特許第6042723号(P6042723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042723超音波腎神経除去による高血圧症の非侵襲的治療のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042723
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】超音波腎神経除去による高血圧症の非侵襲的治療のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   A61N7/00
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-537108(P2012-537108)
(86)(22)【出願日】2010年10月29日
(65)【公表番号】特表2013-509267(P2013-509267A)
(43)【公表日】2013年3月14日
(86)【国際出願番号】US2010054684
(87)【国際公開番号】WO2011053772
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2013年10月29日
(31)【優先権主張番号】61/256,455
(32)【優先日】2009年10月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513293968
【氏名又は名称】コナ メディカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ウォーンキング, レインハード, ジェイ.
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第7510536(US,B2)
【文献】 国際公開第2009/125002(WO,A1)
【文献】 特表2003−526400(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0221939(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類対象の選定された腎動脈を包含する治療領域内の神経伝導を不活性化するための装置であって、
(a)前記対象の腎臓に隣接する位置で前記対象の皮膚と係合する、位相配列を有する治療用超音波変換器と、
(b)治療的に有効な不完全に集束された超音波エネルギーを少なくとも約1.0cm3の衝撃容積に伝達するように、前記治療用超音波変換器を作動させる作動装置と、
(c)前記位相配列と動作可能に結合される複数の画像処理エレメントを含む画像処理サブシステムと、
を含み、前記衝撃容積が、前記対象の前記選定された腎動脈を含む前記治療領域を包含し、前記衝撃容積の全体にわたって、前記選定された腎動脈に近接した神経の伝導を不活性化させるのに十分な強度又はレベルで前記治療的に有効な不完全に集束された超音波エネルギーを適用するために、前記作動装置が、超音波のタイミング及びエネルギーのパラメータ制御するように構成され、前記画像処理サブシステムは、画像処理超音波信号を送信して発生したエコーを受信するように構成され、前記画像処理サブシステムは、前記対象の前記腎動脈を含む身体領域の画像を表示するディスプレイを更に含み、前記作動装置は制御装置を含み、前記制御装置は、その一部が、前記選定された腎動脈を包含する前記衝撃容積において前記治療的に有効な不完全に集束された超音波エネルギーを生み出すために、前記位相配列の複数の変換器エレメントついて時間シーケンス及びエネルギーレベルを定めるように構成される、
装置。
【請求項2】
前記画像処理サブシステムは、前記治療領域を含む前記対象の身体の一部の画像を、前記治療用超音波変換器により共通の基準フレーム内に取得し、前記ディスプレイは、前記衝撃容積の表現を重ねて前記取得された画像を表示する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記画像処理サブシステムが、超音波画像処理信号を送信しかつ前記対象の身体からエコーを受信する画像処理サブアセンブリを含み、前記画像処理サブアセンブリが、前記治療用超音波変換器に機械的に結合されており、前記画像処理サブアセンブリ及び前記治療用超音波変換器が変換器アセンブリを構成し、イメージャが、前記画像処理サブアセンブリから受信したエコーから前記画像を生成する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記治療用超音波変換器が、圧縮性の結合媒体を通して前記対象の皮膚に結合され、前記圧縮性の結合媒体を圧縮して移動できるように、前記治療用超音波変換器に並べて配置された前記圧縮性の結合媒体を更に含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記治療用超音波変換器と前記画像処理サブアセンブリとの間の前記機械的結合が調節可能であり、前記装置が、前記画像処理サブアセンブリに対する前記治療用超音波変換器の位置を感知しかつ前記イメージャに送信するためのセンサを更に含む、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記位相配列の前記複数の変換器エレメントの少なくとも1つを作動させて超音波画像処理信号を送信して前記対象の身体からエコーを受信するために、前記位相配列を作動させるように前記画像処理サブシステムが構成及び配置されている、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記画像処理サブシステムが、前記エコーを受信するために、前記位相配列の1つ以上の前記変換器エレメントを制御する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記制御装置が、
(a)使用者が識別した治療領域と、使用者が識別した超音波エネルギー経路とを受け取り、
(b)前記識別した治療領域と前記識別した超音波エネルギー経路とに基づいて、活性化シーケンスと変換器エレメントパワー出力とを決定し、
(c)前記決定した活性化シークエンスと前記決定した変換器エレメントパワー出力とに基づいて、前記複数の変換器エレメントから治療的に有効な不完全に集束された超音波エネルギーを伝達するために前記位相配列を作動させる、
ように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
約10〜約100ワットの音響パワーレベルで、約10〜約30秒間、前記治療的に有効な不完全に集束された超音波エネルギーを伝達するように、前記作動装置が作動して前記治療用超音波変換器を制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記治療的に有効な不完全に集束された超音波エネルギーが、前記治療領域の温度を65℃未満かつ42℃以上にするように、前記作動装置が作動して前記治療用超音波変換器を制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記画像処理サブシステムが、画像処理超音波信号を送信しかつエコーを受信するように構成されており、前記治療的に有効な不完全に集束された超音波エネルギーを前記画像処理信号と同期かつ交錯されたパルス関数で伝達するように、前記作動装置が作動して前記治療用超音波変換器を制御する、請求項2に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれているものとみなす、「METHOD AND APPARATUS FOR NON−INVASIVE TREATMENT OF HYPERTENSION THROUGH ULTRASOUND RENAL DENERRVATION」と題され、2009年10月30日に出願された米国仮特許出願第61/256,455号の出願日の恩恵を主張する。「METHOD AND APPARATUS FOR TREATMENT OF HYPERTENSION THROUGH ULTRASOUND RENAL DENERVATION」と題され、2009年10月30日に提出された、米国仮特許出願第61/256,429号、及び「METHOD AND APPARATUS FOR TREATMENT OF HYPERTENSION THROUGH ULTRASOUND RENAL DENERVATION」と題され、2010年1月6日に提出された同第61/292,618号の全体の開示が、参照により本明細書に組み込まれている。「METHOD AND APPARATUS FOR PERCUTANEOUS TREATMENT OF HYPERTENSION THROUGH RENAL DENERVATION」と題され、本明細書と同日で提出され、発明者としてReinhard Warnkingが明示されている特許協力条約のもとに公表された国際特許出願の全開示もまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、神経伝導の不活性化のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
疾患に関連する特定の神経の不活性化が、疾患の治療を補助し得る。例えば、腎神経伝導の不活性化は、高血圧症の治療に用いることができる。高血圧症の有効な治療法は、多くの理由で重要である。例えば、高血圧症の有効な治療法は、腎疾患、不整脈、及び鬱血性心不全などのような高血圧症によって発症される若しくは増悪される病状の予防又は制限において有効な臨床的利点を有する。一方、薬剤療法が高血圧症を治療するために用いられ得るが、常に効果的というわけではない。薬剤療法に抵抗性があり、又は薬剤療法からの副作用を経験する人々もいる。
【0004】
高血圧症は、腎動脈を囲む腎神経の伝導の不活性化によって治療され得る。交感腎神経活性は、高血圧症の開始及び持続において重要な役割を果たす。脳が腎神経活性の増加を認知し、低血液量又は血圧の降下を信号で伝える場合、心臓、肝臓、及び腎臓への交感神経活性を増加させることによって脳が補正を行い、これが心拍出量の上昇、インシュリン耐性、及び最も重要なことは、腎臓によるレニン生成の増加をもたらす。レニンは、血管の狭窄を生じるアンギオテンシンの産生を刺激して、結果的に血圧を上昇させ、またアルドステロンの分泌を刺激する。アルドステロンは、腎臓による血液中へのナトリウム及び水の再吸収を増加させ、血液量を増加させて、これによって更に血圧を上昇させる。
【0005】
外科的に腎神経を切断することが、血圧の低下及び水分保持の通常レベルへの低下をもたらし、これによって患者の心臓、肝臓、及び腎臓をその機能を治癒するよう回復させることができることが長年にわたって確立されてきた。腎神経の破損が重大な有害作用を有さないこともまた示されてきた。しかしながら、外科的な腎神経の切断には、大手術が必要とされる。大手術を必要とせずに同じ結果を生み出すことが望ましい。
【0006】
他の損傷を生じることなくこのタスクを達成することに関連する困難さを説明するために、腎動脈及び腎神経の解剖学的構造がここに記載されている。図1に示されたものが、腎臓6に接続された腎動脈10を囲む腎神経8の図である。交感腎神経8は、腎臓6から脳に至る求心知覚腎神経及び脳から腎臓6に至る遠心交感腎神経の両方を含む。更に、図2は、腎動脈の断面を示している。腎動脈壁は、内皮細胞の内側単一層を含む内膜3、動脈壁の中心にある中膜5、及び外側層である外膜4の層を含む。腎動脈10の表面上に及び腎動脈10に隣接して、外膜4内に存在する腎神経8もまた示されている。これら2つの図から分かるように、腎神経8は腎動脈10を囲んでいる。異なる個々人では、腎動脈周辺の異なる位置に腎神経を有する。従って、腎神経は、腎動脈の中心軸からの異なる半径方向距離にて存在し、また腎動脈の外周付近の異なる位置に存在し得る。解剖学的標識点を参照することによって腎神経の位置を決めることは実用的ではない。更に、一般的な画像撮影技術を用いて各人の腎神経を位置決めすることは困難であり又は不可能である。
【0007】
腎神経8を位置決めしかつ標的にすることができないことは、腎動脈10を損傷させることなく又は他の副作用を生じることなく交感腎神経活性を切断することを困難にしている。例えば、腎神経へエネルギーを適用する試みは、狭窄症、内膜過形成、及び壊死などのような影響を生じ得る。他の副作用としては、血栓症、血小板凝固、フィブリン血栓及び血管収縮などが挙げられる。更には、腎神経8を位置決めしかつ標的にすることができないことは、許容される治療の処置を達成するために、交感腎神経活性が十分に断絶されたことを確実にすることを困難にしている。
【0008】
特許文献1は、腎動脈内に挿入されるカテーテルに接続された高周波(「RF」)エミッターの使用を提案している。RFエミッターは内膜に対して配置されて、エミッターのすぐ近くにある腎神経の活性を低減させる温度に腎神経を加熱するように、RFエネルギーが放射される。腎動脈を取り囲むすべての腎神経を処置するために、RFエミッター源は、それぞれの腎動脈の内側周辺に複数回にわたって配置されなくてはならない。エミッターがいくつかの腎神経を見逃して、治療が不完全になることもある。更に、腎神経を加熱することを可能にするために、RFエネルギー源は内膜に接触しなければならず、これが単一層の内皮及び内膜層への損傷又は壊死を引き起こすことがあり、そして内膜過形成、腎動脈狭窄症、及び腎動脈解離を引き起こす可能性がある。
【0009】
特許文献1は、腎神経を非活性化するために、高強度集束超音波の使用も提案している。記載された高強度集束された超音波エネルギー源は、腎動脈の軸の周囲360°パターンで超音波エネルギーを放射し、内膜3に接触させる必要がない。しかし、高強度集束超音波は、動脈を囲む薄い焦点リング内に集中したエネルギーを加える。現在の技術では、腎神経は視覚化及び標的化され得ないため、そして腎神経が腎動脈の中心軸から異なる半径方向の距離にて存在する可能性があるため、この薄いリングを腎神経に合わせることは困難であり又は不可能である。後者の問題は、形状又は厚さで大きな変動を備えた腎動脈を有するような患者では深刻である。更には、薄い焦点リングは、神経及び動脈の長手方向に沿ったそれぞれの腎神経の小断片のみを包含する。神経は再生する傾向があるために、小さい処置区画は、より短期間で神経が再接続することを許す。
【0010】
長年にわたって、超音波は細胞修復を促進し、骨細胞の成長を刺激し、特定の組織への薬剤の供給を増強し、及び体内の組織を撮像するために用いられてきた。更には、高強度集束超音波は、体内の組織及び腫瘍の加熱及び切除のために用いられてきた。高強度集束超音波では、超音波を体内で非常に鋭い焦点、ほぼ理論的な点又は線に持っていくように超音波変換器及び関連するエレメントがデザインされている。従って、変換器によって放射された超音波エネルギーは、体内でおよそ数mm3という非常に少ない加熱容積の範囲以内で放散される。このことが、典型的にはおよそ65℃又はそれ以上である急速壊死に必要な温度へのそのような容積範囲内の組織の急速加熱を提供する。いくつかの用途では、高強度集束超音波は、周辺組織に悪影響を及ぼすことなく、そして超音波エネルギーが通過せねばならない構造体に干渉することなく、所望の点又は線にて組織壊死を引き起こすことができる。既述したように、実用の非外科的技術を用いて腎神経を位置決めすることができないため、腎神経を不活性化するために高強度集束超音波を用いることは困難であり又は不可能である。このことが、少ない加熱容積を腎神経に位置合わせすることを非現実的にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7,617,005号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの態様は、哺乳類対象の治療領域において、神経伝導を不活性化するための方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、治療用超音波変換器を治療領域から離れた対象の身体、好ましくは治療領域の上を覆う対象の皮膚に結合するステップを含むことが好ましい。方法は、治療的に有効な柔らかに(ソフトに)集束された超音波エネルギーを少なくとも約1.0cm3の衝撃容積に伝達するように治療用超音波変換器を作動させるステップを更に含むことが好ましい。衝撃容積は、対象の治療領域を包含することが好ましい。最も好ましくは、治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギーが、神経の伝導を不活性化させるために十分なレベルにて、しかしながら神経を不活性化させるために必要な時間中に組織壊死を引き起こすには不十分なレベルにて衝撃容積全体にわたって適用される。
【0013】
以下に更に述べるように、柔らかに集束された治療用超音波の衝撃容積は、高強度集束超音波で用いられる集束領域よりも何倍も大きい。超音波パワーが、神経不活性化に適したレベルで、比較的大きな衝撃容積全体にわたって適用されるために、本発明のこの態様による好適な方法は、個々の神経の位置決め又は標的化をすることなく実行され得る。体内の治療領域中の神経が不活性化されることを確実にするために要求されるすべてのことは、衝撃容積が治療領域を包含するように、衝撃容積を位置合わせすることである。例えば、高血圧症の治療では、個々の腎神経を位置決め又は標的化する必要なしに、衝撃容積が、腎動脈の長さの一部を覆って腎動脈を包含するように位置合わせされることができる。以下に述べるように、このことは、超音波又は他の画像撮影技術を用いて容易に達成され得る。
【0014】
本発明の他の態様は、哺乳類対象の治療領域内において神経伝導を不活性化させるための装置を提供する。本発明のこの態様による装置は、例えば対象の皮膚上で、治療領域外側の対象の身体と係合するようにされた治療用超音波変換器を含むことが好ましい。装置は、少なくとも約1.0cm3の衝撃容積に治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギーを伝達するために治療用超音波変換器を作動させる作動装置を含むことが好ましく、ここで衝撃容積は対象の治療領域を包含し、そして治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギーは、衝撃容積全体にわたって神経の伝導を不活性化するのに十分な強度である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】腎動脈及びそれに関連する腎神経の解剖学的構造図である。
図2】腎動脈及びそれに関連する腎神経の断面図である。
図3】本発明の対象に係合した一つの実施形態による装置を示す図である。
図4図4A、4B及び4Cは、本発明の実施形態で用いられた3つの異なる超音波変換器アセンブリ及び関連するエレメントの図である。
図5図5A、5B及び5Cは、本発明の3つの異なる変換器及びそのような変換器からの関連する超音波放射の図である。
図6】本発明の一つの実施形態による方法のフローチャートである。
図7】本発明の他の実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の特定の実施形態による装置及び方法は、神経伝導を非侵襲的に不活性化するために用いられ得る。例えば、装置及び方法は、腎動脈10を囲むすべての腎神経8の伝導を不活性化するために用いられ得る。このことは、腎動脈10の表面上及び腎動脈10に隣接して位置する腎神経8を含む。このような不活性化は、外科的手術なしに達成されることができ、従って血栓症、感染症、及び他の付帯的損傷などのような典型的な危険性を伴わずに達成され得る。
【0017】
本発明の一つの実施形態による装置1(図3)は、超音波変換器アセンブリ14と、本明細書で作動装置とも称されている超音波システム32とを含む。作動装置32は、ドライバ92に連結された制御コンピューター90を搭載し、ドライバは制御コンピューター92によって命じられたような所望の超音波周波数で電気信号を発生するようにされている。この実施形態での超音波変換器アセンブリ14は、治療用超音波変換器31と、治療用変換器に機械的に接続された画像処理変換器33とを含む。図3の特定の実施形態では、画像処理変換器は、治療用変換器に対して固定された位置及び向きで存在し、そして治療用変換器は、一定の焦点距離を有する。これらの変換器は別個の構成成分として示されているが、以下に述べるように、それらは一体化されてもよい。図3に示された特定の処置では、変換器アセンブリは、対象2の体外に配置されていて、対象2の皮膚に係合している。このことは、一般的に、対象2の皮膚上で結合ゲルを用いることによって実行される。
【0018】
画像処理変換器33は、画像処理ユニット又は「イメージャ」の一部分を形成する。イメージャは、画像変換器ドライバ及びセンサ96に連結された制御及び再生コンピューター94を搭載する画像処理サブシステム34を更に含む。ドライバ及びセンサ96は、超音波画像処理信号を放出し、対象によって反射された超音波エコーに対応する、画像処理変換器によって発生された電気信号を受信し、並びに電気信号中の情報を制御及び再生コンピューター94へと転送するために、画像処理変換器を作動させるよう配置されている。ドライバ及びセンサユニットを制御するために、並びにドライバ及びセンサ96を経て受信された電気信号から対象の画像を再生するために、制御及び再生コンピューター94が配置されている。制御及び再生コンピューター94は、ディスプレイ98、並びに作動装置の制御コンピューター90にも連結されている。作動装置の制御コンピューター90とイメージャの制御及び再生コンピューター94とが、使用者の指令を受け取るための使用者入力制御100と連結されている。構成要素90〜96は、別個の機能的構成要素として示されているが、これらは互いに一体化され得る。画像処理変換器の制御及び画像の再生のために必要なアルゴリズムは、当該技術分野において周知である。
【0019】
治療用変換器31の孔は、皮膚の火傷を回避するのに十分に大きいように選択される。以下に更に述べるように、治療用変換器は、患者の体内において衝撃容積22の範囲内で組織を加熱するために適切な全エネルギーを有する超音波放射を供給する。皮膚を通しての超音波の伝達は、一般的に皮膚内にていくらかのエネルギーの消散を引き起こし、これにより皮膚の加熱を引き起こす。このことが、火傷を生じることなく皮膚の所定の領域を通して伝達され得るエネルギーを制限する。従って、通常は、超音波エネルギーの伝搬の方向に垂直な平面内の衝撃容積の断面積よりも大きな皮膚の面積に治療用超音波を適用することが必要とされる。治療用変換器の放射孔の寸法は、超音波エネルギーを体内に伝達するために用いられる皮膚の面積を調整する。
【0020】
腎神経伝導を不活性化する際に、超音波変換器アセンブリ14は、介在する組織がほとんどない、典型的には超音波に対して高反射性であるような介在する骨や他の障害物がない比較的大きな結合窓を提供するために、腎臓6に近い対象2の背中上に配置されることが好ましい。大きな結合窓は、大きな孔の治療用変換器31が使用されることを可能にするであろう。好適な実施形態では、孔の典型的な寸法は約20cm2であるが、この寸法は治療領域及び対象2の特定の身体構造に依存して変わるであろう。
【0021】
本発明の一つの実施形態による方法では、コンピューター94及びドライバ96は、変換器33を作動させて、対象2の構造体に反射されて超音波エコーを生じさせる超音波画像処理信号18を送信する。エコーは、画像処理変換器33によって受信されて、電気信号に変換され、次にこれがコンピューター94によって用いられ、使用者が見ることが可能なディスプレイ98上の身体領域の画像を生成する。好適な実施形態では、画像16は画像の重ね合わせ15を含み、これが治療用超音波の予想されたエネルギー経路と、治療用変換器によって放射された超音波エネルギーが神経非活性化のために必要な強度に集束する場所である、衝撃容積の位置を示す。治療用変換器31が一定の焦点距離を有し、かつ画像処理変換器33との一定の空間的関係性を有するために、画像処理変換器の基準フレーム内での経路及び衝撃容積の位置と画像16とが既知であり、これによって重ね合わせが表示され得る。
【0022】
衝撃容積の表示22′が治療領域10(腎動脈として示されている)の画像10′を含み、エネルギー経路が骨及び空気によって妨害されないように、使用者が画像重ね合わせを注視して超音波変換器アセンブリ14を調節することが好ましい。一旦、衝撃容積が治療領域を包含したら、使用者は制御コンピューター90に治療用変換器31を作動させるように指示し、これによって、治療用変換器は治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギー20を、衝撃容積22に放射する。治療用エネルギー20は、衝撃容積を以下に述べるような温度まで持っていき、これによって衝撃容積22内の全ての神経の伝導が不活性化される。個々の神経の画像撮影又は位置決めは、必要ない。
【0023】
図4Aは、画像処理変換器33と治療用変換器31とを含む図3の超音波変換器アセンブリ14を示している。診断用画像処理変換器33は、画像処理サブシステム34に接続され、一方で治療用サブアセンブリ31は、作動装置32に接続されている。画像処理変換器33は、画像処理超音波18を放射及び受信し、並びに画像処理サブシステム34は画像を生成し、一方で治療用変換器31は、治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギー20を治療領域に伝達する。この実施形態では、治療用超音波エネルギーの衝撃容積が画像撮影された体内領域内に配置され得るような角度で、治療用変換器31が、固定リンク36によって画像処理変換器33に機械的に固定されている。
【0024】
図4Bを参照すると、超音波変換器アセンブリ14の別の実施形態は、画像処理超音波18を放射する画像処理変換器33と、治療用変換器31とを含む。しかしながら、2つの変換器の間の機械的接続38は固定されていない。機械的接続38は位置センサ39を含み、位置センサ39は、画像処理サブシステム34(図3)に接続された画像処理変換器33に、治療用変換器31の位置に関する情報を送信する。制御及び再生コンピューターは、治療用変換器31の位置を画像処理変換器の基準フレームに変換するために、又は逆も可能にするためにこのような位置情報を用い、これによって対象の身体の画像16上に、衝撃容積及び経路の重ね合わせが正確に表示され得る。基準フレーム間の画像の数学的変換のための技術は、当該技術分野において周知である。
【0025】
図4Cを参照すると、超音波変換器アセンブリ14は、位相配列変換器35又は同様の環状配列変換器(図示なし)であってもよい。当業者に既知であるように、これら変換器の双方ともに、別個に作動され得る独立した変換器エレメントを有する。一つの実施形態では、位相配列変換器35は、画像処理超音波18を用いる画像処理、及び治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギー20の伝達の両方を実行する。位相配列は、イメージャサブシステム34のエレメントと作動装置32(図3)とを組み込むシステム37に接続されている。この組み合わされたシステム37は、治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギー20を発生させるために、変換器35を用いて画像16を発生させること及び超音波変換器配列35の複数の変換器エレメントを制御することの双方が可能であるように構成されている。画像16が生成される際に、システム37のコンピューターは、少なくとも1つから数百個までの変換器エレメント40に、反射されたエコーを受信させる。超音波エネルギー20での診断経路及び治療経路が同一であるので、この実施形態は、治療領域10の位置を不正確に識別してしまう危険性を都合良く低減する。
【0026】
典型的には、変換器アセンブリ14は、作動装置32と画像処理サブシステム34(図3)とを含む再利用可能な装置と組み合わされ得る交換可能なユニットとして提供される。変換器アセンブリは、バーコード、電子メモリなどのようなデータ伝達要素を含むことが好ましく、再利用可能な装置は、このような要素上のデータを読み取り、そしてそのデータを作動装置及び画像処理サブシステムのコンピューターに転送する装備を備えている。変換器アセンブリ上で送られるデータは、治療用変換器及び画像処理変換器のための適切な作動周波数、治療用変換器の焦点距離並びに治療用変換器の放射孔の寸法及び形状などのような、変換器のパラメータを含む。あるいは、変換器アセンブリ上で送られるデータは、特定の変換器アセンブリに属している情報をインターネットのような通信リンクを通してアクセス可能な中央データベースから検索するために、作動装置及び画像サブシステムのコンピューターによって用いられ得る認識番号のような認識情報を含んでもよい。
【0027】
変形可能な結合媒体30(図4A〜4C)が、治療用変換器31又は35と対象との間に提供されてもよい。変形可能な結合媒体は、治療用超音波エネルギー20がそれを通して伝達可能であるような材料を含む。例えば、変形可能な結合媒体は、水若しくはゲルで充填された可撓性又は弾性のバッグを含んでもよい。変形可能な媒体を圧縮するように又は圧縮を減らすように超音波変換器に力を加えることによって、治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギー20の衝撃容積22の位置が、治療領域10を包含するように調節され得る。
【0028】
別の実施形態では、治療用変換器は、治療用変換器を移動させるように構成された機械的システムに接続されてもよい。画像処理サブシステムの制御及び再生コンピューターは、衝撃容積の位置と治療領域の位置とを比較するように構成されることができ、そして衝撃容積22が治療領域10を包含することを確実にするために、必要に応じて機械的システムを作動させて治療用変換器位置を移動させるように構成されてもよい。このようなシステムでは、例えば、画像上に表示されたカーソルを治療領域の境界線に移動させるために手動での入力をコンピューターに提供し、そしてカーソルが境界線上にあることを示す入力を行うことによって、使用者は、画像の基準フレーム内で治療領域の境界線を指定してもよい。
【0029】
他の実施形態では、イメージャは、治療用変換器に結合されていない画像取得要素を用いる。単なる具体例としては、X線、CAT、MRIなどのような画像診断法が用いられ得る。治療用変換器の位置が、画像処理システムの基準フレーム内で、又は画像処理システムの基準フレームに対する既知の変換を有する別の基準フレーム内で決定されるならば、衝撃容積の位置及び対象の身体の画像は、共通の基準フレーム内に収められ得る。
【0030】
上述した実施形態では、治療用変換器は超音波エネルギー20を収束させるが、それはある程度までにすぎない。本開示で用いられたように、超音波エネルギーに関し、用語「集束」は、超音波エネルギーの強度が、エミッターから離れて強度が最大であるエミッターから離れた場所へ、伝搬の方向で増加することを意味している。従来の高強度集束超音波では、変換器は、可能な限り0に近づくような、典型的には数mm3の体積を有する点又は線のような集束領域へとエネルギーを収束させるように設計されかつ操作される。超音波エネルギーは、この小さな集束領域内で高強度を有するが、集束領域の境界線では、強度は急激に減少する。これとは対照的に、本発明の好適な実施形態では、集束領域が意図的にぼやかされていて、超音波エネルギーが、本明細書に最大強度の点を囲む「衝撃容積」として称された比較的大きな領域全体にわたって適度に均一な強度を有するように、治療用変換器が構成されかつ操作される。衝撃容積内の強度は、衝撃容積の全体にわたって所望の治療効果を生み出すのに十分な程度において均一である。本発明の好適な実施形態では、所望の治療効果は、組織の切除又は壊死なしに神経伝導を不活性化させることである。以下に述べるように、このことは典型的には、固形組織を約42℃から65℃未満の温度の間で加熱することが必要である。従って、衝撃容積内の超音波エネルギーの強度は、血液及び血液のような冷却媒体に密接している組織を除き、衝撃容積内の実質的に全ての固形組織を、42〜65℃に、しかしいかなる組織も65℃以上に加熱されることなく、加熱するのに十分な程度で均一であるべきである。衝撃容積は、好ましくは1cm3であるが、5cm3未満の容積を有する。つまり、超音波エネルギーは、やはり変換器から衝撃容積に向かう伝搬の方向で強度が増加するように集束されるが、その集束は柔らかな集束である。柔らかに集束された超音波の衝撃容積は、高強度の鋭く集束された超音波での集束領域の容積よりも10〜100倍大きいので、好適な柔らかな集束は、腫瘍又は他の組織を切除するために高強度の鋭く集束した超音波を用いる従来の当該技術分野の装置でのものとは異なっている。更には、超音波エネルギー20は柔らかに集束されるので、衝撃容積内での超音波エネルギーの最大強度は、組織を切除するために用いられる高強度の鋭く集束された超音波の最大強度よりも10〜100倍小さい。例えば、柔らかに集束された超音波では、ビーム経路における最大強度でもある衝撃容積内の最大強度は、典型的には約1ワット/cm2又はそれ以下から約10ワット/cm2である。
【0031】
図4A、B及びCに見られるように、柔らかに集束された超音波エネルギー20は、図4A,B及びCでは腎動脈10である治療領域へと向けられ、これによって、衝撃容積22は、腎動脈10及び腎動脈の外膜内及び外膜周辺内の神経を包含する。衝撃容積の前方及びそれを超えた超音波の伝搬の経路に沿った領域では、超音波エネルギーの強度は、神経伝導を不活性化させる又は組織損傷を引き起こすには弱い。衝撃容積内において、超音波エネルギー20の強度は、神経伝導を不活性化させるには十分に強いが、神経不活性化に必要とされる時間内で組織を切除し、又は壊死を引き起こすほどには強くない点で、治療的に有効である。神経損傷は、組織壊死よりも非常に低い温度で、かつ非常に急速に発生することを研究は示している。Bunch,Jared.Tら著「Mechanisms of Phrenic Nerve Injury During Radiofrequency Ablation at the Pulmonary Vein Orifice」,Journal of Cardiovascular Electrophysiology,第16巻、第12版、1318〜1325ページ(2005年12月8日)を参照されたい。その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。図3及び4に示したように、腎神経8を不活性化させるために、治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギー20が加えられる際には、超音波エネルギー20は、腎神経8の伝導を不活性化させるには十分に強いが、狭窄症、内膜過形成、内膜壊死、又は治療を必要とするその他の傷害のような損傷を引き起こすほどには強くはない。
【0032】
組織の壊死は、10秒間又はそれより長い時間、65℃又はそれよりも高い温度であると典型的に発生するのに対し、腎神経伝導の不活性化は、腎神経が数秒間又はそれより長い時間にわたって42℃又はそれよりも高い温度にある時に発生するため、超音波エネルギーの量は、数秒間又はそれより長い時間、この温度範囲内で衝撃容積11内の温度を維持するように選択される。
【0033】
治療用変換器は、例えば、約1MHz〜約数十MHzの周波数、一般的には約5MHzの周波数で操作されるように設計される。超音波エネルギーの治療用量を衝撃容積内で発生させるために、好適な実施形態中の変換器によって放出される音響パワーは、一般的に約10〜約100ワットである。パワー出力の継続時間は、一般的に約10秒〜約30秒であるが、約5秒〜1分又はそれ以上でもよい。数理的モデル化によって、好ましくは異なる用量によって達成された実際の温度を評価するための前臨床試験によって、正確な用量を提供するための正確なパワーレベル及び継続時間が、それぞれの治療領域に関して決定され得る。このような前臨床試験は、組織層や、血流などの物理的動特性といった生物学的構造の複雑性があるために、有用である。
【0034】
更に、治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギー20の伝達は、画像処理超音波のデューティサイクルと同期又は交錯されたデューティサイクルを備えたパルス関数のようなものであり得る。パルス動作は、治療用超音波によって画像を不明瞭にすることなく、装置1がリアルタイムで画像及び治療用超音波を発生させることを可能にする。
【0035】
図5Aに示したように、治療用変換器31は、治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギーを提供するように幾何学的に形成されてもよい。鋭く集束した領域を生成するであろう部分的な球状よりはむしろ、変換器の放射面46は非球状であり、例えば部分楕円体である。楕円体は超音波エネルギーの集束を引き起こすが、それは単一点への集束ではない。特定の放射面形状から生じる強度分布を決定するための数学的技法は、当該技術分野において周知であり、ソフトフォーカス変換器のための正確な形状を選択するために用いられ得る。非球状変換器の形状及び寸法は、少なくとも1cm3である衝撃容積を発生するように選択される。
【0036】
別の実施形態では、図5Bに示されるように、治療用変換器31は、集束されない超音波エネルギーを伝達する平面エミッター44と、集束されない超音波エネルギーを治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギー20を形成する集束作用を提供するフレネルレンズ42のような超音波レンズとを含む。このことを達成するために、レンズの構造は、鋭い点集束を提供するために用いられる従来の構造とは多少異なる。例えば、従来の鋭い集束レンズは、部分球状面、又はフレネルレンズの場合は球状面を疑似するよう構成された同心円を有する。柔らかに集束された超音波を提供するために、レンズ42の表面は、この構造と多少異なる。ここでもまた、超音波レンズデザインのための数学的技法は周知である。レンズ42は、使用者によって交換可能にでき、これによって、使用者は、画像処理システム上に表示されたような、画像に重ね合わされた衝撃容積の位置と治療領域の位置との間の差異に基づいて異なるレンズを選択することによって、衝撃容積の位置を変更することができる。それぞれの交換可能なレンズ42は、治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギーの衝撃容積22の位置を、治療領域10を包含するように調節可能にするような異なる焦点距離を有し得る。個々のレンズは、作動装置及び/又は画像処理サブシステムによって読み取られることができる、例えばレンズの焦点距離のような、機械読取り可能な情報を有してもよい。
【0037】
治療用超音波変換器が位相配列35(図5C)を含むような場合、超音波エネルギー20が、治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギー20を提供する時間シーケンスで伝達されるように、作動装置は、位相配列35の個々の変換器エレメント40を操作する。鋭い集束を発生させるための通常の操作では、焦点に近いエレメントからの放射が、焦点から離れたエレメントからの放射に対して遅延されるように、時間シーケンスが選択される。従って、全ての変換器エレメントからの超音波エネルギーは、正確な同相で焦点に到達する。柔らかに集束されたビームを提供するためには、遅延時間が、鋭い焦点を提供するために用いられた遅延時間から僅かに変化される。位相配列の作動は、異なる振幅で異なるエレメントを作動させることも含むことができる。ここでもまた、遅延時間及び作動振幅の所定のパターンの効果を決定するための数学的技法は周知である。位相配列35は、数百個の変換器エレメント40を含んでもよい。
【0038】
複数の変換器エレメント40の作動のパターンは、治療領域を包含するように調整される治療的に有効なエネルギー20の衝撃容積の位置を動かすために、変更され得る。例えば、使用者が、上述したコンピューターシステムによって表示され得るような身体領域の診断画像上の治療領域及び超音波エネルギー経路を特定してもよく、特定された治療領域及び特定された超音波エネルギー経路に基づいて、コンピューターシステムが、それぞれの変換器エレメント40についての活性化シーケンス及び変換器エレメントパワー出力を決定してもよい。更に、作動のパターンが、対象の身体構造に基づいて調節されてもよい。この実施形態では、骨のような構造体が治療領域に向かう治療超音波エネルギーの経路を妨害することがある、エネルギー経路内の特定の点で超音波エネルギー20が低いように、特定のエレメント40において、異なるエレメントの音響パワー出力が調節される。この調節は、例えば、いくつかのエレメントへの出力を減少させること、いくつかのエレメントを完全に停止させること、又はこれらの双方を行うことが挙げられる。
【0039】
本発明の一つの実施形態による方法のフローチャートが、図6に示されている。図6の方法は、別々の治療用変換器及び画像処理変換器を組み込んだ変換器アセンブリを用いる。方法は、対象の皮膚に超音波変換器アセンブリを係合すること(ステップ56)と、治療的に有効な超音波エネルギーを衝撃容積に伝達するために、作動装置を通して治療用変換器を制御すること(ステップ66)とを含む。方法は、必要に応じて、それらが任意であることを示す点線で示されているような多数の追加工程を含んでもよい。先ず初めに、使用者が、超音波変換器アセンブリを作動装置及び画像処理サブシステムに接続する(ステップ50)。作動装置及び画像処理サブシステムは、変換器アセンブリからの情報を読み取って、治療用変換器の孔の焦点距離及び寸法、並びに画像処理変換器及び治療用変換器のための適切な作動周波数を決定する(ステップ52)。孔及び周波数に基づいて、治療用エネルギーの所望の用量を提供するために、制御コンピューターが正確な作動振幅を決定する(ステップ54)。これは、例えば変換器アセンブリからの用量情報を読み取ることによって、変換器の製造中にプログラムされた参照表からの数値を読み込むことによって、又は変換器から読取られたパラメータに基づいて数値を計算することによって達成されてもよい。
【0040】
次に、使用者が、変換器アセンブリを対象の皮膚に係合する(ステップ56)。これは、典型的には、対象の皮膚上に結合ゲルのような変形可能な結合媒体を用いることによって実行される。次に、イメージャが、超音波エネルギーの伝搬経路を備えた対象の身体の一部の画像と、この画像に重なった衝撃容積の位置とを表示する(ステップ58)。使用者は、治療用変換器の位置を調節しながら(ステップ60)、画像のグラフィック表示を見てエネルギー経路が骨又は空気によって妨害されているかどうかを判断し(ステップ62)、さらに衝撃容積が治療領域を包含していることを確認する(ステップ64)。変換器アセンブリが、治療用変換器と画像処理変換器との間の調節可能な結合を含むような場合は、使用者はこの工程で結合を調節してもよい。妨害物が何もなく、かつ衝撃容積が治療領域を包含するような位置が見い出せるまで、使用者は変換器アセンブリの移動を続けることができる。使用者が治療用変換器の位置を調節するのと同時に、変換器に取付けられた変形可能な結合媒体が圧縮され、又は圧縮が減らされてもよい。衝撃容積が正確に配置されたことを使用者が決定したら、使用者は、治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギーの伝達を開始する(ステップ66)。使用者が治療領域の個々の神経の位置決めをする必要性が全くないことは、注目すべきであろう。それどころか、治療領域内の神経の不活性化を達成するためには、使用者が衝撃容積を治療領域に整列させて、変換器を作動させることだけが必要とされる。
【0041】
エネルギー伝搬の経路内に妨害物が存在しないように使用者が治療用変換器を配置させることが不可能であれば、使用者は、より小さい又は異なる形状の孔を備えた異なる変換器アセンブリを選択することが可能であり(ステップ68)、工程の初め(ステップ50)に戻ることができる。治療用変換器が交換可能なレンズを含む場合は、使用者は、治療用サブアセンブリのレンズを交換してもよい(ステップ72)。レンズが交換される場合には、治療用超音波エネルギーの所望の用量を提供するために、作動装置又は画像処理サブシステムが、レンズからの情報を読み取って焦点距離を再決定し、適切な設定を再計算して、残りの工程をステップ54から進める。
【0042】
複数の変換器エレメントを備えた単一位相配列変換器を組み込んだ変換器アセンブリを用いる実施例による方法が、図7に示されている。図7中、同様に多くのステップは任意である。ここで再び、先ず初めに、使用者が超音波変換器アセンブリを作動装置と画像処理サブシステムとに接続する(ステップ74)。ここで再び、作動装置及び画像処理サブシステムが、変換器アセンブリからの変換器情報を読み取る(ステップ76)。次に使用者が、対象の皮膚に変換器アセンブリを係合し(ステップ78)、そして画像処理サブシステムが、画像処理超音波信号を送信して発生したエコーを受信するために、位相配列のエレメントを使用する。画像処理サブシステムが、身体領域の画像を使用者に表示する(ステップ80)。衝撃容積を治療領域を包含するような所望の位置に持っていくとともに、妨害物を含まないエネルギー伝搬経路を提供するために、使用者がシステムを操作する(ステップ82)。配列に関連して衝撃容積を異なる位置に移動させるために、使用者は、衝撃容積を移動させるように位相配列を物理的に動かしてもよく、又は配列の操作に関して異なるパラメータを選択するために、作動装置の制御コンピューターを作動させてもよい。作動装置内のコンピューターシステムは、そのような位相配列に適用される治療パラメータを計算する(ステップ84)。このステップでは、特定の衝撃容積の位置で治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギーを生み出すために、複数の変換器エレメント40のそれぞれに関して、時間シーケンス及びエネルギーレベルが計算される。次に使用者は、治療用超音波の伝達を開始するために、信号を入力する(ステップ86)。その信号に応答して、コンピューターシステムが複数の変換器エレメントを制御して(ステップ88)、柔らかに集束された超音波エネルギーが衝撃容積へと伝達される。ここで再び、治療中にリアルタイムで画像を表示することを可能にするために、治療用超音波が、診断画像処理シーケンスと同期されかつ交錯されたパルスモードで発生されてもよい。
【0043】
上述された特徴の多数の他の変形及び組み合わせが、特許請求の範囲によって定義された本発明を逸脱することなく利用可能である。上述したように、画像処理は、超音波画像処理以外の診断法を用いることによって達成されてもよい。更に、別個の画像処理変換器が位相配列変換器に結合されてもよい。この変形では、位相配列変換器は、治療的に有効な柔らかに集束された超音波エネルギーを伝達するために単独で用いられてもよい。ぼやけた又は柔らかに集束される作用を提供するために、楕円体以外の放射面と、フレネルレンズ以外のレンズを有する変換器が用いられ得る。更には、非平面変換器と共にレンズが用いられ得る。
【0044】
対象は、ヒト又はヒト以外の哺乳類対象であってもよい。
【0045】
本発明は特定の実施形態を参照して説明されたが、これら実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示である。従って、添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、例示した実施形態に多くの改良が行われ得ること、及び他の配置が考案され得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7