(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インクを記録媒体に吐出する複数のノズルを備える記録ヘッドと、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録ヘッドを搭載し、前記記録媒体の搬送方向に交差する方向に前記記録ヘッドを往復走査するキャリッジと、前記記録ヘッドの走査方向に沿い、前記往復走査される前記記録ヘッドに対向する位置に配置され、前記記録媒体を支持するプラテンと、前記キャリッジに搭載され、前記記録媒体に記録される画像の濃度を検出するセンサーと、を具備し、
搬送量を段階的に変えて前記記録媒体を搬送し、前記搬送量を前記段階的に変える毎に前記記録媒体の搬送の前後で前記記録媒体にテストパターンを記録し、該記録により重なり度合が段階的に変わる前記記録媒体に記録された前記テストパターンを前記センサーによって前記段階的に変えた前記搬送量毎に濃度を読取り、該読取った前記濃度に基づいて、前記重なり度合いが最も高くなる前記搬送量を演算し、該演算によって求めた前記搬送量に基づいて前記記録媒体を搬送する記録装置において、
前記テストパターンは前記記録媒体にドットを記録する記録部分と記録しない非記録部分が前記搬送方向に交互に複数回繰り返されて記録されたものであり、
前記記録部分と前記非記録部分とで構成される1周期が長い第1のテストパターンと、短い第2のテストパターンを含む前記テストパターンを記憶する記憶手段と、
前記段階的に変える搬送量は、第1の刻みで変わる第1の段階と、前記第1の段階より細かい刻みで変わる第2の段階とを含み、
前記記憶手段に記憶された前記テストパターンから前記第1のテストパターンを取得し、前記搬送量を前記第1の段階で変えて前記記録媒体を搬送し、前記搬送量を変える毎に前記記録媒体の搬送の前後で前記記録媒体に前記第1のテストパターンを記録し、前記センサーによって該記録された前記第1のテストパターンの濃度を検出し、前記濃度が最低となる前記記録媒体の前記搬送量を演算し、該演算によって求めた該搬送量を仮の基準値とし、
前記記憶手段に記憶された前記テストパターンから前記第2のテストパターンを取得し、前記仮の基準値を中心としてその前後に前記第2の段階で前記搬送量を変えて前記記録媒体を搬送し、前記搬送量を変える毎に前記記録媒体の搬送の前後で前記記録媒体に前記第2のテストパターンを記録し、前記センサーによって該記録された前記第2のテストパターンの濃度を検出し、前記濃度が最低となる前記記録媒体の前記搬送量を演算する制御手段を備え、前記第2のテストパターンに基づいて前記演算によって求めた前記搬送量に基づいて前記記録媒体を搬送することを特徴とする記録装置。
前記テストパターンは、前記走査方向に沿って帯状に記録され、前記センサーは前記キャリッジを移動させながら前記テストパターンを複数個所検出し、該複数個所で検出した濃度の値を平均した値を前記記録媒体の前記搬送量の演算に用いることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【背景技術】
【0002】
インクカートリッジからインクジェット式の記録ヘッドにインクを供給し、記録ヘッドからインク滴を記録媒体に吐出して画像や文字等の記録を行うインクジェット方式の記録装置が普及している。
【0003】
このようなインクジェット方式の記録ヘッドは、家庭用や小規模なオフィスなどで利用される小型のものだけでなく、1メートル幅を超えるような大判の記録媒体への印刷が可能な大型のものまで幅広く採用されている。
【0004】
このようなインクジェット式の記録装置では、記録媒体の幅方向、すなわち主走査方向に往復移動するキャリッジにインクジェット式の記録ヘッドを搭載し、往路と復路とで記録媒体にインクを吐出する。また、記録媒体を往復方向に直行した方向、すなわち副走査方向に搬送する。記録ヘッドを複数等分した量毎に記録媒体を搬送し、主走査方向にキャリッジを移動させながらインクを吐出することを繰り返して記録する。キャリッジの位置はキャリッジの移動方向に沿って設けられたリニアスケールをキャリッジに搭載したセンサーによって読取り、キャリッジの位置を取得する。一般にリニアエンコーダーと呼ばれる装置を用いている。
【0005】
搬送方向の移動量は、記録媒体の材質や厚みによって変わる。材質によっては摩擦がちいさく滑ってしまうことにより、またローラーに挟持されて搬送される場合に記録媒体が変形することによって微小な搬送量のズレが生じる。このズレを放置すると記録された画像に筋が入り、品質が悪いものになってしまう。そのため、そのズレを補正する必要がある。記録媒体にテストパターンを印刷し、そのテストパターンからズレ量を求め、ズレ量に応じた補正値を記録装置に入力する。入力された補正に基づいて、搬送量を変更して搬送誤差を無くしている。
【0006】
例えば、特開2003−011344号公報では、このテストパターンは2回の記録走査により形成される。この2回の記録走査の間に行なわれる記録媒体の搬送量をそれぞれ異ならせる。ユーザーは、テストパターンの印刷結果から、黒スジもしくは白スジの見えない最適なパターンを選択する。そして、選択したパターンにおける搬送量に基づいて補正値が決定される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図を参照して説明する。
まず、
図7を用いて、本実施形態の記録装置であるインクジェットプリンター1の全体について説明する。インクジェットプリンター1は、直線状に幅方向に延びるレール2が備わっている。このレール2に沿ってキャリッジ3が往復移動する。キャリッジ3には、インクジェット式の記録ヘッドが搭載されている。記録ヘッドはカラー印刷するため、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のインクに、さらにシアン、マゼンタ、ブラックの各インクの顔料濃度を少なくして薄い色にしたライトシアン、ライトマゼンタ、グレーの3色のインクに対応してキャリッジ3に搭載されている。ライト系のインクを用いることで、色の再現性が良くなり記録する画質の向上ができる。キャップ4は記録ヘッドが乾燥しないように密封したり、メンテナンスのために定期的にインクジェットヘッドからインクを吸引したりする。紙、プラスチックフィルムなどの記録媒体を搬送する搬送手段は、レール2に沿って多数配置された搬送ローラー9を含み、この搬送ローラー9を回転させることで、記録媒体を搬送する。
【0014】
キャリッジ3は無端ベルト5に接続され、無端ベルト5はモーター6に接続されている。無端ベルト5はインクジェットプリンター1の端に設置されたプーリーに掛け回されている。モーター6を駆動することで無端ベルト5は移動し、同時にキャリッジ3も移動する。
【0015】
プラテン7はレール2に沿って配置される平板である。このプラテン7は、表面に吸引孔が複数備わり、搬送される記録媒体を吸引孔で吸引することで固定することができる。プラテン7の記録媒体の搬送方向下流側にはアフターガイド8が備わる。アフターガイド8は搬送される記録媒体を案内する。また、プラテン7の記録媒体の搬送方向上流側にはプリガイドが備わる。プラテン7、アフターガイド8、プリガイドはヒーターが備わり、加熱することができる。この加熱により搬送される記録媒体を適度な温度に加熱する。加熱することで、インクの定着を促進する。
【0016】
プラテン7はアルミニウム製の平板である。このアルミニウム製の平板の表面は平らで、また吸引孔が設けられている。裏側には、溝が設けられ、この溝にヒーター線が埋め込まれ、プラテン7を加熱する。また、アフターガイド8およびプリガイドは鉄製の板を湾曲させたもので、その裏側にヒーター線を配置し、さらにアルミシートを覆い被せて固定している。
【0017】
図1は、記録装置のブロック図である。制御手段11は、予め記憶されているプログラムに従って動作し、記録装置の全体の各種制御を行う制御手段である。ROM12は不揮発性メモリーであり、制御手段11のプログラム、初期設定値等の情報を記憶するメモリーである。RAM13は制御手段11の演算等に用いるワークメモリーや一時的な情報の記憶を行うメモリーである。ROM12には予めテストパターンが記憶されている。このテストパターンは状況に応じて複数のパターンがあり、状況に応じて制御手段11が複数のテストパターンから必要なテストパターンを読み出して使用する。
【0018】
搬送手段14は、搬送ローラー9、搬送ローラー9を駆動するモーター、およびモーターを駆動する駆動回路を含み、記録媒体を搬送する手段である。搬送ローラー9は、駆動ローラーとピンチローラーの対で構成され、駆動ローラーをモーターで回転させる。ピンチローラーは駆動ローラーに押圧され、連れ回る。記録媒体は、この駆動ローラーとピンチローラーに挟まれて搬送される。制御手段11によって搬送手段14の駆動回路が制御され、モーターを駆動し、搬送ローラー9を回転させ、記録媒体を搬送する。
【0019】
キャリッジ移動手段15は、無端ベルト5に固定されたキャリッジ3をレール2に沿って移動させる。無端ベルト5を回転させるモーター6は、キャリッジ移動手段15に含まれる駆動回路で駆動される。この駆動回路は、制御手段11によって制御される。制御手段11のプログラムに従ってキャリッジ3がレール2に沿って移動する。
【0020】
記録手段16はインク色に対応した記録ヘッドを含む。記録ヘッドはヘッド駆動回路の駆動信号に基づいてインクの吐出動作を行う。ヘッド駆動回路は制御手段11からの制御信号に基づいて動作する。
【0021】
リニアエンコーダー17はキャリッジ3の移動方向に沿って直線状に配置されたリニアスケールの目盛を光学的に検出する。リニアエンコーダー17は制御手段11からの制御信号に基づいて動作し、検出結果をAD変換して、その信号を制御手段11に出力する。制御手段11はこの信号をカウントすることで、キャリッジ3の位置が特定でき、位置を取得し、その位置に応じた制御ができる。
【0022】
キャリッジ3に備わる各記録ヘッドの位置は予め特定でき、ROM12に記憶しておく。キャリッジ3、すなわち記録ヘッドの位置に応じて、記録ヘッドを駆動し、インクを吐出することで、所望の画像を記録することができる。
【0023】
R検出手段18は、赤色の光を発し、その反射光を検出する光学センサーである。G検出手段19は、緑色の光を発し、その反射光を検出する光学センサーである。B検出手段20は、青色の光を発し、その反射光を検出する光学センサーである。これらの検出手段は、記録媒体に記録された画像の濃度を各検出手段の検出範囲で検出し、その結果を制御手段11に出力する。制御手段11は、この検出結果に基づいて演算し、記録ヘッドの吐出タイミングを可変することで、記録する画像品質を良くする。
【0024】
図2は、キャリッジに搭載された記録ヘッドと検出センサーの配置の概略図である。キャリッジ3のプラテン7に対して対向する位置にキャリッジベース21が備わる。そのキャリッジベース21に記録ヘッドが固定されている。記録ヘッドは、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色、ライトシアン色、ライトマゼンタ色、グレー色の各色に対応して7台の記録ヘッド、すなわちシアン色用記録ヘッド22、マゼンタ色用記録ヘッド23、イエロー色用記録ヘッド24、ブラック色用記録ヘッド25、ライトシアン色用記録ヘッド26、ライトマゼンタ色用記録ヘッド27、グレー色用記録ヘッド28がキャリッジベース21に固定されている。R検出手段18、G検出手段19、B検出手段20の順に記録ヘッドの長手方向に沿って並べて配置されている。R検出手段18はシアン色とライトシアン色の検出を行う。この2色は同じ顔料を色材として濃度を変えて使用しているので、検出手段が同一のもので検出できる。マゼンタ色とライトマゼンタ色に対するG検出手段19も同様である。また、ブラック色とグレー色も同じ顔料を色材としていて、B検出手段20で検出する。また、イエロー色は、3色の光源中B検出手段20の反応が良いのでこれを検出用に使用する。
【0025】
図3は、テストパターンと検出手段による検出範囲を説明する図である。キャリッジベース21に固定されているB検出手段20は、記録媒体に記録された帯状のテストパターン32の記録範囲内に検出範囲31がある。B検出手段20の記録媒体の搬送方向の中央を通る走査方向に沿った線32上に検出範囲31がある。一つのテストパターンに対して複数回場所を変えて濃度を検出する。図では6カ所の濃度を検出する。この平均値をとって濃度の値とすることができる。テストパターンはブラック色用記録ヘッド25によって黒色で形成する。通常白色の記録媒体上にテストパターンを記録するので、コントラストが高くなり、検出誤差が小さくなる。
【0026】
図4(a)は第1のテストパターンを説明する図であり、
図4(b)は第2のテストパターンを説明する図である。図中の黒丸は形成する1つのドットを示し、白丸は形成していないドットを示している。第1のテストパターンは、1周期分が、黒丸が3行、白丸が3行で構成され、これが複数搬送方向に並べられる。ここでは2周期分を示している。第2のテストパターンは、1周期分が、黒丸が1行、白丸が1行で構成され、これが複数搬送方向に並べられる。ここでは2周期分を示している。
【0027】
このように、テストパターンは記録媒体の搬送方向にドットを形成する記録部の帯とドットを形成しない非記録部の帯を交互に複数回記録するパターンである。まず記録媒体にこのパターンを記録する。次に、記録媒体を搬送し、別のノズルで先に記録したパターンの上に重なるように記録する。これを、例えば、設計上の理論値の搬送量に対して、例えば−0.3%、−0.2%、−0.1%、0、0.1%、0.2%、0.3%搬送量を変えて、変えた毎に搬送前後でテストパターンを記録する。そして、そのテストパターンの記録濃度を検出し、濃度の一番低いテストパターンを記録した搬送量が理想に一番近い搬送量と考えられる。
【0028】
ここで、測定誤差や印刷誤差による検出誤差を小さくするため、最小二乗法等を利用して測定値から近似曲線を演算し、ピークの値を求め、そのピークに一番近い制御可能な最小搬送量単位の設定値を求める。このように、同一のラインを記録できる搬送量を特定する。設計上で設定した搬送量を仮に基準値として、第1のテストパターンを、搬送量を変えて記録し、濃度を検出する。これは、粗い設定値を求めることができ、この粗い設定値を中心に、その前後に搬送量を可変した第2のテストパターンを印刷する。同様に濃度を検出し、近似曲線を演算し、ピークを求め、ピークに一番近い制御可能な設定値を求める。
【0029】
図5は、記録媒体に記録されたテストパターンを説明する図である。紙面下側が搬送方向の下流側であり、上側が搬送方向上流側である。四角で囲ってある部分にテストパターンが記録される。図中「パターン1」とあるのは第1テストパターンを意味し、「パターン2」とあるのは第2テストパターンを意味する。また、その後ろの数字は仮に基準とした搬送量に対しての搬送量のズレ量を%で表わしている。例えば「パターン1 −0.12%」とあるのは、第1のテストパターンを仮に基準となる搬送量に対して0.12%少なくした搬送量で搬送した時のテストパターンであることを示す。
【0030】
第1のテストパターンは、0.4%ずつ搬送量を変えている。第2のテストパターンは0.1%ずつ搬送量を変えている。
【0031】
図6は、テストパターンの記録とその検出の動作を説明するフローチャートである。まずステップS1で第1のテストパターンの調整量をセットする。記録媒体の仮に基準とした、すなわち設計上の搬送量を仮の基準値として、その基準値に対して少ない搬送量から多い搬送量まで複数の段階の搬送量を調整量とする。例えば
図5では、−0.12%から+0.12%まで0.4%刻みで7段階の搬送量を調整量とする。検出が終了していない調整量をセットする。
【0032】
次に、ステップS2で、第1のテストパターンを記録する。第1のテストパターンは、先ずテストパターンを印刷して、記録媒体を所定の搬送量に調整量を付加して搬送し、先に記録した部分に重ねるように別のノズルから第1のテストパターンを記録する。
次に、ステップS3で、この記録したテストパターンの濃度を検出手段で読取り、異なる調整量毎に読取った濃度の値をRAM13に記憶する。
【0033】
次に、ステップS4で、新たな調整量に対応したテストパターンを記録するために記録媒体を搬送する。
次に、ステップS5で、全調整量のテストパターンを記録し、濃度を取得したか確認する。まだならステップS1に移行する。終了していればステップS6に移行する。
【0034】
ステップS6では、取得した第1のテストパターンの各調整量の濃度から、近似曲線を演算し、さらにそのピークを演算する。すなわちドットが一番重なる調整量を求める。制御可能な最小の搬送量単位でピークに一番近い調整量を求める。そして、その調整量を仮の第2の基準値として、その前後のさらに細かな調整量による第2のテストパターンを記録する調整量の範囲を求める。例えば、仮の第2基準値に対して、0.1%刻みで前後に3段階を調整量の範囲とする。
【0035】
次に、ステップS7で、検出が終了していない第2のテストパターンの調整量をセットする。
次に、ステップS8で、第2のテストパターンを記録する。第2のテストパターンは、先ずテストパターンを印刷して、記録媒体を所定の搬送量に調整量を付加して搬送し、先に記録した部分に重ねるように別のノズルから第2のテストパターンを記録する。
【0036】
次に、ステップS9で、この記録したテストパターンの濃度を検出手段で読取り、異なる調整量毎に読取った濃度の値をRAM13に記憶する。
次に、ステップS10で、新たな調整量に対応したテストパターンを記録するために記録媒体を搬送する。
次に、ステップS11で、全調整量のテストパターンを記録し、濃度を取得したか確認する。まだならステップS7に移行する。終了していればステップS12に移行する。
【0037】
次に、ステップS12で、取得した第2のテストパターンの各調整量の濃度から、近似曲線を演算し、さらにそのピークを演算する。すなわちドットが一番重なる調整量を求める。制御可能な最小の搬送量単位でピークに一番近い調整量を求める。そして、その調整量が制御可能な一番理想に近い搬送量の補正値となる。
次に、ステップS13で、この値をセットして、確認のために第1のテストパターンと第2のテストパターンを記録する。処理を終了する。
【0038】
通常の印刷にここで求めた一番ドットの重なる搬送量を用いることで、画像品質の高い印刷ができる。
また、確認のためのテストパターンを印刷した時に、ユーザーが確認して、さらに、好みに合わせて手動で、操作パネルから搬送量の補正値を入力し、その入力に基づいて搬送量を補正しても良い。