(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状の外筒部材、前記外筒部材の下方に同軸状に配設される中心部材、及び、前記中心部材および前記外筒部材を連結すると共にゴム状弾性体からなる防振基体を有する防振装置と、
前記防振装置の外筒部材が軸方向に圧入されることで前記防振装置を保持すると共に振動源側に取り付けられる第1ブラケットと、
前記防振装置の中心部材が固定される固定部材、前記固定部材の両側から上方へ向けて立設され前記防振基体を挟んで対向配置される一対の立設部材、及び、前記一対の立設部材の立設先端同士を接続し前記防振基体を挟んで前記固定部材と対向配置される接続部材を有すると共に車体側に取り付けられる第2ブラケットとを備える防振ユニットにおいて、
前記中心部材に連結されるカシメ結合部材と、
前記中心部材に連結されると共に前記固定部材の上面に配置される上面配置部とを備え、
前記カシメ結合部材は、前記上面配置部に一端側が連結され、前記固定部材の上面から側面に向けて他端側が折曲されて前記固定部材の側面に配置される側面配置部と、
前記側面配置部から前記固定部材の下面に向けて折曲されると共に前記固定部材に圧着される下面配置部とを備え、
前記防振装置は、前記中心部材から前記上面配置部にかけて延設される軸状の軸部を備え、
前記第2ブラケットは、前記固定部材の上面に凹設されると共に前記固定部材の側面に開口し、前記上面配置部が底部に配置される溝部と、
少なくとも前記軸部が通過可能な断面形状の空間を設けて前記溝部の両側から前記底部の上方に張り出し、前記底部との間に前記上面配置部を挿入したときに前記防振基体の下面に上面が押圧される張出部とを備え、
前記カシメ結合部材の所定部が前記固定部材に圧着されることで、前記防振装置の中心部材が前記第2ブラケットの固定部材に固定されることを特徴とする防振ユニット。
前記第2ブラケットは、前記取付部材の側面配置部が配置される前記固定部材の側面に溝部の一方の開口が形成され、その反対側の側面に溝部の他方の開口を閉鎖する壁部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の防振ユニット。
前記カシメ結合部材は、前記下面配置部または前記上面配置部から前記固定部材の側面に向けて折曲され前記側面配置部と対向する側面対向部を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の防振ユニット。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体と振動源であるエンジンとの間には、車体側への振動の伝達を抑制するために防振装置(防振ユニット)が設けられる。例えば、特許文献1には、
図14及び
図15に示す防振ユニットが開示されている。以下、
図14及び
図15を参照して特許文献1に開示される防振ユニットについて説明する。
図14(a)は防振ユニットの平面図であり、
図14(b)は
図14(a)の矢印XIV方向から視た防振ユニットの正面図であり、
図15は
図14(a)におけるXV−XV線における防振ユニットの断面図である。
【0003】
図14(a)及び
図14(b)に示す防振ユニット901は、自動車のエンジン(図示せず)を支持固定しつつ、そのエンジンの振動を車体(図示せず)へ伝達させないようにするためのものであり、ボス部材911と外筒部材912との間がゴム状弾性体からなる防振基体913により連結された防振装置910と、その防振装置910の外筒部材912を保持すると共にエンジン側に取り付けられる第1ブラケット20と、防振装置910のボス部材911が固定されると共に車体側に取り付けられる第2ブラケット930とを備えている。
【0004】
防振装置910は、軸方向を鉛直方向に一致させた縦姿勢に配置されると共にボス部材911側を下方とした倒立状態に配置され、第2ブラケット930に周囲が取り囲まれる。第1ブラケット20は、防振装置910の側方から径方向外方(軸直角方向、
図14(a)上方)へ向けて水平に張り出される。
【0005】
第1ブラケット20は、平板状の本体部21と、その本体部21の一側(
図14(a)右側)角部から斜めに延設されるブロック状の延設部22とを主に備えている。本体部21の他側(
図14(a)左側)角部および延設部22の両端には、取付穴h1がそれぞれ穿設される。この取付穴h1に挿通されたボルトをエンジン側に螺合することで、下面側(
図14(a)紙面奥側)が取付面となってエンジン側に締結固定される。
【0006】
第2ブラケット930は、防振装置910と車体側との間に介設される部材であり、防振装置910のボス部材911が固定される固定部材931と、その固定部材931の両側から上方へ向けて立設され防振装置910を挟んで対向配置される一対の立設部材932と、それら一対の立設部材932の立設先端同士を接続し防振装置910を挟んで固定部材931と対向配置される接続部材933とを備え、これら各部材931〜933が正面視枠状に一体に形成される。
【0007】
第2ブラケット930には両側に取付穴h2が穿設されており、取付穴h2に挿通されたボルトB1(
図15参照)により車体側に締結固定される。また、防振装置910及び第1ブラケット20には、ストッパゴムSGが装着され、防振装置910の上面側および第1ブラケット20の本体部21の外周側がストッパゴムSGにより覆われる。
【0008】
図15に示すように、防振装置910は、第2ブラケット930を介して車体側に取り付けられるボス部材911と、第1ブラケット20を介してエンジン側に取り付けられる筒状の外筒部材912と、これら両部材911,912を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体913とを主に備えている。
【0009】
ボス部材911は、軸O回りに対称な上窄まりの断面略円錐台形状に形成され、軸心Oに沿って設けられた孔部の内周面に雌ねじが螺刻された雌ねじ部911aが形成される。外筒部材912は、鉄鋼材料から上下端が開口した筒状に形成され、ボス部材911の上方に同軸状に配設される。防振装置910は、第2ブラケット930のボルト挿通孔931aに挿通したボルトBをボス部材911の雌ねじ部911aに螺合することにより、第2ブラケット930に締結固定される。
【0010】
防振基体913は、ゴム状弾性体から軸O回りに対称な下窄まりの断面略円錐台形状に形成され、ボス部材911の外面と外筒部材912の内壁面との間に加硫接着される。外筒部材912の内部には、ダイヤフラム914と、仕切り部材915と、弾性仕切り膜916とが配設される。ダイヤフラム914は、ゴム状弾性体から部分球状を有するゴム膜状に形成され、外筒部材912の上端側に密着(水密)状態で装着される。その結果、ダイヤフラム914の下面側と防振基体913の上面側との間に液体が封入される液体封入室が形成される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1から
図5を参照して、第1実施の形態について説明する。
図1は本発明の第1実施の形態における防振ユニット1を構成する第1ブラケット20及び防振装置10の背面側からの斜視図である。なお、背景技術(
図14及び
図15参照)において説明した防振ユニット901と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。防振ユニット1を構成する防振装置10は、取付部材11(カシメ結合部材)により第2ブラケット20に固定される。
【0025】
図2を参照して取付部材11(カシメ結合部材)について説明する。
図2は取付部材11の斜視図である。取付部材11は、金属製の板状部材により形成される部材であり、第2ブラケット30の固定部材31に所定部が圧着される。取付部材11は、有底筒状に形成され軸方向に延びる略円筒状の中心部材12と、その中心部材12の軸と直交して開口端の周囲に延設される平板状で矩形の上面配置部13と、折曲部13aを介して軸方向に折曲されることで上面配置部13に略直交する平板状で矩形の折曲面部14とを備え、それらが金属製の板状部材の塑性加工により一体に形成されている。本実施の形態では、取付部材11は鉄鋼材料から形成されている。
【0026】
中心部材12は、外周面に防振基体16(
図5参照)が加硫接着される部位であり、軸方向に沿って上面配置部13に近づくにつれ外径が大きくなるように形成されている。防振基体16に中心部材12が加硫接着されることにより、取付部材11は防振装置10に固定される。折曲面部14は、第2ブラケット30に圧着される部位であり、後述する第2ブラケット30の固定部材31の側面に配置される側面配置部14aと、軸直角方向に折曲されることで固定部材31の下面に配置される下面配置部14bとを備えている。
【0027】
次に
図3を参照して第2ブラケット30について説明する。第2ブラケット30は、防振装置10と車体側との間に介設される部材であり、防振装置10の取付部材11が固定される固定部材31と、その固定部材31の両側(
図3左側および右側)から上方へ向けて立設され防振装置10を挟んで対向配置される一対の立設部材32と、それら一対の立設部材32の立設先端同士を接続し防振装置10を挟んで固定部材31と対向配置される接続部材33とを備え、これら各部材31〜33がアルミニウム合金から正面視枠状に一体に形成される。
【0028】
なお、立設部材32の対向面(内壁面)は、所定間隔を隔てつつ平行に対向配置される平坦面として形成され、接続部材33の下面(内壁面)は、立設部材32の内壁面に対して垂直(即ち、防振装置10の軸に対して垂直)となる平坦面として形成され、これら内壁面は、大変位入力時に防振装置10又は第1ブラケット20を受け止めてその変位を規制するストッパ面として機能する。
【0029】
固定部材31は、上面に凹設されると共に固定部材31の側面に開口する溝部34と、溝部34の両側から溝部34の底部34aの上方に張り出し形成される張出部35とを備えている。張出部35の間には、所定の間隔の空間36が設けられている。また、固定部材31は、溝部34の一方の側面の開口を閉鎖する壁部37が形成されている。壁部37の上端は、張出部35の上面と同一の高さに位置する。
【0030】
ここで、溝部34の幅(
図3左右寸法)は、取付部材11の上面配置部13の幅(
図2X方向寸法)より少し大きめに設定されている。また、溝部34の底部34aと張出部35との隙間は、上面配置部13の厚さより少し大きめに設定されている。また、空間36の幅(
図3左右寸法)は、中心部材12の上面配置部13側の外径より少し大きめに設定されている。さらに、溝部34の一方の開口から壁部37までの長さは、上面配置部13の長さ(
図2Y方向寸法)より少し大きめに設定されている。
【0031】
なお、固定部材31は、両端に上述した取付穴h2が板厚方向(
図3上下方向)に穿設されており、その取付穴h2に挿通されたボルトを車体側に螺合することで、下面側(
図3下側)が取付面となって、車体側に締結固定される。車体側への取付面となる固定部材31の下面に逃げ部31aが形成される。逃げ部31aが形成された分だけ固定部材31の厚さが薄く設定され、第2ブラケット30が車体側に固定されると車体側と固定部材31との間に隙間が形成される。
【0032】
次に
図4及び
図5を参照して防振ユニット1について説明する。
図4は防振ユニット1の背面図であり、
図5は
図4のV−V線における防振ユニット1の断面図である。なお、
図4は、下面配置部14bが固定部材31に圧着される前の防振ユニット1の製造途中の状態を図示し、
図5は、下面配置部14bが固定部材31に圧着された後の防振ユニット1を図示している。
【0033】
まず、
図5を参照して防振装置10について説明する。防振装置10は、第2ブラケット30(
図3参照)を介して車体側に取り付けられる中心部材12と、第1ブラケット20を介してエンジン側に取り付けられる筒状の外筒部材15と、これら両部材12,15を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体16とを主に備えている。
【0034】
中心部材12は、上窄まりの有底円筒状に形成され防振基体16が接着される先端部12aと、先端部12aから上面配置部13にかけて延設される軸状の軸部12bとを備えている。先端部12a及び軸部12bは、軸O回りに対称に形成される。
【0035】
外筒部材15は、鉄鋼材料から上下端(
図5上側および下側)が開口した筒状に形成され、中心部材12の上方(
図5上側)に同軸状に配設される。なお、外筒部材15は、段差を有して構成されており、その段差の下側(
図5下側)に大径の筒部が、段差の上側(
図5上側)に小径の筒部が、それぞれ配設されると共に、大径の筒部が第1ブラケット20に軸O方向に圧入され保持される。
【0036】
防振基体16は、ゴム状弾性体から軸O回りに対称な下窄まりの断面略円錐台形状に形成され、中心部材12の先端部12aにおける外面と外筒部材15の内壁面との間に加硫接着される。また、防振基体16には、ゴム状弾性体からなり軸部12b、上面配置部13及び折曲面部14の外面を覆うゴム膜16aが連なる。ゴム膜16aで被覆された軸部12bの外径は、張出部35間の空間36の幅と略同一の大きさに設定され、ゴム膜16aで被覆された上面配置部13の幅は、溝部34の幅と略同一の大きさに設定される。また、ゴム膜16aで被覆された上面配置部13の厚さは、底部34aと張出部35との間隔と略同一の大きさに設定される。
【0037】
外筒部材15の内部には、ダイヤフラム17と、仕切り部材18と、弾性仕切り膜19とが配設される。ダイヤフラム17は、ゴム状弾性体から部分球状を有するゴム膜状に形成され、外筒部材15の上端側(
図5上側)に密着(水密)状態で装着される。その結果、ダイヤフラム17の下面側と防振基体16の上面側との間に液体が封入される液体封入室が形成される。
【0038】
液体封入室には、エチレングリコールなどの不凍性の液体(図示せず)が封入される。仕切り部材18は、液体封入室を防振基体16側の第1液室とダイヤフラム側の第2液室とに仕切る部材であり、その外周側には、第1液室と第2液室とを連通させるオリフィス流路が形成される。また、仕切り部材18の中央には、複数の開口がそれぞれ形成された一対の対向壁が対向配置され、その対向間にゴム状弾性体から円板状に形成された弾性仕切り膜19が収納される。
【0039】
防振ユニット1のように、防振装置10を倒立配置して中心部材12を車体側に取り付けると共に外筒部材15を車体側に取り付けることで、仕切り部材18から車体側までの振動伝達経路の一部を防振基体16によって構成することができる。よって、弾性仕切り膜19が仕切り部材18の対向壁に衝突して、規制板が振動した場合には、その振動が車体側へ伝達されることを、振動伝達経路の一部を構成する防振基体16の振動絶縁効果により、確実に抑制して、異音の発生を低減できる。
【0040】
次に、防振装置10の製造方法について説明する。防振装置10の製造は、まず、取付部材11及び外筒部材15が設置された加硫金型(図示せず)内へゴム状弾性体を充填し、取付部材11と外筒部材15との間が防振基体16により連結された成形体を加硫成形する。防振基体16を加硫成形すると同時に、取付部材11の表面に、ゴム状弾性体からなるゴム膜16aを加硫成形する。
【0041】
次いで、成形体に対し、外筒部材15の開口から、仕切り部材18とダイヤフラム17とを順に嵌め込み、外筒部材15の開口縁部(小径の筒部の上端)全体を径方向に縮径加工(絞り加工)する。これにより、防振装置10の製造が完了する(防振装置形成工程)。なお、仕切り部材18は、その一対の対向壁の間に弾性仕切り膜19を収納した状態で、成形体へ嵌め込まれる。
【0042】
次に防振ユニット1の製造方法について説明する。まず、防振装置10の外筒部材15を第1ブラケット20の圧入穴へ軸O方向に圧入し、第1ブラケット20に防振装置10の外筒部材15を保持させる(第1ブラケット保持工程)。次いで、ストッパゴムSGを防振装置10の上端側(
図1上側)から装着した後、防振装置10の防振基体16及び防振装置10に装着されたストッパゴムSGを第2ブラケット30の開口に圧入する。
【0043】
なお、防振基体16の軸方向長(
図5上下方向長さ)は、防振装置10が第2ブラケット30の開口に圧入された状態で、防振基体16が張出部35の上面を押圧する大きさに設定されている。即ち、防振基体16には軸方向の圧入代が設けられている。防振基体16の軸方向の圧入代は、防振装置10に上下方向(軸方向)荷重の想定される最大値が入力された状態で、防振基体16の反力が生じるような大きさに設定される。
【0044】
防振装置10を第2ブラケット30に圧入するときには、同時に、防振装置10の上面配置部13を第2ブラケット30の溝部34(
図3参照)に挿入しつつ、張出部35間の空間36に軸部12bを通過させる。溝部34に挿入される上面配置部13は、壁部37に上面配置部13が突き当たること、又は、折曲面部14が固定部材31の側面に当たることで、それ以上の挿入が規制される(防振装置挿入工程)。
【0045】
次いで、取付部材11の折曲面部14の先端側を固定部材31の下面に向けて折曲する。折曲面部14の先端側が折曲されることで固定部材31の下面に下面配置部14bが配置される。下面配置部14bが固定部材31に圧着されることにより、取付部材11が固定部材31にかしめ固定(塑性結合)される(固定部材圧着工程)。これにより第2ブラケット30に対して防振装置10が固定され、防振ユニット1の製造が完了する。
【0046】
なお、固定部材31の下面に逃げ部31aが形成されており、逃げ部31aの分だけ固定部材31の厚さが薄く設定されているので、折曲面部14を折曲して下面配置部14bを固定部材31の下面に配置した場合に、第2ブラケット30の車体側への取付面から下面配置部14bが突出することを防止できる。
【0047】
このように防振ユニット1は、防振装置10の取付部材11を第2ブラケット30の固定部材31にかしめ固定するので、従来品のように防振装置910(
図15参照)のボス部材911を第2ブラケット930の固定部材931にボルトBで固定(締結固定)する場合と比較して、ボルトBを省略できる分、部品点数の削減を図ることができる。
【0048】
また、このようにボルトBが省略できれば、ボルトBを螺合するための雌ねじ部911aを防振装置910のボス部材911に形成(即ち、穴を開け、その内周面に雌ねじを螺刻)する必要がないので、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる。さらに、
図5に示す防振基体16を加硫接着するために、防振装置10の取付部材11(
図2参照)を化成処理する際には、雌ねじ部をマスキングボルトで保護する工程を行う必要がないので、マスキングボルトを着脱する作業を不要として、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる。また、マスキングボルトを準備することも不要なので、その分、製造コストの削減を図ることができる。
【0049】
また、防振装置10は、中心部材12の先端部12aから上面配置部13にかけて軸状の軸部12bが延設される。第2ブラケット30は、固定部材31の上面に溝部34が凹設され、その溝部34が固定部材31の側面に開口し、底部34aに上面配置部13が配置される。溝部34の両側から底部34の上方に張出部35が張り出し形成され、軸部12bが通過可能な断面形状の空間36が設けられる。ゴム膜16aで被覆された軸部12bの外径は、張出部35間の空間36の幅と略同一の大きさに設定されているので、軸部12bは張出部35間に嵌入される。
【0050】
また、ゴム膜16aで被覆された上面配置部13の幅は溝部34の幅と略同一の大きさに設定されており、ゴム膜16aで被覆された上面配置部13の厚さは底部34aと張出部35との隙間と略同一の大きさに設定されているので、上面配置部13は溝部34に嵌入される。これにより、固定部材13に形成された溝部34内に取付部材11を挿入できると共にガタつきなく固定できる。
【0051】
また、防振基体16の下面に張出部35の上面が押圧されるので、第2ブラケット30に対する防振装置10の下方への相対変位を規制できる。その結果、防振装置10による防振性能を確保できる。さらに、防振基体16の軸方向の圧入代は、防振装置10に上下方向(軸方向)荷重の想定される最大値が入力された状態で、防振基体16の反力が生じるような大きさに設定されているので、防振ユニット1の使用状態において、防振装置10の軸方向位置を安定にできる。その結果、防振ユニット1による防振性能を確保できる。
【0052】
また、第2ブラケット30は、取付部材11の側面配置部14aが配置される固定部材31の側面に溝部34の一方の開口が形成され、その反対側の側面に溝部34の他方の開口を閉鎖する壁部37が形成されている。よって、第2ブラケット30の溝部34の一方の開口から防振装置10の上面配置部13を挿入すると、上面配置部13が壁部37に突き当たることで上面配置部13の挿入が規制される。壁部37により第2ブラケット30に対する防振装置10の位置決めを行うことができるので、防振ユニット1の組立工程を簡素化できると共に、第2ブラケット30に対する防振装置10の挿入位置がばらつくことを抑制して、挿入位置の位置精度を向上できる。
【0053】
また、防振ユニット1の使用状態においては、上面配置部13が壁部37に突き当たるか、又は、側面配置部14aが固定部材31の側面に突き当たることで、第2ブラケット30に対する防振装置10の軸直角方向の相対変位を規制できる。従って、その方向の入力荷重に対抗できる。よって、取付部材11が固定部材31に固定された状態を強固に維持できる。
【0054】
また、軸部12b、上面配置部13、側面配置部14a及び下面配置部14bは、防振基体16を構成するゴム状弾性体と一体に形成されるゴム膜16aで覆われているので、取付部材11(軸部12b、上面配置部13及び折曲面部14)の塗装(防錆塗装等)を不要にできる。また、鉄鋼材料製の取付部材11とアルミニウム合金製の第2ブラケット30とはゴム膜16aを介して接触するので、電食により取付部材11や第2ブラケット30が腐食することを防止できる。
【0055】
また、取付部材11にゴム膜を形成しない構成とする場合と比較して、防振装置10の製造時に用いる加硫金型のシール性の要求精度を緩やかにできるので、その分、製造コストの削減を図ることができる。さらに、取付部材11にゴム膜16aを形成しない構成とする場合と比較して、取付部材11等に付着したゴムバリを除去する作業を省略できるので、作業工数の削減を図ることができる。
【0056】
また、取付部材11がゴム膜16aで覆われているので、溝部34内に挿入された取付部材11と第2ブラケット30との間でゴム膜16aによる反力を得ることができる。よって、防振ユニット1の使用状態において、防振ユニット1に荷重が入力されたときに取付部材11がガタつくのを防止できる。
【0057】
また、中心部材12は有底筒状に形成されているので、中実状に形成されたボス部材911(
図15参照)を用いる場合と比較して、防振装置10を軽量化できる。また、中心部材12を取付部材11と一体に形成することで、中心部材12と取付部材11とを別部材とする場合と比較して、部品点数を削減できる。
【0058】
さらに、取付部材11の一部(下面配置部14b)を固定部材31の下面に配置し、その下面配置部14bを固定部材31に圧着するので、防振ユニット1に入力される上下方向荷重を下面配置部14bで受けることができる。上下方向荷重の受け面(下面配置部14b)の面積を大きくできるので、従来の防振ユニット901(
図15参照)のボルトBと同程度の機械的強度を確保できる。
【0059】
次に
図6から
図8を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、取付部材11の上面配置部13及び下面配置部14bにより固定部材31を圧着挟持する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、取付部材111の上面配置部13及び下面配置部114bにより固定部材31を圧着挟持するのに加え、側面配置部114a及び側面対向部114cにより取付部材111の軸直角方向の相対移動を規制する場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明したものと同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0060】
図6は第2実施の形態における防振ユニット101を構成する第1ブラケット20及び防振装置110の背面側からの斜視図であり、
図7は防振ユニット101の背面図であり、
図8は
図7のVIII−VIII線における防振ユニット101の断面図である。
図6に示すように防振装置110は、取付部材111が防振基体16(
図8参照)に加硫接着されている。取付部材111は、上面配置部13と、折曲部13aを介して上面配置部13に略直交する平板状で矩形の折曲面部114とを備えている。
【0061】
図7及び
図8に示すように、折曲面部114は2箇所で折曲されることで、固定部材31の側面に配置される側面配置部114a、固定部材31の下面に配置される下面配置部114b、固定部材31の側面に配置されると共に側面配置部114aと対向する側面対向部114cが形成される部位である。そのため折曲面部114は、第1実施の形態における取付部材11の折曲面部14より長めに形成されている。
【0062】
次に防振ユニット101の製造方法について説明する。防振ユニット101は、防振装置110を第2ブラケット30に圧入して製造される。防振装置110を第2ブラケット30に圧入するときには、同時に、防振装置110の上面配置部13を第2ブラケット30の溝部34(
図3参照)に挿入しつつ、張出部35間の空間36に軸部12bを通過させる。
【0063】
次いで、取付部材111の折曲面部114の先端側を固定部材31の下面に向けて折曲する。折曲面部114の先端側が折曲されることで固定部材31の下面に下面配置部114bが配置される。下面配置部114bを固定部材31に圧着することにより、取付部材111が固定部材31にかしめ固定される。さらに、壁部37に沿って折曲面部114の先端側を折り曲げ、側面対向部114cを形成し、側面対向部114c及び側面配置部114aにより固定部材31の相対変位を規制する。これにより防振ユニット101の製造が完了する。
【0064】
以上のように製造される防振ユニット101によれば、取付部材111は、下面配置部114bから固定部材31の側面に向けて側面対向部114cが折曲される。その側面対向部114cは側面配置部114aと対向するので、第2ブラケット30に対して防振装置110が軸直角方向(
図5左右方向)に相対移動することを規制できる。
【0065】
よって、防振ユニット101の使用状態においては、固定部材31の両側面に側面配置部114a及び側面対向部114cが当たることで、第2ブラケット30に対する防振装置110の軸直角方向(
図5左右方向)の相対変位を規制できる。従って、第1実施の形態における防振ユニット1の奏する効果に加え、防振ユニット101は軸直角方向(
図5左右方向)の入力荷重に対抗することができ、取付部材111が固定部材31に固定された状態を強固に維持できる。
【0066】
次に
図9を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施の形態では、防振ユニット101を組み立てる際、防振装置110を第2ブラケット30に圧入した後、取付部材111(折曲面部114)を2箇所で折曲することにより下面配置部114b及び側面対向部114cを形成し、固定部材31に圧着固定する場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、防振ユニット201を組み立てる際、防振装置210を第2ブラケット30に圧入した後、取付部材211(折曲面部214)を1箇所折曲することにより下面配置部214b及び側面対向部を形成し、固定部材31に圧着固定する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図9は第3実施の形態における防振ユニット201を構成する第1ブラケット20及び防振装置210の背面側からの斜視図である。
【0067】
図9に示すように防振装置210は、取付部材211が防振基体16(
図8参照)に加硫接着されている。取付部材211は、上面配置部13と、折曲部13aを介して側面視して略L字状に形成された折曲面部214とを備えている。折曲面部214は、第2ブラケット30の固定部材31の側面に位置する側面配置部214aが形成され、予め折曲されることで、上面配置部13と対向する下面配置部214bが形成される。折曲面部214の長さ(上面配置部13及び下面配置部214bの合計長さ)は、第2実施の形態における取付部材111の折曲面部114と同一の長さに設定されている。
【0068】
次に防振ユニット201の製造方法について説明する。防振ユニット201は、防振装置210を第2ブラケット30に圧入して製造される。防振装置210を第2ブラケット30に圧入するときには、同時に、防振装置210の上面配置部13を第2ブラケット30の溝部34(
図3参照)に挿入しつつ、張出部35間の空間36に軸部12bを通過させると共に、下面配置部214bを固定部材31の下面に沿わせる。
【0069】
次いで、取付部材211の折曲面部214(下面配置部214b)の先端側を、壁部37に沿って折り曲げて側面対向部を形成する。下面配置部214bを固定部材31の下面に圧着し、上面配置部13と下面配置部214bとの間、及び、側面配置部214aと側面対向部との間で固定部材31を挟持する。これにより防振ユニット201の製造が完了する。
【0070】
以上のように製造される防振ユニット201によれば、防振装置210を第2ブラケット30に圧入して防振ユニット201を組み立てるときの取付部材211の折曲回数を、第2実施の形態における防振ユニット101と比較して削減できる。これにより、防振ユニット201の組み立て作業時の作業工数を削減できる。
【0071】
次に
図10から
図12を参照して、第4実施の形態について説明する。第2実施の形態では、取付部材111の折曲面部114の先端側を折曲して、側面配置部114aと対向する側面対向部114cを形成する場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、取付部材311の上面配置部13の先端側に延設された延設部315を折曲して、側面配置部14aと対向する側面対向部315aを形成する場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明したものと同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0072】
図10は第4実施の形態における防振ユニット301を構成する第1ブラケット20及び防振装置310の背面側からの斜視図であり、
図11は第2ブラケット330の背面側からの斜視図であり、
図12は防振ユニット301の断面図である。なお、
図12は、防振装置310の軸Oを含む平面で切断した縦断面に対応する。
【0073】
図10に示すように防振装置310は、取付部材311が防振基体16(
図12参照)に加硫接着されている。取付部材311は、上面配置部13と、上面配置部13の一端側が軸O方向に折曲された折曲面部14と、上面配置部13の他端側が軸直角方向に延設された延設部315とを備えている。
【0074】
図11に示すように第2ブラケット330は、壁部37が省略されている以外は、第1実施の形態で説明した第2ブラケット30と同様に構成されているので、詳細な説明を省略する。第2ブラケット330は、壁部37が省略されることで溝部34が固定部材31の両側面に開口する。
【0075】
図12に示すように、延設部315は2箇所で折曲されることで、固定部材31の側面に配置されると共に側面配置部14aと対向する側面対向部315aと、固定部材31の下面に配置されると共に上面配置部13と対向する下面配置部315bとが形成される。
【0076】
次に防振ユニット301の製造方法について説明する。防振ユニット301は、防振装置310を第2ブラケット330に圧入して製造される。防振装置310を第2ブラケット330に圧入するときには、同時に、防振装置310の上面配置部13を第2ブラケット330の溝部34(
図11参照)に挿入しつつ、張出部35間の空間36に軸部12bを通過させる。次いで、取付部材311の折曲面部14の先端側を固定部材31の下面に向けて折曲する。折曲面部14の先端側が折曲されることで固定部材31の下面に配置される下面配置部14bを固定部材31に圧着し、下面配置部14bと上面配置部13との間で固定部材31を挟持する。
【0077】
また、取付部材311の延設部315の先端側を固定部材31の側面および下面に向けて折曲する。延設部315の先端側が折曲されることで、固定部材31の側面に配置される側面対向部315a及び固定部材31の下面に配置される下面配置部315bが形成される。固定部材31の下面に配置される下面配置部315bと上面配置部13との間で固定部材31を上下から圧着挟持する。さらに、固定部材31の両側面に配置される側面配置部14a及び側面対向部315aにより固定部材31に対して取付部材311が位置規制される。これにより防振ユニット301の製造が完了する。
【0078】
以上のように製造される防振ユニット301によれば、使用状態において、固定部材31の両側面に側面配置部14a及び側面対向部315aが当たることで、第2ブラケット330に対する防振装置310の軸直角方向(
図12左右方向)の相対変位を規制できる。従って、第1実施の形態における防振ユニット1の奏する効果に加え、防振ユニット301は軸直角方向(
図12左右方向)の入力荷重に対抗することができ、取付部材311が固定部材31に固定された状態を強固に維持できる。
【0079】
次に
図13を参照して第5実施の形態について説明する。第1実施の形態から第4実施の形態では、防振基体16が加硫接着される中心部材12と取付部材11,111,211,311とが一部材として形成される場合について説明した。これに対し第5実施の形態では、中心部材12と取付部材414とが別部材として形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図13は第4実施の形態における防振ユニット401の断面図であり、防振装置410の軸Oを含む平面で切断した縦断面に対応する。
【0080】
図13に示すように、防振基体16に加硫接着される中心部材12は、開口端(下端)の周囲に上面配置部413が延設され、それらが亜鉛メッキ鋼板等の防食性めっき鋼板により一体に形成されている。中心部材12及び上面配置部413は防食性めっき鋼板により形成されているので、上面配置部413の表面の塗装や、ゴム膜による上面配置部413の被覆を省略できる。
【0081】
取付部材414は、亜鉛メッキ鋼板等の防食性めっき鋼板により形成される矩形の板材であり、固定部材31に対して上面配置部413をかしめ固定するための部材である。取付部材414は防食性めっき鋼板により形成されているので、取付部材414の表面の塗装や、ゴム膜による取付部材414の被覆を省略できる。取付部材414は、長手方向に直交する部位で折曲することにより、係合部414a、側面配置部414b、下面配置部414c及び側面対向部414dが形成される。
【0082】
係合部414aは、上面配置部413に密着して張出部35の下方に配置される部位であり、側面配置部414bは、係合部414aに対して折曲され固定部位31の側面に配置される部位である。下面配置部414cは、側面配置部414bに対して折曲され固定部材31の下面に配置される部位であり、側面対向部414dは、下面配置部414cに対して折曲され固定部材31の側面に配置されると共に側面配置部414bと対向する部位である。
【0083】
次に防振ユニット401の製造方法について説明する。防振ユニット401は、防振装置410を第2ブラケット30に圧入して製造される。防振装置410を第2ブラケット30に圧入するときには、同時に、防振装置410の上面配置部413を第2ブラケット30の溝部34(
図3参照)に挿入し、上面配置部413を溝部34の底部34aに配置する。次いで、係合部414a、側面配置部414b及び下面配置部414cを設けるべく予め2箇所で折曲され略U字状に形成された取付部材414の一端(係合部414a)を、上面配置部413と張出部35との隙間に差し込む。
【0084】
次いで、固定部材31の側面に側面配置部414bを配置すると共に、固定部材31の下面に下面配置部414cを配置した後、係合部414aと下面配置部414cとの間で固定部材31を上下から圧着挟持する。上面配置部413は係合部414a及び固定部材31に挟持されるので、係合部414aと下面配置部414cとの間で固定部材31を上下から圧着挟持することで、上面配置部413は取付部材414により固定部材31に固定される。
【0085】
また、取付部材414の他端側が固定部材31の側面に向けて折曲される。取付部材414の他端側が折曲されることで、側面配置部414bと対向して固定部材31の側面に配置される側面対向部414dが形成される。固定部材31の両側面に配置される側面配置部414b及び側面対向部414dにより固定部材31に対して取付部材414が位置規制される。これにより防振ユニット401の製造が完了する。
【0086】
以上のように製造される防振ユニット401によれば、中心部材12と取付部材414とが別部材により形成されているが、上面配置部413と係合する係合部414aを取付部材414に設けることで、中心部材12と一体に形成された上面配置部413を第2ブラケット30にかしめ固定できる。
【0087】
また、防振ユニット401の使用状態において、固定部材31の両側面に側面配置部414b及び側面対向部414dが位置することで、第2ブラケット30に対する防振装置410の軸直角方向(
図13左右方向)の相対変位を規制できる。従って、第1実施の形態における防振ユニット1の奏する効果に加え、防振ユニット401は軸直角方向(
図13左右方向)の入力荷重に対抗することができ、中心部材12が固定部材31に対して固定された状態を強固に維持できる。
【0088】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0089】
また、上記各実施の形態の一部または全部の構成を、他の実施の形態の構成と組み合せても良く、或いは置き換えても良い。例えば、第1実施の形態から第3実施の形態における取付部材11,111,211,311を、第4実施の形態の取付部材414のように防食性めっき鋼板製とすることにより、ゴム膜を形成しない構成とする形態が挙げられる。また、第1実施の形態から第3実施の形態における中心部材12と一体形成された取付部材11,111,211,311を、第4実施の形態のように、中心部材12とは別部材とする形態が挙げられる。
【0090】
上記各実施の形態では説明を省略したが、取付部材11,111,211,311,414が配置される固定部材31の表面に凹部または凸部を形成し、その凹部または凸部に取付部材を重ねた後、凸形状または凹形状のかしめヘッドを押圧することで、取付部材11,111,211,311,414と固定部材31とをかしめ結合(塑性結合)することは可能である。このように凹凸をかみ合わせることで、固定部材31の表面に平行な方向の引張強さを向上できる。
【0091】
また、上記各実施の形態では説明を省略したが、固定部材31に厚さ方向に貫通する孔を設け、その孔に取付部材11,111,211,311,414の一部を差し込み、孔から突出した取付部材の一部の折り曲げ、捻り、潰し等により固定部材31に取付部材11,111,211,311,414を塑性結合することは当然可能である。
<その他>
<手段>
技術的思想1の防振ユニットは、筒状の外筒部材、前記外筒部材の下方に同軸状に配設される中心部材、及び、前記中心部材および前記外筒部材を連結すると共にゴム状弾性体からなる防振基体を有する防振装置と、前記防振装置の外筒部材が軸方向に圧入されることで前記防振装置を保持すると共に振動源側に取り付けられる第1ブラケットと、前記防振装置の中心部材が固定される固定部材、前記固定部材の両側から上方へ向けて立設され前記防振基体を挟んで対向配置される一対の立設部材、及び、前記一対の立設部材の立設先端同士を接続し前記防振基体を挟んで前記固定部材と対向配置される接続部材を有すると共に車体側に取り付けられる第2ブラケットとを備える防振ユニットにおいて、前記中心部材に連結されるカシメ結合部材を備え、前記カシメ結合部材の所定部が前記固定部材に圧着されることで、前記防振装置の中心部材が前記第2ブラケットの固定部材に固定される。
技術的思想2の防振ユニットは、技術的思想1記載の防振ユニットであって、前記中心部材に連結されると共に前記固定部材の上面に配置される上面配置部を備え、前記カシメ結合部材は、前記上面配置部に一端側が連結され、前記固定部材の上面から側面に向けて他端側が折曲されて前記固定部材の側面に配置される側面配置部と、前記側面配置部から前記固定部材の下面に向けて折曲されると共に前記固定部材に圧着される下面配置部とを備えている。
技術的思想3の防振ユニットは、技術的思想2記載の防振ユニットであって、前記防振装置は、前記中心部材から前記上面配置部にかけて延設される軸状の軸部を備え、前記第2ブラケットは、前記固定部材の上面に凹設されると共に前記固定部材の側面に開口し、前記上面配置部が底部に配置される溝部と、少なくとも前記軸部が通過可能な断面形状の空間を設けて前記溝部の両側から底部の上方に張り出し形成されると共に、前記防振基体の下面に上面が押圧される張出部とを備えている。
技術的思想4の防振ユニットは、技術的思想3記載の防振ユニットであって、前記第2ブラケットは、前記取付部材の側面配置部が配置される前記固定部材の側面に溝部の一方の開口が形成され、その反対側の側面に溝部の他方の開口を閉鎖する壁部が形成されている。
技術的思想5の防振ユニットは、技術的思想2から4のいずれか1項に記載の防振ユニットであって、前記カシメ結合部材は、前記下面配置部または前記上面配置部から前記固定部材の側面に向けて折曲され前記側面配置部と対向する側面対向部を備えている。
技術的思想6の防振ユニットは、技術的思想2から5のいずれか1項に記載の防振ユニットであって、前記上面配置部、前記側面配置部および前記下面配置部は、前記防振基体を構成するゴム状弾性体と一体に形成されるゴム膜で覆われている。
技術的思想7の防振ユニットは、技術的思想1から6のいずれか1項に記載の防振ユニットであって、前記中心部材は、有底筒状に形成されると共に前記カシメ結合部材と一体に形成されている。
<効果>
技術的思想1記載の防振ユニットによれば、筒状の外筒部材、外筒部材の下方に同軸状に配設される中心部材、及び、中心部材および外筒部材を連結すると共にゴム状弾性体からなる防振基体を有する防振装置が、軸方向に外筒部材が圧入されることで、振動源側に取り付けられる第1ブラケットに保持される。また、防振装置の中心部材が固定される固定部材、固定部材の両側から上方へ向けて立設され防振基体を挟んで対向配置される一対の立設部材、及び、一対の立設部材の立設先端同士を接続し防振基体を挟んで固定部材と対向配置される接続部材を有する第2ブラケットを介して、防振装置が車体側に取り付けられる。
防振装置の中心部材にカシメ結合部材が連結され、カシメ結合部材の所定部が固定部材に圧着されることで、防振装置の中心部材が第2ブラケットの固定部材に固定される。よって、ボルトを用いて防振装置を第2ブラケットに締結固定する場合と比較して、ボルトを省略できる分、部品点数の削減を図ることができる効果がある。また、このようにボルトが省略できれば、雌ねじ部を防振装置に形成する必要がないので、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる効果がある。さらに、防振装置を化成処理する際には、雌ねじ部をマスキングボルトで保護する工程が要らないので、マスキングボルトを着脱する作業を不要として、その分、製造時の作業工数の削減を図ることができる効果がある。
技術的思想2記載の防振ユニットによれば、中心部材に連結される上面配置部が第2ブラケットの固定部材の上面に配置され、上面配置部に一端側が連結されるカシメ取付部材の側面配置部が、固定部材の上面から側面に向けて他端側が折曲されて固定部材の側面に配置される。側面配置部から固定部材の下面に向けて折曲される下面配置部が、固定部材に圧着されるので、防振ユニットの使用状態においては、側面配置部が配置された固定部材の側面と反対側の側面に向かう中心部材の変位が、カシメ取付部の側面配置部により規制される。側面配置部により中心部材の位置決めを行うことができるので、技術的思想1の効果に加え、防振装置の中心部材が第2ブラケットの固定部材に対して固定された状態を維持できる効果がある。
技術的思想3記載の防振ユニットによれば、防振装置は、中心部材から上面配置部にかけて軸状の軸部が延設される。第2ブラケットは、固定部材の上面に溝部が凹設され、その溝部が固定部材の側面に開口し、底部に上面配置部が配置される。溝部の両側から底部の上方に張出部が張り出し形成され、少なくとも軸部が通過可能な断面形状の空間が設けられる。防振基体の下面に張出部の上面が押圧されるので、第2ブラケットに対する防振装置の下方への相対変位を規制できる。その結果、技術的思想2の効果に加え、防振装置による防振性能を確保できる効果がある。
技術的思想4記載の防振ユニットによれば、第2ブラケットは、カシメ結合部材の側面配置部が配置される固定部材の側面に溝部の一方の開口が形成され、その反対側の側面に溝部の他方の開口を閉鎖する壁部が形成されている。よって、第2ブラケットの溝部の一方の開口から防振装置の上面配置部を挿入すると、上面配置部が壁部に突き当たることで上面配置部の挿入が規制される。壁部により第2ブラケットに対する防振装置の位置決めを行うことができるので、技術的思想3の効果に加え、防振ユニットの組立工程を簡素化できると共に、第2ブラケットに対する防振装置の挿入位置がばらつくことを抑制して、挿入位置の位置精度を向上できる効果がある。
技術的思想5記載の防振ユニットによれば、カシメ結合部材は、下面配置部または上面配置部から固定部材の側面に向けて側面対向部が折曲される。その側面対向部は側面配置部と対向するので、技術的思想2から4のいずれかの効果に加え、第2ブラケットに対して防振装置が軸直角方向に相対移動することを規制できる効果がある。その結果、防振装置の中心部材が第2ブラケットの固定部材に対して固定された状態を強固に維持できる効果がある。
技術的思想6記載の防振ユニットによれば、上面配置部、側面配置部および下面配置部は、防振基体を構成するゴム状弾性体と一体に形成されるゴム膜で覆われているので、技術的思想2から5のいずれかの効果に加え、上面配置部、側面配置部および下面配置部の塗装を不要にできる効果がある。また、上面配置部、側面配置部および下面配置部と第2ブラケットとはゴム膜を介して接触するので、取付部材と第2ブラケットとが異種金属の場合であっても、電食により取付部材や第2ブラケットが腐食することを防止できる効果がある。
また、上面配置部、側面配置部および下面配置部にゴム膜を形成しない構成とする場合と比較して、防振装置の製造時に用いる加硫金型のシール性の要求精度を緩やかにできるので、その分、製造コストの削減を図ることができる効果がある。さらに、上面配置部、側面配置部および下面配置部にゴム膜を形成しない構成とする場合と比較して、上面配置部等に付着したゴムバリを除去する作業を省略できるので、作業工数の削減を図ることができる効果がある。
技術的思想7記載の防振ユニットによれば、中心部材は有底筒状に形成されているので、中実状に形成された中心部材(ボス部材)を用いる場合と比較して、技術的思想1から6のいずれかの効果に加え、防振装置を軽量化できる効果がある。また、中心部材を取付部材と一体に形成することで、中心部材と取付部材とを別部材とする場合と比較して、部品点数を削減できる効果がある。