(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の支軸間に巻回された一対の無端チェーンと、前記無端チェーンに取り付けられた複数のフライト板と、前記無端チェーンの走行に伴って移動する前記フライト板を支持する長尺のガイドレールとを備え、沈殿池の池底に堆積した汚泥を前記フライト板で掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置であって、
前記フライト板を挟んで前記ガイドレールと対向する側に、前記フライト板の浮きを阻止する押え部材が支持機構を介して前記ガイドレールの延出方向に沿って配置され、
前記支持機構は、前記沈殿池の壁面に直接または間接的に固定され前記押え部材側に突出するように配置された支持部材と、前記押え部材を前記支持部材へ取り付ける取付け部材とを備えて構成され、
前記取付け部材は、前記押え部材の支持部材への取付け位置、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離、及び前記ガイドレールの延出方向に沿って前記取付け部材によって支持される前記押え部材の支持位置を調整可能に構成されるとともに、前記押え部材をスライド可能に支持するように構成されている汚泥掻き寄せ装置。
前記取付け部材は、前記押え部材側への取付け位置を調整可能な第1固定機構を介して前記支持部材に取り付けられる第1取付け部材と、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離及び前記押え部材の延出方向に対する前記第1取付け部材の支持位置を調整可能な第2固定機構を介して前記押え部材を前記第1取付け部材に固定する第2取付け部材とで構成されている請求項1記載の汚泥掻き寄せ装置。
前記押え部材が断面L字状のアングル部材で構成され、前記第2取付け部材は、前記アングル部材の一側端に係合する係合部と、前記係合部と前記第1取付け部材との間に前記押え部材を挟みつけた状態で、前記離隔距離を調整可能に前記第1取付け部材に締め付ける固定部とを備えている請求項2記載の汚泥掻き寄せ装置。
前記押え部材が、前記ガイドレールの延出方向に沿って配置され前記フライト板の浮きを阻止するパイプ部材と、一端側で前記パイプ部材を保持して他端側で前記取付け部材に保持される保持部材とで構成されている請求項1または2記載の汚泥掻き寄せ装置。
前記ガイドレール上を摺動するガイドシューが前記フライト板の上下両面に取り付けられ、前記支持機構によって、前記ガイドレール上を摺動するガイドシューとは反対側のガイドシューに対向する位置に前記押え部材が位置決めされている請求項1から5の何れかに記載の汚泥掻き寄せ装置。
前記沈殿池の上層に配置された支軸から下層に配置された支軸にかけて前記無端チェーンが巻回され、少なくとも前記上層に配置された支軸に巻回された前記無端チェーンに対して前記抑え部材が配置されている請求項1から6の何れかに記載の汚泥掻き寄せ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、沈殿池が設置された地域で大きな地震が発生すると、地震による長周期振動によって沈殿池の水が大きく波立つスロッシング現象が現れて、その影響によって支軸のスプロケットから無端チェーンが離脱する等、汚泥掻き寄せ装置が破損する虞があった。
【0006】
そこで、新設の沈殿池のみならず既設の沈殿池に設置された汚泥掻き寄せ装置に対しても、スロッシング現象等に起因するスプロケットからの無端チェーンの離脱を防止するために、フライト板を挟んでガイドレールと対向する側に、フライト板の浮きを阻止する長尺の押え部材をガイドレールの延出方向に沿って配置することが考えられている。
【0007】
しかし、フライト板と押え部材との離隔距離が長い場合には無端チェーンの離脱を防止することができず、フライト板と押え部材との離隔距離が短い場合にはフライト板と押え部材とが摺動する等の原因により無端チェーンの円滑な走行が妨げられる。
【0008】
そのため、フライト板と押え部材との離隔距離はもとより、フライト板に対する押え部材の対向位置をも精度良く調整する必要があるが、そのような重量のある押え部材を精度良く支持するための支持機構を設置するのは非常に困難な作業を伴うという問題があった。特に既設の沈殿池で池の側壁が腐食している場合等には、側壁の大掛かりな修復作業を伴うばかりか、そのような側面に支持機構を精度良く固定するのは非常に困難であった。
【0009】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、支持機構を設置する際の施工性を改善するとともに、フライト板と押え部材との相対的な位置関係を精度良く調整できる汚泥掻き寄せ装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による汚泥掻き寄せ装置の第一特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、複数の支軸間に巻回された一対の無端チェーンと、前記無端チェーンに取り付けられた複数のフライト板と、前記無端チェーンの走行に伴って移動する前記フライト板を支持する長尺のガイドレールとを備え、沈殿池の池底に堆積した汚泥を前記フライト板で掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置であって、前記フライト板を挟んで前記ガイドレールと対向する側に、前記フライト板の浮きを阻止する押え部材が支持機構を介して前記ガイドレールの延出方向に沿って配置され、前記支持機構は、前記沈殿池の壁面に直接または間接的に固定され前記押え部材側に突出するように配置された支持部材と、前記押え部材を前記支持部材へ取り付ける取付け部材とを備えて構成され、前記取付け部材は、前記押え部材の支持部材への取付け位置、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離、及び前記ガイドレールの延出方向
に沿って前記取付け部材によって支持される前記押え部材の支持位置を調整可能に構成され
るとともに、前記押え部材をスライド可能に支持するように構成されている点にある。
【0011】
上述の構成によれば、押え部材に向けて突出するように支持部材を沈殿池の壁部に直接または間接的に固定した後に、取付け部材を介して押え部材を支持部材に固定支持する。このとき、取付け部材の押え部材側への取付け位置、フライト板と押え部材との離隔距離、及び押え部材の延出方向に対する
押え部材の支持位置が調整可能に構成されているので、支持部材そのものの取付け精度が多少悪くても押え部材を所望の位置に精度良く固定して支持することができるようになる。従って、支持機構を設置するための施工時に、精度良く支持部材等を設置するための現場での煩雑な加工作業が大幅に軽減され、フライト板と押え部材との相対的な位置関係も精度良く調整できるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記取付け部材は、前記押え部材側への取付け位置を調整可能な第1固定機構を介して前記支持部材に取り付けられる第1取付け部材と、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離及び前記押え部材の延出方向に対する前記第1取付け部材の支持位置を調整可能な第2固定機構を介して前記押え部材を前記第1取付け部材に固定する第2取付け部材とで構成されている点にある。
【0013】
上述の構成によれば、フライト板に対する押え部材の対向位置が所定位置になるように第1固定機構を介して調整しながら第1取付け部材を支持部材に固定し、さらに、フライト板と押え部材との離隔距離が所定距離になるように第2固定機構を介して調整しながら第2取付け部材を第1取付け部材に固定すれば、支持部材そのものの取付け精度が多少悪くても押え部材を所望の位置に精度良く固定して支持することができるようになる。
【0014】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記押え部材が断面L字状のアングル部材で構成され、前記第2取付け部材は、前記アングル部材の一側端に係合する係合部と、前記係合部と前記第1取付け部材との間に前記押え部材を挟みつけた状態で、前記離隔距離を調整可能に前記第1取付け部材に締め付ける固定部とを備えている点にある。
【0015】
押え部材が長尺で重量のあるアングル部材で構成されていても、第2取付け部材の係合部をアングル部材の一側端に係合させて第1取付け部材との間で押え部材を挟みつけ、第2固定機構を介して前記離隔距離が所定距離となるように調整した固定部を第1取付け部材に締め付けることで、容易に位置調整しながらアングル部材を支持できるので、現場でアングル部材に固定用の孔加工等を施す等の必要が無く、極めて容易に施工できるようになる。また、押え部材をスライドさせることで延出方向の調整が容易にできる。
【0016】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記押え部材が、前記ガイドレールの延出方向に沿って配置され前記フライト板の浮きを阻止するパイプ部材と、一端側で前記パイプ部材を保持して他端側で前記取付け部材に保持される保持部材とで構成されている点にある。
【0017】
押え部材をパイプ部材で構成することにより軽量化を図りながらもその強度を維持することができるので、施工性を高めながらも十分な押え機能が発揮される。
【0018】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記取付け部材は、前記押え部材の支持部材への取付け位置、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離、及び前記ガイドレールの延出方向
に沿って前記取付け部材によって支持される前記押え部材の支持位置を調整可能な固定機構を備え、前記固定機構が前記取付け部材の一方に形成された長孔と、前記長孔を介して前記取付け部材を位置決めした後に締付けるボルトとナットで構成されている点にある。
【0019】
長孔を介して締付け対象となる取付け部材の相対位置を容易に調整できるように、予め固定機構が準備されているため、支持部材の取付け精度が多少低下する場合でも、精度良く調整することができ、直ちにボルトとナットで締付け固定でき、現場で柔軟に対応することができるようになる。
【0020】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記ガイドレール上を摺動するガイドシューが前記フライト板の上下両面に取り付けられ、前記支持機構によって、前記ガイドレール上を摺動するガイドシューとは反対側のガイドシューに対向する位置に前記押え部材が位置決めされている点にある。
【0021】
フライト板の上下両面に取り付けられたガイドシューのうち、ガイドレール上を摺動するガイドシューとは反対側のガイドシューに対向する位置に押え部材が位置決めされるので、仮に地震によるスロッシング現象が現れてフライト板が上方に移動しても、ある程度の強度を備えたガイドシューが押え部材と当接するため、ガイドシューと比較して強度が弱いフライト板が破損するような事態の発生を未然に回避することができる。また、ガイドシューが破損した場合でもガイドシューの交換ができる。
【0022】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記沈殿池の上層に配置された支軸から下層に配置された支軸にかけて前記無端チェーンが巻回され、少なくとも前記上層に配置された支軸に巻回された前記無端チェーンに対して前記抑え部材が配置されている点にある。
【0023】
スロッシング現象が発生すると沈殿池の上層側の水ほど大きなうねりとなって、無端チェーン及びフライト板に大きな流体圧力が作用するため、下層に配置された支軸よりも上層に配置された支軸から無端チェーンが離脱し易くなる。そこで、少なくとも上層に配置された支軸に巻回された無端チェーンに対して抑え部材を配置することで、効果的に支軸から無端チェーンの離脱を防止することができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した通り、本発明によれば、支持機構を設置する際の施工性を改善するとともに、フライト板と押え部材との相対的な位置関係を精度良く調整できる汚泥掻き寄せ装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による汚泥掻き寄せ装置を図面に基づいて説明する。
図1(a)及び
図2に示すように、汚泥掻き寄せ装置2は、例えば下水処理場の最初沈殿池や最終沈殿池等の沈殿池1に設置され、複数の支軸3a,3b,3c,3d間に巻回された一対の無端チェーン4,4と、無端チェーン4,4に取り付けられた複数のフライト板5と、無端チェーン4,4の走行に伴って移動するフライト板5を支持する長尺のガイドレール6,7とを備えている。
【0027】
四本の支軸は、沈殿池1の上層に配置された支軸3a,3bと、下層に配置された支軸3c,3dで構成されている。詳述すると、駆動モータMと駆動チェーンCで連結された駆動用支軸3aと、駆動用支軸3aと同じ高さに配置されたアイドラ用支軸3bと、テークアップ用支軸3cと、水中支軸3dで構成され、それぞれ両端に配置された軸受によって回転自在に支承されている。
【0028】
各支軸3a,3b,3c,3dの両端側にそれぞれスプロケットSが各支軸3a,3b,3c,3dと一体回転するようにキーを介して取り付けられ、各スプロケットSに上述した一対の無端チェーン4,4が巻回されている。尚、駆動用支軸3aにはさらに上述した駆動チェーンCを巻回するための駆動用スプロケットSdが設けられている。
【0029】
無端チェーン4,4には所定間隔でフライト板5が取り付けられている。駆動用支軸3aが回転すると無端チェーン4,4が各支軸3a,3b,3c,3d周りに循環するように走行して、無端チェーン4,4に取り付けられたフライト板5が沈殿池1の内部を循環移動する。
【0030】
フライト板5が池底に敷設されたガイドレール6,6に支持されて沈殿池1の池底側を走行する時に、池底側に堆積した汚泥がフライト板5によって汚泥貯留部1aに掻き寄せられ、フライト板5が上層に設置されたガイドレール7,7に支持されて水面側を走行する時には水面に浮遊するスカムがスカムスキマ1bに掻き寄せられる。
【0031】
スカムスキマ1bは、フライト板5で掻き寄せられたスカムをトラフ内に流入させる溢流堰を備えて構成され、フライト板5の走行に伴って溢流堰が押し下げられて、水面に浮遊しているスカムが水と共にトラフ内に流入するように構成されている。
【0032】
尚、支軸3b,3c,3dは従動軸であり、テークアップ用支軸3cはフライト板5の走行方向に沿って前後に位置調整可能に配置され、無端チェーン4,4の張力を調節できるよう構成されている。
【0033】
沈殿池1の上層で支軸3a,3b間に設置されたガイドレール7,7は、無端チェーン4,4の延出方向に沿って配置され、沈殿池1の側壁1cに所定間隔でアンカーを介して固定された耐食性の鋼材で構成される複数のレール支持部材70の上部に固定支持されている(
図3参照)。
【0034】
図1(a),(b)に示すように、このような沈殿池1が複数並列に設置され、各汚泥掻き寄せ装置2で汚泥貯留部1aに掻き寄せられた汚泥が、第2の汚泥掻き寄せ装置20で汚泥貯留部1aの一側に掻き寄せられて、ポンプPによって槽外に排泥される。
【0035】
上述の汚泥掻き寄せ装置2と同様に、第2の汚泥掻き寄せ装置20も、支軸23a,23b,23c間に巻回された一対の無端チェーン24,24と、無端チェーン24,24に取り付けられた複数のフライト板25と、無端チェーン24,24の走行に伴って移動するフライト板25を支持する長尺のガイドレール27とを備えている。
【0036】
尚、上述した無端チェーンやガイドレールの材料として樹脂やステンレス鋼等の耐食性の金属が好適に用いられ、フライト板の材料として木材や樹脂や耐食性の金属が好適に用いられる。
【0037】
沈殿池1が設置された地域で大きな地震が発生すると、地震による長周期振動によって沈殿池1の水が大きく波立つスロッシング現象が現れて、その影響によって汚泥掻き寄せ装置2,20の各支軸のスプロケットから無端チェーンが離脱して破損する虞がある。
【0038】
そのため、
図1から
図4に示すように、フライト板5を挟んでガイドレール7と対向する側に、フライト板5の浮きを阻止する断面「L」字状のアングル部材でなる長尺の押え部材8が、支持機構9を介してガイドレール7の延出方向に沿って配置されている。尚、押え部材8は長尺でなくてもよく、その場合には定尺の押え部材8を連接すればよい。また、定尺の押え部材8を、部分的に距離を隔てて所々に配設してもよい。以下、詳述する。
【0039】
図3及び
図4(a)から(d)に示すように、支持機構9は、押え部材8の延出方向に沿って所定間隔で配置された複数の支持部材9Aと、押え部材8が支持部材9Aに支持されるように、押え部材8を支持部材9Aに位置決め固定する第1取付け部材9B及び第2取付け部材9Cを備えて構成されている。
図3中、符号4は無端チェーンを示し、符号5cは無端チェーン4のフライト板5への取付け部を示している。
【0040】
支持部材9Aは、沈殿池1の壁面(側壁)1cに所定間隔でアンカーを介して固定される耐食性の鋼材で構成され、押え部材8側に突出するように配置されている。支持部材9Aは、側壁1cに直接固定された態様に限らず、間接的に固定された態様を採用してもよい。例えば、上述したレール支持部材70にボルト固定または溶着固定してもよい。後者の場合には、沈殿池1の壁面に所定間隔を隔ててレール支持部材70と支持部材9Aが対で配置されることになる。尚、支持部材9Aが側壁1cに直接固定された態様であっても、レール支持部材70と同じ間隔で支持部材9Aを設置すればよい(
図7(a),(b)参照)。
【0041】
第1取付け部材9Bは、押え部材8側への取付け位置を調整可能な第1固定機構91を介して支持部材9Aに取り付けられ、第2取付け部材9Cは、第2固定機構92を介して押え部材8を第1取付け部材9Bに固定する。第2固定機構92は、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1及び押え部材8の延出方向に対する第1取付け部材9Bの支持位置を調整可能に構成されている。
【0042】
詳述すると、第1取付け部材9Bは、断面視「T」字状の板状鋼材で構成され、上辺となる矩形の板状鋼材の長手方向、つまり平面視でガイドレールの延出方向に対して垂直方向に延びる板状鋼材に沿って2箇所に長孔91hが形成されている。支持部材9Aに形成された取付け孔と長孔91hとにボルト91aを挿通してナット91bで締付け固定される。つまり、長孔91hとボルト91aとナット91bで第1固定機構91が構成されている。
【0043】
第2取付け部材9Cは、折り曲げ加工された板状の鋼材で構成され、断面視「L」字状の押え部材8の一側端に係合する係合部92aと、係合部92aと第1取付け部材9Bとの間に押え部材8を挟みつけた状態で、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1及び押え部材8の延出方向に対する第1取付け部材9Bに対する支持位置を調整可能に第1取付け部9Bに締め付ける固定部92bとを備えている。
【0044】
第1取付け部材9Bのうち、固定部92bが取り付けられる下垂部には上下方向に沿う長孔92hが形成され、第1取付け部材9Bに形成された長孔92hと固定部92bに形成された取付け孔にボルト92cを挿通してナット92dで締付け固定される。つまり、長孔92hとボルト92aとナット92bで第2固定機構92が構成されている。尚、
図4(d)には一つの長孔92hが形成された例を示しているが、実際には幅方向に二つの長孔92hが形成されている。
【0045】
上述した構成によれば、重量のある押え部材を精度良く支持するための支持機構を設置するのは非常に困難な作業を伴い、特に既設の沈殿池で池の側壁が腐食している場合等には、側壁の大掛かりな修復作業を伴うばかりか、そのような側面に支持機構を精度良く固定するのは非常に困難を伴う作業が要求されるという課題、フライト板と押え部材との離隔距離やフライト板に対する押え部材の対向位置を精度良く調整する必要があるという課題に十分に対応できるようになる。
【0046】
即ち、押え部材8に向けて突出するように支持部材9Aを沈殿池1の壁部に直接または間接的に固定した後に、フライト板5に対する押え部材8の対向位置が所定位置になるように第1固定機構91を介して調整しながら第1取付け部材9Bを支持部材9Aに固定し、さらに、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が所定距離になるように、そして押え部材8の延出方向に第2取付け部材9Cをスライド移動して第1取付け部材9Bに対する支持位置を合わせるように第2固定機構92を介して調整しながら第2取付け部材9Cを第1取付け部材9Bに固定すれば、支持部材9Aそのものの取付け精度が多少悪くても押え部材8を所望の位置に精度良く固定して支持することができるようになる。
【0047】
長孔91h、92hを介して締付け対象となる両部材の相対位置を容易に調整できるように、予め上述の固定機構91,92が準備された取付け部材9B,9Cを用いるため、支持部材9Aの取付け精度が多少低下する場合でも、精度良く位置決め調整した後に、直ちにボルトとナットで締付け固定でき、現場で柔軟に対応することができる。
【0048】
また、押え部材8が長尺で重量のあるアングル部材で構成されていても、第2取付け部材9Cの係合部92aを押え部材8の一側端に係合させて第1取付け部9Bとの間で押え部材8を挟みつけ、第2固定機構92を介して離隔距離h1が所定距離となるように調整した固定部92bを第1取付け部材9Bに締め付けることで、容易に位置調整しながら押え部材8を支持できるので、現場で押え部材8に固定用の孔加工等を施す等の必要が無く、極めて容易に施工できるようになる。
【0049】
さらに、ガイドレール7上を摺動するガイドシュー5aがフライト板5の上下両面に取り付けられ、支持機構9によって、ガイドレール7上を摺動するガイドシュー5aとは反対側のガイドシュー5bに対向する位置に抑え部材8が位置決めされている。当該ガイドシュー5bは、フライト板5が池底に敷設されたガイドレール6上を摺動する際にガイドレール6と対向する位置に配置されている。ガイドシューはフライト板5よりも強度がある材料、例えば鋳物や硬質樹脂で構成されている。
【0050】
フライト板5の上下両面に取り付けられたガイドシュー5a,5bのうち、ガイドレール7上を摺動するガイドシュー5aとは反対側のガイドシュー5bに対向する位置に抑え部材8が位置決めされるので、仮に地震によるスロッシング現象が現れてフライト板5が上方に移動しても、ある程度の強度を備えたガイドシュー5bが抑え部材と当接するため、ガイドシューと比較して強度が弱いフライト板5が破損するような事態の発生を未然に回避することができる。また、ガイドシューが破損した場合には交換もできる。
【0051】
スロッシング現象が発生すると沈殿池の上層側の水ほど大きなうねりとなって、無端チェーン4,4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用するため、下層に配置された支軸よりも上層に配置された支軸から無端チェーンが離脱し易くなる。
【0052】
そのため、上述したように、少なくとも上層に配置された支軸3a,3bに巻回された無端チェーン4,4に対して抑え部材8が配置されていると、効果的に支軸から無端チェーン4の離脱を防止することができるようになる。
【0053】
尚、抑え部材8の設置位置は、上層に配置された支軸3a,3bに巻回された無端チェーン4,4に対応する位置に限らず、下層に配置された支軸3c,3dに巻回された無端チェーン4,4に対応する位置に配置されていてもよい。
【0054】
フライト板5と押え部材8との離隔距離h1は、スプロケットSの谷部と山部との最大高さHに対して、0.25H≦h1≦0.75Hの範囲に設定されていることが好ましい。
【0055】
図5(a),(d)に示すように、スプロケットSの谷部Svと山部Spとの最大高さH以上に無端チェーン4がスプロケットSから上方に離隔すると、無端チェーン4がスプロケットSから離脱する。
【0056】
そこで、
図6(a)に示すように、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1を、少なくとも0.25H≦h1≦0.75Hの範囲に調整しておけば、無端チェーン4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用した場合でも、無端チェーン4が最大高さH以上にスプロケットSから離脱する前に押え部材8と当接するので、無端チェーン4がスプロケットSから離脱することが無くなる。特に、h1=0.5Hに設定するのが好ましい。同図で符号T1は無端チェーン4の軌跡、符号T2はフライト板5の軌跡、符号T3は押え部材8の先端線を示す。
【0057】
また、無端チェーン4の通常の走行時にフライト板5が押え部材8に当接することにより円滑な走行が妨げられて無端チェーン4が破損するようなこともない。尚、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1とは、押え部材8の先端からフライト板5への最短距離をいい、押え部材8とガイドシュー5bが対向配置された上述の例では、押え部材8とガイドシュー5bとの最短距離をいう。また、押え部材8は必ずしもガイドシュー5bと対向する位置に配置されていなくてもよい。
【0058】
さらに、
図6(b)に示すように、沈殿池1の上層に配置された駆動用支軸3aのスプロケットSに巻回された無端チェーン4に対して、駆動用支軸3aから所定距離Lだけ離隔した位置より遠方側で、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、0.25H≦h1≦0.75Hの範囲に設定され、駆動用支軸3aから所定距離Lだけ離隔する迄の領域で、フライト板5と押え部材8との離隔距離h2が、h1<h2≦H+α,α=0.1Hの範囲に設定されていると、無端チェーン4及びフライト板5の円滑な動作が実現できる。同図で符号T1は無端チェーン4の軌跡、符号T2はフライト板5の軌跡、符号T3は押え部材8の先端線を示す。また、Hが数十mmのサイズである場合には、h1<h2≦h1+β,0mm≦β≦10mmの範囲に設定してもよい。さらに、h1<h2≦H+αの範囲に設定されると、無端チェーン4のスプロケットからの離脱を効果的に阻止できる。
【0059】
駆動用支軸3aのスプロケットSで押し出された無端チェーン4は、大きなテンションが掛かることなく駆動用支軸3aから下流側に送り出されて、その後ガイドレール7でフライト板5を介して支持される。そのため、駆動用支軸3aから下流側に走行してガイドレール7で支持されるまでの間で無端チェーン4は僅かに下方に撓むようになる。
【0060】
仮に駆動用支軸3aから所定距離L以上離隔した遠方側のガイドレール7で支持される領域で、離隔距離h1がスプロケットの谷部と山部との最大高さHに対して、0.25H≦h1≦0.75Hの範囲に設定され、駆動用支軸3aから所定距離Lだけ離隔するまでの近接側のガイドレール7で支持される領域でもそれと同じ範囲に設定されると、例えばスプロケットSの谷部Svと山部Spとの境界の傾斜面と無端チェーン4の係合部とが接触することによって無端チェーン4が当該傾斜面に沿ってずり上がり、フライト板5が僅かに傾斜した場合等には、フライト板5と押え部材8とが接触して無端チェーンの安定な走行が損なわれる虞がある。
【0061】
そこで、駆動用支軸3aから所定距離Lだけ離隔する迄の領域で、フライト板5と押え部材8との離隔距離h2を、h1<h2≦Hまたはh1<h2≦H+α,α=0.1Hの範囲に設定することにより、仮に無端チェーンが当該エッジに沿ってずり上がったりした場合であっても、無端チェーンの安定な走行が確保され、しかも地震により発生するスロッシング現象で無端チェーン及びフライト板に大きな流体圧力が作用した場合でも、無端チェーンが最大高さHよりも大きくスプロケットから離脱する前に押え部材と当接するので、無端チェーンがスプロケットから離脱することを未然に回避することができる。
【0062】
所定距離Lは、スプロケットSの軸心からガイドレール7の始端までの距離よりも長い値に設定されることが好ましく、スプロケットSの外径Dに対して、0.8D≦L≦2.5Dの範囲に設定されることが好ましい。
【0063】
実験によれば、スプロケットSの外径が約600mmの場合には、500mm≦L≦1500mmの範囲に設定されるのが好ましく、500mm≦L≦1000mmの範囲に設定されるのがより好ましい。
【0064】
h1<h2≦Hの範囲に設定する場合、例えば、H=30mmと仮定すると、7.5mm≦h1≦22.5mmとなり、h1<h2≦30mmとなる。好ましくは、15.0mm<h2≦30mm、より好ましくは22.5mm<h2≦30mmの範囲に設定するのが好ましい。
【0065】
h1<h2≦H+αの範囲に設定する場合、例えば、H=30mmと仮定すると、7.5mm≦h1≦22.5mmとなり、h1<h2≦33mmとなる。好ましくは、15.0mm<h2≦33mm、より好ましくは22.5mm<h2≦33mmの範囲に設定するのが好ましい。
【0066】
h1<h2≦h1+β,0≦β≦10mmの範囲に設定する場合、例えば、H=30mmと仮定すると、7.5mm≦h1≦22.5mmとなり、h2の下限値は7.5mmから22.5mmの範囲となり、上限値は7.5mm(=7.5+0)から32.5mm(=22.5+10)以下の値をとる。
【0067】
尚、施工時には隣接する複数のフライト板5のガイドシュー5bに沿って、ガイドシュー5bの幅と同等で、厚さh1またはh2に調整された治具を配置して、当該治具の幅方向の中央部に押え部材8の先端が位置するように第1固定機構91を介して調整し、押え部材8の先端が当該治具の表面に接するように第2固定機構92を介して調整した後に締付け固定される。
【0068】
図6(b)に示すように、駆動用支軸3aから所定距離Lだけ離隔する迄の領域で、離隔距離h2が離隔距離h1に次第に近づくように設定されているとさらに好ましく、通常時の無端チェーンの安定な走行を確保しながらも、地震発生時のスプロケットからの無端チェーンの離脱も効果的に防止することができるようになる。
【0069】
図6(c)に示すように、駆動用支軸3aから所定距離Lだけ離隔する迄の領域で離隔距離h2が一定に維持され、その遠方側で離隔距離h1に次第に近づくように設定されていてもよい。
【0070】
駆動用支軸3aから所定距離Lだけ離隔する迄の領域で離隔距離h2が一定に維持され、その遠方側で離隔距離h1に切替えると、その位置で段差部が生じて走行中のフライト板5が当接して破損する虞がある。従って、段差部が発生しないように離隔距離h2からh1に切り替わるように2本の押え部材8を連結することが好ましい。
【0071】
図5(b),(c)には、断面「L」字状のアングル部材でなる2本の押え部材8が2本のボルトで連結され、段差部が発生しないように面取りされた態様が示されている。
【0072】
図7(a),(b)に示すように、ガイドシュー5a,5bと、無端チェーン4のフライト板5への取付け部5cとの相対的な位置関係は特に制限されることはない。
【0073】
図4では、断面視「T」字状の第1取付け部材9Bは、その上辺2箇所に形成された長孔(
図4(a)の符号91hで示される長孔)を介して支持部材9Aに締付け固定される例を説明したが、
図8に示すように、断面視「T」字状の第1取付け部材9Bの下垂部に形成された長孔(
図4(d)の符号92hで示される長孔)を介して支持部材9Aに締付け固定し、上辺2箇所に形成された長孔(
図4(a)の符号91hで示される長孔)の一方を介して第2取付け部材9Cを締付け固定してもよい。
【0074】
何れの場合でも、取付け部材9B,9Cは、押え部材8側への取付け位置を調整可能な第1固定機構91を介して支持部材9Aに取り付けられる第1取付け部材9Bと、フライト板5と押え部材8との離隔距離及び押え部材8の延出方向に対する第1取付け部材9Bの支持位置を調整可能な第2固定機構92を介して押え部材8を第1取付け部材9Bに固定する第2取付け部材9Cとで構成される。
【0075】
押え部材8は、断面「L」字状のアングル部材に限るものではなく、長尺のパイプ部材や平板部材であってもよい。
図9(a)から(d)には、上述した支持機構9で支持されるパイプ状の押え部材8の取付け構造が示されている。
【0076】
当該押え部材8は、ガイドレールの延出方向に沿って配置されフライト板5の浮きを阻止するパイプ部材8bと、一端側でパイプ部材8bを保持して他端側で取付け部材9B,9Cに保持される保持部材8aとで構成されている。尚、パイプ部材8bはステンレス鋼等の耐食性の金属で構成されるものが好適である。
【0077】
図10(a)から(d)には、上述した支持機構9で支持される長尺の平板状の押え部材8の取付け構造が示されている。本態様の支持機構9は、支持部材9Aと第1取付け部材9Bを備えて構成され、断面「T」字状の第1取付け部材9Bの下垂部に上下方向に沿う長孔92hが形成され、平板状の押え部材8には支持部材9Aの設置間隔と略同一の間隔でその延出方向に沿う長孔8hが形成されている。
【0078】
第1取付け部材9Bに形成された長孔92hと押え部材8に形成された長孔8hとにボルト92cを挿通してナット92dで締付け固定される。つまり、長孔92h,8hとボルト92cとナット92dで第2固定機構92が構成されている。
【0079】
つまり、支持機構9は、沈殿池の壁面に直接または間接的に固定され押え部材8側に突出するように配置された支持部材9Aと、押え部材8を支持部材9Aとの間で支持する取付け部材9Bと、取付け部材9Bを支持部材9Aと押え部材8との間に固定する固定機構とを備えて構成されていればよく、固定機構は、取付け部材9Bの押え部材8側への取付け位置、フライト板5と押え部材8との離隔距離、及び押え部材8の延出方向に対する取付け部材9Bの支持位置を調整可能に構成されていればよい。
【0080】
上述した実施形態では、支持機構9を介して支持される押え部材8が、上層に配置された支軸3a,3bに巻回された無端チェーン4,4に対応する位置に設置される例を説明したが、下層に配置されたテークアップ用支軸3cから支軸3bの間で、無端チェーン4,4が略水平に走行するテークアップ用支軸3c近傍にガイドレールを設置し、無端チェーン4,4を挟んでそのガイドレールに対向する位置に押え部材が配置されてもよい。この場合、スロッシング現象による無端チェーン4,4のスプロケットからの離脱の防止という目的よりも、むしろ地震の揺れによる無端チェーン4,4のスプロケットからの離脱の防止という目的という意味合いが強い。
【0081】
上述した実施形態では、支持機構9を介して支持される押え部材8が沈殿池1に設置された汚泥掻き寄せ装置2に組み込まれた例を説明したが、支持機構9を介して支持される押え部材8を、汚泥貯留部1aに掻き寄せられた汚泥を泥貯留部1aの一側に掻き寄せる第2の汚泥掻き寄せ装置20に組み込んでもよいことはいうまでも無い。
【0082】
図1(b)には、支軸23a,23b,23c間に巻回された一対の無端チェーン24,24に対して、支軸23a,23c間に押え部材28が配置された例が示されている。当該押え部材28及び押え部材28の支持機構も、上述した態様と同様である。尚、無端チェーン24,24は左周りに走行するように駆動される。
【0083】
上述した実施形態では、固定機構が取付け部材の一方に形成された長孔と、長孔を介して取付け部材を位置決めした後に締付けるボルトとナットで構成された例を説明したが、固定機構の具体的な構造はこのような態様に限定されず、取付け部材双方を位置調整自在に挟みつけて固定するクリップ等、適宜構成することができる。
【0084】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成や制御態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。