(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
凹型とそれを保持する凹型ハウジングとを有し、凹型の背面側において凹型ハウジング内に凹型チャンバを形成した凹型ユニットと、凸型とそれを保持する凸型ハウジングとを有し、凸型の背面側において凸型ハウジング内に凸型チャンバを形成した凸型ユニットとを備え、
前記凹型を凹型ハウジングに片持ち状に支持して、前記凹型と凹型ハウジング間に凸型ユニット側へ向けて開口する正面開口部を形成し、前記凹型と凸型とを組み合わせた状態で、前記正面開口部を凸型ユニットで閉鎖して、前記凹型チャンバを気密状となした、凹型と凸型とで形成される成形空間内に、発泡性樹脂粒子を充填し、成形空間内において発泡性樹脂粒子を加熱、発泡融着させて成形品を得るようになした型内発泡成形用金型装置であって、
前記凹型ハウジングが、凹型を取り囲むように設けた凹型フレームと、凹型フレームの背面側の開口を閉鎖する凹型固定板と、凹型固定板に凹型を片持ち状に固定する凹型固定部材とを有し、前記凹型と凹型フレーム間に凸型ユニット側へ向けて開口する正面開口部を形成したものであり、
凹型固定部材の一部に、型の開閉方向に伸縮する弾性体を組み込むことを特徴とする、型内発泡成形用金型装置。
【背景技術】
【0002】
発泡成形品の成形技術として、ポリスチレンやポリプロピレンおよびポリエチレンなどの熱可塑性合成樹脂材料からなる発泡性樹脂粒子を、成形空間内に充填し、これを蒸気などにより、加熱、発泡融着させてから冷却し、所望形状の発泡成形品を得るように構成した、型内発泡成形装置が広く知られている。
【0003】
前記型内発泡成形装置の金型装置としては、凹型とそれを保持する凹型ハウジングとを有する凹型ユニットと、凸型とそれを保持する凸型ハウジングとを有する凸型ユニットとを備えたものが広く採用されている。凹型ハウジングとしては、凹型を取り囲むように設けた角筒状の凹型フレームと、凹型フレームの背面側の開口を閉鎖する凹型固定板と、凹型の正面側の端部を保持すると共に、凹型と凹型フレーム間に形成される開口を閉鎖する凹型センタープレートとを有し、凹型の背面側において凹型ハウジング内に、蒸気や冷却水を供給するための凹型チャンバを形成したものが広く採用されている。また、凸型ハウジングとしては、凸型を取り囲むように設けた角筒状の凸型フレームと、凸型フレームの背面側の開口を閉鎖する凸型固定板と、凸型の背面側の端部を保持すると共に、凸型と凸型フレーム間に形成される開口を閉鎖する凸型センタープレートとを有し、凸型の背面側において凸型ハウジング内に、蒸気や冷却水を供給するための凸型チャンバを形成したものが広く採用されている。
【0004】
また、凸型固定板または凹型固定板には、発泡性樹脂粒子を充填する為の充填器が取り付けられ、凸型ハウジングおよび凹型ハウジングには、凸型チャンバおよび凹型チャンバへ蒸気を供給する為の蒸気配管や冷却水を供給する為の冷却水配管がそれぞれ接続され、両ハウジングの下部には、ドレン管がそれぞれ接続されている。
【0005】
そして、成形品の成形時には、凸型チャンバや凹型チャンバに供給した蒸気により、成形空間内に充填した発泡性樹脂粒子を加熱し、凸型チャンバや凹型チャンバの背面側に噴き付けた冷却水により、成形品を冷却することになるが、成形時における加熱や冷却は、発泡性樹脂粒子だけでなく、加熱や冷却を必要としない成形型やハウジング、充填器やエジェクターピン、蒸気配管や冷却水配管についても行なわれるので、多くのエネルギーを無駄に消費するという問題があった。
【0006】
そこで、金型全体を加熱するのではなく、成形型のみを局部的に加熱して、蒸気使用量を節減することにより、省エネルギー化を図った金型装置も種々提案され、実用化されている。
例えば、複数個取り用の成形金型のうちの個々の金型ないしは複数個の金型毎に、独立した蒸気室を備えてなる発泡成形装置(例えば、特許文献1参照)や、コア型およびキャビティ型の成形空間とは反対の背面側を取り囲む外装部材を設け、コア型およびキャビティ型毎に独立する蒸気室を個別に形成した発泡成形装置(例えば、特許文献2参照)も提案されている。
【0007】
しかし、特許文献1記載の発明では、凸型の背面側の蒸気室を仕切る仕切板を設ける必要があり、また、特許文献2記載の発明では、コア型およびキャビティ型の成形空間とは反対側の背面側を取り囲む外装部材を設ける必要があり、既存の金型装置への適用が困難である。しかも、これらの発明では、金型装置を構成する部品点数が増加するので、金型装置の製作コストが高くなると共に、金型装置の熱容量が増えて、加熱や冷却に要するエネルギー消費量がその分増大するという問題があった。
【0008】
そこで、特許文献3では、凹型を、凹型固定部材を用いて凹型ハウジングに片持ち状に支持して、前記凹型と凹型ハウジング間に凸型ユニット側へ向けて開口する正面開口部を形成し、前記凹型と凸型とを組み合わせた状態で、前記正面開口部を凸型ユニットで閉鎖して、前記凹型チャンバを気密状となしたものとすることにより、凹型ユニットのセンタープレートを省略でき、金型装置の熱容量を少なくしたものが提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献3の装置では、凹型と凹型固定部材が固着されている為、変形力(例えば、成形加熱時の熱による線膨張)に対して全く動くことができず、応力を逃がすことができない為、応力が集中して、破損しやすい点で改善の余地がある。
【0010】
一方、更に金型装置の熱容量を少なくする方法としては、凹型と凸型そのものの肉厚を薄くする方法が考えられる。しかしながら、耐久性の面から、肉厚を薄くできないのが現状であり、耐久性不足の理由としては、加熱時に金型の線膨張によって凹型と凸型が押し合うことで、高い応力が発生すると考えられる。
線膨張により発生する応力を低減させる技術は、未だ開発されていない。
【0011】
特許文献4には、上下方向に開閉するキャビティ型を有する金型装置において、コア型である凸型が弾性固定部材を用いて蒸気室壁(凸型ハウジング)に設置され、凸型ユニットにおいてセンタープレートが省略されている金型装置が開示されている。
【0012】
しかしながら、弾性固定部材が保護されずに、そのまま設置されている為、型開閉方向以外の力が加わると、不必要に変形する欠点が生じる。そのため、特許文献4の金型装置は、特許文献4に記載されているような型開閉方向と重力方向一致する成形機(縦型成形機)にしか適用できないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、特許文献3での凹型ユニットにおけるセンタープレートを省略した金型装置において、加熱によって発生する線膨張によって凹型と凸型が押し合う力を逃がすことにより、凹型と凸型の肉厚を薄くすることを可能とし、更に金型装置の熱容量を少なくして、大幅な省エネルギー化を実現できる型内発泡成形用金型装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、特許文献3での凹型ユニットにおけるセンタープレートを省略した金型装置において、凹型を凹型ハウジングに片持ち状に支持する凹型固定部材に弾性体を組み込むことにより、加熱によって発生する線膨張によって凹型と凸型が押し合う力を弾性体が収縮することで逃がすことができ、凹型と凸型に高い応力を発生させないことが可能となり、凹型と凸型の肉厚を薄くすることができ、結果として、金型装置の熱容量を少なくなり、大幅な省エネルギー化を実現できることを見出した。
【0016】
上記弾性体としては、金属バネであることが、弾性体自体の腐食に対する耐久性の面から、好ましい。また、上記金属バネの材質としてはSUS鋼であることが、腐食に対する耐久性の面から、より好ましい。
【0017】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
[1]凹型とそれを保持する凹型ハウジングとを有し、凹型の背面側において凹型ハウジング内に凹型チャンバを形成した凹型ユニットと、凸型とそれを保持する凸型ハウジングとを有し、凸型の背面側において凸型ハウジング内に凸型チャンバを形成した凸型ユニットとを備え、
前記凹型を凹型ハウジングに片持ち状に支持して、前記凹型と凹型ハウジング間に凸型ユニット側へ向けて開口する正面開口部を形成し、前記凹型と凸型とを組み合わせた状態で、前記正面開口部を凸型ユニットで閉鎖して、前記凹型チャンバを気密状となした、凹型と凸型とで形成される成形空間内に、発泡性樹脂粒子を充填し、成形空間内において発泡性樹脂粒子を加熱、発泡融着させて成形品を得るようになした型内発泡成形用金型装置であって、
前記凹型ハウジングが、凹型を取り囲むように設けた凹型フレームと、凹型フレームの背面側の開口を閉鎖する凹型固定板と、凹型固定板に凹型を片持ち状に固定する凹型固定部材とを有し、前記凹型と凹型フレーム間に凸型ユニット側へ向けて開口する正面開口部を形成したものであり、
凹型固定部材の一部に、型の開閉方向に伸縮する弾性体を組み込むことを特徴とする、型内発泡成形用金型装置。
[2]弾性体が金型開閉方向以外に変形しないように、弾性体を保護する金属部材を備えることを特徴とする、[1]に記載の型内発泡成形用金型装置。
[3]上記弾性体が金属バネであることを特徴とする、[1]または[2]に記載の型内発泡成形用金型装置。
[4]上記金属バネの材質が、SUS鋼であることを特徴とする、[3]に記載の型内発泡成形用金型装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る型内発泡成形用金型装置によれば、特許文献3での凹型ユニットにおけるセンタープレートを省略した金型装置において、凹型を凹型ハウジングに片持ち状に支持する凹型固定部材に弾性体を組み込むことにより、加熱によって発生する線膨張によって凹型と凸型が押し合う力を弾性体が収縮することで逃がすことができ、凹型と凸型に高い応力を発生させないことが可能となり、凹型と凸型の肉厚を薄くすることができ、結果として、金型装置の熱容量を少なくなり、大幅な省エネルギー化を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
本発明に係る型内発泡成形用金型装置は、特許文献3(特開2010−120336)での凹型ユニットのセンタープレートを省略した金型装置において、凹型を凹型ハウジングに片持ち状に支持する為に使用する凹型固定部材の一部に型開閉方向に伸縮する弾性体を組み込んだものである。
【0022】
まず、特許文献3(特開2010−120336)に示される、凹型ユニットのセンタープレートを省略してなる金型装置に関して、説明する。
【0023】
図1、
図2に示すように、特許文献3(特開2010−120336)の第1形態の型内発泡成形用金型装置1は、凹型11とそれを保持する凹型ハウジング12とを有する凹型ユニット10と、凸型21とそれを保持する凸型ハウジング22とを有する凸型ユニット20とを備え、両ユニット10、20を組み合わせて、凹型11と凸型21とで形成される成形空間2内に発泡性樹脂粒子を充填し、成形空間2内において発泡性樹脂粒子を加熱、発泡融着させて成形品を得るようになしたものである。
【0024】
凹型11および凸型21は、成形品の加熱、冷却が円滑になされるように、低比熱で熱伝導率の高い素材、例えばアルミニウム合金からなる鋳物で構成され、通常は、耐久性の面から肉厚は15mm程度のものが多い。両ハウジング12、22は、金型装置1の製作コストを安くすると共に、強度剛性を十分に確保するため、鉄系金属で構成されている。
【0025】
凹型ハウジング12は、凹型11を取り囲むように設けた角筒状の凹型フレーム13と、凹型フレーム13の背面側の開口を閉鎖する凹型固定板14と、凹型固定板14に凹型11を片持ち状に固定支持する棒状の固定部材15とを有し、凹型11の背面側において凹型ハウジング12内に凹型チャンバ16が形成されている。凹型11は、その開口側を正面側(凹型11と凸型21の合せ面側)へ向けて固定部材15を介して凹型固定板14に片持ち状に固定支持され、凹型11の正面側端部11aは遊端に構成されている。つまり、従来の金型装置1では、
図2に仮想線で示すように、凹型11の正面側端部11aはセンタープレート30を介して凹型フレーム13に固定されているが、特許文献3(特開2010−120336)の第1形態の金型装置1は、センタープレート30が省略されて、凹型11の正面側端部11aは遊端に構成されている。
【0026】
凸型ハウジング22は、凸型21を取り囲むように設けた角筒状の凸型フレーム23と、凸型フレーム23の背面側の開口を閉鎖する凸型固定板24と、凸型固定板24に凸型21を固定支持する棒状の固定部材25と、凸型21の背面側の端部を凸型フレーム23に固定するセンタープレート27とを有し、凸型21の開口に対応させてセンタープレート27には開口部27bが形成され、凸型21及びセンタープレート27の背面側において凸型ハウジング22内には凸型チャンバ26が形成されている。
【0027】
凹型11と凸型21とを組み合わせた状態で、凹型ユニット10の正面開口部17は、凸型ユニット20のセンタープレート27で略気密状に閉鎖される。凸型ユニット20には凸型チャンバ26内に開口する蒸気供給管28aと冷却水供給管28bとドレン管28cとが接続され、これらの配管28a〜28cの途中部に介装した制御弁29a〜29cの操作により、凸型チャンバ26内へ蒸気を供給して発泡性樹脂粒子を加熱発泡させたり、凸型21の背面側へノズル28dから冷却水を噴き付けて、成形品を冷却したり、不要なドレンを凸型チャンバ26から排出したりできるように構成されている。凸型21には多数の通気孔21bが形成され、この通気孔21bを通じて凸型チャンバ26から成形空間2内へ蒸気を供給できるように構成されている。ただし、凹型チャンバ16や凸型チャンバ26以外から成形空間2へ蒸気を供給することも可能で、例えば凹型11と凸型21との合わせ目から成形空間2内へ蒸気を供給したり、充填器3の周囲やエジェクターピンの周囲に通気孔を形成し、この通気孔から成形空間2内へ蒸気を供給したりすることもできる。
【0028】
センタープレート27には、凹型11と凸型21とを組み合わせた状態で、凹型11の正面側端部11aの外側に配置される規制部27aが突出状に形成され、この規制部27aにより成型時における発泡圧で、凹型11の正面側端部11aが外側へ膨出することが防止されるように構成されている。この規制部27aは、凹型11の正面側端部11aの全周に対応させて環状に形成することもできるし、凹型11の正面側端部11aの膨出を防止できるのであれば間欠的に設けることも可能である。また、センタープレート27に規制部27aを形成したが、規制部27aは凹型11に設けることも可能である。
【0029】
型内発泡成形用金型装置1を用いて成形品を成形する際には、従来の成形方法と同様に、凹型11と凸型21とを型閉じして成形空間2を形成し、この成形空間2内へ充填器3から空気の流れに乗せて発泡性樹脂粒子を充填する。発泡性樹脂粒子の充填方法としては、圧縮充填、加圧充填、クラッキング充填などの周知の充填方法を採用できる。
【0030】
そして、凹型チャンバ16から成形空間2を経て凸型チャンバ26へ蒸気を供給したり、凸型チャンバ26から成形空間2を経て凹型チャンバ16へ蒸気を供給したり、両チャンバ16、26に対して同時に蒸気を供給したりして、成形空間2内において発泡性樹脂粒子を加熱、発泡融着させて成形品を成形し、その後、凹型11および凸型21の背面側に対して冷却水を噴き付けて、凹型11および凸型21とともに成形品を冷却し、成形品の冷却後、凹型11と凸型21とを型開きして、成形品を得ることになる。
【0031】
次に、前記金型装置1の構成を部分的に変更した、第2形態の金型装置1Aについて説明する。なお、前記第1形態と同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0032】
図3に示すように、前記金型装置1Aの凹型ユニット10は、第1形態の凹型ユニット10と同様に構成され、凸型ユニット20Aの凸型ハウジング22Aは、前記第1実施形態におけるセンタープレート27に代えて、凸型21の背面側の開口を閉鎖する蓋板27Aを凸型21毎に個別に設け、凸型21と蓋板27Aとで凸型チャンバ26Aを形成し、固定部材25を介して蓋板27Aおよび凸型21を凸型固定板24に片持ち状に固定支持し、蒸気供給管28aと冷却水供給管28bとドレン管28cとを各凸型チャンバ26Aに個別に接続したものである。
金型装置1Aでは、前記第1実施形態の金型装置1と同様に、凹型ユニット10のセンタープレート30を省略できる。
【0033】
次に、前記金型装置1の構成を部分的に変更した、第3形態の金型装置1Bについて説明する。なお、前記第1実施形態と同一部材には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0034】
図4に示すように、金型装置1Bの凹型ユニット10は、第1実施形態の凹型ユニット10と同様に構成され、凸型ユニット20Bの凸型ハウジング22Bは、前記第1形態における凸型ユニット20のセンタープレート27と固定部材25を省略して、凸型21を凸型固定板24に直接的に固定し、更に凸型21の背面側の開口を凸型固定板24で閉鎖して、凸型21と凸型固定板24とで凸型21毎に凸型チャンバ26Bを形成し、蒸気供給管28aと冷却水供給管28bとドレン管28cとを各凸型チャンバ26Bに個別に接続したものである。
金型装置1Bでは、凹型ユニット10および凸型ユニット20Bのセンタープレート30,27を省略でき、しかも凸型ユニット20Bに関しては固定部材25も省略できる。
【0035】
本発明の型内発泡成形用金型装置においては、凹型固定板14に対して凹型11を片持ち状に支持する凹型固定部材15に、弾性体50を組み込むことにより、加熱により型開閉方向に発生する線膨張によって凹型と凸型が押し合う力を、弾性体が収縮することによって逃がす(吸収する)ことができ、本発明の効果を発揮できる。
【0036】
弾性体50の許容変位量(弾性体が変位できる最大値)は、型閉じ状態での凹型固定板14と凸型固定板24との金型開閉方向の距離が、凹型11・凸型21および固定部材15を構成する金属の線膨張により、狭まる変形量よりも大きい必要がある。
弾性体50の許容変位量が、金属の線膨張による前記距離の変形量よりも小さいと、凹型と凸型が押し合う力を逃がす(吸収する)ことができない場合がある。
【0037】
弾性体50は、本来の長さよりも圧縮した状態で、すなわち、0.5MPa以上の伸長応力が発生した状態で設置することが、発泡成形体の型開閉方向の寸法安定性の点で好ましい。
弾性体の伸長応応力が0.5MPaよりも小さいと、発泡成形体の発泡力で弾性体が変形してしまう場合がある為、凹型と凸型の間に隙間が生じて、発泡成形体の型開閉方向の寸法が所定よりも大きくなってしまう恐れがある。
【0038】
弾性体50の最大変位時の伸長応力は、使用する成形機の型締め圧以下であることが好ましい。弾性体の最大変位時の伸長応力が成形機の型締め圧よりも大きいと、加熱時に線膨張によって大きな応力が発生した場合に、応力は弾性体が変形する方向ではなくて、金型装置が型開きする方向へ逃げる為、金型装置が開いてしまい、加熱時の蒸気が金型装置のあわせ面から外部に漏れる危険性が生じる上、発泡成形体の型開閉方向の寸法が所定よりも大きくなる。
【0039】
固定部材15に組み込む弾性体50の素材は、応力に対して直ちに変形する一般的な弾性体ならば特に制限されず、例えば、金属バネ、ゴム、皿バネ、発泡体等があげられる。これらのうちでも、弾性係数や大きさの選択幅が広く、耐熱性に優れる点から、金属バネが好ましい。また、耐腐食性の面から、金属バネの材質はSUS鋼であることがより好ましい。
【0040】
凹型固定部材15へ弾性体50を組み込む態様においては、
図5に示すように、弾性体50を金属で保護することが好ましい。
一般的な金型装置では、型開閉方向と重力方向が一致してないことが多い為、凹型固定部材15により、凹型11の自重を支える必要がある。しかしながら、弾性体50は、変位方向(型の開閉方向)以外の応力を支えられないことが多い為、2種類の弾性体保護金属を組み合わせて用いて、これらの弾性体保護金属の剛性により、凹型11の自重を支えることが好ましい。
【0041】
具体的には、
図5に示すように、凹型固定部材15は、凹型側弾性体保護金属51、凹型固定板側弾性体保護金属52、弾性体50、弾性体ストローク調整ボルトからなる。
【0042】
凹型側弾性体保護金属51および凹型固定板側弾性体保護金属52は、それぞれ脚部を有するもので、該脚部を相対向するように配置される。凹型側弾性体保護金属51および凹型固定板側弾性体保護金属52は、弾性体50が型開閉方向に変位(ストローク)できるように、互いの脚部が当接して、スライドできる状態で配置されることが好ましい。
その際、凹型側弾性体保護金属51の脚部および凹型固定板側弾性体保護金属52の脚部は、全面で接触させるのではなく、
図5に示すように、できるだけ小さな接触面で支える方が、金属同士の摩擦による磨耗を防ぐ点で好ましい。
【0043】
弾性体50は、凹型側弾性体保護金属51の内側に配置される。弾性体50は、凹型側弾性体保護金属51、凹型固定板側弾性体保護金属52に対して、弾性体50の型開閉方向の端が凹型側弾性体保護金属51凹型固定板側弾性体保護金属52に接触させている。
本発明における凹型固定部材15では、
図5に示すように、弾性体50の内部に、弾性体ストローク調整ボルト53を設置して、弾性体取り付け時の伸長応力と弾性体最大変位時の伸長応力を調整することにより、弾性体50の変位量の調整を容易に行うことができ、好ましい。
【0044】
なお、弾性体ストローク調整ボルト53は、頭部とネジ部から構成されるが、頭部が凹型固定板側弾性体保護金属52側となるように配置され、ネジ部は凹型固定板側弾性体保護金属52に設けられた貫通孔内を通した状態で、凹型側弾性体保護金属51に設けられたネジ孔に挿入・締結される。
この際、凹型固定板側弾性体保護金属52には、脚部が設けられたのとは反対側の面に、弾性体ストローク調整ボルト53の頭部上端が凹型固定板14に接触しないように隙間を形成する為の保護部が設けられる。そして、凹型固定板14にも、当該保護部に相当する凹部が設けられる。
【0045】
本発明における凹型固定部材15では、凹型固定板14と凹型固定板側弾性体保護金属52は、ボルト56を用いて、しっかりと固定することが、自重を支える上で好ましい。
また、
図5に示すように、凹型11と凹型側弾性体保護金属51との間に隙間ができるように、凹型嵩上げ材54を設置することが、弾性体ストローク調整ボルト53を凹型11と接触させない為、好ましい。
この際、凹型側弾性体保護金属51と凹型嵩上げ材54は、ボルト55を用いて、しっかりと固定することが、自重を支える上で好ましい。
【0046】
加熱による金型の線膨張により凹型と凸型が押し合う力を弾性体が吸収するメカニズムを、
図5および
図6を用いて、説明する。
【0047】
図5は、加熱前の凹型固定部材15を示している。
凹型側弾性保護金属51と凹型固定板側弾性保護金属52は、弾性体50を介して、凹型固定板側弾性保護金属51の脚部先端と凹型側弾性保護金属51の基部の凹型固定板側面との間(「領域A」と称す)に、一定の隙間を有した状態で設置される。
他方、弾性体ストローク調整ボルト53の頭部下端は、凹型固定板側弾性保護金属521の基部の凹型固定板側面に当接した状態で配置される(なお、弾性体ストローク調整ボルト53の頭部の下面と凹型固定板側弾性保護金属52の基部の凹型固定板側面との間を、「領域B」と称す)。
【0048】
加熱による金型の線膨張により凹型と凸型が押し合う力が発生した場合、
図6に示すように、弾性体50が収縮することによって、領域Aでは、2つの弾性体保護金属間の距離が近づいているが、一方、領域Bでは、弾性体ストローク調整ボルト53の頭部下端が弾性体保護金属52から離れており、弾性体50のみが変位しており、金属部である凹型側弾性保護金属51、凹型固定板側弾性保護金属52、弾性体ストローク調整ボルト53は変位しようとする力を受け持つことなく、全体的に無理なく動いていることが判る。
【0049】
本発明を適用することによって、凹型11および凸型21に強い応力が発生しない為、凹型11および凸型21の耐久性を考慮する必要が小さくなり、肉厚を薄くすることができる。
【0050】
ただし、通常、凹型11および凸型21には、コアベントと呼ばれる円柱状の蒸気の通気孔が無数に取り付けられており、コアベントの設置する為には8mm程度の肉厚が必要である。
従って、本発明のように、弾性体を組み込んだ凹型固定部剤を用いる型内発泡整形用金型においては、凹型11および凸型21の肉厚を15mm程度から8mm程度に薄くすることができるため、熱容量が約半分になり省エネルギー化を実現できることは明白である。