(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042625
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】グロープラグの製造方法及びグロープラグ
(51)【国際特許分類】
F23Q 7/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
F23Q7/00 605M
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-58412(P2012-58412)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-190180(P2013-190180A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 紘文
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−261577(JP,A)
【文献】
特開2011−12898(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/108161(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる筒状の主体金具と、
前記主体金具に装着され、先端が閉じた金属製のチューブ、及び前記チューブ内に収容されたコイルを有するヒータと、先端側が前記チューブ内にて前記コイルに接続され、後端側が前記チューブの後端から突出した中軸と、
を備えたグロープラグの製造方法であって、
前記チューブとなるチューブ素材であって、先端が開口するとともに、先端部の内壁が先端側に向かって縮径しており、さらに、前記コイルが挿入された際に、前記内壁に当接する前記コイルの巻線の部位である巻線部分先端部と、当該巻線部分先端部から半巻分後端側の半巻分後端部とが、それぞれ前記内壁に当接するように、軸線を挟んで当該内壁の対向する部位の前記軸線方向位置をずらした前記先端部を有するチューブ素材を準備する工程と、
前記チューブ素材の内部に前記コイルを挿入し、前記巻線部分先端部と前記半巻分後端部とを、前記チューブ素材の先端部の内壁に当接させる工程と、
前記巻線部分先端部と前記半巻分後端部とを前記チューブ素材の先端部に溶接するとともに、前記開口を閉塞する工程と
を具備したことを特徴とするグロープラグの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のグロープラグの製造方法であって、
前記チューブ素材の先端部の外壁が、前記チューブ素材の前記先端部の内壁の前記軸線方向位置に対応して前記軸線方向位置をずらした形状とされている
ことを特徴とするグロープラグの製造方法。
【請求項3】
軸線方向に延びる筒状の主体金具と、
前記主体金具に装着され、先端が閉じた金属製のチューブ、及び前記チューブ内に収容されたコイルを有するヒータと、先端側が前記チューブ内にて前記コイルに接続され、後端側が前記チューブの後端から突出した中軸と、
を備えたグロープラグであって、
前記チューブの先端部の内壁は、先端側に向かって縮径しており、且つ、軸線を挟んで前記内壁の対向する部位の前記軸線方向位置がずらされており、前記コイルの巻線の部位である前記コイルの巻線部分先端部と、当該巻線部分先端部から半巻分後端側の半巻分後端部とが、それぞれ前記内壁に当接している
ことを特徴とするグロープラグ。
【請求項4】
請求項3記載のグロープラグであって、
前記金属製のチューブの先端部の外壁は、前記先端部の内壁の前記軸線方向位置に対応して前記軸線方向位置をずらした形状とされている
ことを特徴とするグロープラグ。
【請求項5】
請求項3又は4記載のグロープラグであって、
前記コイルの巻線部分先端部と、前記半巻分後端部は、それぞれ前記チューブの先端部の内壁と当接された状態で固着されている
ことを特徴とするグロープラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンに使用されるグロープラグの製造方法及びグロープラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジンの始動補助等に使用されるグロープラグとして、先端部の閉じた金属製のチューブ(シーズ管)内に、クロム(Cr)やアルミニウム(Al)等を含有する発熱コイルを封入したシーズヒータを用いるものが知られている。
【0003】
このようなグロープラグでは、チューブ内に収容した発熱コイルの先端部とチューブとを溶接等によって接合する必要がある。この発熱コイルの先端部とチューブとの接合方法としては、例えばチューブとなるチューブ素材の先端を開口しておき、チューブ素材の先端開口に、発熱コイルの先端部を挿入し、チューブ素材の外側から先端開口に挿入されている発熱コイルの先端部とチューブ素材とを溶接する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−330249号公報
【特許文献2】特開平4−119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、チューブ素材の先端開口に、発熱コイルの先端部を挿入し、チューブ素材の外側から、先端開口に挿入されている発熱コイルの先端部とチューブ素材とを溶接したグロープラグでは、以下のような問題が発生する。
【0006】
具体的には、
図8に示すように、発熱コイル9の先端部は、発熱コイル9の巻線の部分である巻線部分先端部9aと、この先端部から半巻分後端側の半巻分後端部9bとに、巻線の半ピッチ分、グロープラグの軸線C
1方向位置にずれがある構造となっている。このため、発熱コイル9の巻線部分先端部9a及び半巻分後端部9b等を、チューブ素材170の内壁に当接させた状態とすると、発熱コイル9がチューブ素材170内に偏芯した状態で収容され、グロープラグの周方向での温度のばらつきが大きくなるという問題が発生する。
【0007】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたものである。本発明は、製造時にチューブ内に発熱コイルが偏芯して収容されることを抑制することができ、温度均一性を維持することのできるグロープラグの製造方法及びグロープラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のグロープラグの製造方法の一態様は、軸線方向に延びる筒状の主体金具と、前記主体金具に装着され、先端が閉じた金属製のチューブ、及び前記チューブ内に収容されたコイルを有するヒータと、先端側が前記チューブ内にて前記コイルに接続され、後端側が前記チューブの後端から突出した中軸と、を備えたグロープラグの製造方法であって、前記チューブとなるチューブ素材であって、先端が開口するとともに、先端部の内壁が先端側に向かって縮径しており、さらに、前記コイルが挿入された際に、前記内壁に当接する前記コイルの巻線の部位である巻線部分先端部と、当該巻線部分先端部から半巻分後端側の半巻分後端部とが、それぞれ前記内壁に当接するように、
軸線を挟んで当該内壁の
対向する部位の前記軸線方向位置をずらした前記先端部を有するチューブ素材を準備する工程と、前記チューブ素材の内部に前記コイルを挿入し、前記巻線部分先端部と前記半巻分後端部とを、前記チューブ素材の先端部の内壁に当接させる工程と、前記巻線部分先端部と前記半巻分後端部とを前記チューブ素材の先端部に溶接するとともに、前記開口を閉塞する工程とを具備したことを特徴とする。
【0009】
本発明のグロープラグの製造方法では、チューブとなるチューブ素材であって、先端が開口するとともに、先端部の内壁が先端側に向かって縮径しており、さらに、コイルが挿入された際に、内壁に当接するコイルの巻線の部位である巻線部分先端部と、当該巻線部分先端部から半巻分後端側の半巻分後端部とが、それぞれ内壁に当接するように、内壁の軸線方向位置をずらした先端部を有するチューブ素材を準備する。そして、このチューブ素材の内部にコイルを挿入し、巻線部分先端部と半巻分後端部とをチューブ素材の先端部の内壁に当接させた状態とする。これによって、コイルの軸とチューブ素材の軸とが略同軸の状態となる。
【0010】
したがって、コイルがチューブ素材内に偏芯した状態で収容されることがない。これによって、グロープラグの周方向での温度のばらつきが大きくなることを抑制することができる。これによって、従来に比べて温度均一性を維持することができる。
【0011】
上記構成のグロープラグの製造方法では、チューブ素材の先端部の外壁を、チューブ素材の先端部の内壁の軸線方向位置に対応して軸線方向位置をずらした形状とすることが好ましい。かかる構成とすることによって、チューブの肉厚を一定とすることができ、グロープラグの周方向での温度のばらつきが大きくなることをさらに抑制することができる。
【0012】
本発明のグロープラグの一態様は、軸線方向に延びる筒状の主体金具と、前記主体金具に装着され、先端が閉じた金属製のチューブ、及び前記チューブ内に収容されたコイルを有するヒータと、先端側が前記チューブ内にて前記コイルに接続され、後端側が前記チューブの後端から突出した中軸と、を備えたグロープラグであって、前記チューブの先端部の内壁は、先端側に向かって縮径しており、且つ、
軸線を挟んで前記内壁の
対向する部位の前記軸線方向位置がずらされて
おり、前記コイルの巻線の部位である前記コイルの巻線部分先端部と、当該巻線部分先端部から半巻分後端側の半巻分後端部とが、それぞれ前記内壁に当接していることを特徴とする。
【0013】
本発明のグロープラグでは、金属製のチューブの先端部の内壁は、先端側に向かって縮径しており、且つ、内壁の軸線方向位置がずらされて、コイルの巻線部分先端部と、当該巻線部分先端部から半巻分後端側の半巻分後端部とが、内壁に当接している。これによって、コイルの軸と金属製のチューブの軸とが略同軸の状態で、コイルの巻線部分先端部と、半巻分後端部とが、夫々金属製のチューブの先端部の内壁に当接した状態となる。
【0014】
したがって、コイルが金属製のチューブ内に偏芯した状態で収容されることがない。これによって、グロープラグの周方向での温度のばらつきが大きくなることを抑制することができる。これによって、従来に比べて温度均一性を維持することができる。
【0015】
上記構成のグロープラグでは、金属製のチューブの先端部の外壁は、先端部の内壁の軸線方向位置に対応して軸線方向位置をずらした形状とすることが好ましい。かかる構成とすることによって、チューブの肉厚を一定とすることができ、グロープラグの周方向での温度のばらつきが大きくなることをさらに抑制することができる。
【0016】
また、上記構成のグロープラグでは、コイルの巻線部分先端部と、半巻分後端部は、それぞれチューブの先端部の内壁と当接された状態で固着されている構成とすることが好ましい。これによって、コイルの軸とチューブの軸とを精度よく同軸の状態とすることができ、温度均一性をさらに維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造時にチューブ内に発熱コイルが偏芯して収容されることを抑制することができ、温度均一性を維持することのできるグロープラグの製造方法及びグロープラグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るグロープラグの概略構成を示す図。
【
図2】
図1のグロープラグの断面概略構成を示す図。
【
図3】
図1のグロープラグの要部断面概略構成を示す図。
【
図4】
図1のグロープラグの製造工程を説明するための図。
【
図5】
図1のグロープラグの製造工程を説明するための図。
【
図6】
図1のグロープラグの製造工程を説明するための図。
【
図7】
図1のグロープラグの要部断面概略構成を拡大して示す図。
【
図8】従来のグロープラグの製造工程を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るグロープラグ1の全体概略構成を示す図であり、
図2はグロープラグ1の縦断面概略構成を示す図である。
【0021】
図1、
図2に示すように、グロープラグ1は、筒状の主体金具2と、主体金具2に装着されたシーズヒータ3とを備えており、軸線C
1方向に延びている。
【0022】
主体金具2には、軸線C
1方向に貫通する軸孔4が形成されている。また、主体金具2の外周面には、ディーゼルエンジンへの取付用のねじ部5と、トルクレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部6とが形成されている。
【0023】
シーズヒータ3は、シーズ管7と発熱コイル9等から構成されている。
【0024】
図3に示すように、シーズ管7は、先端部が閉じた金属製、例えばニッケル基合金等からなる筒状のチューブから構成されている。
【0025】
図3に示すように、シーズ管7の内側には、シーズ管7の先端に接合される発熱コイル9と、当該発熱コイル9の後端に直列接続された制御コイル10とからなるコイル20が酸化マグネシウム粉末等の絶縁粉末11とともに封入されている。シーズ管7と発熱コイル9とは、先端部において接合されている。
【0026】
さらに、シーズ管7の後端は、中軸8との間で環状ゴム17により封止されている。加えて、前述のように、発熱コイル9は、その先端においてシーズ管7と導通しているが、発熱コイル9及び制御コイル10の外周面とシーズ管7の内周面とは、絶縁粉末11の介在により絶縁された状態となっている。
【0027】
発熱コイル9は、例えば、鉄(Fe)−クロム(Cr)−アルミニウム(Al)系合金の抵抗発熱線により構成されている。また、制御コイル10は、発熱コイル9の材質よりも電気比抵抗の温度係数が大きい材質、例えば、コバルト(Co)−ニッケル(Ni)−Fe系合金等に代表されるCo又はNiを主成分とする抵抗発熱線により構成されている。発熱コイル9は、通電によって発熱し、シーズ管7の表面温度を所定の温度まで昇温させ、制御コイル10は、発熱コイル9の過昇温を生じ難くする。
【0028】
また、シーズ管7には、スウェージング加工等によって、その先端部に発熱コイル9等を収容する小径部7aが形成されるとともに、その後端側において小径部7aよりも径の大きい大径部7bが形成されている。そして、この大径部7bが、主体金具2の軸孔4に形成された小径部4aに対し圧入接合されることにより、シーズ管7が主体金具2の先端より突出した状態で保持される。
【0029】
中軸8は、自身の先端がシーズ管7内に挿入され、制御コイル10の後端と電気的に接続されるとともに、主体金具2の軸孔4に挿通されている。中軸8の後端は主体金具2の後端から突出しており、この主体金具2の後端部においては、ゴム製等のOリング12、樹脂製等の絶縁ブッシュ13、絶縁ブッシュ13の脱落を防止するための押さえリング14、及び、通電ケーブル接続用のナット15がこの順序で中軸8に嵌め込まれた構造となっている(
図2参照)。
【0030】
そして、
図7に示すように、シーズ管7の先端部7Aの内壁7Aaは、先端側に向かって縮径しており、且つ、内壁7Aaの軸線C
1方向位置が、
図7に示すように、左右でずらされている。このため、発熱コイル9の巻線部分先端部9aと、巻線部分先端部9aから半巻分後端側の半巻分後端部9bとが、それぞれ内壁7Aaに当接している。これによって、コイルの軸C
2とチューブの軸C
3とが同軸の状態で、発熱コイル9の巻線部分先端部9aと、半巻分後端部9bとが、夫々シーズ管7の先端部7Aの内壁7Aaに当接した状態となる。
【0031】
したがって、発熱コイル9がシーズ管7内に偏芯した状態で収容されることがない。これによって、グロープラグ1の周方向での温度のばらつきが大きくなることを抑制することができる。これによって、従来に比べて温度均一性を維持することができる。
【0032】
また、グロープラグ1では、シーズ管7の先端部7Aの外壁7Abは、先端部7Aの内壁7Aaの軸線C
1方向位置に対応して、
図7に示すように、軸線C
1方向位置を左右でずらした形状となっている。これにより、シーズ管7の肉厚を一定とすることができ、グロープラグ1の周方向での温度のばらつきが大きくなることをさらに抑制することができる。
【0033】
さらに、グロープラグでは、発熱コイル9の巻線部分先端部9aと、半巻分後端部9bは、それぞれシーズ管7の先端部7Aの内壁7Aaと当接された状態で固着されている。これによって、コイルの軸C
2とチューブの軸C
3とを精度よく同軸の状態とすることができ、温度均一性をさらに維持することができる。
【0034】
次いで、グロープラグ1の製造方法について説明する。まず、シーズヒータ3を製造する際には、まず、Fe−Cr−Al系合金の抵抗発熱線をコイル形状に加工し、発熱コイル9を得る。
【0035】
次いで、Co−Ni−Fe系合金等の抵抗発熱線をコイル形状に加工し、制御コイル10を得る。そして、発熱コイル9の後端部分と、制御コイル10の先端部分とを、後端側接合部位22においてアーク溶接等によって接合する。さらに、制御コイル10の後端側に、中軸8をアーク溶接等によって接合する。
【0036】
一方、
図4に示すように、先端が閉じておらず、先端に開口71を有し、最終寸法より加工代分だけ大径に形成された円筒状のチューブ素材70を準備する。そして、このチューブ素材70の中に、中軸8の先端部分と、当該中軸8と一体となった発熱コイル9及び制御コイル10からなるコイル20(
図4には発熱コイル9のみ図示。)を配置する。
【0037】
本実施形態において、チューブ素材70の先端部70Aの内壁70Aaは、軸線C
1方向に沿った断面で見た時に、発熱コイル9の半巻分離れた2箇所の部分(
図4中に示す当接部70aと当接部70b)の形状が、軸線C
1方向の位置を所定長さずらした形状とされている。この所定長さは、発熱コイル9の巻線部分先端部9aと、当該巻線部分先端部9aから半巻分後端側の半巻分後端部9bの軸線C
1方向位置に対応した長さ(後述するL
3)とされている。
【0038】
なお、
図4は、軸線C
1方向の位置をずらした形状とされている当接部70a,70bを含む軸線C
1方向に沿った断面構成を示している。この場合、
図4に示されていない部分の内壁の形状については、例えば、発熱コイル9の巻線部分先端部9aから半巻分後端部9bに到る軸線C
1方向位置の変化に応じて、当接部70a、70bとの間で軸線C
1方向の位置が次第に変化する構成等とすることができるが、このような形状に限られるものではない。
【0039】
図4に示すように、チューブ素材70の軸C
3と発熱コイル9の軸C
2とを合わせた状態で、チューブ素材70の先端から距離Aの位置を基準とした時、位置Aから発熱コイル9の巻線部分先端部9aまでの長さL
1と、位置Aから発熱コイル9の半巻分後端部9bまでの長さL
2には、図中に示す長さL
3分の相違がある。つまり、巻線部分先端部9aの軸線C
1方向位置と、半巻分後端部9bの軸線C
1方向位置には、発熱コイル9の先端部における半ピッチ分の長さL
3分のずれがある。チューブ素材70の先端部70Aの内壁70Aaの上記当接部70a、70bは、この長さL
3分軸線C
1方向の位置をずらした形状とされている。
【0040】
これによって、チューブ素材70内に、所定の回転方向位置に合わせした状態で、中軸8の先端部分と発熱コイル9及び制御コイル10とが一体となった物を挿入した際に、巻線部分先端部9aが当接部70aと当接され、半巻分後端部9bが当接部70bと当接され、発熱コイル9の軸とチューブ素材70の軸とが略同軸の状態に維持される構造になっている。
【0041】
このように、発熱コイル9の軸C
2とチューブ素材70の軸C
3とが略一致した状態となっているので、
図8に示したように、発熱コイル9が偏芯してチューブ素材170内に配設されることによって温度のばらつきが大きくなることを抑制することができ、温度均一性を維持することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、
図5に示すように、チューブ素材70の内壁の当接部70a、70bに対応した外壁の部位70c,70dの軸方向位置も、内壁の当接部70a、70bと同様に、軸線C
1方向の位置をずらした形状とされている。これによって、チューブ素材70の肉厚を均一化することができ、より一層温度均一性を維持することができる。
【0043】
そして、外側からアーク溶接等を行うことによって、チューブ素材70の先端部分の開口71を閉塞させるとともに、チューブ素材70の先端部分と発熱コイル9の先端部分(巻線部分先端部9a及び半巻分後端部9b等)とを接合する。
【0044】
上記の発熱コイル9とチューブ素材70の溶接工程では、例えば、
図6に示すように、発熱コイル9を、その巻線部先端から直線状に延びたひげ部9cを有する状態とし、この状態でアーク溶接等を行うようにしてもよい。なお、チューブ素材70は、チューブコイル溶接治具80内に収容されて保持され、チューブコイル溶接治具80に設けられた開口部81の部分に
図6中下側からアーク溶接が施される。
【0045】
次に、チューブ素材70内に絶縁粉末11を充填した後、当該チューブ素材70にスウェージング加工を施す。これにより、小径部7aを有するシーズ管7が形成されるとともに、当該シーズ管7が中軸8と一体となってシーズヒータ3が完成する。
【0046】
そして、上記のように形成されたシーズヒータ3が主体金具2の軸孔4に圧入固定されるとともに、主体金具2の後端部分において、Oリング12や絶縁ブッシュ13等が中軸8に嵌め込まれることで、グロープラグ1が完成する。
【0047】
このようにして、本実施形態では、製造時に発熱コイルに変形が生じることを抑制できるとともに、金属製のチューブ内に発熱コイルが偏芯して収容されることを抑制することができ、温度均一性を維持することのできるグロープラグを得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1……グロープラグ、2……主体金具、3……シーズヒータ、7……シーズ管、9……発熱コイル、9a……巻線部分先端部、9b……半巻分後端部、10……制御コイル、20……コイル、70……チューブ素材、70a……当接部、70b……当接部、71……開口。