(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1の回路遮断器の全体構成の断面図を示す。
図1において、10は回路遮断器、11は電源側端子、12は固定接触子で、折り返した形状を有し、13は折り返し形状の固定接触子12に設置した固定接点、14は折り返し形状の固定接触子に設置したアークランナ、15はアークランナ14に配置した永久磁石、16は可動接点、17は可動接触子、18は接点間に発生したアークを消孤する消孤装置、19は電流をON−OFFするための可動接触子17を駆動する開閉機構(点線枠)、20は過電流または短絡電流が流れた際に開閉機構19を駆動し、接点を開離させる引き外し装置(点線枠)である。
21、24は電流を流す導体、22は温度により変化するバイメタル、25は負荷側端子、26は可動部、27は可動接触子の回動支点、28は可動コア、29は固定コア、30は開閉機構部や引き外し機構などを収納するケース、31はケース30のカバーである。
【0010】
次に、回路遮断器10の構成について説明する。
図1において、回路遮断器10は電源側端子を逆L字形状に折り曲げ、続けてL字形状に折り曲げ、平らな部分を一部有し、さらに折り曲げ、階段状とし固定接触子12を形成し、固定接点13を設置する。
また、固定接触子12にはアークランナ14を設置し、アークランナ14には永久磁石15を配置する。この固定接触子12の構成については後で詳細に説明する。
【0011】
固定接点13に対向する位置に可動接点16が配置され、可動接点16は可動接触子17に設置、固定されている。また、電流を遮断する際に接点間に発生したアークを消孤する消孤装置18を可動接触子17の周囲に配置する。
可動接触子17は、フレキシブルな導体21に接続され、導体21は引き外し装置20を構成しているバイメタル22に接続される。バイメタル22は、ケース30内でほぼ垂直に配置し、バイメタル22の中央部より導体24に接続し、導体24は負荷側端子25に接続される。
引き外し装置22を構成するバイメタル22は、過電流による熱で先端が変形し、変形することにより可動部26を押し、開閉機構19を動作させ、接点を開離し電路を遮断する。
【0012】
また、引き外し装置22は、電路に過電流が流れたとき開閉機構19を動作させるバイメタルと、電路の短絡電流が流れたとき開閉機構19を動作させる電磁式引き外し機構をバイメタル22の隣に並んで配置している。
電磁式引き外し機構は、可動コア28と固定コア29を設置し、短絡電流が流れると電磁力が発生し、可動コア28を吸引し、可動部26を押し、開閉機構19を動作させ、接点を開離し電路を遮断する。
【0013】
次に、回路遮断器の可動接触子と固定接触子の周囲の構成について説明する。
図2Aは、固定接触子、可動接触子、アークランナ及び消孤装置の構造の斜視図を示し、
図2Bは、
図2Aの固定接触子の部分を電源・負荷側方向に1/2カットした場合の斜視図を示し、双方とも接点が開放された状態を示している。
【0014】
図2Aにおいて、電源側端子11は電源ラインと接続するための孔111を有し、逆L字形状に折り曲げ、続けてL字形状に折り曲げ、固定接触子12を形成する。この固定接触子12の構成については後で詳細に説明する。
固定接触子12の細長い突起121のほぼ中央部には固定接点13を配置し、固定接点13に対向する箇所に可動接点16を可動接触子17の先端に配置し、可動接触子17は孔27を支点として回動し、可動接点16が固定接点13と接触したり開離したりする。
また、固定接触子12の細長い突起121の下側にはアークランナ14を配置する。そしてアークランナ14にはつい立て141を中央部に設けている。さらに、可動接触子17と固定接触子12の周囲を取り囲むように消孤装置18を配置する。消孤装置18は、複数の板材を所定の間隔を持たせ、積み上げる構成としている。
【0015】
また、
図2Bにおいて、アークランナ14は凹部形状を有し、固定接点13の下側に永久磁石15を配置する。
このように固定接点13の下側に永久磁石15を配置した構成により、接点の周囲に磁界を発生させ、接点間で発生したアークに電磁力を加え、アークを駆動することができる。
【0017】
図3Aにおいて、電源側端子11には、電源側ラインと接続するための孔111を有し、逆L字形状に折り曲げ、続けてL字形状に折り曲げ、固定接触子12を形成する。また、固定接触子12は、折り曲げた箇所より平らな部分を有し、この平らな部分で中央に固定接点13を配置するための細長い突起121を負荷側の辺から形成し、突起の周囲を逆コ字形状の孔122を形成するように打ち抜く。そして逆コ字形状の孔122を有する負荷側寄りの部分で、細長い突起121はそのままで周囲を階段状に折り曲げる。従って、固定接触子12の細長い突起121は階段状に折り曲げた高さで、電源側に突き出た形状となり、この細長い突起121の下側は孔122により空間を有する。固定接触子12の細長い突起121のほぼ中央には固定接点13を設置、固定し、この固定接点13の位置は可動接点16と合致する位置とする。
また、細長い突起121の裏側には、
図4に示すようなアークランナ14を配置するが、これは
図3Bを用いて説明する。
【0018】
図3Bは、
図3AのA−A断面図を示す。
図3Bにおいて、固定接触子12は、電源側端子11を逆L字形状に折り曲げ、続けてL字形状に折り曲げ、平らな部分をプレスなどにより打ち抜き孔122の部分を形成し、階段状に折り曲げ、固定接点13を配置する細長い突起121は折り曲げないで、固定接点13を固定している。この固定接点13を固定している固定接触子12の細長い突起121の下側にアークランナ14を配置する。
アークランナ14は、固定接点13のほぼ真下に永久磁石15を配置するため凹部形状を有し、固定接触子12の細長い突起121にかしめなどで固定する。
また、このアークランナ14の構造は
図4に外観斜視図を示しているが、永久磁石15を配置する電源・負荷側方向に対し直角方向についたて141を両側に配置し、永久磁石15を覆う構成にする。
【0019】
次に、
図3Cに
図3AのB−B断面図を示す。
図3Cにおいて、アークランナ14は、固定接触子12の細長い突起121に固定した固定接点13のほぼ真下に永久磁石15を配置し、その両側についたて141を形成している。
このような
図3Cの構成において、永久磁石15の磁極の上側をN極、下側をS極とすると、磁力線40はN極からS極に向かって放物線を描くように出ている。また、永久磁石15からの磁力線はN極から360度全周に渡って出て、全周に出ていた磁力線はアークランナ14の金属のつい立て141の端に集中する。そしてS極に戻るような磁力線を描く。
【0020】
次に、本発明のアークランナ14について説明する。
図4は、アークランナ14及び永久磁石15の外観斜視図を示す。
アークランナ14は、電源・負荷側方向に凹部形状を有し、この凹部形状に永久磁石15を設置する。永久磁石15の極の位置は垂直方向とし、上側にN極、下側にS極となるように配置する。場合によっては極を逆にすることも可能である。また、アークランナ14の電源・負荷側方向と直交する方向に、つい立て141を永久磁石15の両側に形成する。このつい立て141は、永久磁石15のN極から出た磁力線がつい立て141の端面に集中して入り、アークランナ14を介してS極に入るようにするためである。
【0021】
ここで、永久磁石15の種類について説明すると、永久磁石として、鉄の酸化物を含んだ結晶体の集まりであるフェライト磁石、ネオジウム、鉄、ホウ素を主成分とするレアアース磁石で、永久磁石で最も磁力の強力なネオジウム磁石、サマリウムとコバルトで構成されたサマリウムコバルト磁石、アルミニウム、ニッケル、コバルトなどを原料として鋳造されたアルニコ磁石などがある。
【0022】
次に、回路遮断器の可動接点16と固定接点13が接触した閉極状態から過電流や短絡電流により両接点が離れる開極状態に移行するとき、両接点間にアークが発生する。
また、アークは、両接点間の電位差及び消孤装置18に接触し、冷却されることにより消孤する。交流回路の場合、電流零点が存在するため両接点間に発生したアークは短時間で消孤する。しかし、直流回路においては、直流零点が存在しないためアークが消孤され難く、長時間持続するかもしくは遮断不能となるケースもある。
【0023】
特に、例えば20A程度以下の小電流域では、接触子を流れる電流から発生する磁界が小さいため、アーク自身に作用する電磁力が弱く、アーク駆動力が低下する。そのため、アークが接点上に停滞してしまい、遮断が困難になる。
そこで、本実施例では固定接点のすぐ下に永久磁石15を配置することで、接点の周囲に磁界を発生させ、アークを駆動する。
【0024】
次に、
図2A及び
図2Bに示した本発明の実施例1の構成において、過電流等により発生したアークについて
図5〜
図8を用いて説明する。
図5において、
図5(a)は固定接点上のアークの状態を示す図で、
図5(b)は
図5(a)の中心線上の断面図を示す。
図5(a)は固定接点上の磁界の方向40及びアークに付加される電磁力の方向を示し、永久磁石15は固定接点13に近い方をN極、遠い方をS極とし、通電方向は可動接点16から固定接点13に流れる場合について説明する。
可動接点と固定接点に発生したアーク70は、永久磁石15の磁界及びアーク自体に流れる電流により電磁力を受け、その方向はフレミングの左手の法則に従う。固定接点上からみた磁界の方向は、中心線を軸に対称になっており、位置により異なる。
そのため、アーク70に働く電磁力の方向も位置によって異なるため、電磁力を受け移動したアーク70は方向を変えて動くので、固定接点上で時計回りに円を描くように移動する。
すなわち、
図5(a)において、41はアーク70の足(アークと固定接点が接触する点を足と呼ぶことにする)を表し、紙面に対し表より裏に垂直に電流が流れることを意味する。
また、足41の点における磁界の方向は矢印51の方向で、真下にある永久磁石15より固定接点13を介して固定接点13の中心より放射状に出る方向である。磁界の方向は、磁力線の方向で、永久磁石のN極より放物線状に出てS極に戻るので固定接点上では放射状に出る方向となる。
従って、フレミングの左手の法則より電磁力は、矢印61のように働き、アーク70は移動する。
【0025】
次に、アーク70が足41より電磁力61により足42に移動した場合、足42では、アーク70に流れる電流の向きは紙面に対し表より裏に垂直に流れる方向で、磁界の方向は矢印52のように下向きの方向であるので、電磁力は矢印62に示す斜め左上方向となる。従って、アーク70は斜め左上方向に移動する。
次に、アーク70が足42より電磁力62により足43に移動した場合、足43では、アーク70に流れる電流の方向は、紙面に対して表より裏に垂直な方向で、磁界の方向は矢印53で示す斜め左下方向であるため、電磁力は矢印63のように上向き方向に働く。従って、アーク70は上方に移動する。
次に、アーク70が足43より足44に移動した場合、足44では、アーク70に流れる電流の方向は紙面に対して表より裏に垂直な方向で、磁界の方向は矢印54で示す斜め左上方向であるため、電磁力は矢印64のように斜め右上方向に働く。従って、アーク70は斜め右上に移動する。
次に、アーク70が足44から足45に移動した場合、足45では、アーク70に流れる電流の方向は紙面に対して表より裏に垂直な方向で、磁界の方向は矢印55で示す上向き方向であるため、電磁力は矢印65のように右方向に働く。従って、アーク70は右方向に移動する。
次に、アーク70が足45から足46に移動した場合、足46では、アーク70に流れる電流の方向は紙面に対して表より裏に垂直な方向で、磁界の方向は矢印56で示す斜め右上方向であるため、電磁力は矢印66のように斜め右下方向に働く。従って、アーク70は斜め右下方向に移動する。
【0026】
そして、アーク70が足46から足41に移動し、アーク70は連続して動くので、固定接点13上を時計方向に円を描くように動くことになる。
【0027】
図5(b)は、アーク70と永久磁石15の磁界を示す。
図5(b)において、アーク70は可動接触子17に固定した可動接点16と固定接触子121に固定した固定接点13の間に発生する。アーク70に示した矢印は電流の向きを表している。また、アークランナ14に配置した永久磁石15で上側をN極、下側をS極とすると、磁力線40は図に示すようにN極面より全周に渡って放射状に出て放物線を描きながらS極に戻る。また、磁力線の途中に
図3Cに示すようなアークランナ14のつい立て141などが存在すると、磁力線はその金属板に集中して通る。
【0028】
次に、アーク70が接点間で円を描く状態を
図6A及び
図6Bにより説明する。
図6Aは可動接点16と固定接点13の間にアーク71が発生し、フレミングの左手の法則により電磁力が働いて矢印80のようにアーク71が移動し、アーク72の位置に移動した状態を示す。そして
図6Aに示したアークの状態から、次に
図6Bに示すアークの状態に移動する。
図6Bは、
図6Aのアーク72がフレミングの左手の法則により電磁力の働きで矢印81のように移動し、アーク73になった状態を示している。
この
図6Aから
図6Bに示したように接点間に生じたアークは、連続して固定接点13上及び可動接点16上で円を描くように移動し回動する。
【0029】
次に、
図7に接点間に発生したアーク70の動きの状態の図を示す。
図7において、
図7(a)はアークの動きの状態を示し、
図7(b)はアークの中央部の断面図を示す。
図7(a)は可動接点16と固定接点13との間に発生したアーク70の動きを表したもので、実際は連続して円を描いて動いている。また、アーク70は中央部が円弧状の膨らんだ形状を示す。
【0030】
次に、
図7(b)は、アーク70の中央部のC−C断面図を示す。
図7(b)は、アーク70がフレミングの左手の法則によって電磁力が働き、時計回りに回転する動きを示している。
また、アーク70の電流の向きを固定接触子12から可動接触子17の方向とすると、アーク70は反時計回りに回転する。または、永久磁石のN極とS極を逆にしてもアーク70は反時計方向に回転する。
そして、接点上で移動するアーク70は、消弧装置18の内壁に接触しながら駆動することにより急速に冷却され、消弧される。
【0031】
即ち、本発明の実施例1は、接点上に発生したアークは、永久磁石の磁界および自身の電流により、電磁力を受け、その方向はフレミングの左手の法則に従う。接点上からみた磁界の方向は、中心線を軸に対称になっており、位置により異なっている。そのため、電磁力の方向も位置によって異なるため、電磁力を受け移動したアークは方向を変えて動くため、接点上で時計回りに円を描くように移動する。
【0032】
永久磁石の極性が逆に配置された場合についても、電磁力の方向が180°反対になり、アークは逆方向の反時計回りに円を描くように駆動するため、先述した配置と同様の効果が得られるため、磁石の極性はどちらでもよく、組立て性も優れている。
また、電流の通電方向についても、同様の変化となるためどちらの方向でも同様の効果が得られ、通電方向によらない開閉性能を確保できる。
また、本実施例において、永久磁石の極性又は電流の通電方向を逆にした場合についても、アークの回転する方向が逆になるだけで同様の効果が得られる。また、磁石が固定接触子12の下に隠れ、アークに晒されないため、永久磁石を保護するための部材が不要であり、経済面でも優れている。
【0033】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について図を用いて説明する。
図8は、永久磁石15を固定接点13のサイドに配置した場合の固定接触子12及び可動接触子17の周辺の構成の斜視図を示す。
また、
図8は、固定接触子12を電源・負荷側方向に1/2カットした図を示しており、
図2Bと異なる点は永久磁石の配置の位置である。
すなわち、永久磁石15を、固定接点13を配置する固定接触子12の突起部121の固定接点13の負荷側方向に配置している。
【0034】
次に、
図8に示した固定接点13、永久磁石15及び固定接触子の突起121の位置の上面図で、
図9(b)は中心線における断面図を示す。
図9(a)において、固定接点13における接点間のアーク70は、通電方向を可動接点から固定接点に流れる場合を考える場合を考えると、電流の方向は紙面に対し表から裏に垂直に流れる方向で、磁界の方向は永久磁石15が固定接点13の右側に配置されているので、矢印100のような方向となりフレミングの左手の法則によって電磁力は矢印90のように斜め右上方向に働く。
【0035】
次に、アーク70の足80から電磁力によって移動した足81において、電流の向きは紙面に対し表から裏に垂直に流れる方向で、磁界の方向は矢印100(点線矢印)のように斜め左下方向であるので、電磁力は矢印100のように斜め左上方向に働く。従って、アーク70は足81より斜め左上方向に移動し、足82の位置に移る。
次に、アーク70が足82にあるとき、足82では電流の方向は紙面に対し表から裏に垂直方向に流れ、磁界の方向は矢印102に示すように斜め左上方向であるため、電磁力は矢印92のように斜め右上方向の力が働く。従って、アーク70は足82より足83に移動する。
【0036】
次に、アーク70が足83にあるとき、足83では電流の方向は紙面に対し表から裏に垂直方向に流れ、磁界の方向は矢印103に示すように斜め右上方向であるため、電磁力は矢印93のように斜め右上方向の力が働き、この位置に留まっている。
即ち、負荷側よりみて、アーク70は固定接点13上の左半面の領域では円を描くように動き、固定接点13上の右半面の領域では留まった状態となる。
そして、負荷側から見て、左半面にて発生したアーク70は、時計回りに円を描きながら右半面へと移動する。この際、消孤装置18の内壁に接触しながら駆動することにより急速に冷却され、消弧される。
【0037】
また、負荷側から見て右半面にて発生したアークについては、消弧装置17の内壁側面に早急に接触するため、早い段階でアークを冷却し消弧する。
【0038】
次に、
図9(b)に
図9(a)の中心線の断面図を示す。
図9(b)において、固定接点13の負荷側に永久磁石15を固定接触子12の突起部121に配置し、永久磁石15の固定接点側をN極とし、負荷側をS極としている。このような永久磁石15の配置により、磁力線はN極より全周に渡り放射状に出て放物線でS極に戻る。従って、固定接点13では
図9(a)に示す磁界の方向となる。また、実施例2では永久磁石15を固定接点13の負荷側に配置しているが、電源側に配置しても効果は同じである。