特許第6042735号(P6042735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042735
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】セグメント送込み装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   E21D11/40 C
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-14397(P2013-14397)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-145194(P2014-145194A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】390026549
【氏名又は名称】小西咲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100107205
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】根来 将司
(72)【発明者】
【氏名】中辻 康智
(72)【発明者】
【氏名】宇留間 高広
(72)【発明者】
【氏名】有川 健
(72)【発明者】
【氏名】粟井 光夫
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−037699(JP,U)
【文献】 特開平11−336493(JP,A)
【文献】 特開平04−031598(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3032220(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド工法によるシールド工事において、シールド掘進機に後続して形成されたセグメントによるトンネル覆工体の内部を経て、搬送台車によってシールド掘進機の後方まで搬送されてきたセグメントを、スキンプレートの内部に配置されたセグメント組立て用のエレクタ装置の近傍まで送り込むセグメント送込み装置であって、
前記トンネル覆工体のインバート部に設置される固定ガイド部と、該固定ガイド部に案内されて前記トンネル覆工体の軸方向にスライド移動するスライド移動部とからなり、
前記固定ガイド部は、円弧状の断面形状を備える前記セグメントの外周面の中央部分を挟んだ両側が載置されて前記セグメントを摺動可能に支持する固定側支持レール部を有すると共に、前記トンネル覆工体の軸方向に所定の間隔をおいて、逆送防止用爪部材を複数箇所に備えており、
前記スライド移動部は、円弧状の断面形状を備える前記セグメントの外周面の中央部分を挟んだ両側が載置されて前記セグメントを摺動可能に支持するスライド側支持レール部を有すると共に、前記トンネル覆工体の軸方向に所定の間隔をおいて、供給用爪部材を複数箇所に備えており、
前記逆送防止用爪部材と前記供給用爪部材とは、前記固定側支持レール部や前記スライド側支持レール部のセグメント載置面に対して上下に進退可能に突出して設けられていると共に、前記エレクタ装置に向けた前記トンネル覆工体の軸方向前方側にセグメント当接面を有しており、且つ該セグメント当接面から前記トンネル覆工体の軸方向後方に向って下方に傾斜する傾斜部を備えていることで、軸方向後方から前記セグメントが前記傾斜部を乗り越えるようにして前記逆送防止用爪部材や前記供給用爪部材の上方を通過する際に、前記逆送防止用爪部材や前記供給用爪部材は、前記セグメント載置面より下方に没入するようになっているセグメント送込み装置。
【請求項2】
前記固定側支持レール部や前記スライド側支持レール部の前記セグメント載置面に、摺動促進層が設けられている請求項1記載のセグメント送込み装置。
【請求項3】
前記摺動促進層が、前記セグメント載置面に取り付けられたナイロンプレート又はテフロン(登録商標)シートによって形成されている請求項2記載のセグメント送込み装置。
【請求項4】
前記逆送防止用爪部材や前記供給用爪部材は、前記スライド移動部のスライド方向と垂直な方向に延設する回転軸を中心に回転するプレート状金具からなり、前記セグメントが上方を通過していない状態で、前記セグメント当接面が前記セグメント載置面より上方に突出するように付勢されている請求項1〜3のいずれか1項記載のセグメント送込み装置。
【請求項5】
前記スライド移動部は、油圧によって作動して前記トンネル覆工体の軸方向にスライド移動するようになっている請求項1〜4のいずれか1項記載のセグメント送込み装置。
【請求項6】
前記シールド掘進機は、泥土圧式シールド掘進機となっており、前記スライド移動部を作動させる油圧を、スクリュウコンベアの油圧系統から得るようになっている請求項5項記載のセグメント送込み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメント送込み装置に関し、特に、搬送台車によってシールド掘進機の後方まで搬送されてきたセグメントを、スキンプレートの内部に配置されたセグメント組立て用のエレクタ装置の近傍まで送り込むセグメント送込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は、シールド掘進機の先端の切端面を、泥土、泥水、圧気等による圧力によって押え付けつつカッターによって地山を掘削すると共に、シールド掘進機の後方にセグメントによるトンネル覆工体を順次組み立てながら地中にトンネルを掘進してゆく工法である。また、シールド工法では、円筒状の外殻体であるスキンプレートの内部に、切端面を切削するカッターや、掘削土砂が充填される隔室や、掘削土砂の排出装置や、伸縮可能なシールドジャッキや、セグメントを組み立てるエレクタ装置等を備えており、スキンプレートの内部で組み立てた、直前のトンネル覆工体から反力を取りながら、シールドジャッキよってスキンプレートを掘進方向前方に押し出し、押し出した後のスキンプレートの内側面にさらにトンネル覆工体を組み立てる作業を繰り返すことで、シールドトンネルを形成して行くようになっている。
【0003】
そして、シールド工法によるシールド工事では、シールド掘進機の前進に伴って、スキンプレートの内部に設置されたエレクタ装置の近傍まで、セグメントを送り込む必要がある一方で、エレクタ装置の後方の作業空間は、掘削土砂の排出装置や各種の駆動・制御装置等が設けられていて、狭隘な空間となっており、複数のセグメントをエレクタ装置の近傍まで一度に搬送することは困難である。このため、シールド掘進機に後続して形成されたトンネル覆工体の内部を経て、搬送台車によってシールド掘進機の後方まで搬送されてきた複数のセグメントを、1ピースづつ、ローラコンベアやホイスト式の搬送装置を用いて、エレクタ装置の近傍まで送り込む方法が採用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3038355号公報
【特許文献2】特許第3098745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のセグメントを1ピースづつエレクタ装置の近傍まで送り込む方法では、特にトンネル覆工体の内径が、例えば2000〜3000mm程度の小口径や中口径のものであると、ホイスト式の搬送装置は、吊り代を確保できなくなるため採用することが困難になる。また、トンネル覆工体のインバート部に設置したローラコンベア上を滑らせながらセグメントを送り込む方法では、重量物であるセグメントを、狭隘な空間で作業員の手作業によって押しながら搬送することになるため、作業員の身体的負担が大きくなると共に、トンネルに勾配がある場合には、セグメントの逸送や滑動を生じることがある。さらに、セグメント同士の接触等が生じやすくなるため、特にセグメントが鉄筋コンクリート製のものであると、割れや欠けが生じて品質上の問題を生じることことがある。
【0006】
本発明は、搬送台車によってシールド掘進機の後方まで搬送されてきたセグメントを、エレクタ装置の近傍まで送り込む際に、作業員の手作業を大幅に軽減できると共に、トンネルに勾配がある場合でもセグメントの逸送や滑動が生じるのを回避することができ、またセグメント同士の接触等が生じるのを回避することのできるセグメント送込み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シールド工法によるシールド工事において、シールド掘進機に後続して形成されたセグメントによるトンネル覆工体の内部を経て、搬送台車によってシールド掘進機の後方まで搬送されてきたセグメントを、スキンプレートの内部に配置されたセグメント組立て用のエレクタ装置の近傍まで送り込むセグメント送込み装置であって、前記トンネル覆工体のインバート部に設置される固定ガイド部と、該固定ガイド部に案内されて前記トンネル覆工体の軸方向にスライド移動するスライド移動部とからなり、前記固定ガイド部は、円弧状の断面形状を備える前記セグメントの外周面の中央部分を挟んだ両側が載置されて前記セグメントを摺動可能に支持する固定側支持レール部を有すると共に、前記トンネル覆工体の軸方向に所定の間隔をおいて、逆送防止用爪部材を複数箇所に備えており、前記スライド移動部は、円弧状の断面形状を備える前記セグメントの外周面の中央部分を挟んだ両側が載置されて前記セグメントを摺動可能に支持するスライド側支持レール部を有すると共に、前記トンネル覆工体の軸方向に所定の間隔をおいて、供給用爪部材を複数箇所に備えており、前記逆送防止用爪部材と前記供給用爪部材とは、前記固定側支持レール部や前記スライド側支持レール部のセグメント載置面に対して上下に進退可能に突出して設けられていると共に、前記エレクタ装置に向けた前記トンネル覆工体の軸方向前方側にセグメント当接面を有しており、且つ該セグメント当接面から前記トンネル覆工体の軸方向後方に向って下方に傾斜する傾斜部を備えていることで、軸方向後方から前記セグメントが前記傾斜部を乗り越えるようにして前記逆送防止用爪部材や前記供給用爪部材の上方を通過する際に、前記逆送防止用爪部材や前記供給用爪部材は、前記セグメント載置面より下方に没入するようになっているセグメント送込み装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
そして、本発明のセグメント送込装置は、前記固定側支持レール部や前記スライド側支持レール部の前記セグメント載置面に、摺動促進層が設けられていることが好ましい。
【0009】
また、本発明のセグメント送込み装置は、前記摺動促進層が、前記セグメント載置面に取り付けられたナイロンプレート又はテフロン(登録商標)シートによって形成されていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明のセグメント送込み装置は、前記逆送防止用爪部材や前記供給用爪部材が、前記スライド移動部のスライド方向と垂直な方向に延設する回転軸を中心に回転するプレート状金具からなり、前記セグメントが上方を通過していない状態で、前記セグメント当接面が前記セグメント載置面より上方に突出するように付勢されていることが好ましい。
【0011】
さらにまた、本発明のセグメント送込み装置は、前記スライド移動部が、油圧によって作動して前記トンネル覆工体の軸方向にスライド移動するようになっていることが好ましい。
【0012】
また、本発明のセグメント送込み装置は、前記シールド掘進機が、泥土圧式シールド掘進機となっており、前記スライド移動部を作動させる油圧を、スクリュウコンベアの油圧系統から得るようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセグメント送込み装置によれば、搬送台車によってシールド掘進機の後方まで搬送されてきたセグメントを、エレクタ装置の近傍まで送り込む際に、作業員の手作業を大幅に軽減できると共に、トンネルに勾配がある場合でもセグメントの逸送や滑動が生じるのを回避することができ、またセグメント同士の接触等が生じるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るセグメント送込み装置によって、シールド掘進機に設けられたエレクタ装置の近傍までセグメントを送り込む情況を説明する略示縦断面図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係るセグメント送込み装置の構成を説明する、一部を透視した状態で示す分解斜視図ある。
図3】逆送防止用爪部材及び供給用爪部材の構成を説明する拡大断面図である。
図4】セグメント送込み装置によってセグメントを送り込む工程を説明する、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
図5】セグメント送込み装置によってセグメントを送り込む工程を説明する、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
図6】セグメント送込み装置によってセグメントを送り込む工程を説明する、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
図7】セグメント送込み装置によってセグメントを送り込む工程を説明する、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
図8】セグメント送込み装置によってセグメントを送り込む工程を説明する、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
図9】セグメント送込み装置によってセグメントを送り込む工程を説明する、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
図10】セグメント送込み装置によってセグメントを送り込む工程を説明する、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
図11】セグメント送込み装置によってセグメントを送り込む工程を説明する、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
図12】セグメント送込み装置によってセグメントを送り込む工程を説明する、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい一実施形態に係るセグメント送込み装置10は、図1に示すように、例えば泥土圧式のシールド工法によるシールド工事において、シールド掘進機30に後続して形成されるトンネル覆工体31を構成するセグメント33を、搬送台車32によって搬送されて来たシールド掘進機30の後方の位置から、シールド掘進機30のスキンプレート34の内部に設けられた、セグメントをリング状に組み立てる装置であるエレクタ装置35の近傍まで、掘削土砂の排出装置36等との干渉を避けながら一ピースづつ送り込むための装置として採用されたものである。また、本実施形態のセグメント送込み装置10は、作業員の手作業によることなく、セグメント33を機械操作によって効率良く安全に送り込むことができるようになっていると共に、トンネルに勾配がある場合でもセグメント33の逸送や滑動が生じるのを防止できるようなっている。
【0016】
そして、本実施形態のセグメント送込み装置10は、例えば泥土圧式のシールド工法によるシールド工事において、シールド掘進機30に後続して形成されたセグメント33によるトンネル覆工体31の内部を経て、搬送台車32によってシールド掘進機30の後方まで搬送されてきたセグメント33を、スキンプレート34の内部に配置されたセグメント組立て用のエレクタ装置35の近傍まで送り込むための装置であって、図2にも示すように、トンネル覆工体31のインバート部31aに設置される固定ガイド部11と、固定ガイド部11に案内されてトンネル覆工体31の軸方向Xにスライド移動するスライド移動部12とからなる。
【0017】
固定ガイド部11は、円弧状の断面形状を備えるセグメント33の外周面の中央部分を挟んだ両側が載置されてセグメント33を摺動可能に支持する固定側支持レール部13を有すると共に、トンネル覆工体31の軸方向Xに所定の間隔をおいて、逆送防止用爪部材14を複数箇所に備えている。スライド移動部12は、円弧状の断面形状を備えるセグメント33の外周面の中央部分を挟んだ両側が載置されてセグメント33を摺動可能に支持するスライド側支持レール部15を有すると共に、トンネル覆工体31の軸方向Xに所定の間隔をおいて、供給用爪部材16を複数箇所に備えている。
【0018】
これらの逆送防止用爪部材14と供給用爪部材16とは、図3にも示すように、固定側支持レール部13やスライド側支持レール部15のセグメント載置面13a,15aに対して上下に進退可能に突出して設けられていると共に、エレクタ装置35に向けたトンネル覆工体31の軸方向Xの前方側にセグメント当接面14a,16aを有しており、且つこのセグメント当接面14a,16aからトンネル覆工体31の軸方向Xの後方に向って下方に傾斜する傾斜部14b,16bを備えていることで、軸方向Xの後方からセグメント33が傾斜部14b,16bを乗り越えるようにして逆送防止用爪部材14や供給用爪部材16の上方を通過する際に、逆送防止用爪部材14や供給用爪部材16は、セグメント載置面13a,15aより下方に没入するようになっている(図3の2点鎖線参照)。
【0019】
また、本実施形態では、固定側支持レール部13やスライド側支持レール部15のセグメント載置面13a,15aに、摺動促進層13b,15bが設けられている(図2参照)。
【0020】
さらに、本実施形態では、逆送防止用爪部材14や供給用爪部材16は、スライド移動部12のスライド方向でもあるトンネル覆工体31の軸方向Xと垂直又は略垂直な方向に延設する回転軸17を中心に回転するプレート状金具からなり、セグメント33が上方を通過していない状態で、セグメント当接面14a,16aがセグメント載置面13a,15aより上方に突出するように、例えばバネ18によって付勢された状態となっている(図3参照)。
【0021】
本実施形態では、シールド掘進機30は、内径が例えば2000〜3000mm程度のトンネル覆工体を形成することが可能な、好ましくは泥土圧式の、小口径や中口径のシールド掘進機となっている。シールド掘進機30は、外殻体を構成する円筒状のスキンプレート34の内部に、掘削土砂が充填収容される隔室37aを形成する隔壁37や、回転カッター38を回転駆動する駆動装置39や、シールドジャッキ40や、エレクタ装置35や、排出装置36を構成するスクリューコンベア36a、排泥管36b等を備えている。シールド掘進機30には、スキンプレート34の先端開口面を覆うようにして、回転カッター38が、隔壁37によって回転可能に支持された状態で設けられている。
【0022】
また、本実施形態では、シールド掘進機30に後続して形成されたトンネル覆工体31の内部には、敷設された軌道41に沿って走行可能な搬送台車32が設けられており、この搬送台車32によって、例えば発進立坑で積み込まれたセグメント33を、シールド掘進機30の後方まで、複数ピース同時に搬送できるようになっている。搬送されてきたセグメント33は、トンネル覆工体31の内部に設置された例えばホイスト式の搬送装置42によって、一ピースづつ吊り上げられて90°方向転換された後に、トンネル覆工体31のインバー部31aに排出装置36等との干渉を避けた状態で設置されたセグメント送込み装置10の上に、順次載置され、このセグメント送込み装置10を用いて、一ピースづつ、エレクタ装置35の近傍まで送り込まれることになる。
【0023】
そして、本実施形態では、セグメント送込み装置10は、上述のように、固定ガイド部11とスライド移動部12とからなり、トンネル覆工体31のインバー部31aに、掘削土砂の排出装置36等との干渉を避けた状態で設置されて、例えばホイスト式の搬送装置42によって一ピースづつ供給されるセグメント33を、エレクタ装置35の近傍まで順次送り込むようになっている。
【0024】
固定ガイド部11は、図2に示すように、例えば縦長矩形の平面形状を備える、セグメント33の軸方向Xの幅(長さ)L1の3倍以上の長さを有する鋼製のプレート状の部材であって、底面プレート部19と、底面プレート部19の両側の長辺に沿った側縁部に、当該長辺の全長に亘って各々設けられた、一対の固定側支持レール部13とを含んで構成されている。底面プレート部19の底面19aは、トンネル覆工体31のインバー部31aの湾曲形状に沿った、断面が円弧状の湾曲面となっている。
【0025】
固定側支持レール部13は、底面プレート部19の上面よりも段状に高く突出して設けられており、その上面は、セグメント載置面13aとなっている。セグメント載置面13aは、本実施形態では、セグメント33の外周面の湾曲形状に沿った、断面が円弧状の湾曲面となっている。またセグメント載置面13aには、爪用開口20が、セグメント33の軸方向Xの幅L1よりも僅かに大きな所定の間隔をおいて、固定側支持レール部13を長さ方向に略三等分割する位置に、各々2箇所に形成されている。これらの爪用開口20を介して、逆送防止用爪部材14が、セグメント載置面13aに対して上下に進退可能に突出して設けられる。固定側支持レール部13の内側は、好ましくは中空部分となっており、この中空部分に、逆送防止用爪部材14や回転軸17やバネ18が配置されている。
【0026】
本実施形態では、固定ガイド部11の底面プレート部19の上面における、両側の一対の固定側支持レール部13によって挟まれる凹状部分は、スライド移動部12のスライド移動を案内するガイド凹部21となっており、このガイド凹部21に、スライド移動部12が、スライド移動可能に収容される。ガイド凹部21には、両側の固定側支持レール部13の基端内側面に沿って、上面が平坦な面となった帯状走行プレート22が、固定側支持レール部13の全長に亘って延設して各々設けられている。この帯状走行プレート22の上面を、スライド移動部12の側面部に取り付けた走行車輪23が走行することで、スライド移動部12は、ガイド凹部21によって案内されて、トンネル覆工体31の軸方向Xにスムーズにスライド移動することが可能になる。
【0027】
また、本実施形態では、両側の固定側支持レール部13の上面のセグメント載置面13aには、各々、摺動促進層13bが設けられている。摺動促進層13bは、表面が滑り易くなる材料や部材として、好ましくはナイロンプレートやテフロン(登録商標)シートを用いて形成することができる。ナイロンプレートやテフロン(登録商標)シート等からなる摺動促進層13bは、これらをセグメント載置面13aに沿って敷設すると共に、接着したり固定したりすることによって容易に取り付けることができる。固定側支持レール部13のセグメント載置面13aに摺動促進層13bが設けられていることで、スライド移動部12を軸方向Xにスライド移動して、載置されたセグメント33をエレクタ装置35に向けて送り込む際に(図5図8図11参照)、セグメント33の外周面との間の摩擦力を軽減して滑らかに摺動させながら、固定側支持レール部13のセグメント載置面13aに沿って、セグメント33を前方に容易に移動させることが可能になる。
【0028】
なお、固定ガイド部11には、当該固定ガイド部11をトンネル覆工体31のインバー部31aに固定するための、ボルト定着孔等による固定手段適宜の位置に設けられている。
【0029】
スライド移動部12は、例えば縦長矩形の平面形状を備える、セグメント33の軸方向Xの幅(長さ)L1の3倍以上の長さを有する鋼製のプレート状の部材であって、底面プレート部24と、底面プレート部24の両側の長辺に沿った側縁部に、当該長辺の全長に亘って各々設けられた、一対のスライド側支持レール部15とを含んで構成されている。底面プレート部24の底面24aは、平坦な面となっている。
【0030】
スライド側支持レール部15は、底面プレート部24の上面よりも段状に高く突出して設けられており、その上面は、セグメント載置面15aとなっている。セグメント載置面15aは、本実施形態では、セグメント33の外周面の湾曲形状に沿った、断面が円弧状の湾曲面となっている。またスライド側支持レール部15のセグメント載置面15aは、同じように断面が円弧状の湾曲面となっている固定側支持レール部13のセグメント載置面13aと共に、同心円弧状の湾曲面を形成している。これによって、セグメント送込み装置10の上に載置されるセグメント33は、固定側支持レール部13とスライド側支持レール部15とが並設される部分では、固定側支持レール部13のセグメント載置面13aとスライド側支持レール部15のセグメント載置面15aとに跨って、これらの上に同時に載置されることが可能になる。
【0031】
さらに、セグメント載置面15aには、爪用開口20が、セグメント33の軸方向Xの幅L1よりも僅かに大きな所定の間隔をおいて、スライド側支持レール部15を長さ方向に略三等分割する位置に、各々2箇所に形成されている。これらの爪用開口20を介して、供給用爪部材16が、セグメント載置面15aに対して上下に進退可能に突出して設けられる。スライド側支持レール部15の内側は、好ましくは中空部分となっており、この中空部分に、供給用爪部材16や回転軸17やバネ18が配置されている。
【0032】
本実施形態では、スライド移動部12の両側のスライド側支持レール部15の外側の側面部には、軸方向Xに所定の間隔をおいて、走行車輪23が、複数箇所に各々取り付けられている。これらの走行車輪23が、固定ガイド部11のガイド凹部21の両側に設けられた帯状走行プレート22の上面を走行することで、スライド移動部12は、ガイド凹部21によって案内されて、トンネル覆工体31の軸方向Xにスムーズにスライド移動することが可能になる。
【0033】
また、本実施形態では、スライド移動部12の両側のスライド側支持レール部15の後端部には、軸方向Xの後側に配置された供給用爪部材16との間に、セグメント33の軸方向Xの幅L1よりも僅かに大きな所定の間隔をおいて、押込み支持台25が、セグメント載置面15aから上方に突出して各々設けられている。これらの押込み支持台25をセグメント33の後端面に当接させることによって、当該押込み支持台25と後側の供給用爪部材16との間に配置されるセグメント33を、スライド移動部12の前方へのスライド移動に伴って、エレクタ装置35に向けて押し込むことができるようになっている。
【0034】
さらに、本実施形態では、両側のスライド側支持レール部15の上面のセグメント載置面15aには、各々、固定側支持レール部13のセグメント載置面13aと同様に、摺動促進層15bが設けられている。スライド側支持レール部15のセグメント載置面15aに摺動促進層15bが設けられていることで、スライド移動部12を軸方向Xにスライド移動した後に、送り込んだセグメント33を固定側支持レール部13のセグメント載置面13aに載置させた状態のまま、スライド移動部12のみを固定ガイド部11側に引き戻す際に(図6図9図12参照)、、セグメント載置面15aとセグメント33の外周面との間の摩擦力を軽減して滑らかに摺動させながら、スライド移動部12のみを、固定ガイド部11側に容易にスライド移動させることが可能になる。
【0035】
なお、スライド移動部12には、例えば底面プレート部24の下方に配置されて、スライド移動部12を固定ガイド部11に対してスライド移動させるための、各種の駆動機構が設けられている。
【0036】
ここで、スライド移動部12の駆動機構は、油圧によって作動してスライド移動部12をトンネル覆工体31の軸方向Xにスライド移動させるものとなっていることが好ましい。本実施形態では、シールド掘進機30は、泥土圧式のシールド掘進機となっており(図1参照)、またエレクタ装置35によってセグメント33を組み立ててトンネル覆工体31を形成する工程では、シールド掘進機30の例えばスクリューコンベア36aは、作動させる必要はないので、セグメント33の組立て時にスライド移動部12の駆動機構を作動させる油圧を、スクリューコンベア36aの油圧系統から得ることが可能になって、油圧ポンプ等を新たに設けることなく、スライド移動部12を効率良く駆動することが可能になる。
【0037】
上述の構成を備える本実施形態のセグメント送込み装置10によれば、以下のようにして、トンネル覆工体31を形成するためのセグメント33を、シールド掘進機30の後方から、エレクタ装置35に向けて、1ピースづつ順次容易に送り込むことができる。
【0038】
すなわち、本実施形態では、図1に示すように、一部がシールド掘進機30のスキンプレート34の内部に形成されている、トンネル覆工体31の先端部分のインバー部31aにおいて、セグメント送込み装置10を、排出装置36等との干渉を避けつつ、エレクタ装置35の近傍から排出装置36をかわした位置まで後方に延設させた状態で、固定ガイド部11をインバー部31aに固定することで、当該セグメント送込み装置10を排出装置36等の下方のインバー部31aに設置する。
【0039】
しかる後に、図4(a)、(b)に示すように、スライド移動部12を固定ガイド部11の軸方向Xの後端部まで後退させた状態で、ホイスト式の搬送装置42によって吊り上げられて1ピースづつ搬送されてきたセグメント33を、これの軸方向をトンネル覆工体31の軸方向Xに沿わせると共に、円弧状の外周面を、固定ガイド部11の固定側支持レール部13のセグメント載置面13a及びスライド移動部12のスライド側支持レール部15の載置面15aに載置して、セグメント送込み装置10における、軸方向Xの後側に配置された逆送防止用爪部材14及び供給用爪部材16と、スライド側支持レール部15の後端部の押込み支持台25との間の部分に設置する。
【0040】
次に、図5(a)、(b)に示すように、スライド移動部12を固定ガイド部11に対して、当該スライド移動部12の1/3程度の長さ分、軸方向Xの前方にスライド移動させることにより、セグメント33を、後端面に押込み支持台25を当接させつつ、固定ガイド部11の固定側支持レール部13における、後側の逆送防止用爪部材14と前側の逆送防止用爪部材14との間の部分まで前進させる。このようにしてセグメント33を前進させる際に、セグメント33は、固定側支持レール部13のセグメント載置面13aに、外周面を摺動させながら移動してゆくことになる。
【0041】
また、セグメント33は、固定側支持レール部13に沿って前進してゆく際に、セグメント載置面13aから上方に突出する後側の逆送防止用爪部材14を通過することになるが、セグメント33は、軸方向Xの後方から傾斜部14bを乗り越えるようにして、逆送防止用爪部材14の上方を通過することになるので、逆送防止用爪部材14は、セグメント33の重量によってセグメント載置面13aより下方に没入することになる(図3参照)。これによって、セグメント33の摺動を逆送防止用爪部材14によって阻害することなく、セグメント33をセグメント載置面13aに沿ってスムーズに前進させることが可能になる。セグメント33が通過した後、逆送防止用爪部材14は、例えばバネ18の付勢力によって、セグメント載置面13aから突出する状態に復帰する。
【0042】
次に、図6(a)、(b)に示すように、スライド移動部12を固定ガイド部11に対して、軸方向Xの後方にスライド移動させることにより、前進させたセグメント33を残置したまま、スライド移動部12のみを固定ガイド部11の軸方向Xの後端部まで後退させる。このようにしてスライド移動部12のみを後退させる際に、スライド側支持レール部15のセグメント載置面15aは、前進させたセグメント33を固定側支持レール部13のセグメント載置面13aに載置した状態のまま、セグメント33の外周面に沿って摺動しながら後方にスライド移動してゆくことになる。
【0043】
ここで、スライド移動部12を固定ガイド部11に対して軸方向Xの後方にスライド移動させる際に、セグメント33が、スライド側支持レール部15のセグメント載置面15aとの摩擦力によって、セグメント載置面15aに載置された状態のまま、スライド移動部12と共に後方に移動しようとした場合でも、セグメント33の後端面が、固定側支持レール部13のセグメント載置面13aから突出する状態に復帰した、逆送防止用爪部材14のセグメント当接面14aに当接することで、後方への移動が阻止されて、セグメント33は、逆送りされることなく、固定側支持レール部13の後側の逆送防止用爪部材14と前側の逆送防止用爪部材14との間の部分に残置された状態を保持することになる。
【0044】
また、スライド側支持レール部15のセグメント載置面15aから突出する後側の供給用爪部材16は、スライド移動部12が軸方向Xの後方にスライド移動する際に、残置されたセグメント33の端面と干渉することになるが、スライド移動部12の軸方向Xの後方へのスライド移動に伴って、残置されたセグメント33は、軸方向Xの後方から後側の供給用爪部材16の傾斜部16bを乗り越えるようにして、供給用爪部材16の上方を通過することになるので、供給用爪部材16は、セグメント33の重量によってセグメント載置面15aより下方に没入することになる(図3参照)。これによって、セグメント載置面15aの摺動を供給用爪部材16によって阻害することなく、スライド移動部12を後退さることが可能になる。セグメント33を通過した後、供給用爪部材16は、例えばバネ18の付勢力によって、セグメント載置面15aから突出する状態に復帰する。
【0045】
次に、図7(a)、(b)に示すように、スライド移動部12を固定ガイド部11の軸方向Xの後端部まで後退させた状態で、セグメント送込み装置10における、残置されたセグメント33の後方の、軸方向Xの後側に配置された逆送防止用爪部材14及び供給用爪部材16と、スライド側支持レール部15の後端部の押込み支持台25との間の部分に、ホイスト式の搬送装置42によって吊り上げられて1ピースづつ搬送されてきたセグメント33を、固定側支持レール部13のセグメント載置面13a及びスライド側支持レール部15の載置面15aに載置することで設置する。
【0046】
次に、図8(a)、(b)に示すように、スライド移動部12を固定ガイド部11に対して、当該スライド移動部12の1/3程度の長さ分、軸方向Xの前方にスライド移動させることにより、2ピースのセグメント33を、後端面に後側の供給用爪部材16のセグメント当接面16aや押込み支持台25を当接させつつ、固定ガイド部11の固定側支持レール部13における前側の逆送防止用爪部材14よりも前方側の部分や、前側の逆送防止用爪部材14と後側の逆送防止用爪部材14の間の部分まで前進させる。このようにして2ピースのセグメント33を同時に前進させる際に、各々のセグメント33は、固定側支持レール部13のセグメント載置面13aに、外周面を摺動させながら移動してゆくことになる。
【0047】
また、2ピースのセグメント33は、固定側支持レール部13に沿って前進してゆく際に、セグメント載置面13aから上方に突出する前側や後側の逆送防止用爪部材14を通過することになる。2ピースのセグメント33は、上述と同様に、軸方向Xの後方から傾斜部14bを乗り越えるようにして、前側や後側の逆送防止用爪部材14の上方を通過することになるので、これらの逆送防止用爪部材14は、セグメント33の重量によってセグメント載置面13aより下方に没入することになる(図3参照)。これによって、2ピースのセグメント33の摺動を逆送防止用爪部材14によって阻害することなく、各々のセグメント33をセグメント載置面13aに沿って前進させることが可能になる。セグメント33が通過した後、各々の逆送防止用爪部材14は、例えばバネ18の付勢力によって、セグメント載置面13aから突出する状態に復帰する。
【0048】
次に、図9(a)、(b)に示すように、スライド移動部12を固定ガイド部11に対して、軸方向Xの後方にスライド移動させることにより、前進させた2ピースのセグメント33を残置したまま、スライド移動部12のみを固定ガイド部11の軸方向Xの後端部まで後退させる。このようにしてスライド移動部12のみを後退させる際に、スライド側支持レール部15のセグメント載置面15aは、前進させた2ピースセグメント33を固定側支持レール部13のセグメント載置面13aに各々載置した状態のまま、これらのセグメント33の外周面に沿って摺動しながら後方にスライド移動してゆくことになる。
【0049】
ここで、スライド移動部12を固定ガイド部11に対して軸方向Xの後方にスライド移動させる際に、各々のセグメント33が、スライド側支持レール部15のセグメント載置面15aとの摩擦力によって、セグメント載置面15aに載置された状態のまま、スライド移動部12と共に後方に移動しようとした場合でも、これらのセグメント33の後端面が、固定側支持レール部13のセグメント載置面13aから突出する状態に復帰した、前側や後側の逆送防止用爪部材14のセグメント当接面14aに当接することで、後方への移動が阻止されて、2ピースのセグメント33は、逆送りされることなく、固定側支持レール部13の前側の逆送防止用爪部材14よりも前方側の部分や、前側の逆送防止用爪部材14と後側の逆送防止用爪部材14の間の部分に残置された状態を保持することになる。
【0050】
また、スライド側支持レール部15のセグメント載置面15aから突出する前側及び後側の供給用爪部材16は、スライド移動部12が軸方向Xの後方にスライド移動する際に、残置された2ピースのセグメント33の端面と各々干渉することになるが、スライド移動部12の軸方向Xの後方へのスライド移動に伴って、残置された各々のセグメント33は、軸方向Xの後方から前側や後側の供給用爪部材16の傾斜部16bを乗り越えるようにして、供給用爪部材16の上方を各々通過することになるので、こられの供給用爪部材16は、セグメント33の重量によってセグメント載置面15aより下方に没入することになる(図3参照)。これによって、セグメント載置面15aの摺動を供給用爪部材16によって阻害することなく、スライド移動部12を後退さることが可能になる。セグメント33を通過した後、各々の供給用爪部材16は、例えばバネ18の付勢力によって、セグメント載置面15aから突出する状態に復帰する。
【0051】
次に、図10(a)、(b)に示すように、スライド移動部12を固定ガイド部11の軸方向Xの後端部まで後退させた状態で、セグメント送込み装置10における、残置された2ピースのセグメント33の後方の、軸方向Xの後側に配置された逆送防止用爪部材14及び供給用爪部材16と、スライド側支持レール部15の後端部の押込み支持台25との間の部分に、ホイスト式の搬送装置42によって吊り上げられて1ピースづつ搬送されてきたセグメント33を、固定側支持レール部13のセグメント載置面13a及びスライド側支持レール部15の載置面15aに載置することで設置する。
【0052】
次に、図11(a)、(b)に示すように、スライド移動部12を固定ガイド部11に対して、当該スライド移動部12の1/3程度の長さ分、軸方向Xの前方にスライド移動させることにより、3ピースのセグメント33を、後端面に前側の供給用爪部材16のセグメント当接面16aや後側の供給用爪部材16のセグメント当接面16aや押込み支持台25を当接させつつ、固定ガイド部11よりも前方に張り出した、エレクタ装置35の周方向の軌道の直下部分や(図1参照)、固定ガイド部11の固定側支持レール部13における前側の逆送防止用爪部材14よりも前方側の部分や、前側の逆送防止用爪部材14と後側の逆送防止用爪部材14の間の部分まで前進させる。このようにして3ピースのセグメント33を同時に前進させる際に、各々のセグメント33は、固定側支持レール部13のセグメント載置面13aに、外周面を摺動させながら移動してゆくことになる。
【0053】
また、3ピースのセグメント33が固定側支持レール部13に沿って前進してゆく際に、後方の2ピースのセグメント33は、セグメント載置面13aから上方に突出する前側や後側の逆送防止用爪部材14を通過することになる。後方の2ピースのセグメント33は、上述と同様に、軸方向Xの後方から傾斜部14bを乗り越えるようにして、前側や後側の逆送防止用爪部材14の上方を通過することになるので、これらの逆送防止用爪部材14は、セグメント33の重量によってセグメント載置面13aより下方に没入することになる(図3参照)。これによって、後方の2ピースのセグメント33の摺動を逆送防止用爪部材14によって阻害することなく、各々のセグメント33をセグメント載置面13aに沿って前進させることが可能になる。セグメント33が通過した後、各々の逆送防止用爪部材14は、例えばバネ18の付勢力によって、セグメント載置面13aから突出する状態に復帰する。
【0054】
上述のようにして同時に前進した3ピースのセグメント33のうち、前端部に位置する、固定ガイド部11よりも前方に張り出した部分に配置されたセグメント33は、エレクタ装置35の近傍として、エレクタ装置35の周方向の軌道の直下部分に送り込まれることになるので、送り込まれた前端部のセグメ33を、エレクタ装置35によって把持することで、トンネル覆工体31の組立作業を容易に且つスムーズに行うことが可能になる。
【0055】
セグメント33をエレクタ装置35によって把持したら、スライド移動部12を固定ガイド部11に対して、軸方向Xの後方にスライド移動させることにより、残りの2ピースのセグメント33を残置したまま、図12(a)、(b)に示すように、スライド移動部12のみを固定ガイド部11の軸方向Xの後端部まで後退させる。これによって、セグメント送込み装置10は、図9(a)、(b)と同様に、軸方向Xの後側に配置された逆送防止用爪部材14及び供給用爪部材16と、スライド側支持レール部15の後端部の押込み支持台25との間の部分に、ホイスト式の搬送装置42によって吊り上げられて1ピースづつ搬送されてきたセグメント33を設置することが可能な状態になるので、以後、図10(a)、(b)〜図12(a)、(b)に示す工程を繰り返すことで、エレクタ装置35の近傍にセグメント33を1ピースづつ順次スムーズに送り込みながら、トンネル覆工体31をリング状に効率良く組み立てて行くことが可能になる。
【0056】
ここで、トンネル覆工体31をリング状に組み立てて行く際に、最後に組み付けられるセグメントであるKセグメントは、他のセグメント33よりも周方向の長さが短い、異なる形状のセグメントとなっているが、Kセグメントの後端面に、例えば他のセグメントの断面形状と略同様の形状を有する押込治具を、着脱可能に一体として取り付けておくことにより、この押込治具に、スライド側支持レール部15の押込み支持台25や供給用爪部材16のセグメント当接面16aを当接させることで、他のセグメント33と同様に、Kセグメントを、セグメント送込み装置10によって、シールド掘進機30の後方から、エレクタ装置35の近傍まで、容易に送り込むことができる。
【0057】
そして、上述の構成を備える本実施形態のセグメント送込み装置10によれば、搬送台車32によってシールド掘進機30の後方まで搬送されてきたセグメント33を、エレクタ装置35の近傍まで送り込む際に、作業員の手作業を大幅に軽減することが可能になると共に、トンネルに勾配がある場合でもセグメント33の逸送や滑動が生じるのを回避することが可能になり、またセグメント33同士の接触等が生じるのを回避することが可能になる。
【0058】
すなわち、本実施形態によれば、セグメント送込み装置10は、トンネル覆工体31のインバート部31aに設置される固定ガイド部11と、トンネル覆工体31の軸方向Xにスライド移動するスライド移動部12とからなり、固定ガイド部11は、セグメント33を摺動可能に支持する固定側支持レール部13を有すると共に、逆送防止用爪部材14を備えており、スライド移動部12は、セグメント33を摺動可能に支持するスライド側支持レール部15を有すると共に、トンネル覆工体31の軸方向Xに所定の間隔をおいて、供給用爪部材16を備えている。また、逆送防止用爪部材14と供給用爪部材16とは、固定側支持レール部13やスライド側支持レール部15のセグメント載置面13a,15aに対して上下に進退可能に突出して設けられていると共に、前方側のセグメント当接面14a,16aと、後方に向って下方に傾斜する傾斜部14b,16bを備えており、後方からセグメント33が傾斜部14b,16bを乗り越えるようにして逆送防止用爪部材14や供給用爪部材16の上方を通過する際に、逆送防止用爪部材14や供給用爪部材16は、セグメント載置面13a,15aより下方に没入するようになっている。
【0059】
これらによって、本実施形態によれば、上述の工程にしたがって、搬送装置42によって1ピースづつ搬送されてきたセグメント33を、セグメント送込み装置10の所定の位置に順次供給しつつ、スライド移動部12を固定ガイド部11に対して前進させたり後退させたりするだけの簡単な機械操作によって、作業員の手作業によることなく、セグメント33を1ピースづつ、エレクタ装置35の近傍まで、効率良く安全に送り込むことが可能になる。
【0060】
また、本実施形態によれば、スライド移動部12を固定ガイド部11に対して前方にスライド移動することで前進したセグメント33は、固定側支持レール部13のセグメント載置面13aから突出する逆送防止用爪部材14のセグメント当接面14aに当接することで、後方への移動が阻止されるので、スライド移動部12を固定ガイド部11に対して後方に後退させる際のセグメント33の逆送りを回避できることに加えて、トンネルに勾配がある場合でも、セグメント33に逸送や滑動が生じるのを、逆送防止用爪部材14によって阻止して確実に回避することが可能になる。
【0061】
さらに、本実施形態によれば、セグメント送込み装置10に載置されるセグメント33は、所定の間隔をおいて配置された逆送防止用爪部材14や供給用爪部材16によって区画された、固定側支持レール部13やスライド側支持レール部15のセグメント載置面13a,15aの3箇所の領域に並べて設置されるので、隣接するセグメント33の間に逆送防止用爪部材14や供給用爪部材16が介在することで、これらのセグメント33の接触が回避されることになって、当該セグメント送込み装置10を用いてセグメントを送り込む際に、セグメント33同志の接触によりセグメント33に割れや欠けが生じて品質が低下するのを、確実に回避することが可能になる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、固定ガイド部やスライド移動部は、プレート状の部材である必要は必ずしも無く、枠状の部材等であっても良い。固定ガイド部やスライド移動部に設けられる逆送防止用爪部材や供給用爪部材は、トンネル覆工体の軸方向に所定の間隔をおいて、各々2箇所に設ける必要は必ずしも無く、送り出すセグメントのピース数等に応じて、軸方向に所定の間隔をおいて各々3箇所以上に設けることもできる。逆送防止用爪部材や供給用爪部材は、固定側支持レール部やスライド側支持レール部のセグメント載置面に爪用開口を形成して、この爪用開口を介して上下に進退可能に突出させる必要は必ずしも無く、逆送防止用爪部材や供給用爪部材を、固定側支持レール部やスライド側支持レール部に隣接して設けて、進退可能にセグメント載置面よりも突出させることもできる。
【0063】
また、固定ガイド部の固定側支持レール部の内側に、スライド移動部のスライド側支持レール部を設ける必要は必ずしも無く、固定ガイド部の固定側支持レール部の外側に、スライド移動部のスライド側支持レール部を設けることもできる。固定側支持レール部やスライド側支持レール部は、固定ガイド部やスライド移動部の両側に一対設けられている必要は必ずしも無く、スライド移動部がスライド移動可能な状態で1本又は3本以上設けられていても良い。
【0064】
さらに、シールド掘進機は、泥土圧式シールド掘進機である必要は必ずしも無く、泥水式シールド掘進機等であって良い。スライド移動部は、油圧以外のその他の駆動機構によって作動するものであっても良く、固定側支持レール部やスライド側支持レール部のセグメント載置面に、摺動促進層を設ける必要は必ずも無い。逆送防止用爪部材や供給用爪部材は、ばね以外の付勢手段によってセグメント載置面より上方に突出するように付勢されていても良く、例えば自重の作用によって上方に突出するように付勢されていても良い。
【符号の説明】
【0065】
10 セグメント送込み装置
11 固定ガイド部
12 スライド移動部
13 固定側支持レール部
13a,15a セグメント載置面
13b,15b 摺動促進層
14 逆送防止用爪部材
14a,16a セグメント当接面
14b,16b 傾斜部
15 スライド側支持レール部
16 供給用爪部材
17 回転軸
18 バネ
25 押込み支持台
30 シールド掘進機
31 トンネル覆工体
31a インバート部
32 搬送台車
33 セグメント
34 スキンプレート
35 エレクタ装置
36 掘削土砂の排出装置
36a スクリューコンベア
X トンネル覆工体の軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12