(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データから、基準ディザー信号(Ds)における歪み率(y)の劣化基準歪み率閾値(Dy)を求めて、
前記劣化基準歪み率閾値(Dy)において、サーボバルブのメンテナンス時期情報を発するように構成したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のサーボバルブの制御装置。
前記ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データから、基準ディザー信号(Ds)における歪み率(y)の劣化基準歪み率閾値(Dy)を求めて、
前記劣化基準歪み率閾値(Dy)において、サーボバルブのメンテナンス時期情報を発するように構成したことを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載のサーボバルブの制御方法。
【背景技術】
【0002】
従来、試験装置として、例えば、金属材料、樹脂材料、複合材料などの材料について、また、自動車部品(駆動系や足回りの金属部品やゴム部品、ショックアブソーバなど)などの機械部品について、これらの自動車完成品などの完成品について、さらに、土木関係(橋桁、橋梁や建物用の免震ゴムなど)の構造物について、材料試験、振動試験、疲労試験、特性試験などを行うための材料試験装置、振動試験装置、疲労試験装置など各種の試験装置がある。
【0003】
以下、本明細書において、「試験装置」とは、これらの各種の試験を行うための試験装置を包含した意味で用いられる。
【0004】
従来、油圧式のアクチュエータを備えた試験装置として、例えば、油圧式のアクチュエータである加振装置を備えた試験装置として、
図7に示したような構造の試験装置100が提案されている。
【0005】
すなわち、
図7に示したように、従来の試験装置100は、試験を行うための試験装置本体102を備えている。この試験装置本体102は、この実施例では、試験の一例として、加振装置から構成されている。
【0006】
図7に示したように、試験装置本体102は、架台フレーム104を備えており、この架台フレーム104の下方にシリンダからなるアクチュエータ106を備えている。このアクチュエータ106には、テストピースAを載荷するためのピストン108と、変位を検出するための変位検出器110とを備えている。
【0007】
また、架台フレーム104の上方には、上方フレーム118が立設されており、この上方フレーム118には、上方フレーム118と架台フレーム104との間に、ガイドロッド112が設けられている。
【0008】
そして、ガイドロッド112の下方と上方フレーム118との間には、ボールネジ114が設けられており、ボールネジ114により、ピストン108に対して、上下動可能なクロスヘッド116が設けられている。また、このクロスヘッド116には、ピストン108と対峙するように、荷重検出器120が設けられている。
【0009】
このように構成される試験装置100では、以下のように試験が行われる。
【0010】
すなわち、
図7に示したように、ピストン108の上面に、例えば、ショックアブソーバなどのテストピースAを載荷して、図示しない駆動機構によって、ボールネジ114により、ピストン108に対してクロスヘッド116を下降して、ピストン108の上面とクロスヘッド116の下面との間にテストピースAを挟持する。
【0011】
そして、図示しない制御装置に予め記憶されたプログラムに基づいて、試験条件などの設定、試験の実施、試験データの収集が行われるようになっている。
【0012】
すなわち、
図7に示したように、制御装置の制御によって、制御装置に接続された図示しないアクチュエータ動力源を所定の条件で駆動させる。これにより、アクチュエータ動力源に接続されたアクチュエータ106が所定の条件で駆動され、テストピースAに対して一定の振動を与えるようになっている。
【0013】
そして、アクチュエータ106に設けられた変位検出器110によって、テストピースAの変位が検出され、テストピースAの変位データが、制御装置に入力されるようになっている。一方、クロスヘッド116に設けられた荷重検出器120によって、テストピースAにかかる荷重が検出され、テストピースAにかかる荷重データが、制御装置に入力されるようになっている。
【0014】
また、これらの試験データに基づいて、制御装置のプログラムに基づいて、制御装置からアクチュエータ動力源に、フィードバック指令信号が出力され、アクチュエータ106を所定の条件で駆動させるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来、このような試験装置100において、
図8のブロック図に示したように、試験装置本体102には、試験装置本体102を制御するために用いられるサーボバルブ140が接続されている。
【0017】
そして、試験装置本体102のアクチュエータ106の変位検出器110、サーボバルブ140は、それぞれ制御装置122に接続されている。
【0018】
ところで、サーボバルブ140においては、スラッジの影響でサーボバルブ140の動作が円滑に行われないおそれがある。また、動作の初期段階では、静止摩擦の方が動摩擦より大きく、サーボバルブ140の動作が円滑に行われないおそれがある。
【0019】
このため、従来の試験装置100において、
図9の概略図に示したようにサーボバルブ140の動作をスムーズにする目的で、指令となる電流信号(例えば、周波数50Hzの正弦波信号)に、例えば、周波数500Hz程度のディザー(Dither)信号を重畳する(加える)ことが行われている。
【0020】
すなわち、高周波の微信号であるディザー信号を加えることによって、サーボバルブ140の動きを滑らかにすることができる。
【0021】
具体的には、
図9に示したように、制御装置122は、内部信号発生装置124を備えており、この内部信号発生装置124により、所定の周波数、例えば、周波数50Hzの正弦波信号の周波数で、所定のレベルの信号を発生し、設定信号(Sv)として、サーボバルブ140に対して出力している。
【0022】
そして、アクチュエータ106の変位検出器110からの変位信号(Pv)と、設定信号(Sv)の差を求めて、偏差信号(e)としている。
【0023】
この偏差信号(e)を比例ゲイン(Kp)で増幅して、操作量信号(Mv)としている。
【0024】
一方、制御装置122は、ディザー信号発生装置132を備えており、ディザー信号発生装置132により、所定の周波数、例えば、周波数500Hzの周波数で、ディザーレベル(x)のディザー信号(D)を発生させる。
【0025】
このディザー信号(D)を操作量信号(Mv)に重畳して、サーボバルブ140に指令信号として出力するように構成している。
【0026】
しかしながら、ディザー信号(D)を大きなレベルで加えると、加振機である試験装置本体102が反応して、実際の加振機動作において、ディザー信号成分がもれてしまい、サーボバルブ140の動作をスムーズに行うことができない。そのため、ディザー信号のレベルは、適正範囲に設定しなければならない。
【0027】
これに対して、ディザー信号のレベルに関して、現在まで明確な判定基準がなかった。すなわち、従来は、ディザー信号のレベルを設定する方法として、加振機を正弦波などで実際に動かし、波形の形状が良いか、異常な成分が出ていないかなどを、ディザー信号のレベルを変化させながら、出力波形を目視で判定することにより行っていた。
【0028】
従って、適切なディザー信号のレベルを設定するのに、煩雑な作業が必要で、時間と手間を要し、正確に適切なディザー信号のレベルを設定することが困難で、コストも高くつくことになっていた。
【0029】
さらに、サーボバルブ140のメンテナンスを行う時期について、従来では、重畳するディザー信号のレベルを大きくしても、サーボバルブ140の動作が改善されない時に、サーボバルブ140のメンテナンスを行うタイミングとしているが、このタイミングについて基準がない。
【0030】
従って、サーボバルブ140のメンテナンス時期を正確に把握することができず、メンテナンス時期を超えてサーボバルブ140を使用するおそれがあり、その結果、正確な試験を実施できないおそれがあった。
【0031】
本発明は、このような現状に鑑み、ディザー信号のレベルを自動で判定することができ、適切なディザー信号のレベルを設定するのに、煩雑な作業が不要で、時間と手間を要せず、正確に適切なディザー信号のレベルを設定することができ、コストも低減することが可能なサーボバルブの制御装置およびサーボバルブの制御方法、ならびにサーボバルブの制御装置を備えた試験装置を提供することを目的とする。
【0032】
また、本発明は、サーボバルブのメンテナンス時期を正確に把握することができ、メンテナンス時期を超えてサーボバルブを使用するおそれがなく、正確な試験を実施できるサーボバルブの制御装置およびサーボバルブの制御方法、ならびにサーボバルブの制御装置を備えた試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明のサーボバルブの制御装置は、
油圧式のアクチュエータを備えた試験装置を制御するために用いられるサーボバルブの制御装置であって、
操作量信号(Mv)にディザー信号(D)を重畳して、サーボバルブに指令信号として出力するように構成するとともに、
前記ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データを得て、前記相関関係データにより、相関関係の変曲点を求めて、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とし、
前記限界ディザーレベル(Sx)以上の基準ディザー信号(Ds)を、操作量信号(Mv)に重畳して、サーボバルブに指令信号として出力する
とともに、
前記ディザー信号(D)のディザーレベル(x)の上限値を、安定域のレベル状態となる範囲で設定するように構成したことを特徴とする。
【0034】
また、本発明のサーボバルブの制御方法は、
油圧式のアクチュエータを備えた試験装置を制御するために用いられるサーボバルブの制御方法であって、
操作量信号(Mv)にディザー信号(D)を重畳して、サーボバルブに指令信号として出力するとともに、
前記ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データを得て、前記相関関係データにより、相関関係の変曲点を求めて、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とし、
前記限界ディザーレベル(Sx)以上の基準ディザー信号(Ds)を、操作量信号(Mv)に重畳して、サーボバルブに指令信号として出力する
とともに、
前記ディザー信号(D)のディザーレベル(x)の上限値を、安定域のレベル状態となる範囲で設定することを特徴とする。
【0035】
また、本発明では、
内部信号発生装置により、設定信号(Sv)を、前記サーボバルブに対して出力し、
前記アクチュエータからの変位信号(Pv)と前記設定信号(Sv)の差を求めて、偏差信号(e)とし、
前記偏差信号(e)を比例ゲイン(Kp)で増幅して、操作量信号(Mv)とし、
ディザー信号発生装置により、ディザーレベル(x)のディザー信号(D)を発生して、ディザー信号(D)を操作量信号(Mv)に重畳して、サーボバルブに指令信号として出力するように構成するとともに、
前記ディザーレベル(x)に対して、偏差信号(e)の歪み率(y)を計算し、
前記ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データを得て、前記相関関係データにより、相関関係の変曲点を求めて、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とし、
前記限界ディザーレベル(Sx)以上の基準ディザー信号(Ds)を、操作量信号(Mv)に重畳してサーボバルブに指令信号として出力するように構成したことを特徴とする。
【0036】
このように、ディザーレベル(x)に対して、偏差信号(e)の歪み率(y)を計算し、ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データを得て、前記相関関係データにより、相関関係の変曲点を求めて、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とし、限界ディザーレベル(Sx)以上の基準ディザー信号(Ds)を、操作量信号(Mv)に重畳して、サーボバルブに指令信号として出力している。
【0037】
従って、ディザー信号のレベルを自動で判定することができ、適切なディザー信号のレベルを設定するのに、煩雑な作業が不要で、時間と手間を要せず、正確に適切なディザー信号のレベルを設定することができ、コストも低減することが可能である。
【0038】
また、本発明では、前記相関関係データの全データを直線近似して、直線を求め、
前記直線と各データの差が最大となるデータを変曲点とし、
前記変曲点付近で前記相関関係データを2分して、前記2分した相関関係データをそれぞれ直線近似して、その交点を、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とするように構成したことを特徴とする。
【0039】
このように構成することによって、変曲点付近で前記相関関係データを2分して、前記2分した相関関係データをそれぞれ直線近似して、その交点を、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とするので、ディザー信号のレベルを自動で判定することができ、適切なディザー信号のレベルを設定するのに、煩雑な作業が不要で、時間と手間を要せず、より正確に適切なディザー信号のレベルを設定することができ、コストも低減することが可能である。
【0040】
また、本発明では、前記歪み率(y)をブロック化し、ヒストグラムを作成し、
最もデータ数の多いブロックとそれ以外のブロックに2分してそれぞれ直線近似して、その交点をディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とするように構成したことを特徴とする。
【0041】
このように構成することによって、歪み率(y)をブロック化し、ヒストグラムを作成し、最もデータ数の多いブロックとそれ以外のブロックに2分してそれぞれ直線近似して、その交点をディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とするので、ディザー信号のレベルを自動で判定することができ、適切なディザー信号のレベルを設定するのに、煩雑な作業が不要で、時間と手間を要せず、より正確に適切なディザー信号のレベルを設定することができ、コストも低減することが可能である。
【0042】
また、本発明では、前記ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データから、基準ディザー信号(Ds)における歪み率(y)の劣化基準歪み率閾値(Dy)を求めて、
前記劣化基準歪み率閾値(Dy)において、サーボバルブのメンテナンス時期情報を発するように構成したことを特徴とする。
【0043】
このように構成することによって、ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データから、基準ディザー信号(Ds)における歪み率(y)の劣化基準歪み率閾値(Dy)を求めて、劣化基準歪み率閾値(Dy)において、サーボバルブのメンテナンス時期情報を発するので、サーボバルブのメンテナンス時期を正確に把握することができ、メンテナンス時期を超えてサーボバルブを使用するおそれがなく、正確な試験を実施できる。
【0044】
また、本発明の試験装置は、前述のいずれかに記載のサーボバルブの制御装置を備えたことを特徴とする試験装置である。
【0045】
このように構成することによって、ディザー信号のレベルを自動で判定することができ、適切なディザー信号のレベルを設定するのに、煩雑な作業が不要で、時間と手間を要せず、正確に適切なディザー信号のレベルを設定することができ、コストも低減することが可能な試験装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、ディザーレベル(x)に対して、偏差信号(e)の歪み率(y)を計算し、ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データを得て、前記相関関係データにより、相関関係の変曲点を求めて、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とし、限界ディザーレベル(Sx)以上の基準ディザー信号(Ds)を、操作量信号(Mv)に重畳して、サーボバルブに指令信号として出力している。
【0047】
従って、ディザー信号のレベルを自動で判定することができ、適切なディザー信号のレベルを設定するのに、煩雑な作業が不要で、時間と手間を要せず、正確に適切なディザー信号のレベルを設定することができ、コストも低減することが可能である。
【0048】
また、本発明によれば、ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データから、基準ディザー信号(Ds)における歪み率(y)の劣化基準歪み率閾値(Dy)を求めて、劣化基準歪み率閾値(Dy)において、サーボバルブのメンテナンス時期情報を発するので、サーボバルブのメンテナンス時期を正確に把握することができ、メンテナンス時期を超えてサーボバルブを使用するおそれがなく、正確な試験を実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【0051】
図1は、本発明の試験装置を、試験の一例として、加振試験を行う加振試験装置に適用した実施例を示す概略図、
図2は、
図1の試験装置本体の使用状態を説明する正面図、
図3は、本発明の試験装置の概略を示すブロック図、
図4は、本発明のサーボバルブの制御方法の概略を説明する概略図、
図5は、本発明のサーボバルブの制御方法の概略を説明するフローチャート、
図6は、本発明のサーボバルブの制御方法の概略を説明するディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の関係を示すグラフである。
【0052】
図1において、符号10は、全体で本発明の試験装置を示している。
【0053】
図1〜
図2に示したように、本発明の試験装置10は、試験を行うための試験装置本体12を備えている。この試験装置本体12は、この実施例では、試験の一例として、加振試験を行う加振試験装置から構成されている。
【0054】
図1に示したように、試験装置本体12は、架台フレーム14を備えており、この架台フレーム14の下方にシリンダからなるアクチュエータ16を備えている。このアクチュエータ16には、例えば、自動車などの車輛のショックアブソーバなどのテストピースAを載荷するためのピストン18と、変位を検出するための変位検出器20とを備えている。
【0055】
また、架台フレーム14の上方には、上方フレーム28が立設されており、この上方フレーム28には、上方フレーム28と架台フレーム14との間に、ガイドロッド22が設けられている。
【0056】
そして、ガイドロッド22の下方と上方フレーム28との間には、ボールネジ24が設けられており、ボールネジ24により、ピストン18に対して、上下動可能なクロスヘッド26が設けられている。また、このクロスヘッド26には、ピストン18と対峙するように、荷重検出器30が設けられている。
【0057】
また、
図1に示したように、本発明の試験装置10は、試験装置本体12に接続され、試験装置本体12に対して、試験条件などの設定、試験の実施、試験データの収集などを行うための試験制御装置として機能する制御装置32を備えている。
【0058】
この実施例では、制御装置32は、試験条件などの設定画面、試験データなどの表示を行うためのCRT35と、制御装置本体36と、キーボード38と、マウス40を備えている。従って、この制御装置32には、例えば、ハードディスクから構成される内部メモリーが内蔵されている。なお、制御装置本体36に、操作用のパソコンが接続されている場合がある。
【0059】
そして、試験装置本体12のアクチュエータ16の変位検出器20と、制御装置本体36が接続されるとともに、試験装置本体12の荷重検出器30と、制御装置本体36が接続されている。
【0060】
一方、本発明の試験装置10では、制御装置32の制御装置本体36に接続されるとともに、試験装置本体12のアクチュエータ16に接続されたアクチュエータ動力源44が設けられている。
【0061】
このように構成される本発明の試験装置10では、以下のように試験が行われる。
【0062】
すなわち、
図2に示したように、ピストン18の上面にテストピースAを載荷して、図示しない駆動機構によって、ボールネジ24により、ピストン18に対してクロスヘッド26を下降して、ピストン18の上面とクロスヘッド26の下面との間にテストピースAを挟持する。
【0063】
そして、制御装置32に予め記憶されたプログラムに基づいて、試験条件などの設定、試験の実施、試験データの収集が行われるようになっている。
【0064】
すなわち、
図1に示したように、制御装置32の制御によって、制御装置32に接続されたアクチュエータ動力源44を所定の条件で駆動させる。これにより、アクチュエータ動力源44に接続されたアクチュエータ16が所定の条件で駆動して、テストピースAに対して一定の振動を与えるようになっている。
【0065】
そして、アクチュエータ16に設けられた変位検出器20によって、テストピースAの変位が検出され、テストピースAの変位データが、制御装置32の制御装置本体36に入力されるようになっている。一方、クロスヘッド26に設けられた荷重検出器30によって、テストピースAにかかる荷重が検出され、テストピースAにかかる荷重データが、制御装置32の制御装置本体36に入力されるようになっている。
【0066】
また、これらの試験データに基づいて、制御装置32の制御装置本体36のプログラムに基づいて、制御装置32からアクチュエータ動力源44に、フィードバック指令信号が出力され、アクチュエータ動力源44を所定の条件で駆動させるようになっている。
【0067】
ところで、本発明の試験装置10では、制御装置32において、下記のような制御が行われるように構成されている。
【0068】
すなわち、本発明の試験装置10では、
図3に示したように、アクチュエータ動力源44内にサーボバルブ50を備えている。そして、試験装置本体12には、試験装置本体12を制御するために用いられるサーボバルブ50が接続されている。
【0069】
そして、試験装置本体12のアクチュエータ16の変位検出器20、サーボバルブ50は、それぞれ制御装置32に接続されている。
【0070】
ところで、サーボバルブ50においては、スラッジの影響でサーボバルブ50の動作が円滑に行われないおそれがある。また、動作の初期段階では、静止摩擦の方が動摩擦より大きく、サーボバルブ50の動作が円滑に行われないおそれがある。
【0071】
このため、本発明の試験装置10において、
図4の概略図に示したようにサーボバルブ50の動作をスムーズにする目的で、指令となる電流信号(例えば、周波数50Hzの正弦波信号)に、例えば、周波数500Hz程度のディザー(Dither)信号を重畳する(加える)。
【0072】
すなわち、高周波の微信号であるディザー信号を加えることによって、サーボバルブ50の動きを滑らかにすることができる。
【0073】
なお、この場合、ディザー信号は、設定信号の数十倍の周波数の正弦波または三角波を出力すればよい。また、ディザー信号は、試験の周波数範囲より大きな周波数で、かつ加振機の動作にはディザー信号の成分が現れない信号レベルの範囲で設定する。
【0074】
具体的には、
図4に示したように、制御装置32は、内部信号発生装置34を備えており、この内部信号発生装置34により、所定の周波数、例えば、周波数50Hzの正弦波信号の周波数で、所定のレベルの信号を発生し、設定信号(Sv)として、サーボバルブ50に対して出力している。
【0075】
そして、アクチュエータ16の変位検出器20からの変位信号(Pv)と、設定信号(Sv)の差を求めて、偏差信号(e)としている。
【0076】
この偏差信号(e)を比例ゲイン(Kp)で増幅して、操作量信号(Mv)としている。
【0077】
一方、制御装置32は、ディザー信号発生装置42を備えており、ディザー信号発生装置42により、所定の周波数、例えば、周波数500Hzの周波数で、ディザーレベル(x)のディザー信号(D)を発生させる。
【0078】
このディザー信号(D)を操作量信号(Mv)に重畳して、サーボバルブ50に指令信号として出力するように構成している。
【0079】
しかしながら、ディザー信号(D)を大きなレベルで加えると、加振機である試験装置本体12が反応して、実際の加振機動作において、ディザー信号成分が漏れてしまい、サーボバルブ50の動作をスムーズに行うことができない。そのため、ディザー信号のレベルは、適正範囲に設定しなければならない。
【0080】
このため、本発明では、ディザーレベル(x)に対して、偏差信号(e)の歪み率(y)を計算し、ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データを得て、前記相関関係データにより、相関関係の変曲点を求めて、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とし、限界ディザーレベル(Sx)以上の基準ディザー信号(Ds)を、操作量信号(Mv)に重畳して、サーボバルブに指令信号として出力している。
【0081】
具体的には、
図5に示した本発明のサーボバルブの制御方法の概略を説明するフローチャートに基づいて、制御装置32内においてプログラム制御が行われる。
【0082】
すなわち、
図5に示したように、ステップS1において、初期設定が行われる。
【0083】
具体的には、内部信号発生装置34により、所定の周波数、例えば、周波数50Hzの正弦波信号の周波数で、所定のレベルの信号を発生し、設定信号(Sv)として、サーボバルブ50に対して出力する。
【0084】
また、ディザー信号発生装置42により、ディザー信号(D)の初期値を、所定の周波数、例えば、周波数500Hzの周波数と、ディザーレベル(x)の初期値を設定する。
【0085】
さらに、ディザーレベル(x)の増分(Δx)を設定する。
【0086】
なお、この場合、ディザーレベル(x)の増分(Δx)については、試験装置本体12の種類、規格に応じて適宜設定すれば良く、特に限定されるものではなく、例えば、フルレンジの1%程度となるように、20%程度で20点増加するように設定すればよい。
【0087】
次に、ステップS2において、ディザーレベル設定が行われる。
【0088】
具体的には、ディザー信号(D)のディザーレベル(x)を設定し、このディザー信号(D)を操作量信号(Mv)に重畳して、サーボバルブ50に指令信号として出力する。
【0089】
そして、ステップS3において、ディザーレベル(x)に対して、偏差信号(e)の歪み率(y)を計算する。
【0090】
このディザーレベル(x)に対して、偏差信号(e)の歪み率(y)を計算する方法は、下記のようにして実施される。
【0091】
先ず、ディザーレベル(x)については、ディザー信号は固定周期fの三角波または正弦波を使用し、その振幅を操作量信号(Mv)の最大値を100パーセントとして設定する。従って、単位は[%]で設定されることになる。
次に、設定信号(Sv)に正弦波 Visin(ωt)を与えることによって、変位信号(Pv)が帰ってくるので、偏差信号(e)がPv−Svで求まる。この信号をFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)解析により周波数成分に分解する。
【0092】
すなわち、制御装置32を比例制御に設定し、ディザーレベル(x)を設定し、正弦波Visin(ωt)を入力としてあたえ、制御偏差である偏差信号(e)の波形を観測して、その波形の歪み率(y)を計算する。歪み率(y)の計算は以下の計算式で行う。
【0093】
全高調波歪(THD:Total Harmoinic Distortion)は、正弦波Visin(ωt)を基本波として、基本波の整数倍の周波数信号成分を高調波として、第2〜第N高調波までのレベル比で定義される。ここで、Vは、各周波数成分の実効値をあらわす。
【数1】
これにより、歪み率(y)は、次の式であらわされる。
y= THD×100[%]
【0094】
なお、対象波形をFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)解析により基本波から第N高調波までを求める。
【0095】
このようにして、計算されたディザーレベル(x)に対する偏差信号(e)の歪み率(y)の相関関係データは、図示しないが、制御装置32内の内部記憶メモリーに蓄積されるようになっている。
【0096】
次に、ステップS4において、ディザーレベルアップが行われる。
【0097】
具体的には、ステップS1において設定されたディザーレベル(x)の増分(Δx)に基づいて、ディザーレベル(x)を設定する。
【0098】
さらに、ステップS5において、サンプル終了したか否かの判定が行われる。
【0099】
具体的には、ディザーレベル(x)の増分(Δx)が、指定範囲まで終了したかチェックされる。
【0100】
そして、ディザーレベル(x)の増分(Δx)が、指定範囲まで終了していない場合には、ステップS2に戻り、再び、ディザーレベル設定が行われ、ステップS2〜ステップS5のステップが繰り返される。
【0101】
一方、ステップS5において、ディザーレベル(x)の増分(Δx)が、指定範囲まで終了したと判断された場合には、ステップS6へと進む。
【0102】
次に、ステップS6において、ディザーレベル計算が行われる。
【0103】
すなわち、ディザーレベル(x)に対する偏差信号(e)の歪み率(y)の変曲点を求めてディザーレベルの限界とする。
【0104】
具体的には、制御装置32内の内部記憶メモリーに蓄積された、ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データに基づいて、相関関係データにより、相関関係の変曲点を求めて、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とする。
【0105】
そして、限界ディザーレベル(Sx)以上の基準ディザー信号(Ds)を、操作量信号(Mv)に重畳してサーボバルブ50に指令信号として出力するようになっている。
【0106】
すなわち、以上の制御フローにより得られたディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データをグラフに示すと、
図6のグラフのようになり、以下のような特性を示す。
【0107】
すなわち、横軸は、ディザー信号のレベルであるディザー信号(D)のディザーレベル(x)、縦軸は、偏差信号(e)の歪み率(y)である。
【0108】
この結果から明らかなように、明確な変曲点Sが現れる。したがって、この結果を処理することにより、容易に変曲点のディザーレベル、すなわち、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)を検出することができる。
【0109】
このディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)の値以上のディザーレベル(x)を設定すれば、適正なシステム設定とすることができる。
【0110】
なお、図示しないが、ディザーレベル(x)をさらに大きくすると、ディザー信号(D)自身が透過して、偏差信号(e)の歪み率(y)が大きくなっていく。
【0111】
従って、この安定域のレベル状態となる範囲で、ディザー信号(D)のディザーレベル(x)を設定すれば良い。
【0112】
また、変曲点のディザーレベル、すなわち、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)を検出する方法としては、周知の方法を用いることができる。
【0113】
例えば、相関関係データの全データを直線近似して、直線を求め、この直線と各データの差が最大となるデータを変曲点とする。
【0114】
そして、変曲点付近で相関関係データを2分して、この2分した相関関係データをそれぞれ直線近似して、その交点を、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とするようにすればよい。
【0115】
また、例えば、歪み率(y)をブロック化し、ヒストグラムを作成し、最もデータ数の多いブロックとそれ以外のブロックに2分してそれぞれ直線近似して、その交点をディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とするようにすればよい。
【0116】
なお、上記のように、制御装置32内での自動計算とともに、CRT35上でグラフ表示をしてもよいが、制御装置32内で自動計算のみ行うようにすることももちろん可能である。
【0117】
このように、本発明によれば、ディザーレベル(x)に対して、偏差信号(e)の歪み率(y)を計算し、ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データを得て、前記相関関係データにより、相関関係の変曲点を求めて、ディザー信号(D)の限界ディザーレベル(Sx)とし、限界ディザーレベル(Sx)以上の基準ディザー信号(Ds)を、操作量信号(Mv)に重畳して、サーボバルブ50に指令信号として出力している。
【0118】
従って、ディザー信号のレベルを自動で判定することができ、適切なディザー信号のレベルを設定するのに、煩雑な作業が不要で、時間と手間を要せず、正確に適切なディザー信号のレベルを設定することができ、コストも低減することが可能である。
【0119】
さらに、従来の従来の試験装置100では、サーボバルブ140のメンテナンスを行う時期について、重畳するディザー信号のレベルを大きくしても、サーボバルブ140の動作が改善されない時に、サーボバルブ140のメンテナンスを行うタイミングとしているが、このタイミングについて基準がない。
【0120】
従って、サーボバルブ140のメンテナンス時期を正確に把握することができず、メンテナンス時期を超えてサーボバルブ140を使用するおそれがあり、その結果、正確な試験を実施できないおそれがあった。
【0121】
このため、本発明では、例えば、
図6のグラフの点線で示したように、ディザー信号(D)のディザーレベル(x)に対する歪み率(y)の相関関係データから劣化のデータを蓄積して、基準ディザー信号(Ds)における歪み率(y)の劣化基準歪み率閾値(Dy)を求めて、劣化基準歪み率閾値(Dy)において、サーボバルブのメンテナンス時期情報(例えば、アラーム、CRT35上での警告表示など)を発するようにすればよい。
【0122】
このように構成することによって、サーボバルブ50のメンテナンス時期を正確に把握することができ、メンテナンス時期を超えてサーボバルブ50を使用するおそれがなく、正確な試験を実施できる。
【0123】
なお、図示しないが、変位信号(Pv)、設定信号(Sv)、偏差信号(e)、ディザー信号(D)などは、アナログ信号を用いてもよいが、AD変換器を介して、デジタル信号化して用いることも可能である。
【0124】
また、上記実施例では、試験装置本体12と、制御装置32と、アクチュエータ動力源44を別体のもので構成して、本発明の試験装置10としたが、これらが一体となった試験装置10とすることも可能である。
【0125】
さらに、上記実施例では、サーボバルブ50をアクチュエータ動力源44内に備えるように構成したが、サーボバルブ50を試験装置本体12に付設して設けることも可能である。
【0126】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の試験装置10は、試験装置として、例えば、自動車部品(駆動系や足回りの金属部品やゴム部品、ショックアブソーバなど)などの機械部品について、これらの自動車完成品などの完成品について、さらに、土木関係(橋桁、橋梁や建物用の免震ゴムなど)の構造物について、材料試験、振動試験、疲労試験、特性試験などを行うための材料試験装置、振動試験装置、疲労試験装置など各種の試験装置に適用することが可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。