(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した車両用ワイパ装置においては、付勢部材の付勢方向がワイパアームを起立側に付勢する状態となった場合に、どのようにワイパアームを所定の起立角度に保持するのか、その機構が確立されていなかった。又、一般的なワイパアームは、アームヘッドと該アームヘッドに回動(傾動)可能に連結されたリテーナを有し、アームヘッドにリテーナの一部を当接させることでそれ以上の回動を規制して起立角度を設定していたため、ワイパアームの形状の自由度が低く複雑化していた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ワイパアームの形状の自由度が高くなるとともに単純化を図ることができる車両用ワイパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明では、駆動装置にて往復回動される駆動軸部と、前記駆動軸部を回動可能に支持するピボットホルダと、ワイパアーム付勢部材とを備え、前記ワイパアーム付勢部材は、前記ピボットホルダに対して前記駆動軸部の先端部側に配置され、前記駆動軸部と一体回動可能に設けられた揺動部材と、前記駆動軸部の回動軸と交差またはねじれの位置関係にある傾動軸中心で傾動可能に前記揺動部材に支持され、ワイパアームを固定するためのワイパ固定部が設けられた傾動部材と、前記揺動部材と前記傾動部材との間に支持され前記傾動部材に対して付勢力を付与する付勢部材と、を有しており、
前記揺動部材は、前記傾動軸と対応した位置から下方に前記回動軸から離間するように延びている傾斜延部を備え、前記付勢部材は、該付勢部材の一端側が前記揺動部材の前記傾斜延部の下方端部に対して前記傾動軸の軸線方向に沿って延びる一端側支持軸を中心に回動可能に支持されているとともに、該付勢部材の他端側が前記傾動部材における前記ワイパ固定部とは反対側の端部に対して前記傾動軸の軸線方向に沿って延びる他端側支持軸を中心に回動可能に支持されており、前記ワイパアーム付勢部材は、前記揺動部材に対する前記傾動部材の傾動角度に応じて前記付勢部材の前記傾動部材に向けた前記傾動軸中心周りの付勢方向が前記ワイパアームを払拭面側に付勢する通常付勢状態と前記ワイパアームを起立側に付勢する起立付勢状態とのいずれかに切り替わるように構成された車両用ワイパ装置であって、前記揺動部材又は前記傾動部材には、前記起立付勢状態における予め設定した傾動角度で前記傾動部材のそれ以上の傾動を規制する規制片が形成されており、前記ワイパアーム付勢部材は、車両への搭載状態において前記ワイパ固定部を除く各部材が前記ワイパ固定部よりも下方に配置されており、前記ワイパアーム付勢部材を構成する前記付勢部材は、車両のルーバーよりも下方に配置されているとともに、前記傾動部材の前記傾動軸は、前記ルーバーよりも下方に位置しており、前記ワイパ固定部は、前記ルーバーに設けられた導出孔から露出して配置されたことを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、揺動部材又は傾動部材には、起立付勢状態
における予め設定した傾動角度で傾動部材のそれ以上の傾動を規制する規制片が形成されるため、該規制片によって傾動部材の最大傾動角度、ひいてはワイパアームの起立角度が決定される。よって、ワイパアーム自体に起立角度を決定するための機構や形状を設ける必要がなく、ワイパアームの形状の自由度が高くなるとともに単純化を図ることができる。
また、傾動部材が揺動部材に支持される構成であるため、ワイパアームを付勢するための部材(ワイパアーム付勢部材)が駆動軸部の両端側に分離せずに一方側に集約されることになる。これにより、ワイパアーム付勢部材を単純に駆動軸部とワイパアームとの間に介在させるだけでワイパアームを付勢することができ、例えば、車両への搭載性が良好となる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用ワイパ装置において、前記規制片は、前記傾動軸の軸線方向に一対設けられたことを要旨とする。
同構成によれば、規制片は、傾動軸の軸線方向に一対設けられるため、例えば、バランス良く強固に傾動部材の傾動を規制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の車両用ワイパ装置において、前記規制片は、前記傾動軸の軸線方向に沿って突出するとともに、前記傾動軸の軸線方向から見て湾曲して形成されたことを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、規制片は、傾動軸の軸線方向に沿って突出するとともに、傾動軸の軸線方向から見て湾曲して形成されるため、例えば直線的に形成されたものに比べて変形し難くすることができ、傾動部材からの力を受けても規制片による規制位置の位置ズレを防止することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用ワイパ装置において、前記規制片は、前記傾動軸の軸線方向に突出するとともに、前記傾動軸の軸線方向から見てその長手方向の端面が前記傾動部材のそれ以上の傾動を規制する規制面とされたことを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、規制片は、傾動軸の軸線方向に突出するとともに、傾動軸の軸線方向から見てその長手方向の端面が傾動部材のそれ以上の傾動を規制する規制面とされるため、例えば短手方向の端面が規制面とされたものに比べて、傾動部材からの力を受けても規制片を倒れ難くすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用ワイパ装置において、前記傾動部材は、前記傾動軸中心で傾動可能に支持された傾動中心部と、該傾動中心部から延設されてその先端に前記付勢部材からの付勢力が付与される被付勢部が形成された延設部とを有し、前記規制片は、前記延設部で前記傾動部材のそれ以上の傾動を規制することを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、規制片は、傾動中心部から延設された延設部で傾動部材のそれ以上の傾動を規制し、傾動中心部から遠い位置で回動を規制することになるため、規制片に大きな力が掛かり難くなり、規制片を変形し難くすることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両用ワイパ装置において、
前記ワイパアーム付勢部材を構成する前記付勢部材は、前記ピボットホルダに対して前記ワイパ固定部に固定される前記ワイパアームの延びる側とは反対側に配置されたことを要旨とする
。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両用ワイパ装置においてワイパアームの形状の自由度が高くなるとともに単純化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1〜
図6に従って説明する。
図1に示すように、車両用ワイパ装置は、駆動源としてのモータ1とリンク機構2とからなる駆動装置Kとワイパアーム付勢部材Fとを備えている。そして、本実施形態の車両用ワイパ装置は、駆動装置K及びワイパアーム付勢部材Fが、払拭面としてのフロントウィンド3の下方における車両幅方向両端部側にそれぞれ設けられるとともに、それらに連結されたワイパ4(その先端側)が停止位置(最下端位置)において払拭方向(払拭面に平行な方向)に互いに重なって配置されている。即ち、本実施形態の車両用ワイパ装置は、運転席側(
図1中、左側)のワイパ4と助手席側(
図1中、右側)のワイパ4とが車両幅方向の中心に対して略対称に配置され、運転席側(
図1中、左側)のワイパ4の払拭範囲F1と助手席側(
図1中、右側)のワイパ4の払拭範囲F2とが中央部分で重なるように設けられている。なお、ワイパ4は、ワイパアーム付勢部材Fに基端側が連結されるワイパアーム31と、該ワイパアーム31の先端部に連結されてフロントウィンド3を払拭するワイパブレードを有している。
【0021】
駆動装置Kは、モータ1の回転力がリンク機構2に伝達されてその出力軸を往復回動させるものであって、リンク機構2の出力軸に基端部(下端部)が連結された駆動軸部11(
図2及び
図3参照)を例えば約90°の範囲で往復回動させる。尚、本実施形態の駆動軸部11は、その中間部が駆動装置Kに設けられた筒状のピボットホルダ12に挿通されて回動可能に支持されている。また、ピボットホルダ12は、リンク機構2を収容するリンクケース(不図示)に一体に形成されて駆動装置Kの固定により車体へ固定されている。
【0022】
図2及び
図3に示すように、ワイパアーム付勢部材Fは、前記駆動軸部11に固定される揺動基部材21と、該揺動基部材21に固定される揺動部材本体22とを備えた揺動部材23を有する。又、ワイパアーム付勢部材Fは、揺動部材本体22に前記駆動軸部11の回動軸A1とねじれの位置関係にある傾動軸B1中心で傾動可能に支持される傾動部材24と、揺動部材本体22に一端が支持され傾動部材24に付勢力を付与する付勢部材としての圧縮コイルばね25とを有する。
【0023】
詳述すると、揺動部材23の揺動基部材21は、板状であって、駆動軸部11の軸線方向から見て各辺がピボットホルダ12の外径よりも僅かに大きい長方形に形成され、ピボットホルダ12の外部に突出した駆動軸部11の先端部(上端部)に該駆動軸部11と一体回動可能に固定されている。
【0024】
図2に示すように、揺動部材23の揺動部材本体22は、平行な一対の板状腕部22aと該板状腕部22aの先端部を連結する腕連結部22bとを有し、一対の板状腕部22aの基端側固定部22cがピボットホルダ12から僅かに突出した(はみ出した)揺動基部材21の両側部を挟むようにして該揺動基部材21と一体回動可能に固定されている。
【0025】
板状腕部22aは、基端側固定部22cから駆動軸部11の回動軸A1の径方向(直交方向)に延びる外延部22dと、その外延部22dの先端から下方に延びるとともに下方に向かうほど前記回動軸A1から離間するように延びる傾斜延部22eとを有する。又、板状腕部22aにおいて前記外延部22dの先端(前記傾動軸B1と対応した位置)には、傾動ピン挿通孔22f(
図3参照)が形成されている。
【0026】
腕連結部22bは、その両端が板状腕部22a(傾斜延部22e)の先端部に接続される板状に形成され、その中央部には、圧縮コイルばね25の一端を支持するための回動支持部材26が回動可能に設けられている。詳しくは、腕連結部22bの中央部には、板厚方向(略上下方向)に貫通する収容孔22g(
図2参照)が形成されている。又、腕連結部22bには、前記傾動軸B1と平行な平行軸B2(
図3参照)方向に貫通するピン挿通孔22hが形成されている。そして、回動支持部材26は、前記収容孔22gに略収容されつつ、前記ピン挿通孔22hと一直線上に並ぶ自身の挿通孔(図示略)に、前記ピン挿通孔22hに挿通されるピン27が挿通されることによって前記平行軸B2中心で回動可能に設けられている。この回動支持部材26は、略板状に形成されるとともに、その一平面(上面)の中央に平面直交方向から見て円形に膨出した円形膨出部26a(
図3参照)が形成されている。尚、円形膨出部26aの外径は、圧縮コイルばね25の内径よりも僅かに小さく設定されている。
【0027】
前記傾動部材24は、前記傾動軸B1と対応した位置に傾動中心孔24a(
図3参照)が形成された傾動中心部24bと、該傾動中心部24bから上方、より詳しくは傾動中心部24bに対して上方であって後述するワイパ固定軸32に固定されるワイパアーム31が延出する方向に延設された上延部24cと、傾動中心部24bから下方、より詳しくは傾動中心部24bに対して下方であってワイパアーム31が延出する方向とは反対側に延設された延設部としての下延部24dとを備える。傾動中心孔24aには、円筒状の大カラー28aと小カラー28bが挿入されるとともに、その小カラー28bに、前記揺動部材本体22の傾動ピン挿通孔22fに挿通されるピン29が挿通される。これにより、傾動部材24は傾動軸B1中心(ピン29中心)で傾動可能に揺動部材本体22に支持されている。
【0028】
又、上延部24cの先端(上端)には、前記ワイパ4のワイパアーム31を固定するためのワイパ固定部としてのワイパ固定軸32が固定されている。又、下延部24dの先端(下端)には、前記圧縮コイルばね25からの付勢力が付与される被付勢部としての被付勢連結孔24eが前記傾動軸B1と平行な平行軸B3方向に貫通するように形成されている。
【0029】
そして、傾動部材24には、圧縮コイルばね25の他端からの付勢力を受けるための被付勢回動部材33が前記平行軸B3中心で回動可能に設けられている。詳しくは、下延部24dの先端(下端)には、
図2に示すように、上方に切り欠かれたスリット24fが前記被付勢連結孔24eを分断するように形成されている。被付勢回動部材33は、板状であって、直接圧縮コイルばね25の他端が当接されるべく幅が圧縮コイルばね25の外径と略同じに形成された大幅基端部33aと、該大幅基端部33aから圧縮コイルばね25の内径よりも僅かに小さい幅で延びる内嵌部33bと、該内嵌部33bから幅が更に小さくされて更に延びる小幅延設部33cとを有する。又、小幅延設部33cの先端には、基端側に延びるスリット33dが形成されている。そして、被付勢回動部材33は、その大幅基端部33aが前記下延部24dのスリット24f(
図2参照)内に配置され、前記被付勢連結孔24eに挿通されるピン34が自身の孔(図示略)にも挿通されることにより、傾動部材24に対して前記平行軸B3中心で回動可能に支持されている。又、この際、小幅延設部33cの先端は、前記回動支持部材26に形成された孔(図示略)を貫通し、スリット33d内に前記ピン27が配置されるように組み付けられる。又、この際、前記回動支持部材26と被付勢回動部材33の大幅基端部33a間には圧縮コイルばね25が圧縮された状態で配置される。又、この際、圧縮コイルばね25は前記円形膨出部26aと前記内嵌部33bとにそれぞれ(僅かな隙間を有して)外嵌される。
【0030】
これにより、圧縮コイルばね25は、揺動部材23(揺動部材本体22)の回動支持部材26に一端が支持され、被付勢回動部材33の大幅基端部33a及び被付勢連結孔24eを介して傾動部材24に付勢力を付与する。この圧縮コイルばね25の付勢方向は、揺動部材23に対する傾動部材24の傾動角度に応じてワイパアーム31(ワイパ4)を払拭面(前記フロントウィンド3)側に付勢する通常付勢状態(
図3(a)参照)とワイパアーム31を起立側に付勢する起立付勢状態(
図3(b)参照)とのいずれかに切り替わる。詳しくは、まずワイパアーム31は、前記通常付勢状態(
図3(a)参照)において、ワイパ固定軸32を中心として、前記ワイパアーム付勢部材Fを構成する各部材(揺動部材23、傾動部材24及び圧縮コイルばね25)が配置される側とは、反対側に延びるようにワイパ固定軸32にその基端部が固定される。そして、
図3(a)に示すように、圧縮コイルばね25の支持端部側である前記平行軸B2から前記平行軸B3に向かう付勢力Faが、前記平行軸B2と前記傾動軸B1とを通る直線Lよりも外方に向かう状態では、ワイパアーム31を払拭面側に付勢する方向(
図3(a)中、時計回り方向)に傾動部材24を付勢する。又、
図3(b)に示すように、圧縮コイルばね25の支持端部側である前記平行軸B2から前記平行軸B3に向かう付勢力Fbが、前記平行軸B2と前記傾動軸B1とを通る直線Lよりも内方に向かう状態では、ワイパアーム31を起立側に付勢する方向(
図3(b)中、反時計回り方向)に傾動部材24を付勢する。
【0031】
又、ここで、
図3(b)に示すように、傾動部材24には、圧縮コイルばね25がワイパアーム31を起立側に付勢する起立付勢状態で予め設定した傾動角度で自身(傾動部24)のそれ以上の傾動を規制する規制片24gが形成されている。本実施形態の規制片24gは、
図4に示すように、前記揺動基部材21において前記ピボットホルダ12から僅かに突出した(はみ出した)角部分の下面に当接してそれ以上の傾動を規制可能に、前記傾動中心部24bから突出して形成されている。又、規制片24gは、揺動基部材21の2箇所の角部分に対応し、前記傾動軸B1の軸線方向に一対設けられている。又、一対の規制片24gは、それぞれピボットホルダ12に沿って(ピボットホルダ12を避けるように)円弧形状に形成されることで極力広い面積で揺動基部材21の下面と当接するように形成されている。尚、本実施形態の規制片24gは、
図3(b)に示すように、ワイパ固定軸32が駆動軸部11の回動軸A1に対して約45°傾動した角度で傾動部材24の傾動を規制するように設定されている。
【0032】
又、ここで本実施形態の車両用ワイパ装置は、傾動軸B1の軸線方向から見て、前記通常付勢状態(
図3(a)参照)においても、前記起立付勢状態(
図3(b)参照)においても、圧縮コイルばね25の各端部中心を通る直線(前記付勢力Fa,Fbに沿った直線)が、前記駆動軸部11の回動軸A1と45°以内の角度をなすように設定されている。
【0033】
又、前記傾動部材24において、前記傾動中心部24bと前記ワイパ固定軸32(上延部24cの先端部)との間の中間部24hには、駆動軸部11周りに回動した際のルーバー41との干渉を防止(前記駆動軸部11の軸線方向から見てその回動軌跡範囲を小さく)するための逃げ部24iが形成されている。
【0034】
詳しくは、本実施形態の中間部24hは、駆動軸部11の軸線方向から見て、断面略四角形に形成され、前記逃げ部24iは、(回動軸A1を中心として)中間部24hの周方向端部が径方向に薄肉とされることで、中間部24hの径方向外側面における周方向端部に形成されている。又、本実施形態の逃げ部24iは、駆動軸部11の軸線方向から見て中間部24hの径方向外側面が駆動軸部11側に中心のある円弧面とされることで形成されている。尚、
図5では、前記起立付勢状態(
図3(b)参照)における逃げ部24iと対応した位置の中間部24hの断面を2点鎖線で図示している。
【0035】
そして、
図3及び
図5に示すように、車両用ワイパ装置は、その機構の大部分が車両のルーバー41より内側に配置されるように、前記中間部24hがルーバー41に形成された略円形の導出孔41aを通って、中間部24hよりも先端側(ワイパ固定軸32等)が外部に露出するように配置されている。又、本実施形態では、
図6に示すように、前記駆動軸部11の回動軸A1が、前記導出孔41aの軸中心A2に対して、中間部24hの回動軌跡がその回動範囲において導出孔41aの縁から離間する方向にずれて配置されている。尚、
図6では、前記起立付勢状態(
図3(b)参照)における逃げ部24iと対応した位置の中間部24hの断面と、その回動軌跡範囲を視覚的に分かり易くするための回動時の上端反転位置を含む各地点(3箇所)の中間部24hの断面とを2点鎖線で図示している。具体的には、前記回動軸A1は、中間部24hの回動軌跡範囲の中間地点が導出孔41aの軸中心A2側に近づくように、軸中心A2に対してずれて配置されている。
【0036】
次に上記のように構成された車両用ワイパ装置の作用について説明する。
例えば、モータ1が駆動されると、駆動軸部11と共にワイパアーム付勢部材F及びワイパ4(ワイパアーム31)が約90°の回動角度範囲で一体的に往復回動され、払拭動作が行われる。
【0037】
又、このとき、
図3(a)に示すように、圧縮コイルばね25の支持端部側である前記平行軸B2から前記平行軸B3に向かう付勢力Faが、前記平行軸B2と前記傾動軸B1とを通る直線Lよりも外方に向かう状態では、ワイパアーム31を払拭面側に付勢する方向(
図3(a)中、時計回り方向)に傾動部材24が付勢される。よって、上記のようにワイパ4(ワイパアーム31)が約90°の回動角度範囲で往復回動されるときワイパ4が払拭面形状に倣って僅かに上下動しても、ワイパ4は払拭面に適切に押圧されて良好に払拭動作が行われる。
【0038】
そして、例えば、モータ1の停止状態において作業者等がワイパ4(ワイパアーム31)を持ち上げると、
図3(b)に示すように、前記圧縮コイルばね25の付勢力Fbが前記直線Lよりも内方に向かう状態に切り替わり、ワイパアーム31を起立側に付勢する方向(
図3(b)中、反時計回り方向)に傾動部材24が付勢される。そして、規制片24gが、
図3(b)及び
図4に示すように、前記揺動部材23の揺動基部材21に当接してそれ以上の傾動が規制されることで、その傾動角度でワイパ4(ワイパアーム31)の起立した状態が保持される。
【0039】
次に、上記実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)傾動部材24には、起立付勢状態で予め設定した傾動角度で傾動部材24のそれ以上の傾動を規制する規制片24gが形成されるため、該規制片24gによって傾動部材24の最大傾動角度、ひいてはワイパアーム31の起立角度が決定される。よって、ワイパアーム31に起立角度を決定するための機構や形状を設ける必要がなく、ワイパアーム31の形状の自由度が高くなるとともに単純化を図ることができる。
【0040】
(2)規制片24gは、傾動軸B1の軸線方向に一対設けられるため、例えば、バランス良く強固に傾動部材24の傾動を規制することができる。
(3)傾動部材24が揺動部材23に支持される構成であるため、ワイパアーム31を付勢するための部材(ワイパアーム付勢部材F)が駆動軸部11の両端側に分離せずに一方側に集約されることになる。これにより、ワイパアーム付勢部材Fを単純に駆動軸部11とワイパアーム31との間に介在させるだけでワイパアーム31を付勢することができ、例えば、車両への搭載性が良好となる。
【0041】
(4)揺動部材23には、圧縮コイルばね25の一端を支持する回動支持部材26が回動可能に設けられるため、ワイパアーム31及び傾動部材24の傾動角度が変化した際に、圧縮コイルばね25の一端を支持する面の圧縮コイルばね25の付勢方向(付勢力Fa,Fb)の直交方向に対する角度ズレを低減することができる。よって、圧縮コイルばね25による付勢力Fa,Fbの損失を低減することができる。その結果、例えば、圧縮コイルばね25の線材を細くしたり、圧縮コイルばね25の径を小さくしても必要付勢力を容易に確保することができる。
【0042】
(5)傾動部材24には、圧縮コイルばね25の他端からの付勢力Fa,Fbを受けるための被付勢回動部材33が回動可能に設けられるため、ワイパアーム31及び傾動部材24の傾動角度が変化した際に、圧縮コイルばね25の他端から付勢力Fa,Fbを受ける面の圧縮コイルばね25の付勢方向の直交方向に対する角度ズレを低減することができる。よって、圧縮コイルばね25による付勢力の損失をより低減することができる。
【0043】
(6)傾動軸B1の軸線方向から見て、圧縮コイルばね25の各端部中心を通る直線(付勢力Fa,Fbに沿った直線)が、駆動軸部11の回動軸A1と45°以内の角度をなすように設定されるため、駆動軸部11の回動軸A1径方向の配置スペースを小さくすることができる。すなわち、駆動軸部11と共にワイパアーム付勢部材Fが回動することによって、回動軸A1周りにはワイパアーム付勢部材Fが回動するための占有スペースを要するが、径方向の配置スペースが小さくなることで上記占有スペースをも小さくできる。
【0044】
(7)傾動部材24の傾動角度に応じて圧縮コイルばね25がワイパアーム31を払拭面側に付勢する通常付勢状態とワイパアーム31を起立側に付勢する起立付勢状態とのいずれかに切り替わるため、ワイパアーム付勢部材Fに所謂ロックバックの機能をも集約することができる。そして、このようにすると、ワイパアーム31及び傾動部材24の傾動角度が大きく変化するが、回動支持部材26が設けられることでそれぞれの状態で圧縮コイルばね25の一端を支持する面を圧縮コイルばね25の付勢方向の直交方向に保つことができるので、圧縮コイルばね25による付勢力Fa,Fbの損失を低減する効果が大きくなる。
【0045】
(8)傾動部材24における傾動中心部24bとワイパ固定軸32との間の中間部24hには、駆動軸部11周りに回動した際のルーバー41との干渉を防止(駆動軸部11の軸線方向から見てその回動軌跡範囲を小さく)するための逃げ部24iが形成されるため、ルーバー41に設けられる導出孔41aを小さくすることができる。
【0046】
(9)傾動部材24の中間部24hは、駆動軸部11の軸線方向から見て、断面略四角形に形成され、逃げ部24iは、中間部24hの周方向端部が径方向に薄肉とされることで、中間部24hの径方向外側面における周方向端部に形成されるため、中間部24hの剛性を高く保ちながらそのルーバー41に設けられる導出孔41aの縁との干渉を防止(回動軌跡範囲を小さく)することができる。
【0047】
(10)逃げ部24iは、駆動軸部11の軸線方向から見て、中間部24hの径方向外側面が駆動軸部11側に中心のある円弧面とされることで形成されるため、中間部24hの剛性を最も高く保ちながら上記導出孔41aの縁との干渉を防止(回動軌跡範囲を小さく)することができる。
【0048】
(11)駆動軸部11の回動軸A1は、ルーバー41の導出孔41aの軸中心A2に対して、前記回動軌跡がその回動範囲において導出孔41aの縁から離間する方向にずれるように配置されるため、導出孔41aを小さくすることができるとともに、中間部24hが導出孔41aの縁と衝突してしまうことを抑えることができる。
【0049】
(12)ワイパアーム付勢部材Fを構成する各部材(揺動部材23、傾動部材24及び圧縮コイルばね25)は、ワイパ固定軸32に固定されるワイパアーム31の延びる側の反対側に配置されるため、各部材がワイパアーム31の反対側、つまりフロントウィンド3の反対側であるボンネット側で回動することになる。よって、配置スペースを容易に確保することができ、容易に配置することができる。
【0050】
(13)ワイパアーム付勢部材Fを構成するワイパ固定軸32を除く各部材は、ワイパ固定軸32よりも下方に配置されている。よって、ルーバー41に設けられる導出孔41aの内部側に容易に配置して外観を向上させることができる。
【0051】
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の規制片24gは、前記起立付勢状態で予め設定した傾動角度で傾動部材24のそれ以上の傾動を規制することができれば、位置や形状等を変更してもよい。
【0052】
例えば、
図7(a),(b)に示すように、変更してもよい。この例の規制片51は、揺動部材23の揺動部材本体22に一体成形されている。又、規制片51は、揺動部材本体22(その前記傾斜延部22e)におけるピボットホルダ12側(前記回動軸A1側)端部に形成され、傾動部材24の下延部24dにおけるピボットホルダ12側の端面と当接してその位置で傾動部材24のそれ以上の傾動を規制する。又、規制片51は、一対の傾斜延部22eにおけるピボットホルダ12側端部から互いに近づく側に折り曲げられて傾動軸B1の軸線方向に沿って(互いに幅方向内側に)突出するとともに、傾動軸B1の軸線方向から見て湾曲して形成され、その短手方向の端面全面が傾動部材24と当接して傾動を規制する規制面51aとされている。
【0053】
このように規制片51を傾動軸B1の軸線方向から見て湾曲して形成すると、例えば直線的に形成されたものに比べて変形し難くすることができ、傾動部材24からの力を受けても規制片51を倒れ難くすることができる。よって、ワイパアーム31の起立角度を安定して維持することができる。
【0054】
又、規制片51は、傾動中心部24bから延設された下延部24dで傾動部材24と当接してそれ以上の傾動を規制し、傾動中心部24bから遠い位置で回動を規制することになるため、規制片51に大きな力が掛かり難くなり、規制片51を変形し難くすることができる。これによっても、ワイパアーム31の起立角度を安定して維持することができる。
【0055】
又、例えば、
図8(a),(b)に示すように、変更してもよい。この例の規制片52は、揺動部材23の揺動部材本体22に一体成形されている。又、規制片52は、揺動部材本体22(その前記傾斜延部22e)におけるピボットホルダ12側(前記回動軸A1側)端部に形成され、傾動部材24の下延部24dおけるピボットホルダ12側に形成された係合凸部24jと当接してその位置で傾動部材24のそれ以上の傾動を規制する。又、規制片52は、一対の傾斜延部22eにおけるピボットホルダ12側端部から互いに近づく側に折り曲げられて傾動軸B1の軸線方向に沿って(互いに幅方向内側に)突出するとともに、傾動軸B1の軸線方向から見て湾曲して形成され、その長手方向の端面が傾動部材24(係合凸部24j)と当接して傾動を規制する規制面52aとされている。言い換えれば、一対の傾斜延部22eの一部を互いに近づく側に折り曲げられて形成された規制片52は、その折り目に沿った長手方向の端面を規制面52aとしている。
【0056】
このように規制片52の長手方向の端面を規制面52aとすると、規制面52aで受け止めた力が規制片52の折り目に沿って作用するので、例えば短手方向の端面が規制面とされたもの(折り目回りで力を受け止める場合、
図7参照)に比べて、傾動部材24からの力を受けても規制片52を更に倒れ難くすることができる。よって、ワイパアーム31の起立角度をより安定して維持することができる。さらに、規制片51,52はピボットホルダ12のような不動側の構成に当接させるのではなく、規制片51,52と規制片51,52が当接する傾動部材24とが何れも駆動軸部11回りに回動するワイパアーム付勢部材F側にて構成されるため、万一、ロックバック状態で回動されたとしても摺接せずに異音等の発生が防止される。
【0057】
又、上記実施形態及び別例では、規制片24g,51,52が傾動軸B1の軸線方向に沿って一対設けられるとしたが、これに限定されず、1つのみ設けた構成としてもよい。又、例えば、一対の規制片51(52)を繋げて1つとしてもよい。
【0058】
・上記実施形態の回動支持部材26は、圧縮コイルばね25の一端を支持して揺動部材に回動可能に設けられれば、他の態様で設けられたものとしてもよい。
例えば、
図9(a),(b)に示すように、変更してもよい。この例の揺動部材23における揺動部材本体61は、平行な一対の板状腕部61a(図中、紙面手前側の1つのみ図示)からなり、その各先端部(下端部)に回動支持部材62の一対の腕部62aの基端が回動可能に連結され、一対の腕部62aの先端(下端)を連結する底部62bに圧縮コイルばね25が支持されている。尚、
図9では、圧縮コイルばね25を模式的に図示している。このようにしても、上記実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0059】
・上記実施形態の逃げ部24iは、回動軌跡範囲を小さくするための他の形状の逃げ部に変更してもよい。
例えば、
図10に示すように、変更してもよい。この例では、中間部24hの径方向外側面の周方向中央部に凸部71が形成されることによって、中間部24hの径方向外側面における周方向端部が逃げ部72とされている。尚、
図7では、前記起立付勢状態における逃げ部72と対応した位置の中間部24hの断面を2点鎖線で図示している。このようにしても、中間部24hの剛性を高く保ちながらルーバー41の導出孔41aとの干渉を防止(回動軌跡範囲を小さく)することができる。
【0060】
又、例えば、
図11に示すように、変更してもよい。この例の逃げ部73は、傾動中心部24bとワイパ固定軸32(上延部24cの先端)との間で中間部74の周方向の幅が局部的に狭く形成されることで、中間部74の周方向端部に形成されている。尚、
図8では、前記起立付勢状態における逃げ部73と対応した位置の中間部74の断面を2点鎖線で図示している。このようにすると、逃げ部73以外の部分(傾動中心部24bや上延部24cの先端側)の周方向の幅を確保しつつも導出孔41aと対応した位置でのルーバー41との干渉を防止(回動軌跡範囲を小さく)することができる。
【0061】
・上記実施形態では、揺動部材23には、圧縮コイルばね25の一端を支持する回動支持部材26が回動可能に設けられるとしたが、これに限定されず、例えば、揺動部材23における腕連結部22bに収容孔22gが形成されず、回動支持部材26が設けられずに腕連結部22bが圧縮コイルばね25の一端を直接支持する構成としてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、傾動軸B1の軸線方向から見て、圧縮コイルばね25の各端部中心を通る直線(付勢力Fa,Fbに沿った直線)が、駆動軸部11の回動軸A1と45°以内の角度をなすように設定されるとしたが、これに限定されず、45°以上の角度をなすように設定してもよい。
【0063】
・上記実施形態では、傾動部材24が揺動部材23に支持される構成であるとしたが、これに限定されず、例えば、駆動軸部11の下端側に揺動部材23が設けられ、駆動軸部11の上端側に傾動部材24が回動可能に支持される構成に変更してもよい。
【0064】
・上記実施形態では、傾動部材24の中間部24hに逃げ部24iが形成される構成としたが、これに限定されず、逃げ部24iが形成されていない形状に変更してもよい。
・上記実施形態では、駆動軸部11の回動軸A1は、ルーバー41の導出孔41aの軸中心A2に対してずれるように配置されるとしたが、これに限定されず、回動軸A1が軸中心A2と一致するように配置してもよい。
【0065】
・上記実施形態では、ワイパアーム付勢部材Fを構成する各部材(揺動部材23、傾動部材24及び圧縮コイルばね25)は、ワイパ固定軸32に固定されるワイパアーム31の延びる側の反対側に配置されるとしたが、これに限定されず、少なくとも1つの部材がワイパアーム31の延びる側に配置される構成としてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、付勢部材を圧縮コイルばね25としたが、付勢部材として引張りコイルばねを用いて前記通常付勢状態と前記起立付勢状態とのいずれかに切り替わるワイパ付勢部材を構成してもよい。
【0067】
・上記実施形態では、ワイパアーム付勢部材Fを構成するワイパ固定軸32を除く各部材は、ワイパ固定軸32よりも下方に配置されるとしたが、これに限定されず、少なくとも一部がワイパ固定軸32と同じ高さやワイパ固定軸32よりも高い位置に配置される構成としてもよい。
【0068】
・上記実施形態では、駆動軸部11の回動軸A1と傾動部材24の傾動軸B1とはねじれの位置関係にある構成としたが、これに限定されず、直交(交差)する位置関係の構成に変更してもよい。
【0069】
・上記実施形態では、付勢部材として圧縮コイルばね25を用いたが、板状のバネ線材を竹の子状に巻いた竹の子ばねを圧縮して用いるなど、他の圧縮ばねを用いてもよい。
・上記実施形態では、リンク機構2の出力軸に駆動軸部11の基端部(下端部)が連結された構成としたが、駆動軸部11自体をリンク機構2の出力軸としてもよい。
【0070】
・上記実施形態では、駆動装置Kがフロントウィンド3の下方における車両幅方向両端部側にそれぞれ設けられるとともに、ワイパ4が停止位置において払拭方向に互いに重なって配置されるものであるとしたが、これに限定されず、他の型の車両用ワイパ装置としてもよい。例えば、一方のワイパ4と他方のワイパ4とが互いに同一方向に往復揺動してフロントウィンド3を払拭する、所謂タンデム型の車両用ワイパ装置に適用して具体化してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、ピボットホルダ12は、リンク機構2を収容するリンクケース(不図示)に一体に形成されて駆動装置Kの固定により車体へ固定されるものとしたが、リンクケースとは別体に形成されて駆動装置Kとは別個に車体に固定されてもよい。