【実施例】
【0009】
<1>型枠全体の構造
本発明の型枠は、
図1,2に示すように鋼管1の外周に、鋼管1の表面と一定の距離を隔てて同心円状に設置する型枠2である。
型枠2は鋼材や合成樹脂の曲面状の板で構成する。
型枠2を鋼管1全長とほぼ同じ長さに設定しておけば、一度のコンクリート3の打設によって鋼管1の全長をコンクリート3で巻き立てることができる。
【0010】
<2>型枠の横断方向の分割
型枠2は鋼管1全長を包囲する状態で構成する。
しかし実際には取扱いの点から、型枠2は全長で一体に構成せず、鋼管1の中心軸を横断する方向に複数に分割して構成する。
すなわち軸方向の長さの短い円筒を同軸上に並べて、全体として長い円筒を構成する構造である。
中心軸を横断する方向に分割した型枠2と型枠2との間には、軸方向に間隔を設け、この間隔は後述する外バンド4で包囲してコンクリート3の流出を阻止する。
なお本明細書および特許請求の範囲において「横断方向」とは鋼管1の中心軸を横断する方向、「軸方向」とは鋼管1の中心軸と平行の方向を意味するものとして使用する。
【0011】
<3>型枠の軸方向の分割
鋼管1の外周に一定の間隔を隔てて同心円状に設置する型枠2は、鋼管1の外周に設置するために、軸方向に分割した複数の円弧型枠21より構成する。
各円弧型枠21の間の軸方向の接線は、軸方向に配置したヒンジによって連結し、複数の円弧型枠21が鋼管1から離れる方向に開放できるように構成する。
図2の実施例は、鋼管1と同心円状に型枠2を3分割した円弧型枠21で構成した構造を示す。
その場合には鋼管1の下に位置する底型枠21aと、鋼管1の両側に位置する側面型枠21bによって構成し、底型枠21aの両側に、軸方向のヒンジで側面型枠21bを取り付ける。
両側の側面型枠21bを同心円状に一体化するには、側面型枠21bの外部にブラケット22を突出させておき、そのブラケット22に、横断方向に貫通させたボルトとナットの締結によって行う。
このように本発明の型枠2は、鋼管1の全長に近い長さを備えた長い円筒を複数の短い円筒に分割してあり、さらにその短い円筒は、軸方向に分割した円弧型枠21をヒンジで連結した集合体である。
なお型枠2の外側面には、軸方向、横断方向に外部補強材24を取り付けることもできる。
【0012】
<4>コンクリート投入口
鋼管1の全周を包囲した型枠2の上部にはコンクリート投入口23を開口し、そこから振動を与えながらコンクリート3を打設して巻き立てコンクリート3を形成する。
そのために、両側の側面型枠21bを引き起こした場合に、両者は完全には閉合しない寸法として、両者の間に間隔を設ける。
この閉合しない間隔を、コンクリート投入口23として利用する。
【0013】
<5>外バンド
前記したように、軸方向に隣接する型枠2間は直接接触せず、間隔を設けてある。
そのために、そのままではその間隔からコンクリート3が流出してしまう。
そこで型枠2の外側に、型枠2とは別の部材である、複数に分割した外バンド4を設ける。
この外バンド4は、円弧状の帯状体であり、型枠2の外周に横断方向に位置している。
そして分割した外バンド4は軸方向のヒンジによって連結してあり、全体を閉合すると、隣接する型枠2と型枠2の間隔を被覆する状態でその外周面に密着して円を形成する。
したがって、外バンド4の位置だけは、外バンド4の幅だけコンクリート投入口23が閉鎖されることになる。
【0014】
<6>三角突条の突設
前記した外バンド4の内面には、円周方向に沿って、三角突条41を設置する。
この三角突条41は、断面が三角形の鋼製の部材である。
三角突条41は、三角の鋭角部分が鋼管1側に向けて突出するように一体化して設置する。
三角の鋭角部分を鋼管1側に向けて突出させたのは、コンクリート3の硬化後の脱型を容易にするためである。
この三角突条41は外バンド4の内側に一体化させて取り付けてあるから、外バンド4の解体と同時に硬化したコンクリート3躯体内から引き抜くことができる。
同時に、外バンド4と三角突条41が一体であるから、従来のようにコンクリート躯体の内部に埋設してしまう、ひび割れ誘発材と異なり、繰り返して使用することができる。
三角突条41の高さは、鋼管1の外周面と、外バンド4の内面との間隔とほぼ等しく形成するが、鋼管1の製作上の許容誤差が±5mm程度であるために、この許容誤差程度、小さく設定する。
例えば巻き立てコンクリート3の厚さを64mmとした場合に、三角突条41の高さはそれより5mm低い、59mm程度に設定する。
この場合のコンクリート3の欠損率は59/64=92%となる。
一般に誘発目地は35%以上の欠損が必要とされているから、十分な欠損率を確保することができる。
【0015】
<7>コンクリート巻き立て方法
次の上記の型枠2を使用するコンクリート3の巻き立て方法を説明する。
【0016】
<8>円弧型枠による包囲
型枠2を3分割した例について説明する。
底型枠21aの両側に、軸方向ヒンジで側面型枠21bが連結してある。
この側面型枠21bを開放した状態の型枠2の上に、1本の鋼管1をつり降ろして設置する。
すると、鋼管1の全長にわたってその下には底型枠21aが、両側には側面型枠21bが位置する状態となる。
そして鋼管1の両側に位置する側面型枠21bを引き起こし、上部のブラケット22を介してボルトで一体的に拘束する。
すると、上部に軸方向にコンクリート投入口23だけを開放した状態の円筒で鋼管1を包囲することになる。
すなわち、鋼管の全長を、多数の軸方向の長さの短い短筒群で包囲することになる。
ただしその状態では、隣接する型枠2と型枠2の間、すなわち短筒と短筒との間は、横断方向の円環帯状の間隔を開放した状態である。
なお型枠2群によって円筒を形成する前に鋼管1の外周と型枠2の間に鉄筋や金網を配置する作業は従来と同様である。
【0017】
<9>外バンドによる拘束
隣接する型枠2と型枠2との間隔の外側に位置する外バンド4を引き起こして鋼管1との同心円状に一体化する。
すると外バンド4によって型枠2と型枠2間の円環帯状の間隔を閉塞することができる。
同時に外バンド4の内側に突設した三角突条41が、その先端を鋼管1の外周面と接近した状態で位置することになる。
この場合の三角突条41先端と鋼管1の外周とは最大5mm程度離れて位置している。
【0018】
<10>コンクリートの打設
型枠2の上部に開口したコンクリート投入口23から、型枠2内にコンクリート3を吐出して打設し、同時にコンクリート3に振動を与える。
コンクリート3は型枠2内に充填され、鋼管1の周囲に同一厚さのコンクリート3の巻き立て層を形成する。
型枠2の内面と鋼管1の外周面とは、外バンド4の内側に突設した三角突条41の位置においてほぼ絶縁状態であるから、コンクリート3はその両側に打設する必要がある。
【0019】
<11>側方流動の阻止
コンクリート3の打設時に型枠2の内部が仕切られていない場合には、加振機を用いて振動を与えるとコンクリート3はとめどなく側方へ移動してしまう。
このような現象はコンクリート3のモルタル分と骨材との分離を発生させやすい。
しかし本発明の型枠2では、その内側に例えば1.25m置きに三角突条41を突設して仕切りが形成してある。
三角突条41と鋼管1の表面とは最大5mm程度の間隔があるが、実質的にはコンクリート3の流動は阻止されるから、あたかも1.25mの隔室を形成している状態である。
その結果、三角突条41がコンクリート3の側方への長距離の流動を阻止することになり、コンクリート3の骨材の分離を防止することができ、品質のよい巻き立てコンクリート3を得ることができる。
【0020】
<12>型枠の解体
コンクリート3が硬化したら一定時間後に円筒状に形成した外バンド4を解体し、その内側の型枠2の拘束も解除し、複数の円弧型枠21として解体する。
前記したように三角突条41は外バンド4の内側に向けて三角形に形成してあるから、外バンド4の解体時に硬化したコンクリート3からの引き抜きは容易である。
さらに三角突条41と外バンド4と一体化しているから、三角突条41のみがコンクリート3内に残ることもなく、従来のようにコンクリート3の内部にひび割れ誘発材を残すタイプと異なり、設置、撤去、整備の手間が発生することがない。
こうして解体した、三角突条41の一体型の型枠2を、次のスパンのコンクリート3の巻き立てに転用する。
【0021】
<13>目地の効果
鋼管1の外周面と型枠2の内周面に充填したコンクリート3には、その円周方向に配置した三角突条41の体積だけはコンクリート3は充填できないから、その部分が目地31として形成される。(
図5)
この目地31が適当な間隔で存在することによって、巻き立てコンクリート3は軸方向でほぼ絶縁した状態となる。
そのために鋼管1の剛性を評価する場合にコンクリート3の剛性を無視することができ、鋼管1の軸直角方向変形の予測精度を向上させることができる。
またこの目地31の形成によって、鋼管1の変形に伴うコンクリート3のひび割れを吸収することもできる。