(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
[太陽光発電システムの概要]
図1は住宅に設置した本発明の太陽光発電システムを示した説明図である。
図1において、本発明の太陽光発電システムは、太陽光発電装置と蓄電装置で構成する。太陽光発電装置は、住宅10の屋根に太陽電池モジュール12を設置し、太陽光エネルギーを直流電力に変換して出力する。なお、太陽電池モジュール12は太陽電池パネルともいう。
【0034】
太陽電池モジュール12は、複数の太陽電池セルを配置して直列接続しており、太陽電池モジュール1枚当りの出力は小さいことから、複数枚の太陽電池モジュールを直列接続して一つのグループを作り、このグループを太陽電池ストリングスとしている。
【0035】
複数枚の太陽電池モジュール12で構成した太陽電池ストリングスからの電力線は接続箱14に集められ、接続箱14は複数の太陽電池ストリングから出力電圧を一方向のDC/DCコンバータにより所定電圧に揃えた後に並列接続してひとつにまとめ、パワーコンディショナ16に送り出している。また、接続箱14に設けた一方向のDC/DCコンバータは、太陽電池が最大電力で発電できるように最大電力点追従制御を行う。
【0036】
パワーコンディショナ16は、太陽電池モジュール12で発電した直流電力を、一般の電気機器で使用できる交流電力に変換する働きをし、このため直交変換手段として機能するDC/ACインバータを備えている。また、パワーコンディショナ16は、電力会社の商用交流系統に接続できるよう電圧、周波数、相数、線数などの整合を取る役割を果たす。
【0037】
パワーコンディショナ16に対してはモニタ装置20が接続され、モニタ装置20は表示部と操作部を備え、太陽光発電システムの運転状態の表示、障害表示、必要な運転操作などを行う。また、モニタ装置20の操作部には、蓄電装置18に設けた発煙消火装置を遠隔起動するための消火起動釦を設けている。
【0038】
パワーコンディショナ16に対しては住宅10の屋外に設置した蓄電装置18を電力線で接続している。蓄電装置18を設けたことに伴い、パワーコンディショナ16に双方向DC/DCコンバータを設けている。双方向DC/DCコンバータは、接続箱14から供給された太陽発電による直流電力を所定の直流電圧に降圧(降圧変換)して蓄電装置18に充電する共に、蓄電装置18に蓄えた直流電力を所定の直流電圧に昇圧(昇圧変換)してDC/ACインバータに出力する。
【0039】
蓄電装置18は、複数のリチウムイオン電池を直列接続した1又は複数の電池モジュール(組電池)を収納しており、接続箱14から供給された太陽発電による直流電力を双方向DC/DCコンバータを介して充電すると共に、例えば住宅で使用電力が最大となる昼間の時間帯に蓄電した直流電力を双方向DC/DCコンバータを介して放電し、放電した直流電力をパワーコンディショナ16のDC/ACインバータで交流電力に変換して供給する。
【0040】
パワーコンディショナ16からの電力線は分電盤22に接続され、また分電盤22には柱上トランス25などから電力会社の商用交流系統の電力線が電力メータ24を経由して接続され、太陽電池システム又は商用交流系統からの交流電力を、分電盤22を経由して住宅内に設置した電気機器などの負荷に供給している。また、パワーコンディショナ16から出力した太陽電池システムの発電に基づく交流電力を、分電盤22から電力メータ24を経由して電力会社の商用交流系統に供給する売電も可能とする。分電盤22は例えば単相3線式により商用交流系統の電力線を引き込んで接続している。
【0041】
このような太陽光発電システムにつき、本発明にあっては、蓄電装置18に設けた電池モジュールの収納容器内に複数のリチウムイオン電池を収納しているが、このリチウムイオン電池の収納容器に発煙消火装置を設け、リチウムイオン電池の火災を検出した場合に、消火用エアロゾルを収納容器内に噴出して消火するようにしている。
【0042】
図2は蓄電装置の内部構造の概略を示した説明図である。
図2に示すように、蓄電装置18は、コンクリート製の台座54の上に設置され、火炎の暴露による内部温度の上昇を抑えるために、例えば厚さ1.6ミリメートル以上の鋼鈑により作られた密閉構造の筐体50の中に、例えば2台の電池モジュール38と制御ユニット45を収納し、それぞれの間は、例えば厚さ1.6ミリメートル以上の鋼鈑を用いた仕切板52で上下に分けている。
【0043】
電池モジュール38は、金属材料で作られた開閉自在な箱構造の収納容器内に、複数のリチウムイオン電池を配列して収納すると共に直列接続しており、この収納容器内には、点線で示すように、発煙消火装置48を組み込んでいる。
【0044】
発煙消火装置48は、火災検出部により収納容器内の火災を検出した場合又は外部から点火制御信号を入力した場合に、ヒータの通電加熱により固形消火剤に点火して燃焼させ、消火用エアロゾルを収納容器内に噴出して消火をおこなう。
【0045】
再び
図1を参照するに、住宅10の例えば部屋毎の警戒区域に分けて無線連動型の住警器26を設置している。住警器26は、住宅等における火災を検出して警報する住宅用火災警報器として知られており、電池電源で動作し、火災に伴う温度又は煙濃度を検出するセンサ部と火災を警報する警報部を一体に備え、センサ部による温度又は煙濃度の検出信号に基づき火災を検出すると警報部から連動元を示す火災警報を出力し、また火災連動信号を他の住警器へ無線送信し、他の住警器で連動先を示す火災警報音を出力させる。
【0046】
住警器26はモニタ装置20に接続したアダプタ装置28により太陽光発電システムと連携可能とする。
【0047】
アダプタ装置28は、住警器26と同様に電池電源で動作し、住警器26が無線送信した火災連動信号を受信した場合に、火災検出信号を、モニタ装置20を介してパワーコンディショナ16側に設けたシステム制御部に出力し、
図2に示した蓄電装置18に設けた発煙消火装置48の起動等を可能とする。
【0048】
またアダプタ装置28は、発煙消火装置48がリチウムイオン電池の火災を検出して消火用エアロゾルを密閉容器内に噴射した場合の消火起動信号をシステム制御部およびモニタ装置20を経由して受信を受信すると、これを住警器26へ無線送信し、蓄電装置18の火災及び発煙消火装置48の消火起動を音声メッセージと警報表示により報知することを可能とする。
[太陽光発電装置の構成]
図3は本発明による太陽光発電装置の実施形態を蓄電装置と共に示したブロック図である。なお、電力線を実線で示し、信号線は点線で示している。
【0049】
図3において、本実施形態の太陽光発電装置は、太陽電池列として機能する太陽電池ストリングス11−1〜11−n、接続箱14に設けた一方向のDC/DCコンバータ32−1〜32−n、パワーコンディショナ16に設けたDC/ACインバータ34、双方向DC/DCコンバータ36及びシステム制御部46、
図1の分電盤22側となる商用交流系統30を備える。なお、一方向のDC/DCコンバータ32−1〜32−nはパワーコンディショナ16に設けても良い。
【0050】
太陽電池ストリングス11−1〜11−nは、所定枚数の太陽電池モジュール12を直列接続しており、建物の屋根の例えば東西南北の4面等に分けて設置しており、本実施形態では、太陽電池ストリングス11−1〜11−nを構成する太陽電池モジュール12を同じ枚数とすることで、太陽光を受ける条件が同じであれば、太陽電池ストリングス11−1〜11−nの出力する直流電力は略同じになる。
【0051】
太陽電池ストリングス11−1〜11−nに続いてはDC/DCコンバータ32−1〜32−nを設け、その二次側を並列接続し、パワーコンディショナ16に出力している。DC/DCコンバータ32−1〜32−nは、太陽電池ストリングス11−1〜11−nから出力する電圧が異なることを想定し、これを所定の電圧に変換した後に合せてパワーコンディショナ16へ出力する。
【0052】
例えば屋根の東西南北の4面に分けて4系統の太陽電池ストリングス11−1〜11−4を設置する場合、4面の配置面積が全て同じとはならず、太陽電池モジュール12の枚数が相違し、その結果、出力特性は同じにはならない。また太陽電池モジュール12の枚数が同じでも、屋根面での日射量に相違があるため出力特性が同じにはならない。このため、太陽電池ストリングス11−1〜11−nの出力をそのまま並列接続してパワーコンディショナ16へ出力していると、パワーコンディショナ16で最大電力点追従制御を行っても、各々異なる出力特性をもつため、最大電力点から外れた動作点で発電する太陽電池ストリングスが存在することになる。
【0053】
これに対し太陽電池
ストリングス11−1〜11−nの各々に独立してDC/DCコンバータ32−1〜32−nを設けて動作することで、DC/DCコンバータ32−1〜32−nは、接続した太陽電池ストリングス11−1〜11−nが最大の電力を発電できるように、太陽電池の最大電力点追従制御を行う。
【0054】
DC/DCコンバータ32−1〜32−nによる最大電力点追従制御は、天候によって変化する照度に対し太陽電池ストリングス11−1〜11−nから最も効率良く発電電力を得られるように、目標指令値(出力電流指示値)や目標電圧を設定し、太陽電池ストリングス11−1〜11−nの発電出力電圧と発電出力電流を制御する。
【0055】
パワーコンディショナ16に設けたDC/ACインバータ34は、DC/DCインバータ32−1〜32−nの合成出力で入力した太陽発電による直流電力、又は蓄電装置18の放電で入力した直流電力を、交流電力に変換して商用交流系統30に供給(連系)する。DC/ACコンバータ34の交流出力は、
図1の分電盤22の商用交流系統の引き込みに合せて単相3線式とする。
【0056】
双方向DC/DCコンバータ36は、蓄電装置18を充電する場合、一方向のDC/DCコンバータ32−1〜32−nから入力した直流電力の直流電圧を降圧して蓄電装置18に出力して充電させる。また、双方向DC/DCコンバータ36は、蓄電装置18を放電する場合、蓄電装置18から出力した直流電力の直流電圧を、例えば昇圧してDC/ACインバータ34へ出力し、蓄電装置18に蓄えた直流電力を放電させる。
【0057】
[蓄電装置の構成]
太陽光発電装置は、更に、蓄電装置18をパワーコンディショナ16の一次側に接続している。蓄電装置18には、複数のリチウムイオン電池を直列接続して容器内に収納した1又は複数の電池モジュール38、電池モジュール38に設けた複数のリチウムイオン電池を制御する電池制御部40及び発煙消火装置48を備える。
【0058】
電池制御部40は、セル制御機能と電池制御機能を備える。セル制御機能は、電池制御機能からの指令によって複数のリチウムイオン電池(セル電池)の状態の管理及び制御を行う、リチウムイオン電池毎に設けた複数の集積回路によって構成する。複数のリチウムイオン電池の状態の管理及び制御には、各リチウムイオン電池の電圧の計測,各セル電池の蓄電量の調整などがある。
【0059】
電池制御機能は、電池モジュール38の状態を管理及び制御すると共に、上位のシステム制御部46に電池モジュール38の状態や許容充放電電力などの充放電制御指令を通知する。電池制御機能による電池モジュール38の状態の管理及び制御には、バッテリー電圧及び電流の計測、蓄電状態及び劣化状態などの演算、電池モジュール38の温度の計測、リチウムイオン電池のセル電圧を計測するための指令、セル蓄電量を調整するための指令などの出力などがある。
【0060】
発煙消火装置48は、火災検出部により収納容器内の火災を検出した場合又は外部から点火制御信号を入力した場合に、ヒータの通電加熱により固形消火剤に点火して燃焼させ、消火用エアロゾルを電池モジュール38の収納容器内に噴出して消火する。発煙消火装置48の詳細は、後の説明で明らかにする。
【0061】
[システム制御部の制御]
システム制御部46は、太陽光発電システムのシステム運転制御を行う。システム制御部46のシステム運転制御は、例えば昼間の太陽光発電が行われている場合には、太陽光で発電した電力を住宅10の負荷に供給し、余った電力は蓄電装置18に充電し、住宅の電力使用量が増加する電力ピークの時間帯や太陽光発電が停止する夜間の時間帯に、蓄電装置18から放電して住宅10で使用する制御を行う。
【0062】
また、太陽光発電の余剰電力により蓄電装置18が満充電となって電力が余った場合は、商用交流系統30へ売電する制御を行う。
【0063】
図3について具体的に説明すると、太陽電池ストリングス11−1〜11−nが太陽光を受けて発電を行い、太陽発電による出力電圧が所定の電圧を超えると接続箱14に設けたDC/DCコンバータ32−1〜32−nが動作し、太陽電池ストリングス11−1〜11−nが最大の電力で発電できるように最大電力点追従制御を開始する。
【0064】
DC/DCコンバータ32−1〜32−nで変換した直流電力は合成後にパワーコンディショナ16のDC/ACインバータ34で交流電力に変換し、住宅10の負荷を含む商用交流系統30へ供給する。また、蓄電装置18の電池制御部40は、システム制御部46の充電指示に基づき、電池モジュール38に対する充電制御を開始し、電池モジュール38の満充電を検出すると、充電制御を停止する。
【0065】
また、住宅の消費電力のピーク時間帯や太陽光発電が停止する夜間の時間帯になると、システム制御部46からの制御指示により、電池制御部40は電池モジュール38の放電制御を開始し、蓄電装置18から放電して住宅10で蓄電した電力を消費させる。
【0066】
なお、上記の太陽光発電システムのシステム運転制御は一例であり、必要に応じて様々な太陽光発電装置の運転制御、蓄電装置の運転制御、及び太陽光発電装置と蓄電装置を連携した運転制御を行う。
【0067】
[住警器の構成]
図4は無線連動型の住警器26の機能構成の概略を示したブロック図である。
図4において、住警器26は、警報制御部58、センサ部60、アンテナ64を接続した無線通信部62、報知部66、操作部68を備え、図示しない電池電源により動作する。
【0068】
警報制御部58は、例えばプログラムの実行により実現される機能である。ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0069】
センサ部60は温度検出部または検煙部である。センサ部60として温度検出部を設けた場合、温度検出素子として例えばサーミスタを使用し、この場合、温度による抵抗値の変化に対応した電圧検出信号を警報制御部58へ出力する。またセンサ部60として検煙部を設けた場合、公知の散乱光式検煙構造をもち、警報制御部58の指示により、所定周期で赤外LEDを用いた発光部を間欠的に発光駆動し、フォトダイオードなどの受光部で受光した散乱光の受光信号を増幅し、煙濃度検出信号を警報制御部58へ出力する。
【0070】
無線通信部62は、他の住警器との間で所定の通信プロトコルに従って火災連動信号を送受信する。この通信プロトコルは、日本国内の場合には、例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD−30(小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)又はSTD−T67(特定小電力無線局テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備の標準規格)に準拠する。この火災連動信号は、送信元を示す送信元符号、グループ符号、事象符号、制御コマンド等を含む形式とする。
【0071】
報知部66は、スピーカ、警報表示LED及びそれぞれの駆動回路を備え、必要に応じ警報制御部58の指示によりスピーカから警報音を出力すると共に警報表示LEDにより警報表示を行う。操作部68は警報音及び又は警報表示を停止するための操作を受け付ける警報停止スイッチなどの各種スイッチを備える。
【0072】
警報制御部58は、次の火災警報制御、火災復旧制御、警報停止制御、発煙消火装置起動報知制御等を行う。
【0073】
(火災警報制御)
警報制御部58は、センサ部60から出力される温度又は煙濃度の検出信号をAD変換により読み込み、所定の閾値以上の場合に火災を検出し、報知部66から連動元を示す火災警報を出力させる制御を行う。この場合の火災警報として例えば「ピー ピー ピー 火事です 火事です」といった音声メッセージをスピーカから繰り返し出力すると共にLEDを例えば点灯して行う。
【0074】
また、警報制御部58は、報知部66から火災警報を出力させた場合、火災連動信号を生成し、無線通信部62に指示し、他の住警器へ火災連動信号を送信させる制御を行い、当該火災連動信号を受信した他の住警器で連動先を示す火災警報を出力させる。
【0075】
この場合の連動先を示す火災警報としては例えば「ピー ピー ピー 別の警報器が作動しました 確認してください」といった音声メッセージをスピーカから繰り返し出力すると共に警報表示LEDを例えば点滅して行う。
【0076】
また、警報制御部58は、無線通信部62を介して他の住警器が送信した火災連動信号の有効受信を検出した場合、報知部66からの連動先を示す火災警報を出力させる制御を行う。この場合の連動先を示す火災警報も例えば「ピー ピー ピー 別の警報器が作動しました 確認してください」といった音声メッセージをスピーカから繰り返し出力すると共に警報表示LEDを例えば点灯して行う。
【0077】
(火災復旧制御)
警報制御部58は、センサ部60の検出信号に基づき温度又は煙濃度が閾値を下回る状態が例えば所定時間継続した場合或いは例えば所定回数連続した場合、火災の復旧(火災検出状態が解消したこと)を検出し、報知部66からの連動元を示す火災警報出力を停止させると共に、火災復旧連動信号を生成し、無線通信部62に指示し、当該火災復旧連動信号を他の住警器へ送信させる制御を行い、これを受信した他の住警器に、連動先を示す火災警報出力を停止させる。
【0078】
また警報制御部58は、無線通信部62を介して他の住警器が送信した火災復旧連動信号の有効受信を検出した場合に、報知部66からの連動先を示す火災警報出力を停止させる制御を行う。
【0079】
(警報停止制御)
警報制御部58は、連動元として火災警報の出力中に操作部68の警報停止スイッチで受け付けた警報停止操作を検出した場合、報知部66からの連動元を示す火災警報出力を停止させると共に、警報停止連動信号を生成し、無線通信部62に指示し、当該警報停止連動信号を他の住警器へ送信させる制御を行い、これを受信した他の住警器に、連動先を示す火災警報出力を停止させる。
【0080】
また警報制御部58は、
無線通信部62を介して他の住警器が送信した警報停止連動信号の有効受信を検出した場合に、報知部66からの連動先を示す火災警報出力を停止させる制御を行う。
【0081】
(発煙消火装置の消火起動報知)
警報制御部58は、蓄電装置18に設けた発煙消火装置48が火災を検出して、ヒータの通電加熱により固形消火剤に点火して燃焼させ、消火用エアロゾルを収納容器内に噴出して消火を開始し、アダプタ装置28から送信された消火起動信号を受信した場合には、報知部66からの蓄電装置の火災と消火起動を示す警報を出力する制御を行う。この場合の警報は例えば「ピー ピー ピー 蓄電装置で火災発生 消火装置が作動しました 確認してください」といった音声メッセージをスピーカから繰り返し出力すると共に警報表示LEDを例えば点灯して行う。
【0082】
[アダプタ装置の構成]
図5はアダプタ装置28の機能構成の概略を示したブロック図である。
図5において、アダプタ装置28は、アンテナ72を接続した無線通信部70、制御部74及び有線通信部76を備え、図示しない電池電源により動作する。制御部74は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0083】
無線通信部70は、
図4の住警器26との間で、同じ通信プロトコルに従って信号を無線により送受信する。
【0084】
制御部74は、システム制御部46及びモニタ装置20を経由して発煙消火装置48から送信した消火起動信号を受信した場合、無線通信部70に指示し、当該消火起動信号を住警器26へ無線送信させる制御を行い、住警器26から消火起動を報知させる。
【0085】
[発煙消火装置を備えた電池モジュールの第1実施形態]
図6は蓄電装置に収納する電池モジュールの第1実施形態における外観を示した斜視図、
図7は電池モジュールの内部構造を示した断面図、
図8は収納容器本体内を示した平面図、
図9は収納容器蓋の内側を示した説明図であり、本実施形態は、発煙消火装置を電池モジュール収納容器の内部に配置したことを特徴とする。
【0086】
(電池モジュールの概要)
図6、
図7、
図8及び
図9に示すように、電池モジュール38は、上部に開口した箱型の収納容器本体111と、収納容器本体111の開口に装着してボルト113で固定した収納容器蓋112を備え、収納容器本体111と収納容器蓋112で電池モジュール38の収納容器を構成する。収納容器本体111の長手方向の一端に位置する手前側の側壁には、電池モジュール38の正極出力端子114aと負極出力端子114bを取付けている。
【0087】
収納容器本体111の内部には、2組の組電池125を収納している。組電池125の各々には、複数のリチウムイオン電池126を配列している。
【0088】
電池モジュール38に収納するリチウムイオン電池126は非水電解質二次電池であり、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された扁平な矩形箱状の外装容器に、非水電解液と共に電極体を備えている。リチウムイオン電池126の電極体は、例えば、正極板及び負極板をその間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回し、さらに、径方向に圧縮することにより、扁平な矩形箱状に形成している。また、リチウムイオン電池としては、ラミネート型のリチウムイオン電池(フィルム外装電池)を収納容器内に複数配置しても良い。
【0089】
電池モジュール38には、例えば18個のリチウムイオン電池126を配列して直列接続した電池ブロックを、2つ収納して並列接続している。ここで、リチウムイオン電池126の平均セル電圧を例えば3.6ボルトとすると、電池モジュール38の出力端子の直流電圧は約65ボルトとなる。また、
図3に示したように、蓄電装置18に2台の電池モジュール38を設けた場合、2台の電池モジュール38を並列接続している。
【0090】
(発煙消火装置の概要)
図6、
図7及び
図9に示すように、電池モジュール38における収納容器蓋112の内側には、発煙消火装置48を取付けている。発煙消火装置48は、収納容器内に収納したリチウムイオン電池126の異常に伴う火災を検出した場合に、固形消火剤の燃焼により発生した消火用エアロゾルを収納容器内に噴出して消火する。なお、本実施形態では、発煙消火装置48を収納容器蓋112の内側に取付けているが、収納容器本体111の内側に取り付けるようにしても良い。
【0091】
発煙消火装置48は、扁平箱状の形状(ブック形状)であり、収納容器蓋112の内側に取付けた状態で、コネクタ130を配置した端面に形成した噴出口から消火用エアロゾルを収納容器内に噴出可能としている。また、発煙消火装置48のコネクタ130に対しプラグ152の装着することで、火災検出部として機能する熱感知ケーブル132と、信号線133、134を発煙消火装置48に接続している。
【0092】
熱感知ケーブル132は、ビニールなどの樹脂で絶縁被覆した2本の撚られた信号線であり、2本の信号線の間に発煙消火装置48から電圧を印加しており、火災による熱を受けた場合の絶縁被覆の溶融により一対の信号線が短絡状態に接触し、感知電流が流れることで火災を検出する。
【0093】
コネクタ130及びプラグ152を介して収納容器内に引き出された熱感知ケーブル132は、
図9に示すように、収納容器蓋112の内側に沿って布設し、熱感知ケーブル132は、その下に位置する
図8に示す収納容器本体111に配列している複数のリチウムイオン電池126の直上を通過するように布設し、リチウムイオン電池126の各々の異常に伴う火災による熱を検出可能としている。
【0094】
また、コネクタ130及びプラグ152を介して引き出した信号線133、134は、収納容器本体111の長手方向の一端の側面に設けたコネクタ124に接続している。信号線133は、外部から点火制御信号を入力し、発煙消火装置48を遠隔的に動作させる。例えば
図1に示したモニタ装置20に消火起動釦を設けておくことで、必要に応じて蓄電装置18に設けた発煙消火装置48を遠隔操作により消火起動することを可能とする。
【0095】
信号線134は、発煙消火装置48で固形消火剤に点火して燃焼させた場合に消火起動信号を出力する。このためコネクタ124に
図2に示したシステム制御部46からの信号ケーブルをプラグ接続しておくことで、システム制御部46からモニタ装置20を経由してアダプタ装置28へ消火起動信号を送信し、アダプタ装置28から当該消火起動信号を
図1に示した住警器26へ無線送信し、これを受信した住警器26から蓄電装置18の火災と発煙消火装置48の消火起動を報知することを可能とする。
【0096】
(発煙消火装置の構造)
図10は発煙消火装置の外観を示した斜視図、
図11は発煙消火装置の縦断面を示した断面図、及び
図12は発煙消火装置の横断面を示した断面図である。
【0097】
図10、
図11及び
図12に示すように、本実施形態の発煙消火装置48は、長手方向の一端に開口した扁平箱状の筐体本体118と、筐体本体118の開口に装着する蓋部材120で構成し、筐体本体118の開口に蓋部材120を装着し、ビス135により固定している。
【0098】
筐体本体118の収納容器蓋内側への装着面となる図示の上面側の4箇所には、通し穴を開口した取付リブ158を溶接などにより固定し、噴出口128の先端を外部に突出している。蓋部材120の中央にはコネクタ130を外側に露出して取付け、コネクタ130の取付位置の両側には、複数のスリット開口として形成した噴出口128を設け、消火用エアロゾルを噴出口128から外部に噴出可能としている。
【0099】
発煙消火装置48の内部には消火剤収納ケース136を組み込んでいる。消火剤収納ケース136は、噴出口128を設けた蓋部材120の方向を前方とすると、後方に開口した箱型のケース部材であり、ケース先端側に支持片148を溶接などで固定し、筐体本体118の内側に溶接などで固着した支持片150に、支持片148をねじ151により取り付け、これにより筐体本体118及び蓋部材120の内部に浮いた状態となるように消火剤収納ケース136を位置決め支持している。
【0100】
また消火剤収納ケース136の後部については、上方向及び下方向に屈曲した一対の支持片146、及び側面を後方に延在した一対の延在片156を形成し、筐体本体118内に浮いた状態となるように消火剤収納ケース136を位置決め支持している。
【0101】
この消火剤収納ケース136の支持構造は、筐体本体118及び蓋部材120に対する接触を最小限に抑え、固形消火剤138の燃焼による熱が外側の筐体本体118及び蓋部材120に伝わり難い空気層を介在した断熱構造としている。
【0102】
ここで、筐体本体118、蓋部材120、消火剤収納ケース136、支持片146,148,150、及び取付リブ158は、固形消火剤138の燃焼により消火用エアロゾルを発生することから、固形消火剤138の燃焼による熱に耐える構造とするため金属材料で作られている。
【0103】
消火剤収納ケース136の内部には固形消火剤138を収納し、固形消火剤138に対してはヒータ140を取り付けている。
【0104】
また筐体本体118の内部には電池電源(一次電池)を内蔵した点火回路部142を設けている。点火回路部142に対しては、コネクタ130側より、プラグ152を介して熱感知ケーブル132、点火制御信号を入力する信号線133、及び消火起動信号を出力する信号線134を接続するための信号線を接続し、またヒータ140に対する信号線も接続している。
【0105】
点火回路部142は、リチウムイオン電池の異常に伴う火災を熱感知ケーブル132の短絡により検出した場合に、ヒータ140に通電して加熱することにより固形消火剤138に点火して燃焼させる。また、信号線133を介して外部から点火制御信号を入力した場合にも、ヒータ140に通電して加熱することにより固形消火剤138に点火して燃焼させる。
【0106】
本実施形態で使用する固形消火剤138は、燃焼により消火用エアロゾルを発生する。消火用エアロゾルは、2μm程度の超微粒子であり、その主成分は、金属の酸化物、炭酸塩あるいは燐酸塩あるいはその混合物を含有している。
【0107】
具体的には、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどを主成分とし、これに窒素、二酸化炭素、水蒸気などが含まれている。このような主成分を持つ消火用エアロゾルにあっては、消火用エアロゾルそのものに毒性がなく、環境に優しい発生ガスということができる。
【0108】
固形消火剤138の燃焼により発生した消火用エアロゾルによる消火作用は、電池モジュールの収納容器内を消火用エアロゾルで満たすことで、火災の発生により燃焼している燃焼の活性中心を消滅、抑制する作用により消火を行うものであり、水系消火剤を使用することのできない電気火災に好適な消火作用が得られる。
【0109】
また固形消火剤138の量は電池モジュール収納容器の内容積に応じて決まる。閉鎖空間となる消火対象エリア1立方メートル当たりを消火するに必要な消火用エアロゾルを発生するための固形消火剤138の重量は、80グラム〜200グラム程度であり、これに基づき、消火対象とする電池モジュール収納容器の内容積に応じた量の固形消火剤138を消火剤収納ケース
136に収納している。
【0110】
本実施形態の発煙消火装置48が消火対象とする住宅向けの蓄電装置18に収納する電池モジュール38の収納容器内容積は、例えば0.1立方メートル〜0.25立方メートル程度であり、これに複数のリチウムイオン電池で構成した組電池を収納することから、実際の空きスペースの容積は更に小さなものとなる。例えば電池モジュール収納容器の内容積を0.1立方メートルとした場合に必要な固形消火剤の重量は8グラム〜20グラムとなり、また0.25立方メートルとした場合に必要な固形消火剤の重量は20グラム〜50グラムとなる。
【0111】
発煙消火装置48の大きさは、必要とする固形消火剤
138の重量で決まり、最大でも50グラム以下で済むことから、この程度の重量の固形消火剤
138を収納する筐体本体
118は例えばリチウムイオン電池の外容器サイズ程度まで小型化が可能となる。
【0112】
固形消火剤138を収納した発煙消火装置48の内部には、消火剤収納ケース136の背後からその周囲を通って前方の噴出口128へ至る煙道145を形成している。このように背後から前方に回りこむ煙道145の形成は、固形消火剤138と噴出口128との距離を離し、且つ炎の出る向きと噴出口128が同一方向とならないよう煙道145を屈曲させた構成とし、固形消火剤138の燃焼による炎が噴出口128から電池モジュール38の収納容器内に吹き出さないようにしている。
【0113】
また固形消火剤138による炎の噴出を更に効果的に防止するためには、必要に応じて煙道145の途中に、金網などのエアロゾルだけを通過するような火炎噴出防止部材154を配置することが望ましい。本実施形態では、消火剤収納ケース136の後部開口144から延在した延在片156の内側に火炎噴出防止部材154を配置している。
【0114】
火炎噴出防止部材154の具体例としては、ガラスや磁器などの細径パイプを複数並べて炎の噴出しを抑制する構造、複数の金網を分離配置して炎の噴出しを抑制する構造、ガラスや磁器などのボールを複数配置して炎の噴出しを抑制する構造、更には複数の金網の間にガラスや磁器などのボールを複数配置して炎の噴出しを抑制する構造などがある。
【0115】
(点火回路部の構成)
図13は、
図10の筐体内部に配置した点火回路部の実施形態を示した回路図である。
図13に示すように、点火回路部142は、プラグ152及びコネクタ130を介して電池モジュール38の収納容器内に布線した熱感知ケーブル132、
点火制御信号を入力する信号線133、及び消火起動信号を出力する信号線134を接続している。なお、点火制御信号を入力する信号線133は通常監視状態で開放状態にあり、点火制御信号を入力する場合は、短絡状態となる。
【0116】
点火回路部142には、トランジスタ168、リレー170、抵抗162,164,166を備えたヒータ駆動回路及び電池電源160を設ける。電池電源160は釦電池などの一次電池であり、外部からの電源供給を不要としている。
【0117】
トランジスタ168は、抵抗162,164の分圧電圧を、抵抗166を介してベースに印加しており、熱感知ケーブル132には抵抗162,164を介して電池電源160からの電源電圧を常時、印加している。ここで、通常監視状態でトランジスタ168はオフであり、また熱感知ケーブル132の一方の信号線には電源電圧のみが印加されるだけで電流は流れておらず、点火回路部142の消費電量は漏れ電流などに起因した極く僅かな消費電流だけであり、電池電源160として一次電池を使用しても、必要にして十分な電池寿命を確保可能である。
【0118】
トランジスタ168はPNPトランジスタであり、コレクタ側に負荷としてリレー170を接続しており、通常監視状態にあっては、熱感知ケーブル132は2本の信号線のビニールなどによる絶縁被覆で開放状態にあることから、電池電源160から電流は流れず、トランジスタ168はエミッタ,ベース間の電圧が0ボルトであることからオフ状態となっている。
【0119】
リレー170は、その常開リレー接点174を介してヒータ140を接続している。また、リレー172の常開リレー接点172をトランジスタ168のエミッタ・コレクタ間に接続し、ラッチ回路を形成している。更に、コネクタ130の端子に消火起動信号を出力するためのリレー接点176を接続している。
【0120】
電池モジュールに収納したリチウムイオン電池の異常発熱に伴う火災の熱を受けて熱感知ケーブル132の絶縁被覆であるビニールが溶け、2本の信号線が接触状態になると、抵抗162、164を介して熱感知ケーブル132に電流が流れる。このため、抵抗162に生ずる電圧によりトランジスタ168のエミッタ・ベース間にバイアス電圧が加わり、これによってトランジスタ168がオンしてリレー170を作動する。
【0121】
リレー170が作動すると常開リレー接点174が閉じ、ヒータ140に通電し、ヒータ140の通電による加熱で固形消火剤138に点火し、固形消火剤138の燃焼により消火用エアロゾルを発生して、噴出口128から電池モジュールの収納容器内に消火用エアロゾルを噴出させる。
【0122】
またリレー170の作動によりリレー接点172が閉じることで、リレー170を作動状態にラッチし、これによって、熱感知ケーブル132の短絡状態の変動による誤動作を防ぐようにしている。
【0123】
更に、リレー接点176が閉じることで、信号線134を介して外部に対し消火動作が行われたことを示す消火起動信号を出力する。本実施形態の発煙消火装置48からの消火起動信号は、システム制御部46、モニタ装置20及びアダプタ装置28を経由して住警器26へ送信され、蓄電装置18の火災と発煙消火装置の起動を示す警報を出力して知らせる。
【0124】
一方、近隣火災等により、屋外に設置した蓄電装置18が火炎に曝されて発火の危険性が高まった場合、或いは蓄電装置18からの発煙があった場合などには、例えばモニタ装置20の操作部に設けた消火起動釦を、異常に気付いた住人が操作すると、システム制御部46へ点火指示信号が送られる。これに基づきシステム制御部46は電池モジュールに収納した発煙消火装置48へ点火制御信号を送信する。
【0125】
点火回路部142に点火制御信号が入力されると信号線133は短絡状態となり、熱感知ケーブル132により火災検出した場合と同様に、抵抗162、164を介して信号線133に電流が流れてトランジスタ168がオンし、リレー170の作動で常開リレー接点174が閉じてヒータ140に通電し、加熱で固形消火剤138に点火し、固形消火剤138の燃焼により消火用エアロゾルを発生して、噴出口
128から電池モジュール収納容器内に消火用エアロゾルを噴出させる。
【0126】
(発煙消火装置の動作)
図14は発煙消火装置の動作を示した説明図である。
図14において、発煙消火装置48は、収納容器蓋112の内側に取付固定している。発煙消火装置48に収納した点火回路部142が電池モジュールの収納容器内に布設した熱感知ケーブル132の火災による短絡状態を検出した場合、又は外部から点火制御信号が入力した場合、ヒータ140に通電加熱して固形消火剤138に点火し、固形消火剤138が燃焼して消火用エアロゾルを発生する。
【0127】
固形消火剤138の燃焼により発生した消火用エアロゾルは、消火剤収納ケース136の後方開口から火炎噴出防止部材154を介して噴き出した後、周囲の空洞である煙道145を通って前方に移動し、蓋部材120に形成した噴出口128から電池モジュールの収納容器内となる収納容器蓋
112の内側の空間に消火用エアロゾル178を噴出し、収納容器内を消火用エアロゾル
178で満たし、リチウムイオン電池の異常による電気火災を消火抑制する。
【0128】
この場合、固形消火剤138による燃焼の炎は後方に噴き出し、また、火炎噴出防止部材154が炎の吹き出しを抑制し、炎が前方に折り返している煙道145を迂回して電池モジュールの収納容器内に噴き出すようなことはない。また固形消火剤138の燃焼により消火剤収納ケース136が加熱されるが、筐体本体118に対する接触は支持片146,148,150によりほぼ浮動状態に支持して接触部分が少ない断熱構造としているため、熱伝導による外側の筐体本体118及び蓋部材120の温度上昇を抑制し、発煙消火装置48の過熱が火災の要因となることを防止している。
【0129】
[発煙消火装置を備えた電池モジュールの第2実施形態]
図15は発煙消火装置を外付けした電池モジュールの第2実施形態を示した説明図及び
図16は電池モジュールの内部構造を示した断面図である。
【0130】
(電池モジュールの概要)
図15及び
図16に示すように、電池モジュール38は、上部に開口した箱型の収納容器本体211と、収納容器本体211の開口に装着してボルト213で固定した収納容器蓋212を備え、収納容器本体211と収納容器蓋212で電池モジュール38の収納容器を構成する。
【0131】
収納容器本体211の長手方向の一端に位置する手前側の側壁には、電池モジュール38の正極出力端子214aと負極出力端子214bを取付けている。
【0132】
電池モジュール38には、例えば18個のリチウムイオン電池226を配列して直列接続した電池ブロックを、2つ収納して並列接続している。ここで、リチウムイオン電池226の平均セル電圧を例えば3.6ボルトとすると、電池モジュール38の出力端子の直流電圧は約65ボルトとなる。
【0133】
(発煙消火装置の概要)
図15及び
図16に示すように、電池モジュール38における収納容器蓋212の外側には、発煙消火装置48を取付けている。発煙消火装置48は、収納容器内に収納したリチウムイオン電池226の異常に伴う火災を検出した場合に、固形消火剤の燃焼により発生した消火用エアロゾルを収納容器内に噴出して消火する。なお、本実施形態では、発煙消火装置48を収納容器蓋212の外側に取付けているが、収納容器本体211の側面の外側に取り付けるようにしても良い。
【0134】
発煙消火装置48は、収納容器蓋212に対する装着面にノズル228とコネクタ230を設けており、収納容器蓋212に取付けた状態で、ノズル228の先端のノズル開口を収納容器蓋212の内側の内部空間に位置し、消火用エアロゾルを収納容器内に噴出可能としている。また、発煙消火装置48のコネクタ230も収納容器蓋212に取付けた状態で、ノズル228を収納容器蓋212の内側の内部空間に位置し、コネクタ230に対しプラグ252の装着することで、火災検出部として機能する熱感知ケーブル232と、信号線233、234を発煙消火装置46に接続している。
【0135】
熱感知ケーブル232は、ビニールなどの樹脂で絶縁被覆した2本の撚られた信号線であり、発煙消火装置48から収納容器内に引き込まれて布設され、2本の信号線の間に発煙消火装置48から電圧を印加しており、火災による熱を受けた場合の絶縁被覆の溶融により一対の信号線が短絡状態に接触し、感知電流が流れることで火災を検出する。
【0136】
コネクタ230及びプラグ252により収納容器内に引き出された熱感知ケーブル232は、収納容器蓋212の内側に沿って布設し、熱感知ケーブル232は、その下に位置する収納容器本体211に配列している複数のリチウムイオン電池226の直上を通過するように布設し、リチウムイオン電池226の各々の異常に伴う火災による熱を検出可能としている。
【0137】
また、コネクタ230及びプラグ252を介して引き出した信号線233、234は、収納容器本体211の長手方向の一端の側面に設けたコネクタ224に接続している。信号線233は外部から点火制御信号を入力し、発煙消火装置216を遠隔的に動作させる。また、信号線234は、発煙消火装置16で固形消火剤に点火して燃焼させた場合に消火起動信号を出力する。
【0138】
(発煙消火装置の構成)
図17は、
図15に示した発煙消火装置の内部断面構造を示した説明図である。
図17に示すように、本実施形態の発煙消火装置48は、一端に開口した箱形の筐体本体218と蓋部材220で構成し、筐体本体218の開口にシールパッキン(図示せず)を介して蓋部材220を装着し、ビス235により固定している。筐体218の収納容器装着面となる図示の底面には、ノズル228を溶接などにより取り付け、ノズル228の先端を外部に突出している。また筐体本体218の収納容器装着面となる図示の底面にはコネクタ230を外側に露出して取付けている。
【0139】
発煙消火装置48の内部には消火剤収納ケース236を組み込んでいる。消火剤収納ケース236は、ノズル228を設けた方向を前方とすると、後方に開口した箱型のケース部材であり、前部を蓋部材220に固定した支持片250に溶接などで固着し、蓋部材220の筐体本体218に対する組付けで、筐体本体218及び蓋部材220の内部に浮いた状態となるように消火剤収納ケース236を位置決め支持している。
【0140】
また消火剤収納ケース236の後部については、下方向に屈曲した支持片246、上方向に屈曲して蓋部材220に溶接などで固着した支持片248、及び側面を後方に延在した一対の延在片256を形成し、蓋部材220の筐体本体218に対する組付けで、同様に、筐体本体218内に浮いた状態となるように消火剤収納ケース236を位置決め支持している。
【0141】
この消火剤収納ケース236の支持構造は、筐体本体218及び蓋部材220に対する接触を最小限に抑え、固形消火剤238の燃焼による熱が外側の筐体本体218及び蓋部材220に伝わり難い空気層を介在した断熱構造としている。
【0142】
ここで、筐体本体218、蓋部材220、消火剤収納ケース236、支持片246,248,250は、固形消火剤238の燃焼により消火用エアロゾルを発生することから、燃焼による熱に耐える構造とするため金属材料で作られている。
【0143】
消火剤収納ケース236の内部に固形消火剤238を収納し、固形消火剤238に対してはヒータ240を取り付けている。
【0144】
また筐体本体218の内部には電池電源(一次電池)を内蔵した点火回路部242を設けている。点火回路部242に対しては、コネクタ230側より、プラグ252を介して熱感知ケーブル232、点火制御信号を入力する信号線233、及び消火起動信号を出力する信号線234を接続するための信号線を接続し、またヒータ240に対する信号線も接続している。
【0145】
点火回路部242は、単電池の異常に伴う火災を熱感知ケーブル232の短絡により検出した場合に、ヒータ240に通電して加熱することにより固形消火剤238に点火して燃焼させる。また、信号線33を介して外部から点火制御信号を入力した場合にも、ヒータ240に通電して加熱することにより固形消火剤238に点火して燃焼させる。点火回路部242の詳細は、
図13に示した第1実施形態の場合と同様であることから、説明を省略する。
【0146】
固形消火剤238を収納した発煙消火装置216の内部には、消火剤収納ケース236の背後からその周囲を通って前方のノズル228へ至る煙道245を形成している。このように背後から前方に回りこむ煙道245の形成は、固形消火剤238とノズル228との距離を離し、且つ炎の出る向きと噴出口が同一方向とならないよう煙道
245を屈曲させた構成としたことで、固形消火剤238の燃焼による炎がノズル228から電池モジュールの収納容器内に吹き出さないようにしている。
【0147】
また固形消火剤238による炎の噴出を更に効果的に防止するためには、必要に応じて煙道245の途中に、金網などのエアロゾルだけを通過するような火炎噴出防止部材254を配置している。
【0148】
(発煙消火装置の動作)
図18は発煙消火装置の動作を示した説明図である。
図18において、発煙消火装置48は、収納容器蓋212の外側に、シールパッキン275を介して取付固定している。発煙消火装置48に収納した点火回路部242が電池モジュールの収納容器内に布設した熱感知ケーブル232の火災による短絡状態を検出した場合、又は外部から点火制御信号が入力した場合、ヒータ240に通電加熱して固形消火剤238に点火し、固形消火剤238が燃焼して消火用エアロゾルを発生する。
【0149】
固形消火剤238の燃焼により発生した消火用エアロゾルは、消火剤収納ケース236の後方開口から火炎噴出防止部材254を介して噴き出した後、周囲の空洞である煙道245を通って前方に移動し、ノズル228から電池モジュールの収納容器内となる収納容器蓋
212の内側の空間に消火用エアロゾル278を噴出し、収納容器内を消火用エアロゾル278で満たし、リチウムイオン電池の異常による電気火災を消火抑制する。
【0150】
[発煙消火装置を備えた電池モジュールの第3実施形態]
図19は円筒形電池と同じ発煙消火装置を備えた電池モジュールの第3実施形態を示した分解組立図、
図20は収納容器本体内を示した平面図である。
【0151】
(電池モジュールの概要)
図19及び
図20に示すように、電池モジュール38は、上部に開口した箱型の収納容器本体311と、収納容器本体311の開口に装着してボルト
で固定する収納容器蓋312を備え、収納容器本体311と収納容器蓋312で電池モジュール38の収納容器を構成する。
【0152】
収納容器本体311の長手方向の一端に位置する手前側の側壁には、電池モジュール38の正極出力端子314aと負極出力端子314bを取付けている。
【0153】
収納容器本体311は、複数の電池収納区画315aを備え、電池収納区画315aに円筒形状を持つ複数のリチウムイオン電池326を配列している。リチウムイオン電池326の外装容器の上端は正極端子となり、下端は負極端子となる。
【0154】
ここで、リチウムイオン電池326のサイズは、例えば(直径R=80mm〜120mm)×(高さH=80mm〜120mm)程度となる。
【0155】
組電池325は、例えば24区画に分けた電池収納箱315の内の23区画を電池収納区画315aに使用し、23個のリチウムイオン電池326を配列して直列及び並列接続している。例えば、23個のリチウムイオン電池326は、そのうちの18個を直列接続し、残り5個は直列接続した18個の内の5個のそれぞれに並列接続している。ここで、リチウムイオン電池
326の平均セル電圧を例えば3.6ボルトとすると、電池モジュール38の出力端子の直流電圧は約65ボルトとなる。
【0156】
(発煙消火装置の概要)
図19及び
図20に示すように、電池モジュール38における収納容器本体311側には、リチウムイオン電池326と同じ円筒形状、即ちリチウムイオン電池326と同じ直径R及び高さHを持った円筒形状の発煙消火装置48を、組電池325を構成する複数のリチウムイオン電池326と共に電池収納箱315に収納している。
【0157】
即ち、電池収納箱315は、24区画の内の23区画を電池収納区画315aとして23個のリチウムイオン電池326を収納し、残り1区画を消火装置収納区画315bに割り当て、そこに発煙消火装置48を収納している。
【0158】
なお、本実施形態では、電池収納箱315の奥左隅となるコーナー区画を消火装置収納区画315bとして発煙消火装置48を収納しているが、24区画の中の任意の1区画を消火装置収納区画315bとして発煙消火装置48を収納してもよい。例えば、収納容器内部に効率良く消火用エアロゾルを噴出して拡散させるため、収納容器の略中央に位置する区画を消火装置収納区画315bに割り当てて発煙消火装置48を収納する。
【0159】
図21は発煙消火装置の軸方向の断面を示した断面を示した説明図である。
【0160】
発煙消火装置48は、リチウムイオン電池326と同じサイズの円筒形状であり、電池収納箱315の消火装置収納区画315bに収納し、電池収納箱315を本体収納容器311の電池収納部311aに組み込んだ状態で、コネクタ330を設けた上端面に形成した噴出口328から消火用エアロゾルを収納容器内に噴出可能としている。また、発煙消火装置48のコネクタ330に対しプラグ352を装着することで、火災検出部として機能する熱感知ケーブル332と、信号線333、334を発煙消火装置48に接続している。
【0161】
コネクタ330及びプラグ352を介して収納容器内に引き出された熱感知ケーブル332は、収納容器本体311内に収納している全てのリチウムイオン電池326の直上を通過するように布設し、リチウムイオン電池326の各々の異常に伴う火災による熱を検出可能としている。
【0162】
また、コネクタ330及びプラグ352を介して引き出した信号線333、334は、収納容器本体311の長手方向の一端の側面に設けたコネクタ324に接続している。信号線333は、外部から点火制御信号を入力し、発煙消火装置48を遠隔的に動作させる。信号線334は、発煙消火装置48で固形消火剤に点火して燃焼させた場合に消火起動信号を出力する。
【0163】
(発煙消火装置の構成)
図22は発煙消火装置の上部端面を示した説明図である。
図21及び
図22に示すように、本実施形態の発煙消火装置48は、上部に開口したリチウムイオン電池と同じサイズの円筒形状を備えた筐体本体318と、筐体本体318の上部開口に嵌合固定する蓋部材320で構成する。
【0164】
蓋部材320の中央にはコネクタ330を取り付け、その周囲に放射状に噴出口328を形成し、消火用エアロゾルを噴出口328から外部に噴出可能としている。
【0165】
発煙消火装置48の内部には消火剤収納ケース336を組み込んでいる。消火剤収納ケース336は、下方に開口した円筒形状のケース部材であり、ケース上部に支持部材350を溶接などで固定し、支持部材350の両側を筐体本体318内の所定位置に溶接などで固定した支持部材348に当接し、ねじ351により固定し、筐体本体318の内部に浮いた状態となるように消火剤収納ケース336を位置決め支持している。
【0166】
また消火剤収納ケース336の下部については、下方開口344の左右方向に屈曲した一対の支持片346、及び側面を下方に延在した一対の延在片356を形成し、筐体本体318内に収納した状態で、筐体本体318の内部に浮いた状態となるように消火剤収納ケース336を位置決め支持している。
【0167】
この消火剤収納ケース336の支持構造は、筐体本体
318に対する接触を最小限に抑え、固形消火剤338の燃焼による熱が外側の筐体本体318側に伝わり難い空気層を介在した断熱構造としている。
【0168】
ここで、筐体本体318、蓋部材320、消火剤収納ケース336及び支持部材348、350は、固形消火剤
338の燃焼による熱に耐える構造とするため、金属材料で作られている。
【0169】
消火剤収納ケース336の内部には固形消火剤338を収納し、固形消火剤338に対してはヒータ340を取り付けている。
【0170】
また消火剤収納ケース336の上部には支持部材350を介して点火回路部342を筐体本体318の内部に浮いた状態となるように支持している。点火回路部342は電池電源(一次電池)を内蔵しており、コネクタ330との間に、プラグ352を介して熱感知ケーブル332、点火制御信号を入力する信号線333、及び消火起動信号を出力する信号線334を接続するための信号線を接続し、またヒータ340に対する信号線も接続している。
【0171】
点火回路部342は、リチウムイオン電池の異常に伴う火災を熱感知ケーブル332の短絡により検出した場合に、ヒータ340に通電して加熱することにより固形消火剤338に点火して燃焼させる。また、信号線333を介して外部から点火制御信号を入力した場合にも、ヒータ340に通電して加熱することにより固形消火剤
338に点火して燃焼させる。なお、点火回路部342の詳細は、
図13に示した第1実施形態の場合と同様であることから、説明を省略する。
【0172】
(発煙消火装置の動作)
図23は、
図21に示した発煙消火装置の動作を示した説明図である。
図23において、発煙消火装置48は、収納容器本体311に組み込んだ電池収納箱315の消火装置収納区画315bに収納しており、隣接した電池収納区画315aの各々にはリチウムイオン電池326を収納している。発煙消火装置48に収納した点火回路部342が電池モジュールの収納容器内に布設した熱感知ケーブル332の火災による短絡状態を検出した場合、又は外部から点火制御信号が入力した場合、ヒータ340に通電加熱して固形消火剤338に点火し、固形消火剤338が燃焼して消火用エアロゾルを発生する。
【0173】
固形消火剤338の燃焼により発生した消火用エアロゾルは、消火剤収納ケース336の下方開口から火炎噴出防止部材354を介して噴き出した後、周囲の空洞である煙道345を通って上方に移動し、蓋部材320に形成した噴出口328から収納容器内の空間に消火用エアロゾル378を噴出し、収納容器内を消火用エアロゾル
378で満たし、リチウムイオン電池326の異常による電気火災を消火抑制する。
【0174】
[発煙消火装置を備えた電池モジュールの第4実施形態]
図24は扁平箱形電池と同じ発煙消火装置を備えた電池モジュールの第4実施形態を示した分解組立図、
図25は収納容器本体内を示した平面図である。
【0175】
(電池モジュールの概要)
図24及び
図25に示すように、電池モジュール38は、上部に開口した箱型の収納容器本体411と、収納容器本体411の開口に装着してボルト
で固定する収納容器蓋412を備え、収納容器本体411と収納容器蓋412で電池モジュール38の収納容器を構成する。
【0176】
収納容器本体411の長手方向の一端に位置する手前側の側壁には、電池モジュール38の正極出力端子414aと負極出力端子414bを取付けている。
【0177】
収納容器本体411の内部には、扁平箱形状を持つ複数のリチウムイオン電池426を配列している。リチウムイオン電池セル426の外装容器の上端には、正極端子426a及び負極端子426bを設けている。
【0178】
ここで、リチウムイオン電池
426のサイズは、例えば(横幅L=100mm〜120mm)×(縦幅W=20mm)×(高さH=90mm〜100mm)程度となる。
【0179】
本実施形態では18個のリチウムイオン電池426を直列接続して収納しており、リチウムイオン電池126の平均セル電圧を例えば3.6ボルトとすると、電池モジュール38の出力端子の直流電圧は約65ボルトとなる。
【0180】
(発煙消火装置の概要)
図24及び
図25に示すように、電池モジュール38における収納容器本体411側には、リチウムイオン電池426と同じ扁平箱形状、即ちリチウムイオン電池426と同じ横幅L、縦幅W及び高さHを持った発煙消火装置48を、組電池425を構成する複数のリチウムイオン電池426と共に収納している。
【0181】
収納容器本体411は、収納容器内に、2列に分けて、それぞれ9区画に仕切った電池収納区画415aを形成し、その奥行き方向の端部に、2列1区画に仕切った2箇所の消火装置収納区画415bを形成している。電池収納区画415aにはリチウムイオン電池426を収納して、接続部材により直列接続している。また、2箇所の消火装置収納区画415bの一方には、発煙消火装置48を収納している。なお、消火装置収納区画415bの空きスペースには、リチウムイオン電池を収納し、これを電池収納区画415aに収納している18個のリチウムイオン電池426の何れかに並列接続しても良い。
【0182】
発煙消火装置48は、収納容器内に収納したリチウムイオン電池426の異常に伴う火災を検出した場合に、固形消火剤の燃焼により発生した消火用エアロゾルを電池モジュール38の収納容器内に噴出して消火する。
【0183】
発煙消火装置48は、リチウムイオン電池426と同じサイズの扁平箱形状であり、収納容器本体411の消火装置収納区画415bに収納した状態で、コネクタ430を設けた上端面に形成した噴出口428から消火用エアロゾルを収納容器内に噴出可能としている。また、発煙消火装置48のコネクタ430に対しプラグ452を装着することで、火災検出部として機能する熱感知ケーブル432と、信号線433、434を発煙消火装置48に接続している。
【0184】
コネクタ430及びプラグ452を介して収納容器内に引き出された熱感知ケーブル432は、収納容器本体411に収納している全てのリチウムイオン電池426の直上を通過するように布設し、リチウムイオン電池426の各々の異常に伴う火災による熱を検出可能としている。
【0185】
また、コネクタ430及びプラグ452を介して引き出した信号線433、434は、収納容器本体411の長手方向の一端の側面に設けたコネクタ424に接続している。信号線433は、外部から点火制御信号を入力し、発煙消火装置48を遠隔的に動作させる。信号線434は、発煙消火装置48で固形消火剤に点火して燃焼させた場合に消火起動信号を出力する。
【0186】
(発煙消火装置の構造)
図26は発煙消火装置の外観を示した斜視図、
図27は発煙消火装置の縦幅方向の断面を示した断面図である。
【0187】
図26及び
図27に示すように、本実施形態の発煙消火装置48は、底部側に開口したリチウムイオン電池と同じサイズの扁平箱形状の筐体本体418と、筐体本体418の底部開口に装着する蓋部材420で構成している。
【0188】
筐体本体410の上部側の端面中央にはコネクタ430を取り付け、その両側に噴出口428を形成し、消火用エアロゾルを噴出口428から外部に噴出可能としている。
【0189】
発煙消火装置48の内部には消火剤収納ケース436を組み込んでいる。消火剤収納ケース436は、噴出口428を設けた方向を上方とすると、蓋部材420の方向である下方に開口した箱型のケース部材であり、ケース上端側に支持片448を溶接などで固定し、消火剤収納ケース436を筐体本体418内に下方から収納した状態で、消火剤収納ケース436の上部を筐体本体418の内部に浮いた状態となるように位置決め支持している。
【0190】
また消火剤収納ケース436の下部については、下方開口444の左右方向に屈曲した一対の支持片446、及び側面を下方に延在した一対の延在片456を形成し、筐体本体418内に下方から収納して蓋部材420を嵌合固定した状態で、筐体本体418及び蓋部材420の内部に浮いた状態となるように消火剤収納ケース436を位置決め支持している。
【0191】
この消火剤収納ケース436の支持構造は、筐体本体418及び蓋部材420に対する接触を最小限に抑え、固形消火剤438の燃焼による熱が外側の筐体本体418及び蓋部材420に伝わり難い空気層を介在した断熱構造としている。
【0192】
ここで、筐体本体418、蓋部材420、消火剤収納ケース436及び支持片446は、固形消火剤438の燃焼による熱に耐える構造とするため金属材料で作られている。
【0193】
消火剤収納ケース436の内部には固形消火剤438を収納し、固形消火剤438に対してはヒータ440を取り付けている。
【0194】
また筐体本体418の内部には電池電源(一次電池)を内蔵した点火回路部442を設けている。点火回路部442に対しては、コネクタ430側より、プラグ452を介して熱感知ケーブル432、点火制御信号を入力する信号線433、及び消火起動信号を出力する信号線434を接続するための信号線を接続し、またヒータ440に対する信号線も接続している。
【0195】
点火回路部442は、リチウムイオン電池の異常に伴う火災を熱感知ケーブル432の短絡により検出した場合に、ヒータ440に通電して加熱することにより固形消火剤438に点火して燃焼させる。また、信号線433を介して外部から点火制御信号を入力した場合にも、ヒータ440に通電して加熱することにより固形消火剤438に点火して燃焼させる。なお、点火回路部442の詳細は、
図13に示した第1実施形態の場合と同様であることから、説明を省略する。
【0196】
固形消火剤438を収納した発煙消火装置48の内部には、消火剤収納ケース436の下方からその周囲を通って上方の噴出口428へ至る煙道445を形成し、固形消火剤438の燃焼による炎が噴出口428から電池モジュールの収納容器内に吹き出さないようにしている。
【0197】
また固形消火剤438による炎の噴出を更に効果的に防止するためには、必要に応じて煙道445の途中に、金網などの消火用エアロゾルだけを通過するような火炎噴出防止部材454を配置する。
【0198】
(発煙消火装置の動作)
図28は、
図26及び
図27に示した発煙消火装置の動作を示した説明図である。
図28において、発煙消火装置48は、収納容器本体411に設けた消火装置収納区画415bに収納しており、隣接した電池収納区画415aの各々にはリチウムイオン電池426を収納している。発煙消火装置48に収納した点火回路部442が電池モジュールの収納容器内に布設した熱感知ケーブル432の火災による短絡状態を検出した場合、又は外部から点火制御信号が入力した場合、ヒータ440に通電加熱して固形消火剤438に点火し、固形消火剤438が燃焼して消火用エアロゾルを発生する。
【0199】
固形消火剤438の燃焼により発生した消火用エアロゾルは、消火剤収納ケース436の下方開口から火炎噴出防止部材454を介して噴き出した後、周囲の空洞である煙道445を通って上方に移動し、発煙消火装置48の上方に形成した噴出口428から電池モジュールの収納容器内の空間に消火用エアロゾル478を噴出し、収納容器内を消火用エアロゾル478で満たし、リチウムイオン電池426の異常による電気火災を消火抑制する。
【0200】
[発煙消火装置を備えた電池モジュールの第5実施形態]
図29は発煙消火部と火災検出部に分離した発煙消火装置を設けた電池モジュールの第5実施形態を示した説明図、
図30は電池モジュールの分解組立図である。
【0201】
(電池モジュールの概要)
図29及び
図30に示すように、電池モジュール38は、上部に開口した箱型の収納容器本体511と、収納容器本体511の開口に装着してボルト513で固定した収納容器蓋512を備え、収納容器本体511と収納容器蓋512で電池モジュール38の収納容器を構成する。
【0202】
収納容器本体511の長手方向の一端に位置する手前側の側壁には、電池モジュール38の正極出力端子514aと負極出力端子514bを取付けている。
【0203】
収納容器本体511の内部には、2組の組電池525を収納している。組電池525の各々には、例えば扁平箱形状を持つ複数のリチウムイオン電池526を配列している。リチウムイオン電池526の外装容器の上端には、正極端子526a及び負極端子526bを設けている。
【0204】
2組の組電池525の各々には例えば10個のリチウムイオン電池526を配列して直列接続しており、更に2組の組電池525を直列接続している。
【0205】
(発煙消火装置の概要)
図29及び
図30に示すように、本実施形態の発煙消火装置は、発煙消火部48a、火災検出部48b及び消火制御部48cで構成する。
【0206】
発煙消火部48aは、電池モジュール38における例えば収納容器蓋512の側面外壁に形成した消火部取付穴512aを貫通して先端側を収納容器内に配置し、固形消火剤の燃焼により発生した消火用エアロゾルを収納容器内に噴出して消火する。なお、以下の説明では、発煙消火部48aを収納容器に配置した状態で、容器内側を前方又は先端といい、容器外側を後方または後端という。
【0207】
火災検出部48bは、電池モジュール38における例えば収納容器蓋512の側面外壁に形成した検出部取付穴512bを貫通して配置し、収納容器内に検出素子部として機能する熱感知ケーブル532を引き出して布設している。また、火災検出部48bから収納容器内に引き出された熱感知ケーブル532は、収納容器本体511に収納している全てのリチウムイオン電池526の直上を通過するように布設し、リチウムイオン電池526の各々の異常に伴う火災による熱を検出可能としている。
【0208】
消火制御部48cは、電池モジュール38における収納容器とは別に設けられ、収納容器蓋512に配置した発煙消火部48a及び火災検出部48bから引き出した信号線552,554をコネクタ接続しており、また外部装置に接続する信号線555、556を引き出している。ここで、信号線555は外部装置へ消火起動信号を出力し、信号線556は外部装置から点火制御信号を入力するために使用する。
【0209】
消火制御部48cは、火災検出部48bから収納容器内に布設した熱感知ケーブル532の火災の熱による短絡から火災を検出した場合、又は信号線556により外部装置から点火制御信号を受信した場合に、信号線552を介して発煙消火部48aの点火回路部に点火信号を出力し、ヒータの通電加熱により固形消火剤に点火して燃焼させ、消火用エアロゾルを収納容器内に噴出して消火する。
【0210】
また、消火制御部48cは、発煙消火部48aで固形消火剤に点火して燃焼させた場合に、信号線555を介して消火起動信号を外部へ出力する。
【0211】
(発煙消火部の構成)
図31は発煙消火部を一部軸方向の断面で示した説明図である。
図31に示すように、本実施形態の発煙消火部48aは、消火部本体520、消火部筐体522、消火剤収納ケース536、固形消火剤538、点火部として機能するヒータ540、及び火炎
噴出防止部材546で構成している。
【0212】
消火部本体520は、嵌合部520aに続いてねじ部520bを形成し、続いてボルトヘッド520cを形成し、その外側にねじ部520dを形成したコネクタ530を設けている。消火部本体520は、ねじ部520bを、
図30に示したように、例えば収納容器蓋512の外壁に設けた消火部取付穴512aに、パッキンを介してねじ込むことで、発煙消火部48aを電池モジュール38の収納容器外壁を貫通して固定する。
【0213】
消火部筐体522は、消火部本体520側となる後端に開口し、容器内となる先端側に閉じた円筒体で、内部に円筒空洞520aを形成しており、先端面の中央及びその周囲に複数の噴出口528を開口し、後端開口を消火部本体520の嵌合部520aに例えば圧入して固定する。
【0214】
消火剤収納ケース536は、消火部本体520側となる後方に開口し、容器内となる先端側に閉じた円筒体であり、内部に円筒空洞536aを形成している。消火剤収納ケース536の消火部本体520側の後端部は、後方に延在してから外側に屈曲した一対の支持片535を形成し、消火部筐体522内に支持片535の先端を当接し、これにより消火部筐体522の内部に浮いた状態で消火剤収納ケース536を支持している。
【0215】
消火剤収納ケース536の噴出口528を形成した先端側には、一対の支持部材534を溶接で固定して軸方向に延在し、消火部筐体522の先端内側に支持部材534の先端屈曲部を当接し、これにより消火部筐体522を内部に浮いた状態で消火剤収納ケース536を支持している。
【0216】
このような消火剤収納ケース536の支持構造は、消火部筐体522に対する接触を最小限に抑え、固形消火剤538の燃焼による熱が外側の消火部筐体522及び消火部本体520に伝わり難い空気層を介在した断熱構造としている。
【0217】
ここで、消火部本体520、消火部筐体522、消火剤収納ケース536及び支持部材534は、固形消火剤538の燃焼による熱に耐える構造とするため金属材料で作られている。
【0218】
消火剤収納ケース536の内部には円柱形状の固形消火剤538を収納し、固形消火剤538に対しては点火部として機能するヒータ540を埋込み配置し、ヒータ540に通電して加熱することにより固形消火剤538に点火して燃焼させる。
【0219】
固形消火剤538を収納した発煙消火部548aの内部には、消火剤収納ケース536の後端側面の矩形開口536bからその周囲を通って先端の噴出口528へ至る煙道544を形成し、固形消火剤538の燃焼による炎が噴出口528から収納容器内に吹き出さないようにしている。
【0220】
また固形消火剤
538による炎の噴出を更に効果的に防止するためには、必要に応じて煙道544の途中に、金網などの消火用エアロゾルだけを通過するような火炎噴出防止部材546を配置する。
【0221】
(点火制御部の構成)
図29に示した消火制御部48cには、点火回路部を収納している。この点火回路部は、
図13に示した第1実施形態の場合と同様と基本的に同様であるが、
図13のヒータ140を取出し、
図31のように発煙消火部48aに収納した固形消火剤538の中に設けて信号線接続している点で相違するだけである。
【0222】
(発煙消火装置の動作)
図32は発煙消火部の動作を示した説明図である。
図32に示すように、発煙消火部48aは、消火部本体520を収納容器蓋512における側面外壁の消火部取付穴にねじ込み固定することで、先端の消火部筐体522を収納容器内に配置しており、外部のコネクタ530にはプラグ531により消火制御部48cからの信号線552を接続している。
【0223】
図29に示したように、電池モジュールの収納容器内に布設した熱感知ケーブル532の火災による短絡状態を検出した場合、又は外部から点火制御信号が入力した場合、
図29に示した消火制御部48cが信号線552に点火信号を出力し、ヒータ540を通電加熱して固形消火剤
538に点火し、固形消火剤
538が燃焼して消火用エアロゾルを発生する。
【0224】
固形消火剤538の燃焼により発生した消火用エアロゾルは、消火剤収納ケース536の後方の切欠開口536bから火炎噴出防止部材546を介して噴き出した後、周囲の空洞である煙道544を通って前方に移動し、発煙消火部48aの先端に形成した噴出口528から電池モジュールの収納容器内の空間に消火用エアロゾル578を噴出し、収納容器内を消火用エアロゾル578で満たし、リチウムイオン電池526の異常による電気火災を消火抑制する。
【0225】
[本発明の変形例]
(点火回路部の電源)
上記の実施形態にあっては、発煙消火装置に一次電池を用いた電池電源を内蔵して点火回路部を動作しているが、電池モジュールの収納容器内に収納しているリチウムイオン電池(二次電池)から電源を供給するようにしても良い。
【0226】
(点火回路部の変形)
また、点火回路部は、上記の実施形態に限定されず、火災による熱感知ケーブルの短絡を検出して固定消火剤に点火する回路機能、外部から点火制御信号を入力して固形消火剤に点火する回路機能、及び消火起動信号を外部に出力する回路機能を備えれば、適宜の回路とすることができる。
【0227】
また、上記の実施形態で発煙消火装置に設けた点火回路部は、外部から点火制御信号によっても固形消火剤に点火して消火用エアロゾルを発生させているが、これは行わず、熱感知ケーブル等の火災検出部による火災検出のみで固形消火剤に点火して消火用エアロゾルを発生させるようにしても良い。
【0228】
(発煙消火装置の設置台数)
また、上記の実施形態にあっては、電池モジュールの収納容器内に発煙消火装置を1台設けているが、必要に応じ、複数台の発煙消火装置を収納容器内に設けるようにしても良い。
【0229】
(電池火災を検出する火災検出部)
また、上記の実施形態は、リチウムイオン電池の異常に伴う火災を検出する火災検出部として熱感知ケーブルを設けているが、これ以外に、熱電対、サーミスタ等の温度センサ
、レーザパルス光を入射した場合の後方散乱光の強度から温度測定する光ファイバーセンサなどの適宜の火災検出部を設けても良い。
【0230】
(リチウムイオン電池のガス排出弁)
また、本実施形態の蓄電装置に組み込むリチウムイオン電池は、電池容器内のガス圧異常により作動してガスを排出するガス排出弁を設けている場合があり、これに伴い電池モジュールの収納容器にリチウムイオン電池の異常に伴い噴出した一酸化炭素ガスなどの有毒ガスを排ガスする排ガス機構、例えば収納容器内圧が所定値以上の場合に外部に開放する逆止弁を備えている場合があるが、発煙消火装置から電池モジュールの収納容器内に消火用エアロゾルを噴出しても、電池モジュールの収納容器内の内圧は排ガス機構を作動する圧力までは上昇せず、消火用エアロゾルが外部に漏れ出して消火効果が下がることはない。
【0231】
(住宅以外の太陽光発電システム)
また、上記の実施形態は、一般住宅に設置する太陽光発電システムを例にとっているが、公共施設や工場などに設置する規模の大きな太陽光発電装置に、リチウムイオン電池を収納した蓄電装置を組み合わせた場合についても、同様に適用することができる。
【0232】
なお、このときの火災検出手段は、本発明の住警器の代わりとして、自動火災報知設備の火災検知信号を用いる。この場合の火災検出手段は、建物内の警戒区域に設置され、火災検知端末機器(火災感知器、押し釦通報装置、スプリンクラー設備)により火災を検知した場合に防災受信機から火災警報を出力すると共に火災連動信号を外部へ無線又は有線送信する自動火災報知設備と、防災受信機が無線又は有線送信した火災連動信号を受信した場合に感電防止回路部へ火災検知信号を出力するアダプタ装置とで構成する。
【0233】
また、太陽光発電システムは上記の実施形態に限定されず、太陽発電による直流電力を交流電力に変換して負荷に供給すると共に、太陽発電及び又は商用交流系統の電力を、リチウムイオン電池を用いた蓄電装置に蓄電して利用するものであれば、適宜の太陽光発電システムを含む。
【0234】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。