(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042643
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】エンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出方法及びその検出装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/00 20060101AFI20161206BHJP
F01N 3/02 20060101ALI20161206BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20161206BHJP
G01N 15/06 20060101ALI20161206BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20161206BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
F01N3/00 FZAB
F01N3/02 201
G01N27/04 Z
G01N15/06 D
F02D45/00 360Z
F01N11/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-139643(P2012-139643)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-5734(P2014-5734A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(72)【発明者】
【氏名】川田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
【審査官】
石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−037371(JP,A)
【文献】
特開2010−286412(JP,A)
【文献】
特開2011−141209(JP,A)
【文献】
特表2008−547032(JP,A)
【文献】
特開2011−080781(JP,A)
【文献】
特開2012−012960(JP,A)
【文献】
特開2011−080439(JP,A)
【文献】
特開2011−247650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00 − 3/027
F01N 11/00
G01N 15/06
G01N 27/04
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(11)の排気管(16)に設けられたフィルタ(19)が前記エンジン(11)から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集し、前記フィルタ(19)より排ガス上流側の排気管(16)に設けられたグロープラグ(23)にセラミック製の筒体(24)を嵌着し、前記筒体(24)表面に前記筒体(24)の長手方向に間隔をあけて配設された一対の電極(28,29)間に第1電圧を印加して得られた前記一対の電極(28,29)間の充電電圧に基づいてコントローラ(38)が前記筒体(24)表面に付着したパティキュレート量を検出する、エンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出方法であって、
前記エンジン(11)の始動毎に又は前記エンジン(11)の連続運転状態における所定時間経過毎に、前記グロープラグ(23)の発熱体(23b)に第2電圧を印加して、前記筒体(24)表面に付着したパティキュレート又は水分のいずれか一方又は双方を加熱除去した後に、前記発熱体(23b)に前記第2電圧より低い第3電圧を印加して、前記筒体(24)表面を所定温度に保ち、この状態で前記一対の電極(28,29)間に前記第1電圧を印加して、前記一対の電極(28,29)間の充電電圧を前記筒体(24)表面のパティキュレート量がゼロである状態に対応させる補正を行い、
前記排ガス中の酸素濃度をλセンサ又は酸素濃度センサが検出し、
前記エンジン(11)から排出される排ガス中のパティキュレート量が増えたときであって、前記λセンサ又は前記酸素濃度センサによる排ガス中の酸素濃度が変化しないときに、前記コントローラ(38)が、前記一対の電極(28,29)間に前記第1電圧を印加して得られた前記一対の電極間の充電電圧に基づいて前記筒体(24)表面のパティキュレート量が増えたことを検出することにより、前記エンジン(11)に不具合が発生したことを検出することを特徴とするエンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出方法。
【請求項2】
エンジン(11)の排気管(16)に設けられ前記エンジン(11)から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタ(19)と、
前記フィルタ(19)より排ガス上流側の排気管(16)に設けられたグロープラグ(23)と、
前記グロープラグ(23)に嵌着されたセラミック製の筒体(24)と、
前記筒体(24)表面に前記筒体(24)の長手方向に間隔をあけて配設された一対の電極(28,29)と、
前記一対の電極(28,29)間に第1電圧を印加して得られた前記一対の電極(28,29)間の充電電圧に基づいて前記筒体(24)表面に付着したパティキュレート量を検出するコントローラ(38)と
を備えたエンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出装置であって、
前記エンジン(11)の始動毎に又は前記エンジン(11)の連続運転状態における所定時間経過毎に、前記コントローラ(38)が、前記グロープラグ(23)の発熱体(23b)に第2電圧を印加して、前記筒体(24)表面に付着したパティキュレート又は水分のいずれか一方又は双方を加熱除去した後に、前記発熱体(23b)に前記第2電圧より低い第3電圧を印加して、前記筒体(24)表面を所定温度に保ち、この状態で前記一対の電極(28,29)間に前記第1電圧を印加して、前記一対の電極(28,29)間の充電電圧を前記筒体(24)表面のパティキュレート量がゼロである状態に対応させる補正を行い、
前記排ガス中の酸素濃度がλセンサ又は酸素濃度センサにより検出され、
前記エンジン(11)から排出される排ガス中のパティキュレート量が増えたときであって、前記λセンサ又は前記酸素濃度センサによる排ガス中の酸素濃度が変化しないときに、前記コントローラ(38)が、前記一対の電極(28,29)間に前記第1電圧を印加して得られた前記一対の電極間の充電電圧に基づいて前記筒体(24)表面のパティキュレート量が増えたことを検出することにより、前記エンジン(11)に不具合が発生したことを検出するように構成されたことを特徴とするエンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出装置。
【請求項3】
前記一対の電極間の前記筒体表面に酸化触媒層が形成された請求項1記載のエンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出方法。
【請求項4】
前記一対の電極間の前記筒体表面に酸化触媒層が形成された請求項2記載のエンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量を検出する方法とそのパティキュレート量を検出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、グロープラグの棒状のヒータ部先端より基端側に一対の電極が所定の間隔をあけて配設され、グロープラグの先端がディーゼルエンジンの燃焼室に臨みかつ一対の電極間が燃焼室の壁面よりも引っ込んだ位置となるようにグロープラグがシリンダヘッドに設けられ、更に電気抵抗計測手段が計測した一対の電極間の電気抵抗に基づいて演算手段が一対の電極間に付着したスート量を演算するように構成されたディーゼルエンジンのスート検出装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このディーゼルエンジンのスート検出装置では、演算手段が演算したスート量に基づいて、排気浄化フィルタが再生時期になったか否かを再生時期判断手段が判断するように構成される。また再生時期判断手段の判断に基づいて、排気浄化フィルタの再生が完了したときに、発熱制御手段がヒータ部内の通電発熱体に通電して一対の電極間に付着しているスートを燃焼除去するように構成される。また発熱制御手段は、通電発熱体を制御して、一対の電極間に付着したスートを、排気浄化フィルタの再生時期になるまでに複数回に分けて燃焼除去するように構成される。更に上記電気抵抗計測手段は、ディーゼルエンジンの吸気行程で一対の電極間の電気抵抗の計測を行うように構成される。なお、燃焼室毎に設けられた全てのグロープラグに一対の電極を設ける必要はなく、いずれか1つのグロープラグに一対の電極を設けるだけでよい。また、シリンダヘッドには、その内部にウォータジャケットが形成されており、ポンプによる内部を冷却水が循環しているため、燃焼時における燃焼室内の温度は、シリンダヘッド壁面付近で急激に低下するようになっている。
【0003】
このように構成されたディーゼルエンジンのスート検出装置の動作を説明する。先ず一対の電極間にディーゼルエンジンの燃焼室で発生したスートの一部が付着し、電気抵抗計測手段が一対の電極間の抵抗を計測する。一対の電極間の電気抵抗は一対の電極間に付着したスート量と所定の関係にあるため、演算手段は、上記計測された一対の電極間の電気抵抗に基づいて一対の電極間に付着したスート量を演算する。また一対の電極間に付着したスート量は排気浄化フィルタに捕集されるスート量と所定の関係があるため、排気浄化フィルタに捕集されたスート量が排気浄化フィルタを再生すべき量に達したか否かを、電極間に付着したスート量を検出することにより判断できる。この結果、排気浄化フィルタを適切な時期に再生できる。
【0004】
一方、発熱制御手段は、排気浄化フィルタの再生が完了したときに、グロープラグの通電発熱体を発熱させ、一対の電極間に付着しているスートを燃焼除去する。この結果、排気浄化フィルタの再生時期の判断が容易になる。また一対の電極間に付着したスート量の増加に伴って一対の電極間の電気抵抗が減少し、その減少割合はスートの付着量の増加に伴って小さくなるので、一対の電極間に付着したスート量が少ない状態の方がスート量を精度良く演算することができる。このため一対の電極間に付着したスートを排気浄化フィルタの再生時期になるまでに複数回に分けて燃焼除去することにより、スート量を精度良く演算できる。更に電気抵抗計測手段は、ディーゼルエンジンの吸気行程で一対の電極間の電気抵抗の計測を行うので、一対の電極間に付着しているスート量が同じであっても、温度が変わると電気抵抗も変わる。燃焼室の温度は、圧縮行程、燃焼行程又は排気行程ではエンジンの出力により変わるけれども、吸気行程では殆ど変わらない。このため、吸気行程で一対の電極間の電気抵抗を計測することにより、他の行程で計測する場合と比較して計測結果の精度を向上できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−298049号公報(請求項1〜4、段落[0009]、[0011]、[0012]、[0013]、[0019]、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の特許文献1に示されたディーゼルエンジンのスート検出装置では、エンジンの吸気行程で一対の電極間の電気抵抗を計測しているけれども、冷却水の循環するウォータジャケットの形成により温度が急激に低下するシリンダヘッド壁面付近に一対の電極を設けているため、エンジンの吸気行程における一対の電極間の温度は一定にならずに大きく変化してしまい、一対の電極間の電気抵抗を精度良く計測できない不具合があった。また、上記従来の特許文献1に示されたディーゼルエンジンのスート検出装置では、燃焼室毎に設けられた複数のグロープラグのいずれか1つに一対の電極を設けているため、一対の電極を設けていない燃焼室に不具合が発生しても、この燃焼室の不具合を検出できない問題点もあった。更に、上記従来の特許文献1に示されたディーゼルエンジンのスート検出装置では、一対の電極がエンジンの燃焼室の近くに設置されているため、スートの性状がフィルタに堆積するときと異なることから、フィルタの再生時期を正確に検出することが難しい問題点があった。
【0007】
本発明の第1の目的は、筒体表面に付着したパティキュレートや水分を燃焼除去して、一対の電極間
の充電電圧のゼロ点補正を行うことにより、筒体表面に付着したパティキュレート量を精度良く検出できる、エンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出方法及びその検出装置を提供することにある。本発明の第2の目的は、エンジンの不具合を速やかに検出でき、これによりフィルタの急激な目詰まりを防止できる、エンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出方法及びその検出装置を提供することにある。本発明の第3の目的は、一対の電極間の筒体表面に付着したパティキュレートを短時間で確実に燃焼除去できる、エンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出方法及びその検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、
図1及び
図2に示すように、エンジン11の排気管16に設けられたフィルタ19がエンジン11から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集し、フィルタ19より排ガス上流
側の排気管16に設けられたグロープラグ23にセラミック製の筒体24を嵌着し、筒体24表面に筒体24の長手方向に間隔をあけて配設された一対の電極28,29間に第1電圧を印加して得られた一対の電極28,29間の充電電圧に基づいて
コントローラ38が筒体24表面に付着したパティキュレート量を検出する、エンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出方法であって、エンジン11の始動毎に又はエンジン11の連続運転状態における所定時間経過毎に、グロープラグ23の発熱体23bに第2電圧を印加して、筒体24表面に付着したパティキュレート又は水分のいずれか一方又は双方を加熱除去した後に、発熱体23bに第2電圧より低い第3電圧を印加して、筒体24表面を所定温度に保ち、この状態で一対の電極28,29間に第1電圧を印加して、一対の電極28,29間の充電電圧を筒体24表面のパティキュレート量がゼロである状態に対応させる補正を行
い、排ガス中の酸素濃度をλセンサ又は酸素濃度センサが検出し、エンジン11から排出される排ガス中のパティキュレート量が増えたときであって、λセンサ又は酸素濃度センサによる排ガス中の酸素濃度が変化しないときに、コントローラ38が、一対の電極28,29間に第1電圧を印加して得られた一対の電極間の充電電圧に基づいて筒体24表面のパティキュレート量が増えたことを検出することにより、エンジン11に不具合が発生したことを検出することを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の観点は、
図1及び
図2に示すように、エンジン11の排気管16に設けられエンジン11から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタ19と、フィルタ19より排ガス上流
側の排気管16に設けられたグロープラグ23と、グロープラグ23に嵌着されたセラミック製の筒体24と、筒体24表面に筒体24の長手方向に間隔をあけて配設された一対の電極28,29と、一対の電極28,29間に第1電圧を印加して得られた一対の電極28,29間の充電電圧に基づいて筒体24表面に付着したパティキュレート量を検出するコントローラ38とを備えたエンジンから排出される排ガス中のパティキュレート量の検出装置であって、エンジン11の始動毎に又はエンジン11の連続運転状態における所定時間経過毎に、コントローラ38が、グロープラグ23の発熱体23bに第2電圧を印加して、筒体24表面に付着したパティキュレート又は水分のいずれか一方又は双方を加熱除去した後に、発熱体23bに第2電圧より低い第3電圧を印加して、筒体24表面を所定温度に保ち、この状態で一対の電極28,29間に第1電圧を印加して、一対の電極28,29間の充電電圧を筒体24表面のパティキュレート量がゼロである状態に対応させる補正を行
い、排ガス中の酸素濃度がλセンサ又は酸素濃度センサにより検出され、エンジン11から排出される排ガス中のパティキュレート量が増えたときであって、λセンサ又は酸素濃度センサによる排ガス中の酸素濃度が変化しないときに、コントローラ38が、一対の電極28,29間に第1電圧を印加して得られた一対の電極間の充電電圧に基づいて筒体24表面のパティキュレート量が増えたことを検出することにより、エンジン11に不具合が発生したことを検出するように構成されたことを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に一対の電極間の筒体表面に酸化触媒層が形成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点は、第2の観点に基づく発明であって、更に一対の電極間の筒体表面に酸化触媒層が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の観点の検出方法では、エンジンの始動毎に又はエンジンの連続運転状態における所定時間経過毎に、先ずグロープラグの発熱体に第2電圧を印加することにより、筒体表面に付着したパティキュレート又は水分のいずれか一方又は双方を加熱除去する。次に発熱体に第2電圧より低い第3電圧を印加することにより、筒体表面を所定温度に保つ。この状態で一対の電極間に第1電圧を印加することにより、一対の電極間
の充電電圧を筒体表面のパティキュレート量がゼロである状態に対応させる補正を行う。即ち、エンジンの始動毎に又はエンジンの連続運転状態における所定時間経過毎に、筒体表面のパティキュレートを燃焼除去した後に、一対の電極間の筒体表面の温度を略一定にして一対の電極間
の充電電圧を安定にした状態で、一対の電極間の
充電電圧のゼロ点補正を行うので、その後、筒体表面に付着するパティキュレート量を精度良く検出できる。一方、一対の電極を設けていない燃焼室に不具合が発生しても、この燃焼室の不具合を検出できず、またフィルタの再生時期を正確に検出することが難しい従来のディーゼルエンジンのスート検出装置と比較して、本発明では、グロープラグをフィルタより排ガス上流側の排気管に設けることにより、筒体表面に付着したパティキュレート量を精度良く検出できる。この結果、エンジンの不具合を速やかに検出できるので、フィルタの急激な目詰まりを防止できる。また、グロープラグをフィルタより排ガス下流側の排気管に設けることにより、フィルタの故障を速やかに検出することができる。
【0013】
本発明の第2の観点の検出装置では、エンジンの始動毎に又はエンジンの連続運転状態における所定時間経過毎に、先ずコントローラは、グロープラグの発熱体に第2電圧を印加することにより、筒体表面に付着したパティキュレート又は水分のいずれか一方又は双方を加熱除去する。次にコントローラは、発熱体に第2電圧より低い第3電圧を印加することにより、筒体表面を所定温度に保つ。この状態でコントローラは、一対の電極間に第1電圧を印加することにより、一対の電極間
の充電電圧を筒体表面のパティキュレート量がゼロである状態に対応させる補正を行う。即ち、コントローラは、エンジンの始動毎に又はエンジンの連続運転状態における所定時間経過毎に、筒体表面のパティキュレートを燃焼除去した後に、一対の電極間の筒体表面の温度を略一定にして一対の電極間
の充電電圧を安定にした状態で、一対の電極間の
充電電圧のゼロ点補正を行うので、その後、筒体表面に付着するパティキュレート量を精度良く検出できる。一方、一対の電極を設けていない燃焼室に不具合が発生しても、この燃焼室の不具合を検出できず、またフィルタの再生時期を正確に検出することが難しい従来のディーゼルエンジンのスート検出装置と比較して、本発明では、グロープラグをフィルタより排ガス上流側の排気管に設けることにより、筒体表面に付着したパティキュレート量を精度良く検出できる。この結果、エンジンの不具合を速やかに検出できるので、フィルタの急激な目詰まりを防止できる。また、グロープラグをフィルタより排ガス下流側の排気管に設けることにより、フィルタの故障を速やかに検出することができる。
【0014】
本発明の第3の観点の検出方法又は第4の観点の検出装置では、一対の電極間の筒体表面に酸化触媒層を形成したので、発熱体に第2電圧を印加して筒体表面の温度が上昇したときに、酸化触媒が筒体表面に付着したパティキュレートの燃焼を促進する、即ち酸化触媒がパティキュレートの燃焼開始温度を低くしかつ燃焼速度を速くする。この結果、一対の電極間の筒体表面に付着したパティキュレートを短時間で確実に燃焼除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明第1実施形態のパティキュレート量の検出装置を排気管に取付けた状態を示す要部断面構成図である。
【
図2】その検出装置を取付けた排気管にエンジンの排ガス浄化装置を設けた状態を示すエンジンの排気系の構成図である。
【
図3】その検出装置の筒体表面に付着したパティキュレートや水分を加熱除去して検出装置のゼロ点補正を行う手順を示すフローチャート図である。
【
図4】一対の電極間に矩形波状の交流電圧を印加して一対の電極間に流れる電流を測定するための電気回路図である。
【
図5】(a)は一対の電極間に印加される電圧波形の変化を示す図であり、(b)は一対の電極間に流れる電流波形の変化を示す図である。
【
図6】一対の電極間の筒体表面のパティキュレートを燃焼除去するために一対の電極間に第2電圧を印加したときの、一対の電極間における電流の変化、一対の電極間における筒体表面の温度の変化及び一対の電極間における筒体表面のパティキュレート量の変化を示す図である。
【
図7】本発明第2実施形態の検出装置の一対の電極間に矩形波状の交流電圧を印加して一対の電極間に充電される電圧を測定するための電気回路図である。
【
図8】(a)は一対の電極間に印加される電圧波形の変化を示す図であり、(b)は一対の電極間に充電される電圧波形の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
(なお、以下に記載の「第1の実施の形態」は「参考の形態」である。)
【0017】
<第1の実施の形態>
図2に示すように、ディーゼルエンジン11の吸気ポートには吸気マニホルド12を介して吸気管13が接続され、排気ポートには排気マニホルド14を介して排気管16が接続される。吸気管13には、ターボ過給機17のコンプレッサハウジング17aと、ターボ過給機17により圧縮された吸気を冷却するインタクーラ18とがそれぞれ設けられ、排気管16にはターボ過給機17のタービンハウジング17bが設けられる。コンプレッサハウジング17aにはコンプレッサ回転翼(図示せず)が回転可能に収容され、タービンハウジング17bにはタービン回転翼(図示せず)が回転可能に収容される。コンプレッサ回転翼とタービン回転翼とはシャフト(図示せず)により連結され、エンジン11から排出される排ガスのエネルギによりタービン回転翼及びシャフトを介してコンプレッサ回転翼が回転し、このコンプレッサ回転翼の回転により吸気管13内の吸入空気が圧縮されるように構成される。
【0018】
排気管16の途中には、排ガス中のパティキュレートを捕集可能なフィルタ19が設けられる。このフィルタ19は排気管16より大径のケース21に収容される。またフィルタ19は、図示しないが、コージェライトのようなセラミックからなる多孔質の隔壁で仕切られた多角形断面を有する。このフィルタ19はこれらの隔壁により多数の互いに平行に形成された貫通孔の相隣接する入口部と出口部を封止部材により交互に封止することにより構成される。更に上記フィルタ19では、フィルタ19の入口部から導入されたエンジン11の排ガスが多孔質の隔壁を通過する際に、この排ガスに含まれるパティキュレートが捕集されて、出口部から排出されるようになっている。なお、
図2中の符号22はフィルタ19より排ガス上流側のケース21に収容された酸化触媒である。この酸化触媒22はモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に白金ゼオライト、白金アルミナ、又は白金−パラジウムアルミナ等の貴金属系触媒をコーティングして構成される。
【0019】
一方、フィルタ19より排ガス上流側の排気管16にはグロープラグ23が設けられる(
図1及び
図2)。このグロープラグ23は、エンジン11に不具合が発生したときであって、この不具合をエンジン11に設けられたセンサ(例えば、λセンサ、酸素濃度センサ等)で検出できなかったときに、フィルタ19が急激に目詰まりすることを抑制するために設けられる。またグロープラグ23は、
図1に詳しく示すように、両端が閉止された金属管23aと、この金属管23aに螺旋状に巻回された状態で遊挿されかつニクロム線等により形成された発熱体23bと、金属管23aと発熱体23bとの隙間に充填された無機物の粉末23cとを有する。金属管23aはステンレス等の耐熱性を有する金属により形成されることが好ましく、無機物の粉末23cは耐熱性及び電気絶縁性を有しかつ良好な熱導電性を有する窒化ケイ素やマグネシア等のセラミックにより形成されることが好ましい。またグロープラグ23にはアルミナや窒化アルミ等のセラミックにより形成された筒体24が嵌着される。この筒体24の長手方向中央には、外周面に雄ねじ26aが形成されたブッシュ26が嵌着され、排気管16には、内周面に雌ねじ27aが形成されたソケット27が溶着される。上記筒体24が嵌着されたグロープラグ23は、ブッシュ26の雄ねじ26aをソケット27の雌ねじ27aに螺合することにより、排気管16に取付けられる。このときグロープラグ23及び筒体24は、これらの先端が排気管16の内部中央まで延びるように排気管16に挿入される。更に筒体24表面には筒体24の長手方向に間隔をあけて一対の電極28,29が配設される。これらの電極28,29は、筒体24表面の全周にわたって形成されるとともに、一対の電極28,29の間に一対の電極28,29を分割するように位置しかつ一対の電極28,29から等距離にある基準平面31(一方の電極28と他方の電極29とが面対称となる基準平面31)が排気管16の孔16aの中心線16bを含むように形成されることが好ましい。
【0020】
上記一対の電極28,29のうち一方の電極28は変圧回路34及びインバータ32を介してバッテリ33に電気的に接続され、他方の電極39は接地される(
図1)。また上記発熱体23bの一端は金属管23a内を通るワイヤハーネスを介して一方の端子23dに電気的に接続され、この一方の端子23dは駆動回路35を介してバッテリ33に電気的に接続される。発熱体23bの他端は金属管23aを介して他方の端子23eに電気的に接続され、この他方の端子23eは接地される。一方の電極28と変圧回路34とを接続するワイヤハーネス36にはこのワイヤハーネス36に流れる電流を測定する電流計37が設けられる(
図1及び
図4)。電流計37の測定値(検出出力)はコントローラ38の制御入力に接続され、コントローラ38の制御出力は上記インバータ32及び駆動回路35にそれぞれ接続される(
図1)。このコントローラ38は、インバータ32を制御することにより、直流電圧(バッテリ電圧)が矩形波状の交流電圧(0.01〜100Hz程度)に変換され、更に変圧回路34によりその電圧が第1電圧(例えば、AC 0.5kV〜AC 4kV程度)に変圧されて一対の電極28,29間に印加されるように構成される。また発熱体23bに第2電圧(例えば、DC 0V〜DC 24V程度)が印加されると、筒体24表面に付着したパティキュレート又は水分のいずれか一方又は双方を加熱除去され、発熱体23bに第2電圧より低い第3電圧が印加されると、筒体24表面に付着したパティキュレートを燃焼させずに、一対の電極28,29間への第1電圧の印加時に一対の電極28,29間の電気抵抗を安定させる所定温度(130〜250℃の範囲内の所定温度(例えば、200℃程度))に筒体24表面が保たれるようになっている。更にコントローラ38にはメモリ39が接続される。このメモリ39には、電流計37が測定した電流(ピーク電流)に対応する、一対の電極28,29間の筒体24表面に付着したパティキュレート量がマップとして記憶される。なお、一対の電極間に矩形波状の交流電圧ではなく、直流電圧を印加してもよい。
【0021】
一方、フィルタ19に捕集されたパティキュレートの捕集量は捕集量検出手段(図示せず)により検出される。この捕集量検出手段は、図示しないが、エンジン11の回転速度及びエンジン11への燃料噴射量に対するパティキュレートの排出量の積算に基づいてフィルタ19に捕集されたパティキュレートの捕集量を検出するか、或いはフィルタ19前後の排ガスの圧力差に基づいてパティキュレートの捕集量を検出するように構成される。なお、
図2中の符号41は、排気マニホルド14及び吸気管13をエンジン11をバイパスして連通接続するEGR管である。このEGR管41は排気マニホルド14の枝管部から分岐し、インタクーラ18より吸気下流側の吸気管13に合流する。また、
図2中の符号42は、EGR管41に設けられこのEGR管41から吸気管13に還流される排ガス(EGRガス)の流量を調整するEGRバルブである。更に、
図2中の符号43は、EGR管41を通る排ガス(EGRガス)を冷却するEGRクーラである。
【0022】
このように構成された排ガス中のパティキュレート量の検出装置の動作を
図3のフローチャート図に基づいて説明する。電源をオンしてエンジン11を始動すると、先ずコントローラ38は、グロープラグ23の発熱体23bに第2電圧を印加する。これにより発熱体23bの発生した熱が無機物の粉末23c及び金属管23aを通って筒体24に伝達され、筒体24表面の温度が極めて高くなるので、筒体24表面に付着したパティキュレート及び水分が加熱除去される。このとき上記第2電圧を例えば24Vとすると、一対の電極28,29間に流れる電流は、
図6(a)に示すように、筒体24表面の温度が低いため10A程度まで急激に上昇した後、次第に低下し、約30秒で略一定(例えば4A程度)になり、一対の電極28,29間の筒体24表面の温度は、
図6(b)に示すように、次第に上昇し、30秒程度で例えば700℃程度まで上昇し、一対の電極28,29間の筒体表面に付着したパティキュレートは、
図6(c)に示すように、徐々に燃焼して、約30秒程度で略完全に加熱除去される。一対の電極28,29間に第2電圧を印加してから30秒経過すると、コントローラ38は、発熱体23bに第2電圧より低い第3電圧(例えば、12V程度)を印加する。これにより、筒体24表面が所定温度(130〜250℃の範囲内の所定温度(例えば、200℃程度))に保たれる。この状態でコントローラ38は、一対の電極28,29間に第1電圧(例えば、
図5(a)に示すような周波数が1Hzである矩形波状の交流電圧)を印加し、このときの一対の電極28,29間の電気抵抗を筒体24表面のパティキュレート量がゼロである状態に対応させる補正を行う。具体的には、コントローラ38は、一対の電極28,29間に第1電圧を印加したときに、電流計37の測定した例えば
図5(b)に示すような電流波形を検出出力として取込み、上記第1電圧をこの電流波形のピーク電流で除して一対の電極28,29間の電気抵抗を求め、この電気抵抗を筒体24表面のパティキュレート量がゼロである状態に対応させる補正を行う。その後、所定時間毎(例えば、10分毎)に、コントローラが発熱体に第3電圧を印加して、筒体表面の温度を130〜250℃の範囲内の所定温度(例えば、200℃程度)に安定させた状態で、一対の電極28,29間に第1電圧を印加して得られた一対の電極28,29間の電気抵抗をメモリ39のマップと比較して、筒体24表面に付着したパティキュレート量を求めることにより、筒体24表面に付着するパティキュレート量を精度良く検出できる。
【0023】
一方、電源をオンしてエンジン11を始動し、エンジン11を連続運転して所定時間経過すると(例えば、30時間)、上記と同様に、先ずコントローラ38は、グロープラグ23の発熱体23bに第2電圧を印加することにより、筒体24表面に付着したパティキュレートを加熱除去する。次にコントローラ38は、発熱体23bに第2電圧より低い第3電圧を印加することにより、筒体24表面を所定温度に保つ。この状態でコントローラ38は、一対の電極28,29間に第1電圧を印加することにより、一対の電極28,29間の電気抵抗を筒体24表面のパティキュレート量がゼロである状態に対応させる補正を行う。このように、コントローラ38は、エンジン11の始動毎に又はエンジン11の連続運転状態における所定時間経過毎に、筒体24表面のパティキュレートを燃焼除去した後に、一対の電極28,29間の筒体表面の温度を略一定にして一対の電極28,29間の電気抵抗を安定にした状態で、一対の電極28,29間の電気抵抗のゼロ点補正を行うので、その後、所定時間毎(例えば、10分毎)に、コントローラ38が筒体表面の温度を130〜250℃の範囲内の所定温度(例えば、200℃程度)に安定させた状態で、一対の電極28,29間に第1電圧を印加して得られた一対の電極28,29間の電気抵抗をメモリ39のマップと比較して、筒体24表面に付着したパティキュレート量を求めることにより、筒体24表面に付着するパティキュレート量を精度良く検出できる。この結果、エンジン11に不具合が発生して排ガス中のパティキュレート量が急激に多くなっても、本発明のパティキュレート量の検出装置が筒体24表面に付着したパティキュレート量が急激に多くなったことを検出するので、エンジン11の不具合を速やかに検出でき、フィルタ19の急激な目詰まりを防止できる。
【0024】
<第2の実施の形態>
図7及び
図8は第2の実施の形態を示す。
図7及び
図8において
図4及び
図5と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、電流計が用いられずに、一対の電極28,29のうち他方の電極29を接地するワイヤハーネス61に設けられたコンデンサ62と、このワイヤハーネス61にコンデンサ62と並列になるように接続された電圧計63とが用いられる。この電圧計63の測定するコンデンサ62の充電電圧はコントローラの制御入力に接続される。またメモリには、電圧計63が測定した充電電圧(ピーク電圧)に対応する、一対の電極28,29間の筒体表面に付着したパティキュレート量がマップとして記憶される。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0025】
このように構成された排ガス中のパティキュレート量の検出装置では、コントローラは、エンジンの始動毎に又はエンジンの連続運転状態における所定時間経過毎に、筒体表面のパティキュレートを燃焼除去した後に、一対の電極28,29間の筒体表面の温度を略一定にして一対の電極28,29間の充電電圧を安定にした状態で、一対の電極28,29間の充電電圧のゼロ点補正を行うので、その後、所定時間毎(例えば、10分毎)にコントローラが一対の電極28,29間に第1電圧を印加して得られた一対の電極28,29間の充電電圧をメモリのマップと比較して筒体表面に付着したパティキュレート量を求めることにより、筒体表面に付着するパティキュレート量を精度良く検出できる。上記以外の動作は第1の実施の形態の動作と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0026】
なお、上記第1及び第2実施の形態では、本発明の検出方法及び検出装置をディーゼルエンジンに適用したが、本発明の検出方法及び検出装置をガソリンエンジンに適用してもよい。また、上記第1及び第2の実施の形態では、本発明の検出方法及び検出装置をターボ過給機付ディーゼルエンジンに適用したが、本発明の検出方法及び検出装置を自然吸気型ディーゼルエンジン又は自然吸気型ガソリンエンジンに適用してもよい。また、上記第1及び第2実施の形態では、一対の電極間の筒体表面に酸化触媒層を形成しなかったが、一対の電極間の筒体表面に酸化触媒層を形成してもよい。この場合、発熱体に第2電圧を印加して筒体表面の温度が上昇したときに、酸化触媒が筒体表面に付着したパティキュレートの燃焼を促進する、即ち酸化触媒がパティキュレートの燃焼開始温度を低くしかつ燃焼速度を速くするので、一対の電極間の筒体表面に付着したパティキュレートを短時間で確実に燃焼除去できる。上記酸化触媒層としては、白金を担持したアルミナやゼオライトを筒体表面にコーティングして得られた白金系の酸化触媒層や、銀を担持した酸化セリウムを筒体表面にコーティングして得られた銀系の酸化触媒層などが挙げられる。更に、上記第1及び第2の実施の形態では、グロープラグをフィルタより排ガス上流側の排気管に設けたが、グロープラグをフィルタより排ガス下流側の排気管に設けてもよい。これによりフィルタの故障を速やかに検出することができる。
【符号の説明】
【0027】
11 ディーゼルエンジン(エンジン)
16 排気管
19 フィルタ
23 グロープラグ
23b 発熱体
24 筒体
28,29 電極
38 コントローラ