特許第6042693号(P6042693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042693
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ポインティングベクトル計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G01R29/08 D
   G01R29/08 F
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-233031(P2012-233031)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2014-85176(P2014-85176A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】深川 康弘
(72)【発明者】
【氏名】河野 秀一
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−225876(JP,A)
【文献】 特開2006−047297(JP,A)
【文献】 特開2006−098158(JP,A)
【文献】 特開2003−004783(JP,A)
【文献】 今村雄介、肖鳳超、村野公俊、上芳夫,「近傍磁界測定による電界及びポインティングベクトル分布の推定」,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2004年 7月22日,Vol.104 No.231,p.41-46,EMCJ2004−44
【文献】 平山裕、林秀和、菊間信良、榊原久二男,「近傍磁界測定によるポインチングベクトル・波数ベクトル分布の推定法」,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2006年 6月15日,Vol.106 No.110,p.19-24,A・P2006−37
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポインティングベクトルの計測対象となる地点である計測ポイントを通り互いに直交する三つの軸をX軸,Y軸,Z軸として、前記計測ポイントを挟んで前記Y軸上で対向する2地点及び前記Z軸上で対向する2地点のそれぞれに、前記X軸方向の磁界を検出する磁界センサであるX軸センサ(23X,24X,25X,26X)を、前記計測ポイントを挟んで前記Z軸上で対向する2地点及び前記X軸上で対向する2地点のそれぞれに、前記Y軸方向の磁界を検出する磁界センサであるY軸センサ(21Y,22Y,25Y,26Y)を、前記計測ポイントを挟んで前記X軸上で対向する2地点及び前記Y軸上で対向する2地点のそれぞれに、前記Z軸方向の磁界を検出する磁界センサであるZ軸センサ(21Z,22Z,23Z,24Z)を配置することで構成された検出部(2)と、
前記計測ポイントにおける各軸方向の磁界成分について、前記X軸センサの検出結果からX軸方向の成分を、前記Y軸センサの検出結果からY軸方向の成分を、前記Z軸センサの検出結果からZ軸方向の成分を求める磁界成分算出手段(5,S160)と、
前記計測ポイントにおける各軸方向の電界成分について、前記Y軸センサ及び前記Z軸センサの検出結果からX軸方向の成分を、前記Z軸センサ及び前記X軸センサの検出結果からY軸方向の成分を、前記X軸センサ及び前記Y軸センサの検出結果からZ軸方向の成分を、マクスウェル方程式から導出される磁界と電界の関係を利用して求める電界成分算出手段(5,S170)と、
前記磁界成分算出手段での算出結果である磁界ベクトルと前記電界成分算出手段での算出結果である電界ベクトルの外積を求めることで、前記計測ポイントにおけるポインティングベクトルを求めるポインティングベクトル算出手段(5,S180)と、
を備え
前記検出部は、立方体に形成した誘電体からなる保持部(20)を備え、
前記計測ポイントを挟んで前記磁界センサが配置される同じ軸上の2地点は、前記計測ポイントまでの距離が等しくなるように、前記磁界センサは、前記保持部が有する各平面の中心にそれぞれ保持されていることを特徴とするポインティングベクトル計測装置。
【請求項2】
前記検出部を移動可能に保持し、前記検出部の3次元空間内での位置を制御する位置制御手段(3)を備えることを特徴とする請求項1に記載のポインティングベクトル計測装置。
【請求項3】
前記磁界成分算出手段は、
着目する軸方向の磁界成分を検出する前記磁界センサでの検出結果の平均値を、前記計測ポイントにおける前記着目軸方向の磁界成分とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポインティングベクトル計測装置。
【請求項4】
前記電界成分算出手段は、
前記X軸,Y軸,Z軸のうち一つの軸方向を着目軸方向、該着目軸方向に対して直交する二つの軸方向を第1直交方向及び第2直交方向として、前記第1直交方向及び前記第2直交方向の磁界成分を検出する磁界センサでの検出結果に基づき、前記第1直交方向の磁界成分に対する第2直交方向の偏微分値、及び前記第2直交方向の磁界成分に対する前記第1直交方向の偏微分値を求め、両偏微分値の差を、前記計測ポイントにおける前記着目軸方向の電界成分とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のポインティングベクトル計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポインティングベクトルを計測するポインティングベクトル計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器において電磁的な相互干渉による誤作動等の原因となる部位(ノイズ源)を特定したり、アンテナの指向性や電磁エネルギーの伝搬経路を特定したりする場合、電磁エネルギーの流れを示すポインティングベクトルを計測することが有効である。
【0003】
このポインティングベクトルは、磁界の強度・位相を表す磁界ベクトルと、電界の強度・位相を表す電界ベクトルの外積で求められるベクトルである。このためポインティングベクトルを計測する場合、一般的には、磁界及び電界を個別に計測し、その計測結果を演算処理することが行われている。
【0004】
なお、磁界計測用のプローブ(センサ)としては、例えば、シールデッドループコイル等が用いられ、また、電界計測用のプローブとしては、例えば、モノポールアンテナ等が用いられている。
【0005】
ところで、電界計測用のプローブは、サイズを小さくすることが困難であったり、磁界計測プローブと比較して、広い周波数帯域を確保することが困難であったり、更には、その存在が被測定電磁界を攪乱してしまうため、精度のよい計測が困難であったりすることが知られている。
【0006】
これに対して、電界を直接計測するのではなく、測定対象の表面電位の電位分布を求め、その電位分布から電界成分を推定し、その電界の推定結果と、磁界計測プローブでの計測結果からポインティングベクトルを計算する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4635544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載された従来手法では、計測によって得られる表面電位分布から任意の空間の電界ベクトルを求める際に使用する電界成分推定の手順が複雑であるという問題や、磁界計測用と電位計測用とで2種類のプローブ(センサ)を使用する必要があるという問題があった。更に、従来手法では、測定対象(表面電位の計測対象)となる物体が存在しない空間では適用することができないという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために、簡易な構成でポインティングベクトルを精度よく計測するポインティングベクトル計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のポインティングベクトル計測装置では、ポインティングベクトルの計測対象となる地点を計測ポイントとして、計測ポイント周辺の磁界を検出する検出部が次のように構成されている。
【0011】
即ち、ポインティングベクトルの計測ポイントを通り互いに直交する三つの軸をX軸,Y軸,Z軸として、計測ポイントを挟んでY軸上で対向する2地点及びZ軸上で対向する2地点のそれぞれ(合計4地点)に配置され、X軸方向の磁界を検出する磁界センサであるX軸センサと、計測ポイントを挟んでZ軸上で対向する2地点及びX軸上で対向する2地点のそれぞれ(合計4地点)に配置され、Y軸方向の磁界を検出する磁界センサであるY軸センサと、計測ポイントを挟んでX軸上で対向する2地点及びY軸上で対向する2地点のそれぞれ(合計4地点)に配置され、Z軸方向の磁界を検出する磁界センサであるZ軸センサを備えている。
【0012】
そして、磁界成分算出手段は、計測ポイントにおける各軸方向の磁界成分として、4個あるX軸センサの検出結果からX軸方向の成分を、4個あるY軸センサの検出結果からY軸方向の成分を、4個あるZ軸センサの検出結果からZ軸方向の成分を求める。
【0013】
この場合、同じ軸方向を検出する4個のセンサの検出結果を全て使用してもよいし、同一軸上に配置された2個のセンサの検出結果だけを使用してもよい。また、算出方法としては、単純に平均した値を使用すればよいが、計測ポイントから各センサまでの距離が互いに異なっている場合は、その距離に応じて加重平均した値を使用してもよい。
【0014】
また、電界成分算出手段は、計測ポイントにおける各軸方向の電界成分として、Y軸センサ及びZ軸センサの検出結果からX軸方向の成分を、Z軸センサ及びX軸センサの検出結果からY軸方向の成分を、X軸センサ及びY軸センサの検出結果からZ軸方向の成分を、マクスウェル方程式から導出される磁界と電界の関係を利用して求める。
【0015】
即ち、マクスウェル方程式によれば、電界,磁界をサイン波で記述することができ、かつ電流源がない(即ち、電流密度がゼロである)空間では、磁界の強度及び位相を表す磁界ベクトルHと電界の強度及び位相を表す電界ベクトルEとは(1)に示す関係を有し、その左辺は、(2)式で表すことができる。
【0016】
【数1】
【0017】
従って、X軸方向の磁界成分HxをY軸方向及びZ軸方向に偏微分した値と、X軸方向の磁界成分HyをZ軸方向及びX軸方向に偏微分した値と、Z軸方向の磁界成分HzをX軸方向及びY軸方向に偏微分した値が得られれば磁界の計測結果から電界を推定することができる。
【0018】
例えば、X軸方向の磁界成分HxをY軸方向に偏微分した値は、Y軸に配置されたX軸センサからの検出結果、及び計測ポイントからX軸センサまでの距離を用いて求めることができ、その他の偏微分値も同様であるため、検出部を構成する12個の磁界センサの検出結果から計測ポイントにおける各軸方向の電界成分を求めることができる。
【0019】
そして、ポインティングベクトル算出手段が、磁界成分算出手段での算出結果である磁界ベクトルと電界成分算出手段での算出結果である電界ベクトルの外積を求めることで、計測ポイントにおけるポインティングベクトルを求める。
【0020】
このように本発明のポインティングベクトル計測装置によれば、電界センサや電位センサを使用することなく、磁界センサによる計測結果だけを使用してポインティングベクトルを求めており、電界センサによって被測定電磁界が攪乱されることがないため、精度のよい計測結果を得ることができ、しかも、電位センサの検出結果から電界を推定する処理と比較して簡易な処理で電界を求めることができ、装置の処理負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ポインティングベクトル計測装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】検出部の構成及び計測ポイントと磁界センサの位置関係を示す説明図である。
図3】制御部が実行する計測処理の内容を示すフローチャートである。
図4】測定結果を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<全体構成>
本発明が適用されたポインティングベクトル計測装置1は、図1に示すように、複数の磁界センサによって構成された検出部2と、検出部2を移動可能に保持し、検出部2の3次元空間内での位置を制御するステージ3と、ステージ3と一体に設けられ、検出部2に対して信号を入出力するためのセンサI/F部4と、検出部2から出力される検出信号をセンサI/F部4を介して取得して、取得した検出信号の信号処理を実行する計測部5と、ステージ3や計測部5の動作を制御する共に、計測部5で実行された信号処理の結果に基づいてポインティングベクトルを求める計測処理を実行する制御部6を備えている。
【0023】
<検出部>
検出部2は、図2に示すように、立方体に形成された誘電体からなる保持部20と、保持部20が有する6個の平面の中心付近に固定された6個のセンサ対21〜26によって構成されている。保持部20を構成する誘電体としては、例えば、発泡スチロールを用いることができる。但し、これに限るものではなく、大気とほぼ等しい誘電率を有する物体であればよい。
【0024】
センサ対21〜26は、それぞれ互いに直交する二つの方向の磁界を検出するように組み合わされた一対の磁界センサからなる。磁界センサは、例えば、シールデッドループコイルからなる。なお、図2では、センサ対21〜26を直交する二つの円板で表現しているが、これらは実際の形状を表すものではなく、円板の面と直交する方向の磁界を検出することを表している。
【0025】
以下では、保持部20の形状である立方体の中心を、ポインティングベクトルの測定対象となる地点(「計測ポイント」という)Pとし、計測ポイントPを通り、かつ、それぞれが立方体の各外面の中心を貫通する互いに直交した3軸をX軸,Y軸,Z軸と呼ぶものとする。
【0026】
そして、センサ対21,22は、計測ポイントPを挟んでX軸上で対向し、かつ計測ポイントPからの距離がΔx/2となる位置に配置されるように保持部20に固定されている。そして、センサ対21,22を構成する各一対の磁界センサは、それぞれ一方がY軸方向の磁界成分を検出し(以下、Y軸センサ21Y,22Yという)、他方がZ軸方向の磁界成分を検出する(以下、Z軸センサ21Z,22Zという)向きに設定されている。
【0027】
また、センサ対23,24は、計測ポイントPを挟んでY軸上で対向し、かつ計測ポイントPからの距離がΔy/2となる位置に配置されるように保持部20に固定されている。そして、センサ対23,24を構成する各一対の磁界センサは、それぞれ一方がZ軸方向の磁界成分を検出し(以下、Z軸センサ23Z,24Zという)、他方がX軸方向の磁界成分を検出する(以下、X軸センサ23X,24Xという)向きに設定されている。
【0028】
また、センサ対25,26は、計測ポイントPを挟んでZ軸上で対向し、かつ計測ポイントPからの距離がΔz/2となる位置に配置されるように保持部20に固定されている。そして、センサ対25,26を構成する各一対の磁界センサは、それぞれ一方がX軸方向の磁界成分を検出し(以下、X軸センサ25X,26Xという)、他方がY軸方向の磁界成分を検出する(以下、Y軸センサ25Y,26Yという)向きに設定されている。
【0029】
つまり、計測ポイントPの座標が(i,j,k)で表されるとすると、センサ対21の座標は(i+Δx/2,j,k)、センサ対22の座標は(i−Δx/2,j,k)、センサ対23の座標は(i,j+Δy/2,k)、センサ対24の座標は(i,j−Δy/2,k)、センサ対25の座標は(i,j,k+Δz/2)、センサ対26の座標は(i,j,k−Δz/2)となる。
【0030】
但し、本実施形態では、計測ポイントPと各センサ対21〜26の距離を規定するΔx,Δy,Δzは、全て同じ大きさであり、また、計測対象となる電磁波の波長をλとして、λ/20程度に設定されている(Δx=Δy=Δz≒λ/20)。例えば、計測対象が300MHz帯の電磁波である場合は、Δx,Δy,Δz(即ち、保持部20の1辺の長さ)は5cm程度となる。
【0031】
<センサI/F部>
センサI/F部4は、制御部6からの指令に従って、検出信号の取得対象となる磁界センサを切り替えるスイッチ、スイッチを介して取得した検出信号を増幅する増幅器等で構成されている。なお、スイッチは、センサ対21〜26のいずれか一つを選択し、選択したセンサ対を構成する二つの磁界センサから同時に検出信号を取得するように構成されている。
【0032】
<計測部>
計測部5は、センサI/F部4のスイッチによって選択された磁界センサから出力される検出信号を順次周波数解析する周知のスペクトルアナライザからなる。なお、計測部5は、2チャンネルを有しており、センサI/F部4から供給される二つの検出信号を並列に処理するように構成されている。
【0033】
<制御部>
制御部6は、CPU,ROM,RAMを中心に構成された周知のマイクロコンピュータからなり、ステージ3を駆動すると共に、計測部5を作動させてポインティングベクトルの計測を行う計測処理を実行する。
【0034】
<<計測処理>>
計測処理の内容を図3に示すフローチャートに沿って説明する。
本処理は、図示しない操作部を介して、指令が入力されると起動する。
【0035】
本処理が起動すると、まず、ステージ3によって検出部2を移動させることが可能な3次元空間の範囲内に予め設定された複数の検出ポイントから一つを選択し(S110)、その選択した検出ポイントと検出部2の計測ポイントPとが一致するように、ステージを駆動して検出部2を移動させる(S120)。
【0036】
次に、検出部2を構成するセンサ対21〜26の一つを選択して、その選択したセンサ対を構成する一対の磁界センサから検出信号が得られるようにセンサI/F部4を設定し(S130)、その状態で、計測部5を作動させ、計測部5から検出信号を信号処理した結果、即ち、選択されたセンサ対で計測された2方向の磁界成分を取得する(S140)。
【0037】
その後、全てのセンサ対についてS140の処理が実行されたか否かを判断し(S150)、計測が実行されていないセンサ対があれば、S130に戻る。一方、全てのセンサ対についてS140の処理が実行されていれば、各センサ対21〜26から得られた磁界成分の計測結果に基づいて計測ポイントでの磁界の強度及び位相を表す磁界ベクトルHの算出(S160)及び計測ポイントでの電界の強度及び位相を表す電界ベクトルEの算出(S170)を行い、更にこれら磁界ベクトルH及び電界ベクトルEを用いてポインティングベクトルSの算出(S180)を行う。
【0038】
なお、磁界ベクトルHの算出は、X軸方向の磁界成分Hxについては、(3)式に示すように、X軸センサ23X,24X,25X,26Xでの計測結果の平均値を、Y軸方向の磁界成分Hyについては、(4)式に示すように、Y軸センサ21Y,22Y,25Y,26Yでの計測結果の平均値を、Z軸方向の磁界成分Hzについては、(5)式に示すように、Z軸センサ21Z,22Z,23Z,24Zでの計測結果の平均値を求めることによって行う。
【0039】
【数2】
【0040】
ここでは、4個の平均を求めているが、同じ軸上に配置された二つのセンサの平均値を求めるようにしてもよい。例えば、X軸方向の磁界成分Hxについては、Y軸上に位置するX軸センサ23X,24Xでの計測結果の平均値((3)式の右辺第1項及び第2項の平均値)、又はZ軸上に位置するX軸センサ25X,26Xでの計測結果の平均値((3)式の右辺第3項及び第4項の平均値)を用いてもよい。
【0041】
一方、電界ベクトルEの算出は、X軸方向の電界成分Exについては(6)式、Y軸方向の電界成分Eyについては(7)式、Z軸方向の電界成分Ezについては(8)式の関係を用いて行う。
【0042】
【数3】
【0043】
そして、ポインティングベクトルSの算出は、(9)式に示すように、磁界ベクトルHと電界ベクトルEの外積を求めることで行う。具体的には、ポインティングベクトルSの各軸方向の成分Sx,Sy,Szを(10)〜(12)式を用いて算出する。但し、「*」は共役複素数を表す記号である。
【0044】
【数4】
【0045】
ポインティングベクトルSの算出が終了すると、全ての検出ポイントについてS120〜S180の処理を実行済みであるか否かを判断し(S190)、未処理の検出ポイントがあればS110に戻り、全ての検出ポイントについて処理を実行済みであれば、計測結果を出力して(S200)、本処理を終了する。
【0046】
計測結果の出力は、例えば、単にデータを所定のメモリ等に書き込むようにしてもよいし、例えば、図4に示すように、検出ポイント毎にポインティングベクトルの大きさと向きを線の長さと傾きによって表した画面を、図示しない表示装置にて表示するようにしてもよい。但し、図4におけるX軸,Y軸,Z軸は、図2で定義したものとは異なり、ステージ3によって検出部2を移動させることができる領域の位置を決定するための座標系である。
【0047】
<効果>
以上説明したように、ポインティングベクトル計測装置1では、電界センサや電位センサを使用することなく、磁界センサによる計測結果だけを使用してポインティングベクトルを求めている。
【0048】
従って、ポインティングベクトル計測装置1によれば、電界センサによって被測定電磁界が攪乱されることがないため、精度のよい計測結果を得ることができ、しかも、電位センサの検出結果から電界を推定する処理と比較して簡易な処理で磁界の計測結果から電界を求めることができるため、装置の処理負荷を軽減することができる。
【0049】
<他の実施形態>
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、検出部2を構成する保持部20として、立方体に形成されたものを用いているが、球体や直方体等であってもよい。
上記実施形態では、計測ポイントPからセンサ対21〜26までの距離を全て等距離としているが、それぞれ異なっていてもよい。この場合、各軸方向の磁界成分を求める際に、単純平均値を用いるのではなく、距離に応じて重み付けした加重平均値を用いればよい。
【0051】
上記実施形態では、計測部5において検出信号を処理するチャンネルが二つである場合について説明したが、チャンネル数は1個でも3個以上でもよい。特に、計測部5が、検出部2を構成する磁界センサの数と同数のチャンネルを有している場合、センサI/F部4のスイッチは必要ないため省略してもよい。
【0052】
上記実施形態では計測部5としてスペクトルアナライザを使用しているが、周知のネットワークアナライザ等を使用して構成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…ポインティングベクトル計測装置 2…検出部 3…ステージ 4…センサI/F部 5…計測部 6…制御部 20…保持部 21〜26…センサ対 23X,24X,25X,26X…X軸センサ 21Y,22Y,25Y,26Y…Y軸センサ 21Z,22Z,23Z,24Z…Z軸センサ
図1
図2
図3
図4