(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042701
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】リードフレームの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20161206BHJP
【FI】
H01L33/62
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-250328(P2012-250328)
(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-99496(P2014-99496A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】石橋 貴弘
【審査官】
百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−028757(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/150824(WO,A1)
【文献】
特開2004−335740(JP,A)
【文献】
特開2012−212850(JP,A)
【文献】
特開2012−089830(JP,A)
【文献】
特開2012−146816(JP,A)
【文献】
特開平5−55429(JP,A)
【文献】
特開平3−177059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
C25D 5/00−7/12
H01L 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属条材に外枠とその内側にあるリードフレームのパターンを形成してリードフレーム条材を作成する工程と、
前記リードフレーム条材における前記リードフレームの上面のみに部分メッキを施す工程と、
前記部分メッキの上面とともに前記リードフレーム条材の全面に高光沢銀メッキを施す工程と、
を含んで成ることを特徴とするリードフレームの製造方法。
【請求項2】
前記リードフレームの上面に施される部分メッキが、無光沢銀メッキ、半光沢銀メッキ、高光沢銀メッキのうち、何れか1つであることを特徴とする請求項1記載のリードフレームの製造方法。
【請求項3】
前記高光沢銀メッキが、1.0〜2.0の光沢度(GAM値)であることを特徴とする請求項1記載のリードフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレームの製造方法に関し、詳しくはLEDパッケージ用のリードフレームを製造するための方法に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、
図5に示す如き構成のLEDパッケージ、詳しくは、QFNタイプ(Quad Flat Non-leaded Package)と称されるLEDパッケージが広く提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このLEDパッケージAは、リードフレームLFの上面にLEDチップCが搭載され、該LEDチップCと上記リードフレームLF(リード部LFa、チップ搭載部LFb)とは、ボンディングワイヤW,Wを介して互いに接続され、上記LEDチップCの周囲には白色樹脂によってリフレクタ部Rが形成されているとともに、上記LEDチップCは透明樹脂から成る透光部Hによってモールドされている。
【0004】
ここで、上記リードフレームLF(リード部LFa、チップ搭載部LFb)の表面には、導体部分の酸化を防止するという主たる機能と併せ、LEDチップCからの発光を殆ど反射させることにより、LEDパッケージAにおける発光出力の低下を防止するべく、特に高光沢銀メッキSを用いた被覆が為されている。
【0005】
上述したLEDパッケージAを構成しているリードフレームLFを製造するには、先ず、
図6(a)に示す如く、例えば銅材等の薄板から成る金属条材Mを用意する。
【0006】
次いで、
図6(b)に示す如く、上記金属条材Mに対してプレス加工またはエッチング加工により、個々のリードフレームLFにおけるパターンを形成、詳しくは、複数のリードフレームLFをマトリクス状に配置したリードフレーム群LUを形成して、リードフレ
ーム条材LMを作成する。
【0007】
こののち、
図6(c)に示す如く、上記リードフレーム条材LMの全面に亘って高光沢銀メッキSを施して完成となる。
【0008】
因みに、
図7に示す如く、上記リードフレーム条材LMは、リード部LFaとチップ搭載部LFbとから成るリードフレームLFが縦横に配列形成され、隣り合うリードフレームLF同士や、リードフレームLFと外枠Lfとは、複数のタイバーLt、Lt…を介して互いに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−146524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記LEDパッケージAを構成するリードフレームLFの表面に施されている高光沢銀メッキSは、所望する十分な光沢度を確保しながら、リードフレーム条材LMにおける銅の拡散を防止するために、通常のメッキよりも厚い膜厚ts(
図5参照)を必要とせざるを得ない。
【0011】
また、上記高光沢銀メッキは、部分メッキした場合、光沢にムラが生じたり、光沢度が低下する虞れがあるので、リードフレームLFの全面に亘って、同じ膜厚でメッキ加工せざるを得ない。
【0012】
このため、
図8において明示する如く、光沢度の確保やリードフレーム条材LMの銅の拡散防止等、機能上において高光沢銀メッキSに膜厚を必要とする、リードフレームLFの上面(LEDチップの搭載面)は必然としても、例えば実装時にハンダ濡れ性を満足するメッキ膜厚が有れば十分なリードフレームLFの裏面や、外枠Lf等のように抑もメッキの必要のない部位にも、リードフレームLFの上面と同等の膜厚tsでメッキ加工が為されることで、リードフレームLFの製造に際して貴金属を含む銀メッキを多く使用せざるを得ず、もってリードフレームLFの製造コスト、延いてはLEDパッケージの製造コストの徒らな高騰を招来する虞れがあった。
【0013】
本発明の目的は上記実状に鑑みて、製造時における銀メッキの使用量を可及的に抑制す
ることによって、貴金属を含む銀メッキの使用に起因する製造コストの高騰を未然に防止
し得るリードフレームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するべく、本願発明に関わるリードフレームの製造方法は、金属条材に
外枠とその内側にあるリードフレームのパターンを形成してリードフレーム条材を作成する工程と、前記リードフレーム条材における前記リードフレームの上面のみに部分メッキを施す工程と、前記部分メッキの上面とともに前記リードフレーム条材の全面に高光沢銀メッキを施す工程と、を含んで成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
上述の如き本願発明に関わるリードフレームの製造方法によれば、リードフレームの上面には部分メッキと高光沢銀メッキとが積層されることで、所望する光沢度を確保しながら、リードフレーム条材の銅の拡散防止等の機能上における十分な膜厚が得られる一方、上記リードフレームの上面以外の部位には高光沢銀メッキのみが施されるので、リードフレームの製造時における銀メッキの使用量が抑えられ、もって製造コストの高騰を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は本発明に係る方法により製造したリードフレームを用いて成るLEDパッケージの外観上面図、(b)は(a)中のb−b線断面図。
【
図2】(a)〜(d)は本発明に係るリードフレームの製造方法を工程順に示したリードフレーム条材(金属条材)の上面図および下面図。
【
図3】
図2(b)の工程において形成される複数のリードフレームを示すリードフレーム条材の要部上面図。
【
図4】(a)は
図2(b)の工程におけるリードフレームを示す
図3中のx−x線断面図、(b)は
図2(c)の工程におけるリードフレームを示す
図3中のx−x線断面図、(c)は
図2(d)の工程におけるリードフレームを示す
図3中のx−x線断面図。
【
図5】(a)は従来のLEDパッケージを示す外観上面図、(b)は(a)中のb−b線断面図。
【
図6】(a)〜(c)は従来のリードフレームの製造方法を工程順に示したリードフレーム条材(金属条材)の上面図および下面図。
【
図7】
図6(b)の工程において形成される複数のリードフレームを示すリードフレーム条材の要部上面図。
【
図8】(a)は
図6(b)の工程におけるリードフレームを示す
図7中のx−x線断面図、(b)は
図6(c)の工程におけるリードフレームを示す
図7中のx−x線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るリードフレームの製造方法について、実施例を示す図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明により製造したリードフレームを用いて成るLEDパッケージ10を示しており、このLEDパッケージ10は、リードフレーム2の上面にLEDチップ11が搭載され、該LEDチップ11と上記リードフレーム2(リード部2A、チップ搭載部2B)とは、ボンディングワイヤ12,12を介して互いに接続され、上記LEDチップ11の周囲には白色樹脂によってリフレクタ部13が形成されているとともに、上記LEDチップ11は透明樹脂から成る透光部14によってモールドされている。
【0019】
上述したLEDパッケージ10を構成するリードフレーム2は、
図2(a)〜(d)に
示す如き工程によって製造される。
【0020】
先ず、
図2(a)に示す如く、例えば銅材等の薄板から成る金属条材1Mを用意し、次いで、
図2(b)に示す如く、上記金属条材1Mに対してプレス加工またはエッチング加工により、個々のリードフレーム2におけるパターンを形成、詳しくは、複数のリードフレーム2をマトリクス状に配置したリードフレーム群1Uを形成し、リードフレーム条材1Lを作成する。
【0021】
ここで、
図3に示す如く、上記リードフレーム条材1Lは、リード部2Aとチップ搭載部2Bとから成るリードフレーム2が縦横に配列形成され、隣り合うリードフレーム2同士や、リードフレーム2と外枠1Fとは、複数のタイバー1T、1T…を介して互いに接
続されている。
【0022】
次いで、
図2(c)に示す如く、リードフレーム条材1Lのリードフレーム群1Uにおける各リードフレーム2の上面、詳しくはリードフレーム2におけるリード部2Aとチップ搭載部2Bとの上面2At、2Bt(
図4参照)のみに、例えば1.0μmの膜厚で部分メッキ3を施す。
【0023】
ここで、上記部分メッキ3の具体例としては、無光沢銀メッキ、半光沢銀メッキ、あるいは高光沢銀メッキの何れか1つのメッキ加工が実施される。
また、上記部分メッキ3の膜厚は、例示した1.0μmに限定されるものではなく、仕様等の条件によって適宜に設定し得ることは言うまでもない。
【0024】
上述した如く、リードフレーム2におけるリード部2Aとチップ搭載部2Bとの上面のみに部分メッキ3を施したのち、
図2(d)に示す如く、上記部分メッキ3の上面とともに、上記リードフレーム条材1Lの全面に亘って、例えば1.0μmの膜厚で高光沢銀メッキ4を施すことによって完成となる。
【0025】
ここで、上記高光沢銀メッキ4は、GAM値で1.0〜2.0の光沢度を有しているが、光沢度が1.0以下では反射率が低下してLEDチップ11の発光を有効利用できず、また光沢度は2.0が限界であることから、1.2〜1.8の光沢度を有していることが更に好ましい。なお、上記無光沢メッキは0〜0.6の光沢度を有し、上記半光沢メッキは0.6〜1.0の光沢度を有している。
【0026】
因みに、“GAM値”とは、GRAPHIC ARTS MANUFACURING 社製の光沢度計を用いた光沢度の指標であり、当業者においては周知であるので詳細な説明は省略する。
また、上記高光沢銀メッキ4の膜厚は、例示した1.0μmに限定されるものではなく、仕様等の条件によって適宜に設定し得ることは言うまでもない。
【0027】
図1に示したLEDパッケージ10は、
図2(d)に示す完成したリードフレーム条材1Lを用い、個々のリードフレーム2におけるリフレクタ13をリードフレーム群1U毎に一体のブロックとして形成するプリモールド工程と、個々のリードフレーム2にLEDチップ11を搭載するチップ搭載工程と、ボンディングワイヤ12を介してLEDチップ11とリードフレーム2とを接続するワイヤボンディング工程と、LEDチップ11を透光部14でモールドする透光部モールド工程とを経たのち、ダイシング工程において各々のLEDパッケージ10に個片化することで製品として完成する。
【0028】
ここで、
図4において明示する如く、リードフレーム条材1Lにおけるリードフレーム2(リード部2A、チップ搭載部2B)の上面2At、2Btには、部分メッキ3と高光沢銀メッキ4とが積層されることによって、所望する光沢度を確保しながら、リードフレーム条材1Lにおける銅の拡散を防止するために十分な膜厚t1、すなわち従来のリードフレームLFに形成された高光沢銀メッキSの膜厚ts(
図4参照)と同等の膜厚を有するメッキ層が形成されることとなる。
【0029】
一方、上記リードフレーム2の上面2At、2Bt以外の部位、詳しくは、実装時にハンダ濡れ性を満足するメッキ膜厚が有れば十分なリードフレーム2の裏面や、外枠1F等のように抑もメッキの必要のない部位には、高光沢銀メッキ4のみが施されることとなり、その膜厚t2は上述したリードフレーム2の上面2At、2Btにおけるメッキ層の膜
厚t1よりも薄いものとなることは勿論である。
【0030】
このように、
図1〜
図4に示した実施例によれば、リードフレーム2(リード部2A、チップ搭載部2B)の上面2At、2Btには、部分メッキ3と高光沢銀メッキ4とが積層されることによって、所望する光沢度を確保しながら、リードフレーム条材1Lの銅の拡散防止等の機能上における十分な膜厚t1のメッキ層が得られる一方、上記リードフレーム2の上面2At、2Bt以外の部位には、高光沢銀メッキ4のみが施されることによって、上記膜厚t1よりも薄い膜厚t2のメッキ層が形成されることとなる。
【0031】
かくして、
図5〜
図8に示した如く、リードフレーム条材LMの全面に対して、高光沢銀メッキSを厚い膜厚tsで形成していた従来の製造方法に比べて、本願発明に係る製造方法によれば、リードフレームの製造時における銀メッキの使用量が抑えられ、もって製造コストの高騰を未然に防止することが可能となる。
【0032】
なお、本実施例においては、QFNタイプのLEDパッケージに供されるリードフレームの製造方法を対象としたが、上記QFNタイプ以外のLEDパッケージに供されるリードフレームの製造方法においても、本願発明が有効に適用し得る技術であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1M…金属条材、1L…リードフレーム条材、1U…リードフレーム群、1F…外枠、1T…タイバー、2…リードフレーム、2A…リード部、2At…上面、2B…チップ搭載部、2Bt…上面、3…
部分メッキ層、4…高光沢銀メッキ層、10…LEDパッケージ、11…LEDチップ、12…ボンディングワイヤ、13…リフレクタ部、14…透光部