特許第6042720号(P6042720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042720
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】噴射容器用噴射ボタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/20 20060101AFI20161206BHJP
   B05B 11/00 20060101ALI20161206BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B65D83/20 100
   B05B11/00 101Z
   B05B9/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-527926(P2012-527926)
(86)(22)【出願日】2012年6月7日
(86)【国際出願番号】JP2012064623
(87)【国際公開番号】WO2012169566
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-129656(P2011-129656)
(32)【優先日】2011年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141118
【氏名又は名称】株式会社丸一
(73)【特許権者】
【識別番号】500214750
【氏名又は名称】株式会社中央ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】松本 健夫
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−105739(JP,A)
【文献】 特開2006−206143(JP,A)
【文献】 特開2002−128123(JP,A)
【文献】 特許第4680321(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/20
B05B 9/04
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器又はポンプ式噴霧容器の上端部に設けられている内容液の排出用ステムに装着する噴射ボタンであって、この噴射ボタンを押下することによって、内容液がその噴射ボタンの噴射口から噴射される噴射ボタンにおいて、
前記噴射ボタンが下方部分に位置する基礎部(11)と、基礎部(11)の上方に位置する押下部(12)と、前記基礎部(11)と押下部(12)の間に位置するロック部(15)とからなり、
このロック部(15)は、その一部が切断された切欠部を有して前記押下部(12)の下方外周壁面を囲繞するように配置され、
前記基礎部(11)の下端周縁部が容器上端部の排出用ステムの外側の周縁部と係合してキャップ機能を有し、
前記押下部(12)は、排出用ステムと連結する導通路(12p) を有し、この導通路(12p) の出口が噴射口(12n)を成し、
これにより前記ロック部(15)を取り外すことによって押下部(12)が押し下げられる状態となる噴射容器用噴射ボタンの製造方法において、
前記噴射ボタンを成形するに際して、前記押下部(12)と基礎部(11)とを接続する成形用接続部(G3)を1又は2以上設けた外型と内型からなる1組の金型を使用し、
この金型には、押下部又は基礎部に通じる第1ゲート(G1)と、ロック部に通じる第2ゲート(G2)を設け、
この金型内に合成樹脂を充填し、固化して一体的に成形され、
金型離型後に各構成要素が組み立てられた状態で完成することを特徴とする噴射容器用噴射ボタンの製造方法。
【請求項2】
前記ロック部(15)の切欠部が噴射口側の前方に設けられ、更に、ロック部(15)の外周面の適宜位置に一又は複数の突状部(26)を形成したことを特徴とする請求項1に記載の噴射容器用噴射ボタンの製造方法。
【請求項3】
前記押下部(12)の下端外周縁部に外側方向に延長する延長部を設け、成形完了後、押下部が基礎部から上方に抜脱しないように形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の噴射容器用噴射ボタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器やポンプ式噴霧容器の内容液の排出用ステムに装着する噴射ボタンに関するものであり、とりわけ、ロック機構を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る噴射ボタンは、従来のエアゾール容器やポンプ式の噴霧容器の何れにも適用可能なものであるが、以下説明簡略化のため「エアゾール容器等」と記載する。
本願出願人は、先にエアゾール容器等の封緘キャップについて下記特許文献に記載のものを既に提案している。
【0003】
この封緘キャップは、エアゾール容器の上端部に設けられるエアゾール製品の噴射機構を被覆し、エアゾール容器の上端部に嵌合できる合成樹脂製キャップにおいて、キャップ本体部は、その天部と、その天部から下方に延長する略筒体形状の側壁部を有し、前記側壁部の下端周縁部がエアゾール容器の上端部に嵌合することができ、前記側壁部の下端外周を囲繞するように補強帯状部材が設けられ、この補強帯状部材は複数の連接部により前記側壁部と連接し、これにより、キャップ本体部をエアゾール容器に取り付ける際は、強制的に嵌合させることにより行われ、容器の使用開始時には、前記補強帯状部材を本体部から引き千切ることにより初めてキャップ本体部がエアゾール容器から取り外すことができるものである。
【0004】
このように、キャップの下端外周部に補強帯状部材を設けたもので、この帯状部材の端部の摘み片を把持してこれを切り離し、キャップを開放することができるものであり、この帯状部材を除去することによりキャップが開放可能となり、且つこの帯状部材が有ることにより製品のバージン性(未開封性)を確保し、確認することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−126198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、上記先願に係る発明と異なり、エアゾール容器の上端部の内容液排出用ステムに装着する噴射ボタン及びその製造方法の創案をその目的としており、この噴射ボタンが同時に容器のキャップの役目をも担い、且つロック手段をも有し、更にはそのエアゾール製品が未使用であることを容易に確認できるようにすること、即ちバージンシールの機能をも兼ね備えることをその第一の課題とするものである。
しかも、その構造を極めて簡易なものとして、製造容易、製造コストの低減化をも念頭に入れてその創案をすることがその課題となる。
更に、本発明においては、エアゾール容器等の開封後使用中においても、噴射ボタンのロックを容易に行うことができることもその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、エアゾール容器又はポンプ式噴霧容器の上端部に設けられている内容液の排出用ステムに装着する噴射ボタンであって、この噴射ボタンを押下することによって、内容液がその噴射ボタンの噴射口から噴射される噴射ボタンにおいて、前記噴射ボタンが下方部分に位置する基礎部と、基礎部の上方に位置する押下部と、前記基礎部と押下部の間に位置するロック部とからなり、このロック部は、その一部が切断された切欠部を有して前記押下部の下方外周壁面を囲繞するように配置され、前記基礎部の下端周縁部が容器上端部の排出用ステムの外側の周縁部と係合してキャップ機能を有し、前記押下部は、排出用ステムと連結する導通路を有し、この導通路の出口が噴射口を成し、これにより前記ロック部を取り外すことによって押下部が押し下げられる状態となることを特徴とする噴射容器用噴射ボタンである。
【0008】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、この噴射ボタンを成形するに際して、前記押下部と基礎部とを接続する成形用接続部を1又は2以上設けた外型と内型からなる1組の金型を使用し、この金型には、押下部又は基礎部に通じる第1ゲートと、ロック部に通じる第2ゲートを設け、この金型内に合成樹脂を充填し、固化して一体的に成形され、金型離型後に各構成要素が組み立てられた状態で完成することを特徴とする噴射容器用噴射ボタンである。
【0009】
本発明の第3のものは、上記第1の発明において、前記噴射ボタンを成形するに際して、前記押下部と基礎部とを接続する成形用接続部を1又は2以上設けた外型と内型からなる1組の金型を使用し、この金型には、押下部又は基礎部に通じる第1ゲートのみを設け、ロック部はその上縁部で複数の連接部を介して押下部と接続されており、この金型内に合成樹脂を充填し、固化して一体的に成形され、金型離型後に各構成要素が組み立てられた状態で完成することを特徴とする噴射容器用噴射ボタンである。
【0010】
本発明の第4のものは、上記第1乃至第3の何れかの発明において、前記ロック部の切欠部が噴射口側の前方に設けられ、更に、ロック部の外周面の適宜位置に一又は複数の突状部を形成したことを特徴とする噴射容器用噴射ボタンである。
【0011】
本発明の第5のものは、上記第1乃至第4の何れかの発明において、前記押下部の下端外周縁部に外側方向に延長する延長部を設け、成形完了後、押下部が基礎部から上方に抜脱しないように形成したことを特徴とする噴射容器用噴射ボタンである。
【0012】
本発明の第6のものは、エアゾール容器又はポンプ式噴霧容器の上端部に設けられている内容液の排出用ステムに装着する噴射ボタンであって、この噴射ボタンを押下することによって、内容液がその噴射ボタンの噴射口から噴射される噴射ボタンにおいて、前記噴射ボタンが下方部分に位置する基礎部と、基礎部の上方に位置する押下部と、前記基礎部と押下部の間に位置するロック部とからなり、このロック部は、その一部が切断された切欠部を有して前記押下部の下方外周壁面を囲繞するように配置され、前記基礎部の下端周縁部が容器上端部の排出用ステムの外側の周縁部と係合してキャップ機能を有し、前記押下部は、排出用ステムと連結する導通路を有し、この導通路の出口が噴射口を成し、これにより前記ロック部を取り外すことによって押下部が押し下げられる状態となる噴射容器用噴射ボタンの製造方法であって、前記押下部と基礎部とを接続する成形用接続部を1又は2以上設けた外型と内型からなる1組の金型を使用し、この金型には、押下部又は基礎部に通じる第1ゲートと、ロック部に通じる第2ゲートを設け、又は、この金型には、押下部又は基礎部に通じる第1ゲートのみを設け、ロック部はその上縁部で複数の連接部を介して押下部と接続されており、この金型内に合成樹脂を充填し、固化して一体的に成形され、金型離型後に各構成要素が組み立てられた状態で完成することを特徴とする噴射容器用噴射ボタンの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1のものにおいては、噴射ボタンが同時に容器のキャップの役目を担う事が可能となる。
そして、ロック部を取り外すことによって、押下部の押し下げが可能となり、容器の内容液を外部に噴射することが可能となる。
このように、本発明に係る噴射ボタンは、ロック部を取り外すことにより使用可能となるために、このロック部を取り外す前の状態において、その未使用状態を確認することができ、バージンシールの役目も担う事となる。
また、ロック部を取り外した後の使用中においても、このロック部を利用して、使用後に再度押下部と基礎部との間に嵌合することにより、ロック手段として用いることも可能となる。
【0014】
本発明の第2のものにおいては、上記第1の発明の効果に加えて、その噴射ボタンの全体が合成樹脂の一体的な成形により同時に製作されるために、製造容易、コスト削減、取り扱いも簡便なものとなる。
より詳しくは、1組の金型によって同時に成形され、金型の離型時に押下部、ロック部及び基礎部のすべての構成要素が組み立てられた状態で完成する。即ち、アッセンブリが完成した状態で一体的に成形される。
【0015】
詳述すれば、押下部と基礎部とを接続する成形用接続部を1又は2以上設けた外型と内型からなる1組の金型を使用し、この金型には、押下部又は基礎部に通じる第1ゲートと、ロック部に通じる第2ゲートを設け、この金型内に合成樹脂を充填し、固化して一体的に成形され、金型離型後に各構成要素が組み立てられた状態で完成するものである。
即ち、第1及び第2ゲート並びに成形用接続部によって、金型内に合成樹脂が充填され、離型後には押下部、ロック部及び基礎部はそれぞれ個別のものとして一体的に組み合わされた状態で完成するものである。
従って、個々の構成要素を個別に成形し、その後にアッセンブリを行う方法と比較すれば、格段に省エネ及び省力化に寄与するものとなる。
【0016】
本発明の第3のものにおいても、上記第2の発明と同様の効果を発揮するものであるが、前記押下部と基礎部とを接続する成形用接続部を1又は2以上設けた外型と内型からなる1組の金型を使用し、この金型には、押下部又は基礎部に通じる第1ゲートのみを設け、ロック部はその上縁部で複数の連接部を介して押下部と接続されており、この金型内に合成樹脂を充填し、固化して一体的に成形され、金型離型後に各構成要素が組み立てられた状態で完成するものである。
【0017】
即ち、この第3の発明においては、第1ゲート及び成形用接続部により、基礎部、押下部及びロック部の全てに合成樹脂を充填することができ、離型後は、上記第2の発明と異なり、押下部とロック部が連接部によって繋がった状態で完成するのである。
従って、押下部とロック部が連接部によって繋がった状態となるために、製品の未開封性がより明確なものとなる。
そして、製品の使用時には、上記連接部を切断して、ロック部を押下部から分離させることにより始めて使用できるものとなるのである。
【0018】
本発明の第4のものにおいては、ロック部の形態をより限定したものであり、その切欠部を噴射口側の前方に設け、その外周面には突状部を形成したものである。
即ち、ロック部の外周に設けた一つ又は複数の突状部によって、このロック部を押下部の外周壁面から取り外したり或いは取り付けたりする操作をより容易なものとしたのである。
この突状部は、ロック部の周囲に複数個設けてもよいし、噴射口と反対側の後部に1個設けるのも自由である。
【0019】
本発明の第5のものは、押下部の下端外周縁部に外側方向に延長する延長部を設けたことにより、成形完了後、押下部が基礎部から上方側に抜脱しないように、つまり、分離しないように形成したものであり、これにより、成形後の噴射ボタンの一体的なアッセンブリをより確実にしたものであり、且つ、その全体が分離せずに一つのものとして取り扱うことができ、便利なものとなる。
【0020】
本発明の第6のものは、上記発明に係る噴射容器用噴射ボタンの製造方法について特定したものである。
即ち、上記第2又は第3の発明に係る噴射容器用噴射ボタンの製造方法について明確化したものである。
その効果は、上記第2又は第3の発明の効果と同様のものである。
即ち、1組の金型によって同時に成形され、金型の離型時に押下部、ロック部及び基礎部のすべての構成要素が組み立てられた状態で完成する。つまり、アッセンブリが完成した状態で一体的に成形され、製造容易、コスト削減、取り扱いも簡便なものとなり、未開封性をも付与できるものとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る噴射ボタンを図示しており、その(A)が正面図、その(B)が右側面図、その(C)が平面図、その(D)が背面図である。
図2】上記実施形態に係る噴射ボタンの縦断面図を示し、その(A)が金型内形状を示す側面方向断面図、その(B)が(A)のB−B線断面図、その(C)が金型離型状態を示す正面方向断面図、その(D)が噴射口部の収縮曲がり状態を示す側面方向断面図である。
図3】上記実施形態に係る噴射ボタンの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面と共に本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る噴射ボタンを図示しており、その(A)が正面図、その(B)が右側面図、その(C)が平面図、その(D)が背面図である。
これらの図から各構成要素の関係及び構成を見て取ることができる。
【0023】
本発明に係る噴射ボタン10は、下方の基礎部11と上方の押下部12、そしてその中間に位置するロック部15とから構成される。
基礎部11は、噴射ボタン10の最下方に位置し、上方に向かって徐々にその外径が小さく形成された略筒体形状を有し、その内部に上方から押下部12の下方筒体部12cが嵌入する。
基礎部11の下端開口部11kは、図示はしていないエアゾール容器等の上端部と係合し、固定される。
【0024】
押下部12は、噴射ボタン10の上方に位置するが、その形態は、下方が略円筒形状の下方筒体部12cを有し、その上端部に天部12tが形成され、この天部12tの外径が下方筒体部12cの外径よりも大きいサイズに形成され、その一部である前方側に突出するように噴射口12nが形成されている。
この押下部12の下方筒体部12cが、上記した通り、基礎部11の内部に上方から遊嵌状態で嵌入するのである。
【0025】
ロック部15は、上記基礎部11の上端部と押下部12の天部12tの間に介装されている。
即ち、このロック部15は、押下部12の天部12tの下方で、押下部12の下方筒体部12cの外周にこれを囲繞するように配置されているのである。
ロック部15は、上記した通り、押下部12の下方筒体部12cの外周に配置されているが、そのロック部15の前方側は連続しておらずに分離され、切り欠かれている。この切欠部の存在は、このロック部15を押下部12の下方筒体部12cから取り外すためである。
また、26は、ロック部15の外周に設けた突状部を示している。
従って、この突状部26を摘みとして指等によりロック部15を押下部12の下方筒体部12cから取り外すことによって、押下部12が下方に押下されうる状態と成る。
【0026】
上記突状部26は、図に示した通り、正面視左右両側に2個設けているが、この突状部は、噴射口12nと反対側の後方に1個のみ設け、この突状部を手の指で把持して後方に引き抜くことができるように形成することもできる。
【0027】
図2は、上記実施形態に係る噴射ボタンの縦断面図を示し、その(A)が金型内形状を示す側面方向断面図、その(B)が(A)図のB−B線断面図、その(C)が金型離型状態を示す正面方向断面図、その(D)が噴射口部の収縮曲がり状態を示す側面方向断面図である。
これらの図から見て取れるように、この実施形態に係る噴射ボタン10は、エアゾール容器等の上端部中央に位置する内容液の排出用ステムの上端部と、押下部12内の導通路12pの導入口12gとが嵌合して連結し、基礎部11の下端開口部11kの開口縁部がエアゾール容器等の上端の周縁部と係合して、固定されるのである。
【0028】
ロック部15も、この図から良く見て取れるように、押下部12の下方筒体部12cの外周でこれを囲繞するように配置され、押下部12の天部12tと基礎部11の上端部との間に介装されている。
これによりロック部15を押下部12の下方筒体部12cから取り外して、押下部12を下方に押し下げ、容器内の内容液は、排出用ステムから導通路12pを通過して、噴射口12nから外部へ噴射することができる。
【0029】
このロック部15の外周面には突状部26が複数設けられているために、ロック部15を押下部12から取り外す際に便利なものと成る。
そして、容器開封後使用中の際には、このロック部15を基礎部11と押下部12との間に嵌合することにより、これを押下部12のロック手段として使用することが可能となるのである。
【0030】
以下、本発明に係る噴射ボタン10の製造方法について説明する。
本発明に係る噴射ボタン10は、外型と内型の1組の金型を用いて一体的に成形して製作することができる。
即ち、外型と内型の1組の金型を用いて合成樹脂を充填して一体成形するために、図2(B)に示した通り、第1ゲートG1と第2ゲートG2を設け、前記第1ゲートG1は、押下部と基礎部に樹脂を充填でき、第2ゲートG2は、ロック部15に樹脂を充填できる。
そして、第1ゲートG1から充填される樹脂は、複数の内部ゲートG3を介して押下部12及び基礎部11の両者へと充填されるのである。
この内部ゲートG3が成形用接続部として、次の図3の底面図で説明するが、4箇所設けられている。
【0031】
図2(A)は、金型内の状態を示す側面側縦断面図を示し、成形完了して離型した状態を図2(C)が示している。この(C)図から良く解る通り、離型後、3つの構成要素である基礎部11、押下部12及びロック部15は、組み立てられた状態で、つまりアッセンブリが完成した状態で同時に成形されるのである。
このアッセンブリが完成した状態において、つまり金型を分離した状態で前記内部ゲートG3となっていた成形用接続部は、切断された状態となる。
図2(D)は、金型離型後、噴射口部12nが収縮により下方に少し湾曲するが、この収縮曲がり状態を単に図示したものである。
【0032】
図3は、上記実施形態に係る噴射ボタンの底面図であり、この図から成形用接続部、即ち内部ゲートG3を見て取ることができる。
このように、押下部12の下方筒体部12cを基礎部11と接続するため、成形用接続部、つまり内部ゲートG3が、押下部12と基礎部11とを4つの成形用接続部G3、G3、…として接続しているのである。
【0033】
尚、図2(B)においては、成形用接続部(内部ゲートG3)の図示は、図3の位置と整合していないが、成形用接続部を明瞭に示すために、その位置を変更して図示している。また、図2(C)の縦断面図においては、その左半分の断面は噴射ボタンの中心線と突出部26を含む面の断面を示し、その右半分は噴射ボタンの中心線と成形用接続部(内部ゲートG3)を含む面の断面を示している。
このように、成形用接続部G3は、基礎部11の内壁上端部と押下部12の下方筒体部12cとの間に4つ介在させている。
【0034】
金型に合成樹脂を充填して、固化した後に、内型を取り除くことにより、これら成形用接続部G3は何れも切断されることとなるものである。
以上により、本発明に係る噴射ボタン10は、その構成要素の全てが同時に一体的に成形され、離型時には、その全体が組み立てられた状態で、アッセンブリが完成した状態で出来上がることとなるのである。
【0035】
以上、実施形態について説明したが、本発明においては以下の通り種々設計変更が可能となる。
まず、本発明に係る噴射ボタンは、エアゾール容器或いはポンプ式噴霧容器の何れのタイプのものにも適用することができる。
噴射ボタンの大きさ、形態等は、エアゾール容器又はポンプ式噴霧容器の上端部の形態に適合させて適宜設計変更することができる。
【0036】
成形用の第1ゲート及び第2ゲートの位置も自由に設定することができ、第1ゲートにおいては押下部又は基礎部の何れかの適宜位置に設定することができ、第2ゲートにあってはロック部に通ずる何れかの位置に設けることができる。
内部ゲートG3である成形用接続部の数、位置、その形態等も自由に設計することができる。
【0037】
尚ここで、上記製造方法においては、1組の成形用金型において、第1ゲートと第2ゲート並びに成形用接続部を設けたものを使用したが、第2ゲートを設けずに実施することもできる。
即ち、押下部の天部とロック部の上縁部を複数の連接部によって接続しておくことにより、押下部とロック部とが接続状態となり、第1ゲートを押下部又は基礎部に設けることにより、第2ゲートを無くすることができるのである。
このようにすることにより、噴射ボタンが完成した状態で、押下部とロック部が複数の連接部によって接続した状態と成り、より製品の未開封性を確実なものとすることができるのである。
ロック部外周面に設ける突状部の数や形状、大きさ等も自由に設計変更することができる。
【0038】
以上、本発明は、容器に固定される基礎部と内容液を噴射させるための押下部との間にロック部を配備し、これらの構成要素を一体的に同時に成形することができ、成形後には各要素が組み立てられた完成状態で形成でき、これを各種タイプの噴射容器の上端部に装着して固定することができる。これにより噴射ボタンを押し下げることが不能なロック機構付きのものと成し、且つこれにより製品のバージン性を保証し、使用中はロック部が噴射ボタンのロック手段をも兼ねる極めて画期的な噴射容器用の噴射ボタン及びその製造方法を提供することができたものである。
【符号の説明】
【0039】
10 噴射ボタン
11 基礎部
12 押下部
12c 下方筒体部(押下部の)
12n 噴射口
12p 導通路
12g 導入口
15 ロック部
26 突状部
G1 第1ゲート
G2 第2ゲート
G3 内部ゲート(成形用接続部)
図1
図2
図3