特許第6042755号(P6042755)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042755
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】簡単自立牽引具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   A61F5/01 K
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-58119(P2013-58119)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-180502(P2014-180502A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】304014291
【氏名又は名称】星野 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅彦
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−238968(JP,A)
【文献】 特開2012−187208(JP,A)
【文献】 実用新案登録第3080769(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも腰骨上部及び頭部に対して脊柱軸の軸周り方向に延びて脱着自在に装着される第1の牽引ベルトと、
前記第1の牽引ベルトと一体化されることで装着者の左右の両側に位置決めされ、前記第1の牽引ベルトの幅方向の一方側へ加圧可能な加圧面を有し、前記加圧面に前記第1の牽引ベルトの幅方向の一方側へ加圧力を与えることにより、前記第1の牽引ベルトを介して脊柱軸方向に牽引力を及ばせる1対の加圧用グリップと、
前記加圧用グリップと一体化されると共に、前記加圧用グリップから前記第1の牽引ベルトの幅方向の一方側へ延設され、前記加圧用グリップの前記加圧面に付与される加圧力を装着者の体側に沿わせる1対の加圧強制体と、
前記加圧強制体と一体化されると共に、前記第1の牽引ベルトの幅方向の一方側に所定間隔離して配設され、少なくとも腰骨上部及び頭部に対して脊柱軸の軸周り方向に延びて脱着自在に装着される第2の牽引ベルトと、
を備えることを特徴とする
簡単自立牽引具。
【請求項2】
前記加圧用グリップは、前記第1の牽引ベルトの外側面付近に配設されることを特徴とする、
請求項1に記載の簡単自立牽引具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は頸椎や腰椎の牽引処置を必要とする人々に対してのもので、病院や整骨院等の専門家により使われることを目的とする治療器具ではなく、その生活者自身が日々の生活上生ずる疲労性の慢性的な腰頸部痛に対して、自身の力を利用して積極的にその疲労回復や疲労重複により発生する症状の悪化予防に努められる様に、家庭内等を含む通常生活内において安全かつ容易にその改善処置を行える手法をその補助器具の発明により実行し得るよう促すものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な頸椎や腰椎の牽引装置は牽引を必要とする牽引対象部位に対してその脊椎軸の片端を固定保持させた後に、対象部位を挟んで反対側端へ機械的運動を主体とした物理的な牽引応力を強制的に加えるものである。例えば腰椎牽引においては両脇の下や胸部を牽引方向に対して移動制限するように固定した後にその反対側へ対象部を引っ張るように機械的な牽引を加え、また、頸椎牽引においては、座った状態の患者の自重により本体固定を行い、その対象頸椎部を挟んだ反対側の頭部を機械的に牽引するか、あるいは反対に頭部を支柱に固定した状態に置きその反対側の母体を重力により落としめて牽引力を生み出すなどの構造が一般的であり、その行為の安全性を含めると体全体の不安定な動きを管理する必要から、どうしても大掛かりな機構が必要とされる。(例えば特許文献1や特許文献2を参照)。
【0003】
また最近では家庭内で牽引行為を行えるように工夫がされた座椅子型や自力牽引台なども見受けられる。これらは、小型化を目的として対象脊椎の片側を重力にまかせた摩擦力や物理的機構を利用して、移動制限した固定状態に置き、その反対側に加える牽引力を自力で得られる様に工夫されており、機械的な力や腕力や脚力や体重を利用した重力で牽引力を発生させて牽引を行う機構を持つ。(例えば、特許文献3や特許文献4を参照)。
【0004】
しかしそのどれもが対象患部の脊柱軸の片端を固定したのちに、その患部を挟む反対側に対して大きな牽引力を付加することを目的としており、その構造体の難しさや取り扱い上の煩雑さなどにより、疲れた腰を伸ばす等の手軽な行為が行い難いものであると同時に
一人で行う環境上において不慮の牽引動作における安全性に関して十分な対応がなされるものとは言い難い。
【0005】
加えて家庭内でこれを行なおうとする対象者は、総じて過去に病院や整骨院へ通った既往歴をもつ方々が主体であり、慢性的腰痛を引き起こす残存因子を元々抱えている方々であることから、体の一部を拘束して患部を挟んだ反対側へ元来生活環境内では存在しないほど大きくて機械的な牽引力を掛けるには、その安全性も含めて一人で行うことへの十分な配慮がシステム上必要とされる。
【0006】
肩や腰の疲労感や痺れや違和感や疲労性の慢性的な腰痛はその保有者、以降これを腰痛持ちと俗称的に表現するが、この腰痛持ちには日々慢性的に起きうる症状であり、専門家へ通院するほどではないが、生活上において十分行動管理すべき内容であることから当事者のQOL(Quality Of Life)に大きな影響を及ぼす。一般的なこの行動管理は過給な行動を制限する腰痛ベルトやコルセットなどを腰に常時装着し、同時に体の筋肉の疲労回復に努めることでその悪化への不安をしのいでいる。これら手法は直接的な除痛効果や歪み矯正などの即効的な効果は期待できず、当然痛みと行動制限が加わるため、その都度積極的で容易にその上安全に除痛や歪み矯正などが実行可能な手法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−61936号公報
【特許文献2】実開平6−58927号公報
【特許文献3】実用新案登録第3139472号公報
【特許文献4】特開2010−99428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
日々の生活における首や腰の疲労性の慢性的な鈍痛を専門家へ通院すること無く、その都度自身で積極的に改善させるため、廉価で安全で手軽に行える頸椎や腰椎の牽引伸ばし具を発明する。ここでいう疲労性の慢性的な鈍痛や腰痛とは主に立位生活における骨格系の歪み及びこれに起因した筋肉疲労などの周辺にある保護組織を対象としており、靭帯断裂や椎間板座滅などの物理的損傷による不可逆的な病変や癌やカリエスなどの免疫上問題となる病変的な痛みに対したもので無いことを前提としています。
【0009】
これまでの一般的な治療上の牽引力は、例えば腰椎の場合機械牽引には体重の3分の1とか30キログラム相当の引っ張り力が必要であると学術上謳われている。しかしながら本発明に置いては小型で手軽に実行できることを目的とする為この牽引力にとらわれず、新しい引っ張りメカニズムを用いると同時にそれが実行可能な用具を発明することを目的とする。
【0010】
また加えて自身の管理下で安全に行われるための具体的なメカニズムが必要となる。何故ならば、慢性的な腰痛の発症者は過去に動けなくなるほどの重特な既往歴を持つことから、容易に再発する可能性を持っており、これを考えると高い安全性が必須となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
小型軽量で操作が容易で実践的に利用可能なものを発明するため、本邦では自身が生み出す力を有効に利用する必要があり、その有効な利用法に関して2つの視点を持つ。1つ目は自身が生み出す力を面倒な構造を介さず直接に自身の痛みの改善に加える機構である。一般的にみて人体構造的に頸部や腰部の痛みに対しては自身の力を加え難く、特に腰部においてはストレッチするかさするかの手段しか取ることが出来ない。同時に処置中は強い筋肉の緊張が生じ易く、特に他から物理的に不安定な要因が加えられたり、或いは制御し難い環境に置かれることを何よりも心配する。例えば機械的な強制的牽引システムや体拘束されることによる移動制限などである。自身で生み出す力は瞬間的な反応も含めて管理し易いが、その力の強さと持続性に限界を持つ。しかしながら本発明においては治療ではなく生活習慣の中で日々繰返し使用して、その都度若干の歪みを矯正し除痛することに価値を置いているため、大きな牽引力やその持続性は必用としない。本発明では、人が力を生みだし易い構造とその力を直接患部へ加える機構を構成して、さほど強く無いが負荷される牽引応力の上限管理を自身で容易に行なわせしめ、その影響力の及ぶ状況を自身の痛みと照らし合わせ感じさせながらアナログ的に管理させることによりこの防御反射的な体緊張の弛緩を容易ならしめる使用法を取る。適度な引っ張りは気持ち良いことから痛みをこの牽引力に委ねることが可能となり、この緊張弛緩が十分となれば、実質的な引っ張り牽引力を大幅に減少せしめることが可能となり小型化で容易な利用環境が生まれる。
【0012】
加えて0011節文中の通り、0010節で示された安全性についての具体的なメカニズムが実行可能となる。この利用環境は他人の行為や機械力が加わらないことで牽引力の上限が自分なりに管理制限され、牽引行為に関する全ての動作を、機械台に寝かされるようなものではなく、他に強制されない自身の瞬間的な管理下に置くことが出来るので客観的に観てもシステム上の安全性が大きく担保される。
【0013】
2つ目の牽引力に関する自力の有効利用法は作用と反作用で生まれる応力のダブル牽引である。先ず頸椎や腰椎の痛みの発生箇所を図5による人の構造的な視点で考察する。特に骨格系やそれを守る靭帯や筋肉などの構造的視点で位置関係を観ると、脊柱上では頸椎31は頭部と胸椎の間に位置し、腰椎32は胸椎と骨盤や大腿骨などの下腿系の骨群に挟まれる。すなわち脊椎を人体の構成体軸として観ると、頭部に加わる頭上への引っ張り負荷は頸椎31に加わり、腕や肩や胸部に加わる体軸とベクトル上平行する負荷は鎖骨や肩甲骨を経由して胸椎に加わり、下腿部に加わる下足方向への体軸とベクトル上平行する負荷は腰椎32へ加わる。
【0014】
次に必要とされる牽引力を生みだす基本的な要素を観ると、自力でこれを作り出すには上腕や胸部や背部からなる上半身からなる力と、大腿部などからなる下半身が生み出す力が考えられる。発明品に関する構造体の単純さや利用者の簡便な使用法を考えると上半身側の力を利用する方に利便性が高いと判断する。
【0015】
この上半身で生み出される力を頭部の頭頂方向へ体軸とベクトル上平行に負荷すれば、0013節の如く上半身へ加わる脊柱軸とベクトル上平行な負荷この場合は反作用の力は胸椎に及ぶことから、その頭部と胸椎に挟まれる頸椎31においては、その作用と反作用の原理から頸椎軸上において頭上と下腿方向へのダブルの引っ張り応力を受けることとなる。
【0016】
同様に、腰椎部でも上半身で生み出される力を下腿足方向へ脊柱軸とベクトル上平行に負荷すれば、その胸椎と下腿部に挟まれる腰椎32においては、その作用と反作用の原理から腰椎軸上において胸部と下腿方向へのダブルの引っ張り応力を受けることとなる。この際そのベクトルの力を極力有効にするためには、重力の影響を受けにくくする必要があり、脊柱と地面とが平行となるよう仰臥姿勢をとることが望ましい。
【0017】
大切なことは、自身で作り出す力を脊柱体軸とベクトル上において平行となるように頸椎31や腰椎32の患部を挟んだ骨格上反対側組織に対して、その患部を押し広げる方向へダイレクトに加える機構を備えれば、作用と反作用のメカニズムにより人が1方向へ加える力で2倍する引っ張り応力を患部に与えることができることである。ただこの為には体軸上のベクトルに対して頭や肩や腰や足などが移動抑制されていないことが条件となることから、一般的には仰臥姿勢が望ましい。そしてこの自力牽引力に0011節の緊張弛緩の状態が加われば日々の骨格系の歪みや疲労性の鈍痛をとるには十分な力となる。
【0018】
具体的には例えば頸椎の場合、頭上方向へ伸びずにずれ込まない頭部装着体と、これと一体構造を成し上半身の力を用いて頭上側へ物理的に押し上げ易い機構を有する加圧体とで構成された用具を作ることである。加圧体としては上半身の力を有効に発揮させうる形状と加圧位置を有するグリップなどを左右両側に備えると良い。
【0019】
同様に例えば腰部の場合、下腿方向へ伸びずにずれ込まない腰部装着体と、これと一体構造を成し上半身の力を用いて下腿方向へ押し込み易い機構を有する加圧体とで構成された用具を作ることである。例えば上半身の力を手を介して加える場合の加圧体としては、上半身の力を有効に発揮させうる形状と加圧位置を有するグリップなどを左右両側に備えると良い。
【0020】
この様に人から生み出される上半身や下半身の力は、それぞれが直接牽引目的を得るには運動学上それだけで十分なものではないが、それを効率良く利用する為の運動メカニズムが組み込まれた用具を開発することにより、強すぎないが生活上生じる骨格系の歪みを取るには十分な力が患部に対して加える事が可能となる。
【0021】
この発明の対象となる用具は0017節を実行しうる環境を作り出すための構造を有することが必須となる。実際にはこの環境下で人が行う運動が0017節を実行させるのである。従ってこの環境を作り出す構造体は0018節や0019節で示されている患部の反対側にある体軸組織に対して装着体や加圧体を用いるものだけでなく、その運動を行い易くさせうる体位を構成できる用具の開発によっても可能となります。
【0022】
それはその上に寝る事により、体の位置関係が強制的に指定されるもので、装着用具を用いなくても0017節が実行可能な環境を作り出す体位置指定ベッドである。具体的には指定されている足置き位置に両側のかかとを置き、その足置き位置から指定された位置に指定された角度の背もたれや枕を置くことにより、腰部が底より少し浮き上がると同時に肩部に脊柱体軸と平行する方向へ移動制限を加えない環境を作り出すことができる。この環境下で両手のひらを両足の付け根部分に直接押し当ててここを加圧点として脊柱と平行な下腿方向へ上半身の力を利用してぐっと押し込むことが可能となる。この構造体で大切な要素は上半身の力を目的通りに伝え易くする為の大腿部の角度は勿論のこと、腰部と肩部が脊柱体軸と平行なベクトル上において固定されるなどの運動制限を受けない背もたれの角度と構造、そして脚力が牽引環境に及び難いかかとからの背もたれまでの距離である。この脚力が体を支える目的で環境内に強く及ぶと上半身の加圧力を減衰させてしまう。
【0023】
ここで作られる構造的な特性を浴槽内面部や水中に持ち込めば、重力による制限から解放されてお湯に拠る浮力が加わり体を支える余分な力が無くなるために、より高い牽引効果を生むことができる。
【発明の効果】
【0024】
長時間の立ち仕事や同じ姿勢でのデスクワークや長時間の自動車運転など、立位生活において脊椎に加わる疲労性の歪みは経年的に大きな歪みへと増大し、これに運動不足や加齢に伴う筋力の低下が加わり急性期の大きな痛みを伴う症状を発症する。この病状ともなれば専門家の手に委ねられた治療が必要となるが、この治療を終えた後もこれに対する因子が改善されることもなく、同じ生活習慣の繰返しのなかでその腰痛持ちのQOL(Quality Of Life)を脅かす。現状でこれに対するには過給行動を抑制する腰痛ベルトや筋肉疲労の回復を目指す湿布などの方法しかなく、これらは痛みの原因を取り除くものではなく、痛み止め薬を除けば寝て起きる体の自然治癒力に期待するしかない現状である。この発明品は腰部や頸部に装着するか、丸めて持ち運べるベッド状にすることができるほど小型化でき、どこへでも持ち運べて簡単なストレッチ手技により瞬時に除痛と歪み強制が行える利点をもつ。この機能的な要素に加えて全ての行為が自身の管理環境下で処理されるため、大きな安全を生み、専門家へ通院すること無く日々そしてその都度使える簡便な利用法を生活の支えとして備えることが可能となる。
【0025】
また、簡便で安全な利用法は加齢と共に増加する腰痛持ちの生活習慣における悪化を予防することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】簡単自立牽引具を用いた腰椎牽引実施例を示す側面図である。
図2】簡単自立牽引具を用いた頸椎牽引実施例を示す側面図である。
図3】簡単自立牽引用体位指定ベッドの実施例を示す側面図である。
図4】簡単自立牽引用体位指定型の浴槽内での実施例を示す側面図である。
図5】脊柱を体軸とする人骨格の関係を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は簡単自立牽引具を用いて腰椎部を牽引する際の様子を示している。この用具は伸び縮みしないナイロンなどの素材で作られたベルト2によりバックル等を利用して体形に合わせて長さ調節を行い、腰骨上部やズボンベルトの上に弛みが無い様にきつめに装着されます。
【0028】
この牽引具の構造はベルト2を基礎として、1で示されるプラスチック等で構成された加圧用グリップ、及び3で示されるステンレス板などで構成される加圧強制体、及び4で示される伸び縮みしないナイロンなどで作られた下腿付け根部牽引ベルトを有し、これらがベースとなる厚手のナイロン生地や革などを介して固定一体化されており、左右の両側にこれを配置します。
【0029】
中でも1で示される加圧用グリップは5で示される下腿方向へ手の甲などを利用して強く押し込む必要から、一般的に物を持ち上げるグリップなどと比較して加圧面が広めで少し太く手に馴染みの良い構造が必要である。またグリップの位置は5方向の力を出し易い両側腰骨の辺りが良いようである。また自力で行うグリップへの加圧行為を目的の5方向へ有効に持ち込むにはグリップの暴れを防ぐために3の加圧強制体が必要となる。従って最低でもメイン牽引ベルト2を主体として加圧用グリップ1と加圧強制体3を両側に備えた構造で、しかもこれらが運動に対して物理的に歪み無く一体となる構造が望まれる。4の下腿付け根部牽引ベルトはメイン牽引ベルト2をきつめに締めきれない人や膝を伸ばしきる体制が辛い人に対して、下腿付け根部に牽引力の及ぶ場所を設けたもので予備的手段として用いる。勿論これも3の加圧強制体と一体構造を成す。
【0030】
図1で示される動作は、仰臥姿勢の中、左右両側のグリップへ手の甲を当てたり握ったりした状態で5の下腿方向へ自力で強く押し込みます。これと同時に反作用として戻そうとする力が緊張状態にある上半身を経由して胸椎に加わります。これが6で示す引っ張り応力で、5と6に挟まれた腰椎32をその上下両側へ引き伸ばします。腰椎に痛みがある場合は瞬間的この影響を感じますので、緊張を弛緩させながら痛みをこの引っ張り応力に委ねることにより、より大きな効果を得る事ができます。この効果とは腰椎の歪み補整と除痛です。当然これを複数回重ねることも可能ですので痛みと力のなじませ方も自分成りに調節出来ます。なお、この力は機械的なものと比べればさほど大きなものではありませんので、痛みが出ていない人や緊張状態にある人に対しては、殆ど影響を及ぼさないことから瞬間的な対応も含めた個人利用における安全性が大きく担保されたものとなります。
【0031】
図2は簡単自立牽引具を用いて頸椎を牽引する際の様子を示している。これは10で示される押し込み方向に対してあごなどを引っ掛け運動抑制させた伸び縮みの少ないナイロンや革を用いた頭部装着用メイン牽引ベルト8を頭部に装着して使用する。自力加圧用グリップ7と加圧強制体9は0027節や0028節と同じ組成と構造と動作目的をもつ。
【0032】
図2で示される動作は、耳より上部に置かれた左右両側の自力加圧用グリップ7を10へ押し込むことにより、0029節と同様の運動メカニズムにより引っ張り応力11が生まれる。これにより10と11に挟まれる頸椎31は両側へ引き伸ばされます。この行為における痛みに対する利用上の対応とその安全性は0029節と同様です。
【0033】
図3は用具を装着すること無く、簡単自立腰椎牽引が行える体位を作りあげるための体位指定ベッドを用いたストレッチの様子を示している。この体位を作りだすポイントは3つあり、1つ目は上半身の力を下腿付け根部14に対して強く加圧できる形にすること、2つ目は脊椎体軸において上下位置であるこの場合は18と19に対して運動抑制をする環境を作らないこと、3つめは全体の構造を支える為の大腿部の力が牽引環境へ強く加わらないことです。これを実行させるためには、かかと位置指定部12と背中位置指定部13が重要な位置となり、これに背もたれ形成部21の傾斜角が実行上大切となる。加えて隙間18は利用者の意思により作られる必要があるため、12と13の位置を容易に変更できて固体毎の対応を容易ならしめる機構が必要となる。
【0034】
この図では組立式の簡易型ベッドによる手法を示している。母体部20はかかと位置指定部12から始まり背もたれ形成部21及び背もたれ留め具22までを伸び縮みの少ない一体構造とする。伸び縮み少なく屈曲可能で且つ体運動を支える為に、このベッドの長手方向に対して2本から3本のナイロンベルトを構造補強材として備え、かかと位置指定部12と背もたれ形成部21には自然体重では大きく歪まない厚さをもつプラスチック板構造体を有する。全体に繊維やクッションで構成して、0032節で示された12と13の距離は12のプラスチック板構造体の巻き込みにより調節される。背もたれ留め具22をはずして、逆回転に背もたれ部のプラスチック構造体を巻き込むと小型化されて携帯可能となる。またこの形に1体成型されたクッションなどにプラスチック板や長手方向への伸び縮み抑制構造帯を取り付けて作り上げる事もできる。
【0035】
この体位下で、両手のひらを両下腿付け根部14に置き、15方向に対して上半身の力を使ってぐっと強く押し込むと、ベクトル上の力16が体の構成体軸である脊椎の尾底部に加わり、その反作用として緊張した上半身を介した胸椎に引っ張り応力17が生じる。16と17に挟まれる腰椎は両側へ引っ張り応力を受けて2倍の力で牽引されることとなる。また、この行為における痛みに対する利用上の対応とその安全性は0029節と同様です。
【0036】
図4図3における体位指定の考えを浴槽内に持ち込んだ場合の様子を示している。図3における使用法においては重力の影響を受け易いため緊張を弛緩するための要領が必要であるが、浴槽内においてはその浮力により体形のバランスが容易に構成できるので余分な力が環境内に加わらない。ただ浴槽の大きさに制限を受ける為、かかと置き位置23を底より高い位置に置いたり、頭部支え位置24を置いたりして、脊椎体軸の上下を運動拘束させないように隙間26などを設けることが必要となる。この環境下で、両手を両下腿の付け根部25に置き、上半身の力を利用して脊椎軸と平行な方向27へぐっと押し込むと、脊椎においては同様のベクトル28が尾底部に加わり、その反作用で緊張した上半身を介した引っ張り応力29が胸椎に生ずる。この28と29に挟まれる腰椎は両側へ引っ張り応力を受けて2倍の力で牽引されることとなる。また、この行為における痛みに対する利用上の対応とその安全性は0029節と同様です。
【0037】
浴槽内においてはその浮力により重力の影響を受けずに様々な体位が容易に取れる為、具体的な形状は示さず、その形状の前提となる必須条件のみを説明する。これは0031節の体位を作り出す3つのポイントと全く同じです。1つ目は上半身の力を下腿付け根部25に対して強く加圧できる形にすること、2つ目は頭部支え位置などを利用して脊椎体軸において上下位置である、この場合は26に対して運動抑制をする環境を作らないこと、3つめはかかと位置23を浴槽より高い位置に置くなどして、全体の構造を支える為の大腿部の力が牽引環境へ強く加わらないことです。これらの条件を満足させられる体位指定型30を浴槽内に持ち込むか、或いはそのような型をもつ浴槽内壁をつくることにより簡単自立牽引が実行可能となる。
【0038】
装着具及び体形位置指定具の両方を併用する利用方法であっても勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
腰痛は日本で一番数の多い持病疾患とされています。この多くは過去に動けなくなるほどの通院を必要とする大きな腰痛を経験しており、治って後もこの発症因子を抱えながら、体の疲労と共に表れる重苦しい鈍痛を腰痛ベルトや湿布や痛み止め薬などを利用してしのいでいる状況です。これらの家庭療法は即効性が低く、また原因となる骨格系の歪みを取る機能はありませんので寝て起きての自然回復を待つのみです。我慢できずに整骨院等の専門家へ通院する方も多いのですが、諸所の事情により通院出来ずにいる方が圧倒的に多いのが現状です。また加齢性の筋力低下による生活習慣的な腰痛にも日々利用できますので、これらの対象者に自身でその都度行える矯正機能と高い除痛機能をもつ安全なユニットを簡単な構造体と手軽な利用法で供給できる訳ですから、腰痛持ちのQOL(Quality Of Life)を大きく向上させることと成る。
【符号の説明】
【0040】
1 簡単腰椎自立牽引用具の自力加圧用グリップ及びその設置位置を示す。
2 簡単腰椎自立牽引用具の腰部締め付け用メイン牽引ベルト
3 簡単腰椎自立牽引用具の加圧強制体
4 簡単腰椎自立牽引用具の下腿付け根部牽引ベルト
5 簡単腰椎自立牽引用具を用いた際の自力での押し込み方向を示す。
6 簡単腰椎自立牽引用具を用いた際の反作用により腰椎に加わる引っ張り応力を示す。
7 簡単頸椎自立牽引用具の自力加圧用グリップ及びその設置位置を示す。
8 簡単頸椎自立牽引用具の頭部装着用メイン牽引ベルト
9 簡単頸椎自立牽引用具の加圧強制体
10簡単頸椎自立牽引用具を用いた際の自力での押し込み方向を示す。
11簡単頸椎自立牽引用具を用いた際の反作用により頸椎に加わる引っ張り応力を示す。
12自立牽引用体位指定ベッドにおけるかかと位置指定部を示す。
13自立牽引用体位指定ベッドにおける背中位置指定部を示す。
14自立牽引用体位指定ベッドを用いた際の手のひらに拠る下腿付け根部加圧位置を示す。
15自立牽引用体位指定ベッドを用いた際の自力加圧方向をしめす。
16自立牽引用体位指定ベッドを用いた際の脊椎に加わる下腿方向への応力ベクトルを示す。
17自立牽引用体位指定ベッドを用いた際の反作用により腰椎に加わる引っ張り応力を示す。
18自立牽引用体位指定ベッドを用いた際の腰部下部に生じる隙間を示す。
19自立牽引用体位指定ベッドを用いた際の肩部が運動拘束されていないことを示す。
20自立牽引用体位指定ベッドの母体部
21自立牽引用体位指定ベッドの背もたれ形成部
22自立牽引用体位指定ベッドの背もたれ留め具
23浴槽用自立牽引用体位指定型を用いた際のかかと置き位置を示す。
24浴槽用自立牽引用体位指定型を用いた際の頭部支え位置を示す。
25浴槽用自立牽引用体位指定型を用いた際の手のひらに拠る加圧位置を示す。
26浴槽用自立牽引用体位指定型を用いた際の浮力により生ずる体の隙間を示す。
27浴槽用自立牽引用体位指定型を用いた際の自力加圧方向を示す。
28浴槽用自立牽引用体位指定型を用いた際の脊椎に加わる下腿方向への応力ベクトルを示す。
29浴槽用自立牽引用体位指定型を用いた際の反作用により腰椎に加わる引っ張り応力を示す。
30浴槽用自立牽引用体位指定型。
31痛みの対象個所である頸椎部。
32痛みの対象個所である腰椎部。
図1
図2
図3
図4
図5