特許第6042657号(P6042657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042657
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20161206BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20161206BHJP
   F21W 101/12 20060101ALN20161206BHJP
   F21W 101/14 20060101ALN20161206BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20161206BHJP
【FI】
   F21S8/10 175
   F21S8/10 375
   F21W101:10
   F21W101:12
   F21W101:14
   F21Y101:00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-178817(P2012-178817)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-38704(P2014-38704A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
(72)【発明者】
【氏名】草壁 俊介
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−117709(JP,A)
【文献】 実開平01−081804(JP,U)
【文献】 実開平03−076307(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
F21V 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの開口部をアウタレンズで覆い、その内側にインナレンズを配置し、該インナレンズの外周縁に形成された周壁を前記ハウジングの開口部内周に形成された係合段部に係合させるとともに、該周壁の上側部分又は下側部分の一方に形成された係合溝に前記ハウジングの開口部内周に突設されたフックを係合させることによって該インナレンズを前記ハウジングに組み付けて成る車両用灯具において、
前記インナレンズは、その周壁が前記ハウジングの開口部を覆う面に対して略直角に前記ハウジング側に屈曲する略矩形ボックス状に一体成形され、
前記ハウジングの開口端部の内周には、前記周壁が係合する係合段部が全周に亘って形成され、
前記フックは、前記係合段部の前記係合溝に対応する位置に設けられており、
前記係合溝は、前記周壁の外周側に位置し、
前記インナレンズの周壁の上側部分又は下側部分のうち、前記係合溝が形成されていない方の肉厚全体は、他の部分の肉厚よりも薄く形成され、他の部分の周壁よりも撓み易く形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記インナレンズの周壁の上側部分又は下側部分のうち、前記係合溝が形成された方の開口端縁外周部をR形状としたことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングの開口部を覆うアウタレンズの内側にインナレンズを配置して成る車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具には、ハウジングの開口部をアウタレンズで覆い、その内側にインナレンズを配置して成るものがある(例えば、特許文献1参照)。斯かる車両用灯具のインナレンズのハウジングへの装着構造として、インナレンズの外周縁に沿って形成された周壁をハウジングの開口部内周に形成された係合段部に係合させるとともに、該周壁の例えば下側部分に形成された係合溝にハウジングの開口部内周に突設されたフックを係合させることによって該インナレンズをハウジングに組み付けるものが知られている。ここで、このようなインナレンズの装着要領を図6(a),(b)に基づいて説明する。
【0003】
即ち、図6(a),(b)は従来の車両用灯具におけるインナレンズの装着要領をその工程順に示す部分断面図であり、ハウジング102の開口部内周には係合段部102cが形成されており、この係合段部102cの下側部分にはフック102dが一体に突設されている。又、インナレンズ104の開口部周縁には略直角に屈曲する周壁104Aが形成されており、この周壁104Aの底面には係合溝104bが形成されている。
【0004】
而して、インナレンズ104をハウジング102に装着するには、先ず、インナレンズ104の周壁104Aの上側部分をハウジング102の係合段部102cに係合させ、その後、図6(a)に示すようにインナレンズ104の下部を矢印方向に押し込む。すると、インナレンズ104の周壁104Aの下側部分の端部がハウジング102のフック102dに当接し、この状態からインナレンズ104を更に押し込むと、該インナレンズ104の周壁104Aの下側部分が弾性変形して図6(b)に示すように係合溝104bにハウジング102のフック102dが係合し、これによってインナレンズ104がハウジング102に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−076403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図6に示す従来の固定構造においては、インナレンズ104の周壁104Aの上部をハウジング102の係合段部102cに先に係合させ、その後、該インナレンズ104の下部をハウジング102側に押し込み、該インナレンズ102の周壁104Aの下部に形成された係合溝104bをハウジング102のフック102dに係合させる方式を採用していたため、図6(a)に示すようにフック102dの表面をインナレンズ104の周壁104Aが摺擦し、フック102dの表面のアルミ蒸着膜が削り取られてゴミが発生し、車両用灯具の商品性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、インナレンズの組み付けによるゴミの発生を防いで商品性を高めることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
ハウジングの開口部をアウタレンズで覆い、その内側にインナレンズを配置し、該インナレンズの外周縁に形成された周壁を前記ハウジングの開口部内周に形成された係合段部に係合させるとともに、該周壁の上側部分又は下側部分の一方に形成された係合溝に前記ハウジングの開口部内周に突設されたフックを係合させることによって該インナレンズを前記ハウジングに組み付けて成る車両用灯具において、
前記インナレンズは、その周壁が前記ハウジングの開口部を覆う面に対して略直角に前記ハウジング側に屈曲する略矩形ボックス状に一体成形され、
前記ハウジングの開口端部の内周には、前記周壁が係合する係合段部が全周に亘って形成され、
前記フックは、前記係合段部の前記係合溝に対応する位置に設けられており、
前記係合溝は、前記周壁の外周側に位置し、
前記インナレンズの周壁の上側部分又は下側部分のうち、前記係合溝が形成されていない方の肉厚全体は、他の部分の肉厚よりも薄く形成され、他の部分の周壁よりも撓み易く形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記インナレンズの周壁の上側部分又は下側部分のうち、前記係合溝が形成された方の開口端縁外周部をR形状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、インナレンズの周壁の上側部分又は下側部分のうち、係合溝が形成されていない方の肉厚を他の部分の肉厚よりも薄くしたため、従来とは逆にインナレンズの係合溝をハウジングのフックに先に係合しておき、その後、インナレンズの周壁の係合溝が形成されていない側を撓ませてハウジングの係合段部に係合させることができる。このため、ハウジングのフックの表面に形成されたアルミ蒸着膜がインナレンズの周壁によって削り取られることがなく、インナレンズの組付時のゴミの発生が防がれて車両用灯具の商品性が高められる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、インナレンズの周壁の上側部分又は下側部分のうち、係合溝が形成された方の開口端縁外周部をR形状としたため、インナレンズの係合溝をハウジングのフックに係合させる際の両者の衝突によるアルミ蒸着膜の削れが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る車両用灯具の半裁部分正面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図2のB部拡大詳細図である。
図4図1のC−C線断面図である。
図5】本発明に係る車両用灯具のインナレンズの内面側斜視図である。
図6】(a),(b)は従来の車両用灯具におけるインナレンズの装着要領をその工程順に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係る車両用灯具の半裁部分正面図、図2図1のA−A線断面図、図3図2のB部拡大詳細図、図4図1のC−C線断面図、図5は同車両用灯具のインナレンズの内面側斜視図である。
【0015】
本実施の形態に係る車両用灯具1は、自動二輪車の後部に配置されるリヤコンビネーションランプであって、車幅方向(左右方向)中央部にテール/ストップランプが配され、その左右にターンシグナルランプが配置されている
而して、リヤコンビネーションランプ1は、図2に示すように、樹脂によってボックス状に一体成形されたハウジング2の開口部を光透過性の透明樹脂によって一体成形されたアウタレンズ3で覆い、その内側に同じく光透過性の透明樹脂によって一体成形されたインナレンズ4を配置し、ハウジング2とインナレンズ4によって画成された灯室5内に光源であるバルブ6を収容して構成されている。
【0016】
上記ハウジング2の開口部の外周縁には、車両後方(図2の右方)に向かって開口するシール溝2aが全周に亘って形成されており、同ハウジング2の背面にはバルブ挿入孔2bが形成されている。そして、バルブ挿入孔2bには、前記バルブ6を保持して成るソケット7が挿入保持されており、該ソケット7の外周とハウジング2のバルブ挿入孔2bとの間にはシールリング8が設けられており、このシールリング8のシール機能によって外部から灯室5内へのゴミや水の侵入が防がれている。
【0017】
又、ハウジング2の開口端部の内周には、図3に詳細に示すように係合段部2cが全周に亘って形成されており、この係合段部2cの下側部分の左右(図3の紙面垂直方向)2箇所には三角爪状のフック2d(図3には一方のみ図示)が一体に突設されている。更に、図4に示すように、ハウジング2の内面上部の左右(図4の紙面垂直方向)2箇所にはボス2A(図4には一方のみ図示)が一体に突設されており、各ボス2Aにはネジ穴2eがそれぞれ形成されている。尚、本実施の形態においては、ハウジング2はリフレクタを兼ねており、その内面にはフック2dの表面も含めて反射処理としてアルミ蒸着が施されている。
【0018】
前記アウタレンズ3には、その外周縁から略直角に屈曲する周壁によって構成される脚部3Aが一体に設けられており、このアウタレンズ3は、図2に示すように、その脚部3Aの端部周縁をハウジング2の開口部の外周縁に形成された前記シール溝2aに嵌め込み、その嵌め込み部をホットメルト等の接着剤9によって接着することによってハウジング2に固定されており、このアウタレンズ3によってハウジング2の開口部が覆われている。
【0019】
前記インナレンズ4は、光透過性の透明樹脂によって図5に示すように略矩形ボックス状に一体成形されており、その開口部の外周縁には略直角に屈曲する周壁4Aが形成されている。又、インナレンズ4の上部の左右2箇所(ハウジング2の前記ボス2Aに対応する箇所)にはビス挿通孔4aが形成されている。
【0020】
ところで、本実施の形態においては、インナレンズ4の周壁4Aのうち、上側部分4A1(図5にRにて示す領域)の肉厚は他の部分の肉厚よりも薄く設定されており、この上側部分4A1は他の部分に対して撓み易くなっている。尚、本実施の形態では、インナレンズ4の周壁4Aの上側部分4A1の肉厚は、他の部分肉厚の50%〜60%に設定されている。
【0021】
又、インナレンズ4の周壁4Aの下側部分4A2の底面の左右2箇所(ハウジング2の前記フック2dに対応する箇所)には、図3に詳細に示すように係合溝4b(図3には一方のみ図示)が形成されている。そして,図3に詳細に示すように、インナレンズ4の周壁4Aのうち、係合溝4bが形成された下側部分4A2の開口端縁外周部4cは図示のようにR形状とされている。
【0022】
而して、本実施の形態においては、インナレンズ4は以下の要領でハウジング2に組み付けられる。
【0023】
即ち、本実施の形態では、インナレンズ4の接触によってゴミが発生し易いハウジング2のフック2dに先にインナレンズ4の係合溝4bを先に係合させ、その後にインナレンズ4の周壁4Aの薄い上側部分4A1を撓ませてハウジング2の係合段部2cに係合させ、最後にインナレンズ4の左右2つのビス挿通孔4aにそれぞれ挿通するビス10を図4に示すようにハウジング2の左右の各ボス2Aに形成されたネジ穴2eにねじ込むことによってインナレンズ4をハウジング2に取り付けるようにした。
【0024】
以上のように、本実施の形態では、従来とは逆にインナレンズ4の係合溝4bをハウジング2のフック2dに先に係合しておき、その後、インナレンズ4の周壁4Aの上側部分4A1を撓ませてハウジング2の係合段部2cに係合させるようにしたため、ハウジング2のフック2dの表面に形成されたアルミ蒸着膜がインナレンズ4の周壁4Aの下側部分4A2によって削り取られることがなく、インナレンズ4の組付時のゴミの発生が防がれて当該リヤコンビネーションランプ1の商品性が高められる。
【0025】
又、本実施の形態では、インナレンズ4の周壁4Aのうち、係合溝4bが形成された下側部分4A2の開口端縁外周部4cをR形状としたため、インナレンズ4の係合溝4bをハウジング2のフック2dに係合させる際の両者の衝突によるアルミ蒸着膜の削れが防がれるという効果が得られる。
【0026】
尚、以上の実施の形態では、インナレンズ4の周壁4Aのうち、下側部分4A2に係合溝4bを形成し、上側部分4A1の肉厚を他の部分よりも薄くしたが、これとは逆に上側部分4A1に係合溝4bを形成し、下側部分4A2の肉厚を他の部分よりも薄くしても前記と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0027】
1 リヤコンビネーションランプ(車両用灯具)
2 ハウジング
2A ハウジングのボス
2a ハウジングのシール溝
2b ハウジングのバルブ挿入孔
2c ハウジングの係合段部
2d ハウジングのフック
2e ハウジングのネジ穴
3 アウタレンズ
3A アウタレンズの脚部
4 インナレンズ
4A インナレンズの周壁
4A1 インナレンズの周壁の上側部分
4A2 インナレンズの周壁の下側部分
4a インナレンズのビス挿通孔
4b インナレンズの係合溝
4c インナレンズの開口端縁外周部
5 灯室
6 バルブ
7 ソケット
8 シールリング
9 接着剤
10 ビス
図1
図2
図3
図4
図5
図6