特許第6042673号(P6042673)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042673インクジェット記録用インク、インクカートリッジ、インクジェット記録用インクの製造方法、インクカートリッジの製造方法、記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042673
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】インクジェット記録用インク、インクカートリッジ、インクジェット記録用インクの製造方法、インクカートリッジの製造方法、記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20161206BHJP
   C09D 11/36 20140101ALI20161206BHJP
   C09D 11/326 20140101ALI20161206BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20161206BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C09D11/322
   C09D11/36
   C09D11/326
   B41M5/00 E
   B41J2/01 501
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-206087(P2012-206087)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2013-144776(P2013-144776A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2015年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-276299(P2011-276299)
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395003187
【氏名又は名称】株式会社OKIデータ・インフォテック
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】山本 寛峰
(72)【発明者】
【氏名】細井 敬之
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−122087(JP,A)
【文献】 特開2005−105126(JP,A)
【文献】 特開2005−200469(JP,A)
【文献】 特開2009−270043(JP,A)
【文献】 特開2000−303008(JP,A)
【文献】 特開2011−122049(JP,A)
【文献】 特開2011−225818(JP,A)
【文献】 特開2010−275467(JP,A)
【文献】 特開平08−225758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、顔料分散剤と、有機溶剤と、バインダ樹脂と、を含む有機溶剤系のインクジェット記録用インクであって、前記着色剤は染料で染着された合成樹脂から成る有機蛍光顔料と有機カラー顔料を含み、且つ前記有機蛍光顔料は前記インクジェット記録用インク中の含有量が8重量%以上12重量%以下の範囲であり、且つ前記有機カラー顔料は前記インクジェット記録用インク中の含有量が0.2重量%以上1.0重量%以下の範囲であり、前記バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂を含み、且つ前記塩酢ビ樹脂と前記アクリル樹脂の前記インクジェット記録用インク中の比率が、0.1≦(前記塩酢ビ樹脂の重量%)/(前記アクリル樹脂の重量%))≦3.0の式で表す範囲内であり、且つ前記バインダ樹脂の前記インクジェット記録用インク中の含有量が3重量%以上6重量%以下であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項2】
PVC基材に被覆度100%で印字したときのCIE1976クロマティクネス指数a*b*の範囲が、−90≦a*≦−55、45≦b*≦90の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項3】
前記顔料分散剤は前記有機蛍光顔料を溶解させる蛍光用分散剤を含み、前記蛍光用分散剤はアミン価が10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下のポリアルキレンイミン系分散剤または塩基性分散剤が含まれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項4】
前記顔料分散剤は、前記インクジェット記録用インク中の含有量が1重量%以上5重量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項5】
前記アクリル樹脂は、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項6】
前記有機蛍光顔料は、前記合成樹脂としてポリアミド樹脂、ホルムアルデヒド重縮合物、ケトン樹脂、ビニル共重合物のうち少なくとも一種を含み、且つ前記合成樹脂の着色剤として油性染料と塩基性染料のうち少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のインクジェット記録用インクと、前記インクジェット記録用インクを格納するパウチと、前記パウチを格納するケースと、を有することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項8】
着色剤と、顔料分散剤と、有機溶剤と、バインダ樹脂と、を含む有機溶剤系のインクジェット記録用インクの製造方法であって、前記着色剤は染料で染着された合成樹脂から成る有機蛍光顔料と有機カラー顔料を含み、前記バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂を含み、前記有機蛍光顔料と前記顔料分散剤を前記有機溶剤に溶解し、蛍光顔料分散体を得る工程と、前記有機カラー顔料と前記顔料分散剤を前記有機溶剤に分散し、カラー顔料分散体を得る工程と、前記蛍光顔料分散体と前記カラー顔料分散体を混合する分散体混合工程と、前記有機蛍光顔料の前記インクジェット記録用インク中の含有量が8重量%以上12重量%以下の範囲であり、且つ前記有機カラー顔料の前記インクジェット記録用インク中の含有量が0.2重量%以上1.0重量%以下の範囲であり、前記塩酢ビ樹脂と前記アクリル樹脂の前記インクジェット記録用インク中の比率が、0.1≦(前記塩酢ビ樹脂の重量%)/(前記アクリル樹脂の重量%))≦3.0の式で表す範囲内であり、且つ前記バインダ樹脂の前記インクジェット記録用インク中の含有量が3重量%以上6重量%以下とするように、前記分散体混合工程得た前記蛍光顔料分散体と前記カラー顔料分散体の混合物と前記バインダ樹脂と前記有機溶剤とを混合する工程と、を有することを特徴とするインクジェット記録用インクの製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のインクジェット記録用インクをパウチに格納する工程と、前記パウチをケースに格納する工程と、を有することを特徴とするインクカートリッジの製造方法。
【請求項10】
複数のノズルを備える記録ヘッドを記録基材の主走査方向に走査させながらインクジェット記録用インクを吐出するインクジェット記録装置の記録方法において、
前記インクジェット記録用インクは請求項1から請求項6の何れか1項に記載のインクジェット記録用インクであり、
第1の走査によって前記インクジェット記録用インクを記録基材上に吐出する工程と、前記記録基材を副走査方向に搬送する工程と、
前記第1の走査以降の第2の走査によって、前記第1の走査で使用したノズル以外のノズルによって前記第1の走査によって前記インクジェット記録用インクを前記記録基材上に吐出した位置に、前記インクジェット記録用インクを吐出する工程と、を備える記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インク、インクジェット記録用インクの製造方法、インクカートリッジ及びインクカートリッジの製造方法に関する。特に、主溶剤に有機溶剤を用い、有機蛍光顔料を用いたインクジェット記録用インク、その製造方法、およびそのインクを用いた記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、少量部数から印刷でき、安価で印刷することができ、更に、カラー印刷が容易であることから普及している。インクジェット記録装置で用いられるインクには、主溶剤に水を用いた水系のインク、主溶剤に有機溶剤を用いた有機溶剤系のインク、色材に染料を用いた染料インク、色材に顔料を用いた顔料インクなど様々なものが知られている。また、黒、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラーインクの他に蛍光色のインクも知られている。
【0003】
インクジェット記録装置で二次色であるレッド、グリーン、ブルーを表現する場合、一次色であるシアンインク、マゼンタインク、イエローインクを印字面で混色させて表現している。しかし、例えばインクジェット記録装置にてイエローインクとシアンインクを混色させグリーンを表現した場合、グラデーションの低から中階調領域でシアンインクのドットが目立つため粒状感が生じるという問題がある。更に、イエローインクとライトシアンの混色で表現した場合、ライトシアンのドットは目立たず粒状感が少ないグリーンを表現できるがグリーンの濃度に限界があり、目的とする濃度を表現することができないという問題がある。更に、通常のカラーインクでは彩度に限界があり色再現領域は限定される。
【0004】
一方、蛍光インクは、蛍光しないインクに比べて視認性が高い。なぜならば、蛍光色素は、入射した光源の反射光と共に、吸収した光エネルギーの一部を、波長を変えて輻射するためである。視認性が高いので人が認識し易く、宣伝広告用、注意を喚起するための標識などに広く用いられている。
【0005】
インクジェット記録装置は、コストの観点から、プリント速度の高速化、及び、印字物の速乾性が求められている。そのためには、インクジェット記録用インクは、乾燥性に優れている必要がある。更に、インクジェット記録用インクの安全性、保存安定性、記録ヘッドからの安定的な吐出性能等も求められる。このような性能を満足するためには、色材に無機顔料を、溶剤に有機溶剤を主成分とした有機溶剤インクが用いられる。
【0006】
有機溶剤を用いたインクジェット記録用インクは、種々の記録媒体に記録することができる。例えば、普通紙、合成紙、アクリル板、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、ポリ塩化ビニル基材(ポリ塩化ビニル基材を以下、PVC基材と記載する)等が挙げられる。しかし、屋外で使用する場合は、耐水性に優れる記録基材が要求される。例えば、合成紙、アクリル板、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、PVC基材が挙げられる。
【0007】
二次色の表現方法として例えば、インクジェット記録装置でイエロー顔料を用いたインクとシアン顔料を用いたインクを混色させることでグリーンを表現した特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−094994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のインクジェット記録用インクは、印字物の二次色をカラーインクで表現している。そのため二次色のグラデーションの低から中階調領域でドットが目立ち滑らかな二次色を表現することが困難となる。例えば、印字物のグリーンをイエローインクとシアンインクの二次色で表現する場合が挙げられる。
更に、カラーインクで二次色を表現しているため、彩度に限界があり色再現領域は限定され、広い色再現領域の色を表現することが困難である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、高い濃度で、且つ粒状感を無くすことができ、色域が拡大し、さらに乾燥性、安全性、保存安定性、耐水性、記録媒体との密着性に優れ、記録ヘッドから安定的に吐出できる蛍光インクジェット記録用インク、及び、インクカートリッジおよびこれらの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のインクジェット記録用インクは、着色剤と、顔料分散剤と、有機溶剤と、バインダ樹脂と、を含む有機溶剤系のインクジェット記録用インクであって、前記着色剤は染料で染着された合成樹脂から成る有機蛍光顔料と有機カラー顔料を含み、且つ前記有機蛍光顔料は前記インクジェット記録用インク中の含有量が8重量%以上12重量%以下の範囲であり、且つ前記有機カラー顔料は前記インクジェット記録用インク中の含有量が0.2重量%以上1.0重量%以下の範囲であり、前記バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂を含み、且つ前記塩酢ビ樹脂と前記アクリル樹脂の前記インクジェット記録用インク中の比率が、0.1≦(前記塩酢ビ樹脂の重量%)/(前記アクリル樹脂の重量%))≦3.0の式で表す範囲内であり、且つ前記バインダ樹脂の前記インクジェット記録用インク中の含有量が3重量%以上6重量%以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明のインクカートリッジは、上述のインクジェット記録用インクと、前記インクジェット記録用インクを格納するパウチと、前記パウチを格納するケースと、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明のインクジェット記録用インクの製造方法は、着色剤と、顔料分散剤と、有機溶剤と、バインダ樹脂と、を含むインクジェット記録用インクの製造方法であって、前記着色剤は染料で染着された合成樹脂から成る有機蛍光顔料と有機カラー顔料を含み、前記バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂を含み、前記有機蛍光顔料と前記顔料分散剤を前記有機溶剤に溶解し、蛍光顔料分散体を得る工程と、前記有機カラー顔料と前記顔料分散剤を前記有機溶剤に分散し、カラー顔料分散体を得る工程と前記蛍光顔料分散体と前記カラー顔料分散体を混合する分散体混合工程と、前記有機蛍光顔料の前記インクジェット記録用インク中の含有量が8重量%以上12重量%以下の範囲であり、且つ前記有機カラー顔料の前記インクジェット記録用インク中の含有量が0.2重量%以上1.0重量%以下の範囲であり、前記塩酢ビ樹脂と前記アクリル樹脂の前記インクジェット記録用インク中の比率が、0.1≦(前記塩酢ビ樹脂の重量%)/(前記アクリル樹脂の重量%))≦3.0の式で表す範囲内であり、且つ前記バインダ樹脂の前記インクジェット記録用インク中の含有量が3重量%以上6重量%以下とするように、前記分散体混合工程得た前記蛍光顔料分散体と前記カラー顔料分散体の混合物と前記バインダ樹脂と前記有機溶剤とを混合する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明のインクカートリッジの製造方法は、上述のインクジェット記録用インクをパウチに格納する工程と、前記パウチをケースに格納する工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の記録方法は、複数のノズルを備える記録ヘッドを記録基材の主走査方向に走査させながらインクジェット記録用インクを吐出するインクジェット記録装置の記録方法において、前記インクジェット記録用インクは請求項1から請求項6の何れか1項に記載のインクジェット記録用インクであり、第1の走査によって前記インクジェット記録用インクを記録基材上に吐出する工程と、前記記録基材を副走査方向に搬送する工程と、前記第1の走査以降の第2の走査によって、前記第1の走査で使用したノズル以外のノズルによって前記第1の走査によって前記インクジェット記録用インクを前記記録基材上に吐出した位置に、前記インクジェット記録用インクを吐出する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い濃度で、且つ粒状感を無くすことができ、色域が拡大し、さらに乾燥性、安全性、保存安定性、耐水性、記録媒体との密着性に優れ、記録ヘッドから安定的に吐出できるインクジェット記録用インクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態に係るインクカートリッジの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
インクジェット記録用インクは、着色剤と、顔料分散剤と、バインダ樹脂と、有機溶剤と、を含有することが必要である。
着色剤は、有機蛍光顔料と有機カラー顔料である。
有機蛍光顔料は、ポリアミド樹脂、ホルムアルデヒド重縮合物、ケトン樹脂、ビニル共重合物の合成樹脂の内の1または複数種の合成樹脂と、着色剤として油性染料や塩基性染料を染着させて製造されたものである。
【0019】
例えば蛍光イエロー顔料は、シンロイヒ社製FM−15、FM−35N、FM−105が挙げられる。その他の有機蛍光顔料としては、シンロイヒ社製FM−11、FM−12、FM−13、FM−14、FM−16、FM−17、FM−27、FM−34N、FM−47、FM−103、FM−107、FM−109が挙げられる。
【0020】
このような有機蛍光顔料を溶解することができる有機溶剤がある。有機蛍光顔料を有機溶剤に溶解させることで、顔料粒子径を制御する必要が無く、調整が容易にでき、且つ、有機蛍光顔料を構成する合成樹脂がバインダ機能をはたすため、バインダ樹脂の添加量が少量となる。
【0021】
有機カラー顔料は、有機蛍光顔料とは異なる一般的なカラー顔料である。
例えば有機シアン顔料は、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:6、ピグメントブルー22、ピグメントブルー30、ピグメントブルー64、ピグメントブルー80が挙げられる。その他の有機カラー顔料としては、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー20、ピグメントイエロー24、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー86、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー94、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー109、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー117、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー125、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー137、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー147、ピグメントイエロー148、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー166、ピグメントイエロー168、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー185、ピグメントオレンジ16、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ38、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ51、ピグメントオレンジ55、ピグメントオレンジ59、ピグメントオレンジ61、ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ65、ピグメントオレンジ71、ピグメントレッド9、ピグメントレッド48、ピグメントレッド49、ピグメントレッド52、ピグメントレッド53、ピグメントレッド57、ピグメントレッド97、ピグメントレッド122、ピグメントレッド149、ピグメントレッド168、ピグメントレッド177、ピグメントレッド178、ピグメントレッド179、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントレッド242、ピグメントレッド254、ピグメントレッド255、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット29、ピグメントバイオレット30、ピグメントバイオレット37、ピグメントバイオレット40、ピグメントバイオレット50、ピグメントグリーン7(塩素化フタロシアニングリーン)、ピグメントグリーン36(臭素化フタロシアニングリーン)、ピグメントブラウン23、ピグメントブラウン25、ピグメントブラウン26、ピグメントブラック7(カーボンブラック)、ピグメントブラック26、ピグメントブラック27、ピグメントブラック28が挙げられる。
【0022】
有機シアン顔料の具体的としては、LIONOL BLUE FG−7400G(東洋インキ製造社製 フタロシアニン顔料)、イルガライトブルー8700(BASF社製 フタロシアニン顔料)が挙げられる。その他の有機カラー顔料の具体例としては、YELLOW PIGMENT E4GN(バイエル社製 ニッケル錯体アゾ顔料)、Cromophtal Pink PT(BASF社製 キナクリドン顔料)、ELFTEX 415(キャボット社製 カーボンブラック)、Fastogen Super Magenta RG(DIC社製 キナクリドン顔料)、YELLOW PIGMENT E4GN(ランクセス社製 ニッケル錯体アゾ顔料)、モナーク1000(キャボット社製 カーボンブラック)、E4GN−GT(ランクセス社製 ニッケル錯体アゾ顔料)が挙げられる。
【0023】
有機蛍光顔料の溶解と、有機カラー顔料の分散は予め別々に行なうことが好ましい。なぜならば、同一条件での分散は困難であるためである。
例えば蛍光グリーンインクの場合、インク中の有機蛍光イエロー顔料の含有量は、8以上12重量%以下であり、好ましくは8以上10重量%以下である。且つ、インク中の有機シアン顔料の含有量は、0.2以上1.0重量%以下であり、好ましくは0.2以上0.8重量%以下である。この範囲でインク中に有機蛍光イエロー顔料と有機シアン顔料を用いることで高い濃度、且つ粒状感がなく、広い色域の記録ができるグリーンインクを得ることが出来る。
【0024】
また、より多くの蛍光グリーンインクを記録基材上に定着することができればより視認性が優れる。蛍光グリーンインクを記録ヘッドから吐出して記録する場合に、記録基材上の有機蛍光イエロー顔料が多い方が蛍光色を強く出すことができる。例えば、記録基材上の同位置に蛍光グリーンインクを重ねて吐出することで、2倍のインク量を定着することになる。記録基材上を少なくとも2回走査して同位置に蛍光グリーンインクを吐出することで、2倍の量の有機蛍光色顔料を同位置に定着することができる。このような記録方法を用いて視認性をさらに増すことができる。
【0025】
顔料分散剤として、フタロシアニンアンモニウム塩系、ポリエステルアミン系、脂肪酸アミン系、ポリアルキレンイミン系、ポリエステルポリアミド系、塩基性分散剤などを用いることできる。
特に、有機蛍光顔料の分散剤としてはアミン価が10以上50mgKOH/g以下の範囲のポリアルキレンイミン系または塩基性分散剤が好ましい。なぜならば、有機蛍光顔料を有機溶剤へ好適に溶解し、更に有機カラー顔料を有機溶剤へ好適に分散するからである。
【0026】
インク中の顔料分散剤の含有量は、1重量%以上5重量%以下の範囲が好ましい。更に好ましくは4重量%以下である。インクジェット記録用インク中における顔料分散剤の含有量が1重量%より少ない場合は、インクジェット記録用インクの保存安定性を維持することができず好ましくない。5重量%を超える場合は、印字物のブロッキング性、薬品耐性が不十分となり好ましくない。
バインダ樹脂は、塩酢ビ樹脂と、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂とを併用して用いる。
【0027】
塩酢ビ樹脂の平均分子量Aは20000≦A≦30000の範囲が好ましい。平均分子量Aが20000未満の場合、記録基材との密着性、及び、記録ヘッドからの安定的な吐出性能を損なうため好ましくない。平均分子量Aが30000を超える場合、記録基材との密着性、及び、記録ヘッドからの安定的な吐出性能、印字物の乾燥性を損なうため好ましくない。
【0028】
メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂の平均分子量Bは45000≦B≦75000の範囲が好ましい。平均分子量Bが45000未満の場合、印字物の密着性を損なうばかりか、インク中の固形分濃度が高くなりなり記録ヘッドからの安定的な吐出性能を損なうため好ましくない。平均分子量Bが75000を超える場合、少量の添加でもインクの粘度が高くなり、記録ヘッドから安定的な吐出性能を得ることが困難となる。
【0029】
更に、バインダ樹脂の塩酢ビ樹脂と、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂との樹脂重量%の比率は、0.1≦((塩酢ビ樹脂の樹脂重量%)/(メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂の樹脂重量%))≦3.0、の比率の範囲が好ましく、0.1≦((塩酢ビ樹脂の樹脂重量%)/(メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂の樹脂重量%))≦2.0、の比率の範囲が特に好ましい。塩酢ビ樹脂の樹脂重量%と、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂との樹脂重量%の比率が0.1未満の場合、記録基材との密着性、記録ヘッドからの安定的な吐出性能が損なわれてしまうため好ましくない。塩酢ビ樹脂の樹脂重量%とアクリル樹脂の樹脂重量%の比率が3.0を超える場合、印字物の乾燥性、記録ヘッドからの安定的な吐出性能が損なわれてしまうため好ましくない。
【0030】
インク中のバインダ樹脂の含有量は、3重量%以上6重量%以下の範囲が好ましい。インクジェット記録用インク中におけるバインダ樹脂の含有量が3重量%より少ない場合は、記録基材との密着性が不十分となる。6重量%を超える場合は、インクジェット記録用インクの粘度が高くなり記録ヘッドからの安定的な吐出性能を維持できず好ましくない。
【0031】
インクジェット記録用インクの溶媒である有機溶剤は、その溶媒中に占める割合が50重量%以上となる主溶剤として、グリコールモノアセテート類とグリコールエーテル類から選ばれる少なくとも一種を単独または混合して用いる。この有機溶媒を用いると記録ヘッドから良好に吐出することができる。
【0032】
例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチルジグリコール、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレートなどのグリコールモノアセテート類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。中でも、バインダ樹脂及び有機蛍光顔料の溶解性の観点から、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを以下、BGAcと記載する)が特に好ましい。
【0033】
副溶剤として、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、γ−ブチロラクトン(γ−ブチロラクトンを以下、GBLと記載する)、γ−バレロラクトンなどのラクトン系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、アセトニトリルなどの含窒素化合物等が挙げられる。これらは、必要に応じて複数の溶剤を併用して用いることができる。これら副溶剤は、記録媒体の基材に与える影響を考慮すると少ない方がよく、インク中における含有量は10重量%以下が好ましい。
【0034】
添加剤は、可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤等を使用することができる。
インクジェット記録用インクは、予め、有機蛍光顔料と顔料分散剤を有機溶剤に溶解した顔料分散体と、有機カラー顔料と顔料分散剤を有機溶剤に分散した顔料分散体とを混合した顔料分散体に、バインダ樹脂、有機溶剤を添加し、攪拌機を用いて撹拌し製造する。
インクジェット記録用インクはインクジェットプリンタではインクカートリッジに格納された状態で使用される。図1を用いてインクカートリッジの説明をする。
【0035】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係るインクカートリッジの分解斜視図である。
インクカートリッジ1は、インクジェット記録用インクを内部に収容した可撓性のパウチ(インク袋)2と、該パウチ2を収容する上ケース3、下ケース4とを備えている。パウチ2内には、インクジェット記録用インクが格納されている。上ケース3としたケース4を嵌め合わせ、パウチ2を内部に格納する。パウチ2は、ガスバリヤー性の向上のためにアルミ箔を2枚のフィルム、例えば、外側をナイロンフィルム、内側をポリエチレンフィルムによって挟み込んだアルミラミネートフィルムを2枚重ね合わせ、周囲を熱溶着等によって接合することで構成されている。パウチ2の一端には、内部に収容されているインクを外部に排出するインク取出口5を備えている。パウチ2内のインクを外部に供給する為に下ケース4にはインク取出口5が露出する穴が設けられている。このインクカートリッジは、パウチ2にインクジェット記録用インクを充填し格納する工程と、そのパウチ2を上ケース3としたケース4に格納する工程とを含む工程によって製造される。また、インクの充填は、真空槽の中でパウチ2の開口部からインクを入れ、脱気し、その開口部を封止する工程を含むことが好ましい。インクジェット記録用インクを収容する図1で示されるインクカートリッジは、本発明のインクカートリッジの好ましい実施形態であるが、本発明のインクカートリッジはこの形態のインクカートリッジに限られない。
【実施例】
【0036】
以下、実施例をあげて具体的に説明する。なお、実施例中、「部」は「重量部」を表す。
インクジェット記録用インクの組成を表1にまとめる。インクジェット記録用インクは、合計が100部になるように、着色剤、顔料分散剤、有機溶剤、バインダ樹脂を調製した。予め、有機蛍光顔料と顔料分散剤を有機溶剤に溶解した顔料分散体と、有機カラー顔料と顔料分散剤を有機溶剤に分散した顔料分散体とを混合した顔料分散体に、バインダ樹脂、有機溶剤を添加し、60℃に過熱しながら攪拌機を用いて1200rpmの回転速度で4時間撹拌しバインダ樹脂を溶解させインクジェット記録用インクを得た。
【0037】
【表1】
【0038】
(実施例1)
有機溶剤はBGAcを78.6部、GBLを3.8部、有機蛍光イエロー顔料を10.0部、有機シアン顔料を0.3部、顔料分散剤を3.0部、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂(平均分子量25000)を1.7部、アクリル樹脂(平均分子量50000)を2.6部使用したインクを作成した。
(実施例2)
有機溶剤はBGAcを78.2部、GBLを3.8部、有機蛍光イエロー顔料を8.0部、有機シアン顔料を1.0部、顔料分散剤を3.0部、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂(平均分子量25000)を1.0部、アクリル樹脂(平均分子量50000)を5.0部使用したインクを作成した。
(実施例3)
有機溶剤はBGAcを77.0部、GBLを3.8部、有機蛍光イエロー顔料を12.0部、有機シアン顔料を0.2部、顔料分散剤を3.0部、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂(平均分子量25000)を3.0部、アクリル樹脂(平均分子量50000)を1.0部使用したインクを作成した。
(実施例4)
有機溶剤はBGAcを82.0部、GBLを3.8部、有機蛍光イエロー顔料を8.0部、有機シアン顔料を0.2部、顔料分散剤を3.0部、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂(平均分子量25000)を2.0部、アクリル樹脂(平均分子量50000)を1.0部使用したインクを作成した。
(実施例5)
有機溶剤はBGAcを76.2部、GBLを3.8部、有機蛍光イエロー顔料を12.0部、有機シアン顔料を1.0部、顔料分散剤を3.0部、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂(平均分子量25000)を3.0部、アクリル樹脂(平均分子量50000)を1.0部使用したインクを作成した。
【0039】
(比較例1)
有機溶剤はBGAcを82.0部、GBLを3.8部、有機蛍光イエロー顔料を6.0部、有機シアン顔料を1.0部、顔料分散剤を0.9部、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂(平均分子量25000)を2.5部、アクリル樹脂(平均分子量50000)を3.8部使用したインクを作成した。
(比較例2)
有機溶剤はBGAcを73.3部、GBLを3.8部、有機蛍光イエロー顔料を15.0部、有機シアン顔料を0.2部、顔料分散剤を5.2部、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂(平均分子量25000)を1.5部、アクリル樹脂(平均分子量50000)を1.0部使用したインクを作成した。
(比較例3)
有機溶剤はBGAcを77.1部、GBLを3.8部、有機蛍光イエロー顔料を12.0部、有機シアン顔料を0.1部、顔料分散剤を3.0部、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂(平均分子量25000)を4.0部使用したインクを作成した。
(比較例4)
有機溶剤はBGAcを75.0部、GBLを3.8部、有機蛍光イエロー顔料を12.0部、有機シアン顔料を1.2部、顔料分散剤を3.0部、バインダ樹脂はアクリル樹脂(平均分子量50000)を5.0部使用したインクを作成した。
【0040】
(比較例5)
有機溶剤はBGAcを77.9部、GBLを3.8部、有機蛍光イエロー顔料を10.0部、有機シアン顔料を0.3部、顔料分散剤を3.0部、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂(平均分子量25000)を4.0部、アクリル樹脂(平均分子量50000)を1.0部使用したインクを作成した。
(比較例6)
有機溶剤はBGAcを76.9部、GBLを3.8部、有機蛍光イエロー顔料を10.0部、有機シアン顔料を0.3部、顔料分散剤を3.0部、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂(平均分子量25000)を0.5部、アクリル樹脂(平均分子量50000)を5.5部使用したインクを作成した。
(比較例7)
有機溶剤はBGAcを84.9部、GBLを3.8部、有機シアン顔料を1.0部、有機イエロー顔料を4.0部、顔料分散剤を2.0部、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂(平均分子量25000)を1.7部、アクリル樹脂(平均分子量50000)を2.6部使用したインクを作成した。
【0041】
上述の実施例1から実施例5、比較例1から比較例7で得られたインクジェット記録用インクを視認性試験、CIE1976クロマティクネス指数試験、粒状感試験、ブロッキング性試験、薬品耐性試験、物理耐性試験、光沢性試験、インク保存安定性試験、連続吐出性能試験を行った。試験結果は下記の基準で評価した。評価結果は表2に示すとおりである。
【0042】
【表2】
【0043】
<視認性試験>
インクジェット記録用インクを、6番のメイヤーバー(R.D.Specialties社製)を用いてPVC基材(METAMARK社製MD5)に塗布し25℃で2日間乾燥させた。乾燥した塗布面を、比較対照物として3Mスコッチカル蛍光色フィルムシリーズ(住友スリーエム社製)のグリーンを用い目視にて視認性を評価した。結果は以下のように分類し、表中に示した。
○:比較対照物と同等以上の視認性を得ることができた。
×:比較対照物と同等の視認性を得ることができなかった。
【0044】
<CIE1976クロマティクネス指数試験>
インクジェット記録用インクを、6番のメイヤーバー(R.D.Specialties社製)を用いてPVC基材(METAMARK社製MD5)に塗布し25℃で2日間乾燥させた。乾燥した塗布面を、X−Rite938分光側色計(X−Rite社製)でCIE1976クロマティクネス指数(a*、b*)を測定し評価した。結果は以下のように分類し、表中に示した。
○:CIE1976クロマティクネス指数が−90≦a*≦−55かつ45≦b*≦90の範囲内であった。
×:CIE1976クロマティクネス指数がa*≦−55または45≦b*の範囲内であった。
【0045】
<粒状感試験>
インクジェット記録用インクを、インクジェット記録装置IP−5620(セイコーアイ・インフォテック社製)を用いてPVC基材(METAMARK社製MD5)に印字して評価した。グリーンインクは印字濃度を10%きざみで印字して粒状感の有無を官能的に評価した。又、蛍光イエローインクとシアンインクをインクジェットで印字して混色させグリーンを表現する場合、印字濃度が100%になるように各インクを10%きざみで印字して粒状感の有無を官能的に評価した。印字環境は、室温23℃湿度50%環境下で評価した。結果は以下のように分類し、表中に示した。
○:各階調にて粒状感は見られなかった。
△:印字濃度が10から40%の低階調で粒状間が見られた。
×:印字濃度が10から70%の低から中階調で粒状間が見られた。
【0046】
<ブロッキング性試験>
インクジェット記録用インクを、6番のメイヤーバー(R.D.Specialties社製)を用いてPVC基材(METAMARK社製MD5)に塗布し25℃で2日間乾燥させた。乾燥した塗布面を1平方センチメートルの正方形に裁断し、塗布面同士を重ねて、500gの加重をかけて1日放置した。放置後、重ねた塗布面を引き剥がし、塗布面の剥がれの有無を評価した。結果は以下のように分類し、表中に示した。
○:塗布面の剥がれはみられなかった。
×:塗布面の剥がれがみられた。
【0047】
<薬品耐性試験>
インクジェット記録用インクを、6番のメイヤーバー(R.D.Specialties社製)を用いてPVC基材(METAMARK社製MD5)に塗布し25℃で2日間乾燥させた。乾燥した塗布面を、以下の薬品をそれぞれ浸漬させた布で20回擦り塗布面を目視で評価した。耐性評価に使用した薬品は、50%エタノール水溶液、中性洗剤、アルカリ洗剤、酸素系漂白剤、塩素系漂白剤である。結果は以下のように分類し、表中に示した。
○:すべての薬品で塗布面の異常は確認されなかった。
△:いくつかの薬品で塗布面の異常が確認された。
×:すべての薬品で塗布面の異常が確認された。
【0048】
<物理耐性試験>
インクジェット記録用インクを、6番のメイヤーバー(R.D.Specialties社製)を用いてPVC基材(METAMARK社製MD5)に塗布し25℃で2日間乾燥させた。乾燥した塗布面を、以下の試験方法で耐性を評価した。用いた試験方法は、塗布面を試験用布片(JIS染色堅ろう度試験用)で50往復擦る擦過試験、塗布面のクロスカット試験、塗布面を折り曲げる耐折曲げ試験、塗布面同士を50回擦る耐もみ試験である。結果は以下のように分類し、表中に示した。
○:塗布面がすべての方法で剥れなかった。
△:塗布面がいくつかの方法で剥れた。
×:塗布面がすべての方法で剥れた。
【0049】
<光沢性試験>
インクジェット記録用インクを、6番のメイヤーバー(R.D.Specialties社製)を用いてPVC基材(METAMARK社製MD5)に塗布し25℃で2日間乾燥させた。乾燥した塗布面を、光沢度計micro−TRI−gloss(BYK−Gardner社製)を用いて測定角度60°の光沢を測定した。結果は以下のように分類し、表中に示した。
○:光沢度は60以上であった。
△:光沢度は20以上60未満であった。
×:光沢度は20未満であった。
【0050】
<インク保存安定性試験>
インクジェット記録用インクを、60℃で4週間、及び、−15℃で4週間保存させ、保存前後の粘度を測定して変化率を算出した。インクジェット記録用インクの粘度は、東機産業社製の粘度計VISCOMETER TV−33にて測定した。結果は以下のように分類し、表中に示した。
○:60℃、及び、−15℃保存前後における粘度変化率が、±5%未満であった。
△:60℃、及び、−15℃保存前後における粘度変化率の一方が、±5%未満であった。
×:60℃、及び、−15℃保存前後における粘度変化率が、±5%以上であった。
【0051】
<連続印字性試験>
インクジェット記録用インクを、インクジェット記録装置IP−5620(セイコーアイ・インフォテック社製)を用いてPVC基材(METAMARK社製MD5)に印字し連続印字性能を評価した。6.0メートルの評価画像を濃度通常の標準モードと、濃度通常及び高濃度の高画質モードで連続印字して、印字前後のノズル抜け(不吐出ノズルの有無)を測定した。測定環境は、室温15℃湿度30%、室温23℃湿度50%、室温30℃湿度70%の3環境下で評価した。結果は以下のように分類し、表中に示した。
○:各環境下にて印字前後のノズル抜けは見られなかった。
△:一部の環境下にて印字前後でノズル抜けが見られた。
×:全ての環境下にて印字前後でノズル抜けが見られた。
【0052】
ここで、実施例と比較例を比較する。
比較例1は、インク中のバインダ樹脂総量が6重量%を超えているため、インクの保存安定性、連続印字安定性が不良であることがわかる。更に、インク中の顔料分散剤濃度が1重量%未満であるため、インクの保存安定性が不良であることがわかる。更に、インク中の有機蛍光イエロー顔料濃度が8重量%未満であるため、視認性の不良、且つCIE1976クロマティクネス指数が範囲外であることがわかる。
【0053】
比較例2は、インク中のバインダ総量が3重量%未満であるため、ブロッキング性、薬品耐性、物理耐性、連続印字性試が不良であることがわかる。更に、有機蛍光イエロー顔料濃度が12重量%を超えているため、CIE1976クロマティクネス指数が範囲外であることがわかる。更に、インク中の顔料分散剤濃度が5.2重量%を超えているため、印字物のブロッキング性、薬品耐性が不良であることがわかる。
【0054】
比較例3は、インク中のバインダ樹脂にメタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂を併用していないため、ブロッキング性が不良であることがわかる。更に、インク中の有機シアン顔料濃度が0.2重量%未満のため、CIE1976クロマティクネス指数が範囲外であることがわかる。
【0055】
比較例4は、インク中のバインダ樹脂に塩酢ビ樹脂を併用していないため、薬品耐性、物理耐性、連続印字性が不良であることがわかる。更に、インク中の有機シアン顔料濃度が1重量%を超えているため、CIE1976クロマティクネス指数が範囲外であることがわかる。
【0056】
比較例5は、インク中のバインダ樹脂である塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂の比率が3.0を超えているためブロッキング性が不良であることがわかる。
比較例6は、インク中のバインダ樹脂である塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂の比率が0.1未満であるため薬品耐性、物理耐性が不良であることがわかる。
【0057】
比較例7は、インク中に有機蛍光イエロー顔料を使用せず、有機イエロー顔料と有機シアン顔料でグリーンを表現しているため、視認性が不良であることがわかる。更に、インク中に有機蛍光イエロー顔料を使用していないため、CIE1976クロマティクネス指数が範囲外であることがわかる。
【0058】
実施例1は、インク中の有機蛍光イエロー顔料の含有量が10.0重量%、且つ有機シアン顔料の含有量が0.3重量%で、バインダ樹脂に塩酢ビ樹脂とメタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂を併用し、塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂の比率が0.65、バインダ樹脂総量が4.3重量%であるため、視認性、CIE1976クロマティクネス指数の範囲、粒状感、ブロッキング性、薬品耐性、物理耐性、光沢性、インクの保存安定性、連続印字性の全ての試験で良好な結果となることが分かる。
【0059】
実施例2は、インク中の有機蛍光イエロー顔料の含有量が8.0重量%、且つ有機シアン顔料の含有量が1.0重量%で、バインダ樹脂に塩酢ビ樹脂とメタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂を併用し、塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂の比率が0.2、バインダ樹脂総量が6.0重量%であるため、視認性、CIE1976クロマティクネス指数の範囲、粒状感、ブロッキング性、薬品耐性、物理耐性、光沢性、インクの保存安定性、連続印字性の全ての試験で良好な結果となることが分かる。
【0060】
実施例3は、インク中に有機蛍光イエロー顔料の含有量が12.0重量%、且つ有機シアン顔料の含有量が0.2重量%で、バインダ樹脂に塩酢ビ樹脂とメタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂を併用し、塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂の比率が3.0、バインダ樹脂総量が4.0重量%であるため、視認性、CIE1976クロマティクネス指数の範囲、粒状感、ブロッキング性、薬品耐性、物理耐性、光沢性、インクの保存安定性、連続印字性の全ての試験で良好な結果となることが分かる。
【0061】
実施例4は、有機蛍光イエロー顔料の含有量が8.0重量%、且つ有機シアン顔料の含有量が0.2重量%で、バインダ樹脂に塩酢ビ樹脂とメタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂を併用し、塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂の比率が2.0、バインダ樹脂総量が3.0重量%であるため、視認性、CIE1976クロマティクネス指数の範囲、粒状感、ブロッキング性、薬品耐性、物理耐性、光沢性、インクの保存安定性、連続印字性の全ての試験で良好な結果となることが分かる。
【0062】
実施例5は、有機蛍光イエロー顔料の含有量が12.0重量%、且つ有機シアン顔料の含有量が1.0重量%で、バインダ樹脂に塩酢ビ樹脂とメタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂を併用し、塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂の比率が3.0、バインダ樹脂総量が4.0重量%であるため、視認性、CIE1976クロマティクネス指数の範囲、粒状感、ブロッキング性、薬品耐性、物理耐性、光沢性、インクの保存安定性、連続印字性の全ての試験で良好な結果となることが分かる。
【0063】
更に、実施例1から実施例5は、CIE1976クロマティクネス指数が−90≦a*≦−55、45≦b*≦90の範囲内であるため、印字物の濃度、広い色域であることが分かる。
以上のことから、有機蛍光イエロー顔料の含有量は8以上12重量%以下が好ましいことがわかる。
更に有機シアン顔料の含有量は0.2以上1.0重量%以下が好ましいことがわかる。
【0064】
更に、バインダ樹脂に塩酢ビ樹脂のみを用いた場合、インク中の有機蛍光顔料濃度が高いため、記録基材との十分な密着性を確保するために、必要なバインダ樹脂を添加すると、インクジェット記録用インクの粘度が高くなり、記録ヘッドからの安定的な吐出性能を得ることが困難となることがわかる。更に、記録ヘッドから吐出可能な粘度に調整した場合、インク中に十分なバインダ樹脂量を添加できず、記録基材との密着性が不十分となることがわかる。
【0065】
更に、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂のみを用いた場合、記録基材との密着性、及び薬品耐性を十分に得ることができないばかりか、インク中の固形分濃度が高くなり記録ヘッドからの安定的な吐出性能を得ることが困難となることがわかる。
更に、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂と、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂とを併用する必要があることがわかる。
【0066】
表2に示す結果を比較することで、有機蛍光イエロー顔料の含有量は8以上12重量%以下、更に有機シアン顔料の含有量は0.2以上1.0重量%以下であり、有機蛍光顔料をインクジェット記録用インク中に溶解させ、バインダ樹脂は塩酢ビ樹脂と、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルを構成モノマーとしたアクリル樹脂とを併用し、塩酢ビ樹脂とアクリル樹脂の比率が0.1以上3.0以下であり、バインダ樹脂の総量が3以上6重量%とすることで、インクジェット記録用インクの安全性、保存安定性、記録ヘッドからの安定的な吐出性能、印字物の乾燥性を有し、さらに高い濃度で、且つ粒状感を無くすことができ、色域が拡大するインクジェット記録用インク、及び、インクカートリッジを提供できることがわかる。
【0067】
ここで、インクジェット記録装置による記録方法について説明する。記録基材の上空を主走査方向に往復走査するキャリッジに記録ヘッドが搭載され、複数走査で記録するシャトル方式のインクジェット記録装置を用いる。例えば4回の走査で記録させる場合、記録基材を副走査方向に記録ヘッドの4分の1の幅毎に搬送させ、各搬送後にインクを吐出することで、記録基材の同位置にノズルを変えて4回の吐出ができる。
【0068】
まず、キャリッジを主走査方向に走査させながら記録基材上にインクを吐出する。次に副走査方向に記録ヘッドの4分の1の幅だけ記録基材を移動させ、キャリッジを主走査方向に走査させながら記録基材上にインクを吐出させ、続けて2回行い、合計4回の走査で最大4回同じ位置にインクを吐出することができる。すなわち、高濃度で記録を行うことができ、視認性に優れ、また有機蛍光イエロー顔料が厚く定着するので耐光性も高まる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、インクジェット記録用インクに好適に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 インクカートリッジ
2 パウチ
3 上ケース
4 下ケース
5 インク取出口
図1