特許第6042715号(P6042715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042715
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】上下伸縮自在支柱の制動及びロック機構
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/14 20060101AFI20161206BHJP
   A45B 7/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   F16B7/14 K
   A45B7/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-284371(P2012-284371)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-126161(P2014-126161A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】510046929
【氏名又は名称】株式会社樋原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】樋原 壽一
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−253121(JP,A)
【文献】 実開昭51−126772(JP,U)
【文献】 実開昭55−001013(JP,U)
【文献】 実開昭54−072260(JP,U)
【文献】 実公昭44−015749(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/00−7/22
A45B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持管と、この支持管の内部に収納される伸縮棒状体と、この伸縮棒状体を適宜高さ位置に固定する固定手段が前記支持管の上端部に設けられた上下伸縮自在支柱において、
前記固定手段が支持管(11)の上端に固定される接続部(20)に設けられ、この接続部(20)を介して前記支持管(11)の内部に前記伸縮棒状体(15)が収納され且つ上方に伸長可能となり、
前記接続部(20)は、その下端で前記支持管(11)と連結固定される筒状本体部(21)とその外周で上下に摺動する摺動筒体(22)とからなり、
前記筒状本体部(21)の適宜位置には半径方向に出没する1又は2以上のストッパーボール(26)を備え、摺動筒体(22)の内周と筒状本体部(21)の外周との間にコイルスプリング(27)等の弾性部材を介在させることにより摺動筒体(22)を常に上方に付勢して上記ストッパーボール(26)を軸芯方向に押圧でき、
前記伸縮棒状体(15)の下方外周面には環状溝部(16)を形成して前記ストッパーボール(26)と適合でき、これによって伸縮棒状体(15)の環状溝部(16)と筒状本体部(21)側のストッパーボール(26)が適合することにより伸縮棒状体(15)が筒状本体部(21)に固定され、
摺動筒体(22)を付勢方向に反して下方に移行させることによりストッパーボール(26)が摺動筒体(22)の内周面の大きい内径を有する径大部(30)と適合して外側に移行することにより、両者の適合が解除され、伸縮棒状体(15)と筒状本体部(21)との固定が解除され、
前記接続部(20)の筒状本体部(21)の上方部分を適宜長く形成し、筒状本体部(21)の上端部の位置を摺動筒体(22)の上端部の位置から離間し、
前記伸縮棒状体(15)の下端部には外側方向に付勢する弾性体を設け、かかる弾性体が支持管(11)の内壁面を押圧付勢し、これにより伸縮棒状体(15)の上下摺動動作に制動力が作用し、
前記接続部(20)の摺動筒体(22)を筒状本体部(21)に対して周方向に回動可能とし、摺動筒体(22)の下端周縁部の少なくとも1箇所に切欠部(23)を設け、他方、筒状本体部(21)の外周面には突起部(24)を設け、この突起部(24)に前記摺動筒体(22)の下端周縁部が当接した位置では、筒状本体部(21)内に配設されたストッパーボール(26)は伸縮棒状体(15)の環状溝部(16)との適合が解除されず、前記突起部(24)が前記摺動筒体(22)の下端周縁部に設けられた前記切欠部(23)と適合した位置では、摺動筒体(22)の内周面の径大部(30)に前記ストッパーボール(26)が移行して伸縮棒状体(15)の環状溝部(16)との適合が解除されることを特徴とする上下伸縮自在支柱の制動及びロック機構。
【請求項2】
伸縮棒状体(15)の下端部に設けた弾性体が、略V字形状の弾性線条材(18)を使用し、伸縮棒状体(15)の下端部には長手方向に2つの切込(19)を設け、伸縮棒状体(15)の下端部に設けた直径方向の支軸(17)に前記略V字形状の弾性線条材(18)を固定して弾性線条材(18)の先端部分が前記切込(19)から伸縮棒状体(15)の外部に延長し、これにより支持管(11)の内壁面を押圧付勢できることを特徴とする請求項1に記載の上下伸縮自在支柱の制動及びロック機構。
【請求項3】
前記支持管(11)と接続部(20)とが一体的に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の上下伸縮自在支柱の制動及びロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴用スタンド、カメラの三脚、照明用スタンド等の上下方向に伸縮自在な各種支柱に関する制動機構及びロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の上下方向伸縮自在支柱としては、下記特許文献に記載の発明を挙げることができる。
この特許文献に記載の点滴用スタンドは、薬液容器を吊り下げ支持する支持部を不使用時に邪魔にならないようにすることを課題とするものである。
【0003】
その構成は、筒状の本体部と、本体部の内部に収納され且つ本体部の内部から上方に伸長して固定される伸縮自在の伸縮棒状体と、その上方部に設けられた点滴用薬剤を吊り下げ支持する支持部とから成る。2つの支持部を伸縮棒状体の上端部に回動自在に設け、これら支持部を回動させて伸縮棒状体と同じ長手方向に整列させることにより、こららの支持部を伸縮棒状体と同様に本体部の内部に収納することができる。伸縮棒状体の上下伸縮は、固定手段として本体部の上端に設けられた摺動筒体の上下の摺動動作によって固定され又は固定解除されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−253121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の点滴用スタンドにおいては、筒状の本体部(支持管)の内部から伸縮棒状体を上方に伸長させて所望高さ位置で固定することができ、逆に本体部(支持管)の内部に伸縮棒状体を収納させる際には、前記摺動筒体を下方に摺動させることにより、伸縮棒状体の固定が解除される構造である。
【0006】
このような構成のため、上記点滴用スタンドの場合、仮に誤って前記摺動筒体を下方に押し下げてしまった場合には伸縮棒状体の固定が解除されてしまい、伸縮棒状体はストンと下方に下降して本体部内部に収納されてしまう。
また、このような状況の際には、摺動筒体を保持した手の指が本体部上端と伸縮棒状体の上端に設けられた支持部との間に挟まれてしまい、ケガをしてしまうという問題が発生する。
【0007】
そこで、本発明においては、上記問題点を解消すべく、伸縮棒状体の上下伸縮動作に際してブレーキが掛かるような制動機構を創案することをその第1の課題とする。
次に、上記のように誤って摺動筒体を動作させてしまうような事態が生じたとしても、この摺動筒体が下方に移動又は摺動してしまわないようなロック機構をも付加することをその第2の課題とする。
尚、本発明においては、上記従来例のような点滴用スタンドばかりでなく、上下に伸縮可能なあらゆる支柱に適用できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、支持管と、この支持管の内部に収納される伸縮棒状体と、この伸縮棒状体を適宜高さ位置に固定する固定手段が前記支持管の上端部に設けられた上下伸縮自在支柱において、前記固定手段が支持管の上端に固定される接続部に設けられ、この接続部を介して前記支持管の内部に前記伸縮棒状体が収納され且つ上方に伸長可能となり、前記接続部は、その下端で前記支持管と連結固定される筒状本体部とその外周で上下に摺動する摺動筒体とからなり、前記筒状本体部の適宜位置には半径方向に出没する1又は2以上のストッパーボールを備え、摺動筒体の内周と筒状本体部の外周との間にコイルスプリング等の弾性部材を介在させることにより摺動筒体を常に上方に付勢して上記ストッパーボールを軸芯方向に押圧でき、前記伸縮棒状体の下方外周面には環状溝部を形成して前記ストッパーボールと適合でき、これによって伸縮棒状体の環状溝部と筒状本体部側のストッパーボールが適合することにより伸縮棒状体が筒状本体部に固定され、摺動筒体を付勢方向に反して下方に移行させることによりストッパーボールが摺動筒体の内周面の大きい内径を有する径大部と適合して外側に移行することにより、両者の適合が解除され、伸縮棒状体と筒状本体部との固定が解除され、前記接続部の筒状本体部の上方部分を適宜長く形成し、筒状本体部の上端部の位置を摺動筒体の上端部の位置から離間し、前記伸縮棒状体の下端部には外側方向に付勢する弾性体を設け、かかる弾性体が支持管の内壁面を押圧付勢し、これにより伸縮棒状体の上下摺動動作に制動力が作用することを特徴とする上下伸縮自在支柱の制動機構である。
【0009】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、伸縮棒状体の下端部に設けた弾性体が、略V字形状の弾性線条材を使用し、伸縮棒状体の下端部には長手方向の対向位置に2つの切り込みを設け、伸縮棒状体の下端部に設けた直径方向の支軸に前記略V字形状の弾性線条材を固定して弾性線条材の先端部分が支持管の内壁面を押圧付勢できることを特徴とする上下伸縮自在支柱の制動機構である。
【0010】
本発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、前記支持管と接続部とが一体的に形成されていることを特徴とする上下伸縮自在支柱の制動機構である。
【0011】
本発明の第4のものは、上記第1の発明において、前記接続部の摺動筒体を筒状本体部に対して周方向に回動可能とし、摺動筒体の下端周縁部の少なくとも1箇所に切欠部を設け、他方、筒状本体部の外周面には突起部を設け、この突起部に前記摺動筒体の下端周縁部が当接した位置では、筒状本体部内に配設されたストッパーボールは伸縮棒状体の環状溝部との適合が解除されず、前記突起部が前記摺動筒体の下端周縁部に設けられた前記切欠部と適合した位置では、摺動筒体の内周面の径大部に前記ストッパーボールが移行して伸縮棒状体の環状溝部との適合が解除されることを特徴とする上下伸縮自在支柱の制動及びロック機構である。
【0012】
本発明の第5のものは、上記第4の発明において、伸縮棒状体の下端部に設けた弾性体が、略V字形状の弾性線条材を使用し、伸縮棒状体の下端部には長手方向に2つの切り込みを設け、伸縮棒状体の下端部に設けた直径方向の支軸に前記略V字形状の弾性線条材を固定して弾性線条材の先端部分が前記切込みから伸縮棒状体の外部に延長し、これにより支持管の内壁面を押圧付勢できることを特徴とする上下伸縮自在支柱の制動及びロック機構である。
【0013】
本発明の第6のものは、上記第第4又は第5の発明において、前記支持管と接続部とが一体的に形成されていることを特徴とする上下伸縮自在支柱の制動及びロック機構である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1のものにおいては、支持管の内部で上下に伸縮する伸縮棒状体の下端部に外側方向に付勢する弾性体を設け、この弾性体が支持管の内壁面を押圧付勢することができるため、伸縮棒状体の上下摺動動作に制動力が作用し、この伸縮棒状体が支持管の内部に一気にストンと収納落下することを防止でき、ある一定の下方向への力を付与しなければ、伸縮棒状体は下方に移行又は摺動しないこととなるのである。
【0015】
これは、伸縮棒状体を支持管の内部から上方に引き出す際も同様で、ある所定の力を付加することにより伸縮棒状体は上方に伸長される。
また、接続部の上方部分の長さを長く形成し、接続部の上端部の位置を摺動筒体の上端部の位置から離間しているために、伸縮棒状体が下方に移行して支持管の内部に収納される際に、伸縮棒状体の上端部と摺動筒体の上端部との間に手の指を挟んでしまう恐れも無くなるのである。
【0016】
本発明の第2のものにおいては、上記第1の発明において、前記弾性体をより具体化したものである。
即ち、伸縮棒状体の下端部に設けた弾性体が、略V字形状の弾性線条材を使用し、伸縮棒状体の下端部には長手方向に2つの切込を設け、伸縮棒状体の下端部に設けた直径方向の支軸に前記略V字形状の弾性線条材を固定して弾性線条材の先端部分が支持管の内壁面を押圧付勢できるできるようにして、上記第1の発明と同じ効果を発揮する。
【0017】
本発明の第3のものにおいては、前記支持管と接続部を一体的に形成したことを特徴とするものであり、この支持管と接続部は、別体に形成して相互に固定する形式であってもよいし、この第3の発明のように両者を一体的に形成したものであってもよいものである。
【0018】
本発明の第4のものにおいては、上記第1の発明において、更にロック機構を付加したものである。
即ち、前記接続部の摺動筒体を筒状本体部に対して周方向に回動可能とし、摺動筒体の下端周縁部の少なくとも1箇所に切欠部を設け、他方、筒状本体部の外周面には突起部を設け、この突起部に前記摺動筒体の下端周縁部が当接した際には、筒状本体部内に配設されたストッパーボールは伸縮棒状体の環状溝部との係合が解除されず、前記突起部が前記摺動筒体の下端周縁部に設けられた前記切欠部と適合した際には、摺動筒体の内周面の径大部に前記ストッパーボールが移行して伸縮棒状体の環状溝部との適合が解除され、伸縮棒状体が上下に伸縮可能な状態となるものである。
従って、上記のように、摺動筒体の下端部が前記突起部に当接した状態で、伸縮棒状体の上下動はロックされることとなり、この状態で仮に不用意に摺動筒体を下方に押し下げる力が付加されたとしても、伸縮棒状体は下方に移行することはなくなるのである。
【0019】
本発明の第5のものにおいては、上記第4の発明において伸縮棒状体の下端部の弾性体をより具体化したものであり、その効果は上記第4の発明と同じである。
本発明の第6のものにおいても、上記第4又は第5の発明において、支持管と接続部とを一体的に形成したものであって、その効果は第4の発明又は第5の発明と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の上下伸縮自在支柱に係る一実施形態を示しており、その(A)が一部省略全体正面図、その(B)が伸縮棒状体の下端部の側面図である。
図2】上記実施形態に係る接続部の拡大斜視説明図である。
図3】上記実施形態に係る接続部が伸縮棒状体を固定している状態を示す断面説明図である。
図4】上記実施形態に係る接続部と伸縮棒状体との固定が解除された状態を示す断面説明図である。
図5】上記実施形態に係る接続部の摺動筒体の下向き移動が阻止されたロック状態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面と共に本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の上下伸縮自在支柱に係る一実施形態を示しており、その(A)が一部省略全体正面図、その(B)が伸縮棒状体の下端部の側面図である。
本発明に係る上下伸縮自在支柱10は、下方に位置する支持管11と、この支持管11の上端部に固定される接続部20と、この接続部20を介して前記支持管11の内部に収納或いは挿入され、上下方向に摺動或いは移動可能な伸縮棒状体15の3つのパーツから構成されている。これら3つのパーツは全て金属製である。
【0022】
支持管11と接続部20とは、相互に螺合されている。即ち、支持管11の上端外周には雄ネジが刻設され、接続部20の下端内周面には雌ネジが刻設され、相互に螺合される。
勿論、両者を相互に溶接着して一体的に形成してもよい。
【0023】
接続部20は、後にその詳細について説明するが、筒状本体部21とこの筒状本体部21の外周で上下に摺動可能な摺動筒体22とからなる。
筒状本体部21には、図1には現われていないが、その半径方向に出没するストッパーボールが複数設けられ、これらストッパーボールは、摺動筒体22が上方に移行すると、筒状本体部21の中心側に突出し、伸縮棒状体15の外周の適宜位置に複数設けられている環状溝部16と係合又は適合し、伸縮棒状体15が適宜高さ位置で固定される。
【0024】
他方、摺動筒体22が下方に移行すると、これらストッパーボールは、やはり図には現われていないが、摺動筒体22の径大部に適合して、筒状本体部21の外側に移動し、伸縮棒状体15の環状溝部16と係合が解除され、伸縮棒状体15は上下方向に移動可能となる。
摺動筒体22の内壁面と筒状本体部21との間にはコイルスプリングが内装されており、摺動筒体22は、常に上方方向に付勢された状態である。
【0025】
即ち、上記コイルスプリングの付勢力に抗して摺動筒体22を下方に移行させることにより、伸縮棒状体15は上下に移動可能となり、伸縮棒状体15を上方に移行させて、筒状本体部21内に配設されたストッパーボールが伸縮棒状体15の環状溝部16と適合し、摺動筒体22が上方位置にあるときには、伸縮棒状体15は適宜高さ位置で固定されることとなるのである。
【0026】
ここで、接続部20の筒状本体部21の上方部分21uは、その上端部が摺動筒体22の上端部から適宜長さ分上方に位置するように、上端部の高さ位置を異なるように設定している。
この適宜長さ分というのは、少なくともおよそ指1本分の横幅があればよい。
その理由は、伸縮棒状体15の上端部には、例えば点滴用スタンドであれば、薬液容器を吊るす支持部材が横方向に延長しており、誤って伸縮棒状体15が下方に落下した際に、前記支持部材と摺動筒体22との間に指を挟んでしまう恐れがあるからである。
【0027】
しかしながら、本発明においては、次に説明するように、伸縮棒状体15の下端部に弾性体を内装している関係上、指を挟む恐れは少ないものとなる。
摺動筒体22の上方外周部には、滑り止めのためにローレット22rが設けられており、この部分を手の指で把持して上下に操作することができる。
【0028】
伸縮棒状体15は、接続部20及び支持管11の内部に収納され、上下に往復移動可能であり、その下方部分の外周には環状溝部16が複数設けられている。
これらの環状溝部16の一つを選択して、接続部20の内部のストッパーボールと適合させることにより適宜高さに伸縮棒状体15が固定されることとなる。
【0029】
この伸縮棒状体15の下端部には、弾性体としての正面視略V字形状の弾性線条材18が設けられている。
即ち、伸縮棒状体15の下端部には長手方向に切込19が設けられ、また下端部には軸部17が直径方向に設けられ、この軸部17に複数の略V字形状の弾性線条材18が固定されているのである。
【0030】
この弾性線条材18は、その正面視略V字形状の下端の支点部で前記軸部17に取り付けられ、上方の両端部が左右に拡開し、伸縮棒状体15の前記切込19から外部に伸長し、伸縮棒状体15が支持管11の内部に収納された状態で、支持管11の内壁面を押圧し、外側方向に付勢するものである。
【0031】
この構成により、伸縮棒状体15は、支持管11の内部で特に接続部20部位での固定がなくとも、下方に落下してしまうことなく、伸縮棒状体15は適宜その高さ位置で保持された状態を維持できるのである。
伸縮棒状体15の高さ位置を変更する際は、少しの力を上方又は下方に付加することによりその移動を行うことができることとなるのである。
【0032】
図2は、上記接続部20の拡大斜視説明図である。
この実施形態においては、この接続部20は、1つの部品として別体に形成されている。
また、その内部構造については後の図3以降で詳説する。
この接続部20の下端部に支持管11の上端部が固定され、接続部20の筒状本体部21の内部に上方から伸縮棒状体15が挿入され且つ下方の支持管11の内部に挿入されることとなる。
【0033】
この接続部20は、その筒状本体部21と、その略中央部分外周で上下に往復移動する摺動筒体22とから成り、摺動筒体22の内部のコイルスプリングの付勢力に対抗して下方に移動させることにより、筒状本体部21の側壁に内装されたストッパーボールによる固定が解除されて、伸縮棒状体15が筒状本体部21の内部で上下に移動可能に挿入されるように構成されている。
【0034】
図2で示した状態は、摺動筒体22が上方に付勢された状態で、筒状本体部21に設けられたストッパーボールは筒状本体部21の側壁から中心側に向かって突出した状態で、伸縮棒状体15を固定している状態である。
【0035】
この状態から、摺動筒体22を下方に移行させることにより、上記固定が解除される。この際に摺動筒体22のローレット22rの部分を手の指で把持して下方に押し下げるのであるが、その際に摺動筒体22の下端部に切欠部23が設けられており、他方、筒状本体部21の下方外周面には突起部24が設けられており、これら両者の位置が合致した状態において、摺動筒体22を下方に押し下げることが可能となるのである。
【0036】
そして、この摺動筒体22は、周方向に回動自在である。
つまり、その下端の切欠部23と、筒状本体部21の突起部24の位置を異ならせることができるのである。
【0037】
これら両者の位置を異ならせることにより、摺動筒体22の下端部が筒状本体部21の突起部24と衝突して、摺動筒体22を下方に移行させることができなくなり、その結果筒状本体部21の内部のストッパーボールは外側方向に移行できずに、伸縮棒状体15の固定が解除されずにロックされたままの状態となるのである。
【0038】
以下図3乃至図5によって、これに関する詳細を説明する。
図3は上記実施形態に係る接続部が伸縮棒状体を固定している状態を示す断面説明図である。
この図の状態においては、接続部20の筒状本体部21の側壁に内装されているストッパーボール26が、筒状本体部21の内壁面から中心に向かい突出している状態で、伸縮棒状体15の環状溝部16と相互に適合している状態である。
この実施形態では、このストッパーボール26は、筒状本体部21の周方向に同一間隔に4個設けている。
【0039】
そして、この状態で、摺動筒体22は、摺動筒体22と筒状本体部21との間に介装されているコイルスプリング27により上方方向に付勢されているため、摺動筒体22の内壁面28がストッパーボール26を中心方向に押圧した状態となり、このストッパーボール26と伸縮棒状体15の環状溝部16との適合は解除されずに固定されたままとなり、伸縮棒状体15は、所定高さ位置を維持したままの状態となるのである。
【0040】
摺動筒体22が上方に抜けてしまわないように、筒状本体部21の側にはストッパーリング29が設けられている。
また摺動筒体22の上方内壁は、その内径を大きく形成して径大部30を設けている。
従って、摺動筒体22を下方に移行させると、この径大部30にストッパーボール26が移動して前記伸縮棒状体15の固定が解除されることとなる。
即ち、この状態ではストッパーボール26は、伸縮棒状体15の外周に設けられた環状溝部16との適合が解除されることとなる。
【0041】
図4は、上記実施形態に係る接続部と伸縮棒状体との固定が解除された状態を示す断面説明図である。
この図4の状態においては、摺動筒体22の下端部の切欠部23の位置と、筒状本体部21の外周面に設けた突起部24との位置が合致しており、従って、摺動筒体22は下方に移行している状態である。
【0042】
この状態において、摺動筒体22は、その内壁面28が下方に移行し、その上方の径大部30がストッパーボール26の位置に来て、ストッパーボール26は外側方向に移行できる状態となる。
これによりストッパーボール26と伸縮棒状体15の環状溝部16との適合が解除され、伸縮棒状体15は、上下に自在に移動可能となるのである。即ち、伸縮棒状体15の高さ位置を適宜自由に変更可能な状態にすることができるのである。
【0043】
他方、この状態において、摺動筒体22を把持していた手を離すことにより、摺動筒体22はコイルスプリング27の付勢作用により上向きに付勢されるが、ストッパーボール26は伸縮棒状体15の外周面を押圧したままの状態となる。
この状態で伸縮棒状体15を上又は下に移行させて、隣の環状溝部16と適合した段階で、ストッパーボール26がこの環状溝部16と適合し、摺動筒体22が上方に移行して、伸縮棒状体15が再度固定されるのである。
【0044】
図5は、上記実施形態に係る接続部の摺動筒体の下向き移動が阻止されたロック状態を示す断面説明図である。
この図から解る通り、この状態においては、摺動筒体22の下端に設けた切欠部は、筒状本体部21の外周面に設けた突起部24と同じ位置に存在していない。
【0045】
従って、摺動筒体22は、この図の状態で、下方に押し下げると、その下端部が突起部24に衝突してしまい、下方に移行せず、摺動筒体22の内壁面28は、相変わらず筒状本体部21の側壁に設けられたストッパーボール26を押圧したままの状態を維持するのである。
それ故、伸縮棒状体15の固定は解除されず、伸縮棒状体15の上又は下への移動は不可能となり、ロック状態となるのである。
【0046】
以上、実施形態について説明したが、本発明においては以下の通り種々設計変更が可能である。
先ず、本発明に係る上下伸縮自在支柱は、その下端部に脚部を設けたり、或いは各種の移動体に固定して利用することも出来るし、各種の施設に直接固定して利用することもできる。
また、支柱の上端部には、例えば点滴用薬液容器の支持部や、カメラ、更には照明器具等々、適宜所望の被支持物品を固定することができる。
このように、所望の物品を支持し且つその高さ変更可能な支柱として利用できるものである。
【0047】
支持管及び伸縮棒状体の長さや太さ等は適宜設計変更することができる。
伸縮棒状体は棒状体でなく、管体から形成することもできる。
接続部における筒状本体部の上下方向長さも必要に応じて設定することができるが、その上端部位置と摺動筒体の上端部位置とを異ならせ、少なくとも手の指1本の横幅程度の長さ分異ならせることが必要である。
【0048】
伸縮棒状体の下端部に設ける弾性体も各種自由に設計変更することができ、外側方向又は外周方向に付勢力を発揮できるものであれば、どのようなものでもよい。
上記実施形態で使用した正面視略V字形状の弾性線条材もその本数、長さ等自由であり、これに適合するように伸縮棒状体の下端部に設ける切込の長さ及び幅を決定することができる。
【0049】
接続部の下端に支持管を固定する手段も全く自由であり、或いは、これら支持管と接続部を一体的に成形することも可能である。
以上、本発明は、支持管及び接続部内部に伸縮棒状体を収納し且つ上方に伸長させることができる伸縮自在支柱であって、適宜高さ位置に伸縮棒状体を固定することができ、その際に伸縮棒状体にブレーキを掛けつつ上下移動可能で、且つ上下移動不能に簡単にロックもできる上下伸縮自在支柱を提供することができた。
【符号の説明】
【0050】
10 上下伸縮自在支柱
11 支持管
15 伸縮棒状体
16 環状溝部
17 支軸
18 弾性線条材
19 切込
20 接続部
21 筒状本体部
22 摺動筒体
23 切欠部
24 突起部
26 ストッパーボール
27 コイルスプリング
28 内壁面(摺動筒体の)
29 ストッパーリング
30 径大部(摺動筒体の)
図1
図2
図3
図4
図5