(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加工材が板厚の薄い薄板であっても接合が難しくなく、接合品質が高く、接合に際して変形が起こり難く、プロテクターを使用する必要がない、幅方向に突合わせ摩擦攪拌接合して接合板を製造する接合体の製造方法及び製造装置を提供することであり、特に薄く長尺の板材である異種材料の帯板を連続的に幅方向に突合わせ摩擦攪拌接合して長尺の接合帯板を製造する帯板の接合体の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、帯板1と帯板2とを幅方向に突き合わせて、摩擦攪拌接合用のツールのプローブを埋入させて帯板の接合体を製造する方法であって、
前記プローブが埋入される前記帯板1及び前記帯板2の裏側に凸状の曲面を有する裏当てをあてがい、
前記帯板1の側面と前記帯板2の側面とを突き合せて
帯板に長さ方向に張力をかけて前記プローブが埋入される前後にわたり前記裏当ての凸状の曲面に沿わせて、
前記側面が突き合わされた帯板1と帯板2が前記プローブの埋入により幅方向に拡がらない様に、前記突き合わされた帯板1と帯板2を幅方向に拘束した状態で、
前記突き合わせ部またはその近傍に摩擦攪拌接合用のツールのプローブを埋入し、プロ
ーブに対し相対的に前記帯板1と前記帯板2を帯板の長手方向に移動させて、摩擦攪拌接
合する帯板の接合体の製造方法である。
請求項1に記載の発明によれば、板厚の薄い帯板と帯板とを、接合が難しくなく簡易に
、接合品質高く、プロテクターを使用する必要がなく、接合に際して帯板の変形が起こり
難く、幅方向に突合わせ摩擦攪拌接合して接合帯板を製造することができる。また、長尺
の帯板同士であっても、更に異質材料の帯板同士であっても、突き合わせ摩擦攪拌接合し
て接合体を製造することができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、
帯板1と帯板2とを幅方向に突き合わせて、摩擦攪拌接合用のツールのプローブを埋入させて帯板の接合体を製造する方法であって、
前記プローブが埋入される前記帯板1及び前記帯板2の裏側に回転ドラムをあてがい、
前記帯板1の側面と前記帯板2の側面とを突き合せて前記プローブが埋入される前後に
わたり前記回転ドラムの曲面に沿わせて、
前記側面が突き合わされた帯板1と帯板2が前記プローブの埋入により幅方向に拡がらない様に、前記突き合わされた帯板1と帯板2を幅方向に拘束した状態で、
前記突き合わせ部またはその近傍に摩擦攪拌接合用のツールのプローブを埋入し、プローブに対し相対的に前記帯板1と前記帯板2を帯板の長手方向に移動させて、摩擦攪拌接合する帯板の接合体の製造方法である。
請求項2に記載の発明によれば、装置が簡単で安価なため、プロテクターを使用せずとも側縁部の変形なく、板厚の薄い、帯板と帯板とを摩擦攪拌接合ができ、変形の無い接合帯板が安価に製造できる。
請求項3記載の発明は、プローブの埋入により前記側面が突き合わされた帯板1と帯板
2が幅方向に拡がらない様に、前記突き合わされた帯板1と帯板2を、前記裏当てに付設
された幅方向拘束具により幅方向に拘束して摩擦攪拌接合することを特徴とする請求項1
または2に記載の帯板の接合体の製造方法である。
請求項3に記載の発明によれば、装置が簡単で安価なため、プロテクターを使用せずと
も側縁部の変形なく、板厚の薄い、帯板と帯板とを摩擦攪拌接合ができ、幅方向拘束具と
の相対速度を抑えることができるので簡易な装置で安定した品質の変形の無い接合帯板が
安価に製造される。
【0015】
請求項4記載の発明は、帯板の接合体3と、帯板4とを幅方向に突き合わせて、摩擦攪拌接合用のツールのプローブを埋入させて三条の帯板の接合体を製造する方法であって、
前記プローブが埋入される前記帯板の接合体3及び帯板4の裏側に凸状の曲面を有する裏当てをあてがい、
前記帯板の接合体3の側面と前記帯板4の側面とを突き合せて前記プローブが埋入される前後にわたり前記裏当ての凸状の曲面に沿わせて、
前記側面が突き合わされた帯板3と帯板4が前記プローブの埋入により幅方向に拡がらない様に、前記突き合わされた帯板の接合体3と帯板4を幅方向に拘束した状態で、
前記突き合わされた帯板の接合体3と帯板4との突き合わせ部またはその近傍に摩擦攪拌接合用のツールのプローブを埋入し、プローブに対し相対的に前記帯板の接合体3と前記帯板4を帯板の長手方向に移動させて、摩擦攪拌接合する三条の帯板の接合体の製造方法である。
請求項4に記載の発明によれば、プロテクターを使用せずとも側縁部の変形なく、板厚の薄い、帯板と帯板とを摩擦攪拌接合ができ、接合帯板にさらに帯板を逐次接合できるので、三条以上の接合帯板が製造できる。
【0016】
請求項5記載の発明は、3以上の複数の帯板を各帯板の幅方向に突き合わせて、摩擦攪拌接合用のツールのプローブを埋入させて3以上の複数の帯板の接合体を一挙に製造する方法であって、
前記プローブが埋入される前記全帯板の裏側に凸状の曲面を有する裏当てをあてがい、
前記帯板同士を側面と側面とを突き合せて前記プローブが埋入される前後にわたり前記裏当ての凸状の曲面に沿わせて、
前記側面が突き合わされた帯板の全体の幅が前記プローブの埋入により幅方向に拡がらない様に、前記突き合わされた帯板同士を幅方向に拘束した状態で、
前記帯板と帯板との各突き合わせ部またはその近傍に摩擦攪拌接合用のツールのプローブを埋入し、プローブに対し相対的に前記帯板を帯板の長手方向に移動させて、摩擦攪拌接合する3以上の複数の帯板の接合体の製造方法である。
請求項5に記載の発明によれば、プロテクターを使用せずとも側縁部の変形なく、板厚の薄い、帯板と帯板とを摩擦攪拌接合ができ、三条以上の接合帯板が、短い製造ラインで製造できる。
【0017】
請求項6記載の発明は、摩擦撹拌ツールの回転軸とプローブが帯板に埋入される帯板の接平面とのなす角度が鈍角をなすことを特徴とする、請求項1乃至5に記載の帯板の接合体の製造方法である。
請求項6に記載の発明によれば、薄い帯板と帯板とをプロテクターを使用せずとも側縁部の変形なく摩擦攪拌接合ができ、接合品質の安定した接合帯板が製造できる。
【0018】
請求項7記載の発明は、帯板を突き合わせて摩擦攪拌接合する接合装置であって、
巻き取られた帯板1を繰り出すアンコイラー1と、巻き取られた帯板2を繰り出すアンコイラー2と、
前記繰り出された両帯板の側面同士を突合せ、前記突き合わせ部またはその近傍に摩擦攪拌ツールのプローブを埋入させ回転により攪拌し接合する摩擦攪拌装置と、
前記ツールによる前記帯板に対する押圧を帯板の裏面から支えるための凸状の曲面を有する裏当てと、
前記帯板1の側面と前記帯板2の側面とを突き合せて前記プローブが埋入される前後にわたり前記裏当ての凸状の曲面に沿わせるための、帯板に帯板の長手方向に張力を付加する張力付加装置と、
前記側面が突き合わされた帯板1と帯板2が前記プローブの埋入により幅方向に拡がらない様に、前記突き合わされた帯板1と帯薄板2を幅方向に拘束する幅方向拘束具と、
前記摩擦攪拌ツールに対し相対的に突き合わせた帯板を帯板の長手方向に移動させる移動装置と、
を有する帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項7に記載の発明によれば、板厚の薄い帯板と帯板とを、接合が難しくなく簡易に、接合品質高く、プロテクターを使用する必要がなく、接合に際して帯板の変形が起こり難く、幅方向に突合わせ摩擦攪拌接合して接合帯板を製造することができる摩擦撹拌接合装置が提供される。また、長尺の帯板同士であっても、更に異質材料の帯板同士であっても、突き合わせ摩擦攪拌接合して接合体を製造することができる摩擦撹拌接合装置が提供される。
【0019】
請求項8記載の発明は、凸状の曲面を有する裏当てが回転ドラムである請求項7記載の帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項8に記載の発明によれば、裏当て装置が簡単で安価なため、プロテクターを使用せずとも側縁部の変形なく、板厚の薄い、帯板と帯板とを摩擦攪拌接合でき、安定した品質の変形の無い接合帯板が安価に製造できる摩擦撹拌接合装置が提供される。
請求項9記載の発明は、側面同士が突き合わされた帯板1と帯板2とがプローブの埋入により突き合わせた帯板が幅方向に拡がらない様に、前記裏当てに幅方向拘束具が付設されている請求項7または8に記載の帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項9に記載の発明によれば、更に、幅方向拘束具との相対速度を抑えることができるので幅方向の拡大を拘束することが簡単で安価なため、プロテクターを使用せずとも側縁部の変形なく、板厚の薄い帯板と帯板とを摩擦攪拌接合でき、簡易な装置で安定した品質の変形の無い接合帯板が安価に製造できる摩擦撹拌接合装置が提供される。
【0020】
請求項10記載の発明は、前記幅方向拘束具が、回転ドラムの回転軸に垂直な方向に立設された一のリブと、突き合わせた帯板を挟んで回転ドラムの回転軸に垂直な方向に立設された他のリブと、前記突き合わせた帯板がプローブの埋入により幅方向に拡がらない様に前記リブ間の距離を拘束する拘束具にてなることを特徴とする請求項9記載の帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項10に記載の発明によれば、更に、幅方向の拡大を回転ドラムに立設されたリブで拘束できるので側縁部の変形がなく、簡易、安価に安定した品質の変形の無い接合帯板が安価に製造できる摩擦撹拌接合装置が提供される。
【0021】
請求項11記載の発明は、アンコイラー1に巻き取られている帯板1の突き合わせされる側の側面のなす平面と、アンコイラー2に巻き取られている帯板2の突き合わせされる側の側面のなす平面とが同一の平面を形成し、かつアンコイラー1の回転軸及びアンコイラー2の回転軸が前記同一の平面と垂直に交わることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項11に記載の発明によれば、更に、歪みや捻じれがない接合帯板が製造できる摩擦撹拌接合装置が提供される。
【0022】
請求項12記載の発明は、前記裏当てよりも帯板の下流側に突き合せ接合された帯板を巻き取るリコイラー又はピンチローラーを備え、前記リコイラー又は前記ピンチローラーには、帯板に張力を付与しつつ帯板を下流方向に移動させる機構を備えていることを特徴とする、請求項7乃至11のいずれかに記載の帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項12に記載の発明によれば、更に、帯板を摩擦撹拌ツールに対し確実に帯板の長さ方向に移動させることができる摩擦撹拌接合装置が提供される。
【0023】
請求項13記載の発明は、前記アンコイラーの帯板の繰り出し部分と前記帯板が前記裏当てと接する部分との間に、前記繰り出された帯板が前記ツールの埋入部よりも前記アンコイラーの帯板の繰り出し側に近い部分で裏当てに沿わせるための張力調整ローラーを有し、前記張力調整ローラーは、前記帯板1、2に、前記裏当てに近づける方向に押圧力を付加して、前記回転ドラムに前記帯板1、2を沿わせることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載の帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項13に記載の発明によれば、更に、前記回転ドラムに前記帯板をより確実に沿わせることができる摩擦撹拌接合装置が提供される。
【0024】
請求項14記載の発明は、前記摩擦攪拌接合装置は摩擦攪拌ツール、摩擦攪拌ツールを回転させる駆動機構、摩擦攪拌ツールを回転軸方向に移動させる駆動機構、摩擦攪拌ツールを埋入させるために回転軸方向に荷重を加える荷重機構を備えると共に、帯板の長手方向及び又は幅方向に摩擦攪拌ツールの回転軸の位置を変更しうるように摩擦攪拌ツールの回転軸位置変更駆動機構を有することを特徴とする請求項7乃至13のいずれかに記載の帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項14に記載の発明によれば、更に、摩擦攪拌装置の摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を帯板及び裏当てに対して変更できるので、安定した接合品質を得ることができる摩擦撹拌接合装置が提供される。
【0025】
請求項15記載の発明は、前記回転ドラムが回転軸の位置が帯板の長手方向に変更可能になるよう位置調整機構を有していることを特徴とする請求項8乃至14のいずれかに記載の帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項15に記載の発明によれば、更に、裏当て用回転ドラムの回転軸の位置を変更できるので、接合条件を調整し、安定した接合品質を得ることができる摩擦撹拌接合装置が提供される。
請求項16記載の発明は、前記ツール回転軸が前記回転ドラムの回転軸よりもアンコイラー寄りであることを特徴とする請求項8乃至15のいずれかに記載の帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項16に記載の発明によれば、更に、より安定した接合品質を得ることができる摩擦撹拌接合装置が提供される。
請求項17記載の発明は、前記摩擦攪拌接合部及び又は前記裏当ては、摩擦攪拌接合時の温度を一定に保つための温度調節機構を備えている請求項7乃至16のいずれかに記載の帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項17に記載の発明によれば、季節変動、長時間運転に対しても安定した接合品質を得ることができる摩擦撹拌接合装置が提供される。
【0026】
請求項18記載の発明は、前記リコイラー又は前記ピンチローラーの下流側に、接合された帯板を打ち抜く打ち抜き機構、切断する切断機構、切削する切削機構、研磨する研磨機構、圧延する圧延機構又はプレスするプレス機構が付帯されている請求項12に記載の帯板の摩擦攪拌接合装置である。
請求項18に記載の発明によれば、打ち抜き機構、切断機項、切削機構、研磨機構、圧延機構、又はプレス機構が付設されているのでライン中で前記各種加工が行える摩擦撹拌接合装置が提供される。
請求項19記載の発明は、前記摩擦攪拌ツールの材質が、Ni基化合物合金にてなることを特徴とする請求項7乃至18のいずれかに記載の帯板の連続摩擦攪拌接合装置である。
請求項19に記載の発明によれば、更に、摩擦攪拌ツールの材質が、Ni基化合物合金にてなるため、長尺の接合が、摩擦攪拌ツール交換の頻度が少なく連続してできる摩擦撹拌接合装置が提供される。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の発明によれば、板厚の薄い帯板と帯板とを、接合が難しくなく簡易に、接合品質高く、プロテクターを使用する必要がなく、接合に際して帯板の変形が起こり難く、幅方向に突合わせ摩擦攪拌接合して接合帯板を製造することができる。また、長尺の帯板同士であっても、更に異質材料の帯板同士であっても、突き合わせ摩擦攪拌接合して接合体を製造することができる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、板厚の薄い帯板と帯板とを、接合が難しくなく簡易に、接合品質高く、プロテクターを使用する必要がなく、接合に際して帯板の変形が起こり難く、幅方向に突合わせ摩擦攪拌接合して接合帯板を製造することができる摩擦撹拌接合装置が提供される。また、長尺の帯板同士であっても、更に異質材料の帯板同士であっても、突き合わせ摩擦攪拌接合して接合体を製造することができる摩擦撹拌接合装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明を
図1〜3に示した一実施形態を参照して説明する。この実施形態は、この発明に係る連続摩擦攪拌接合装置を用い、帯板を幅方向に接合することにより、長尺の接合体を製造しようとするものである。
【0031】
本発明における帯板とは、後述する凸状の曲面を有する裏当ての曲面に沿わせることのできる程度の可撓性を有し、回転する摩擦撹拌ツールが埋入されることにより軟化し接合できる材質にてなる一定の厚みを有しかつ一定の幅を有する長尺材をいう。
材質としては摩擦攪拌接合でき、可撓性を有すれば限られないが、金属又は合金及びそれらを母材とする複合材料が好ましく、鉄、鉄系合金、アルミ、アルミ合金、銅、銅合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、鉄−ニッケル系合金、マンガン合金、Cu−Mn系合金、Ni−Cu系合金、Ni−Cr系合金、Fe−Cr系合金、Mn−Cu−Ni系合金、Pt−Pd−Ag系合金、Pd−Pt系合金、Au−Ag系合金、Au−Pt−Ag系合金、Mn−Cu−Ni系合金が例示される。
【0032】
厚みは特に限定されないが、10μm〜10mm、好ましくは30μm〜3mmである。幅は特に限定されないが、数mm〜1m、好ましくは10mm〜50mmである。
表面と裏面が平行であることが好ましく、断面形状は特に限られないが平行四辺形、台形等が好ましく、長方形がより好ましい。
また接合する帯板の板厚は同じである必要は必ずしもないが、厚み比は1.5倍以下であることが好ましい。
長さは後述する凸状の曲面を有する裏当ての曲面に張力をかけて沿わせることができる長さ以上あればよく、30cm〜500m、好ましくは、1m〜300m、より好ましくは5m〜200mである。
【0033】
接合する帯板の材質は同じものであってもよいが、異質な材料間の接合が接合製品の機能上好ましく、例えば銅の帯板とMn−Cu−Ni系合金の帯板との組み合わせにてなる2条接合あるいは銅の帯板とMn−Cu−Ni系合金の帯板と銅の帯板との3条接合等に好適に用いることができる。
【0034】
図1は、この連続摩擦攪拌接合装置200の模式的な正面図、
図2はその平面図である。
図3は、この連続摩擦攪拌接合装置200を用いて、長尺の帯板1と長尺の帯板2を接合することによって長尺の接合体3を製造する様子を模式的に示す斜視図である。ただし、
図3では、アンコイラー4に巻き取られた帯板1の突き合わせされる側の側面のなす平面と、アンコイラー5に巻き取られた帯板2の突き合わせされる側の側面のなす平面が共に同一の平面Fを形成しているため、便宜上、この平面Fよりも奥(斜視した場合の平面の背後)にあるものを破線で示している。
尚、以下のいずれの図においても、帯板1、帯板2及び接合体3は装置を構成するものではなく、装置の使用状態を説明するために描いたものである。
【0035】
連続摩擦攪拌接合装置200は、巻き取られた一の金属製の帯板1を繰り出すアンコイラー4と、巻き取られた他の金属製の帯板2を繰り出す他のアンコイラー5と、前記繰り出された両帯板の側面同士を突合せ、摩擦攪拌ツール61を埋入して摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置6と、前記ツール61による前記帯板に対する押圧を帯板の裏面から支えるための裏当て7と、帯板の側面同士が突合せ摩擦攪拌接合された接合帯板である接合体3を巻き取るリコイラー8と、張力調整ローラー9及び張力調整ローラー10を備えている。
アンコイラー4に巻き取られた帯板1の突き合わせされる側の側面のなす平面と、アンコイラー5に巻き取られた帯板2の突き合わせされる側の側面のなす平面は同一の平面Fを形成し、両アンコイラーの回転軸41,51とリコイラーの回転軸81及び張力調整ローラー9の回転軸93と張力調整ローラー10の回転軸103は共に平面Fと垂直に交わっている。尚、前記ツール61の回転軸62は、接合が突き合わせ面上にある場合、すなわちツールオフセットが0の場合には、ツールの回転軸62も前記平面F上にある。
【0036】
上記アンコイラー4は、モータ部42と回転軸41からなり、回転軸41には帯板1が巻かれており、回転軸41の回転により帯板1が繰り出されるようにされている。上記アンコイラー5は、モータ部52と回転軸51からなり、回転軸51には帯板2が巻かれており、回転軸51の回転により帯板2が繰り出されるようにされている。
【0037】
アンコイラーは繰り出しに抵抗の無いものを用いてもよいが、その場合には別途張力を与える機構が必要で、例えばロールとロールで帯板を挟みロールが駆動回転するピンチロールのようなものを組み合わせて用いてもよい。
アンコイラーから帯板を繰り出すことに対する調整された抵抗力を有すれば、帯板に対し一定の張力を与えることができ、上記ピンチロールは不要となるため、上記アンコイラー4及び5には、帯板1及び2に張力を付与する張力付加装置機構を備えていることが好ましい。このような張力を付与する機構としては、例えば、モータの電磁力や、ブレーキによる摩擦などのトルクを発生、制御する機構が挙げられる。本実施の形態におけるアンコイラー4及び5には帯板1及び2に張力を付与する張力付加装置機構が備わっている。
【0038】
上記摩擦攪拌接合装置6は、摩擦攪拌ツール61を有しており、この摩擦攪拌ツール61(具体的には、後述の摩擦撹拌ツール本体611のプローブ612)を、両帯板の側面同士を突合せた突合せ面に埋入して摩擦攪拌接合する。
【0039】
摩擦攪拌接合に用いる摩擦攪拌ツール61は、摩擦攪拌接合するための回転と押し当て力を付与するための摩擦撹拌ツール本体611の先端に円柱状の回転子の端面、ショルダー面と称される、を有し、更にショルダー面に突設されたプローブ612を有している。本発明において、ショルダー面の形状は限定されず、平面、回転対称な凸な曲面、逆に回転対称な凹面又は渦巻き状の凹凸が形成された面等が用いられるが、回転軸に垂直な平面が好ましい。ショルダー面の外周の形状も特に限定されないが円形が好ましく用いられる。本実施の形態においてショルダー面は摩擦撹拌ツールの回転軸に垂直な平面状であり、外周は円形である。
【0040】
摩擦撹拌接合により、帯板1と帯板2の側面同士を接合するには、帯板1と帯板2の側面同士を突き合わせ、突き合わせ部又はその近傍に帯板表面から回転する上記摩擦攪拌ツール61のプローブ612を埋入して、ショルダー面下及びプローブが埋入された部分を可塑化させることにより行う。
【0041】
本発明において、プローブの形状も限定されない。通常円柱状、円錐台状、半球状等のものが用いられるが、撹拌効率を上げるためねじ状、断面多角形状、切削刃をプローブの回転軸に対し垂直に突出形成させたもの等が用いられてもよい。本実施の形態においてプローブは回転軸を中心とする円柱状である。
【0042】
摩擦撹拌ツールの材質は限定されないが、高温での連続加工に耐えるものが好ましく、接合対象となる抵抗合金や導電率の高い金属導体と化学的に親和して溶解したり反応したりしない材質のものが好ましい。このため例えばNi基合金等が好ましい。
【0043】
中でも原子パーセントで、Niが71.5%、Alが2%から9%、Vが10%から17%の範囲であるNi基2重複相金属間化合物合金が好ましい。
更に、Niを主成分とし且つAl:2〜9原子%,V:10〜17原子%,(Ta及び/又はW):0.5〜8原子%,Nb:0〜6原子%,Co:0〜6原子%,Cr:0〜6原子%を含む合計100原子%の組成の合計重量に対してB:10〜1000重量ppmを含むNi基金属間化合物合金又は、更にReを含む合金が好ましい。本実施の形態ではNi基金属間化合物合金を用いている。
【0044】
突き合わせ接合するためのプローブを埋入させるための摩擦攪拌ツールの回転軸の位置は帯板と帯板との突き合わせ部または、僅かにいずれかの帯板に偏っていてもよい。偏っている場合、突き合わせ面からの回転軸との距離をツールオフセット量というが、ツールオフセット量はプローブの半径以下であることが好ましい。
【0045】
ところで一般に摩擦撹拌接合では、プローブの回転方向と接合方向とが一致している側を「AD側、AS側、前進側又はアドバンシングサイド( a d v a n c i n g s i d e )」と呼び、一方、このアドバンシングサイドとは反対の側を「RT側、RS側、後退側又はリトリーティングサイド( r e tre a t i n g s i d e )」と呼ぶ。
【0046】
例えば、抵抗合金よりなる帯板と導電性金属よりなる帯板の側面同士を接合するには、導電性金属よりなる帯板をアドバンシングサイド(AD側又はAS側)に配して突き合わせ摩擦攪拌接合することが好ましい。
特に前記抵抗合金がCu86%、 Mn12%、Ni2%からなる合金であり、前記導電率の高い金属導体がCu(銅)である場合は銅の帯板をアドバンシングサイド(AD側又はAS側)に配して突き合わせ摩擦攪拌接合することが好ましい。
【0047】
又 この場合摩擦撹拌ツールの回転軸の中心は導電性金属よりなる帯板上又は突き合わせ面上であることが好ましい。摩擦撹拌ツールの回転軸の中心が抵抗合金よりなる薄板状体上にある場合は接合品質の良好なものが得られない場合があるからである。
【0048】
次に裏当てにつき説明する。摩擦撹拌ツールから帯板に対して、摩擦攪拌するための帯板の表面から裏面に向けて強い荷重がかかる。したがって摩擦撹拌ツールの裏側には裏当てがあてがわれる。本願発明が対象とする薄い被加工材である帯板の加工においては荷重を支え変形を防ぐためには摩擦撹拌ツールの直裏のみでは足らず広い面積で帯板を支えることが必要である。
【0049】
本願発明の裏当てには凸状の曲面を有する裏当てが用いられる。帯板の裏面を裏当てに沿わせて摩擦攪拌接合する。したがって凸状の曲面とは帯板の裏面に対し帯板の長さ方向に凸状に反った曲面であって、曲率が小さい即ち曲率半径が大きくゆるやかな曲面であることが好ましい。
【0050】
曲率半径の大きさは帯板が張力で曲面に沿わされることができれば限られないが、硬く厚い金属帯板を接合するには10cm以上が好ましい。曲率半径の上限は限られないが、装置の製造コスト上、製造ラインのレイアウト上、数m以下が好ましく、30cm以上1m以下がより好ましい。
【0051】
裏当ての凸状の曲面における帯板の幅方向成分は直線であり、長さ方向に帯板に対して凸の曲面(幅方向が直線であり、長さ方向の断面が円、楕円、放物線、双曲線等の一部またはその組み合わせをなすような場合(二次曲面))になっていることが好ましい。ただし、凸状の曲面の一部に滑らかに接する平面が含まれていても、始点と終点が少なくとも上記曲面を有しており全体として凸状の曲面を形成したものであってもよい。
【0052】
凸状の曲面の帯板の幅方向に相当する成分が直線のため、凸状の曲面の各部分において曲率中心が定まる。円筒状の面の場合、曲率中心は中心軸である。
【0053】
このような裏当てはたとえば細い径のローラーを密に並べローラーの外周面の包絡線が前記縦方向の断面が円、楕円、放物線、双曲線等の一部をなすようなものであってもよいが、構造が複雑になり、やはり帯板とは線接触にとどまり面接触しないため、回転ドラムや、無限軌道をなすベルト等のように連続した面で荷重を支えることが好ましく、帯板の接する面が円筒の側面をなす曲面のものすなわち回転ドラムが製造も運転も容易なため好ましい。
【0054】
帯板の裏面は裏当てに沿わされる。沿うとは裏当てと帯板が線あるいはごくわずかな面積で接するのではなく、摩擦撹拌ツールが埋入される近傍で、帯板が裏当てと面接触している状態をいう。摩擦撹拌ツールによる荷重による帯板の厚み方向の変形を防ぐためである。
裏当てに沿わせる前後で帯板に長さ方向に張力をかけて沿わせることが、帯板が裏当ての凸状面に均一に密着するため好ましい。沿わせるために板の表面からローラー等で押しつけることを併用してもよい。
摩擦撹拌ツールの埋入される箇所の前後にわたって帯板の長さ方向に数mm〜数m、好ましくは10cm〜1m、より好ましくは、20cm〜50cm、帯板が裏当てに面接触していることが好ましい。面接触することにより、摩擦撹拌ツールからの荷重が分散され厚み方向の変形が有効に抑止されるからである。
更に面接触した状態では、裏当てに沿わされた帯板の側面を、摩擦撹拌ツール埋入による幅方向への拡大を阻止するため、帯板側面を幅方向に拘束する必要がある。有効に阻止できなければやはり変形を生じるからである。この場合帯板側面を点状に拘束すると応力が集中して帯板の側縁が変形しやすくなるが、少なくとも沿わされた側面全体を拘束することにより、側面の変形を有効に防ぐことができるという効果も有する。
【0055】
裏当て面に沿わされた帯板と、帯板が沿わされている裏当ての表面部分とは速度差がないように等速で摩擦撹拌ツールに対し相対的に移動することが好ましい。速度差があれば帯板と裏当て面との間で摩擦が生じ、裏当てまたは接合製品に減耗または、傷付きが発生するおそれがあるからである。したがって、裏当てはその帯板に接する表面が帯板と等速で移動するように駆動されるか、もしくは、摩擦撹拌ツールから強い荷重及び帯板を裏当てに沿わせるための張力がかかっているので、裏当て面に沿わされた帯板と、帯板が沿わされている裏当ての表面部分とが等速になるように、帯板が沿わされた裏当て面が自由に抵抗なく摩擦攪拌ツールに対し移動するものが好ましい。特に、裏当てが回転するものであれば、回転自在にして低負荷で回転するようにして帯板と同速の周速になるように連れまわりできるものが、回転させるための駆動系や微妙な速度制御が不要になるため好ましい。
【0056】
前記裏当ては、摩擦攪拌接合時の温度を一定に保つための温度調節機構を備えていることが好ましい。季節変動、長時間運転に対しても安定した接合品質を得ることができるからである。
【0057】
次に、幅方向に拘束する方法及び装置につき説明する。
帯板1の側面と帯板2の側面とを突き合せて前記プローブが埋入される前後にわたり前記裏当ての凸状の曲面に沿わせて、前記側面が突き合わされた帯板1と帯板2が前記プローブの埋入により幅方向に拡がらない様に、前記突き合わされた帯板1と帯板2を幅方向に拘束した状態で、前記突き合わせ部またはその近傍に摩擦攪拌接合用のツールのプローブを埋入して接合する。
【0058】
拘束しなければ、摩擦撹拌接合用のツールのプローブが埋入されることにより幅方向に拡大しようとし、接合品が変形してしまうからである。
幅方向の拘束は、プローブが埋入される前後にわたり前記裏当ての凸状の曲面に沿わされた帯板に対して行う。
幅方向に拘束する方法については限られず、例えば帯板の表面から、帯板の長さ方向に平行な回転軸を有する複数の回転する弾性圧力ローラーにより拡がるのを防ぐこともできる。
【0059】
また、裏当てとは別に、裏当てに沿わされた帯板の側面を帯板の側面に添った幅方向拘束具にて拘束又は押圧して拡張を防いでもよい。ただ、帯板の移動に対し幅方向拘束具が固定したものであると、幅方向拘束具と帯板の側面との間で摩擦が生じるため、これを避けるためには幅方向拘束具も帯板乃至接合された帯板と等速で移動可能なものが好ましく、例えば裏当てが回転ドラムの場合には、幅方向拘束具も、回転ドラムの回転軸と同じ回転軸を有する、内径が回転ドラムと略同径の回転ドラムの円筒の底面に相当する面に隣接する輪体であって、輪体の側面が帯板の側面に接し押圧または拘束するようになっているものであってもよい。
【0060】
中でも、裏当てに幅方向に拘束する幅方向拘束具が備わっているのが、装置が簡単で確実に拘束できかつ同速であれば摩擦もないのでより好ましい。
裏当ての凸状の面に、突き合わせた帯板の幅に略等しい幅で、深さが略帯板の厚さの溝を設け、溝中を突き合わせた帯板が溝中で凸状の面に沿わされた状態でツールを埋入させてもよいし、裏当ての凸状の面に両側に突き合わせた帯板の幅の間隔をあけた略帯板の厚さまたはそれ以上の厚さの帯体を設け、帯体間で突き合わせた帯板が溝中で凸状の面に沿わされた状態でツールを埋入させてもよい。
【0061】
裏当てに幅方向に拘束する幅方向拘束具としては幅方向に拡大するのに対抗する押圧力を与える機構を有するものであってもよい。
例えば、突き合わせた帯板が回転ドラムに沿わされた部分の片側面を幅方向に固定し、突きあわされた帯板の反対方向の側面から押圧する機構等が挙げられる。押圧する手段は限定されないが、例えば、ばね材を介して締め付け力を得る方法などが挙げられる。
【0062】
本実施の形態の裏当て7は、帯板の幅方向の拡大を防ぐ幅方向拘束具を備えた回転可能な円筒形をした回転ドラム71であり、前記回転ドラム71の曲面状をしている側面部分に、前記帯板1,2及び接合された帯板である接合体3が沿わされ、前記回転ドラム71が前記帯板1,2及び接合された帯板である接合体3と連れ回りされるようになっているものである。温度調節は温度調整用のヒーター又はチラー、あるいは、一定温度の熱媒体を通過させることにより行うことができる。本実施の形態ではヒーターとチラーの組み合わせにより温度調節している。
【0063】
前記回転ドラム71は、その回転軸711の位置が帯板1,2の長さ方向に変更可能になるように位置調整機構を有していることが好ましい。本実施の形態では回転ドラムの回転軸が沿わされる帯板の長さ方向に前後に移動可能なようにスライドできその位置が固定可能なようにされている。この回転ドラムについては、後に、詳しく述べる。
【0064】
帯板の側面同士が突合せ摩擦攪拌接合された接合帯板である接合体3を巻き取るリコイラー8は、モータ部82と回転軸81と巻き取り駆動部と、張力調整機構とからなり、回転軸81の回転により接合体3が巻きとられるようにされている。
リコイラーにおいても、巻き取り張力調整機構を有しているものが好ましいため、モータの電磁力や、ブレーキによる摩擦などのトルクを発生、制御する機構の調整機構が付設されている。別途張力を与える機構、例えばロールとロールで接合された帯板を挟みロールが回転することにより接合された帯板に張力を与えつつ接合された帯板の長さ方向に送るピンチローラーのようなものでもよいが、長尺の場合、後に巻き取る必要が生じるので、調整された巻き取り張力を有するリコイラーを用いることが簡易で好ましい、
このため、本実施の形態のリコイラー8は巻き取り力を有しその巻き取り力が調整可能にされている。リコイラー8の調整された巻き取り力により、帯板を裏当てに沿わせる一定の張力を付加することができ、かつアンコイラーと同調することにより、一定の張力を与えた状態で帯板を摩擦撹拌ツールに対し移動させることができる。
【0065】
前記リコイラーの下流側若しくはリコイラーの代わりにあるいはリコイラーとの間に、帯板を移動させるための駆動機構としてピンチローラーを設け、その下流側に、接合された帯板を打ち抜く打ち抜き機構、切断する切断機構、切削する切削機構、研磨する研磨機構、圧延する圧延機構又はプレスするプレス機構を設け、接合された帯板を、打ち抜き、切断、切削、研磨、圧延またはプレス等することもできる。このような接合体のライン内二次加工においては、二次加工工程をライン速度に同期させておくことが好ましい。
【0066】
連続摩擦攪拌接合装置200において、アンコイラー4に巻き取られた帯板1の突き合わせされる側の側面のなす平面と、アンコイラー5に巻き取られた帯板2の突き合わせされる側の側面のなす平面は同一の平面Fを形成し、両アンコイラーの回転軸41,51とリコイラーの回転軸81及び張力調整ローラー9の回転軸93と張力調整ローラー10の回転軸103は共に平面Fと垂直に交わっている。
【0067】
上記の平面Fを説明するために、
図3の斜視図において、便宜上、この平面Fよりも奥(斜視した場合の平面の背後)にあるものを破線で示している。また、この平面Fよりも手前にあるものは実線で示した。尚、前記ツール61の回転軸62は、接合が突き合わせ面上にある場合、すなわちツールオフセットが0の場合には、前記ツールの回転軸62も前記平面F上にある。
図3はツールオフセットが0の場合を示している。
図3では、一の金属製帯板1の側面と、前記側面と突合せされる他の金属製の帯板2の側面が突き合わされた突合せ面Pを含む平面も上記の平面F上にある。
【0068】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置200は、好ましくは、前記アンコイラー4,5の帯板の繰り出し部分43、53と、前記帯板が前記回転ドラム71と接する部分との間に、更に裏当てに沿わせるための裏当て方向に押しつける成分を有する張力を付加できるように張力調整ローラー9を有し、前記張力調整ローラー9の外周面91の最低部92は、前記両部分を結ぶ平面(すなわち、アンコイラーの帯板の繰り出し部分と前記帯板が前記回転ドラムと接する部分を結ぶ平面のこと。アンコイラーの帯板の繰り出し部分は、アンコイラーの外周面に沿って1本の直線で表され、帯板が前記回転ドラムと接する部分も回転ドラムの外周面(回転ドラムの曲面状をしている側面部のこと)に沿って1本の直線で表されるが、この2つの直線を結ぶ平面のこと)よりも下方に位置されており、前記張力調整ローラー9の下面に前記帯板1,2を沿わせてから、前記回転ドラム71に前記帯板1,2を沿わせるようにされている。すなわち、前記張力調整ローラー9は、前記帯板1、2に、前記裏当てに近づける方向に押圧力を付加して、前記回転ドラムに前記帯板1、2を沿わせる。
【0069】
なお、張力調整ローラー9の回転軸93は、摩擦攪拌ツール61の回転軸62を有する平面に対し、垂直に交っている。
【0070】
前記張力調整ローラー9の回転軸93の位置は、前記両部分を結ぶ平面(すなわち、アンコイラーの帯板の繰り出し部分と前記帯板が前記回転ドラムと接する部分を結ぶ平面)からの距離が可変なようにされていることが好ましい。張力調整ローラー9は帯板と連れまわりしていてもよいし、摩擦撹拌ツールに対する帯板の移動力を補助するため回転駆動されていてもよい。
【0071】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置200は、好ましくは、前記リコイラー8の接合体3の巻き取り部分83と前記接合体3が前記回転ドラム71と接する部分との間に、更に、接合された帯板が回転ドラムに沿うように張力を調整するための張力調整ローラー10を有し、前記張力調整ローラー10の外周面101の最低部102は、前記両部分を結ぶ平面(すなわち、リコイラー8の接合体3の巻き取り部分83と前記接合体3が前記回転ドラム71と接する部分を結ぶ平面のこと。リコイラー8の接合体3の巻き取り部分83は、リコイラー8の外周面に沿って1本の直線で表され、接合体3が前記回転ドラム71と接する部分も回転ドラムの外周面(回転ドラムの曲面状をしている側面部のこと)に沿って1本の直線で表されるが、この2つの直線を結ぶ平面のこと)よりも下方に位置されており、前記張力調整ローラー10の下面に前記接合体3を沿わせてから、前記リコイラー8に前記接合体3を巻き取らせるようにされている。
【0072】
なお、張力調整ローラー10の回転軸103は、摩擦攪拌ツール61の回転軸62を有する平面に対し、垂直に交っている。本実施の形態では帯板の移動と同周速で回転するように駆動されている。
【0073】
前記張力調整ローラー10の回転軸103の位置は、前記両部分を結ぶ平面(すなわち、リコイラー8の接合体3の巻き取り部分83と前記接合体3が前記回転ドラム71と接する部分を結ぶ平面)からの距離が可変なようにされていることが好ましい。
【0074】
図4は、本実施形態の回転ドラム71の要部を模式的に示す平面図であり、
図4(a)は、接合のための帯板が存在しない状態、
図4(b)は接合作業中の状態である。以下、
図4を参照しつつ説明する。回転ドラム71は円筒体からなる回転ドラム本体712と回転軸711とドラム軸受け713とからなり、ドラム軸受け713がドラム軸受け台714(
図1、2に記載)の上に載っている。
【0075】
この回転ドラム71は、前記回転ドラム71の曲面状をしている側面部分715に、前記帯板1,2及び接合された帯板である接合体3が沿わされ、前記回転ドラム71が前記帯板1,2及び接合された帯板である接合体3と連れ回りされるようになっている。
回転ドラムの回転軸の位置は帯板の長さ方向に対し、前後に移動可能にされている。後述するが、プローブの埋入される位置を裏当てに対し調整できるため好ましいからである。
【0076】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置200においては、回転ドラム本体712の曲面状をしている側面部分715に沿わされた一の帯板1の一の側面11と他の帯板2の一の側面21とが突合わされた状態で、幅方向の拡大を防ぐため、少なくとも一の帯板1の他の側面12又は他の帯板2の他の側面22のいずれかまたは両方から前記突合わせ部に向かう方向に押圧力を与える機構を有することが好ましい。押圧力を与える機構としては、突き合わせた帯板が回転ドラムに沿わされた部分の片側面を幅方向に固定し、突きあわされた帯板の反対方向の側面から押圧する機構等が挙げられ、押圧する手法としては、ばね材を介して締め付け力を得る方法などが挙げられる。
【0077】
図4に示した回転ドラム71においては、回転ドラム本体712の曲面状をしている側面部分715の端部716に前記一の帯板2の他の側面22に接するリブ720が立設されており、前記他の帯板1の他の側面12に接し押圧するための押圧手段が前記回転ドラムに付設されている。前記押圧手段としては、バネ730を有し、回転ドラム本体712の内部を貫通しているボルト731のナット732を締めることにより、押し付け板740をバネ730が押し付け、それにより上記押し付け板740の回転ドラム本体712側に隣接された可動性のリブ750が回転ドラム本体712側に押し付けられ、回転ドラム本体712上に存在する帯板の側面に接し帯板を押圧するものである。上記のバネ730を有し、回転ドラム本体712の内部を貫通しているボルト731は、複数個設けられており、それにより上記押し付け板740が可動性のリブ750をバランスよく押圧できるようにされている。
【0078】
尚、幅方向に拘束する幅方向拘束具として、回転ドラム本体712の曲面状をしている側面部分715に、接合する帯板と帯板を合わせた幅と略同幅の溝が設けられていてその溝中に帯板と帯板が側面が突き合わせ状態で導かれるものであっても良い。溝の側壁にて、幅方向の拡大が抑止されるからである。
【0079】
図4(b)は、この回転ドラム71の接合作業中の状態である。接合される帯板は矢印で示した方向に進行する。まず、一の帯板1の一の側面11と他の帯板2の一の側面21とが突合わされた状態で、回転ドラム本体712の曲面状をしている側面部分715に帯板が沿わされる。一の帯板1の他の側面12側に前記押圧手段によって押圧された可動性のリブ750が当接し、他の帯板2の他の側面22にはリブ720が当接しているので、帯板1の一の側面11と他の帯板2の一の側面21とが突合わされた面は、強固に密着する。この状態で回転ドラム71の頂点近傍で突合わされた面に、摩擦攪拌ツール61の摩擦撹拌ツール本体611のプローブ612が埋入されても、幅方向に拡大することが抑止されかつ張力により回転ドラムに沿わされているため変形せずに摩擦攪拌接合される。接合された後の接合体3は、矢印方向に進行して最終的にはリコイラーに巻き取られる。
【0080】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置において、摩擦撹拌ツールの回転軸と、プローブが帯板に埋入される帯板の接平面との、帯板の未接合側からの、なす角度が鈍角であることが好ましい。
図5に基づき説明する。
図5(a)は凸状の曲面を有する裏当て7に帯板1と帯板2が側面が互いの側面を突き合わされて、裏当て7に対し両側斜め下方から張力により曲面に沿わされていて、そこに摩擦撹拌ツール本体611のプローブ(摩擦撹拌ツール本体611の先端にあり、帯板突き合わせ部に埋入されているため図ではプローブは見えない)が挿入されている状態の斜視図である。プローブが挿しこまれている部分における裏当て7に沿わされた帯板の表面には、裏当て7は幅方向成分が直線のため、プローブが挿しこまれている部分に接する接平面Hがあり、その接平面Hと摩擦撹拌ツール本体611の回転軸62とのなす角θが鈍角であることを示すものである。なお、簡潔にするため、幅方向の拡大を拘束するための幅方向拘束具は図では省略している。
【0081】
図5(b)は、
図5(a)の側面図である。帯板が凸状の曲面を有する裏当て7に沿わされた状態で、接平面Hと摩擦撹拌ツールの回転軸62のなす、裏当て7に帯板が供給される側(供給側がわかりやすいように図中、帯板の移動方向を矢印で示した)から摩擦撹拌ツール本体611に向かってゆく側における、角θが鈍角であることを表している。
図5では強調するためにθを過大にして示しているが、θは90°<θ<130°が好ましく、91°<θ<110°、より好ましくは、92°<θ<95°である。
本発明では突き合わせ接合するため、裏当てに帯板を沿わせる際に片方の帯板が他の帯板に乗り上げるという不具合が発生することがある。摩擦撹拌ツールを挿入すると、乗り上げを抑制する効果がある。この場合摩擦撹拌ツールの回転軸が帯板表面と垂直の場合には、ショルダーの前面が材料に挿入され過ぎるため、材料がえぐれてしまい乗り上げ抑制効果が小さい。この場合には乗り上げ防止のための機構を設けることが好ましい。一方摩擦撹拌ツールの回転軸と接平面のなす角度θを鈍角にすれば、乗り上げを効果的に抑止でき、乗り上げ防止のための機構がなくても乗り上げ無し接合できるからである。
【0082】
このため、摩擦撹拌ツールの回転軸が沿直又は製造ラインの床面に対し垂直である場合には、摩擦撹拌ツールのプローブを帯板に埋入する帯板の長さ方向の位置が、前記凸状の面のプローブが埋入される曲面部分の曲率中心を有する軸よりも前(帯板が裏当てに対し供給される側)であることが好ましい。
よって、例えば凸状の曲面が円筒の側面状である回転ドラムの場合には、円筒側面の曲率中心はドラムの回転軸に一致するが、摩擦撹拌ツールのプローブを帯板に埋入する帯板の長さ方向の位置は、回転ドラムの中心よりも帯板の供給される側(アンコイラー側)に偏していることが好ましい。
本実施例では摩擦攪拌ツール61の摩擦撹拌ツール本体611の回転軸62は、回転軸62が沿直方向であるため、回転ドラム71の回転軸711よりもアンコイラー寄りに設置されている。
【0083】
図6は、摩擦攪拌ツールの摩擦撹拌ツール本体611のプローブ612が突合わせ面Pに埋入される様子を説明するための図であり、
図4(b)のV−V線断面の端面図をやや拡大した拡大端面図で示した、回転ドラム本体712上に突合わせ面Pが沿わされたものに、摩擦攪拌ツールの摩擦撹拌ツール本体611のプローブ612が突合わせ面Pに埋入される様子を示した説明図である。なお、上記の端面図においては、ボルト731の描画はしていない。
【0084】
本発明において、
図6(a)のように、摩擦攪拌ツールの摩擦撹拌ツール本体611の回転軸62が、回転ドラム本体712の回転軸711の中心Oから回転ドラムの頂点Tに向けて垂直に伸ばした直線R上にあってもよい(すなわち、摩擦攪拌ツールの摩擦撹拌ツール本体611の回転軸62の延長線が回転ドラム71の回転軸711と交わる)。しかしながら、
図6(b)に示すように、摩擦攪拌ツールの摩擦撹拌ツール本体611の回転軸62が、回転ドラム本体712の回転軸711の中心Oから回転ドラムの頂点Tに向けて垂直に伸ばした直線Rよりも、Sだけアンコイラー寄りになるように回転ドラムの軸の位置を調整し設定している。
【0085】
摩擦攪拌ツールの摩擦撹拌ツール本体611の回転軸62が、Sだけアンコイラー寄りにあると、帯板の表面P(突合せ面)と摩擦攪拌ツール本体611のショルダー613面との間に隙間63が形成され易いので、摩擦撹拌ツールのショルダー面に対し帯板の接する角度が斜めになるため、接合品質が良く安定した接合ができるからである。
このため摩擦撹拌ツール回転軸と裏当てとの帯板の長さ方向の距離はこのため相対的に可変にされていることが好ましく、摩擦攪拌接合装置と、裏当てのいずれかまたはいずれもが移動可能にされていることが好ましい。
【0086】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置においては、摩擦攪拌ツール、摩擦撹拌ツールを回転させる駆動機構、摩擦撹拌ツールを回転軸方向に移動させる駆動機構、摩擦撹拌ツールを埋入させるために回転軸方向に荷重を加える荷重機構を備えると共に、帯板の長手方向及び又は幅方向に摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を変更しうるように摩擦撹拌ツールの回転軸位置変更駆動機構を有することが好ましい。ここで摩擦撹拌ツールを回転軸方向に移動させる駆動機構とは、装置の運転始動時においては摩擦撹拌ツールの先端にあるプローブを帯板から離しておき、摩擦撹拌ツールが一定の回転数に達した時点で摩擦撹拌ツールを帯板方向に移動させてプローブを埋入させるためのものである。
【0087】
帯板の長さ方向に前後に摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を調整変更するのは、接合用材料により、摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を、裏当ての曲面に対し相対的に移動し、摩擦撹拌ツールの回転軸と埋入される位置における帯板表面の接平面とのなす角(θ)を調節し、好適な接合品質がえられるように調整できるからである。
【0088】
帯板の幅方向に前後に摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を調整変更するのは、接合用材料の幅と材質の組み合わせにより、摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を、突き合わせ部又は材質の組み合わせにより適宜なオフセット量を調節することができるので、好適な接合品質が得られるからである。
【0089】
次に、上記の連続摩擦攪拌接合装置200を用いて、帯板1と帯板2を接合することによって接合体3を製造する方法を説明する。
【0090】
アンコイラー4から帯板1を繰り出し、アンコイラー5から帯板2を繰り出し、前記繰り出された両帯板の側面同士を突合せ、突き合わせた両帯板を張力調整ローラー9の外周面91の下面に沿わせた後、
図4に示した回転ドラム71の回転ドラム本体712の曲面状をしている側面部分715の上に沿わせ、さらに、張力調整ローラー10の外周面101の下面に沿わせた後、リコイラー8に巻き取らせるようにさせる。
【0091】
回転ドラムの回転軸の位置を、摩擦撹拌ツール回転軸と帯板の接平面とのなす角度が適当な値の鈍角になるように前後に微調整し固定する。
回転ドラムの温度を定温に維持できるよう、ヒーター及びチラーを運転する。
【0092】
次に、回転ドラム本体712の内部を貫通しているボルト731のナット732を締めることにより、押し付け板740をバネ730が押し付け、それにより上記押し付け板740に隣接された可動性のリブ750が回転ドラム本体712側に押し付けられ、回転ドラム本体712上に存在する突合せされた帯板の突合せ面とは反対側の一側面を押圧する。回転ドラム本体712上に存在する突合せされた帯板の突合せ面とは反対側の他の側面にはリブ720が存在するので、回転ドラム本体712上に存在する突合せされた帯板は、リブ720とリブ750に挟まれて突合せ面が強固に密着される。
【0093】
この状態で、張力調整ローラー9と張力調整ローラー10の位置(高さ)を調節して、突き合わせた両帯板に十分な張力がかかるようにする。
【0094】
摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を、帯板の突き合わせ部に対する位置を突き合わせ部上または適当なオフセット量になるように帯板の幅方向に微調整し固定する。
【0095】
次に、摩擦攪拌接合装置6の摩擦攪拌ツール61を回転させる。摩擦撹拌ツール61が一定の回転数に達した時点で摩擦撹拌ツール61を帯板方向に移動させて、プローブ612を帯板の突き合わせ部又はその近傍に埋入させ、プローブが埋入された部分及びショルダー613面下を可塑化させる。摩擦攪拌接合に必要な可塑化がされたところで、モータ部82と回転軸81と巻き取り張力調整機構とからなるリコイラー8のモータ部82を動かし、回転軸81を回転させ、帯板を移動させ、突合わされた帯板をリコイラー8に巻き取る。また、上記のリコイラー8のモータ部82の作動と同時に、アンコイラー4のモータ42、及び、アンコイラー5のモータ52も作動させ、帯板を繰り出すようにする。リコイラー8に2つの帯板が接合された接合体3が巻き取られるようになる。
【0096】
上記のようにして、接合体を連続して接合品質よく、変形による歪がなく、良好に製造することができたが、具体的な製造条件などは、以下の通りであった。
帯板1:材質は銅系のC1020。横幅は37mm。長さは100m。厚さは2.0mm。
帯板2:材質は、マンガニン。横幅は10mm。長さは100m。厚さは2.0mm。
回転ドラムの直径は、500mm。回転ドラムに接触した帯板の長さは、約500mm。
張力は、1kg重/mm
2。
帯板の移動速度は、100mm/min。
摩擦撹拌ツール材質は、Ni基2重複相金属間化合物合金。
摩擦撹拌ツール本体611の回転軸62とプローブが帯板に埋入される帯板の接平面とのなす角度θは94°。
直線Rと摩擦撹拌ツール本体611の回転軸62までの距離Sは17mm。
摩擦撹拌ツールの回転速度は、800rpm〜1200rpm。
摩擦撹拌ツールの荷重は、約500kg重。
回転ドラム温度は50℃。
【0097】
以下、この発明の第2の実施形態を
図7、
図8を参照して説明する。この実施形態は、この発明に係る連続摩擦攪拌接合装置300を用い、3条の長尺の帯板を接合することによって長尺の接合体を製造するものである。その際に、先ず2条の帯板の接合体を作製し、次いで、それに第3の帯板を接合するものである。
【0098】
図7は、この連続摩擦攪拌接合装置300の模式的な正面図、
図8はその平面図である。いずれの図においても、帯板1、帯板2、帯板2A、接合体3及び接合体3Aは装置を構成するものではなく、装置の使用状態を説明するために描いたものである。
【0099】
連続摩擦攪拌接合装置300は、巻き取られた一の金属製の帯板1を繰り出すアンコイラー4と、巻き取られた他の金属製の帯板2を繰り出す他のアンコイラー5と、前記繰り出された両帯板の側面同士を突合せ、摩擦攪拌ツール61を埋入して摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置6と、前記ツール61による前記帯板に対する押圧を帯板の裏面から支えるための裏当て7と、帯板の側面同士が突合せ摩擦攪拌接合された接合帯板である接合体3と、巻き取られた一の金属製の帯板2Aを繰り出すアンコイラー5Aと、前記接合体3と、前記引き出された帯板2Aの側面同士を突合せ、摩擦攪拌ツール61Aを埋入して摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置6Aと、前記ツール61Aによる前記帯板に対する押圧を帯板の裏面から支えるための裏当て7Aと、接合体3と帯板2Aの側面同士が突合せ摩擦攪拌接合された被接合帯板である接合体3Aを巻き取るリコイラー8Aと、張力調整ローラー9と張力調整ローラー10と張力調整ローラー9Aと張力調整ローラー10Aとを備えている。
【0100】
上記連続摩擦攪拌接合装置300のうち、「巻き取られた一の金属製の帯板1を繰り出すアンコイラー4と、巻き取られた他の金属製の帯板2を繰り出す他のアンコイラー5と、前記繰り出された両帯板の側面同士を突合せ、摩擦攪拌ツール61を埋入して摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置6と、前記ツール61による前記帯板に対する押圧を帯板の裏面から支えるための裏当て7と、帯板の側面同士が突合せ摩擦攪拌接合された接合帯板である接合体3」までは、連続摩擦攪拌接合装置200と同様である。したがって、連続摩擦攪拌接合装置200と同じ機能を有するものに同じ符号を付すことによりその説明は省略する。
連続摩擦攪拌接合装置300は、アンコイラー4に巻き取られた帯板1の突き合わせされる側の側面のなす平面と、アンコイラー5に巻き取られた帯板2の突き合わせされる側の側面のなす平面は同一の平面を形成し、両アンコイラーの回転軸41,51とリコイラーの回転軸81Aと張力調整ローラー9の回転軸と張力調整ローラー10の回転軸と張力調整ローラー9Aの回転軸93Aと張力調整ローラー10Aの回転軸103Aは共に前記の同一の平面と垂直に交わっている。尚、前記ツール61の回転軸62は、接合が突き合わせ面上にある場合、すなわちツールオフセットが0の場合には、ツールの回転軸62も前記同一の平面上にある。
【0101】
連続摩擦攪拌接合装置300においては、帯板1と帯板2の側面同士が突合せ摩擦攪拌接合によって接合された接合体3の下流に、巻き取られた一の金属製の帯板2Aを繰り出すアンコイラー5Aが設けられ、前記接合体3と、前記繰り出された帯板2Aの側面同士を突合せ、摩擦攪拌ツール61Aを埋入して摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置6Aと、前記ツール61Aによる前記帯板に対する押圧を帯板の裏面から支えるための裏当て7Aと、接合体3と帯板2Aの側面同士が突合せ摩擦攪拌接合された接合帯板である接合体3Aを巻き取るリコイラー8Aとが設けられている。
【0102】
連続摩擦攪拌接合装置300では、接合体3の突き合わせされる側の側面は、アンコイラー5Aに巻き取られた帯板2Aの突き合わせされる側の側面のなす平面上にあり、この平面に、アンコイラー5Aの回転軸51Aとリコイラー8Aの回転軸81Aと張力調整ローラー9Aの回転軸93Aと張力調整ローラー10Aの回転軸103Aが垂直に交わっている。尚、前記ツール61Aの回転軸62Aは、接合が突き合わせ面上にある場合、すなわちツールオフセットが0の場合には、前記ツールの回転軸62Aも前記平面上にあり、この前記平面上に、接合体3の側面と、前記側面と突合せされる金属製の帯板2Aの側面の突合せ面P1を含む平面がある。
【0103】
上記アンコイラー5Aは、モータ部52Aと回転軸51Aからなり、回転軸51Aには帯板2Aが巻かれており、回転軸51Aの回転により帯板2Aが繰り出されるようにされている。
【0104】
上記アンコイラー5Aには、巻き戻しに対する調整された抵抗力を示すことにより、帯板2Aに一定の張力を付与する機構を備えていることが好ましい。このような一定の張力を付与する機構としては、例えば、モータの電磁力や、ブレーキによる摩擦などのトルクを発生、制御する機構が挙げられる。このため本実施形態のアンコイラー5Aは巻き戻しに対する調整された抵抗力を示すことにより、帯板2Aに張力を付与する機構を備えている。
【0105】
上記摩擦攪拌接合装置6Aは、摩擦攪拌ツール61Aを有しており、この摩擦攪拌ツール61Aの摩擦撹拌ツール本体611Aのプローブ612Aを、接合体3の側面と帯板2Aの側面同士を突合せた突合せ面P1に埋入して摩擦攪拌接合する。
【0106】
摩擦攪拌接合に用いる摩擦攪拌ツール61Aは、前述の摩擦攪拌ツール61と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0107】
前記ツール61Aによる前記帯板に対する押圧を帯板の裏面から支えるための裏当て7Aとしては、その形状は、平板状、曲面を有するものなどがあり、好ましい裏当て7Aとしては、回転可能な円筒形をした回転ドラム71Aであり、前記回転ドラム71Aの曲面状をしている側面部分に、接合体3、帯板2A及び接合された帯板である接合体3Aが沿わされ、前記回転ドラム71Aが接合体3、帯板2A及び接合された帯板である接合体3Aと連れ回りされるようになっているものである。
【0108】
前記回転ドラム71Aは、その回転軸711Aの位置が接合体3、帯板2Aの長手方向に変更可能になるように位置調整機構を有していることが好ましい。本実施の形態では回転ドラムの回転軸が沿わされる帯板の長さ方向に前後に移動可能なようにスライドできその位置が固定可能なようにされている。回転ドラム71Aは回転ドラム71と同様であるので詳細な説明は省略する。また、本実施の形態でも、ヒーターとチラーの組み合わせにより温度調節している。
【0109】
帯板の側面同士が突合せ摩擦攪拌接合された接合帯板である接合体3Aを巻き取るリコイラー8Aは、モータ部82Aと回転軸81Aと巻き取り駆動部と、張力調整機構とからなり、回転軸81Aの回転により接合体3Aが巻きとられるようにされている。リコイラー8Aにおいても、巻き取り張力調整機構を有しているものが好ましいため、モータの電磁力や、ブレーキによる摩擦などのトルクを発生、制御する機構の調整機構が付設されている。
リコイラー8Aの調整された巻き取り力により、帯板および接合された帯板を裏当てに沿わせるための一定の張力を付加することができ、かつ各アンコイラーと同調することにより、一定の張力を与えた状態で摩擦撹拌ツールに対し移動させることができる。
【0110】
前記リコイラーの下流側若しくはリコイラーの代わりにあるいはリコイラーとの間に、帯板を移動させるための駆動機構としてピンチローラーを設け、その下流側に、接合された帯板を打ち抜く打ち抜き機構、切断する切断機構、切削する切削機構、研磨する研磨機構、圧延する圧延機構又はプレスするプレス機構を設け、接合された帯板を、打ち抜き、切断、切削、研磨、圧延またはプレス等することもできる。このような接合体のライン内二次加工においては、二次加工工程をライン速度に同期させておくことが好ましい。
【0111】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置300は、好ましくは、前記アンコイラー5Aの帯板2Aの繰り出し部分53Aと、前記帯板2Aが前記回転ドラム71Aと接する部分との間に張力調整ローラー9Aを有し、前記張力調整ローラー9Aの外周面91Aの最低部92Aは、前記両部分を結ぶ平面(すなわち、アンコイラーの帯板の繰り出し部分と前記帯板が前記回転ドラムと接する部分を結ぶ平面のこと。アンコイラーの帯板の繰り出し部分は、アンコイラーの外周面に沿って1本の直線で表され、帯板が前記回転ドラムと接する部分も回転ドラムの外周面(回転ドラムの曲面状をしている側面部のこと)に沿って1本の直線で表されるが、この2つの直線を結ぶ平面のこと)よりも下方に位置されており、前記張力調整ローラー9Aの下面に前記接合体3,帯板2Aを沿わせてから、前記回転ドラム71Aに前記接合体3,帯板2Aを沿わせるようにされている。すなわち、前記張力調整ローラー9Aは、前記接合体3,帯板2Aに、前記裏当てに近づける方向に押圧力を付加して、前記回転ドラムに前記接合体3,帯板2Aを沿わせる。
【0112】
なお、張力調整ローラー9Aの回転軸93Aは、摩擦攪拌ツール61Aの回転軸62Aを有する平面に対し、垂直に交っている。
【0113】
前記張力調整ローラー9Aの回転軸93Aの位置は、前記両部分を結ぶ平面(すなわち、アンコイラーの帯板の繰り出し部分と前記帯板が前記回転ドラムと接する部分を結ぶ平面)からの距離が可変なようにされていることが好ましい。張力調整ローラー9Aは帯板と連れまわりしていてもよいし、摩擦撹拌ツールに対する帯板の移動力を補助するため回転駆動されていてもよい。
【0114】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置300は、前記リコイラー8Aの接合体3Aの巻き取り部分83Aと前記接合体3Aが前記回転ドラム71Aと接する部分との間に、好ましくは、更に、接合された帯板が回転ドラムに沿うように張力を調整するための張力調整ローラー10Aを有し、前記張力調整ローラー10Aの外周面101Aの最低部102Aは、前記両部分を結ぶ平面(すなわち、リコイラー8Aの接合体3Aの巻き取り部分83Aと前記接合体3Aが前記回転ドラム71Aと接する部分を結ぶ平面のこと。リコイラー8Aの接合体3Aの巻き取り部分83Aは、リコイラー8Aの外周面に沿って1本の直線で表され、接合体3Aが前記回転ドラム71Aと接する部分も回転ドラムの外周面(回転ドラムの曲面状をしている側面部のこと)に沿って1本の直線で表されるが、この2つの直線を結ぶ平面のこと)よりも下方に位置されており、前記張力調整ローラー10Aの下面に前記接合体3Aを沿わせてから、前記リコイラー8Aに前記接合体3Aを巻き取らせるようにされている。
【0115】
なお、張力調整ローラー10Aの回転軸103Aは、摩擦攪拌ツール61Aの回転軸62Aを有する平面に対し、垂直に交っている。本実施の形態では帯板の移動と同速で回転するように駆動されている。
【0116】
前記張力調整ローラー10Aの回転軸103Aの位置は、前記両部分を結ぶ平面(すなわち、リコイラー8Aの接合体3Aの巻き取り部分83Aと前記接合体3Aが前記回転ドラム71Aと接する部分を結ぶ平面)からの距離が可変なようにされていることが好ましい。
【0117】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置300においても、連続摩擦攪拌接合装置200と同様に回転ドラム本体の曲面状をしている側面部分に沿わされた接合体3の一の側面と帯板2Aの一の側面とが突合わされた状態で、幅方向の拡大を防ぐため、少なくとも接合体の他の側面又は帯板2Aの他の側面のいずれかまたは両方から前記突合わせ部に向かう方向に押圧力を与える機構を有することが好ましい。押圧力を与える機構としては、連続摩擦攪拌接合装置200と同様に、突き合わせた帯板が回転ドラムに沿わされた部分の片側面を幅方向に固定し、突きあわされた帯板の反対方向の側面から押圧する機構等が挙げられ、
押圧する手法としては、ばね材を介して締め付け力を得る方法などが挙げられる。本実施の形態では
図4に示したものと同様の機構が使用された。
【0118】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置300において、摩擦攪拌ツール61Aの摩擦撹拌ツール本体611Aの回転軸62Aと回転ドラム71Aの回転軸711Aとの位置関係は、連続摩擦攪拌接合装置200における、
図6に示した摩擦攪拌ツール61の摩擦撹拌ツール本体611の回転軸62と回転ドラム71の回転軸711との位置関係と同様であり、本実施の形態では、摩擦攪拌ツール61A及び回転ドラム71Aとして、連続摩擦攪拌接合装置200における、摩擦攪拌ツール61及び回転ドラム71と同様のものが使用された。
【0119】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置300においては、摩擦攪拌ツール、摩擦撹拌ツールを回転させる駆動機構、摩擦撹拌ツールを回転軸方向に移動させる駆動機構、摩擦撹拌ツールを埋入させるために回転軸方向に荷重を加える荷重機構を備えると共に、帯板の長手方向及び又は幅方向に摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を変更しうるように摩擦撹拌ツールの回転軸位置変更駆動機構を有することが好ましい。ここで摩擦撹拌ツールを回転軸方向に移動させる駆動機構とは、装置の運転始動時においては摩擦撹拌ツールの先端にあるプローブを帯板から離しておき、摩擦撹拌ツールが一定の回転数に達した時点で摩擦撹拌ツールを帯板方向に移動させてプローブを埋入させるためのものである。
【0120】
帯板の長さ方向に前後にツールの回転軸の位置を調整変更するのは、接合用材料により、摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を、裏当ての曲面に対し相対的に移動し、摩擦撹拌ツールの回転軸と埋入される位置における帯板表面の接平面とのなす角(θ)を調節し、好適な接合品質がえられるように調整できるからである。
【0121】
帯板の幅方向に前後に摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を調整変更するのは、接合用材料の幅と材質の組み合わせにより、摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を、突き合わせ部又は材質の組み合わせにより適宜なオフセット量を調節することができるので、好適な接合品質が得られるからである。
【0122】
次に、上記の連続摩擦攪拌接合装置300を用いて、先ず2条の帯板の接合体を作製し、次いで、それに第3の帯板を接合することによって、3条の長尺の接合体を製造する方法を説明する。尚前記実施の形態と重複する部分の一部は省略している。
【0123】
アンコイラー4から帯板1を繰り出し、アンコイラー5から帯板2を繰り出し、アンコイラー5Aから帯板2Aを繰り出し、前記繰り出された帯板1と帯板2の側面同士を突合せ、突き合わせた両帯板を張力調整ローラー9の外周面91の下面に沿わせた後、
図4に示した回転ドラム71の回転ドラム本体712の曲面状をしている側面部分715の上に沿わせ、さらに、張力調整ローラー10の外周面101の下面に沿わせた後、アンコイラー5Aから繰り出された帯板2Aと側面同士を突合せ、突き合わせた3つの帯板を張力調整ローラー9Aの外周面91Aの下面に沿わせる。次いで、この3つの帯板が突き合された帯板を回転ドラム71Aの回転ドラム本体の曲面状をしている側面部分の上に沿わせ、次いで、張力調整ローラー10Aの外周面101Aの下面に沿わせた後、リコイラー8Aに巻き取らせるようにさせる。
【0124】
回転ドラム71及び回転ドラム71Aの回転軸の位置を、摩擦撹拌ツール回転軸と帯板の接平面とのなす角度が適当な値の鈍角になるように前後に微調整し固定する。
回転ドラム71及び回転ドラム71Aの温度を設定する。
【0125】
次に、回転ドラム本体712の内部を貫通しているボルト731のナット732を締めることにより、押し付け板740をバネ730が押し付け、それにより上記押し付け板740に隣接された可動性のリブ750が回転ドラム本体712側に押し付けられ、回転ドラム本体712上に存在する突合せされた帯板の突合せ面とは反対側の一側面を押圧する。回転ドラム本体712上に存在する突合せされた帯板の突合せ面とは反対側の他の側面にはリブ720が存在するので、回転ドラム本体712上に存在する突合せされた帯板は、リブ720とリブ750に挟まれて突合せ面が強固に密着される。
【0126】
また、回転ドラム7Aにおいても、回転ドラム7の場合と同様にして、回転ドラム本体上に存在する突合せされた3つの帯板の突合せ面が強固に密着される。
【0127】
この状態で、張力調整ローラー9、張力調整ローラー10、張力調整ローラー9A及び、張力調整ローラー10Aの位置(高さ)を調節して、突き合わせた3つの帯板に十分な張力がかかるようにする。
【0128】
摩擦撹拌ツール61及び摩擦撹拌ツール61Aの回転軸の位置を、帯板の突き合わせ部に対する位置を突き合わせ部上または適当なオフセット量になるように帯板の幅方向に微調整し固定する。
【0129】
次に、摩擦攪拌接合装置6の摩擦攪拌ツール61を回転させる。摩擦撹拌ツール61が一定の回転数に達した時点で摩擦撹拌ツール61を帯板方向に移動させて、プローブを帯板の突き合わせ部又はその近傍に埋入させ、プローブが埋入された部分及びショルダー面下を可塑化させる。
同時に、摩擦攪拌接合装置6Aの摩擦攪拌ツール61Aを回転させる。摩擦撹拌ツール61Aが一定の回転数に達した時点で摩擦撹拌ツール61Aを帯板方向に移動させて、プローブを帯板の突き合わせ部又はその近傍に埋入させ、プローブが埋入された部分及びショルダー面下を可塑化させる。
【0130】
摩擦攪拌接合装置6及び摩擦攪拌接合装置6Aで、摩擦攪拌接合に必要な可塑化がされたところで、モータ部82Aと回転軸81Aと巻き取り張力調整機構とからなるリコイラー8Aのモータ部82Aを動かし、回転軸81Aを回転させ、突合わされた帯板をリコイラー8Aに巻き取る。また、上記のリコイラー8Aのモータ部82Aの作動と同時に、アンコイラー4のモータ42、アンコイラー5のモータ52及びアンコイラー5Aのモータ52Aも作動させ、帯板を繰り出すようにする。摩擦攪拌接合装置6により帯板1と帯板2との接合体3が得られ、その接合体3に帯板2Aが接合された接合体3Aがリコイラー8Aに巻き取られるようになる。
【0131】
上記のようにして、3つの帯板の接合体を連続して接合品質よく、変形による歪がなく、良好に製造することができたが、具体的な製造条件などは、以下の通りであった。
帯板1:材質は銅系のC1020。横幅は37mm。長さは100m。厚さは2.0mm。
帯板2:材質はマンガニン。横幅は10mm。長さは100m。厚さは2.0mm。
帯板2A:材質は銅系のC1020。横幅は37mm。長さは100m。厚さは2.0mm。
回転ドラム71及び回転ドラム71Aの直径は、500mm。回転ドラム71及び回転ドラム71Aに接触した帯板の長さは、約500mm。
張力は、1kg重/mm
2。
帯板の移動速度は、100mm/min。
摩擦攪拌ツール61及び61Aの材質は、Ni基2重複相金属間化合物合金。
摩擦撹拌ツール61の回転軸62とプローブが帯板に埋入される帯板の接平面とのなす角度θは94°。
直線Rと摩擦撹拌ツール61の回転軸62までの距離Sは17mm。
摩擦撹拌ツール本体611Aの回転軸62Aとプローブが帯板に埋入される帯板の接平面とのなす角度θは94°。
直線Rと摩擦撹拌ツール本体611Aの回転軸62Aまでの距離Sは17mm。
摩擦撹拌ツール61及び61Aの回転速度は、800rpm〜1200rpm。
摩擦撹拌ツール61及び61Aの荷重は、約500kg重。
回転ドラム71及び回転ドラム71Aの温度は50℃。
【0132】
以下、この発明の第3の実施形態を
図9を参照して説明する。この実施形態は、この発明に係る連続摩擦攪拌接合装置400を用い、3条の長尺の帯板を接合することによって長尺の接合体を製造しようとするものである。その際に、3条の帯板を用いて2か所の接合を同時に行って、接合体を作製するものである。
【0133】
図9は、この連続摩擦攪拌接合装置400を用いて、接合作業を行っているところを示す模式的な斜視図である。
【0134】
連続摩擦攪拌接合装置400は、巻き取られた第1の金属製の帯板1Bを繰り出すアンコイラー(図示せず)と、巻き取られた第2の金属製の帯板2Bを繰り出す他のアンコイラー(図示せず)と、巻き取られた第3の金属製の帯板3Bを繰り出す他のアンコイラー(図示せず)と、帯板1B、帯板2B及び帯板3Bの張力を調整するための張力調整ローラー9Bと、前記引き出された帯板1Bと帯板2Bの側面同士を突合せた面に摩擦攪拌ツール本体611Bを埋入して摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置(図示せず)と前記引き出された帯板2Bと帯板3Bの側面同士を突合せた面に摩擦攪拌ツール本体621Bを埋入して摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置(図示せず)と、前記ツール本体611B、621Bによる前記帯板に対する押圧を帯板の裏面から支えるための裏当て7Bと、帯板の側面同士が突合せ摩擦攪拌接合された接合帯板である接合体123Bの張力を調整するための張力調整ローラー10Bと、前記接合体123Bを巻き取るリコイラー(図示せず)とを備えている。
連続摩擦攪拌接合装置400は、アンコイラーに巻き取られた帯板1Bの突き合わせされる側の側面のなす平面と、他のアンコイラーに巻き取られた帯板2Bの突き合わせされる側の側面のなす平面は同一の平面を形成し、両アンコイラーの回転軸とリコイラーの回転軸と張力調整ローラー9Bの回転軸93Bと張力調整ローラー10Bの回転軸103Bは共に前記の同一の平面と垂直に交わっている。尚、前記ツール本体611Bの回転軸は、接合が突き合わせ面上にある場合、すなわちツールオフセットが0の場合には、前記ツール本体611Bの回転軸も前記同一の平面上にあり、この前記平面上に、帯板1Bの側面と、前記側面と突合せされる帯板2Bの側面の突合せ面P2を含む平面がある。
また、アンコイラーに巻き取られた帯板2Bの突き合わせされる側の側面のなす平面と、他のアンコイラーに巻き取られた帯板3Bの突き合わせされる側の側面のなす平面は同一の平面を形成し、両アンコイラーの回転軸とリコイラーの回転軸と張力調整ローラー9Bの回転軸93Bと張力調整ローラー10Bの回転軸103Bは共に前記の同一の平面と垂直に交わっている。尚、前記ツール本体621Bの回転軸は、接合が突き合わせ面上にある場合、すなわちツールオフセットが0の場合には、前記ツール本体621Bの回転軸も前記同一の平面上にあり、この前記平面上に、帯板2Bの側面と、前記側面と突合せされる帯板3Bの側面の突合せ面P3を含む平面がある。
【0135】
上記連続摩擦攪拌接合装置400を構成する、3つのアンコイラー、張力調整ローラー9B、張力調整ローラー10B、2つの摩擦攪拌接合装置、裏当て7B及びリコイラーなどの構造、機能や好ましい態様などは、連続摩擦攪拌接合装置200又は連続摩擦攪拌接合装置300で説明したことと同様であり、その説明は省略する。
【0136】
なお、張力調整ローラー9Bの回転軸93B及び張力調整ローラー10Bの回転軸103Bは、摩擦攪拌ツール本体611Bの回転軸を有する平面及び摩擦攪拌ツール本体621Bの回転軸を有する平面に対し、垂直に交っている。
【0137】
なお、上記の連続摩擦攪拌接合装置400においては、張力調整ローラー9Bとして、接合しようとする3枚の帯板の合計の幅よりも幅の広い張力調整ローラーを1本だけ用いているが、接合しようとする個々の帯板ごとに張力調整ローラーが用いられてもよいし、接合しようとする3枚の帯板のうち2枚の帯板に対して1個の張力調整ローラーが用いられ残りの帯板に対して別の1個の張力調整ローラーが用いられても良いが、一の共通ローラーで行う方が、帯板を回転ドラムに沿わせることが無理なく行えるため好ましい。
共通張力調整ローラーで帯板に張力を付与するためには、3つのアンコイラーの位置(高さ)を適宜変えると共に、帯板を張力調整ローラーの下面を通すか、上面を通すかを考慮する必要がある。
【0138】
上記連続摩擦攪拌接合装置400において裏当て7Bとしては、回転ドラム71Bを使用している。
【0139】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置400においても、連続摩擦攪拌接合装置200や連続摩擦攪拌接合装置300と同様に、帯板1B、帯板2B、帯板3Bの側面が突合わされた状態で、少なくとも帯板1Bの突合せ面でない側面1B1又は帯板3Bの突合せ面でない側面3B1のいずれか又は両方から前記突合わせ面に押圧力を与える機構を有することが好ましい。幅方向に拡大するのを防ぐ幅方向拘束具としては、連続摩擦攪拌接合装置200や300と同様にリブ、可動性リブ、裏当てに形成された溝などが挙げられるが、本実施の形態では、回転ドラム71Bの両側面部にリブ720Bと721Bが取り付けられているものが使用された。リブ720Bと721Bの間の間隔は、側面が突合わされた帯板1B、帯板2B、帯板3Bの合計の幅に固定されている。
【0140】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置400において、裏当てとして、回転ドラムが使用される場合は、摩擦攪拌ツール本体611Bの回転軸及び摩擦攪拌ツール本体621Bの回転軸が回転ドラムの回転軸711Bよりもアンコイラー寄りであることが好ましいため、そのように位置設定されている。その理由は、連続摩擦攪拌接合装置200や連続摩擦攪拌接合装置300の説明中で述べた通りである。
【0141】
本発明の連続摩擦攪拌接合装置400においては、摩擦攪拌ツール、摩擦撹拌ツールを回転させる駆動機構、摩擦撹拌ツールを回転軸方向に移動させる駆動機構、摩擦撹拌ツールを埋入させるために回転軸方向に荷重を加える荷重機構を備えると共に、帯板の長手方向及び又は幅方向に摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を変更しうるように摩擦撹拌ツールの回転軸位置変更駆動機構を有している。
ここで摩擦撹拌ツールを回転軸方向に移動させる駆動機構とは、装置の運転始動時においては摩擦撹拌ツールの先端にあるプローブを帯板から離しておき、摩擦撹拌ツールが一定の回転数に達した時点で摩擦撹拌ツールを帯板方向に移動させてプローブを埋入させるためのものである。
【0142】
帯板の長さ方向に前後に摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を調整変更するのは、接合用材料により、摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を、裏当ての曲面に対し相対的に移動し、摩擦撹拌ツールの回転軸と埋入される位置における帯板表面の接平面とのなす角(θ)を調節し、好適な接合品質がえられるように調整できるからである。
【0143】
帯板の幅方向に前後に摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を調整変更するのは、接合用材料の幅と材質の組み合わせにより、摩擦撹拌ツールの回転軸の位置を、突き合わせ部又は材質の組み合わせにより適宜なオフセット量を調節することができるので、好適な接合品質が得られるからである。
【0144】
次に、上記の連続摩擦攪拌接合装置400を用いて、3条の帯板を用いて2か所の接合を同時に行って、3条の長尺の接合体を製造する方法を説明する。
【0145】
3つのアンコイラー(図示せず)のそれぞれから、帯板1B、帯板2B、帯板3Bを繰り出し、前記繰り出された帯板1Bと帯板2Bの側面同士を突合せ、更に、帯板2Bの他の側面に帯板3Bの側面を突き合わせる。3つの帯板が突き合わせられたものを、張力調整ローラー9Bの外周面の下面に沿わせた後、
図9に示した回転ドラム71Bの回転ドラム本体の曲面状をしている側面部分の上に沿わせ、さらに、張力調整ローラー10Bの外周面の下面に沿わせた後、リコイラー(図示せず)に巻き取らせるようにさせる。
【0146】
回転ドラム71Bの回転軸の位置を、摩擦撹拌ツール回転軸と帯板の接平面とのなす角度が適当な値の鈍角になるように前後に微調整し固定する。
回転ドラムの温度を定温に維持できるよう、ヒーター及びチラーを運転した。
【0147】
回転ドラム71Bにおいては、突合わされた帯板に押圧力を与える機構として回転ドラム71Bの両側面部にリブ720Bと721Bが取り付けられており、リブ720Bと721Bの間の間隔が、側面が突合わされた帯板1B、帯板2B、帯板3Bの合計の幅にされているので、回転ドラム本体上に存在する突合せされた帯板は、突合せ面が強固に密着される。
【0148】
この状態で、張力調整ローラー9Bと張力調整ローラー10Bの位置(高さ)を調節して、突き合わせた3つの帯板に十分な張力がかかるようにする。
【0149】
摩擦撹拌ツール本体611B及び摩擦撹拌ツール本体621Bの回転軸の位置を、帯板の突き合わせ部に対する位置を突き合わせ部上または適当なオフセット量になるように帯板の幅方向に微調整し固定する。
【0150】
次に、2つの摩擦攪拌接合装置の摩擦攪拌ツール本体611Bと摩擦攪拌ツール本体621Bとを回転させる。摩擦攪拌ツール本体611Bと摩擦攪拌ツール本体621Bが一定の回転数に達した時点で、摩擦撹拌ツール本体611Bと摩擦撹拌ツール本体621Bとを帯板方向に移動させて、摩擦攪拌ツール本体611Bのプローブ(摩擦撹拌ツール本体611Bの先端にあり、帯板突き合わせ部に埋入されているため
図9ではプローブは見えない)を帯板1Bと帯板2Bの側面同士の突き合わせ部又はその近傍に埋入させ、同時に、摩擦撹拌ツール本体621Bを帯板方向に移動させて、摩擦攪拌ツール本体621Bのプローブ(摩擦撹拌ツール本体621Bの先端にあり、帯板突き合わせ部に埋入されているため
図9ではプローブは見えない)を帯板2Bと帯板3Bの側面同士の突き合わせ部又はその近傍に埋入させ、両プローブが埋入された部分及びショルダー面下を可塑化させる。
【0151】
それぞれの摩擦攪拌接合装置で、摩擦攪拌接合に必要な可塑化がされたところで、モータ部と回転軸と巻き取り張力調整機構とからなるリコイラー(図示せず)のモータ部を動かし、回転軸を回転させ、3つの帯板が突合わされたものをリコイラー(図示せず)に巻き取る。また、上記のリコイラーのモータ部の作動と同時に、3つのアンコイラーも作動させ、帯板を繰り出すようにする。摩擦攪拌接合装置により帯板1Bと帯板2Bと帯板3Bが接合された接合体123Bがリコイラー(図示せず)に巻き取られるようになる。
【0152】
上記のようにして、3つの帯板の接合体を同時に連続して接合品質よく、変形による歪がなく、良好に製造することができたが、具体的な製造条件などは、以下の通りであった。
帯板1B:材質は銅系のC1020。横幅は37mm。長さは100m。厚さは2.0mm。
帯板2B:材質はマンガニン。横幅は10mm。長さは100m。厚さは2.0mm。帯板3B:材質は銅系のC1020。横幅は37mm。長さは100m。厚さは2.0mm。
回転ドラムの直径は、500mm。回転ドラムに接触した帯板1B、2B、3Bの長さは、約500mm。
張力は、1kg重/mm
2。
帯板1B、2B、3Bの移動速度は、100mm/min。
摩擦撹拌ツール本体611B及び621Bの材質は、Ni基2重複相金属間化合物合金。
摩擦撹拌ツール本体611Bの回転軸とプローブが帯板に埋入される帯板の接平面とのなす角度θは94°。
直線Rと摩擦撹拌ツール本体611Bの回転軸までの距離Sは17mm。
摩擦撹拌ツール本体621Bの回転軸とプローブが帯板に埋入される帯板の接平面とのなす角度θは94°。
直線Rと摩擦撹拌ツール本体621Bの回転軸までの距離Sは17mm。
摩擦撹拌ツール本体611B及び621Bの回転速度は、800rpm〜1200rpm。
各摩擦撹拌ツールの荷重は、約500kg重。
回転ドラム温度は、50℃