(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
紫外線や電子線などの活性エネルギー線によって硬化する活性エネルギー線硬化性物質(以下単に硬化性物質という)は、所定の形状に成形したりシート状にしたりすることが容易であるので、様々な分野で使用されている。例えば、太陽電池やディスプレイなどの基板の素材として使用されており、また、タッチパネルなどにおいてその表面を保護するハードコートフィルムの保護膜の素材としても使用されている。
【0003】
例えば、ハードコートフィルムの保護膜を硬化性物質によって形成する場合には、以下のような方法で保護膜が形成される。
まず、硬化性物質を溶剤によって溶かして液状またはペースト状とする。ついで、液状またはペースト状となった硬化性物質を、保護膜を形成するシートの表面に塗布する。さらに、シートの表面に塗布された硬化性物質を加熱して溶剤を除去した後、硬化性物質に対して活性エネルギー線を照射する。すると、硬化性物質が重合して硬化するので、シートの表面には硬化性物質からなる保護膜が形成されるのである。なお、硬化性物質が硬化する際に、シートと密着して積層される。
【0004】
一方、硬化性物質は重合して硬化するため、硬化する際に収縮が生じる。かかる収縮が発生した場合、保護膜が形成されているシートには、硬化性物質の収縮に起因する応力が加わることになる。つまり、硬化性物質で形成された膜が収縮する場合、膜はシート表面に沿った方向にも収縮するため、膜の収縮量に応じた応力がシートに加わることになる。すると、シートがフィルムなどである場合のように、この応力をシートが支えることができない場合には、シートがカール(反る)してしまう。
【0005】
かかるカールは、シート表面に沿った方向における硬化性物質の収縮量(以下単に硬化性物質の収縮量という)を少なくすることによって、抑えることができる可能性がある。
硬化性物質の収縮量を抑える技術として、例えば、特許文献1には、支持フィルムの表面に塗布された紫外線硬化剤を含む重合体膜を重合させる際に、重合体膜の重合を複数の重合工程で行う技術が開示されている。この技術では、重合工程の間に、重合に起因して発生した内部応力を緩和させる緩和工程を行うことによって、カールを防止している。
【0006】
そして、特許文献1には、一回の重合工程では重合体膜を完全に重合させず重合体膜に流動性を維持させておき、この流動性を維持した状態の重合体膜に対して緩和工程を行うことによって内部応力を緩和させることができるので、内部応力に起因するカールを防止することができる旨が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、特許文献1の技術でも、重合体膜が形成された支持フィルムを連続して搬送しながら重合体膜に紫外線を照射する際に、重合体膜には、支持フィルムの幅方向のほぼ全域に同時に紫外線が照射される。すると、重合体膜を完全に重合させないとしても、紫外線が照射された部分、つまり、支持フィルムの幅方向のほぼ全域で重合が生じている。このため、たとえ緩和工程を実施したとしても、支持フィルムの幅方向では重合体膜の内部に発生する内部応力を抑制することは困難である。
【0009】
しかも、均一な重合と均一な緩和を生じさせることができない場合には、支持フィルムの幅方向において内部応力のバラツキが生じる可能性もある。すると、シートが波打つような状態となる可能性もある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、活性エネルギー線硬化性物質を硬化させた際に、活性エネルギー線硬化性物質を設けたシートの反りなどを防止することができる活性エネルギー線硬化性物質の硬化方法および活性エネルギー線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(活性エネルギー線硬化性物質の硬化方法)
第1発明の活性エネルギー線硬化性物質の硬化方法は、シート状部材の表面に形成された活性エネルギー線硬化性物質からなる膜状体に対して活性エネルギー線を照射して、該膜状体を硬化させる方法であって、
該膜状体が、その表面と平行な方向に沿って搬送される場合において、該膜状体においてその搬送方向と直交する方向では、該膜状体の移動に伴って、該膜状体に対して前記活性エネルギー線が照射される照射領域を、該膜状体の表面に沿って該膜状体の中央から外縁に向かって移動させることを特徴とする。
第2発明の活性エネルギー線硬化性物質の硬化方法は、
第1発明において、前記照射領域が略V字状となるように、前記活性エネルギー線を前記膜状体に照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
(活性エネルギー線硬化性物質の硬化方法)
第1発明によれば、膜状体を、
膜状体の幅方向において、その中央から硬化させることができこの中央から外縁に向かって順次硬化させることができる。すると、硬化した領域が広がる際に、
膜状体の幅方向において、膜状体の内部や膜状体とシート状部材との間に内部応力が発生することを抑制することができる
。しかも、膜状体の幅方向において、その幅方向に沿った内部応力の発生を抑えることができる。したがって、表面に膜状体を形成したシート状部材を搬送しながら膜状体を硬化させる場合でも、
膜状体の硬化に起因してシート状部材がカールすることを抑制することができる。
第2発明によれば、照射領域が略V字状となっているので、膜状体を搬送するだけで活性エネルギー線が照射される位置を膜状体の幅方向における中央から幅方向に順次移動させることができる。したがって、活性エネルギー線が照射される照射領域の移動を、簡単な構成で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化性物質の硬化方法は、シート状部材の表面に形成された膜状体を硬化させる方法であって、膜状体が硬化する際における内部応力の発生を抑制し、膜状体が硬化したときにシート状部材がカール(反り)することを防止することができる方法である。
【0015】
ここで、本発明の活性エネルギー線硬化性物質の硬化方法によって硬化される膜状体(以下、単に膜状体という)とは、活性エネルギー線が照射されることによって重合して、硬化しつつその体積が減少する組成物によって形成されたものである。膜状体の組成物としては、例えば、(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレート、エポキシ、二重結合等の官能基を有するシロキサン系化合物などの紫外線硬化性モノマーやオリゴマーと、重合開始剤とを混合した組成物を挙げることができるが、これらに限定されない。また、本発明における硬化性物質は、上述したように活性エネルギー線によって重合して収縮硬化するものだけでなく、活性エネルギー線により架橋し、硬化する樹脂(ポリマー)も含むものである。
【0016】
また、活性エネルギー線とは、上述したような膜状体の組成物を重合や架橋させるものであればよく、膜状体の組成物に合わせた適切なものを使用することができる。活性エネルギー線としては、特に限定されるものではなく、例えば、紫外線や電子線などを使用することができる。
【0017】
さらに、表面に膜状体を形成するシート状部材もとくに限定されない。シート状部材としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルロース系フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、アクリル系フィルム等のフィルムや、これらのフィルムを2層以上積層したフィルムなどが挙げられる。また、シート状部材は、基材フィルムとして用いる場合や、フィルムの少なくとも一方に易剥離処理がなされた離型フィルムとして用いる場合、エンドレスベルト等として用いる場合などがある。
【0018】
硬化した膜状体の用途もとくに限定されない。例えば、離型フィルム上に硬化した膜状体を形成し、離型フィルムを剥がすことで得られるシート状の透明樹脂基板であれば、この透明樹脂基板は、液晶表示装置や有機ELディスプレイ用の基板、有機EL照明用基板、太陽電池基板、プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板などとして使用することができる。また、上記シート状部材を基材フィルムとし、この基材フィルムの表面に膜状体を形成して硬化させた場合には、液晶表示装置や有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の前面を保護するハードコートフィルムとして使用することができる。
【0019】
(活性エネルギー線照射装置の説明)
まず、本発明の活性エネルギー線硬化性物質の硬化方法に使用される装置(本実施形態の活性エネルギー線照射装置1)について説明する。
なお、以下説明に用いる各図では、説明をわかりやすくするために、膜状体やシート状部材BS、活性エネルギー線照射装置1の各部材の相対的な大きさは、必ずしも実際のものと同じ比率ではない。
【0020】
図1において、符号Mは上述した膜状体を示しており、符号BSは膜状体Mが表面に形成されたシート状部材を示している。なお、膜状体Mと、表面に膜状体Mが形成されたシート状部材BSとを合わせて、以下では処理対象シートSという。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の活性エネルギー線照射装置1は、本体ケース2を備えている。この本体ケース2は、内部に中空な空間2hを有しており、この中空な空間2hと外部とを連通する一対の開口を有している。この一対の開口は、本体ケース2の空間2h内に、処理対象シートSを供給搬出するために設けられている。具体的には、処理対象シートSは一方(
図1(A)では下方、
図1(B)では左方)の開口から空間2h内に搬入され、他方(
図1(A)では上方、
図1(B)では右方)の開口から処理対象シートSは外部に搬出されるのである。
【0022】
図1に示すように、本体ケース2の空間2h内には、活性エネルギー線照射手段3が設けられている。この活性エネルギー線照射手段3は、複数の線源3aと遮蔽部材5を備えている。
【0023】
まず、複数の線源3aは活性エネルギー線を放射することができるものである。
図1では、棒状の線源3aを複数使用し、この複数の線源3aの軸方向が処理対象シートSの搬送方向と直交するように配設されている場合を例示している。
この複数の線源3aは、本体ケース2の空間2h内に位置する処理対象シートSの上方に配設されている。つまり、複数の線源3aは、放射する活性エネルギー線を処理対象シートSの表面、つまり、処理対象シートSの膜状体Mに照射できるように設けられている。
【0024】
図1に示すように、遮蔽部材5は、複数の線源3aと処理対象シートSとの間に設けられている。この遮蔽部材5は、活性エネルギー線を透過させる活性エネルギー線透過部を備えている。この活性エネルギー線透過部は、複数の線源3aから放出された活性エネルギー線の一部が処理対象シートSに照射されるようにする部分である。言い換えれば、遮蔽部材5は、処理対象シートSの膜状体Mの表面に照射される活性エネルギー線を制限する機能を有している。
【0025】
具体的には、遮蔽部材5は、活性エネルギー線を透過させない素材によって形成されており、本体ケース2の空間2h内に位置する処理対象シートSを覆うように設けられている。そして、遮蔽部材5には、遮蔽部材5を貫通する貫通孔5hが形成されている。この貫通孔5hは、処理対象シートSの移動方向の下流側に向かって広がるV字状に形成されている。つまり、複数の線源3aから放出された活性エネルギー線は、処理対象シートSの膜状体Mの表面にV字状の照射領域が形成されるように、遮蔽部材5によって遮蔽されるのである。
【0026】
(活性エネルギー線硬化性物質の硬化方法)
本実施形態の活性エネルギー線照射装置1によって、連続して搬送される処理対象シートSの膜状体Mを硬化させる作業(つまり、活性エネルギー線硬化性物質の硬化方法)を説明する。
なお、以下の説明では、シート状部材BSの表面に連続した膜となるように膜状体Mが形成されている場合を説明するが、膜状体Mをシート状部材BSの表面に間欠的に形成した場合でも、同様に各膜状体Mをそれぞれ硬化させることができる。
【0027】
まず、活性エネルギー線照射装置1の上流側では、シート状部材BSが原反などから繰り出される。そして、原反などから繰り出されたシート状部材BSの表面に膜状体Mの組成物が供給される。すると、シート状部材BSの表面には所定の厚さの膜状体Mが形成され、かかる膜状体Mを有する処理対象シートSが形成される。膜状体Mをシート状部材BSの表面に形成する方法は、例えば、塗布などの方法を採用できるが、とくに限定されない。
【0028】
膜状体Mが形成された処理対象シートSは、活性エネルギー線照射装置1の本体ケース2内に搬送される。そして、本体ケース2内において、活性エネルギー線照射手段3の複数の線源3aから放出される活性エネルギー線が膜状体Mの表面に照射される。
【0029】
ここで、複数の線源3aから放出される活性エネルギー線は、一部が遮蔽部材5によって遮蔽されるので、膜状体Mの表面に形成される照射領域は略V字状になる。そして、略V字状の照射領域では、
図2に示すように膜状体Mの硬化が進行する。
【0030】
まず、
図2(a)に示すように、
図1のa−a断面の位置では、遮蔽部材5の貫通孔5hは遮蔽部材5の幅方向の中央部の狭い領域だけに形成されているので、その領域を通過した活性エネルギー線だけが膜状体Mの表面に照射される。すると、活性エネルギー線が照射された狭い領域でのみ膜状体Mが硬化する。つまり、膜状体Mの幅方向の中央部だけに硬化部分HMが形成される。
【0031】
一方、膜状体Mにおいて、硬化部分HMと幅方向の外縁部分との間の領域には活性エネルギー線が照射されていないので、この領域の膜状体Mは、未硬化な状態のままの未硬化部分SMとなっている。
【0032】
ここで、硬化部分HMが形成される際には、膜状体Mの組成物が重合などによって収縮する。このため、硬化部分HMは未硬化部分SMよりも厚さが薄くなるとともに、その幅方向においても若干収縮するので、硬化部分HMでは、その幅方向に沿った内部応力が発生する可能性がある。例えば、硬化部分HMでは、膜状体Mとシート状部材BSとの結合も強くなる。すると、硬化部分HMが収縮する際に、シート状部材BSを収縮方向に引っ張る力(内部応力)が発生する可能性がある。
【0033】
しかし、上述したように、本実施形態の活性エネルギー線照射装置1では、活性エネルギー線が膜状体Mの幅方向では、膜状体Mの幅に比べて狭い領域に照射されるので、硬化部分HMの幅も狭くなる。すると、硬化部分HMが収縮する際に、幅方向における収縮量を少なくすることができる。しかも、硬化部分HMの両側に位置する未硬化部分SMはシート状部材BSの表面に沿って移動可能な状態に維持されている。すると、硬化部分HMが幅方向に収縮する際に、未硬化部分SMとの境界では、未硬化部分SMが移動するので、硬化部分HM以外では内部応力は発生しない。したがって、
図1のa−a断面の位置において、膜状体Mに硬化部分HMが形成されても、シート状部材BSを収縮方向に引っ張る力の発生を抑制することができる。
【0034】
図1のa−a断面の位置において膜状体Mの中央部に硬化部分HMが形成された処理対象シートSは、
図1のb−b断面の位置まで移動する間に硬化部分HMが広がる(
図2(b))。これは、
図1のa−a断面の位置と
図1のb−b断面の位置の間で、遮蔽部材5の貫通孔5hの幅が広がったからである。
【0035】
ここで、
図1のa−a断面の位置と
図1のb−b断面の位置の間において、遮蔽部材5の貫通孔5hの幅は徐々に広がっているので、硬化部分HMは、処理対象シートSの移動に伴って徐々に幅方向に広がることになる。つまり、硬化部分HMにおいて硬化が同時に進行する領域は狭いので、上述した理由から、膜状体Mの硬化部分HMが広がっても、シート状部材BSを収縮方向に引っ張る力の発生は抑制される。
【0036】
処理対象シートSが
図1のc−c断面の位置まで移動すると、硬化部分HMの幅はさらに広くなるが、上述した理由から、シート状部材BSを収縮方向に引っ張る力の発生は抑制される。
【0037】
最終的に膜状体Mの幅方向の全体が硬化部分HMとなるが、硬化部分HMが形成される際に、シート状部材BSの幅方向では、シート状部材BSを収縮方向(つまり幅方向)に引っ張る力の発生が抑えられている。このため、膜状体Mの幅方向の全体が硬化部分HMとなっても、膜状体Mに残留している内部応力(つまり膜状体Mの幅方向に沿った方向の内部応力)を小さくすることができる。したがって、膜状体Mが硬化しても、処理対象シートSが幅方向においてカールすることを抑制することができる。
【0038】
膜状体Mの幅方向の全体が硬化部分HMとなった処理対象シートSは、そのままロール上に巻き取られて製品ロールとしたり、処理対象シートSからシート状部材BSを剥がして硬化した膜状体Mだけを巻き取って製品ロールとしたりすることができる。
【0039】
また、膜状体Mだけを巻き取る際には、膜状体M同士が接触しないように、別の保護シートを挟んでロール状とする場合もある。
【0040】
さらに、シート状部材BSがエンドレスベルトである場合には、エンドレスベルトの端部おいて処理対象シートSからシート状部材BSを簡単に剥がすことができる。
【0041】
さらに、上記例では、膜状体Mの表面を露出させた状態で活性エネルギー線を照射する場合を説明したが、シート状部材BSの表面に膜状体Mを形成した後、膜状体Mの表面にさらにシート状のカバー部材(カバーフィルム)を重ねて配置するようにしてもよい。この場合には、カバー部材として活性エネルギー線を透過するような素材を使用すれば、カバー部材が設けられていても、活性エネルギー線を膜状体Mに照射でき、膜状体Mを硬化させることができるよい。
【0042】
そして、シート状部材BSの素材に活性エネルギー線を透過するような素材を使用することも可能である。この場合には、膜状体Mに対して、表裏両側から活性エネルギー線を照射できるので、硬化した膜状体Mにおいて、厚さ方向における収縮状態を均一に近づけることができる。とくに、膜状体Mの表面に、シート状部材BSと同じものをカバー部材として重ねておけば、膜状体Mの表裏両側で活性エネルギー線の照射状態を同じ状態にすることができる。
【0043】
(遮蔽部材5について)
なお、遮蔽部材5の素材は、活性エネルギー線を透過させないものであればとくに限定されない。例えば、ステンレスやアルミニウムなどの金属板、セラミックやガラスなどの無機板、樹脂板等を採用することができる。このうち、活性エネルギー線の照射により熱が発生しやすい場合においては、ステンレスやアルミニウムなどの金属板、セラミックやガラスなどの無機板、又は耐熱性の樹脂板を採用することが特に好ましい。
【0044】
また、遮蔽部材5に形成される、貫通孔5hなどの活性エネルギー線透過部の形状は略V字状に限られず、処理対象シートSの搬送方向下流側に行くに従って照射領域が幅方向に移動するようになっていればよい。例えば、活性エネルギー線透過部を三角形状に形成してもよい。ただし、略V字状にすれば、既に硬化している領域には活性エネルギー線が照射されないため、必要以上に硬化を進行させないようにする必要がある場合であれば、略V字状となっている方が好ましい。
【0045】
さらに、遮蔽部材5において、活性エネルギー線透過部はどのような構造で実現してもよい。例えば、遮蔽部材5の一部を活性エネルギー線を透過させる素材によって形成して活性エネルギー線透過部としてもよい。しかし、貫通孔5hを形成して活性エネルギー線透過部とした場合には、遮蔽部材5に貫通孔5hを形成するだけで活性エネルギー線透過部を形成できるので、遮蔽部材5の製造が簡単になるという利点が得られる。
【0046】
(線源3aについて)
上記例では、複数の線源3aが棒状であって、その軸方向が処理対象シートSの搬送方向と直交するように配設されている場合について説明した。しかし、複数の線源3aは、その軸方向が処理対象シートSの搬送方向と平行となるように配設されていてもよい。
【0047】
また、
図3(A)に示すように、線源3aを配置してもよい。具体的には、2本の線源3aを、その処理対象シートSの搬送方向上流側の端部(
図3では下方の端部)がほぼ処理対象シートSの幅方向の中間に位置し、処理対象シートSの搬送方向下流側(
図3では上方)に行くに従って両線源3a間の距離が離れるように配置する。この場合、処理対象シートSの膜状体Mに活性エネルギー線が照射される照射領域は、略V字状となる。すると、上述したような遮蔽部材5を設けなくても、処理対象シートSが搬送されるにしたがって、処理対象シートSの膜状体Mに活性エネルギー線が照射される照射領域を中央から外縁に向かって移動させることができる。
図3(B)や
図3(C)に示すように3本の線源3aを配置した場合でも、
図3(A)と同様の効果を得ることができる。
【0048】
もちろん、上記のごとく線源3aを配置した場合でも、遮蔽部材5を線源3aと処理対象シートSの間に設けてもよい。例えば、線源3aから放出される活性エネルギー線がある程度の拡がりをもって処理対象シートSの膜状体Mに照射される場合であれば、遮蔽部材5を設けておけば、活性エネルギー線が照射される照射領域を限定することができるという利点が得られる。
【0049】
また、線源3aとして、LED光源などのように指向性に優れた点状線源や、かかる点状線源を複数配列したものを使用してもよい。この場合には、処理対象シートSの膜状体Mの表面において、各点状線源の照射した活性エネルギー線が照射される領域を狭くすることができる。すると、遮蔽部材5を設けなくても、より適切に照射領域を限定することができる。例えば、
図3(A)の線源3aとして、基板に複数の点状線源を配列したものを使用すれば、線源3aを処理対象シートSの膜状体Mの表面に投射したような照射領域を形成することができる。
【0050】
(処理対象シートSが移動しない場合)
上記例では、処理対象シートSが搬送される場合、つまり、処理対象シートSの移動に伴って照射領域が移動する場合を説明した。
一方、処理対象シートSを移動させない場合には、活性エネルギー線照射手段3を以下のごとき構成とすれば、活性エネルギー線が照射される照射領域を処理対象シートSの膜状体Mの表面に沿って中央から外縁に向かって移動させることができる。
【0051】
図4は、処理対象シートS側から活性エネルギー線を見た状態の概略説明図である。
図4(A)では、複数の線源3aが同心円状に配列された状態を示している。このように複数の線源3aを配置した場合には、複数の線源3aの作動を制御する制御部を設けておく。そして、この制御部によって、活性エネルギー線を照射する線源3aが中央から外方に順次切り替わるように、複数の線源3aの作動を制御する。すると、処理対象シートSの膜状体Mに活性エネルギー線が照射される照射領域を中央から外縁に向かって移動させることができる。
【0052】
また、
図4(B)に示すように、複数の線源3aを、中央から放射線状に移動できるように設けてもよい。例えば、本体ケース2の天井部に放射線状にレールを設け、このレールに沿って複数の線源3aを移動させる移動機構を設けておく。すると、移動機構によって複数の線源3aを中央から外方に移動させれば、処理対象シートSの膜状体Mに活性エネルギー線が照射される領域を中央から順次外方に移動させることができる。
【0053】
上述した
図4(A)における複数の線源3aの作動を制御する制御部や、レールに沿って複数の線源3aを移動させる移動機構が、特許請求の範囲にいう照射位置調整手段に相当する。
また、処理対象シートSを移動させる場合には、この処理対象シートSを移動させる機構が、特許請求の範囲にいう照射位置調整手段に相当する。