特許第6042689号(P6042689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042689
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】弾性波デバイス及びその設計方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/64 20060101AFI20161206BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20161206BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20161206BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H03H9/64 Z
   H03H9/25 A
   H03H9/17 F
   H03H9/54 Z
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-228591(P2012-228591)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-82609(P2014-82609A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆志
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−157257(JP,A)
【文献】 特開2010−087576(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/028683(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/105337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/64
H03H 9/17
H03H 9/25
H03H 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子基板と、
前記素子基板上に形成された複数の弾性波共振器と、
前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器の少なくとも一つに接続され、電気信号が入力される入力用パッドと、
前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器の少なくとも一つに接続され、電気信号が出力される出力用パッドと、
前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器を囲うように形成されたシールリングと、
前記シールリングとグランドとの間に形成された第一インダクタと、
前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器の少なくとも一つをグランドに接続するための第一接地用パッドと、
前記素子基板上に形成され、前記シールリングと接続され、前記第一接地用パッドと接続されていない、第二接地用パッドと、
を有する弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第一インダクタは、前記素子基板が実装されるパッケージ基板の実装面に形成されている、請求項に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記素子基板の側面と同一平面を形成する絶縁性部材からなる封止部と、前記封止部上であって前記素子基板と対抗する面に形成された複数の接続部とを有する弾性波フィルタであって、前記弾性波フィルタは前記パッケージ基板の内部に形成されている、請求項に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記パッケージ基板の実装面上であって、前記シールリングと対応する領域に形成されたフレームを有する、請求項2〜3に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記第一インダクタは、U字状またはU字状を含む形状で形成されている請求項1〜4に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記第一インダクタは、ミアンダ状に形成されている請求項1〜4に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記第一インダクタは、少なくとも一つの曲がり角を有するように形成されている請求項1〜4に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記弾性波共振器は、弾性表面波共振器または弾性薄膜共振器からなることを特徴とする請求項1〜7に記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記複数の弾性波共振器はラダー型フィルタを構成することを特徴とする請求項1〜8に記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
前記第一接地用パッドは、第二インダクタを介して接地されていることを特徴とする請求項1〜9に記載の弾性波デバイス。
【請求項11】
素子基板と、前記素子基板上に形成された複数の弾性波共振器と、前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器の少なくとも一つに接続され、電気信号が入力される入力用パッドと、前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器の少なくとも一つに接続され、電気信号が出力される出力用パッドと、前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器を囲うように形成されたシールリングと、前記シールリングと前記グランドとの間に形成されたインダクタと、
を有する弾性波デバイスの通過帯域の高周波側の前記通過帯域の外の帯域において、前記帯域の低周波側における前記フィルタの減衰特性を高める場合には前記インダクタのインダクタンスを小さくし、前記帯域の高周波側における前記フィルタの減衰特性を高める場合には前記インダクタのインダクタンスを大きくすることを特徴とする、弾性波フィルタの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波デバイス及びその設計・製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波デバイスは、移動体通信端末が備えるフィルタ、デュプレクサ等として用いられる。弾性波デバイスを構成する弾性波共振器には、弾性表面波を用いた弾性表面波(SAW(Surface Acoustic Wave))共振器、境界波を用いた弾性境界波共振器、圧電薄膜を用いた圧電薄膜共振器(FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)、SMR(Solidly Mounted Resonator))等がある。弾性波を励振する機能部分は、例えば弾性表面波デバイスではIDT(Inter Digital Transducer)等の電極が形成された領域であり、FBARでは圧電薄膜を挟みこむ電極の重なる領域である。弾性波共振器を保護するため、弾性波共振器が形成された素子基板を例えば樹脂や金属等により封止することがある。また、よりハーメチックにするため、弾性波共振器が形成された素子基板上に機能部分を囲うように、金属からなるシールリングを設けることがある。
【0003】
例えば特許文献1には、外気から保護し弾性波共振器を長期にわたって安定に動作させるために、機能部分を環状電極で囲い、また、接地用導体端子のインダクタンスを小さくするために環状導体を利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−14296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているように、弾性波共振器の機能部分は、通常、素子基板の一方端に入力用パッドが、その反対側に出力用パッドが形成される。つまり、入出力用パッドは素子基板の端に形成されることが多い。よって、弾性波共振器を囲うシールリングの近くに、入力用パッドと出力用パッドが形成される。入力用パッドと出力用パッドは素子基板上では離れているが、両者はともにシールリングの近くに形成されていることから、シールリングを介して電気的結合が生じており、弾性波デバイスの特性に影響を与えている。特に、弾性波フィルタの通過帯域外における減衰量を十分に得られにくいという影響があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、素子基板と、前記素子基板上に形成された複数の弾性波共振器と、前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器の少なくとも一つに接続され、電気信号が入力される入力用パッドと、前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器の少なくとも一つに接続され、電気信号が出力される出力用パッドと、前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器を囲うように形成されたシールリングと、前記シールリングとグランドとの間に形成された第一インダクタと、前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器の少なくとも一つをグランドに接続するための第一接地用パッドと、前記素子基板上に形成され、前記シールリングと接続され、前記第一接地用パッドと接続されていない、第二接地用パッドと、を有する弾性波デバイスである。本発明によれば、入出力用パッド間における電気的結合状態を調整することができるため、上記課題を解決することができる。
【0008】
上記構成において、前記第一インダクタは、前記素子基板が実装されるパッケージ基板の実装面に形成されている構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記素子基板の側面と同一平面を形成する絶縁性部材からなる封止部と、前記封止部上であって前記素子基板と対抗する面に形成された複数の接続部とを有する弾性波フィルタであって、前記弾性波フィルタは前記パッケージ基板の内部に形成されている構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記パッケージ基板の実装面上であって、前記シールリングと対応する領域に形成されたフレームを有する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第一インダクタは、U字状またはU字状を含む形状で形成されている構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第一インダクタは、ミアンダ状に形成されている構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第一インダクタは、少なくとも一つの曲がり角を有するように形成されている構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記弾性波共振器は、弾性表面波共振器または弾性薄膜共振器からなることを特徴とする構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記複数の弾性波共振器はラダー型フィルタを構成することを特徴とする構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記第一接地用パッドは、第二インダクタを介して接地されていることを特徴とする構成とすることができる。
【0017】
本発明は、素子基板と、前記素子基板上に形成された複数の弾性波共振器と、前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器の少なくとも一つに接続され、電気信号が入力される入力用パッドと、前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器の少なくとも一つに接続され、電気信号が出力される出力用パッドと、前記素子基板上に形成され、前記弾性波共振器を囲うように形成されたシールリングと、前記シールリングと前記グランドとの間に形成されたインダクタと、を有する弾性波デバイスの通過帯域の高周波側の前記通過帯域の外の帯域において、前記帯域の低周波側における前記フィルタの減衰特性を高める場合には前記インダクタのインダクタンスを小さくし、前記帯域の高周波側における前記フィルタの減衰特性を高める場合には前記インダクタのインダクタンスを大きくすることを特徴とする、弾性波フィルタの設計方法である。本発明によれば、弾性波フィルタの通過帯域外における減衰量を十分に得られた弾性波デバイスを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、通過帯域外の減衰量を十分に確保した弾性波デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は比較例を示す回路図である。
図2図2は実施例を示す回路図である。
図3図3は実施例及び比較例の周波数特性を示す図である。
図4図4は実施例1の弾性表面波フィルタを示す透過図である。
図5図5はWLPの断面図を示す図である。
図6図6はWLPの実装面を示す図である。
図7図7はWLPが内部に実装された弾性波デバイスの例を示す図である。
図8図8はWLPの製造方法を説明するための図である。
図9図9は実施例1の変形例を示す図である。
図10図10は実施例1の変形例のパッケージ基板を示す図である。
図11図11は実施例2の共振器を示す図である。
図12図12は実施例2を示す図である。
図13図13は実施例3の共振器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず比較例について説明する。図1は弾性波デバイスの一つであるラダー型の弾性波フィルタの比較例を示す回路図である。図1の示す通り、入力用パッドT1と出力用パッドT2の間に直列共振器S1〜S4が形成されている。直列共振器S1とS2の間に並列共振器P1が形成され、直列共振器S3とS4の間に並列共振器P2が形成されている。並列共振器P1とP2は共通のインダクタL1を介して接地端子T3に接続されている。シールリングSRは、共振器を囲うように形成され、接地用パッドT4に接続され、グランドGNDに接続されている。本開示におけるグランドとは、例えば、電気信号が弾性波デバイスを通過する際に基準電位となる電極または電極パターンをいう。シールリングSRは入力用パッドT1及び出力用パッドT2の近くに配置されるために、容量結合により寄生容量成分C1、C2が生じている。
【0021】
図2は本発明の弾性波デバイスの一つであるラダー型の弾性波フィルタの実施例を示す回路図である。実施例では、シールリングSRは、接地用パッドT4及びインダクタL2を介してグランドGNDに接続されている。その他の回路構成は比較例と同様であるので、説明を省略する。このインダクタL2のインダクタンスにより、寄生容量成分C1,C2による弾性波フィルタの特性への影響を相殺しフィルタ特性を調整することができる。以下、この点を詳述する。
【0022】
図3は実施例及び比較例の周波数特性を示す図である。実線で示した周波数特性FC1は比較例にかかる周波数特性を示すものであり、破線で示した周波数特性FC2及び一点鎖線で示したFC3は実施例にかかる周波数特性を示す。フィルタの通過帯域である周波数帯域B1の高周波側の周波数帯域B2において、インダクタンスを付与しないでシールリングSRを接地した比較例の周波数特性FC1に対して、インダクタンスを付与してシールリングSRを接地した実施例の周波数特性FC2、FC3の方が、減衰量が大きくなっていることが示されている。これにより、例えば、周波数帯域B1を構成するフィルタを低周波側とし別のフィルタを高周波側としてデュプレクサを構成する際に、高周波側の周波数帯域B2へ信号がもれることを抑制することができる。周波数特性FC2は、シールリングSRに2ナノヘンリー(nH)のインダクタンスを付与して接地した実施例の周波数特性であり、周波数特性FC3は、シールリングSRに3nHのインダクタンスを付与して接地した実施例の周波数特性である。
【0023】
図3に示すように、シールリングSRに付与するインダクタンスが小さいと、周波数特性FC2のように、周波数帯域B2における低周波側の減衰量を大きくすることができ、シールリングSRに付与するインダクタンスが大きいと、周波数特性FC3のように、周波数帯域B2における高周波側の減衰量を大きくすることができる。
【0024】
このように、本実施例によれば、シールリングSRにインダクタンスを付与して接地することにより、フィルタの通過帯域である周波数帯域B1の高周波側の周波数帯域B2における減衰量を大きくすることができる。また、シールリングSRに付与するインダクタンスの大きさを調整する弾性波フィルタの設計方法により、フィルタの通過帯域である周波数帯域B1の高周波側の周波数帯域B2において、所望の減衰特性を得ることができる。
【実施例1】
【0025】
図4は実施例1の弾性表面波フィルタ100を示す図である。図4は素子基板1の主面の逆の面からの透視図である。素子基板1となる圧電基板は、例えば、36°YカットX伝搬のタンタル酸リチウム単結晶、42°YカットX伝搬のタンタル酸リチウム単結晶等、電気機械結合が大きく、周波数温度係数が小さい部材を好適に用いることができるが、これらに限らず、所望の特性を得られる素子基板であればよい。また、圧電基板の厚さは、例えば、0.1mm〜0.5mmとすることができる。素子基板1の主面上に、入力用パッドT1と出力用パッドT2が形成され、入力用パッドT1と出力用パッドT2の間にIDTで構成された弾性表面波共振器である直列共振器S1〜S4が形成されている。直列共振器S1とS2の間に接続され、IDTで構成された弾性表面波共振器である並列共振器P1が形成され、直列共振器S3とS4の間に接続され、IDTで構成
された弾性表面波共振器である並列共振器P2が形成されている。直列共振器S1〜S4と並列共振器P1〜2により、ラダー型フィルタが構成されている。各IDTは、信号の損失を防ぐために反射器に挟まれた構成となっている。並列共振器P1とP2は接地用パッドT3に接続されている。また、ダミーパッドT5はダミーのパッドである。また、素子基板1の主面上に、直列共振器S1〜S4と並列共振器P1〜2、入力用パッドT1、出力用パッドT2、接地用パッドT3、T4、及びダミーパッドT5を、囲うようにシールリングSRが形成されている。シールリングSRの幅d1は例えば10μm、高さは20μmとすることができる。シールリングSRは接地用パッドT4に接続されていて、共振器及び他の共振器と接続されたパッドとは接続されていない。これは、寄生容量成分C1、C2をインダクタンスの付与により調整する前に、素子基板の主面上でシールリングSRをグランドの基準電位と共通化しないようにするためである。
【0026】
上述のように、シールリングSRは入力用パッドT1及び出力用パッドT2の近くに配置されているために、入力用パッドT1と出力用パッドT2の間に容量結合が生じている。シールリングSRと入力用パッドT1との距離d2とシールリングSRと出力用パッドT2との距離d3は、例えばそれぞれ10μmとすることができる。シールリングSRに対抗する入力用パッドT1の幅w1,出力用パッドT2の幅w2は、例えばそれぞれ50μm、膜厚はそれぞれ1μmとすることができる。このとき、d2に生じた寄生容量成分C1は0.097968pF(ピコファラッド)であり、d3に生じた寄生容量成分C2は0.097837pFであった。そして、入出力の結合容量成分は0.001242pFであった。入出力パッドT1、T2間の容量結合は、このように微量な結合成分であっても、高周波になるに従い周波数特性に影響を与える。
【0027】
天板9は支持柱8に支えられている。支持柱8は、素子基板1上に7個形成され、接続配線5上に、一点鎖線で囲うことにより示した領域に形成された絶縁膜IFを介して、1個形成されている。図4では天板9が形成される領域を符号9で示す破線で囲うことにより示した。支持柱8と天板9は、例えば、銅などの金属により形成されている。
【0028】
図5は、弾性表面波フィルタ100を収容するウエハレベルパッケージ(WLP)を示す図である。WLPとは、弾性表面波デバイスの個片化前におけるウエハの段階で、弾性波共振器上の空隙AGが確保されるように封止がなされ、その後個片化されたパッケージである。封止がなされてから個片化するため、封止部は素子基板1の側面(切断面)と同一平面を形成する。さらに、後述の説明で明らかになるが、素子基板1と対抗する面である封止部上には、WLPの外部との接続部であるバンプが複数形成される。
【0029】
図6は弾性波デバイスを構成するWLPの実装面を示す図である。図4に示したパッドT1〜T5が図6にT1s〜T5sで示したパッドにそれぞれバンプを介して接続される。図6のT1sは弾性波デバイスの入力側の回路(図示せず)へ接続されるパットである。図6のT2sは弾性波デバイスの出力側の回路(図示せず)へ接続されるパットである。図6のT3sはインダクタL1sを介してグランドGNDに接続される。図6のT4sはインダクタL2sを介してグランドGNDに接続される。インダクタL2sにより、シールリングSRがインダクタを介してグランドGNDに接地される。
【0030】
インダクタL1s、L2sは、図示したように、曲がり角を有するように配線を引き回したり、U字形状や、ミアンダ形状を有するように配線を引き回して、インダクタンス成分を得るものでもよい。図3で示した高周波の帯域においては、分布定数回路素子として、インダクタンス成分を形成することができるからである。また、ディスクリート部品(集中定数回路素子)としてのインダクタチップを用いて形成してもよい。また、インダクタンス成分は、WLPの実装面に限らず、素子基板上やWLPの封止部上、或いは、実装する基板が積層基板である場合にはその内層に形成されてもよい。但し、素子基板の誘電率が高い場合には、容量性が大きくなるために、所望のインダクタンスを得にくくなる場合があるため、素子基板以外にインダクタンス成分となる配線を引き回すことが望ましい。
【0031】
グランドGNDは、図6に示されるように、他のパターンに比べ相当に広い面積を有する。これは、弾性表面波フィルタ100が携帯電話等のマザーボードに実装されマザーボードのグランドと接続された際、安定的にグランド電位を弾性表面波フィルタ100に供給するためである。本発明でいうグランドとは、マザーボードのグランドではなく、そこに接続され得るものであって、弾性波デバイスにグランド電位を供給し得る金属パターンを指す。
【0032】
WLPの実装面は、弾性波デバイスの表面に形成されてもよく、例えば、図7に示すように、積層されたプリント配線基板300,310,320の内部に形成されていてもよい。図7に示すように、下層の配線基板300の一部領域に、例えば図6に示した配線パターン200を形成し、その上に実施例1のWLPを実装する。WLPに対応する位置に穴が形成された中間層を構成するプリント配線基板310を積層する。樹脂等の絶縁体を流入させ、封止部4を形成する。上層を構成するプリント配線基板320を積層する。プリント配線基板は、予め、ビア7、接続配線5、外部接続端子201などにより電気回路の構成要素となるように構成されている。
【0033】
以上によれば、WLPが内部に形成された積層されたプリント配線基板300,310,320を用いた弾性波デバイス500を形成することができる。積層されたプリント配線基板300,310,320を用いた弾性波デバイス500は、例えば、集積回路、キャパシタ、インダクタなどの様々な電子部品が集積されて構成されたモジュールである。このように、弾性波デバイスは、弾性波を利用したデバイスであれば何でもよく、例えば、デュプレクサ、トリプレクサ、クワドロプレクサなどの分波器やこれらを含むモジュールから、弾性波フィルタを利用した携帯電話などの移動通信機器を含む。
【0034】
次に、実施例1の弾性波デバイスを構成するWLPの構成について詳細に説明する。図5(a)は、図4のA−A断面図であり、素子基板1上に形成されたシールリングSRと、素子基板1上に形成された支持柱8と、素子基板1上に形成された接続配線5と、接続配線5上に形成された絶縁膜IFと、絶縁膜IF上に形成された支持柱8と、支持柱8に支持された天板9と、封止部4と、の位置関係を示している。シールリングSRは並列共振器P1、支持柱8、及び天板9を囲うように形成されている。また、シールリングSRの高さは天板9の高さと同等にすることができる。後述するように、WLPは、天板9と、一定以上の粘度を有する絶縁性部材からなる封止部4により、弾性波共振器の領域上に空隙AGが確保されて、封止されている。
【0035】
図5(b)は、図4のB−B断面図であり、素子基板1上に形成されたシールリングSRと、素子基板1上に形成された支持柱8と、支持柱8に支持された天板9と、接地用パッドT3と、接地用パッドT3状に形成された引出電極2と、天板9に導通するバンプ3と、封止部4と、の位置関係を示している。バンプ3は、WLPを外部と接続するための接続部となり、例えば金や半田などで形成される。図5(b)からわかるように、金属で形成された天板9及び支持柱8は、接地用パッドT3と同電位になっている。支持柱8は、天板9を物理的に支持できる範囲内であれば自由にその配置を設計することができるが、グランド電位とした支持柱8を、アイソレーションを高めたい共振器の間に配置することにより、共振器間のアイソレーションを向上させることができる。なお、図示はしないが、天板9を樹脂等の絶縁物により形成する場合には、天板9を通じて導通することができないので、入力用パッドT1又は出力用パッドT2のように、接地用パッドT3も天板9が形成される領域の外側に形成することが望ましい。
【0036】
図5(c)は、図4のC−C断面図であり、出力用パッドT2及び接地端子T5上に形成された引出電極2と、引出電極2上に形成されたバンプ3と、素子基板1とバンプ3のみが外部に露出するように封止する封止部4と、を示す図である。各パッドT1〜T5は、引出電極2及びバンプ3を介してWLPの外部と電気的に接続される。
【0037】
次に、実施例1の弾性波デバイスを構成するWLPの製造方法について説明する。ウエハ状の圧電基板上に、蒸着法やスパッタリング法などにより、アルミニウム、銅等の金属からなる金属層を設ける。次に、フォトリソグラフィー法等により金属層上に形成したレジストをパターニングする。そして、エッチング法やリフトオフ法等により、金属層パターンを形成し、IDT,反射電極、信号配線、接地端子を形成する。これにより、入力用パッド、出力用パッド、直列共振器、並列共振器、接地用パッドが形成される。
【0038】
図8は、上記のウエハ上でのプロセス後の、WLPの製造方法を説明するための図であり、図4のB−B断面図に対応して、一単位あたりのWLPの製造途中の段階を示すものである。実際には複数の単位WLPがウエハ状に二次元に連接している。上記の金属層パターンを形成した工程の後、図8に示すように、シールリングSRと、パッドT1〜T5上に形成される引出電極2と、支持柱8とを形成する領域以外の領域に、第一のフォトレジストaを設ける。第一のフォトレジストaは、支持柱8の高さと同等の高さになるように形成される。次に、スパッタリング法等により、シードメタルbを形成する。次に、シールリングSRと、端子T1〜T5上に形成される引出電極2と、支持柱8と、天板9とを形成する領域以外の領域のシードメタルb上に、第二のフォトレジストcを設ける。そして、電解メッキ法等により、シードメタルb上に、例えば、銅を析出させる。これにより、図5(b)に示したシールリングSRと、引出電極2と、支持柱8と、天板9とが形成される。
【0039】
その後、レジスト剥離液に浸漬させ、超音波洗浄等により、第一及び第二のフォトレジストを除去する。
【0040】
ここで、支持柱8は、天板9を支えるために形成される。天板9は、封止部4を形成する際に封止材が共振器に接触することを防ぐために形成される。共振器は物理的に振動するため、封止材が接触しないように共振器の周囲に空隙を形成しなければ、共振特性が劣化するためである。支持柱8は、共振器および端子が形成された領域以外の領域に形成される。接続配線上に形成する場合は、絶縁膜IFを介して形成する。
【0041】
次に、液晶ポリマー(LCP)などの樹脂シートを、天板9の形成プロセス後のウエハに熱圧着し、封止部4を形成する。封止する部材は樹脂に特に限定されないが、天板及び支持柱の内側への流入が回避され、空隙が確保できるよう、粘性の高い部材が望ましい。また、高い耐湿性を有する液晶ポリマーを用いることが好ましい。液晶ポリマーシートとして、例えば、クラレ株式会社の製品「ベクスター」等を使用することができる。ここで、LCPと圧電基板の密着性は高くないが、シールリングSRがあることにより、LCPが剥がれ難くなるという点において、実施例1のWLPは有効である。
【0042】
次に、引出電極2を露出させるために、レーザーを用いて封止部4に開口部を形成し、その開口部にバンプ3を形成する。接地用パッドT3は天板9と導通しているため、天板9の任意の位置を露出させて、バンプ3を形成する。その後、ダイシング処理をして個片化し、個々のWLPを得る。
【0043】
次に、実施例1の変形例について説明する。図9は実施例1の変形例を示す図である。本変形例及び以下の実施例では、図4に示した支持柱8と天板9は形成されない。セラミックなどの絶縁性基板の単層または積層基板からなるパッケージ基板600の実装面601に、図4に示し
た弾性表面波フィルタ100がフリップチップボンディングされている。パッケージ基板600上にはシールリングSRに対応する位置にフレームFが形成されている。フレームFは、例えば樹脂や金属により形成され、シールリングSRと接着されている。フレームFは、封止性を向上するために、内側の領域を完全に囲うように形成されていることが望ましい。なお、シールリングSRの部材とパッケージ基板の部材の密着性が良い場合やハーメチックに封止する必要がない場合などには、フレームFは特に無くてもよい。
【0044】
図10は実施例1の変形例のパッケージ基板600の実装面601を示す図である。図10に示すT11s〜T15sに、素子基板1上に形成されたパッドT1〜5がそれぞれ対応して、バンプ3を介してフリップチップ実装される。パッドT1〜T5はそれぞれ図9に示すビア7及び内層パターン602を介して外部接続端子603に接続されている。T14sはL12sを介してグランドGNDに接続されている。T13sはL11sを介してグランドGNDに接続されている。ここで、L11s、L12s、及び/又はグランドGNDは、内層に形成されていてもよい。また、L11sが接続されるグランドGNDと、L12sが接続されるグランドGNDは、電気的に接続されないで、すなわち、共通の電位にならないまま外部接続端子に接続されていてもよい。多重モード型SAWフィルタやラティス型フィルタの設計手法などを用いて、平衡入力型又は平衡出力型のフィルタを構成する場合には、バランス特性が良くなる場合があるからである。なお、内層にバランを構成してもよい。
【実施例2】
【0045】
実施例2は、実施例1乃至実施例1の変形例にかかる共振器を、バルク波を励振させる弾性薄膜共振器(FBAR)で構成した例である。実施例2の共振器は、図11に示すように、シリコン等からなる素子基板10上に、下部電極11、圧電薄膜12、上部電極13がこの順序で形成され、下部電極と素子基板10の間には、音響反射手段14が形成されている。音響反射手段14、下部電極11、圧電薄膜12及び上部電極13が重なる領域において、重なる方向に振動することにより、共振器として作用する。図10に示した例では、音響反射手段14としての空隙は、前記重なる領域が円乃至楕円形状をしており、下部電極11、圧電薄膜12及び上部電極13がドーム状に形成されていることにより構成される。音響反射手段14としての空隙は、素子基板10上にキャビティを形成することにより構成されてもよく、この場合、下部電極11、圧電薄膜12及び上部電極13の積層体は略平坦に形成され、下部電極11、圧電薄膜12及び上部電極13が重なる領域は、四角形や五角形などの多角形を形成し得る。
【0046】
図12はFBARを用いてラダー型フィルタ800を構成した例である。実施例1と同様、素子基板1上に形成された入力用パッドT1と出力用パッドT2の近くにラダー型フィルタと各端子を囲うようにシールリングSRが形成されている。その他の構成は実施例1及び実施例1の変形例と同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0047】
実施例3は、実施例1、実施例1の変形例乃至実施例2にかかる共振器を、FBARとは異なる種類の弾性薄膜共振器(SMR)で構成した例である。実施例3の共振器は、図13に示すように、シリコン等からなる素子基板10上に、下部電極11、圧電薄膜12、上部電極13がこの順序で形成される。下部電極と基板の間には、空隙のかわりに音響反射手段14が形成されている。音響反射手段14、下部電極11、圧電薄膜12及び上部電極13が重なる領域において、重なる方向に振動することにより、共振器として作用する。図12に示した例では、音響反射手段14として、音響インピーダンスが極端に異なる3層のシリコンSiOと2層のタングステンを交互に積層することにより、素子基板10上に形成されている。3層のシリコンSiOと2層のタングステンは、膜厚がλの4分の1である薄膜である。なおλは共振周波数における伝搬波長である。その他の構成は実施例1乃至実施例2と同様であるので説明を省略する。
【0048】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は本開示の特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1、10・・・素子基板 2・・・引出電極 3・・・バンプ 4・・・封止部 5・・・接続配線 7・・・ビア 8・・・支持柱 9・・・天板 11・・・下部電極 12・・・圧電薄膜 13・・・上部電極 14・・・音響反射手段 600・・・パッケージ基板
図1
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