(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一のXアクチュエータと前記第二のXアクチュエータと前記Yアクチュエータは、それぞれ、第一の積層型圧電素子と第二の積層型圧電素子と第三の積層型圧電素子を備え、
前記第一の積層型圧電素子と前記第二の積層型圧電素子は実質的に同一であり、
前記第三の積層型圧電素子の変位方向の長さが、前記第一および第二の積層型圧電素子の変位方向の長さよりも長い、請求項3に記載の走査機構。
前記複数の積層型圧電素子は、二つの第三の積層型圧電素子を備え、前記二つの第三の積層型圧電素子は、前記第一および第二の積層型圧電素子と実質的に同一である、請求項5に記載の走査機構。
前記第一ないし第四の弾性部を支持する支持部をさらに備え、前記支持部は、前記第一ないし第四の弾性部と一体的に形成され、前記固定枠に固定されている、請求項7に記載の走査機構。
前記可動部は、前記走査対象物がY軸に平行な直線に対して対称となるように前記走査対象物を前記可動部に保持する、請求項1ないし請求項8のいずれかひとつに記載の走査機構。
前記可動部に保持されたZアクチュエータをさらに備え、前記Zアクチュエータは、カンチレバーをその長手方向がY軸に沿うように保持し、前記カンチレバーをXY平面に垂直なZ軸方向に走査する、請求項9に記載の走査機構。
前記カンチレバーの変位を検出するための光を前記カンチレバーに集光する集光部をさらに備え、前記集光部は、前記可動部に保持されており、前記Zアクチュエータと前記集光部がXY平面への投影においてY軸に沿って並ぶように配置されている、請求項10に記載の走査機構。
前記Zアクチュエータは、Z軸に沿って伸縮し得る実質的に同一の二つの第四の積層型圧電素子を有し、前記二つの第四の積層型圧電素子は、前記可動部からZ軸に沿って互いに反対側に延びている、請求項10または請求項11に記載の走査機構。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。すべての実施形態において、XYZ直交座標系を、ラスター走査の高速走査の方向にX軸が平行になり、ラスター走査の低速走査の方向にY軸が平行になるように設定している。つまり、ラスター走査の高速走査の方向をX軸方向、低速走査の方向をY軸方向としている。
【0020】
<第一実施形態>
本実施形態は、走査機構に向けられている。以下、
図1Aと
図1Bと
図1C〜
図3を参照しながら本実施形態について説明する。
図1Aは、本実施形態の走査機構の上面図であり、
図1Bは、
図1A中のIx−Ix線に沿った走査機構の断面図である。また
図1Cは、
図1A中のIy−Iy線に沿った走査機構の断面図である。
【0021】
図1Aと
図1Bと
図1Cに示されるように、本実施形態の走査機構10は、固定枠11と、固定枠11内に配置されたXYステージ19と、XYステージ19と固定枠11の間に配置されたX軸に沿って延びている圧電素子12Aと、圧電素子12Aと対向するようにXYステージ19と固定枠11の間に配置されたX軸に沿って延びている圧電素子12Bと、XYステージ19と固定枠11の間に配置されたY軸に沿って延びている圧電素子12Cを有している。
【0022】
XYステージ19は、互いに直交するX軸方向とY軸方向に移動可能なXY可動部14と、XY可動部14のX軸に沿った両側に設けられた弾性部16A,16Bと、XY可動部14のY軸に沿った両側に設けられた弾性部16C,17と、弾性部16A〜16C,17を支持している支持部15A,15B,15C,15Dとを有している。XY可動部14には、図示しない走査対象物が取り付けられる。
【0023】
圧電素子12Aと圧電素子12Bは、固定枠11とXY可動部14のX軸に沿った間に配置されている。また圧電素子12Aと圧電素子12Bは、XY可動部14のX軸に沿った両側に配置されている。さらに圧電素子12Aと圧電素子12Bは、XY可動部14の重心を通りX軸に平行な直線が圧電素子12Aと圧電素子12Bのそれぞれの中心を通るよう配置されている。すなわち、圧電素子12Aと圧電素子12Bの配置は、XY可動部14の重心を通りY軸に平行な直線に対して対称である。つまり、圧電素子12Aと圧電素子12Bの配置は、XY可動部14の重心を通りY軸に平行な直線を対称軸として、X軸方向に対称(線対称)となっている。なお、本実施形態では、XY可動部14の重心14を通りY軸に平行な直線を対称軸としたが、XY可動部14の中心を通るような対称軸であってもよい。すなわち、圧電素子12Aと圧電素子12Bの配置がX軸方向に線対称となるためのY軸方向に平行な直線が対称軸として存在すれば、どのような形態であってもよい。
【0024】
圧電素子12Cは、固定枠11とXY可動部14のY軸に沿った間に配置されている。また圧電素子12Cは、XY可動部14のY軸に沿った片側に位置している。さらに圧電素子12Cは、XY可動部14の重心を通りY軸に平行な直線が圧電素子12Cの中心を通るよう配置されている。すなわち、圧電素子12Cの配置は、XY可動部14の重心を通りX軸に平行な直線に対して非対称である。なお、本実施形態では、圧電素子12Cの配置が、XY可動部14の重心を通りX軸に平行な直線に対して非対称であるとしたが、XY可動部14の中心を通りX軸に平行な直線に対して非対称であってもよい。
【0025】
弾性部16Aは、XY可動部14と圧電素子12Aの間に配置されている。弾性部16dBは、XY可動部14と圧電素子12Bの間に配置されている。弾性部16Cは、XY可動部14と圧電素子12Cの間に配置されている。弾性部17は、XY可動部14と固定枠11の間に配置されている。
【0026】
支持部15A,15Dは、圧電素子12AのY軸に沿った両側に位置し、支持部15B,15Cは、圧電素子12BのY軸に沿った両側に位置している。支持部15Aは弾性部16Aと弾性部16Cを支持し、支持部15Bは弾性部16Bと弾性部16Cを支持し、支持部15Cは弾性部16Bと弾性部17を支持し、支持部15Dは弾性部16Aと弾性部17を支持している。支持部15A〜15Dはすべて固定枠11に固定されている。支持部15A〜15Dの固定は、これに限定されないが、例えば、ねじ締結や接着によってなされている。
【0027】
弾性部16Aと16Bと16Cは、向きが異なる点を除けば、まったく同一形状をしている。これらは共に十字形状を有している。また弾性部17はT字形状を有している。XY可動部14の圧電素子12Aの側に位置する弾性部16Aは、圧電素子12Aによって押される押圧部18Aを有している。またXY可動部14の圧電素子12Bの側に位置する弾性部16Bは、圧電素子12Bによって押される押圧部18Bを有している。またXY可動部14の圧電素子12Cの側に位置する弾性部16Cは、圧電素子12Cによって押される押圧部18Cを有している。
【0028】
弾性部16A,16Bは、ZX平面に広がりX軸に沿って細長い矩形の板状部分と、YZ平面に広がりY軸に沿って細長い矩形の板状部分とを有している。X軸に沿って細長い矩形の板状部分は、X軸に沿った一方の端部がXY可動部14と接続し、X軸に沿った一方の端部がY軸に沿って細長い矩形の板状部分の中央部と接続している。Y軸に沿って細長い矩形の板状部分は、Y軸に沿った両端部が支持部15A〜15Dと接続している。
【0029】
また、弾性部16C,17は、YZ平面に広がりY軸に沿って細長い矩形の板状部分と、ZX平面に広がりX軸に沿って細長い矩形の板状部分とを有している。Y軸に沿って細長い矩形の板状部分は、Y軸に沿った一方の端部がXY可動部14と接続し、Y軸に沿った一方の端部がX軸に沿って細長い矩形の板状部分の中央部と接続している。X軸に沿って細長い矩形の板状部分は、X軸に沿った両端部が支持部15A〜15Dと接続している。
【0030】
これらの板状部分の厚さ、すなわちZ軸に沿った寸法は、これに限定されないが、例えば、XY可動部14の厚さと同じである。
【0031】
このような形状を有することにより、弾性部16A,16Bは、XY可動部14のY軸に沿った動きに対しては、ZX平面に広がりX軸に沿って細長い矩形の板状部分と、YZ平面に広がりY軸に沿って細長い矩形の板状部分の両方が弾性変形しやすい。つまり、弾性部16A,16Bは、XY可動部14のY軸に沿った動きに対しては柔らかい。また、XY可動部14のX軸に沿った動きに対しては、YZ平面に広がりY軸に沿って細長い矩形の板状部分は弾性変形しやすいが、ZX平面に広がりX軸に沿って細長い矩形の板状部分は弾性変形しにくい。つまり、弾性部16A,16Bは、XY可動部14のX軸に沿った動きに対しては硬くなる。
【0032】
弾性部16C,17は、XY可動部14のX軸に沿った動きに対しては、YZ平面に広がりY軸に沿って細長い矩形の板状部分と、ZX平面に広がりX軸に沿って細長い矩形の板状部分の両方が弾性変形しやすい。つまり、弾性部16C,17は、XY可動部14のX軸に沿った動きに対しては柔らかい。また、XY可動部14のY軸に沿った動きに対しては、ZX平面に広がりX軸に沿って細長い矩形の板状部分は弾性変形しやすいが、YZ平面に広がりY軸に沿って細長い矩形の板状部分は弾性変形しにくい。つまり、弾性部16C,17は、XY可動部14のY軸に沿った動きに対しては硬くなる。
【0033】
従って、XY可動部14は、弾性部16A,16Bにより、X軸に沿った方向に関して高剛性に支持され、弾性部16C,17により、Y軸に沿った方向に関して高剛性に支持されている。
【0034】
XYステージ19は一体的に形成されている。つまり、XY可動部14と支持部15A〜15Dと弾性部16A〜16Cおよび弾性部17と押圧部18A〜18Cは一体的に形成されている。XYステージ19は、例えばアルミニウム製の金属のブロックを選択的に切り欠いて作製される。
【0035】
固定枠11の材質は、好ましくは、XYステージ19の材質よりも高い弾性率を有している。例えば、固定枠11はステンレス鋼で構成され、XYステージ19はアルミニウムで構成される。
【0036】
圧電素子12Aは、弾性部16Aの押圧部18Aと固定枠11の間に所定の予圧がかかるように配置されている。また、圧電素子12Bは、弾性部16Bの押圧部18Bと固定枠11の間に所定の予圧がかかるように配置されている。さらに、圧電素子12Cは、弾性部16Cの押圧部18Cと固定枠11の間に所定の予圧がかかるように配置されている。
【0037】
圧電素子12Aは、弾性部16Aを介してXY可動部14をX軸方向に走査するための第一のXアクチュエータであり、電圧印加に応じてX軸に沿って伸縮し得る。圧電素子12Bは、弾性部16Bを介してXY可動部14をX軸方向に走査するための第二のXアクチュエータであり、電圧印加に応じてX軸に沿って伸縮し得る。圧電素子12Cは、弾性部16Cを介してXY可動部14をY軸方向に走査するためのYアクチュエータであり、電圧印加に応じてY軸に沿って伸縮し得る。
【0038】
圧電素子12Aと圧電素子12Bと圧電素子12Cは、例えば、実質的に同一の積層型圧電素子で構成されている。実質的に同一とは、形状や特性の違いが30%以下のものを言う。これは、圧電素子自体が30%程度の非線形性をすでに持っているからであり、従ってバラツキが30%以下であれば実質的に同一と見なせる。
【0039】
圧電素子12Aと圧電素子12Bは、プッシュプル動作をおこなうようになっている。圧電素子12Aが伸びるときは圧電素子12Bは縮み、圧電素子12Aが縮むときは圧電素子12Bは伸びる。すなわち圧電素子12Aと圧電素子12Bは、伸縮動作に対して逆に動作する。
【0040】
図2は、圧電素子12A〜12Cを伸縮動作させるためのXYピエゾドライバ20を示している。このXYピエゾドライバ20は3チャンネルの出力端子を有しており、圧電素子12A〜12Cへの電圧印加が可能になっている。出力端子Xa,Xb,Yからは、それぞれ圧電素子12A〜12Cへ電圧印加を行うための駆動信号Sig(Xa),Sig(Xb),Sig(Y)が出力される。
図3は、XYピエゾドライバ20から出力される信号を示している。
図3に示すように、圧電素子12Aへの駆動信号Sig(Xa)と圧電素子12Bへの駆動信号Sig(Xb)は逆位相の関係を有している。これにより、圧電素子12Aが伸びるときは圧電素子12Bは縮み、圧電素子12Aが縮むときは圧電素子12Bは伸びるように動作する。
【0041】
以上のように、圧電素子12Aと圧電素子12Bと圧電素子12Cは、XY可動部14をX軸方向とY軸方向に走査するXYアクチュエータを構成している。前述したように、圧電素子12Aと圧電素子12Bの配置は、XY可動部14の重心を通りY軸に平行な直線に対して対称であり、圧電素子12Cの配置は、XY可動部14の重心を通りX軸に平行な直線に対して非対称である。すなわち、このXYアクチュエータは、XY可動部14の重心を通りY軸方向に平行な直線に対して対称形であり、XY可動部14の重心を通りX軸方向に平行な直線に対して非対称形である。
【0042】
このように構成された走査機構10においては、X走査の際、圧電素子12Aと圧電素子12BがX軸に沿って伸縮する。圧電素子12Aが伸びる時は、圧電素子12Aが弾性部16Aを弾性変形させながらXY可動部14をX軸方向の+の向きに押す。同時に、圧電素子12Bが縮み、弾性部16Bを弾性変形させながらXY可動部14をX軸方向の+の向きに引く。これによりXY可動部14はX軸に沿ってX軸方向の+の向きに移動される。これに伴って、弾性部16Cと弾性部17もXY可動部14の移動方向に引っ張られるために弾性変形される。このとき、弾性部16Aと弾性部16Bの弾性変形量はほぼ同じになる。また、弾性部16Cと弾性部17の弾性変形量もほぼ同じになる。
【0043】
反対に、圧電素子12Aが縮む時は、圧電素子12Aが弾性部16Aを弾性変形させながらXY可動部14をX軸方向の−の向きに引く。同時に、圧電素子12Bが伸び、弾性部16Bを弾性変形させながらXY可動部14をX軸方向の−の向きに押す。これによりXY可動部14はX軸に沿ってX軸方向の−の向きに移動される。これに伴って、弾性部16Cと弾性部17もXY可動部14の移動方向に引っ張られるために弾性変形される。このとき、弾性部16Aと弾性部16Bの弾性変形量はほぼ同じになる。また、弾性部16Cと弾性部17の弾性変形量もほぼ同じになる。
【0044】
このようなXY可動部14のX軸に沿った走査においては、弾性部16Cと弾性部17の弾性変形量がほぼ同じになるので、XY可動部14のY軸方向にかかる力が釣り合うことになる。従って、XY可動部14がY軸方向のどちらかの向きに引っ張られることがなく、X軸方向に非常に高い直進性をもって走査される。
【0045】
さらに、圧電素子12Aが伸びるときは圧電素子12Bは縮み、圧電素子12Aが縮むときは圧電素子12Bは伸びるので、すなわちプッシュプル動作をするので、X走査の際にXY可動部14の重心付近に加わるX軸方向の荷重は理論上ほぼゼロになる。一般的に、高速ラスター走査が可能な走査機構においては、走査機構全体の共振周波数を高くするためその剛性が高くなるように設計される。高速走査の周波数は1kHzまたはそれ以上におよぶ。このような走査機構においては、X走査の際の可動部に加わる衝撃荷重は非常に大きくなる。その結果、可動部や走査機構が有する固有振動を励起させ、振動ノイズが増えるという問題が生じる。X軸方向のプッシュプル動作は、XY可動部14の重心付近に加わるX軸方向の荷重をほぼゼロにするので、このような問題が回避される。すなわち振動ノイズ低減に効果がある。
【0046】
またY走査の際は、圧電素子12CがY軸に沿って伸縮する。圧電素子12Cが伸びる時は、圧電素子12Cが弾性部16Cを弾性変形させながらXY可動部14を押す。これによりXY可動部14はY軸に沿ってY軸方向の+の向きに移動される。これに伴って弾性部17はXY可動部14に押されることで弾性変形される。さらに弾性部16Aと16BもXY可動部14の移動方向に引っ張られるために弾性変形される。このとき、弾性部16Aと弾性部16Bの弾性変形量はほぼ同じになる。また、弾性部16Cと弾性部17の弾性変形量もほぼ同じになる。
【0047】
圧電素子12Cが縮む時は、圧電素子12Cが弾性部16Cを弾性変形させながらXY可動部14をY軸方向の−の向きに引く。これによりXY可動部14はY軸に沿ってY軸方向の−の向きに移動される。これに伴って弾性部17はXY可動部14に引かれることで弾性変形される。さらに弾性部16Aと16BもXY可動部14の移動方向に引かれるために弾性変形される。このとき、弾性部16Aと弾性部16Bの弾性変形量はほぼ同じになる。また、弾性部16Cと弾性部17の弾性変形量もほぼ同じになる。
【0048】
このようなXY可動部14のY軸に沿った走査においては、弾性部16Aと弾性部16Bの弾性変形量がほぼ同じになるので、XY可動部14のX軸方向にかかる力が釣り合うことになる。従って、XY可動部14がX軸方向のどちらかの向きに引っ張られることがなく、Y方向に非常に高い直進性をもって走査される。
【0049】
またXY可動部14のY軸に沿った走査においては、X軸に沿った走査と比較して走査速度が1/100またはそれ以下と非常に遅く、衝撃荷重は非常に小さい。すなわちプッシュプル動作をさせなくとも、振動ノイズの影響は小さい。プッシュプル動作をさせるためには、圧電素子を増やすだけでなく、ピエゾアンプも1チャンネル増やす必要がある。これは、構成要素を増やし、構造を複雑にし、コストも上げるという問題を生じさせる。XY可動部14のY軸に沿った走査においては、この問題が回避される。
【0050】
以上の説明から分かるように、本実施形態の走査機構では、圧電素子12Aと圧電素子12Bは、高速走査に有用なプッシュプル動作をおこなうに適したXアクチュエータを構成し、圧電素子12Cは、プッシュプル動作の必要性がない低速走査に適したYアクチュエータを構成している。すなわち、本実施形態の走査機構は、高速走査に適したXアクチュエータと低速走査に適したYアクチュエータを備えている。これにより、走査速度の速いX走査に対してのみプッシュプル動作を適用することにより振動ノイズが十分に抑えられる。また、走査速度の遅いY走査のためのYアクチュエータの構成が単純化される。これにより、必要以上に構成要素を増やすことなく、従って無駄に構造を複雑にすることなく、さらにコストを上げることなく、高精度な走査が実現できる。
【0051】
<第二実施形態>
本実施形態は、走査機構に向けられている。以下、
図4Aと
図4Bと
図4Cを参照しながら本実施形態について説明する。
図4Aは、本実施形態の走査機構の上面図であり、
図4Bは、
図4A中のIIx−IIx線に沿った走査機構の断面図である。また
図4Cは、
図4A中のIIy−IIy線に沿った走査機構の断面図である。
図4Aと
図4Bと
図4Cにおいて、
図1Aと
図1Bと
図1Cに示した部材と同一の参照符号を付した部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0052】
図4Aと
図4Bと
図4Cに示されるように、本実施形態の走査機構30は、走査機構10と比較して、固定枠31と、支持部33A,33Bを含むXYステージ32と、圧電素子34に違いがある。
【0053】
圧電素子34は、例えば積層圧電素子で構成されており、
図1Aに示した走査機構10の圧電素子12C(=圧電素子12A,12B)と比較して、例えば、2倍の駆動効率(単位駆動信号あたりの変位量)を有している。つまり圧電素子34は、圧電素子12Cの長さ(=圧電素子12A,12Bの長さ)の2倍の長さを有している。これに伴って、固定枠31と、支持部33A,33Bを含むXYステージ32は、Y軸方向に、圧電素子12Cの長さ分だけ広がった形状をしている。
【0054】
X走査のプッシュプル動作は、XY可動部14の重心付近に加わるX軸方向の荷重をほぼゼロにできる効果をもつ。その結果、X走査の際の衝撃荷重に起因するXY可動部14の変形を生じさせることはない。しかしながら、Y軸に沿った走査においては、プッシュプル動作をさせていないので、XY可動部14に静荷重とみなせる力が加わり、XY可動部14を変形させることがある。XY可動部14の変形は、圧電素子12Cの変位を吸収することを意味する。つまりY軸に沿った方向は、X軸に沿った方向に比べて変位量が少なくなる。Y軸に沿った方向の変位量を増やすには、走査機構のY軸に沿った方向のみ、剛性を低くする方法もあるが、走査機構全体の剛性も下がってしまう可能性がある。
【0055】
本実施形態の走査機構は、この問題を解決するものであって、Y軸に沿った方向の圧電素子として、X軸に沿った方向の圧電素子より長さが長いもの(駆動効率が高いもの)、例えば2倍の長さのものを用いる。その結果、走査機構全体の剛性をほぼ維持したまま、Y軸に沿った方向の変位量を増やすことができる。
【0056】
本実施形態の走査機構においては、Y軸に沿った方向の圧電素子として、例えば2倍の長さのものを用いている。しかしながら可動部や走査機構の構造(弾性部の構造)によってY軸に沿った方向の変位の減少量は変わるため、実際には、Y軸に沿った方向の変位がX軸に沿った方向の変位と等しくなるように、長さを選定する必要がある。
【0057】
[変形例]
さらにこの走査機構では次の変形が可能である。第二実施形態の変形例である走査機構40を
図5Aと
図5Bと
図5Cに示す。
図5Aは、本実施形態の走査機構の上面図であり、
図5Bは、
図5A中のIIIx−IIIx線に沿った走査機構の断面図である。また
図5Cは、
図5A中のIIIy−IIIy線に沿った走査機構の断面図である。
図5Aと
図5Bと
図5Cにおいて、
図4Aと
図4Bと
図4Cに示した部材と同一の参照符号を付した部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0058】
図5Aと
図5Bと
図5Cに示されるように、本実施形態の走査機構40は、走査機構30と比較して、固定枠41と、支持部43A,43Bを含むXYステージ42と、圧電素子44,45と、弾性部材46に違いがある。
【0059】
圧電素子44,45は、圧電素子12A,12Bと実質的に同一の積層型圧電素子で構成されている。圧電素子44,45は、弾性部材46を介して直列に連結されている。すなわち、圧電素子44,45のそれぞれの変位方向の長さの合計値は、圧電素子12A,12Bの変位方向の長さよりも長い。
【0060】
弾性部材46は、例えばZX平面に広がる板状のアルミニウムで構成されており、その両端は、支持部43Aと支持部43Bに固定されている。固定は、例えば、圧入やねじ締結や接着によってなされている。図示はしないが、弾性部材46の両端は、支持部43Aと支持部43Bを含むXYステージ42と一体的に形成されてもよく、また、固定枠41に直接固定されてもよい。弾性部材46は、Y軸に沿っては弾性変形しやすく、X軸やZ軸に沿っては変形しにくい構造であれば様々な変形や変更が施されてもよい。
【0061】
本実施形態の走査機構の変形例においては、圧電素子44,45を連結することで、
図4Aに示した圧電素子34と同等の駆動効率、すなわち圧電素子12A,12Bの2倍の駆動効率が得られる。その結果、
図4Aと
図4Bと
図4Cに示す走査機構30と同等の効果が得られる。
【0062】
また圧電素子44,45は、圧電素子12A,12Bと実質的に同一であるので、構成要素の種類を増やすことなく、共通部品で実現が可能になる。
【0063】
さらに圧電素子44,45の連結部は、X軸とZ軸に沿った2方向を弾性部材46により拘束されるので、
図4Aと
図4Bと
図4Cに示す走査機構30よりも走査機構全体の剛性を高くすることができる。
【0064】
本変形例では、二つの圧電素子44,45が弾性部材46を介して直列に連結されているが、三つ以上の圧電素子が弾性部材を介して連結された構成としてもよい。
【0065】
<第三実施形態>
本実施形態は、走査機構に向けられている。以下、
図6Aと
図6Bを参照しながら本実施形態について説明する。
図6Aは、本実施形態の走査機構の上面図であり、
図6Bは、
図6A中のIVy−IVy線に沿った走査機構の断面図である。
図6Aと
図6Bにおいて、
図4Aと
図4Bと
図4Cに示した部材と同一の参照符号を付した部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0066】
図6Aと
図6Bに示されるように、本実施形態の走査機構50は、
図4Aと
図4Bと
図4Cに示した走査機構30と比較して、XY可動部52を含むXYステージ51に違いがある。より詳しくは、XY可動部52が、
図4Aに示したXY可動部14に走査対象物を追加した構成になっている。
【0067】
走査機構50は、XY可動部52に保持された圧電素子54と、圧電素子54に保持されたホルダ56と、ホルダ56に保持されたカンチレバー55を有している。圧電素子54は、一端がXY可動部52に固定され、−Z方向に延出している。圧電素子54の自由端には、カンチレバー55を保持するホルダ56が保持されている。圧電素子54は、例えば、積層型圧電素子で構成されている。圧電素子54は、電圧印加に応じてZ軸に沿って伸縮し得る。圧電素子54は、単独で、またはホルダ56と共に、XY平面に垂直なZ軸方向にカンチレバー55を走査するZアクチュエータを構成している。カンチレバー55は、ホルダ56に交換可能に取り付けられる。
【0068】
ホルダ56は、カンチレバー55をXY平面に対して5度ないし20度に傾きをもって保持する。これは、カンチレバー55のレバー面と、図示しないXY平面に平行に配置された試料との干渉を避けるためであり、ほとんどすべてのAFMにおいて実施されている。
【0069】
カンチレバー55の拡大図を
図7Aと
図7Bと
図7Cに示す。
図7Aは斜視図であり、
図7Bは上面図、
図7Cは側面図である。これらが示すように、カンチレバー55は、その自由端に機械的探針57を有している。カンチレバー55は、Y軸の−方向に沿って延びている。すなわち、ホルダ56は、カンチレバー55をその長手方向がY軸に沿うように保持する。
【0070】
走査機構50はさらに、XY可動部52に保持された集光部53を有している。集光部53は、XY可動部52に形成された貫通穴に配置され、XY可動部52の厚み内に収まっている。集光部53は、図示しないカンチレバーの光学式変位センサー、例えば光てこセンサーから出射されるカンチレバー55の変位を検出するための光をカンチレバー55に入射させる働きをする。集光部53は、これに限定されないが、例えば、単レンズで構成され、小さなカンチレバーにも集光し得るように、そのNAが0.4以上の光学特性を有している。また集光部53は、その直径が10mm以下であることが望ましい。XY走査の高速化を図るためには、XY可動部52自体を小型・軽量にすることが重要だからである。
【0071】
XY可動部14は、XY可動部14の重心を通りY軸に平行な直線に対して圧電素子54と集光部53が対称となるように圧電素子54と集光部53を保持している。また、圧電素子54と集光部53は、XY平面への投影においてY軸に沿って並ぶように配置されている。言い換えれば、圧電素子54と集光部53は、投影されたXY平面上において、互いに重なることなく、一方が他方の外側に位置している。
【0072】
このように構成された走査機構50においては、XY可動部52が、
図4Aと
図4Bと
図4Cに示す走査機構30の効果と同様に、振動ノイズを増やすことなく高い直進性をもって高速にXY方向に走査される。
【0073】
またXY可動部52がXY方向に走査される際、圧電素子54とともにカンチレバー55もXY方向に走査される。従って、カンチレバー55は、振動ノイズを与えることなく高い直進性をもって高速に走査される。
【0074】
カンチレバー55は、Y軸の−方向に沿って延びるよう保持されている。
図8Aと
図8Bに示すように、カンチレバー55の長手方向に沿った走査の際は、大気や水(液中観察時)の抵抗(F)を受けるため反りが生じるという問題がある。この反りは、走査速度が速くなればなるほど大きくなる。抵抗は速度に比例するからである。従って、カンチレバー55は、低速走査の軸であるY軸に沿って延びるよう保持する必要がある。走査機構50においては、カンチレバー55をY軸に沿って延びるよう保持しているので、カンチレバー55に反りをほとんど生じさせないで高速にXY方向に走査することができる。
【0075】
加えてXY可動部52がXY方向に走査される際、集光部53もXY方向に走査される。従って、集光部53も、振動ノイズを与えることなく高い直進性をもって高速にXY方向に走査される。
【0076】
さらに、XY可動部52がXY方向に走査される際、集光部53とともに集光部53の焦点位置も同じ距離だけXY方向に走査されるので、集光部53によって集光されたレーザ光の集光スポットも集光部53と同じ距離だけXY方向に走査される。従って、集光部53が作るレーザ光の集光スポットが、振動ノイズを与えることなく高い直進性をもって高速にXY方向に走査される。
【0077】
以上より、走査機構50においては、カンチレバー55と集光部53が作るレーザ光の集光スポットが、それらに相対振動をほとんど生じさせることなく高精度に高い直進性をもって高速にXY方向に同じ距離だけ走査される。
【0078】
従って、走査機構50においては、カンチレバー55と集光部53が作るレーザ光の集光スポットが高精度に高い直進性をもってXY方向に同じ距離だけ走査されるので、高精度で高い直進性をもち、かつ高速ラスター走査が可能な検出光追従型の走査機構が提供される。
【0080】
[第一変形例]
さらにこの走査機構では次の変形が可能である。第三実施形態の第一変形例である走査機構60を
図9Aと
図9Bに示す。
図9Aは、本実施形態の走査機構の上面図であり、
図9Bは、
図9A中のVy−Vy線に沿った走査機構の断面図である。
図9Aと
図9Bにおいて、
図6Aと
図6Bに示した部材と同一の参照符号を付した部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0081】
図9Aと
図9Bに示されるように、本実施形態の第一変形例である走査機構60は、
図6Aと
図6Bに示した走査機構50の構成に加え、圧電素子61と疑似ホルダ62を備えている。
【0082】
圧電素子61は、一端がXY可動部52に固定され、+Z方向に延出している。つまり、圧電素子54と圧電素子61は、XY可動部52からZ軸に沿って互いに反対側に延びている。
【0083】
圧電素子54と圧電素子61は、例えば実質的に同一の積層型圧電素子で構成されており、電圧印加に応じてZ軸に沿って伸縮し得る。圧電素子54と圧電素子61は、XY平面に垂直なZ軸方向にカンチレバー55を走査するZアクチュエータを構成している。
【0084】
XY可動部52の上面に設けられた圧電素子61の自由端には、ホルダ56と同一の部材である疑似ホルダ62が取り付けられている。疑似ホルダ62は、ホルダ56と同等の質量をもつ部材であれば置き換え可能である。
【0085】
カンチレバー55をZ方向に走査する際、図示しないZ圧電駆動部によりZ駆動信号を二つの圧電素子54,61に供給し、二つの圧電素子54,61が同じ量だけ逆向きに伸縮される。これにより、圧電素子54の伸縮がXY可動部52に与えるZ軸に沿った力が、圧電素子61の伸縮によって打ち消される。これにより、圧電素子54の伸縮により生じるXY可動部52のZ方向の振動がほぼ0に抑えられる。
【0086】
このように構成された走査機構60においては、
図6Aと
図6Bに示した走査機構50の効果に加え、二つの圧電素子54,61で構成されるZアクチュエータにより、カンチレバー55をZ方向に走査する際に生じる振動ノイズもほぼ0に抑えられる。
【0087】
[第二変形例]
さらにこの走査機構では次の変形が可能である。第三実施形態の第二変形例である走査機構70を
図10Aと
図10Bに示す。
図10Aは、本実施形態の走査機構の上面図であり、
図10Bは、
図10A中のVIy−VIy線に沿った走査機構の断面図である。
図10Aと
図10Bにおいて、
図9Aと
図9Bに示した部材と同一の参照符号を付した部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0088】
図10Aと
図10Bに示されるように、本実施形態の第二変形例である走査機構70は、
図9Aと
図9Bに示した走査機構60と比較して、
図9Aと
図9Bに示した集光部53が単レンズ71に置き換わった構成になっている。
【0089】
単レンズ71は、収束光をカンチレバー55のレバー面に対して垂直に入射させるように、その光軸がXY平面に垂直な軸に対して5度ないし20度になるよう傾けて保持されている。また単レンズ71は、XY可動部52に形成された貫通穴に配置され、XY可動部52の厚み内に収まっている。さらに単レンズ71は、長さ10μm、幅2μmの小さなカンチレバーにも集光できるように、そのNAが0.4以上の光学特性を有している。
【0090】
このように構成された走査機構70においては、
図9Aと
図9Bに示した走査機構60の効果に加え、次の効果が得られる。
【0091】
単レンズ71の光軸がXY平面に垂直な軸に対して5度ないし20度になるよう傾けて保持されているので、カンチレバー55に対して垂直に収束光を入射させることができる。また単レンズ71は、そのNAが0.4以上の光学特性を備えている。その結果、カンチレバー55に形成する集光スポット径を直径2μm程度にまで小さくすることができる。これは、カンチレバー55の変位検出の精度向上に効果がある。
【0092】
<第四実施形態>
本実施形態は、第三実施形態の走査機構を備えた走査型プローブ顕微鏡に向けられている。以下、
図11を参照しながら本実施形態について説明する。
【0093】
図11に示すように、本実施形態の走査型プローブ顕微鏡は、カンチレバー55を保持した走査機構70と、ホストコンピュータ91と、Z制御部90を備えたコントローラ89と、Zピエゾドライバ87と、XYピエゾドライバ88と、レーザ光源82と、ビームスプリッタ84と、波長板85と、分割ディテクタ86とを備えている。カンチレバー55に対向する位置には、試料台81に載置された試料80が配置されている。
【0094】
走査機構70は、カンチレバー55をX軸とY軸とZ軸に沿って走査するためのものであり、その詳細な構成は第三実施形態(
図10Aと
図10B)で説明した通りである。この走査機構70は図示しない鏡枠によって保持されている。
【0095】
カンチレバー55は、試料80に対向して配置される機械的探針57を柔軟なレバー部の自由端に備えており、カンチレバー55は試料80との相互作用に応じてZ軸に沿って変位する。
【0096】
レーザ光源82とビームスプリッタ84と波長板85と分割ディテクタ86は、カンチレバー55の自由端のZ軸に沿った変位を光学的に検出するための光学式変位センサーを構成しており、それぞれ図示しない鏡枠に保持されている。これらで構成される光学式変位センサーは、例えば走査型プローブ顕微鏡によく用いられる光てこセンサーであり、レーザ光源82から照射されたコリメートレーザ光83は、ビームスプリッタ84と波長板85を介して走査機構70に設けられた単レンズ71に照射され、カンチレバー55上に直径2μm程度の集光スポットを形成する。その反射光は、波長板85を通ることでビームスプリッタ84によって偏向されて分割ディテクタ86に入射する。分割ディテクタ86は、カンチレバー55のZ変位を反映した変位信号をコントローラ89に出力する。
【0097】
Zピエゾドライバ87は、走査機構70に搭載された二つの圧電素子54,61を駆動するためのものである。
【0098】
XYピエゾドライバ88は、走査機構70に搭載された圧電素子12A,12Bと圧電素子12Cを駆動するためのものである。XYピエゾドライバ88は、
図2で示したXYピエゾドライバ20と同等の機能を備えている。
【0099】
コントローラ89は、Zピエゾドライバ87とXYピエゾドライバ88を制御するためのものある。
【0100】
ホストコンピュータ91は、カンチレバー55の変位情報と走査機構70の走査情報とに基づいて試料80の物理情報を取得する処理部を構成している。
【0101】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡は以下のように動作する。
【0102】
レーザ光源82とビームスプリッタ84と波長板85と分割ディテクタ86で構成される光学式変位センサーは、例えば走査型プローブ顕微鏡によく用いられる光てこセンサーであり、レーザ光源82から照射されたコリメートレーザ光83は、走査機構70に設けられた単レンズ71を介してカンチレバー55上に直径数μm程度の集光スポットを形成し、その反射光を分割ディテクタ86で受けることで、カンチレバー55の自由端にある機械的探針57のZ変位をとらえる。分割ディテクタ86は、カンチレバー55のZ変位を反映した変位信号をコントローラ89に出力する。
【0103】
コントローラ89は、XY方向にラスター走査するためのXY走査信号を生成し、XY走査信号をXYピエゾドライバ88とホストコンピュータ91に供給する。コントローラ89はZ制御部90を含んでおり、Z制御部90は、分割ディテクタ86で得られるカンチレバー55の変位情報を一定に維持するようにZピエゾドライバ87を制御するためのZ走査信号を生成し、そのZ走査信号をZピエゾドライバ87とホストコンピュータ91に供給する。
【0104】
Zピエゾドライバ87は、コントローラ89から供給されるZ走査信号を所定のゲインで増幅してZ駆動信号を生成し、Z駆動信号を走査機構70に搭載された二つの圧電素子54,61に供給する。
【0105】
XYピエゾドライバ88は、コントローラ89から供給されるXY走査信号を所定のゲインで増幅してXY駆動信号を生成し、XY駆動信号を走査機構70に搭載された圧電素子12A,12Bと圧電素子12Cに供給する。具体的には、コントローラ89から供給されるX走査信号を増幅して生成したX駆動信号を圧電素子12Aに供給し、同時にコントローラ89から供給されるX走査信号の逆位相信号(逆位相X走査信号と呼ぶ)を生成し、それを増幅して生成した逆位相X駆動信号を圧電素子12Bに供給し、さらにコントローラ89から供給されるY走査信号を増幅して生成したY駆動信号を圧電素子12Cに供給する。
【0106】
ホストコンピュータ91は、コントローラ89から供給されるXY走査信号とZ走査信号とに基づいて試料80の表面形状の三次元画像を構築し、これをモニター上に表示する。
【0107】
この走査型プローブ顕微鏡においては、走査機構70を用いることで、高精度で高い直進性をもち、かつ高速ラスター走査が可能になる。従ってこの走査型プローブ顕微鏡によれば、観察分解能が向上し、観察時間が短縮される。
【0108】
本実施形態においては、走査機構70を、
図5Aと
図5Bと
図5Cに示した走査機構50、または
図9Aと
図9Bに示した走査機構60に置き換えても同様の効果が得られる。
【0109】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。