【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
<フラックス組成物>
以下の組成を混練し、フラックス組成物を得た。
無水マレイン酸骨格を構造に含む水添ロジン 50重量%
硬化ヒマシ油(ケイエフ・トレーディング(株))
5重量%
アジピン酸(関東電化工業(株)製) 3重量%
マロン酸(十全化学(株)製) 0.2重量%
ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩 1重量%
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル 40.8重量%
【0041】
尚、上記フラックス組成物に用いる無水マレイン酸骨格を構造に含む水添ロジンは、以下の手順により生成した。
【0042】
(ア)水蒸気蒸留法を用いて精製したガムロジン700gと無水マレイン酸154gとを反応容器に仕込み、これを温度220℃、反応時間4時間の反応条件にて、窒素気流下で撹拌しながら反応させた。その後、これを減圧下において未反応物を除去することにより付加反応生成物を得た。
(イ)上記アで得られた付加反応生成物500gと5%パラジウムカーボン(含水率50%)6.0gとを1リットル回転式オートクレーブに仕込んで系内の酸素を除去し、水素を用いて系内を100MPaに加圧して220℃まで昇温させた。その後、220℃の温度で水素化反応を3時間行い、無水マレイン酸骨格を構造に含む水添ロジンを得た。尚、本実施例においては、得た無水マレイン酸骨格を構造に含む水添ロジンを更に以下の条件で精製する。
(ウ)無水マレイン酸骨格を構造に含む水添ロジン400gとキシレン200gとを反応容器に仕込みこれを加熱して溶解させた。その後、溶解物からキシレン150gを留去した。次に、シクロヘキサン150gを反応容器に加え、これを室温まで冷却した後に、結晶の収量が約40gに達したところでその上澄み液を別の反応容器に移動させ、室温下で再結晶させた。その後、更にこれの上澄み液を除去し、シクロヘキサン20gで洗浄した後、このシクロヘキサンを留去した。
【0043】
実施例1
、2、3、6、7、9及び参考例4、5、8、10、11、12
表1に記載の組成となるように、本発明に係る各はんだ合金を調整した。
更にこの各はんだ合金89重量%と、上記フラックス組成物11重量%とを混合し、本発明に係るソルダーペースト組成物を作製した。尚、表1に記載の数値の単位は、特に断り書きがない限り重量%である。
【0044】
比較例1〜9
表2に記載の組成となるように、比較例となる各はんだ合金を調整した。
更にこの各はんだ合金89重量%と、上記フラックス組成物11重量%とを混合し、比較例となるソルダーペースト組成物を作製した。尚、表2に記載の数値の単位は、特に断り書きがない限り重量%である。
【0045】
【表1】
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1
、2、3、6、7、9及び参考例4、5、8、10、11、12、及び比較例1〜9の各はんだ合金及び各ソルダーペースト組成物について、以下通り測定及び評価を行った。その結果を表3及び表4にそれぞれ示す。
【0048】
<溶融温度範囲>
各はんだ合金について、示差走査熱量測定装置(製品名:EXSTAR DSC6200、セイコーインスツル(株)製)を用いて固相線温度と液相線温度を測定した。尚、測定条件は、昇温速度を常温〜150℃までは10℃/min、150℃〜250℃までは2℃/minとし、サンプル量と10mgとした。
【0049】
<ソルダーボール試験>
各ソルダーペースト組成物について、JIS規格Z3284附属書11で定める条件に準じて各試験片を作製及びソルダーボール試験を実施し、試験後の各試験片の外観全体について以下の通り評価した。尚、作製した各試験片は180℃のホットプレートを用いて60秒間プリヒート処理した後に270℃のソルダバスにて溶融させた。
◎ 溶融したはんだが1つの大きな球となり、その周囲にはソルダーボールが発生していない。
○ 溶融したはんだが1つの大きな球となり、その周囲に発生した直径75μm以下のソルダーボールは3つ以下である。
△ 溶融したはんだが1つの大きな球となり、その周囲に発生した直径75μm以下のソルダーボールは3つ以上であるが、半連続の環状には並んでいない。
× 溶融したはんだが1つの大きな球となり、その周囲に多数の細かい球が半連続の環状に並んでいる。
【0050】
<伸び率(延伸性)>
各はんだ合金について、JIS規格Z2241で定める条件に準じて各試験片を作製及び伸び率を測定し、これについて以下の通り評価した。尚、各試験片のサイズはJIS4号とした。
○ 30%超50%以下
△ 10%超30%以下
× 10%以下
【0051】
<引張強さ>
各はんだ合金について、JIS規格Z2241で定める条件に準じて各試験片を作製及び引張強さを測定し、これについて以下の通り評価した。尚、引張強さは常温下と150℃下とそれぞれの温度条件下で測定した。
〔室温〕
◎ 70Mpa超
〇 60Mpa超70Mpa以下
△ 50Mpa超60Mpa以下
× 50Mpa以下
〔150℃〕
◎ 20Mpa超
〇 18Mpa超20Mpa以下
△ 16Mpa超18Mpa以下
× 16Mpa以下
【0052】
<耐熱衝撃性>
FR−4ガラスエポキシ基板:サイズ 100mm×80mm×1.6mm
はんだ付けパターン:面積 1.6mm×0.5mm
チップ抵抗部品: サイズ 3.2mm×1.6mm×0.6mm
上記ガラスエポキシ基板上に設けたはんだ付けパターン上に、各ソルダーペースト組成物を用いて上記チップ抵抗部品をはんだ付けすることにより、はんだ接合部を有する各プリント配線板を作製した。はんだ付けは、厚さ150μmのメタルマスクを用いてはんだ付けパターンの電極部分に各ソルダーペースト組成物を印刷し、ピーク温度を240℃に設定したリフロー炉(製品名:TNP25−538EM、タムラ製作所(株)製)にてこれを加熱することにより行った。
その後、−40℃(30分間)〜125℃(30分間)の条件に設定したヒートショック試験装置(製品名:ES−76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、上記冷熱サイクルを3,000回繰り返す環境下に上記プリント配線板を曝すことで、各試験用プリント配線板を作製した。
そして各試験用プリント配線板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤及び硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験用プリント配線板に実装されたチップ抵抗部品の中央断面が分かるような状態とし、そのはんだ接合部の組織内部に進行したクラックの長さを測定顕微鏡(製品名:STM6、オリンパス(株)製)を用いて測定した。
各試験用プリント配線板のクラックの長さについて、以下の通り評価した。
◎ 5mm以下
○ 5mm超6mm未満
△ 6mm以上7mm未満
× 7mm以上
【0053】
【表3】
【0054】
【表3】
【0055】
実施例に示す通り、本発明のはんだ合金は優れた伸び率及び引張強さ(常温下及び150℃下)を有していることから、−40℃から125℃の冷熱サイクル下で発生する熱膨張及び収縮といった熱応力にも耐えることのできるはんだ接合部を提供することができる。特に、このようなはんだ接合部は冷熱サイクルが3,000サイクルという過酷な環境に曝された場合であっても優れた耐熱衝撃性を発揮することが分かる。尚、その組成が3重量%以上4重量%以下のBiと、2重量%以上2.5重量%以下のInと、0.5重量%以上0.7重量%以下のCuと、3重量%以上4重量%以下のAgとを含み、残部がSnと不可避不純物とからなるはんだ合金を用いたはんだ接合部の場合、より優れた伸び率、引張強さ及び耐熱衝撃性を有する。
また本発明のはんだ合金を用いたソルダーペースト組成物は、優れた機械的強度や耐熱衝撃性を有すると共に、リフロー時のソルダーボールの発生を抑制できることが分かる。
そして、本発明のはんだ合金及びソルダーペースト組成物を用いて形成したはんだ接合部を有するプリント配線板は、過酷な環境下で長期に渡って使用される車載用基板に好適に用いることができる。