場合であっても、表2及び
図2から明らかなように、牛乳にゲル化性を付与することができなかった。
比較例1−3は、実施例1−2からλカラギナンを除いた例であるが、比較例1−1と同様に、牛乳にゲル化性を付与することができなかった。
比較例1−4は、実施例1−1のλカラギナンの代わりにκカラギナンを使用した例である。本試験区も、牛乳にゲル化性を付与することができなかった。
比較例1−5は、実施例1−3と同じゲル化剤を用いた例であるが、手撹拌では牛乳にゲル化性を付与することができなかった。
【0047】
実験例2 タンパク質含有飲食品のゲル化(2)
牛乳(タンパク質含量3.3質量%、水分含量87.4質量%)に対するゲル化試験を行った。
20℃に調温した牛乳100g及び各種ゲル化剤(表3)をミキサー(ジュースミキサー/TESCOM社製)に投入し、回転速度10000rpmで30秒間撹拌した。ミキサーで撹拌後、調製した試料を容器に充填し、室温で30分間静置後に、ゲル化の有無、レオロジー特性(かたさ)及び食感(付着性と食塊形成性)を評価した。評価基準は実験例1に従った。結果を表4に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
(1)キサンタンガム、(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガム、並びに(3)κ2カラギナンを含有する、本発明のゲル化剤(実施例2−1〜2−3)は、20℃の牛乳であっても、加熱及び冷却工程をとることなく、撹拌のみの極めて簡便な操作で牛乳にゲル化性を付与することができた(ゲル化することができた)。得られたゲル状飲食品(ゲル状牛乳)は良好な食塊形成性を有し、かつ付着性も小さく、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適する食感であった。また得られたゲルは均一であった。
また、実施例2−1〜2−3で得られたゲル状飲食品(ゲル状牛乳)は、舌でつぶせるかたさ(UDFの区分3:かたさ20000N/m
2以下に相当)であり、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適するレオロジー特性であった。特に、実施例2−2及び実施例2−3は非常に良好なレオロジー特性を有した。更に実施例2−1〜2−3で得られたゲル状飲食品(ゲル状牛乳)は、保水性にも優れており、1時間以上放置しても離水は見られなかった。
図3に実施例2−3で調製されたゲル状飲食品(ゲル状牛乳)の写真を示す。容器からの型離れがよく、極めて良好な保形性を有することが見て取れる。
【0051】
比較例2−1は、実施例2−1からκ2カラギナンを除いた例である。表4から明らかなように、牛乳にゲル化性を付与することができなかった。
比較例2−2は、実施例2−2からκ2カラギナンを除いた例であるが、比較例2−1と同様に、牛乳にゲル化性を付与することができなかった。
比較例2−3は、実施例2−1のκ2カラギナンの代わりにκカラギナンを使用した例である。本試験区も、牛乳にゲル化性を付与することができなかった。
【0052】
実験例3 タンパク質含有飲食品のゲル化(3)
濃厚流動食(タンパク質含量5.0質量%、油脂含量2.2%、糖質含量14.7%、水分含量84.0質量%)に対するゲル化試験を行った。
20℃に調温した濃厚流動食100g及び各種ゲル化剤(表5)をミキサー(ジュースミキサー/TESCOM社製)に投入し、回転速度10000rpmで30秒間撹拌した。ミキサーで撹拌後、調製した試料を容器に充填し、室温で30分間静置後に、ゲル化の有無、レオロジー特性(かたさ)及び食感(付着性と食塊形成性)を評価した。評価基準は実験例1に従った。結果を表6に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
実施例3−1に示すゲル化剤を用いた場合は、20℃の濃厚流動食であっても、加熱及び冷却工程をとることなく、撹拌のみの極めて簡便な操作で濃厚流動食にゲル化性を付与することができた(ゲル化させることができた)。また、得られたゲル状飲食品(ゲル状濃厚流動食)は良好な食塊形成性を有し、かつ付着性も小さく、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適する食感であった。また得られたゲルは均一であった。
また、実施例3−1で得られたゲル状飲食品(ゲル状濃厚流動食)は、かまなくてよいかたさ(UDFの区分4:かたさ5000N/m
2以下に相当)であり、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適するレオロジー特性であった。更に実施例3−1で得られたゲル状飲食品(ゲル状濃厚流動食)は、保水性にも優れており、1時間以上放置しても離水は見られなかった。
図5に実施例3−1で調製されたゲル状飲食品(ゲル状濃厚流動食)の写真を示す。容器からの型離れがよく、極めて良好な保形性を有することが見て取れる。
【0056】
比較例3−1は、実施例3−1からカラギナンを除いた例である。表6及び
図6から明らかなように、濃厚流動食にゲル化性を付与することができなかった(ゲル化させることができなかった)。
【0057】
実施例4 タンパク質含有飲食品のゲル化(4)
濃厚流動食(タンパク質含量5.0質量%、油脂含量2.2%、糖質含量14.7%、水分含量84.0質量%)に対するゲル化試験を行った。
20℃に調温した濃厚流動食100g及び表9に記載の粉体混合物を造粒した顆粒品をミキサー(Oster Blender/Oster社製)に投入し、回転速度6000rpmで30秒間撹拌した。ミキサーで撹拌後、調製した試料を容器に充填し、室温で30分間静置後に、ゲル化の有無、レオロジー特性(かたさ)及び食感(付着性と食塊形成性)を評価した。評価基準は実験例1に従った。結果を表10に示す。
【0058】
【表9】
【0059】
【表10】
【0060】
実施例4−1に示すゲル化剤を用いた場合は、20℃の濃厚流動食であっても、加熱及び冷却工程をとることなく、回転速度10000rpmよりも低い撹拌で濃厚流動食にゲル化性を付与することができた。また、得られたゲル状飲食品(ゲル状濃厚流動食)は良好な食塊形成性を有し、かつ付着性も小さく、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適する食感であった。また得られたゲルは均一であった。
また、実施例4−1で得られたゲル状飲食品(ゲル状濃厚流動食)は、かまなくてよいかたさ(UDFの区分4:かたさ5000N/m
2以下に相当)であり、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適するレオロジー特性であった。更に実施例4−1で得られたゲル状飲食品(ゲル状濃厚流動食)は、保水性にも優れており、1時間以上放置しても離水は見られなかった。
図7に実施例4−1で調製されたゲル状飲食品(ゲル状濃厚流動食)の写真を示す。容器からの型離れがよく、極めて良好な保形性を有することが見て取れる。
【0061】
実験例5 タンパク質含有飲食品のゲル化(5)
クリームシチュー(タンパク質含量3.6質量%、水分含量81.9質量%)に対するゲル化試験を行った。
60℃に調温したクリームシチュー100g及び各種ゲル化剤(表7)をミキサー(ジュースミキサー/TESCOM社製)に投入し、回転速度10000rpmで30秒間撹拌した。ミキサーで撹拌後、調製した試料を容器に充填し、室温で30分間静置後に、ゲル化の有無、レオロジー特性(かたさ)及び食感(付着性と食塊形成性)を評価した。評価基準は実験例1に従った。結果を表8に示す。
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】
【0064】
(1)キサンタンガム、(2)グルコマンナン及び/又はローカストビーンガム、並びに(3)λカラギナン及び/又はκ2カラギナンを含有する、本発明のゲル化剤(実施例5−1〜5−2)は、加熱及び冷却工程をとることなく、撹拌のみの極めて簡便な操作でクリームシチューにゲル化性を付与することができた。また、得られたゲル状飲食品(ゲル状クリームシチュー)は良好な食塊形成性を有し、かつ付着性も小さく、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適する食感であった。また得られたゲルは均一であった。
また、実施例5−1〜5−2で得られたゲル状飲食品(ゲル状クリームシチュー)は、舌でつぶせるかたさ(UDFの区分3:かたさ20000N/m
2以下に相当)であり、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適するレオロジー特性であった。更に実施例5−1〜5−2で得られたゲル状飲食品(ゲル状クリームシチュー)は、保水性にも優れており、1時間以上放置しても離水は見られなかった。
図8に実施例5−1で調製されたゲル状飲食品(ゲル状クリームシチュー)の写真を示す。容器からの型離れがよく、極めて良好な保形性を有することが見て取れる。