(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このようなリチウムイオン電池を用いた蓄電装置にあっては、リチウムイオン電池を複数接続して高電圧で大容量を実現しているが、リチウムイオン電池が内部ショートや過充電等の種々の原因で熱暴走した場合、電池温度が著しく上昇し、電池内部の圧力が上昇し、その結果、リチウムイオン電池の破裂や発火が起き、蓄電装置を火元とした電気火災が発生する恐れがある。
【0010】
蓄電装置に収納している複数のリチウムイオン電池のいずれかの異常で火災が発生した場合、蓄電装置は堅牢な密閉容器にリチウムイオン電池を収納しているため、外部から火災を起こしているリチウムイオン電池を直接に消火することができず、火災による熱で容器が破壊されて火災が外部へ拡大した段階にならないと、密閉容器内の消火を行うことができない。
【0011】
しかし、従来、自動車、航空機、更に建物にリチウムイオン電池を収納した蓄電装置を設置した場合の電気火災に対し、密閉容器の外部で起きた火災に対応して消火抑制する消火装置や消火設備は各種提案され実用化されているが、密閉容器内で起きているリチウムイオン電池の火災に対応して直接的に消火抑制するために有効な消火装置や消火設備は実現されていない。
【0012】
また蓄電装置の電気火災が発生した際に、従来の水系消火設備による消火活動は、火災を消火或いは抑制するどころか、感電事故等の二次災害を誘発する危険性が高い。
【0013】
本発明は、蓄電装置の容器内で起きているリチウムイオン電池の異常に伴う火災を直接的に消火抑制して外部への拡大を阻止することを可能とする消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(燃焼加圧源に点火用火薬と固形消火剤を用いた消火装置)
本発明は、複数のリチウムイオン電池を、収納容器内の電池収納部に配列して収納した蓄電装置に設けて消火する消火装置に於いて、
粉末消火剤を充填した容器と、
一端を容器の内部に開口すると共に他端を容器の外部に開口し、容器内に充填した粉末消火剤を外部へ放出する消火剤放出管と、
消火剤放出管の内部開口に配置され、粉末消火剤の加圧で破れる封止部材と、
消火剤放出管の外部開口に装着され、電池収納部へ粉末消火剤を放出するヘッド部と、
容器の内部に配置され、点火用火薬を配置した固形消火剤を有し、点火用火薬の起爆とこれに伴う固形消火剤の燃焼により発生する爆風及び消火用エアロゾルにより粉末消火剤を加圧する燃焼加圧部と、
リチウムイオン電池の異常に伴う火災を検知した場合に、点火用火薬を起爆させて固形消火剤を燃焼させ、これに伴い発生する爆風及び消火用エアロゾルにより粉末消火剤を加圧し、消火剤放出管を介してヘッド部から粉末消火剤を電池収納部へ放出させる消火制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
(燃焼加圧部)
燃焼加圧部は、
容器に充填した粉末消火剤から
隔壁により隔離
された隔離区画と、
隔離区画に配置
され、一端を閉鎖すると共に他端を開口して点火用火薬を配置した固形消火剤を収納した消火剤収納部と、
消火剤収納部の開口側に配置された火炎噴出防止部材と、
火炎噴出防止部材に続いて
形成され、点火用火薬の起爆により発生した爆風及び固形消火剤の燃焼により発生した消火用エアロゾル
が火炎噴出防止部材を介して放出される空洞部と、
空洞部の隔壁に形成され、空洞部に放出された爆風及び消火用エアロゾルを前記粉末消火剤の充填側へ放出して、消火剤粉末を攪拌させながら加圧するノズル孔と
、
を備える。
【0016】
(消火制御部)
消火制御部は、
リチウムイオン電池の異常に伴う火災を検知する火災検知部と、
火災検知部により火災を検出した場合又は外部から点火制御信号を入力した場合に、ヒータの通電加熱により点火用火薬を起爆させる点火回路部と、
点火回路部との間を信号線で接続したコネクタと、
コネクタに着脱自在に設けられ、火災検知部からの信号線及び収納容器外部に引き出している信号線をコネクタに接続するプラグと、
点火回路部に電源を供給する電池電源と、
を備える。
【0017】
(燃焼加圧源に固形消火剤を用いた消火装置)
本発明の別の形態にあっては、複数のリチウムイオン電池を、収納容器内の電池収納部に配列して収納した蓄電装置に設けた消火装置に於いて、
粉末消火剤を充填した容器と、
一端を容器の内部に開口すると共に他端を容器の外部に開口し、容器内に充填した粉末消火剤を外部へ放出する消火剤放出管と、
消火剤放出管の内部開口に配置され、粉末消火剤の加圧で破れる封止部材と、
消火剤放出管の外部開口に装着され、電池収納部へ粉末消火剤を放出するヘッド部と、
容器の内部に配置され、固形消火剤の燃焼により発生する消火用エアロゾルにより粉末消火剤を加圧する燃焼加圧部と、
リチウムイオン電池の異常に伴う火災を検知した場合に、固形消火剤を燃焼させて発生する消火用エアロゾルにより粉末消火剤を加圧し、消火剤放出管を介してヘッド部から粉末消火剤を電池収納部へ放出させる消火制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
(電池と同一形状)
消火装置の容器は、リチウムイオン電池と同じ形状を備えると共に電池収納部の空き位置に配置する。
【0019】
(電池収納容器の内外に配置)
消火装置は、リチウムイオン電池の収納容器の外側又は内側に配置しても良い。
【0020】
(熱感知ケーブル)
火災検知部は、収納容器内に布設し、火災による熱を受けた場合の絶縁被覆の溶融により一対の信号線を短絡状態に接触させる熱感知ケーブルであり、
点火回路部は、熱感知ケーブルの短絡を検出した場合に、ヒータの通電加熱により点火用火薬に点火して起爆又は固形消火剤に点火して燃焼させる。
【0021】
熱感知ケーブルは収納容器内に収納して配列している全てのリチウムイオン電池の近傍を横切るように布設する。
【0022】
(点火回路部)
点火回路部は、ヒータの通電加熱により点火用火薬に点火して起爆させた場合又は固形消火剤に点火して燃焼させた場合に、消火起動信号をコネクタ及びプラグを介して外部に出力する。
【発明の効果】
【0023】
(基本的な効果)
本発明の消火装置は、例えばリチウムイオン電池と同じ形状とすることで、複数のリチウムイオン電池を収納した蓄電装置の収納容器内における電池収納位置の空き位置に配置し、チウムイオン電池が内部ショートや過充電等の種々の原因で熱暴走し、電池温度が著しく上昇し、その結果、リチウムイオン電池の破裂や発火が起きた場合に、これを検知して点火用火薬の点火による起爆に伴い固形消火剤を燃焼し、点火用火薬の起爆による爆風及びこれに続く固形消火剤の燃焼によるエアロゾルの発生により、消火装置容器内に充填している粉末消火剤を攪拌加圧して蓄電装置の収納容器内に噴射するようにしたため、密閉構造をもつ蓄電装置の収納容器内で起きているリチウムイオン電池の火災に、粉末消火剤を直接噴射して消火抑制することができ、同じ収容容器内に配置している他のリチウムイオン電池への連鎖的な火災の拡大を抑止し、火災による熱で蓄電装置の収納容器を破壊して外部にまで及ぶ火災の拡大を未然に防止し、最悪であっても蓄電装置の収納容器内での火災に留めることを可能とする。
【0024】
(点火用火薬による加圧効果)
また、消火装置に収納した粉末消火剤の加圧源として、点火用火薬の起爆による瞬間的な爆風とこれに伴う固形消火剤の燃焼により発生する消火用エアロゾルを用いる燃焼加圧源を用いるため、通常状態では点火用火薬を配置した固形消火剤を粉末消火剤から隔離して容器内の収納するだけでよく、耐圧が要求されない小型の加圧源とすることができ、また火災を検知した場合は、点火用火薬の起爆による爆風で高い圧力を短時間に発生し、これにより容器内の粉末消火剤を急速に攪拌し、蓄電装置の収納容器内に粉末消火剤を強い噴射力で噴出することができ、リチウムイオン電池の温度上昇で噴き出している電解溶液や可燃性ガスに着火している火炎に、粉末消火剤を吹き付けて確実に消火可能とする。
【0025】
(固形消火剤による加圧効果)
また、点火用火薬の起爆による爆風に続いて固形消火剤の燃焼による消火用エアロゾルが継続的に発生し、爆風により攪拌状態にある粉末消火剤を、消火用エアロゾルの発生による加圧で継続的に、蓄電装置の収納容器内に噴出することができる。
【0026】
(消火エアロゾルによる効果)
また、粉末消火剤を加圧するために固形消火剤の燃焼により発生する消火用エアロゾルは、2μm程度の微粒子であり、その主成分は金属の酸化物、炭酸塩或いは燐酸塩或いはその混合物を含有する。具体的には、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどを主成分とし、これに窒素、二酸化炭素、水蒸気などが含まれ、水系消火剤を使用できない電気火災に好適な消火抑制ができる。
【0027】
このため消火装置は、蓄電装置の収納容器内に、粉末消火剤と消火用エアロゾルの2種類の消火剤を混合して噴出することとなり、粉末消火剤又は消火用エアロゾルのみを放出した場合に比べ、リチウムイオン電池の火災に対し、より高い消火抑制を行うことが可能となる。
【0028】
また、消火用エアロゾルを単独で使用した場合の消火に必要な固形消火剤の重量は、例えば1立方メートル当たり80グラム〜200グラム程度となることが知られており、蓄電装置の収納容器内容積は、大型のものであっても0.25立方メートル程度であり、これに必要な固形消火剤は20グラム〜50グラム程度であり、実際には、収納容器内に複数のリチウムイオン電池を配列して収納することから、実質的な収納容器内の空き容積はそれよりも更に小さく、必要な固形消火剤が少なくて済むため、例えばリチウムイオン電池の形状と同じコンパクトなサイズの消火装置であっても、粉末消火剤の加圧源として十分な量の消火用エアロゾルを発生すると共に、粉末消火剤の放出と相俟って十分な消火抑制性能を確保することが可能である。
【0029】
(電池形状と同じにする効果)
また、消火装置をリチウムイオン電池と同じ形状とし、蓄電装置の収納容器内にリチウムイオン電池と同様に収納配置することを可能としたため、収納容器内に電池を収納するスペースを一つ余計に確保して、そこに消火装置を収納するだけでよく、消火装置の配置スペースを最小限に抑え、収納容器への組み込みを簡単且つ容易に行うことを可能とする。
【0030】
(消火装置の構造による効果)
また、消火装置は、粉末消火剤とその放出機構を備えた容器、燃焼加圧部、消火制御部を備える構造としたため、蓄電装置における収納容器の内部または外部に、消火装置を完全に独立した装置として配置することを可能とし、蓄電装置側の変更は、例えば電池収納スペースを一つ余計に確保するといった簡単な変更だけで済み、蓄電装置の収納容器に消火装置を、簡単且つ容易に配置して、リチウムイオン電池の異常に伴う電気火災の直接的な消火抑制を可能とする。
【0031】
(熱感知ケーブルによる効果)
また、蓄電装置の収納容器内に収納したリチウムイオン電池の異常に伴う電気火災の検知は、例えば熱感知ケーブルがリチウムイオン電池の破裂や発火に伴う熱を受けた場合の絶縁被覆の溶融により一対の信号線を短絡状態に接触させることで検知しており、温度センサなどを使用した場合に必要な火災を検知する閾値温度の設定や、閾値と検出温度の比較判断を不要とし、簡単且つ確実に、単電池の異常に伴う電気火災を検知して粉末消火剤及び消火用エアロゾルを収納容器内に直接噴射して消火抑制できる。
【0032】
また、熱感知ケーブルを蓄電装置の収納容器内に収納して配列している全てのリチウムイオン電池の近傍を横切るように布設するため、熱感知ケーブルの布設という簡単な構成により、全てのリチウムイオン電池の各々に対し、個別的に異常に伴う発火や破裂による火災を確実に検出して、粉末消火剤及び消火用エアロゾルを収納容器内に直接噴射して消火抑制ができる。
【0033】
(消火起動信号の外部出力)
また、消火装置の点火回路部は、ヒータの通電加熱により点火用火薬に点火して起爆させた場合に、消火起動信号をコネクタ及びプラグを介して外部に出力するため、例えば消火起動信号に基づき外部装置で消火起動を表示して報知することを可能とする。
【0034】
(燃焼加圧源に固形消火剤のみを使用した場合の効果)
本発明の別の形態にあっては、燃焼加圧源に点火用火薬は使用せず、固形消火剤の燃焼による消火用エアロゾルのみによって、容器内に充填した粉末消火剤を攪拌加圧して噴出しており、この場合にも、最初の粉末消火剤の噴出は弱めになるが、消火用エアロゾルの発生により短時間で十分な量の粉末消火剤を収納容器内に噴出して、リチウムイオン電池の異常により発生した火災を直接的に消火抑制することが十分に可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[消火装置の構成]
図1は本発明による消火装置を内蔵した蓄電装置を示した斜視図、
図2は蓄電装置の分解組立て状態を示した説明図、
図3は収納容器本体内を示した平面図であり、本実施形態の消火装置は、蓄電装置に収納する円筒電池と同じ形状としたことを特徴とする。
【0037】
(蓄電装置の概要)
図1、
図2及び
図3に示すように、蓄電装置10は、上部に開口した箱型の収納容器本体11と、収納容器本体11の開口に装着してボルト13で固定した収納容器蓋12を備え、収納容器本体11と収納容器蓋12で蓄電装置10の収納容器を構成する。なお、蓄電装置10は、電池モジュール或いは電池パックとも呼ばれる。
【0038】
収納容器本体11の長手方向の一端に位置する手前側の側壁には、蓄電装置10の正極出力端子14aと負極出力端子14bを取付けている。
【0039】
収納容器本体11の電池収納部11aには、組電池25を収納している。組電池25は、複数の電池収納区画15aを備えた電池収納箱15に、円筒形状を持つ複数のリチウムイオン電池26を配列している。リチウムイオン電池26は、単電池(電池セル)として知られた非水電解質二次電池であり、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成した円筒形状の外装容器に、非水電解液と共に電極体を備えている。
【0040】
リチウムイオン電池26の電極体は、例えば、正極板及び負極板をその間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回すことにより、円筒形状に形成している。リチウムイオン電池26の外装容器の上端は正極端子となり、下端は負極端子となる。
【0041】
ここで、リチウムイオン電池26のサイズは、例えば(直径R=80mm〜120mm)×(高さH=80mm〜120mm)程度となる。
【0042】
組電池25は、例えば24区画に分けた電池収納箱15の内の23区画を電池収納区画15aに使用し、23個のリチウムイオン電池26を配列して直列接続している。
【0043】
リチウムイオン電池26の平均セル電圧を例えば3.6ボルトとすると、
図2に示す23個のリチウムイオン電池26の直列接続により、組電池25の電圧は82.8ボルトとなり、蓄電装置10の正極出力端子14aと負極出力端子14bの電圧も82.8ボルトとなる。なお、リチウムイオン電池26の数は、必要とする組電池の必要電圧に対応した数とする。また、複数のリチウムイオン電池26の接続は、所定数のリチウムイオン電池を並列接続した組電池とし、この組電池を複数直列接続しても良い。
【0044】
(消火装置の概要)
図1、
図2及び
図3に示すように、蓄電装置10における収納容器本体11側には、リチウムイオン電池26と同じ円筒形状、即ちリチウムイオン電池26と同じ直径R及び高さHを持った円筒形状の消火装置16を、組電池25を構成する複数のリチウムイオン電池26と共に電池収納箱15に収納している。
【0045】
即ち、電池収納箱15は、24区画の内の23区画を電池収納区画15aとして23個のリチウムイオン電池26を収納し、残り1区画を消火装置収納区画15bに割り当て、そこに消火装置16を収納している。
【0046】
消火装置16は、蓄電装置10の収納容器内に収納したリチウムイオン電池26の異常に伴う火災を検知した場合に、点火用火薬の起爆による爆風とこれに伴う固形消火剤の燃焼により発生した消火用エアロゾルを加圧源として、消火装置16の容器に充填している粉末消火剤を収納容器内に噴出して消火する。
【0047】
なお、本実施形態では、電池収納箱15の奥左隅となるコーナー区画を消火装置収納区画15bとして消火装置16を収納しているが、24区画の中の任意の1区画を消火装置収納区画15bとして消火装置16を収納してもよい。例えば、収納容器内部に効率良く爆風及び消火用エアロゾルにより粉末消火剤を噴出して拡散させるため、収納容器の略中央に位置する区画を消火装置収納区画15bに割り当てて消火装置16を収納する。
【0048】
消火装置16は、電池収納箱15を本体収納容器11の電池収納部11aに組み込んだ状態で、上部に設けたヘッド部40から爆風及び消火用エアロゾルにより加圧された粉末消火剤を収納容器内に噴出可能としている。また、消火装置16のコネクタに対しプラグ70を装着することで、火災検知部として機能する熱感知ケーブル64と、信号線72,74を消火装置16に接続している。
【0049】
熱感知ケーブル64は、ビニールなどの樹脂で絶縁被覆した2本の撚られた信号線であり、2本の信号線の間に消火装置16から電圧を印加しており、火災による熱を受けた場合の絶縁被覆の溶融により一対の信号線が短絡状態に接触し、感知電流が流れることで火災を検知する。
【0050】
プラグ70を介して収納容器内に引き出された熱感知ケーブル64は、収納容器本体11内に収納している全てのリチウムイオン電池26の直上を通過するように布設し、リチウムイオン電池26の各々の異常に伴う火災による熱を検知可能としている。
【0051】
また、プラグ70を介して引き出した信号線72,74は、収納容器本体11の長手方向の一端の側面に設けたコネクタ24に接続している。信号線72は、外部から点火制御信号を入力し、消火装置16を遠隔的に動作させる。信号線74は、消火装置16で点火用火薬に点火して起爆させた場合に消火起動信号を出力する。このためコネクタ24に図示しない外部装置側からの信号ケーブルをプラグ接続しておくことで、外部装置側からの点火制御信号による消火装置16の動作を可能とし、また、外部装置側の表示パネルなどに、消火装置16の起動を表示することを可能とする。
【0052】
(消火装置の構造)
図4は
図1〜
図3に示した本発明による消火装置の断面を示した断面図、
図5は消火装置の上部端面を示した説明図、及び
図6は
図4のX−X断面を示した断面図である。
【0053】
図4、
図5及び
図6に示すように、本実施形態の消火装置16は、リチウムイオン電池と同じサイズの円筒形状を備えた上部に開口した容器本体28と、容器本体28の上部開口に固定した蓋部材30で耐圧性の容器を構成する。
【0054】
容器本体28内には粉末消火剤32を充填している。本実施形態の消火装置16の消火対象はリチウムイオン電池による電気火災であり、リチウムイオン電池の電気火災は、内部ショートや過充電等の原因で熱暴走して電池温度が著しく上昇し、圧力上昇により破裂し、充填している非水電解液が発火して火炎を激しく噴き出す火災であり、非水電解液には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの引火性有機溶媒が使用され、複数種の有機溶媒を様々な割合で混ぜ合わせた混合液が用いられている。このため消火装置
16に充填する粉末消火剤32は、木材、紙、繊維などの普通火災A、灯油、ガソリンなどの油類の火災B、配電盤、コンセントなどの電気火災Cに対応したABC式の粉末消火剤とする。
【0055】
容器本体28内には、蓋部材30側に固定した消火剤放出管34を収納している。蓋部材30に対する消火剤放出管34の固定は、ヘッド部40の下部に開口した通し穴に消火剤放出管34の上部を嵌合固定し、また、蓋部材30の開口に内側から入れて溶接等により固定部材41を固定し、固定部材41の外部に取出したネジ部に、ヘッド部40側の連結ネジ穴部43をネジ込むことで固定している。
【0056】
この蓋部材30に対する消火剤放出管34の固定構造は、ヘッド部40をその連結ネジ穴部43を緩める方向に回すことで、消火栓放出管34を取外すことを可能としており、容器本体28に充填している粉末消火剤32を定期的に交換する場合に、消火剤放出管34を取外し、粉末消火剤32を交換することができる。
【0057】
消火剤放出管34の下端開口部には、取付部材36により後述する燃焼加圧源からの加圧により破れる薄い封止部材38を配置し、消火剤放出管34の入り口を閉鎖し、外部からの湿気が容器本体28内に侵入して粉末消火剤32が固まるのを防いでいる。封止部材38としては、例えばアルミニウム箔、合成樹脂薄膜などを使用する。
【0058】
消火剤放出管34の出口側に装着したヘッド部40は例えば円盤形状であり、消火剤放出管34の上端を嵌合固定した中央下部の通し穴に連通して周囲4箇所に向けて放出穴42を形成し、消火剤放出管34から放出される粉末消火剤をヘッド部40により横方向となる周囲360度方向に噴射するようにしている。
【0059】
容器本体28内には、燃焼加圧部を構成する円筒の一部となる形状の隔離容器44を収納して固定している。隔離容器44は容器本体28に充填した粉末消火剤32から隔離した隔離区画を形成しており、隔離容器44の上部を消火剤収納部とし、消火剤収納部は上部を閉鎖部材46の配置で閉鎖すると共に下部に開口しており、そこに点火用火薬48を配置した固形消火剤50を収納している。また隔離容器44には、点火用火薬48を起爆した場合に発生する爆発圧力に耐える耐圧性能を持たせている。
【0060】
固形消火剤50は中央縦方向に通し穴52を形成し、通し穴52の下部開口側に点火用火薬48を埋込み配置し、更に、点火用火薬48の中には点火に使用するヒータ54を埋込み配置している。
【0061】
固形消火剤50に設けた通し穴52は、点火用火薬48の起爆により固形消火剤50に点火した場合に、通し穴52から外側に向って固形消火剤50を効率良く燃焼させる役割を果たす。
【0062】
点火用火薬48は、ヒータ54の通電加熱により起爆した場合に発生する爆風を加圧源として、容器本体28に収容した粉末消火剤32を爆風により急速に攪拌加圧し、また爆風により発生した強い圧力で消火剤放出管34の封止部材38を破り、消火剤放出管34を通してヘッド部40から蓄電装置の収納容器内に粉末消火剤を高圧噴射する。また、点火用火薬48は、起爆により発生した火炎により固形消火剤50に点火して燃焼させる機能を果たす。
【0063】
点火用火薬48の量は、粉末消火剤32を攪拌し、封止部材38を破り、更に、強い噴射力でヘッド部40から粉末消火剤を噴射させるに十分な加圧力を短時間で発生するに必要な所定の火薬量とする。
【0064】
また、安全性を高めるため、固形消火剤50に設けている通し穴52の中に、工業用雷管として知られた絶縁型電気雷管を点火用火薬48として配置しても良い。絶縁型電気雷管は、先端を封止した雷管ケース内に、導爆薬に続いて起爆薬を充填し、その外側に絶縁性樹脂を充填して封止し、起爆薬の中に細いワイヤーブリッジ(ヒータ)を埋め込んでおり、外部からワイヤーブリッジに電流を流して発熱することで、起爆薬に点火し、導爆薬を起爆させる。なお、絶縁型電気雷管に充填する導爆薬は、隔離容器44の耐圧性能を満足する範囲で必要とする所定量とする。
【0065】
固形消火剤50は、燃焼により消火用エアロゾルを発生し、点火用火薬48の起爆に続いて粉末消火剤32を放出するための加圧源として機能すると共に消火剤として機能する。消火用エアロゾルは、2μm程度の超微粒子であり、その主成分は、金属の酸化物、炭酸塩あるいは燐酸塩あるいはその混合物を含有している。
【0066】
具体的には、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどを主成分とし、これに窒素、二酸化炭素、水蒸気などが含まれている。このような主成分を持つ消火用エアロゾルにあっては、消火用エアロゾルそのものに毒性がなく、環境に優しい発生ガスということができる。
【0067】
固形消火剤50の燃焼により発生した消火用エアロゾルによる消火作用は、蓄電装置の収納容器内を消火用エアロゾルで満たすことで、火災の発生により燃焼している燃焼の活性中心を消滅、抑制する作用により消火を行うものであり、水系消火剤を使用することのできない電気火災に好適な消火作用が得られる。
【0068】
また固形消火剤50の量は例えば蓄電装置の収納容器内の容積に応じて決める。閉鎖空間となる消火対象エリア1立方メートル当たりを消火するに必要な消火用エアロゾルを発生するための固形消火剤50の重量は、80グラム〜200グラム程度であり、これに基づき、消火対象とする蓄電装置の収納容器内の容積に応じた量の固形消火剤50を収納している。
【0069】
本実施形態の消火装置16が消火対象とする蓄電装置の収納容器内容積は、例えば0.1立方メートル〜0.25立方メートル程度であり、これに複数のリチウムイオン電池で構成した組電池を収納することから、実際の空きスペースの容積は更に小さなものとなる。例えば蓄電装置の収納容器内容積を0.1立方メートルとした場合に必要な固形消火剤の重量は8グラム〜20グラムとなり、また0.25立方メートルとした場合に必要な固形消火剤の重量は20グラム〜50グラム程度となる。
【0070】
従来から電気設備等に用いられる消火設備として、ガス消火設備や粉末消火設備が一般に使用されているが、これらの消火設備は消火剤を放出するにあたり多量の高圧ガスを必要とする。その為、密閉度の高い収納容器内で消火用ガスや粉末を放出した場合は、収納容器の破裂に繋がり消火効果の低減や火災の延焼拡大の可能性がある。本実施形態の消火装置では収納容器内の加圧は点火用火薬48に点火した短時間であり、その後は少量の固形消火剤50の燃焼により発生するエアロゾル放出による微少加圧であるため、従来のガス消火設備や粉末消火設備と比較して収納容器内の圧力上昇は非常に小さく、収納容器の破裂は回避できる。
【0071】
点火用火薬48を配置した固形消火剤50を収納した消火剤収納部の開口側には火炎噴出防止部材56を配置する。火炎噴出防止部材56の具体例としては、ガラスや磁器などの細径パイプを複数並べて炎の噴出しを抑制する構造、複数の金網を分離配置して炎の噴出しを抑制する構造、ガラスや磁器などのボールを複数配置して炎の噴出しを抑制する構造、更には複数の金網の間にガラスや磁器などのボールを複数配置して炎の噴出しを抑制する構造とする。
【0072】
火炎噴出防止部材56に続いては空洞部58を形成し、空洞部58と粉末消火剤32の充填側を仕切る隔離容器44の隔壁にパイプ部材を装着して複数のノズル孔60を形成し、点火用火薬48の起爆により発生した爆風及び固形消火剤50の燃焼により発生した消火用エアロゾルをノズル孔60から効率良く放出して、粉末消火剤32を攪拌させながら加圧するようにしている。
【0073】
ノズル孔60は、パイプ部材をそれぞれ上向き、水平、下向きに配置し、爆風及び消火用エアロゾルの放出方向を異ならせることで、容器本体28に充填している粉末消火剤32を効率良く攪拌可能としている。
【0074】
またノズル孔60は、隔離容器44を取出して示した
図7のように、粉末消火剤32に対する隔離面の下部に縦及び横に3つずつ、合計9個のノズル孔60を形成し、ノズル孔60のそれぞれには、点火用火薬48の起爆により発生した爆風により破れる薄い封止部材62を設けて閉鎖し、本体容器28内に充填している粉末消火剤
32が空洞部58に入らないようにしている。ノズル孔60を閉鎖する封止部材62は、消火剤放出管34に設けた封止部材38と同様、アルミニウム箔、合成樹脂薄膜などを使用し、ノズル孔60の外側に接着固定する。なお、ノズル孔60の数は必要に応じて適宜の数とすれば良く、またノズル孔60からの放出方向を決めるパイプ部材を設けずに、ノズル孔60のみを隔壁に形成するようにしても良い。
【0075】
消火装置16には、消火制御部を設ける。消火制御部は、熱感知ケーブル64、点火回路部66、コネクタ68、プラグ70を備える。
【0076】
コネクタ68は蓋部材30に取り付け、熱感知ケーブル64及び信号線72,74を引き出したプラグ
70を接続可能としている。
【0077】
消火装置16の容器本体28に収納した隔離容器44における粉末消火剤32の充填側には点火回路部66を取付けている。点火回路部66は電池電源(一次電池)を内蔵しており、コネクタ68との間に、プラグ70を介して熱感知ケーブル64、点火制御信号を入力する信号線72、及び消火起動信号を出力する信号線74を接続するための信号線を接続し、またヒータ54に対する信号線も接続している。
【0078】
点火回路部66は、リチウムイオン電池の異常に伴う火災を熱感知ケーブル64の短絡により検出した場合に、ヒータ54に通電して加熱することにより点火用火薬48を起爆し、これに伴い固形消火剤50に点火して燃焼させる。また、信号線72を介して外部から点火制御信号を入力した場合にも、ヒータ54に通電して加熱することにより点火用火薬48を起爆し、固形消火剤
50に点火して燃焼させる。
【0079】
(点火回路部の構成)
図8は、
図4の消火装置の内部に配置した点火回路部の実施形態を示した回路図である。
図8に示すように、点火回路部66は、プラグ70及びコネクタ68を介して蓄電装置の収納容器内に布線した熱感知ケーブル64、点火制御信号を入力する信号線72、及び消火起動信号を出力する信号線74を接続している。なお、点火制御信号を入力する信号線72は通常監視状態で開放状態にあり、点火制御信号を入力する場合は、短絡状態となる。
【0080】
点火回路部66には、トランジスタ84、リレー86、抵抗78,80,82を備えたヒータ駆動回路及び電池電源76を設ける。電池電源76は釦電池などの一次電池であり、外部からの電源供給を不要としている。
【0081】
トランジスタ84は、抵抗78,80の分圧電圧を、抵抗82を介してベースに印加しており、熱感知ケーブル64には抵抗78,80を介して電池電源76からの電源電圧を常時、印加している。ここで、通常監視状態でトランジスタ84はオフであり、また熱感知ケーブル64の一方の信号線には電源電圧のみが印加されるだけで電流は流れておらず、点火回路部66の消費電量は漏れ電流などに起因した極く僅かな消費電流だけであり、電池電源76として一次電池を使用しても、必要にして十分な電池寿命を確保可能である。
【0082】
トランジスタ84はPNPトランジスタであり、コレクタ側に負荷としてリレー86を接続しており、通常監視状態にあっては、熱感知ケーブル64は2本の信号線のビニールなどによる絶縁被覆で開放状態にあり、電池電源76から電流は流れず、トランジスタ84はエミッタ,ベース間の電圧が0ボルトであることからオフ状態となっている。
【0083】
リレー86は、その常開リレー接点90を介してヒータ54を接続している。また、リレー86の常開リレー接点88をトランジスタ84のエミッタ・コレクタ間に接続し、ラッチ回路を形成している。更に、コネクタ68の端子に消火起動信号を出力するためのリレー接点92を接続している。
【0084】
蓄電装置に収納したリチウムイオン電池の異常発熱に伴う火災の熱を受けて熱感知ケーブル64の絶縁被覆であるビニールが溶け、2本の信号線が接触状態になると、抵抗78、80を介して熱感知ケーブル64に電流が流れる。このため、抵抗78に生ずる電圧によりトランジスタ84のエミッタ・ベース間にバイアス電圧が加わり、これによってトランジスタ84がオンしてリレー86を作動する。
【0085】
リレー86が作動すると常開リレー接点90が閉じ、ヒータ54に通電し、ヒータ54の通電による加熱で点火用火薬48を起爆し、これに伴い固形消火剤50に点火して燃焼することで消火用エアロゾルを発生して、爆風及び消火用エアロゾルにより粉末消火剤32を攪拌加圧し、ノズル部60から収納容器内に粉末消火剤32を噴出させ、続いて消火用エアロゾルと共に粉末消火剤32を噴出させる。
【0086】
またリレー86の作動によりリレー接点88が閉じることで、リレー86を作動状態にラッチし、これによって、熱感知ケーブル64の短絡状態の変動による誤動作を防ぐようにしている。
【0087】
更に、リレー接点92が閉じることで、信号線74を介して外部に対し消火動作が行われたことを示す消火起動信号を出力し、必要に応じて消火起動信号を受信した外部装置で電池火災に対する消火装置の起動を表示して知らせる。
【0088】
一方、外部装置側から必要に応じて点火制御信号が入力されると、信号線72は短絡状態となり、熱感知ケーブル64により火災検知した場合と同様に、抵抗78、80を介して信号線72に電流が流れてトランジスタ84がオンし、リレー86の作動で常開リレー接点90が閉じてヒータ54に通電し、加熱で点火用火薬48を起爆し、これに伴い固形消火剤50に点火して燃焼することで消火用エアロゾルを発生して、爆風及び消火用エアロゾルにより粉末消火剤32を攪拌加圧し、ノズル部40から収納容器内に粉末消火剤32を噴出させ、続いて消火用エアロゾルと共に粉末消火剤32を噴出させる。
【0089】
(消火装置の動作)
図9は消火装置の動作を示した説明図である。
図9において、蓄電装置10に収納しているリチウムイオン電池26のいずれかが、内部ショートや過充電等の原因で熱暴走して電池温度が著しく上昇し、圧力上昇により破裂し、充填している非水電解液が発火して火炎を激しく噴き出す火災を起こした場合、消火装置16の点火回路部66が蓄電装置10の収納容器内に布設した熱感知ケーブル64の火災による短絡状態を検知し、ヒータ54に通電加熱して点火用火薬48を起爆し、これに伴い固形消火剤50に点火して燃焼することで消火用エアロゾルを発生する。
【0090】
点火用火薬48の起爆で発生した爆風は、下方開口から火炎噴出防止部材56を介して噴き出した後、空洞部58の空気を圧縮し、
図7 に示した封止部材62を破ってノズル孔60から爆風を噴出し、これにより容器本体28に充填している粉末消火剤32を攪拌する。本体容器28内の内圧が所定の圧力に達すると消火剤放出管34を閉鎖している封止部材38が破れ、粉末消火剤32が消火剤放出管34を通ってヘッド部40から収納容器内の空間に放出され、異常過熱を起こしたリチウムイオン電池から噴き出している着火した可燃性ガスや電解液の火炎に対し粉末消火剤32を短時間の強い力で吹き付け、火災を消火抑制する。
【0091】
続いて、固形消火剤50の燃焼により発生した消火用エアロゾルによる加圧で粉末消火剤32のヘッド部40からの放出が継続し、この場合には、粉末消火剤と消火用エアロゾルを混合した2種の消火剤の放出となり、火災を起こしているリチウムイオン電池の火災を確実に消火抑制することができる。
【0092】
このため蓄電装置10に収納しているリチウムイオン電池26が異常過熱により火災を起こしても、消火装置16により蓄電装置の収納容器内に、粉末消火剤及び消火用エアロゾルを直接噴射して火災を消火抑制することができ、リチウムイオン電池26の異常に起因した火災を蓄電装置10の収納容器内に押さえ込み、収納容器の外部に火災か拡大して甚大な被害が発生することを確実に防止可能とする。
【0093】
[矩形電池形状と同じ消火装置の実施形態]
図10は矩形電池形状と同じ本発明の消火装置を内蔵した蓄電装置の分解組立て状態を示した説明図、
図11は
図10の消火装置の実施形態を示した断面図である。
【0094】
(蓄電装置)
図10に示すように、蓄電装置10は、上部に開口した箱型の収納容器本体11と、収納容器本体11の開口に装着してボルトで固定する収納容器蓋12を備え、収納容器本体11と収納容器蓋12で蓄電装置10の収納容器を構成する。収納容器本体11の長手方向の一端に位置する手前側の側壁には、蓄電装置10の正極出力端子14aと負極出力端子14bを取付けている。
【0095】
収納容器本体11の内部には、2組の組電池25を収納している。組電池25の各々には、扁平箱形状を持つ複数のリチウムイオン電池126を配列している。リチウムイオン電池126は、単電池(電池セル)として知られた非水電解質二次電池であり、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成した扁平箱形状の外装容器に、非水電解液と共に電極体を備えている。リチウムイオン電池126の電極体は、例えば、正極板及び負極板をその間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回し、さらに、径方向に圧縮することにより、扁平な矩形状に形成している。リチウムイオン電池126の外装容器の上端には、正極端子126a及び負極端子126bを設けている。
【0096】
ここで、リチウムイオン電池126のサイズは、例えば(横幅L=100mm〜120mm)×(縦幅W=20mm)×(高さH=90mm〜100mm)程度となる。
【0097】
2組の組電池25の各々には例えば9個のリチウムイオン電池126を配列して直列接続しており、更に2組の組電池25を直列接続している。ここで、リチウムイオン電池126の平均セル電圧を例えば3.6ボルトとすると、各組電池25の電圧は9個のリチウムイオン電池126を直列接続することで32.4ボルトとなり、更に、2組の組電池25を直列接続することで、蓄電装置10の正極出力端子14aと負極出力端子14bの電圧は64.8ボルトとなる。なお、リチウムイオン電池126の数は、必要とする組電池の必要電圧に対応した数とする。また、複数のリチウムイオン電池126の接続は、所定数のリチウムイオン電池を並列接続した組電池とし、この組電池を複数直列接続しても良い。
【0098】
(消火装置)
蓄電装置10における収納容器本体11側には、リチウムイオン電池126と同じ扁平箱形状、即ちリチウムイオン電池126と同じ横幅L、縦幅W及び高さHを持った消火装置16を、組電池25を構成する複数のリチウムイオン電池126と共に収納している。
【0099】
収納容器本体11は、収納容器内に、2列に分けて、それぞれ9区画に仕切った電池収納区画15aを形成し、その奥行き方向の端部に、2列1区画に仕切った2箇所の消火装置収納区画15bを形成している。電池収納区画15aにはリチウムイオン電池126を収納して、図示しない接続部材により直列接続している。また、2箇所の消火装置収納区画15bの一方には、消火装置16を収納している。
【0100】
消火装置16は、収納容器本体11の消火装置収納区画15bに収納した状態で、上部に設けたヘッド部40から爆風及び消火用エアロゾルにより加圧された粉末消火剤を収納容器内に噴出可能としている。また、消火装置16のコネクタに対しプラグ70を装着することで、火災検知部として機能する熱感知ケーブル64と、信号線72,74を消火装置16に接続している。
【0101】
プラグ70を介して収納容器内に引き出した熱感知ケーブル64は、収納容器本体11に収納している全てのリチウムイオン電池126の直上を通過するように布設し、リチウムイオン電池126の各々の異常に伴う火災による熱を検知可能としている。
【0102】
また、プラグ70を介して引き出した信号線72,74は、収納容器本体11の長手方向の一端の側面に設けたコネクタ(図示せず)に接続している。信号線72は、外部から点火制御信号を入力し、消火装置16を遠隔的に動作させる。信号線74は、消火装置16で点火用火薬に点火して起爆させた場合に消火起動信号を出力する。
【0103】
(消火装置の構成)
図11は
図10の消火装置の断面を示した断面図である。
図11に示すように、本実施形態の消火装置16は、リチウムイオン電池126と同じサイズの扁平箱形状の上部に開口した容器本体128と、容器本体128の上部開口に装着する蓋部材130で構成している。
【0104】
消火装置16の構成は、容器本体128と蓋部材130で構成する容器が、リチウムイオン電池126と同じサイズの扁平箱形状としている以外は、
図4〜
図7に示した消火装置16の場合と基本的に同じであることから、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0105】
(消火装置の動作)
図10及び
図11において、蓄電装置10に収納しているリチウムイオン電池126の何れかが異常過熱により破裂して火災を起こした場合、消火装置16の点火回路部66が蓄電装置10の収納容器内に布設した熱感知ケーブル64の火災による短絡状態を検知し、ヒータ54に通電加熱して点火用火薬48を起爆し、これに伴い固形消火剤50に点火して燃焼することで消火用エアロゾルを発生する。
【0106】
点火用火薬48の起爆で発生した爆風は、下方開口から火炎噴出防止部材56を介して噴き出した後、空洞部58の空気を圧縮し、封止部材62を破ってノズル孔60から爆風を噴出し、これにより容器本体128に充填している粉末消火剤32を攪拌する。
【0107】
本体容器128内の内圧が所定の圧力に達すると消火剤放出管34を閉鎖している封止部材38が破れ、粉末消火剤32が消火剤放出管34を通ってヘッド部40から収納容器内の空間に放出され、異常過熱を起こしたリチウムイオン電池から放出している着火した可燃性ガスや電解液に対し粉末消火剤32を短時間の強い力で吹き付け、火炎を消火抑制する。
【0108】
続いて、固形消火剤50の燃焼により発生した消火用エアロゾルによる加圧により粉末消火剤32のヘッド部40からの放出が継続し、この場合には、粉末消火剤と消火用エアロゾルを混合した2種の消火剤の放出となり、火災を起こしているリチウムイオン電池の火災を確実に消火抑制することができる。
【0109】
[蓄電装置に外付けする消火装置の実施形態]
図12は蓄電装置に外付けする本発明による消火装置の実施形態を示した説明図、
図13は蓄電装置の内部構造を示した断面図である。
【0110】
(蓄電装置の概要)
図12及び
図13に示す蓄電装置10は、
図1の場合と基本的に同じてあり、上部に開口した箱型の収納容器本体11と、収納容器本体11の開口に装着してボルト13で固定した収納容器蓋12を備え、収納容器本体11と収納容器蓋12で蓄電装置10の収納容器を構成し、収納容器本体11の長手方向の一端に位置する手前側の側壁には、蓄電装置10の正極出力端子14aと負極出力端子14bを取付けている。
【0111】
収納容器本体11の内部には、組電池25を収納している。組電池25には、
図10に示したと同じ扁平箱形状を持つ複数のリチウムイオン電池126を配列している。
【0112】
(消火装置)
蓄電装置10における収納容器蓋12の外側には、消火装置16を取付けている。消火装置16は、
図11に示した消火装置16と基本的に同じ構造であり、
図11の蓋部材130を介して外部に取出した消火剤放出管34に、L型継手(エルボ)94を連結して収納容器蓋12の内側に連通し、そこにヘッド部40を装着している。
【0113】
また蓋部材130に設けたコネクタ68に装着したプラグ70に接続した熱感知ケーブル64及び信号線72,74を、貫通シール部96を介して収納容器蓋12の内側に引き込み、熱感知ケーブル64は、収納容器本体11に収納している全てのリチウムイオン電池126の直上を通過するように布設し、リチウムイオン電池126の各々の異常に伴う火災による熱を検知可能としている。また、信号線72,74は、収納容器蓋12の一端の側面に設けたコネクタ24に接続し、信号線72は外部から点火制御信号を入力して消火装置16を遠隔的に動作させ、信号線74は消火装置16で点火用火薬に点火して起爆させた場合に消火起動信号を出力する。
【0114】
(消火装置の動作)
図12及び
図13において、蓄電装置10に収納しているリチウムイオン電池126の何れかが異常過熱により破裂して火災を起こした場合、
図11に示した消火装置16の点火回路部66が蓄電装置10の収納容器内に布設した熱感知ケーブル64の火災による短絡状態を検知し、ヒータ54に通電加熱して点火用火薬48を起爆し、これに伴い固形消火剤50に点火して燃焼することで消火用エアロゾルを発生する。
【0115】
点火用火薬48の起爆で発生した爆風は、下方開口から火炎噴出防止部材56を介して噴き出した後、空洞部58の空気を圧縮し、封止部材62を破ってノズル孔60から爆風を噴出し、これにより容器本体128に充填している粉末消火剤32を攪拌する。
【0116】
本体容器128内の内圧が所定の圧力に達すると消火剤放出管34を閉鎖している封止部材38が破れ、粉末消火剤32が消火剤放出管34を通って収納容器蓋12の内側に配置したヘッド部40から収納容器内の空間に放出され、異常過熱を起こしたリチウムイオン電池から放出している着火した可燃性ガスや電解液に対し粉末消火剤32を短時間の強い力で吹き付け、火炎を消火抑制する。
【0117】
続いて、固形消火剤50の燃焼により発生した消火用エアロゾルによる加圧により粉末消火剤32のヘッド部40からの放出が継続し、この場合には、粉末消火剤と消火用エアロゾルを混合した2種の消火剤の放出となり、火災を起こしているリチウムイオン電池の火災を確実に消火抑制することができる。
【0118】
消火装置16を蓄電装置10に外付けした実施形態にあっては、消火装置16が蓄電装置10内の温度による影響を受けることがなく、消火装置16に充填している粉末消火剤の温度による影響を低減できる。
【0119】
また、消火装置16に充填している粉末消火剤は、定期的に交換する必要があるが、消火装置16を外付けしていることで、粉末消火剤の交換作業を容易に行うことができる。
【0120】
また、消火装置16が動作した場合、点火用火薬及び固形消火剤の燃焼により消火装置16自体が発熱して高温になるが、外付けしていることで、蓄電装置10に収納しているリチウムイオン電池への発熱による影響をなくすことができる。
【0121】
[蓄電装置に内蔵した消火装置の実施形態]
図14は蓄電装置に内蔵した本発明による消火装置の実施形態を示した断面図である。
【0122】
(蓄電装置の概要)
図14に示す蓄電装置10は、
図1の場合と基本的に同じてあり、上部に開口した箱型の収納容器本体11と、収納容器本体11の開口に装着して固定した収納容器蓋12を備え、収納容器本体11と収納容器蓋12で蓄電装置10の収納容器を構成し、収納容器本体11の長手方向の一端に位置する手前側の側壁には、蓄電装置10の正極出力端子14aと負極出力端子14bを取付けている。
【0123】
収納容器本体11の内部には、組電池25を収納している。組電池25には、
図10に示したと同じ扁平箱形状を持つ複数のリチウムイオン電池126を配列している。
【0124】
(消火装置)
蓄電装置10における収納容器蓋12の内側には、消火装置16を取付けている。消火装置16は、
図11に示した消火装置16と基本的に同じ構造であり、
図11の蓋部材130を介して外部に取出した消火剤放出管34にL型継手(エルボ)98を介してヘッド部40を装着している。
【0125】
また蓋部材130に設けたコネクタ68に装着したプラグ70から引き出した熱感知ケーブル64を、収納容器本体11に収納している全てのリチウムイオン電池126の直上を通過するように布設し、リチウムイオン電池126の各々の異常に伴う火災による熱を検知可能としている。また、プラグ70から引き出した信号線72,74は、収納容器蓋12の一端の側面に設けたコネクタ24に接続し、信号線72は外部から点火制御信号を入力して消火装置16を遠隔的に動作させ、信号線74は消火装置16で点火用火薬に点火して起爆させた場合に消火起動信号を出力する。
【0126】
(消火装置の動作)
図14において、蓄電装置10に収納しているリチウムイオン電池126の何れかが異常過熱により破裂して火災を起こした場合、
図11に示した消火装置16に収納した点火回路部66が蓄電装置10の収納容器内に布設した熱感知ケーブル64の火災による短絡状態を検知し、ヒータ54に通電加熱して点火用火薬48を起爆し、これに伴い固形消火剤50に点火して燃焼することで消火用エアロゾルを発生する。
【0127】
点火用火薬48の起爆で発生した爆風は、下方開口から火炎噴出防止部材56を介して噴き出した後、空洞部58の空気を圧縮し、封止部材62を破ってノズル孔60から爆風を噴出し、これにより容器本体128に充填している粉末消火剤32を攪拌する。
【0128】
本体容器128内の内圧が所定の圧力に達すると消火剤放出管34を閉鎖している封止部材38が破れ、粉末消火剤32が消火剤放出管34を通って収納容器蓋12の内側に配置したヘッド部40から収納容器内の空間に放出され、異常過熱を起こしたリチウムイオン電池から放出している着火した可燃性ガスや電解液に対し粉末消火剤32を短時間の強い力で吹き付け、火炎を消火抑制する。
【0129】
続いて、固形消火剤50の燃焼により発生した消火用エアロゾルによる加圧により粉末消火剤32のヘッド部40からの放出が継続し、この場合には、粉末消火剤と消火用エアロゾルを混合した2種の消火剤の放出となり、火災を起こしているリチウムイオン電池の火災を確実に消火抑制することができる。
【0130】
[燃焼加圧源に固形消火剤のみを用いた消火装置の実施形態]
本発明による消火装置の他の実施形態として、燃焼加圧源に設けている点火用火薬を取り除き、固形消火剤のみを設けるようにする。
【0131】
本実施形態による消火装置の構成は、
図4及び
図11に示した実施形態の消火装置16に設けている点火用火薬48を取り除き、固形消火剤50のみを設けるようにする。それ以外の構成は、
図4及び
図11の実施形態の場合と同じとなる。
【0132】
本実施形態に使用する固形消火剤は、点火用火薬の起爆による高圧加圧を行わないことから、固形消火剤として、
図4及び
図11の実施形態に対し、それより燃焼速度を高めたものを使用し、ノズル孔60の封止部材62を破って粉末消火剤32を攪拌加圧し、更に、封止部材38を破って粉末消火剤32を、消火剤放出管34を通してヘッド部40から蓄電装置10内に噴出させるに十分な加圧ができるようにする。
【0133】
[本発明の変形例]
(消火装置の複数設置)
上記のリチウムイオン電池と同じ形状の消火装置の実施形態にあっては、蓄電装置の電池収納区画の1つを空き区画として、そこに消火装置を収納しているが、必要に応じて、複数の消火装置収納区画を割り当て、各々に消火装置を収納し、消火能力を高めるようにしても良い。
【0134】
(消火装置の分離)
上記の実施形態にあっては、消火装置の容器内に、粉末消火剤とその燃焼加圧部を設けているが、粉末消火剤を充填した消火剤容器と、点火用火薬と固形消火剤を設けた燃焼加圧容器とに分離し、燃焼加圧容器から加圧配管を消火剤容器に接続して加圧し、消火剤容器に充填した粉末消火剤を攪拌充填し、消火剤放出管を通してヘッド部から放出するようにしても良い。
【0135】
このように消火剤容器と燃焼加圧源容器に分離した場合、それぞれリチウムイオン電池と同じサイズの形状とし、例えば
図10に示した蓄電装置10の収納容器本体11に確保している1対の消火装置収納区画15bに収納し、加圧配管で連結する。
【0136】
このように消火剤容器と燃焼加圧源容器を分離して配置することで、充填する粉末消火剤及び固形消火剤の量を増加して消火能力を高めることができる。
【0137】
(消火装置の電源)
また、上記の実施形態にあっては、消火装置に一次電池を用いた電池電源を内蔵して点火回路部を動作しているが、蓄電装置の収納容器内に収納しているリチウムイオン電池(二次電池)から電源を供給するようにしても良い。
【0138】
(点火回路部)
また、点火回路部は、上記の実施形態に限定されず、火災による熱感知ケーブルの短絡を検知して点火用火薬又は固定消火剤に点火する回路機能、外部から点火制御信号を入力して点火用火薬又は固形消火剤に点火する回路機能、及び消火起動信号を外部に出力する回路機能を備えれば、適宜の回路とすることができる。
【0139】
また、上記の実施形態で消火装置に設けた点火回路部は、外部から点火制御信号によっても点火用火薬に点火して爆風を発生させているが、これは行わず、熱感知ケーブル等の火災検知部による火災検知のみで点火用火薬に点火して爆風を発生させるようにしても良い。
【0140】
(火災検知部)
また、上記の実施形態は、リチウムイオン電池の異常に伴う火災を検知する火災検知部として熱感知ケーブルを設けているが、これ以外に、熱電対、サーミスタ等の温度センサ、レーザパルス光を入射した場合の後方散乱光の強度から温度測定する光ファイバーセンサなどの適宜の火災検知部を設けても良い。
【0141】
(消火装置の用途)
また、上記の実施形態は、電気自動車、航空機、住宅設備の蓄電装置を例にとるものであったが、それ以外の適宜の機器、装置、設備、施設に設置されるリチウムイオン電池を用いた蓄電装置の消火装置についても、同様に適用可能である。
【0142】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。