特許第6042709号(P6042709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042709
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】回転電機の冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   H02K9/19 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-269531(P2012-269531)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-117080(P2014-117080A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】金山 武司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正人
(72)【発明者】
【氏名】森 信人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】末永 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】前 則宏
(72)【発明者】
【氏名】竹内 孝昌
(72)【発明者】
【氏名】新 智夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 義久
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−041770(JP,A)
【文献】 特開2011−217437(JP,A)
【文献】 特開2010−028979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在なロータと、前記ロータを取り囲むように前記ロータの外周側に設けられたステータと、前記ステータに上方から冷却液を供給する冷却液供給管と、を含んで構成される回転電機の冷却構造であって、
前記ステータが、前記ロータと軸線方向にオーバーラップするオーバーラップ部と、該オーバーラップ部とは内周面の形状が異なるとともに前記ロータと軸線方向にオーバーラップしない非オーバーラップ部と、を有し、
前記非オーバーラップ部の内周側に、該非オーバーラップ部の内周面とのなす角度が90度未満であり軸線方向外側に対向する対向壁面を設けたことを特徴とする回転電機の冷却構造。
【請求項2】
前記非オーバーラップ部の内周側の上側半周に前記対向壁面が設けられるとともに、
前記非オーバーラップ部の内周側の下側半周に、軸線方向外側に向うに連れて内径が拡大する傾斜壁面を設けたことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項3】
前記非オーバーラップ部が樹脂からなる樹脂モールドにより被覆されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの上方から供給される冷却液によりステータを冷却する回転電機の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の回転電機の冷却構造としては、ステータの軸線方向端部の内周面を、軸線方向外側に向うに連れて内径が拡大するように傾斜した形状に構成することにより、ステータの上方から吐出されてステータの内周面を伝って流下した冷却液が、ステータの下部において滞留してステータとロータとの間に侵入することを防止し、冷却液によるロータの引き摺り抵抗が発生することを防止するようにした技術が知られている。特許文献1に記載されたものは、ステータの軸線方向端部のコイルエンドの内周面が傾斜するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−166951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、ステータの下部においては傾斜面に沿ってステータの軸線方向外側に冷却液を排出させることで、ステータとロータとの間に冷却液が侵入することを防止できるが、ステータの上部においては傾斜面に沿ってステータの軸線方向内側に冷却液が流れるため、ステータとロータとの間に冷却液が侵入してしまう恐れがあった。
【0005】
そして、ロータとステータの間に侵入した冷却液により、ロータの回転に伴って冷却液の引き摺り抵抗による動力損失が発生しまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、冷却液がロータとステータの間に侵入して引き摺り抵抗による動力損失が発生することを防止することができる回転電機の冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回転電機の冷却構造は、上記目的達成のため、(1)回転自在なロータと、前記ロータを取り囲むように前記ロータの外周側に設けられたステータと、前記ステータに上方から冷却液を供給する冷却液供給管と、を含んで構成される回転電機の冷却構造であって、前記ステータが、前記ロータと軸線方向にオーバーラップするオーバーラップ部と、該オーバーラップ部とは内周面の形状が異なるとともに前記ロータと軸線方向にオーバーラップしない非オーバーラップ部と、を有し、前記非オーバーラップ部の内周側に、該非オーバーラップ部の内周面とのなす角度が90度未満であり軸線方向外側に対向する対向壁面を設けたものから構成されている。
【0008】
この構成により、冷却液供給管からステータに供給された冷却液は、ステータの非オーバーラップ部の上部において対向壁面によって軸線方向内側への移動が遮られ下方に流下し、ステータの非オーバーラップ部の下部においても対向壁面によって軸線方向内側への移動が遮られてステータから排出される。このため、ステータの上部および下部を含む何れの部位においても、ステータとロータとの間に冷却液が侵入することがない。
【0009】
したがって、冷却液がロータとステータの間に侵入して引き摺り抵抗による動力損失が発生することを防止することができる。
【0010】
上記(1)に記載の回転電機の冷却構造においては、(2)前記非オーバーラップ部の内周側の上側半周に前記対向壁面が設けられるとともに、前記非オーバーラップ部の内周側の下側半周に、軸線方向外側に向うに連れて内径が拡大する傾斜壁面を設けたことが好ましい。
【0011】
この構成により、冷却液がロータとステータの間に侵入して引き摺り抵抗による動力損失が発生することをより一層防止することができる。
【0012】
上記(1)または(2)に記載の回転電機の冷却構造においては、(3)前記非オーバーラップ部が樹脂からなる樹脂モールドにより被覆されたことが好ましい。
【0013】
この構成により、樹脂からなる樹脂モールドに対向壁面および傾斜壁面が形成されることになるため、対向壁面および傾斜壁面の形状の自由度を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却液がロータとステータの間に侵入して引き摺り抵抗による動力損失が発生することを防止することができる回転電機の冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る回転電機の冷却構造の第1の実施の形態を示す図であり、ハイブリッド車両のトランスアクスルの概略構成図である。
図2】本発明に係る回転電機の冷却構造の第1の実施の形態を示す図であり、回転電機を備えたトランスアクスルの要部概略断面図である。
図3】本発明に係る回転電機の冷却構造の第1の実施の形態を示す図であり、図4のA−A方向矢視断面図である。
図4】本発明に係る回転電機の冷却構造の第1の実施の形態を示す図であり、回転電機を軸線方向から見た側面図である。
図5】(a)〜(c)は、本発明に係る回転電機の冷却構造の第1の実施の形態を示す図であり、ステータの非オーバーラップ部の拡大図である。
図6】本発明に係る回転電機の冷却構造の第2の実施の形態を示す図であり、図7のA−A方向矢視断面図である。
図7】本発明に係る回転電機の冷却構造の第2の実施の形態を示す図であり、回転電機を軸線方向から見た側面図である。
図8】(a)〜(c)は、本発明に係る回転電機の冷却構造の第2の実施の形態を示す図であり、ステータの非オーバーラップ部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る回転電機の冷却構造の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1図5は、本発明に係る回転電機の冷却構造の第1の実施の形態を示す図である。
【0018】
まず、構成を説明する。
【0019】
図1において、自動車等の車両の駆動装置を構成するトランスアクスル11は、回転電機としてのモータジェネレータMG2と、モータジェネレータMG2の回転軸12に接続される減速機13とを備えている。
【0020】
また、トランスアクスル11は、減速機13で減速された回転軸12の回転に応じて回転し、車輪に接続される車軸14と、内燃機関15と、回転電機としてのモータジェネレータMG1と、減速機13と内燃機関15とモータジェネレータMG1との間で動力分配を行う動力分配機構16とを備えている。
【0021】
減速機13は、モータジェネレータMG2から動力分配機構16への減速比が、例えば、2倍以上である。また、内燃機関15のクランクシャフト17とモータジェネレータMG1のロータ18とモータジェネレータMG2のロータ19とは、同じ軸を中心に回転するようになっている。
【0022】
動力分配機構16は、プラネタリギヤから構成されており、クランクシャフト17に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸20に結合されたサンギヤ21と、クランクシャフト17と同軸上に回転可能に支持されているリングギヤ22とを含んで構成されている。
【0023】
また、動力分配機構16は、サンギヤ21とリングギヤ22との間に配置され、サンギヤ21の外周を自転しながら公転するピニオンギヤ23と、クランクシャフト17の端部に結合され、各ピニオンギヤ23の回転軸を支持するプラネタリキャリア24とを含んで構成されている。
【0024】
動力分配機構16は、サンギヤ21に結合されたサンギヤ軸20と、リングギヤ22に結合されたリングギヤケース16aおよびプラネタリキャリア24に結合されたクランクシャフト17の3軸が動力の入出力軸とされる。
【0025】
そして、この3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力が決定されると、残りの1軸に入出力される動力は、他の2軸に入出力される動力に基づいて定まる。
【0026】
リングギヤケース16aには動力の取出し用のカウンタドライブギヤ25が取付けられており、このカウンタドライブギヤ25は、リングギヤ22と一体的に回転するようになっている。
【0027】
カウンタドライブギヤ25は、動力伝達減速ギヤ26に接続されており、カウンタドライブギヤ25と動力伝達減速ギヤ26との間で動力の伝達が行われるようになっている。
【0028】
すなわち、動力伝達減速ギヤ26は、カウンタドライブギヤ25に接続されるカウンタドリブンギヤ39と、カウンタドリブンギヤ39に接続されるファイナルドライブギヤ40とから構成されている。
【0029】
動力伝達減速ギヤ26のファイナルドライブギヤ40は、ディファレンシャルギヤ27に接続されており、動力伝達減速ギヤ26は、ディファレンシャルギヤ27に動力を伝達するようになっている。
【0030】
また、下り坂等では車輪の回転がディファレンシャルギヤ27に伝達されるようになっており、動力伝達減速ギヤ26はディファレンシャルギヤ27によって駆動される。
【0031】
一方、モータジェネレータMG1は、複数個の永久磁石が埋め込まれているロータ18と、ロータ18を取り囲むようにロータ18の外周部に設けられ、回転磁界を形成するステータ50とを含んで構成されている。
【0032】
ステータ50は、ステータコア29と、ステータコア29に巻回されるステータコイルとしての三相コイル30とを含んで構成されている。
【0033】
ロータ18は、動力分配機構16のサンギヤ21と一体的に回転するサンギヤ軸20に結合されており、ステータコア29は、電磁鋼板の薄板を積層して形成され、図示しないボルト等の固定手段によってケース31(図2参照)に固定されている。
【0034】
また、クランクシャフト17およびサンギヤ軸20は、図示しないベアリングを介してケース31(図2参照)に回転自在に支持されている。
【0035】
モータジェネレータMG1は、ロータ18に埋め込まれた永久磁石による磁界と三相コイル30によって形成される磁界との相互作用によりロータ18を回転駆動する電動機として動作する。
【0036】
また、モータジェネレータMG1は、永久磁石による磁界とロータ18の回転との相互作用により、三相コイル30の両端に起電力を生じさせる発電機としても動作する。
【0037】
モータジェネレータMG2は、複数個の永久磁石が埋め込まれたロータ19と、ロータ19を取り囲むようにロータ19の外周部に設けられ、回転磁界を形成するステータ32とを含んで構成されている。
【0038】
ステータ32は、ステータコア33と、ステータコア33に巻回されるステータコイルとしての三相コイル34とを含んで構成されている。
【0039】
ロータ19は、動力分配機構16のリングギヤ22と一体的に回転するリングギヤケース16aに減速機13によって結合されている。また、ステータコア33は、例えば、電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、図示しないボルト等の固定手段によってケース31(図2参照)に固定されている。
【0040】
モータジェネレータMG2は、永久磁石による磁界とロータ19の回転との相互作用により三相コイル34の両端に起電力を生じさせる発電機としても動作する。
【0041】
また、モータジェネレータMG2は、永久磁石による磁界と三相コイル34によって形成される磁界との相互作用によりロータ19を回転駆動する電動機として動作する。本実施の形態では、モータジェネレータMG1が主に発電機として機能し、モータジェネレータMG2が主に電動機として機能する。
【0042】
減速機13は、プラネタリギヤの回転要素の一つであるプラネタリキャリア35がトランスアクスル11のケース31に固定された構造により減速を行う。
【0043】
すなわち、減速機13は、ロータ19のシャフトに結合されたサンギヤ36と、リングギヤ22と一体的に回転するリングギヤ37と、リングギヤ37およびサンギヤ36に噛み合いサンギヤ36の回転をリングギヤ37に伝達するピニオンギヤ38とを含んで構成されている。
【0044】
減速機13は、例えば、サンギヤ36の歯数に対しリングギヤ37の歯数を2倍以上にすることにより、減速比を2倍以上にすることができる。
【0045】
図2は、モータジェネレータMG1の冷却構造を示す図である。モータジェネレータMG1は、ケース31に収容されており、このモータジェネレータMG1の上方とケース31の上面31Aとの間には冷却液としてのオイルが流れる金属製あるいは樹脂製のオイルパイプ41が設けられている。
【0046】
なお、モータジェネレータMG2の冷却構造もモータジェネレータMG1と同一の構成であるため、本実施の形態では、モータジェネレータMG1の冷却構造のみを図面に基づいて説明する。
【0047】
図2において、冷却液供給管としてのオイルパイプ41は、上流端がケース31に形成されたオイル通路43に接続されており、オイルパイプ41の下流端は、閉止部材42によって閉止されている。
【0048】
このため、オイルパイプ41は、サンギヤ軸20の軸線方向、すなわち、ロータ18の軸線方向に沿って延在している。
【0049】
オイル通路43には、ケース31に形成されたオイル通路31bを介して図示しないオイルポンプからオイルが供給されるようになっている。なお、このオイルポンプは、内燃機関15によって駆動されるようになっており、内燃機関15の回転数が高くなるにつれてオイルの供給量を増大させるようになっている。
【0050】
このため、オイルポンプが駆動されると、オイル通路31b、31aを通してオイルパイプ41にオイルが供給される。
【0051】
また、図示していないが、オイル通路31bは、モータジェネレータMG2の上方に設けられたオイルパイプまで延在しており、モータジェネレータMG2の上方に設けられたオイルパイプにオイルを供給するようになっている。
【0052】
したがって、オイルポンプは、モータジェネレータMG1の上方に設けられたオイルパイプ41とモータジェネレータMG2の上方に設けられたオイルポンプにオイルを供給することができる。
【0053】
また、オイルパイプ41内の内部にはオイルが流通する流通通路としてのオイル通路43が画成されており、オイルパイプ41の下部には、オイル通路43を流れるオイルを吐出する吐出孔44、45の何れかが形成されている。
【0054】
また、三相コイル30のうち、ステータコア29からサンギヤ軸20の軸線方向に突出している端部がコイルエンド30aを形成している。コイルエンド30aは、樹脂モールド48により被覆されている。ステータ50とロータ18の間には、所定の大きさの間隙(エアギャップ)が形成されている。
【0055】
吐出孔44は、三相コイル30の軸線方向両端部に位置するコイルエンド30aに対向して設けられており、コイルエンド30aを被覆する樹脂モールド48にオイルを吐出するようになっている。また、吐出孔45は、三相コイル30の軸線方向中央部に対向して設けられており、三相コイル30の軸線方向中央部にオイルを吐出するようになっている。
【0056】
また、モータジェネレータMG1においては、ステータ50とロータ18が軸線方向においてオーバーラップする(重なる)オーバーラップ領域と、ステータ50とロータ18が軸線方向においてオーバーラップしない(重ならない)非オーバーラップ領域とに区分される。
【0057】
換言すると、オーバーラップ領域とは、ステータ50とロータ18とが放射方向において対向する領域であり、非オーバーラップ領域とは、ステータ50とロータ18とが放射方向において対向しない領域であり、ステータ50の端部のコイルエンド30aが存在する領域である。
【0058】
以下の説明では、ステータ50のうち、軸線方向においてロータ18にオーバーラップする部位をオーバーラップ部52(図3図4参照)と称し、軸線方向においてロータ18にオーバーラップしない部位を非オーバーラップ部51(図3図4参照)と称する。
【0059】
すなわち、ステータ50は、軸線方向においてロータ18にオーバーラップするオーバーラップ部52と、軸線方向においてロータ18にオーバーラップしない非オーバーラップ部51とから構成されている。
【0060】
次に、図3図4を参照して、モータジェネレータMG1のステータ50について詳しく説明する。
【0061】
図3図4に示すように、ステータ50は、オーバーラップ部52と非オーバーラップ部51とから構成されており、非オーバーラップ部51は、端面51aと内周面51dの間に、中間壁面51bと対向壁面51cとを有している。
【0062】
ここで、端面51aは、非オーバーラップ部51の軸線方向の最端部を構成し、軸線方向の端部において略鉛直方向に延在する環状の面である。端面51aは、接続部51abにおいて中間壁面51bに接続している。また、内周面51dは、非オーバーラップ部51の内周部を構成する筒状の面である。
【0063】
中間壁面51bは、端面51aと対向壁面51cの間に設けられた環状の面であり、オイルパイプ41から供給されたオイルがその表面を伝うよう、内周面51dに対して角度αで傾斜している。
【0064】
中間壁面51bは、接続部51bcにおいて対向壁面51cに接続している。図3図4において、中間壁面51bは、軸線方向外側に向うに連れて内径が拡大するように傾斜している。
【0065】
中間壁面51bが内周面51dに対してなす角度αは、対向壁面51cが接続部51cdにおいて内周面51dに対してなす角度βより大きく設定されている。
【0066】
対向壁面51cは、内周面51dとの接続部51cdにおいて内周面51dとのなす角度βが90度以下となるように設けられた環状の面であり、軸線方向外側(端面51aの側)に対向している。
【0067】
具体的には、対向壁面51cは、図5(a)に示すように、内周面51dとのなす角度βが90度(直角)となるように設けられるか、または、図5(b)に示すように、内周面51dとのなす角度βが90度未満(鋭角)となるように設けられている。
【0068】
これら中間壁面51bおよび対向壁面51cは、非オーバーラップ部51の内周側の全周に渡って形成されている。
【0069】
なお、内周面51dとの接続部51cdにおいて対向壁面51cが内周面51dとの間でなす角度βが90度以下であればよく、対向壁面51cは、図5(c)に示すように、中間壁面51bからなだらかに繋がる曲面であってもよい。
【0070】
このように、非オーバーラップ部51は、中間壁面51bおよび対向壁面51cを有しており、オーバーラップ部52とは内径形状が異なっている。また、接続部51cdにおいて対向壁面51cが内周面51dに対してなす角度βは、鈍角または鋭角となっている。
【0071】
次に、作用を説明する。
【0072】
ステータ50を冷却する場合には、オイルポンプからケース31のオイル通路31b、31aを介してオイルパイプ41にオイルを供給する。
【0073】
オイルポンプにより圧送されたオイルは、オイルパイプ41の下部に形成された吐出孔44、45から吐出され、ステータ50に供給され、ステータ50の熱を奪いながら下方に流下し、三相コイル30およびコイルエンド30aを効率よく冷却する。
【0074】
具体的には、吐出孔45から吐出されたオイルは、ステータ50の三相コイル30が配置された軸線方向中央部を含む領域において、ステータ50の外周表面を伝って下方に流下し、三相コイル30を冷却する。
【0075】
一方、吐出孔44から吐出されたオイルは、ステータ50のコイルエンド30aが配置された軸線方向端部の領域において、ステータ50の外周表面および端面51aを伝って下方に流下し、コイルエンド30aを冷却する。
【0076】
このとき、図3図4に示すように、吐出孔44から吐出されたオイルは、ステータ50の非オーバーラップ部51の上部では、端面51aを伝って中間壁面51bに流下した後、対向壁面51cによって軸線方向内側(オーバーラップ部52側)への移動が遮られ、中間壁面51bおよび対向壁面51cを伝って下方に流下する。
【0077】
そして、中間壁面51bおよび対向壁面51cを伝って下方に流下したオイルは、ステータ50の非オーバーラップ部51の下部において、中間壁面51bから端面51a側に移動しステータ50から排出される。
【0078】
このため、ステータ50の上部および下部を含む何れの部位においても、ステータ50とロータ18との間にオイルが侵入することがない。また、吐出孔44から吐出されたオイルは、コイルエンド30aが設けられた非オーバーラップ部51の端面51a、中間壁面51b、対向壁面51cに接触してこれらの面から熱を奪うので、ステータ50を良好に冷却することができる。
【0079】
すなわち、ステータ50とロータ18との間にオイルが侵入することを防止するために、仮にオイルの流路がステータ50の非オーバーラップ部51から離隔するように構成した場合は、ステータ50の冷却性を損なってしまうが、本実施の形態では、非オーバーラップ部51の端面51aだけでなく、中間壁面51bや対向壁面51cにオイルが接触するため、ステータ50の冷却性を損なうことがない。
【0080】
なお、本実施の形態では、回転電機の冷却構造をモータジェネレータMG1のステータ50に適用した例を説明したが、同様の回転電機の冷却構造を、モータジェネレータMG2のステータ32に適用してもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、回転電機の冷却構造をハイブリッド車両に適用しているが、回転電機の冷却構造を、モータのみを駆動源とする車両に適用してもよい。また、車両に限らず、回転電機を有する装置であれば、その他の装置に回転電機の冷却構造を適用してもよい。
【0082】
このように本実施の形態の回転電機の冷却構造は、ステータ50が、ロータ18と軸線方向にオーバーラップするオーバーラップ部52と、このオーバーラップ部52とは内周面の形状が異なるとともにロータ18と軸線方向にオーバーラップしない非オーバーラップ部51と、を有し、非オーバーラップ部51の内周側に、この非オーバーラップ部51の内周面とのなす角度が90度以下であり軸線方向外側に対向する対向壁面51cを設けたものから構成されている。
【0083】
この構成により、オイルパイプ41からステータ50に供給されたオイルは、ステータ50の非オーバーラップ部51の上部において対向壁面51cによって軸線方向内側(オーバーラップ部52側)への移動が遮られ下方に流下し、ステータ50の非オーバーラップ部51の下部においても対向壁面51cによって軸線方向内側への移動が遮られてステータ50から排出される。
【0084】
このため、ステータ50の上部および下部を含む何れの部位においても、ステータ50とロータ18との間にオイルが侵入することがない。したがって、オイルがロータ18とステータ50の間に侵入して引き摺り抵抗による動力損失が発生することを防止することができる。
【0085】
また、本実施の形態の回転電機の冷却構造は、非オーバーラップ部51が樹脂からなる樹脂モールド48により被覆されている。
【0086】
この構成により、樹脂モールド48に対向壁面51cが形成されることになるため、対向壁面51cの形状の自由度を向上することができる。
【0087】
図6図8は、本発明に係る回転電機の冷却構造の第2の実施の形態を示す図である。なお、第1の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
ここで、本実施の形態は、ステータ50の非オーバーラップ部51の内周側の上側半周と下側半周とで形状を異ならせるとともに、下側半周にオイルを軸線方向外側に排出する傾斜壁面を設けたものである。
【0089】
図6図7に示すように、ステータ50は、非オーバーラップ部51の内周側の下側半周に、軸線方向外側に向うに連れて内径が拡大する傾斜壁面51eを有している。すなわち、非オーバーラップ部51の内周側の下側半周には、軸線方向外側に向って下り傾斜となる傾斜壁面51eが設けられている。
【0090】
この傾斜壁面51eは、端面51aと内周面51dの間に設けられており、接続部51aeにおいて端面51aに接続するとともに接続部51deにおいて内周面51dに接続している。
【0091】
このように、非オーバーラップ部51の内周側の下側半周に、軸線方向外側に向うに連れて内径が拡大する傾斜壁面51eを設けることにより、非オーバーラップ部51の下部において、上方から流下してきたオイルは、傾斜壁面51eの傾斜によって軸線方向外側に移動してステータ50から排出されることとなる。
【0092】
また、非オーバーラップ部51の内周側の上側半周は、図8(b)、図8(c)に示すように、端面51aと内周面51dの間に中間壁面51bと対向壁面51cを有する第1の実施の形態と同様の構成とすることが好ましいが、図6図7図8(a)に示すように、中間壁面51bと対向壁面51cを設けず端面51aと内周面51dのみを有する構成でもよい。
【0093】
具体的には、図8(b)に示すように、非オーバーラップ部51の内周側の上側半周には、第1の実施の形態と同様に、中間壁面51bと対向壁面51cを設け、中間壁面51bが内周面51dに対してなす角度αを180度に設定するとともに、対向壁面51cが接続部51cdにおいて内周面51dに対してなす角度βを90度に設定することが好ましい。
【0094】
この場合、非オーバーラップ部51の内周側の上部において、オイルは端面51aおよび中間壁面51bを伝って対向壁面51cに到達すると、この対向壁面51cによって軸線方向内側への移動が遮られて下方に流下する。このため、ステータ50の上部でステータ50とロータ18との間にオイルが侵入することがない。
【0095】
また、図8(c)に示すように、非オーバーラップ部51の内周側の上側半周には、第1の実施の形態と同様に、中間壁面51bと対向壁面51cを設け、中間壁面51bが内周面51dに対してなす角度αを180度以上に設定するとともに、対向壁面51cが接続部51cdにおいて内周面51dに対してなす角度βを90度に設定することが好ましい。
【0096】
この場合、非オーバーラップ部51の内周側の上部において、端面51aと中間壁面51bの接続部51abに沿って大半のオイルが下方に流下するか、または接続部51abから下方に滴下され、中間壁面51bを伝った一部のオイルも対向壁面51cに到達すると下方に流下する。このため、ステータ50の上部でステータ50とロータ18との間にオイルが侵入することがない。
【0097】
また、図8(a)に示すように、非オーバーラップ部51の内周側の上側半周が、端面51aと内周面51dのみを有する構成であってもよい。
【0098】
この場合、内周面51dが水平であるため、非オーバーラップ部51の内周側の上部において、端面51aから内周面51dに伝ったオイルは、オーバーラップ部52に到達することなく内周面51dを伝って下方に流下する。このため、ステータ50の上部でステータ50とロータ18との間にオイルが侵入することがない。
【0099】
すなわち、図8(a)に示すように、非オーバーラップ部51の内周側の下側半周に、軸線方向外側に向うに連れて内径が拡大する傾斜壁面51eを設けることにより、非オーバーラップ部51の内周側の上側半周の形状が図8(a)〜図8(c)の何れであっても、非オーバーラップ部51の内周側の上部および下部の両方において、ステータ50とロータ18との間にオイルが侵入することを防止することができる。
【0100】
このように本実施の形態の回転電機の冷却構造は、図8(b)、図8(c)に示すように、非オーバーラップ部51の内周側の上側半周に対向壁面51cが設けられるとともに、非オーバーラップ部51の内周側の下側半周に、軸線方向外側に向うに連れて内径が拡大する傾斜壁面51eを設けたものから構成されている。
【0101】
この構成により、オイルがロータ18とステータ50の間に侵入して引き摺り抵抗による動力損失が発生することをより一層防止することができる。
【0102】
また、本実施の形態の回転電機の冷却構造は、非オーバーラップ部51が樹脂からなる樹脂モールド48により被覆されている。
【0103】
この構成により、樹脂モールド48に傾斜壁面51eが形成されることになるため、傾斜壁面51eの形状の自由度を向上することができる。
【0104】
以上のように、本発明に係る回転電機の冷却構造は、冷却液がロータとステータの間に侵入して引き摺り抵抗による動力損失が発生することを防止することができるという効果を奏するものであり、ステータの上方から供給される冷却液によりステータを冷却する回転電機の冷却構造等として有用である。
【符号の説明】
【0105】
18…ロータ、30a…コイルエンド、41…オイルパイプ(冷却液供給管)、48…樹脂モールド、50…ステータ、51…非オーバーラップ部、51a…端面、51b…中間壁面、51c…対向壁面、51d…内周面、51e…傾斜壁面、52…オーバーラップ部、MG1…モータジェネレータ(回転電機)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8