【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る道路トンネルにおけるインバート施工方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。即ち、
(1)トンネル内の走行車線の原幅員を該トンネル断面の中心線から一時的に隣接車線内に拡げて走行用の一次拡幅車線と掘削用の一次実作業エリアを画定する。
(2)該一次実作業エリアの一次路盤を、インバート施工の必要とされる車線長にわたり、覆工の該一次実作業エリア側の一次基端部も露出するように、一次掘削する。
(3)該一次掘削により現出した一次凹所からトンネル断面の該中心線を横断して該一次拡幅車線のある二次路盤中に直鋼管を挿設する。
(4)該一次凹所の底面上に基材を配し、該基材の上面に一次コンクリートをインバートとして要求される半径の曲線に沿い打設して該直鋼管の該一次凹所内の残留部を該一次基端部と結合する。
(5)該一次コンクリート上を埋め戻し、該一次路盤を再成して表面に仮舗装を施す。
(6)該隣接車線の幅員を該走行車線側へ拡げて走行用の二次拡幅車線と掘削用の二次実作業エリアを画定する。
(7)該二次実作業エリア側で該一次凹所の存在した場所に対向する場所の該二次路盤を、該覆工の該二次実作業エリア側の二次基端部及び該二次路盤中に延びている該直鋼管の他端部が露出するように、二次掘削する。
(8)該二次掘削により現出した二次凹所の底面上に基材を配し、該基材の上面に二次コンクリートをインバートとして要求される半径の曲線に沿い打設して該直鋼管の該他端部を該二次基端部と結合する。
(9)該二次コンクリート上を埋め戻して該二次路盤を再成する。そして,
(10)該一次路盤と該二次路盤にわたって本舗装を施し、それぞれ変幅された該走行車線と該隣接車線の幅員をそれぞれ原状の幅員に復させる。
【0009】
本発明では直鋼管を採用しているので、一次凹所からトンネル断面の該中心線を横断して二次路盤中に挿設する作業を、曲鋼管の場合に比べ遥かに簡単に行える。
【0010】
先願発明でも述べたように、インバートは底盤からの力に対して曲線により軸力に変換して力を軸力として伝達する部材であることから、中央の継ぎ目を確実にすることが重要である。本発明で、インバートの構成部材である該直鋼管は該一次凹所から該一次拡幅車線の該路盤中にトンネル断面の中心線を横断して配備されるので、従来工法におけるように、トンネルの中心線を挟んで片側ずつ形成されたインバート構成体をトンネルの中心線上で接続してインバートとする必要はない。そのため、インバートの施工に際し、走行車線の幅員はトンネルの中心線を越えて隣接車線側に拡張でき、インバート施工作業は先ず一次実作業エリアで行われるので、一般交通における制限速度内の走行の場合は勿論、高速道路における速度制限内の高速走行の場合でも安全を確保でき、渋滞の発生を防止できる。
【0011】
ここでいう「隣接車線」とはトンネル内に複数の並行車線がある場合に成立つ表現で、対面二車線の場合は対向車線が隣接車線となり、複数車線が同方向へ車両を走行させる場合は追越車線や走行車線となる。
【0012】
該直鋼管は該一次凹所内の該残留部が該一次基端部と結合されることによって該覆工と一体化する。この結合は、該残留部及び該一次基端部にわたり該曲線に沿いコンクリートを打設してなされる。該残留部は外面を異形にする等によってコンクリートとの付着力を高めるのが好ましい。また、該一次基端部との連結部は通常のインバートの場合と同様でよい。該残留部と該一次基端部の結合を終えたら、該一次凹所を埋めて該一次路盤を再成する。掘削土砂を埋め戻してもよいが、新たな土砂を持ち込んで埋めてもよい。
【0013】
該一次路盤の再成を終えたら、次は該一次拡幅車線側の施工となる。該隣接車線の幅員を該一次実作業エリア側から該一次拡幅車線の原幅員内に拡げ、走行用の二次拡幅車線と掘削用の二次実作業エリアを画定する。このように、インバートの施工で路盤を掘削される側には二次実作業エリアが画定され、供用する側の車線の幅員は常に広く確保されるので、工事中であっても車両の高速走行に何ら支障を及ぼさない。
【0014】
インバートは該覆工の該一次及び二次基端部間の曲線に沿って設置されるので、該二次実作業エリア側で該一次掘削の該一次凹所に対向する場所の二次路盤を、該覆工の該二次実作業エリア側の該二次基端部及び該二次実作業エリア側の該二次路盤中に延びている直鋼管が露出するように、二次掘削する。該二次掘削により現出した該二次凹所内に露出した該直鋼管の他端部を、該曲線に沿い二次コンクリートを打設して、該二次基端部と結合する。そして、該二次凹所を埋めて該二次路盤を再成したら、該二次実作業エリア側の原走行車線と該二次拡幅車線の幅員を原幅員に戻す。
【0015】
かくして、該直鋼管がトンネル断面の中心線を横切って介在し、該直鋼管の両端部がインバートの曲線に沿って打設された該一次及び二次のコンクリートでそれぞれ該一次基端部及び該二次基端部と一体となった、インバートにより補強された道路トンネルが完成する。
【0016】
(請求項2)該一次基端部を露出させる一次掘削に際し、一次足付けコンクリート用の一次凹所を形成してもよい。
こうすると、一次凹所に一次足付けコンクリートを打設するので、一次足付けコンクリートをトンネル断面内に臨出させないで済む。
【0017】
(請求項3)該二次基端部を露出させる二次掘削に際し、二次足付けコンクリート用の二次凹所を形成してもよい。
こうすると、二次凹所に二次足付けコンクリートを打設するので、二次足付けコンクリートをトンネル断面内に臨出させないで済む。
【0018】
(請求項4)該直鋼管は該一次基端部と、該一次凹所内に該一次足付けコンクリートを該一次基端部と一体に形成しかつ該直鋼管の該一次凹所内の該残留部と該一次足付けコンクリートにわたり該一次コンクリートを打設して、結合されてもよい。
こうすると、該直鋼管は該一次基端部と該一次コンクリートにより確実に結合され、インバート機能を発揮する用意が整う。
【0019】
(請求項5)該直鋼管は該二次基端部と、該二次凹所内に該二次足付けコンクリートを該二次基端部と一体に形成しかつ該直鋼管の該二次凹所内の該他端部と該二次足付けコンクリートにわたり該二次コンクリートを打設して、結合されてもよい。
こうすると、該直鋼管は該二次基端部と該二次コンクリートにより確実に結合され、該一次コンクリートによる該一次基端部との結合と相俟って、インバート機能を完全に発揮させることができる。
【0020】
(請求項6)本発明にかかるインバートは、請求項1に記載の道路トンネルにおけるインバート施工方法によって形成されたインバートである。
このインバートは、トンネル断面の中心線を跨いでその両側へ延出している直鋼管と、該直鋼管の一次凹所内の残留部と該二次凹所内の他端部を、トンネル覆工の一次及び二次基端部と各別に結合している一次及び二次コンクリートを包含している。そして、該一次及び二次コンクリートがインバートとして要求される同一の曲線に沿って整列され、該直鋼管はその軸線が円弧の弦を呈するような状態で配置されている。
【0021】
このインバートによれば、トンネル断面の中心線を跨いでその両側へ延出させる鋼管を直鋼管としたので、曲鋼管に比べ挿設作業が遥かに容易で、該直鋼管の残留部と端部が一次及び二次コンクリートでトンネル覆工の一次及び二次基端部と各別に結合しており、これらがインバートとして要求される同一の曲線に沿って整列されているので、インバートとしての強度は十分で、トンネル断面の中心線上での結合を必要とせず、従って作業中の車線の幅を狭めて走行車線の拡幅が可能で、高速走行に支障を生じない。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、直鋼管を採用しているので、一次凹所からトンネル断面の該中心線を横断して二次路盤中に挿設する作業を、曲鋼管の場合に比べ遥かに簡単に行える。
【0023】
請求項2によれば、一次凹所に一次足付けコンクリートを打設するので、一次足付けコンクリートをトンネル断面内に臨出させないで済む。
【0024】
請求項3によれば、二次凹所に二次足付けコンクリートを打設するので、二次足付けコンクリートをトンネル断面内に臨出させないで済む。
【0025】
請求項4によれば、該直鋼管は該一次基端部と該一次コンクリートにより確実に結合され、インバート機能を発揮する用意が整う。
【0026】
請求項5によれば、該直鋼管は該二次基端部と該二次コンクリートにより確実に結合され、該一次コンクリートによる該一次基端部との結合と相俟って、インバート機能を完全に発揮させることができる。
【0027】
請求項6の、請求項1に記載の道路トンネルにおけるインバート施工方法で形成したインバートによれば、トンネル断面の中心線を跨いでその両側へ延出させる鋼管を直鋼管としたので、曲鋼管に比べ挿設作業が遥かに容易で、該直鋼管の残留部と端部が一次及び二次コンクリートでトンネル覆工の一次及び二次基端部と各別に結合しており、これらがインバートとして要求される同一の円弧上の曲線に沿って整列されているので、インバートとしての強度は十分で、トンネル断面の中心線上での結合を必要とせず、従って作業中の車線の幅を狭めて走行車線の拡幅が可能で、高速走行に支障を生じない。