特許第6042676号(P6042676)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6042676-撮像装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042676
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   H04N5/225 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-209723(P2012-209723)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-68053(P2014-68053A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】乾 達也
【審査官】 佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−086521(JP,A)
【文献】 特開2006−094256(JP,A)
【文献】 特開2011−090252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
中間デバイスと、
画像処理デバイスを有し、
前記撮像素子が連続して複数の画像信号を取得することで動画像を得る撮像装置において、
前記中間デバイスは、
クロック信号の速度の調整を行うPLL回路と、
撮影された画像信号の前記中間デバイスへの伝送開始と伝送完了を前記PLL回路に知らせる同期信号生成回路と、
前記PLL回路が調整したクロック信号で、前記画像処理デバイスと高速シリアル通信を行う高速シリアル送信回路と、
を有し、
前記PLL回路は、前記撮像素子が撮影した動画像の画像信号のうち、1枚分の画像信号の伝送が完了後に稼働を停止する休止期間を有し、
前記PLL回路の休止期間は、連続した複数の画像信号の取得における所定のフレームレートに対して予め設定された時間であり、
前記中間デバイスは、前記所定のフレームレートを与えられることで独立的に前記PLL回路の停止及び起動を行う回路である
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記PLL回路の休止期間は、前記撮像素子が撮影した動画像を構成する1枚分の撮影画像データの伝送開始から動画像を構成する次の1枚分の撮影画像データの伝送開始までの時間から、動画像を構成する1枚分の撮影画像データの伝送時間と、PLL回路が起動してからクロック生成可能になるまでの待機時間として予め設定された時間であるPLL安定化待ち時間とを差し引いたものであることを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に動画像を撮影可能なデジタル撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体の撮影画像データを撮像素子の光電変換によって取得する、デジタル撮像装置がある。かかる撮像装置において、画像処理の中間デバイスとしてFPGAを有するものは、FPGAから画像処理デバイスとしてのDSPに撮影画像データを伝送する際に、高速のシリアル通信を用いているものがある。
【0003】
高品質のビデオを提供するには高速シリアル通信に、通常600〜1000MHzの高速クロックが必要となる。
【0004】
このような高速クロックを生成するため、上記のようなFPGAを有し、DSPに撮影画像データを伝送する必要があるシステムにおいては、高速のクロックを生成可能なクロック生成手段を必要とする。かかるクロック生成手段としては、例えばPLL回路などが用いられる。
【0005】
PLL回路(Phase−locked loop回路)とは、高速クロックを生成するためや、クロックの位相をそろえるためなどに用いられるクロック生成回路である。かかるPLL回路は、多様な信号を安定した状態で作り出すことができるため、電子回路中でさまざまな用途に使用されている。
【0006】
かかるPLL回路により、データの伝送において、必要な速さのクロックを生成することができる。
【0007】
かかるクロック生成を行うPLL回路は、撮像装置中において、大きく電力を消費するデバイスの一つである。
【0008】
従来、PLL回路は撮影画像データの取得及び伝送中は間断なく稼働していた。そのため、動画像撮影中、PLL回路は常に大きく電力を消費し続けていた。
【0009】
しかしながら、電力の消費が激しいからと言ってPLL回路をとめてしまえば、その間、当然撮影画像データの伝送も止まってしまう。そのため、実際に撮影画像データを伝送している間はPLL回路のクロック生成を停止させることはできない。
【0010】
このような問題を解決するため、クロック生成を行うPLL回路をクロック信号の不要時に停止し、消費電力を抑える発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2010−523022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の技術では、通常の動作モードと省電力の動作モードの2種類の動作モードを持ち、通常の動作モードにおいて、高速データ伝送のためにPLL回路を使用する。そして、データ伝送回路における低速の活動を検出すると、通常の動作モードから省電力の動作モードに切り替わる。
【0013】
この省電力の動作モードにおいて、PLL回路は通常の動作モードより低い速度でデータを伝送することで、電力消費の大きい動作モードで動作する時間を短縮し、消費電力を抑えている。
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では消費電力を抑えることができるのは省電力の動作モードという特殊なモードを選択したときだけであり、またその場合にはデータの伝送速度が遅くなり、処理効率が下がるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、第1の発明は、撮像素子と、中間デバイスと、画像処理デバイスを有し、前記撮像素子が連続して複数の画像信号を取得することで動画像を得る撮像装置において、前記中間デバイスは、クロック信号の速度の調整を行うPLL回路と、撮影された画像信号の前記中間デバイスへの伝送開始と伝送完了を前記PLL回路に知らせる同期信号生成回路と、前記PLL回路が調整したクロック信号で、前記画像処理デバイスと高速シリアル通信を行う高速シリアル送信回路と、を有し、前記PLL回路は、前記撮像素子が撮影した動画の画像信号のうち、1枚分の画像信号の伝送完了後、休止期間として稼働を停止し、前記PLL回路の休止期間は、連続した複数の画像信号の取得における所定のフレームレートに対して予め設定された時間であり、前記中間デバイスは、前記所定のフレームレートを与えられることで独立的に前記PLL回路の停止及び起動を行う回路であることを特徴とする撮像装置とした。
【0016】
また、第2の発明は、前記PLL回路の休止期間は、前記撮像素子が撮影した動画像を構成する1枚分の撮影画像データの伝送開始から動画像を構成する次の1枚分の撮影画像データの伝送開始までの時間から、動画像を構成する1枚分の撮影画像データの伝送時間と、PLL回路が起動してからクロック生成可能になるまでの待機時間として予め設定された時間であるPLL安定化待ち時間とを差し引いたものであることを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、動画像撮影時において、撮影画像データの処理効率を下げることなく、消費電力を抑制した撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図
図2】本発明の実施例に係る撮像装置において、30FPSの動画像を撮影した場合の画像信号の伝送時のタイミング図
【0019】
図1は本発明の実施例に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図である。以下、図1を用いて本発明の実施例に係る撮像装置について説明する。
【0020】
図1において、100は、本実施形態における撮像装置であり、被写体を撮影し、撮影画像データを保存する。200は、撮像装置100に装着可能な光学系である。本実施例において、撮像装置100は、光学系の交換が可能な構成となっており、撮像装置100と光学系200とで全体としてレンズ交換式カメラシステムを構成している。
【0021】
撮像装置100において、101は撮像素子、102はFPGA、1021はPLL回路、1022はメインクロック源、1023は同期信号生成回路、1024はデータ処理回路、1025は高速シリアル送信回路、103はDSPである。
【0022】
また、撮像装置100はこのほかに不図示のシャッターボタンなどの操作手段や、液晶などの表示手段や、AEセンサなどの撮像装置に必要な要素を有している。
【0023】
光学系200は、レンズ光学系のほか、不図示の絞りなどを有している。
【0024】
撮像素子101は、光学系200を通して入射した光を信号電荷に変換する、CMOSやCCDのイメージャーである。
【0025】
FPGA102は、撮像素子101において取得された撮影画像データが、DSP103に送られるにあたって経由される、中間デバイスである。
【0026】
PLL回路1021は、高速のクロックを生成するクロック生成回路である。かかるPLL回路1021において、撮像素子101で取得された撮影画像データをFPGA102からDSP103に送るための高速クロック信号を生成する。
【0027】
メインクロック源1022は、FPGA102が動作するためのクロック源である。FPGA102中の回路は、かかるメインクロック源1022の生成するクロックによって、動作する。
【0028】
同期信号生成回路1023は、PLL回路1021に対して、クロック信号の生成と停止を指示する信号を発する。かかる信号にあわせてPLL回路1021は駆動する。
【0029】
データ処理回路1024は、撮像素子101から送られてきた撮影画像データに画像処理などを施す。かかるデータ処理回路1024も、同期信号生成回路1023から発せられる信号にあわせてデータ処理を行う。
【0030】
高速シリアル送信回路1025は、撮像素子101が取得した撮影画像データをFPGA102からDSP103に送信する回路である。前述の通り、撮像素子101で取得された撮影画像データはFPGA102を経由して、撮影画像データはDSP103に送られる。高速シリアル送信回路1025は、前述のPLL回路1021によって生成された高速のクロックにあわせて撮影画像データを送信する。
【0031】
DSP103は、撮像素子101が取得した撮影画像データの画像処理を行う、画像処理デバイスである。かかる画像処理デバイスで処理された画像は不図示の記憶手段に撮影画像データとして記憶される。
【0032】
次に、本発明の実施例において、動画像撮影時において、撮影画像データの処理効率を下げることなく、消費電力を抑制する方法について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施例に係る撮像装置の動画像の撮影画像データ伝送時のタイミング図である。図2における動画像は30FPS(Frame per second)の動画像である。
【0033】
前述の通り、動画像は連続して撮影画像データを取得することによって得られる。つまり、本発明の実施例において、動画像を構成する撮影画像データは動画像を構成する撮影画像データ1枚1枚ごとに撮像素子101からFPGA102へ伝送され、FPGA102からDSP103へと伝送される。
【0034】
図2のタイミング図は、前述の通り、30FPSの動画像を撮影した場合の画像信号伝送時のものである。
【0035】
図2において、垂直信号は、ハイのとき、動画像を構成する撮影画像データ1枚分を、FPGA102からDSP103へ送ろうとしていることを示す。この期間が垂直アクティブ期間である。
【0036】
また、水平信号は、ハイのとき、動画像を構成する撮影画像データの1枚分の内、1ライン分のデータをFPGA102からDSP103へ送ろうとしていることを示す。この期間が水平アクティブ期間である。本発明の実施例において、動画像を構成する撮影画像データは、伝送の際、1ライン分ずつ送られる。1ライン分とは、撮像素子101が取得する撮影画像データの横1列分の画素のデータのことである。
【0037】
また、リセット信号は、ハイとなったとき、同期信号生成回路1023がPLL回路1021の機能を停止することを示し、ローとなったとき、PLL回路1021の機能を起動することを示している。
【0038】
また、図2が示す場合においては、30FPSの動画像を構成する撮影画像データが伝送されてから、動画像を構成する次の撮影画像データが伝送されるまで、33msecである。このうち、動画像を構成する撮影画像データの伝送に必要とされるのは27msecである。
【0039】
そのため、動画像を構成する撮影画像データの伝送が開始されてから27msec経過後から動画像を構成する次の撮影画像データの伝送が始まるまでは、撮影画像データ伝送のための動作は行われない。
【0040】
すなわち、動画像を構成する撮影画像データの伝送が開始されてから、動画像を構成する次の撮影画像データの伝送が開始されるまでの間のうち、動画像を構成する撮影画像データ1枚分の伝送にかかる時間を除いた時間、PLL回路1021の機能を、同期信号生成回路1023のリセット信号により停止することができる。
【0041】
なぜなら、前述の通り、PLL回路1021は、撮像素子101で取得された撮影画像データをDSP103に送るための高速クロック信号を生成するものである。そのため、動画像を構成する撮影画像データ1枚分の伝送が完了し、動画像を構成する次の撮影画像データの伝送が開始するまで、すなわち、動画像を構成する撮影画像データを伝送していない期間は、PLL回路1021の機能を稼働させておく必要がないからである。
【0042】
また、本発明の実施例のように、30FPSの動画像を撮影する場合、1秒間に30枚の撮影画像データが取得されて動画像を構成するということが予めわかっている。そのため、動画像を構成する撮影画像データ1枚分の伝送が完了した後、動画像を構成する次の撮影画像データの伝送がいつ開始するかも予め分かっている。よって、動画像の場合にはPLL回路1021の休止可能な期間も予め分かっている。したがって、本発明では、動画像を構成する撮影画像データの伝送が開始されてから、次の撮影画像データの伝送が開始されるまでの間のうち、動画像を構成する撮影画像データ1枚分の伝送にかかる時間を除いた時間を休止期間として、PLL回路1021の機能を、同期信号生成回路1023のリセット信号により停止することができる。
【0043】
こうすることにより、PLL回路1021を撮影画像データの処理効率を下げることなく伝送することができる。PLL回路1021の機能を停止させる時間は、動画像を構成する撮影画像データ1枚分の伝送が完了してから、動画像を構成する次の撮影画像データの伝送が開始するまでの期間内に収まっており、撮影画像データをDSP103に送るための高速クロック信号を生成する間は、PLL回路1021を停止させないからである。
【0044】
ただし、動画像を構成する撮影画像データ1枚分の伝送が完了し、動画像を構成する次の撮影画像データの伝送が開始するまでずっと休止期間としてPLL回路1021の機能を停止しておくのには問題がある。かかる問題について、以下に説明する。
【0045】
動画像を構成する撮影画像データ1枚分の伝送が完了し、動画像を構成する次の撮影画像データの伝送が開始するまでは、PLL回路1021が動画像を構成する撮影画像データをDSP103に送るための高速クロック信号を生成することはない。しかしながら、動画像を構成する次の撮影画像データの伝送が開始するまでPLL回路1021の機能が停止していると、PLL回路1021の機能を稼働した直後にPLL回路1021はクロック生成を開始することになる。その場合、PLL回路1021の動作が不安定となり、システム全体が誤動作する恐れがある。
【0046】
したがって、本発明の実施例においては、同期信号生成回路1023は、動画像を構成する撮影画像データの伝送の開始後、動画像を構成する次の撮影画像データの伝送が開始するまでの時間のうち、一定期間をPLL安定化待ち時間として、動画像を構成する次の撮影画像データの伝送開始前からPLL回路1021を起動させておき、動画像を構成する次の撮影画像データの伝送開始に備えておく。
【0047】
こうすることにより、PLL回路1021の機能を稼働した直後にPLL回路1021は高速クロック信号の生成を開始し、結果、PLL回路1021の動作が不安定となり、システム全体が誤動作するという事態を避けることができる。
【0048】
本発明の実施例において、PLL安定化待ち時間は100μsecである。しかしながら、かかるPLL安定化待ち時間は、PLLデバイスの特性により、適宜決定することが望ましい。
【0049】
以上の通り、本発明は、PLL回路1021は、同期信号生成回路1023のリセット信号により、撮像素子が撮影した動画像の画像信号のうち、一枚分の画像信号の伝送が完了後に稼働を停止し、前記撮像素子が撮影した動画像のワンフレームの伝送開始から次のワンフレームの伝送開始までの時間から、実際の画像の伝送時間と、PLL回路1021が起動してからクロック生成可能になるまでの待機時間として予め設定された時間であるPLL安定化待ち時間とを差し引いた時間の経過後、同期信号生成回路1023のリセット信号により、PLL回路1021の機能を起動することによって、動画像撮影時において、撮影画像データの処理効率を下げることなく、消費電力を抑制した撮像装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
100 撮像装置
101 撮像素子
102 FPGA
1021 PLL回路
1022 メインクロック源
1023 同期信号生成回路
1024 データ処理回路
1025 高速シリアル送信回路
103 DSP
200 光学系
図1
図2