(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材と、前記基材の一方の主面に設けられる熱硬化性樹脂組成物からなる第1の接着層と、前記基材の他方の主面に設けられる熱硬化性樹脂組成物からなる第2の接着層とを有する両面接着シートであって、
前記両面接着シートの厚さが500μm以下、前記第1の接着層の厚さが前記第2の接着層の厚さの2〜10倍、前記第1の接着層を構成する熱硬化性樹脂組成物は質量平均粒子径5〜30μmの無機充填材を前記熱硬化性樹脂組成物中に50〜80質量%含有し、第2の接着層を構成する熱硬化性樹脂組成物は質量平均粒子径5μm未満の無機充填材を前記熱硬化性樹脂組成物中に15〜30質量%含有することを特徴とする両面接着シート。
前記第1の接着層を構成する熱硬化性樹脂組成物、前記第2の接着層を構成する熱硬化性樹脂組成物は、(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、(B)軟化点70℃以下の固形状多官能エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂用硬化剤、および(D)無機充填材を含有し、前記(A)成分の含有量/前記(B)成分の含有量の質量での割合が10/90〜40/60であることを特徴とする請求項1記載の両面接着シート。
前記第1の接着層を構成する熱硬化性樹脂組成物は硬化物の弾性率が10〜20GPaとなり、第2の接着層を構成する熱硬化性樹脂組成物は硬化物の弾性率が1〜10GPaとなるものであることを特徴とする請求項1または2記載の両面接着シート。
前記第1の接着層を構成する熱硬化性樹脂組成物は硬化物の線膨張係数が15〜25ppm/℃となり、前記第2の接着層を構成する熱硬化性樹脂組成物は硬化物の線膨張係数が40〜60ppm/℃となるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の両面接着シート。
前記両面接着シートは、前記基材の一方の主面に前記第2の接着層を形成した後、他方の主面に前記第1の接着層を形成して製造されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の両面接着シート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の両面接着シートの実施形態について説明する。
図1は、両面接着シートの一実施形態を示す断面図である。
【0012】
両面接着シート1は、基材2と、この基材2の一方の主面に設けられる熱硬化性樹脂組成物からなる第1の接着層3と、基材2の他方の主面に設けられる熱硬化性樹脂組成物からなる第2の接着層4とを有する。第1の接着層3の外側には第1の離型フィルム5が貼り合わされ、第2の接着層4の外側には第2の離型フィルム6が貼り合わされる。第1の離型フィルム5および第2の離型フィルム6は、両面接着シート1の使用時に剥離されるものであり、必ずしも必須の構成ではない。
【0013】
両面接着シート1は、例えば、フィルム、シート、筐体等の第1の被着体と、電子部品等の第2の被着体とを接着するために用いられ、フィルム、シート、筐体等の第1の被着体に第2の接着層4が接着され、電子部品等の第2の被着体に第1の接着層3が接着される。なお、第1の離型フィルム5および第2の離型フィルム6は両面接着シート1の使用時に剥離されるが、例えば、一方の離型フィルムをベースフィルムにして他方の離型フィルム側からハーフカットの型抜きを行うことで、シール加工を行うこともできる。
【0014】
両面接着シート1の厚さは、500μm以下である。ここで、両面接着シート1の厚さには、基材2、第1の接着層3、および第2の接着層4の厚さが含まれ、第1の接着層3の外側に設けられる第1の離型フィルム5、第2の接着層4の外側に設けられる第2の離型フィルム5の厚さは含まれない。両面接着シート1の厚さが500μmを超えると、電子機器の小型化の要求に十分に応えられない。厚さの下限値は、必ずしも制限されないが、被着体との接着性等の観点から、100μm以上が好ましい。
【0015】
第1の接着層3の厚さは、第2の接着層4の厚さの2〜10倍である。第1の接着層3の厚さを第2の接着層4の厚さの2〜10倍とすることで、両面接着シート1の外観および埋め込み性を良好にでき、また接着時の反りも抑制できる。第1の接着層3の厚さが第2の接着層4の厚さの2倍未満であると、両面接着シート1の外観または埋め込み性が良好でなくなるおそれがあり、また接着時の反りが大きくなるおそれがある。一方、第1の接着層3の厚さが第2の接着層4の厚さの10倍を超えると、両面接着シート1の製造に用いられる部材のハンドリング性が良好でなくなるおそれがあり、また接着時の反りが大きくなるおそれがある。
【0016】
第1の接着層3の厚さは、第2の接着層4の厚さの4倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましい。また、第1の接着層3の厚さは、第2の接着層4の厚さの9倍以下が好ましく、8倍以下がより好ましい。なお、第1の接着層3、第2の接着層4の厚さは、第1の接着層3の厚さが第2の接着層4の厚さの2〜10倍であれば必ずしも制限されないが、第2の接着層4の厚さは10〜150μmが好ましく、第1の接着層3の厚さはこのような第2の接着層4の厚さの2〜10倍が好ましい。
【0017】
第1の接着層3の形成に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、該熱硬化性樹脂組成物の全体中、質量平均粒子径5〜30μmの無機充填材を50〜80質量%含有する。また、第2の接着層4の形成に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、該熱硬化性樹脂組成物の全体中、質量平均粒子径5μm未満の無機充填材を15〜30質量%含有する。第1の接着層3および第2の接着層4のそれぞれに特定の質量平均粒子径を有する無機充填材を特定の含有量で含有させることで、両面接着シート1の外観および埋め込み性を良好にでき、接着時の反りも抑制できる。
【0018】
基材2の構成材料は、必ずしも制限されないが、樹脂フィルムが好適に用いられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン等を構成材料とするものが好適に用いられる。基材2の厚さは、両面接着シートの厚さが500μm以下となれば必ずしも制限されないが、強度等の観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、基材2の厚さは、両面接着シートの厚さを500μm以下とする観点から、150μm以下が好ましく、130μm以下がより好ましい。
【0019】
以下、第1の接着層3、第2の接着層4の形成に用いられる熱硬化性樹脂組成物について説明する。以下では、第1の接着層3、第2の接着層4の形成に用いられる熱硬化性樹脂組成物を、それぞれ、第1の接着層用、第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物と記して説明する。また、第1の接着層用、第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材の質量平均粒子径や含有量を除いて基本的に同様の構成とできることから、以下の説明では、第1の接着層用、第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物を合わせて、単に熱硬化性樹脂組成物として説明する。なお、第1の接着層用、第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、必ずしも互いに同一の組成を有する必要はなく、以下に説明するような構成成分や含有量の中から適宜選択して使用できる。
【0020】
熱硬化性樹脂組成物は、(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、(B)軟化点70℃以下の固形状多官能エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂用硬化剤、および(D)無機充填材を含有することが好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物中、(A)成分の液状ビスフェノール型エポキシ樹脂の含有量と(B)成分の軟化点70℃以下の固形状多官能エポキシ樹脂の含有量との質量での割合((A)成分の含有量/(B)成分の含有量)は、10/90〜40/60が好ましい。
【0021】
[(A)成分]
(A)成分の液状ビスフェノール型エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状のビスフェノール型化合物であれば必ずしも制限されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。なお、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、25℃において液状を呈するビスフェノール型エポキシ樹脂を指す。
【0022】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、三井化学社製の「R140P」(エポキシ当量188)、ダウケミカル社製の「DER331J」(エポキシ当量190)、三菱化学社製の「エピコート#828」(エポキシ当量190)等が例示される。これらの液状ビスフェノール型エポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
[(B)成分]
(B)成分の軟化点が70℃以下の固形状多官能エポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格含有アラルキル型エポキシ樹脂の混合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の混合物、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の混合物等が例示される。
【0024】
ビフェニル骨格含有アラルキル型エポキシ樹脂の混合物としては、例えば、下記式(1)で表されるビフェニル骨格含有アラルキル型エポキシ樹脂の混合物が挙げられる。下記式(1)中、mは1〜4の整数を示す。
【0026】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の混合物としては、下記式(2)で表されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の混合物が挙げられる。下記式(2)中、nは1〜10の整数を示す。
【0028】
軟化点が70℃以下の固形状多官能エポキシ樹脂としては、市販品を使用することができ、具体例として、日本化薬社製の「NC3000(軟化点57℃)」、「NC3000H(軟化点70℃)」、DIC社製の「EPICLON N−660(軟化点67℃)」等が例示される。これらの固形状多官能エポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(A)成分の液状ビスフェノール型エポキシ樹脂と、(B)成分の軟化点が70℃以下の固形状多官能エポキシ樹脂とを組み合わせて用いることで、すなわち融点の異なる2種類のエポキシ樹脂を用いることで、室温で固形状、かつ高温で液状の挙動を示す熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
(B)成分の固形状多官能エポキシ樹脂の軟化点が70℃を超えると、接着層への成形時に割れまたは欠けが発生するおそれがある。なお、(B)成分の固形状多官能エポキシ樹脂の軟化点が低すぎると、接着層への成形自体が困難となるおそれがあることから、(B)成分の固形状多官能エポキシ樹脂の軟化点は40℃以上が好ましい。
【0031】
なお、固形状多官能エポキシ樹脂の軟化点は、下記の方法で測定した値である。JIS K2207に基づいて、規定の環に試料を充填し、水浴またはグリセリン浴中で水平に支え、試料の中央に規定の球を置いて浴温を毎分5℃の速さで上昇させ、球を包み込んだ試料が環台の底板に接触した時に読み取った温度である。
【0032】
(A)成分の液状ビスフェノール型エポキシ樹脂の含有量と(B)成分の軟化点70℃以下の固形状多官能エポキシ樹脂の含有量との質量での割合((A)成分の含有量/(B)成分の含有量)は、10/90〜40/60が好ましい。(A)成分の液状ビスフェノール型エポキシ樹脂の含有量が上記範囲よりも少ないと、接着層への成形時に割れまたは欠けが発生しやすくなる。一方、(A)成分の液状ビスフェノール型エポキシ樹脂の含有量が上記範囲よりも多くなると、接着層への成形自体が困難となるおそれがある。割れまたは欠けの抑制、成形性等の観点から、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量での割合((A)成分の含有量/(B)成分の含有量)は、15/85〜25/75の範囲が好ましい。
【0033】
[(C)成分]
(C)成分のエポキシ樹脂用硬化剤は、必ずしも制限されず、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として用いられるものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。(C)成分のエポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、アミン系、フェノール系、酸無水物系等が例示される。アミン系硬化剤としては、ジシアンジアミド、m−フェニジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が例示される。フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂等が例示される。酸無水物系硬化剤としては、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の脂環式酸無水物、無水フタル酸等の芳香族酸無水物、脂肪族二塩基酸無水物(PAPA)等の脂肪族酸無水物、クロレンド酸無水物等のハロゲン系酸無水物等が例示される。これらのエポキシ樹脂用硬化剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エポキシ樹脂用硬化剤の含有量は、硬化性および硬化物の物性のバランス等の点から、(A)成分の液状ビスフェノール型エポキシ樹脂および(B)成分の軟化点70℃以下の固形状多官能エポキシ樹脂に対する当量比で、0.3〜1.5当量比が好ましく、0.5〜1.3当量比がより好ましい。
【0034】
熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じてエポキシ樹脂用硬化促進剤を含有できる。エポキシ樹脂用硬化促進剤は、必ずしも限定されず、一般にエポキシ樹脂の硬化促進剤として使用されているものの中から任意のものを適宜選択して使用できる。例えば、ウレアとして、芳香族ジメチルウレア、脂肪族ジメチルウレア、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチルウレア、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエン等のウレア類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィン等が例示される。これらの硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エポキシ樹脂用硬化促進剤の含有量は、硬化促進性および硬化樹脂物性のバランス等の点から、(A)成分および(B)成分のエポキシ樹脂の合計100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.4〜8質量部がより好ましい。
【0035】
[(D)成分]
(D)成分の無機充填材は、必ずしも制限されず、ボールミル等で粉砕した溶融シリカ、火炎溶融することで得られる球状シリカ、ゾルゲル法等で製造される球状シリカ等のシリカ類、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物、酸化チタン、カーボンブラック等、一般にエポキシ樹脂組成物に用いられるものを用いることができる。なお、金属水和物は、難燃剤としても機能する。これらの無機充填材は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
無機充填材は、特に球状シリカが好ましい。球状シリカは、市販品を用いることができ、例えば、第1の接着層用の熱硬化性樹脂組成物における無機充填材として電気化学工業社製「FB−950(質量平均粒子径:25μm)」等、第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物における無機充填材としてアドマファイン社製「SO−31R(質量平均粒子径:1μm)」等が例示される。
【0037】
第1の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、該熱硬化性樹脂組成物の全体中、質量平均粒子径5〜30μmの無機充填材を50〜80質量%含有する。質量平均粒子径5〜30μmの無機充填材を50〜80質量%含有することで、接着時の反りを抑制でき、また電子部品等の被着体の線膨張係数に合わせることができる。含有量が50質量%未満では、両面接着シート1の接着時に反りまたはねじれが発生しやすい。一方、含有量が80質量%を超えると、接着層への成形時に割れまたは欠けが発生しやすく、また溶融時の流動性が低下して被着体である電子部品等の周囲に未充填箇所が発生するおそれがある。
【0038】
なお、第1の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、質量平均粒子径が5μm未満の無機充填材を含有できる。質量平均粒子径が5μm未満の無機充填材は、該熱硬化性樹脂組成物の全体中、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0039】
第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、該熱硬化性樹脂組成物の全体中、質量平均粒子径5μm以下の無機充填材を15〜30質量%含有する。質量平均粒子径5μm未満の無機充填材を15〜30質量%含有することで、第2の接着層4の外観等を良好にできる。含有量が15質量%未満では、粘度が低くなるために接着層への成形自体が困難となるおそれがある。一方、30質量%を超えると、接着層への成形時に割れまたは欠けが発生しやすく、また溶融時の流動性が低下して、フィルム、シート、筐体等の被着体へのぬれ性が低下するおそれがある。
【0040】
第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、該熱硬化性樹脂組成物の全体中、好ましくは質量平均粒子径0.5μm以上5μm未満の無機充填材を15〜30質量%含有し、より好ましくは質量平均粒子径0.5μm以上4μm以下の無機充填材を15〜30質量%含有し、さらに好ましくは質量平均粒子径0.5μm以上3μm以下の無機充填材を15〜30質量%含有するものである。
【0041】
なお、第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材として質量平均粒子径が5μm未満の無機充填材のみを含有することが好ましく、質量平均粒子径が4μm以下の無機充填材のみを含有することがより好ましく、質量平均粒子径が3μm以下の無機充填材のみを含有することがさらに好ましい。
【0042】
なお、質量平均粒子径は、レーザ回折散乱方式(例えば、島津製作所製、装置名:SALD−3100)により測定された値である。
【0043】
熱硬化性樹脂組成物は、カップリング剤を含有できる。カップリング剤は、シラン系、チタネート系、アルミニウム系等が例示され、特にシラン系カップリング剤が好ましい。シラン系カップリング剤は、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン化合物が例示される。シランカップリング剤の含有量は、無機充填材100質量部に対して、0.1〜5.0質量部が好ましく、0.3〜2.5質量部がより好ましい。
【0044】
熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、かつ本発明の趣旨に反しない限度において、難燃剤、低応力化剤、粘度降下用希釈剤、濡れ向上剤、消泡剤等のその他の成分を含有できる。その他の成分は、熱硬化性樹脂組成物中、合計で10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0045】
第1の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の線膨張係数が15〜25ppm/℃であることが好ましい。第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の線膨張係が40〜60ppm/℃であることが好ましい。線膨張係数を上記範囲内に設定することで、両面接着シート1の接着時の反り等を効果的に抑制できる。
【0046】
なお、線膨張係数は、第1の接着層および第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物を用いて、5mm×5mm×厚さ1mmの試験片を作製し(硬化条件:120℃、60分)、熱機械測定装置TMA SS6000(セイコー社製)を用いて測定する。
【0047】
第1の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の弾性率が10〜20GPaであることが好ましい。弾性率が10GPa未満であると、第1の接着層3が強度不足となるおそれがある。一方、弾性率が20GPaを超えると、第1の接着層3の剛性が増して、電子部品等の被着体との剥離等が発生するおそれがある。
【0048】
第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の弾性率が1〜10GPaであることが好ましい。弾性率を1〜10GPaとすることで、フィルム、シート、筐体等の被着体への良好な接着性を持たせることができる。
【0049】
なお、弾性率は、熱硬化性樹脂組成物を用いて5mm×30mm×厚さ0.5mmの試験片を作製し(硬化条件:120℃、60分)、動的粘弾性測定機DMS200(セイコー社製)にて引張モードで測定を行って求める。測定条件は、以下の通りである。なお、25℃における貯蔵弾性率を弾性率とする。
測定温度:20〜250℃
昇温速度:5℃/分
周波数 :1Hz
荷重 :200mN
【0050】
熱硬化性樹脂組成物は、例えば、(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、(B)軟化点70℃以下の固形状多官能エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂用硬化剤、および(D)無機充填材、ならびに必要に応じて添加される各種の任意成分を、高速混合機等によって均一に混合した後、ニーダー、二本ロール、連続混練装置等で十分混練して調製する。混練温度は、50〜110℃が好ましい。
【0051】
両面接着シート1は、以下のようにして製造できる。なお、両面接着シート1の製造方法は以下の方法に限定されない。まず、第1の接着層用の熱硬化性樹脂組成物をシート状に成形して第1の樹脂シートとする。成形は、成形機にて、50〜100℃程度の温度、0.5〜1.5MPaの圧力でプレス成形することが好ましい。その後、第1の離型フィルム5に第1の樹脂シートを積層した後、一対の加熱加圧ロールを通過させて貼り合わせ、
図2に示すように第1の離型フィルム5上に第1の接着層3を有する第1の積層体7を製造する。
【0052】
別途、第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物をシート状に成形して第2の樹脂シートとする。成形は、成形機にて、50〜100℃程度の温度、0.5〜1.5MPaの圧力でプレス成形することが好ましい。その後、第2の離型フィルム6に第2の樹脂シートを積層するとともに、第2の樹脂シートに基材2を積層した後、一対の加熱加圧ロールを通過させて貼り合わせ、
図3に示すように第2の離型フィルム6上に第2の接着層4および基材2を有する第2の積層体8を製造する。
【0053】
その後、第1の積層体7の第1の接着層3と、第2の積層体8の基材2とが接するように積層した後、一対の加熱加圧ロールを通過させて第1の積層体7と第2の積層体8とを貼り合わせることで、両面接着シート1を製造できる。このように、基材2の一方の主面に第2の接着層4を形成した後、他方の主面に第1の接着層3を形成することで、両面接着シート1を良好に製造できる。
【0054】
各工程に用いられる一対の加熱加圧ロールは、間隙寸法を調整できるものであって、各加熱加圧ロールの直径が2〜5cm、間隙寸法が5〜500μmのものが好ましい。また、各工程の貼り合わせ条件は、温度30〜180℃、一対の加熱加圧ロールの通過速度0.1〜5m/分が好ましい。このような一対の加熱加圧ロールおよび貼り合わせ条件により、両面接着シート1を良好に製造できる。
【0055】
図4は、両面接着シート1の製造方法の一実施形態を示す概観図である。
図4に示す製造装置10は、基材2が巻回された基材用ロール11、第1の接着層用の熱硬化性樹脂組成物からなる第1の樹脂シートを供給する第1の樹脂シート供給装置12、第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物からなる第2の樹脂シートを供給する第2の樹脂シート供給装置13、第1の離型フィルム5が巻回された第1の離型フィルムロール14、第2の離型フィルム6が巻回された第2の離型フィルムロール15、第1の積層体用加熱加圧ロール16、17、第2の積層体用加熱加圧ロール18、19、一体化用加熱加圧ロール21、22、冷却ロール23、ポリテトラフルオロエチレン等からなる成形用ベルト24、案内ロール25、26等を有する。
【0056】
第1の離型フィルムロール14から連続的に供給される第1の離型フィルム5には、第1の樹脂シート供給装置12から第1の樹脂シートが連続的に供給される。第1の樹脂シートは、第1の積層体用加熱加圧ロール16と、第1の積層体用加熱加圧ロール17および冷却ロール23に巻回された成形用ベルト24との間を通過する。これにより、第1の離型フィルム5上に第1の接着層3を有する第1の積層体7が製造される。
【0057】
一方、第2の離型フィルムロール15から連続的に供給される第2の離型フィルム6上には、第2の樹脂シート供給装置13から第2の樹脂シートが連続的に供給される。さらに、第2の樹脂シート上には、基材用ロール11から基材2が連続的に供給される。これらは、第2の積層体用加熱加圧ロール18、19の間を通過する。これにより、第2の離型フィルム6上に第2の接着層4および基材2を有する第2の積層体8が製造される。
【0058】
その後、別々に製造された第1の積層体7および第2の積層体8は一体化用加熱加圧ロール21、22を通過する。これにより、第1の積層体7と第2の積層体8とが一体化されて、両面に一対の離型フィルム5、6を有する両面接着シート1が製造される。
【0059】
両面接着シート1は、電子機器の製造に好適に用いられ、例えば、フィルム、シート、筐体等の第1の被着体と、電子部品等の第2の被着体とを接着して電子機器を製造するために好適に用いられる。電子部品は、半導体チップ等の半導体素子が代表的なものとして例示されるが、必ずしもこのようなものに制限されない。
【0060】
接着は、例えば、フィルム、シート、筐体等の第1の被着体上に両面接着シート1を配置するとともに、この両面接着シート1上に電子部品等を配置し、これらを熱処理することにより行う。通常、両面接着シート1は、フィルム、シート、筐体等の第1の被着体に第2の接着層4が接着され、電子部品等の第2の被着体に第1の接着層3が接着される。熱処理条件は、第1の被着体と第2の被着体とを有効に接着できれば必ずしも制限されないが、温度100〜180℃で0.5〜2時間程度が好ましい。
【実施例】
【0061】
次に、本発明を実施例を参照してさらに詳細に説明する。
なお、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されない。
【0062】
(実施例1〜7、比較例1〜4)
まず、表1に示す組成を有する熱硬化性樹脂組成物1〜7を調製した後、これをシート状に成形して樹脂シートとした。成形は、一対の加熱加圧ロールを用いて行った。成形条件は、温度70℃、一対の加熱加圧ロールの通過速度0.5m/分とした。
【0063】
その後、基材としての厚さ12.5μmのポリイミドフィルムの一方の主面に上記樹脂シート(第2の接着層となるもの)を貼り合わせた後、他方の主面に上記樹脂シート(第1の接着層となるもの)を貼り合わせて両面接着シートを製造した。なお、第1の接着層、第2の接着層となる樹脂シートは、表2に示すような熱硬化性樹脂組成物の種類とした。また、貼り合わせは、一対の加熱加圧ロールを用いて行った。また、貼り合わせ条件は、温度50℃、一対の加熱加圧ロールの通過速度0.5m/分とした。
【0064】
以下に熱硬化性樹脂組成物の調製に使用した各成分の詳細を示す。
1.液状エポキシ樹脂
DER331J:ダウケミカル社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:190)
2.軟化点70℃以下の固形状多官能エポキシ樹脂
NC3000:日本化薬社製のビフェニル骨格含有多官能型エポキシ樹脂(エポキシ当量:275、軟化点:57℃)
3.硬化剤
DICY−7:三菱化学社製のジシアンジアミド
4.硬化促進剤
U−CAT3512T:サンアプロ社製の芳香族ジメチルウレア
5.無機充填材
(1)FB−950:電気化学工業社製の球状シリカ(質量平均粒子径:25μm)
(2)FB−5D:電気化学工業社製の球状シリカ(質量平均粒子径:5μm)
(3)SO−31:アドマファイン社製の球状シリカ(質量平均粒子径:1μm)
(4)H42M:昭和電工社製の水酸化アルミニウム(質量平均粒子径:1.5μm)
【0065】
次に、実施例および比較例の両面接着シートについて、以下の特性を評価した。結果を表2に示す。
【0066】
(1)成形性
製造された両面接着シートを目視にて観察した。評価は、第1の接着層および第2の接着層の表面に無機充填材等による細かな凹凸が形成されず、かつ熱硬化性樹脂組成物が流れ出さずに所望の形状に形成されているものを「○」、第1の接着層および第2の接着層のいずれかの表面に無機充填材等による細かな凹凸が一部形成され、かつ熱硬化性樹脂組成物が流れ出さずに所望の形状に形成されているものを「△」、第1の接着層および第2の接着層のいずれかの表面に無機充填材等による細かな凹凸が形成され、または熱硬化性樹脂組成物が流れ出して所望の形状に形成されていないものを「×」で示した。
【0067】
(2)硬化時の外観・埋め込み性
基板上に両面接着シートを配置した後、上面を開放した状態で、120℃で1時間硬化させた。なお、両面接着シートは、基板側が第2の接着層となるように配置した。硬化後、両面接着シートの状態を目視にて観察した。
図5に示すように、基板30上に配置された両面接着シート1の第1の接着層3および第2の接着層4が過度に流れ出さず、かつ第1の接着層3と第2の接着層4との間に基材2の端面が位置するものを「○」、第1の接着層3と第2の接着層4との間から基材2の端面が一部露出するものを「△」、
図6に示すように、第1の接着層3と第2の接着層4との間から基材2の端面が露出するものを「×」と評価した。
【0068】
(3)硬化時の反り
厚さ0.35mmのアルミニウム板(40mm×30mm)または厚さ0.05mmのフレキシブルプリント配線板(40mm×30mm)上に両面接着シート(30mm×20mm)を配置した後、120℃で1時間硬化させた。なお、両面接着シートは、アルミニウム板またはフレキシブルプリント配線板側が第2の接着層となるように配置した。硬化後、アルミニウム板またはフレキシブルプリント配線板の四隅の高さを測り、その平均値を反りの指標とした。
【0069】
なお、表中の判定基準は以下の通りである。
「○」:成形性、埋め込み性が「○」で、硬化時の反りが0.4以下。
「△」:成形性、埋め込み性の何れかが「△」で、硬化時の反りが0.4以下。
「×」:成形性、埋め込み性の何れかが「×」、または硬化時の反りが0.5以上。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1、2から明らかなように、実施例1〜7の両面接着シートは、成形性および硬化時の外観・埋め込み性が良好であり、硬化時の反りも抑制できる。これに対して、第1の接着層および第2の接着層4の厚さが等しい比較例1の両面接着シートは、硬化時の外観・埋め込み性が十分でない。また、第1の接着層および第2の接着層の組成が等しい比較例2、3の両面接着シートは、前者が硬化時の外観・埋め込み性および反りの抑制が十分でなく、後者は成形性が十分でない。さらに、第1の接着層および第2の接着層4の厚さならびに組成が等しい比較例4、5の両面接着シートは、硬化時の外観・埋め込み性および反りの抑制が十分でない。