(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、簡単な構造で、生体信号を利用した実習を行うことができる医療用実習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、少なくとも胴体部、頭部及び上肢部を有するとともに、内部に駆動機構を備えた擬似患者体と、前記駆動機構の駆動を制御する制御部と、該制御部に接続された操作部と、生体信号を測定する生体信号測定箇所へ装着可能な擬似測定部と、
前記生体信号測定箇所に装着された前記擬似測定部による擬似測定開始を検出する測定開始検出部と、該測定開始検出部が前記擬似測定開始を検出することにより、前記生体信号を模した擬似生体信号を出力する擬似生体信号出力部とを備えた医療用実習装置であることを特徴とする。
【0008】
上述の少なくとも胴体部、頭部及び上肢部を有するとともに、内部に駆動機構を備えた擬似患者体は、胴体部内部に駆動機構を備え、胴体部に対して頭部及び上肢部や胴体部自体を駆動機構で駆動させる擬似患者体、頭部及び上肢部にのみ駆動機構を備えて、頭部及び上肢部を駆動機構で駆動する擬似患者体、あるいは、胴体部、頭部及び上肢部のすべてにそれぞれ駆動機構を備えて、頭部及び上肢部を駆動機構で駆動するとともに、擬似患者体、あるいは、胴体部に対して頭部及び上肢部や胴体部自体を駆動機構で駆動させる擬似患者体とすることができる。
【0009】
なお、駆動機構による駆動は、成人の動作を模した駆動、子供の動作を模した駆動、あるいは老人の動作を模した駆動を設定してもよく、さらには各駆動を性別ごとに設定してもよく、また、元気な状態を模した駆動や、痛みが伴ったり、倦怠感のある状態での駆動を模して設定してもよい。また、上述の駆動には、頭部及び上肢部の駆動、頭部における各部位の変形、あるいは音声出力などを含む概念である。さらにまた、少なくとも胴体部、頭部及び上肢部に加えて、下肢部を有する擬似患者体であってもよい。
【0010】
上述の擬似測定部は、実際に測定可能な市販の血圧計や心電計などの生体信号の測定機具におけるカフや電極などの測定部を用いてもよいが、これらを模した擬似の測定機具のカフや電極などの擬似の測定部、あるいは、擬似のカフや電極などの測定部単体であってもよい。
【0011】
上述の測定開始検出部は、例えば、カフにエアを供給して締め付け圧力を検出したり、心電計における電極の電流を検出するなど、測定部による測定開始動作や測定部の装着を検出してもよく、また、測定機具の測定開始ボタンの押下や操作PCでの開始操作又は装着を検出して測定開始としてもよい。
【0012】
上述の前記生体信号を模した擬似生体信号は、予め実際に測定した生体信号の実測結果であってもよく、例えば、様々な症状における傾向を盛り込んで作成した生体信号であってもよい。さらには、複数種類の擬似生体信号の中から、装着された擬似測定部の種類に応じて選択した擬似生体信号、あるいは、1種類の擬似測定部にしか対応しない場合であっても、様々な状態に応じて複数の擬似生体信号を選択してもよく、単に擬似生体信号そのままであってもよい。
【0013】
上述の擬似生体信号出力部は、測定機具や擬似患者体あるいは制御装置に設けた表示部に表示する、スピーカなどの音声を出力する音声出力部、擬似生体信号を印字して出力するプリンタなど、あるいはそれらの組み合わせた出力であってもよい。
【0014】
上述の操作部は、実習や測定の開始操作や、擬似生体信号の出力操作、及び駆動機構の駆動操作や音声出力など、医療用実習装置を用いて実習を行う場合に必要なシナリオ選択、実習の記憶、及び実習の再生などの操作のうちひとつの操作、あるいは、複数の操作を行うGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を含む概念である。
【0015】
この発明により、簡単な構造で、生体信号を利用した実習を行うことができる。
詳しくは、測定開始検出部が、生体信号測定箇所へ装着した擬似測定部による擬似測定開始を検出することにより、前記生体信号を模した擬似生体信号を擬似生体信号出力部に出力するため、例えば、表面にスキン層を設けた発泡体で構成された擬似患者体の脈動動作装置におけるチューブに空気を供給して脈動させるなど複雑な構造を必要とせず、あたかも、擬似測定部で生体信号を測定したような実習を行うことができる。
【0016】
この発明の態様として、前記生体信号測定箇所への前記擬似測定部の装着を検出する装着検出部を備えるとともに、前記擬似生体信号出力部は、前記測定開始検出部による前記擬似測定開始の検出、及び前記装着検出部による前記擬似測定部の装着検出により、前記擬似生体信号を出力する構成とすることができる。
【0017】
この発明により、実際の診療を忠実に再現した実習を行うことができる。
詳しくは、前記生体信号測定箇所への前記擬似測定部の装着を検出する装着検出部を備えるとともに、前記測定開始検出部は、前記操作部からの測定開始操作、生体信号測定器の測定開始操作、又は前記装着検出部による前記擬似測定部の装着検出のいずれか一つにより、前記擬似生体信号の測定開始を行うことで、高価な生体信号発生の医療用モデルを使用することなく市販の生体信号測定機具を使用することができる実習装置を提供することができる。
【0018】
また、前記生体信号測定箇所への前記擬似測定部の装着を検出する装着検出部を備えるとともに、前記擬似生体信号出力部は、前記測定開始検出部による前記擬似測定開始の検出、及び前記装着検出部による前記擬似測定部の装着検出により、前記擬似生体信号を出力するため、仮に、擬似測定部が生体信号測定箇所へ装着していない状態で、測定機具の開始ボタンの押下や操作PCでの開始操作を検出する測定開始検出部が前記擬似測定開始を検出したとしても、前記擬似生体信号出力部は擬似生体信号を出力せず、実際の診療を忠実に再現した実習を行うことができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記生体信号測定箇所への前記擬似測定部の装着状態を判定する装着判定部を備えるとともに、前記擬似生体信号出力部は、前記測定開始検出部による前記擬似測定開始の検出、前記装着検出部による前記擬似測定部の装着検出、並びに、前記装着判定部による前記擬似測定部の正常装着判定により、前記擬似生体信号を出力する構成とすることができる。
【0020】
上述の前記生体信号測定箇所への前記擬似測定部の装着状態を判定する装着判定部は、擬似測定部の締め付け状態などの装着状態を、実際の測定状況に即した基準と比較して判定する判定部、あるいは擬似測定部の装着する向きなど、設定された所定の装着状態であるかどうかを判定する判定部とすることができる。
【0021】
この発明により、実際の診療をより忠実に再現した実習を行うことができる。
詳しくは、前記生体信号測定箇所への前記擬似測定部の装着状態を判定する装着判定部を備えるとともに、前記擬似生体信号出力部は、前記測定開始検出部による前記擬似測定開始の検出、前記装着検出部による前記擬似測定部の装着検出、並びに、前記装着判定部による前記擬似測定部の正常装着判定により、前記擬似生体信号を出力するため、仮に、擬似測定部が生体信号測定箇所に正しく装着していない状態で、測定機具の開始ボタンの押下や操作PCでの開始操作を検出する測定開始検出部が前記擬似測定開始を検出したとしても、前記擬似生体信号出力部は擬似生体信号を出力せず、実際の診療を忠実に再現した実習を行うことができる。
【0022】
またこの発明の態様として、様々な状態の生体信号を模した複数の前記擬似生体信号を記憶する擬似生体信号記憶部を備え、前記擬似生体信号出力部は、前記擬似生体信号記憶部に記憶した複数の前記擬似生体信号のうち選択された前記擬似生体信号を出力する構成とすることができる。
【0023】
上述の選択された前記擬似生体信号は、制御部に接続された操作部によって選択された擬似生体信号や、例えば、設定された実習のシナリオに応じて選択された擬似生体信号、あるいは自動でランダムに選択された擬似生体信号などとすることができる。なお、様々な状態の生体信号とは、正常な健康状態における生体信号や、様々な症状に応じた正常でない状態における生体信号、あるいは脈拍や血圧など種類の異なる生体信号とすることができる。
【0024】
この発明により、様々なパターンに即したリアリティのある実習を行うことができる。
具体的には、例えば、実習を行う際に、所定の症状による正常でない状態の擬似生体信号などの同じ擬似生体信号ばかりが出力されると、正常でない状態の擬似生体信号である場合の対処などが固定されるため、実習者は出力された擬似生体信号を確認し、施さなければならない対処を考えるという行為を行わないが、擬似生体信号記憶部に記憶された複数の前記擬似生体信号から選択された擬似生体信号が出力されると、実習者は出力された擬似生体信号が正常なのか、あるいは異常なのか、また異常な擬似生体信号であれば、その症状に応じた対処は何かを考える必要があり、実際の診療に即したリアリティのある実習を行うことができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記擬似生体信号は、血圧、脈拍、飽和酸素度、心電位及び筋電位うちいずれかひとつ、あるいは二つ以上の組み合わせとすることができる。
この発明により、様々な症状の生体信号を模した擬似生体信号を用いて、様々な症状の実習を行うことができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記駆動機構が、少なくとも口、眼球、瞼、首、及び腕のうちいずれかひとつ、あるいは二つ以上を組み合わせて駆動する構成とすることができる。
【0027】
この発明により、例えば、瞬きや目線方向を変えるなどの眼部の動作などによって、実習者による対処に対する患者の反応などを表現でき、実際の診療に即したより臨場感のある実習を行うことができる。なお、表情をつかさどる頬部や眉毛などが駆動する構成であってもよい。
【0028】
またこの発明の態様として、実習者の音声を聞き取り認識する音声認識部と、模擬患者の音声を出力する音声出力部とを備え、前記実習者と模擬会話可能に構成することができる。
この発明により、例えば、患者に対する問診や患者とのやり取りなどを再現するような、さらに臨場感のある実習を行うことができる。
【0029】
なお、出力される音声は、成人の音声を模した成人音声、子供の音声を模した子供音声、あるいは老人の音声を模した老人音声を設定してもよく、さらには各音声を性別ごとに設定してもよく、また、元気な状態を模した音声や、痛みが伴ったり、倦怠感のある状態での音声を模して設定してもよい。
【0030】
またこの発明の態様として、正常でない異常状態を模した異常モードが設定された場合、前記擬似生体信号出力部は、異常状態の生体信号を模した擬似生体信号を出力するとともに、前記駆動機構および/または前記音声出力部は、異常状態を模した駆動および/または異常状態を模した音声出力を行う構成とすることができる。
【0031】
この発明により、実際の診療において、異常発生時に生体信号を取得して、症状や生体信号に基づいて状態を診断するという診療において非常に重要な診療行為を実習することができる。
【0032】
またこの発明の態様として、実習者が行った対処について合否を判定する対処判定部を備え、前記異常モードが設定された場合における前記実習者の対処について、前記対処判定部が合格判定した場合、前記異常モードの設定から正常モードに設定変更し、前記擬似生体信号出力部は、正常状態の生体信号を模した擬似生体信号を出力するとともに、前記駆動機構および/または前記音声出力部は、正常状態を模した駆動および/または正常状態を模した音声出力を行う構成とすることができる。
【0033】
この発明により、実際の診療において、異常発生時に生体信号を取得して、症状や生体信号に基づいて状態を診断し、その診断結果に基づいて施した対処が適していた場合に、状態が改善するという診療における場面を実習することができる。
【0034】
またこの発明の態様として、予め記憶され、実習内容に応じた複数のシナリオから少なくとも一つのシナリオを選択可能としたシナリオ設定部を備え、該シナリオ設定部が設定した前記シナリオの実習内容に応じて、前記制御部が前記擬似生体信号出力部及び前記駆動機構を制御する構成とすることができる。
この発明により、実際の診療のように、それぞれの場面における診療の実習ではなく、ストーリのある診療行為についての実習を行うことができる。
【0035】
またこの発明の態様として、実習状況を撮像する撮像部と、該撮像部によって撮像された実習状況撮像情報を記憶する実習状況撮像情報記憶部とを備え、
前記実習状況撮像情報を再生可能に構成することができる。
この発明により、実習を指導する実習指導者や実習者が、実習状況撮像情報として実習状況を再確認することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、簡単な構造で、生体信号を利用した実習を行うことができる医療用実習装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明による医療用実習装置Tについて、
図1乃至6とともに説明する。
図1は医療用実習装置Tの概略斜視図を示し、
図2は擬似患者体2の頭部2aの正面図を示している。なお、
図2において、頭部2aの内部構造を明示するため一部を切欠いて図示している。
【0039】
また、
図3は擬似患者体2における関節機構2eについて説明する概略図を示し、
図4は医療用実習装置Tにおける機能的ブロック図を示し、
図5は擬似患者体2における生体信号測定箇所Xについての概略図を示し、
図6は上肢部2cにおける生体信号測定箇所Xc1の概略断面図を示している。
【0040】
医療用実習装置Tは、
図1に示すように、診療器具1dを備えた器具台1と、患者を模した擬似患者体2と、その擬似患者体2を載せて診療実習を行うとともに、制御装置3eが組み込まれた診療台3と、制御部I(CPU)を構成するGUI(グラフィカルユーザインタフェース)として、各種情報を表示し、擬似患者体2に対する各種指示操作を受け付ける情報処理装置4と、生体信号測定機具5とで構成している。なお、生体信号測定機具5としては、血圧計51と、パルスオキシメータ52と、心電計53とを図示しているが、筋電計や脈拍計の他、体温計や呼吸数計測器などを備えてもよい。
【0041】
この医療用実習装置Tは、擬似患者体2が組込まれるとともに、擬似患者体2の動作制御、実習履歴及びその評価履歴の記憶機能等を行う情報処理装置4が組込まれることで、歯科医療における実習を行うのに適した構成である。
【0042】
なお、本実施形態では、歯科医療における実習装置について説明するが、その他、外科処理一般、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科、産婦人科、泌尿器科等の実習装置として適用することも可能である。
【0043】
器具台1は、複数の診療器具1dをセット可能なホルダ1bを有するテーブル1aと、患者の口腔内を濯ぐ際等に使用される給水栓と排唾鉢等を備えるスピットン1fと、診療台3の上方で、照明部1eaや撮像部1eb等を支持可能に構成されたアシストハンガー1e等が設けられている。
【0044】
診療器具1dとしては、例えば、エアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピース等の切削工具やスケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジ、口腔カメラ、光重合照射器等が想定される。これらの診療器具1dは、実習者Zによる駆動指示により、擬似患者体2に対する診療実習行為に用いられる。
【0045】
擬似患者体2を診療実習に適した姿勢で支持する診療台3は、基台に昇降可能に載置された座部シート3aと、その座部シート3aの後方に連接された傾動可能な背板シート3bと、その背板シート3bの上端に連接された傾動可能なヘッドレスト3cとを備え、これらを診療状況に応じた最適位置に制御するため、
図4に示すように、診療台駆動部及び操作部Jとして、座部シート昇降部a、背板シート傾倒部b、ヘッドレスト傾倒部cが設けられ、フートコントローラd(3d)によって操作制御されるように構成している。
【0046】
診療台3には、実習者Zからの診療台3、診療器具1d等に対する諸動作指示等の操作可能に構成したフートコントローラ3dが設けられるとともに、制御装置3eが内蔵されている。
【0047】
制御装置3eは、一般的な歯科用医療装置におけるマイクロコンピューター等によって構成される制御装置と同様に、フートコントローラ3d等からの指示に基づいて、診療台3の動作制御、各診療器具1dの動作制御を行う構成である。
【0048】
フートコントローラ3dで受付けられた実習者Zからの指示は、上記制御装置3eに入力され、上記制御装置3eが、当該指示に基づいて、診療台3の姿勢駆動制御、高さ駆動制御、あるいは、各種診療器具1dの動作制御を行う構成である。もちろん、各診療器具1dは、自己に設けられたスイッチに対する操作に基づいて動作を行ってもよい。
【0049】
情報処理装置4は、医療用実習装置としての機能を達成するために、擬似患者体2の動作制御、擬似患者体2に対する受診状況の取得、記憶等を行って、実習用のシナリオを実行する機能を備えている。
【0050】
情報処理装置4は、後述するように、CPU、メモリ、ハードディスク等を備えた一般的なPC本体40によって構成されている。情報処理装置4には、液晶モニタ等の表示部41,42と、キーボード、マウス等の操作部43等が接続されている。操作部43の形態は、この他にもタッチスクリーンの機能を有する表示部や、表示部上のポインタを操作するタッチパッド等種々の構成を代用したり併用したりすることができる。なお、PC本体40の近傍に備えられた表示部41は実習指導者用であり、テーブル1aに設けられた表示部42は実習者用である。そして、表示部41、42で表示される情報は、それぞれの使用者にとって、また使用状況に応じて、適切な内容が表示される。
【0051】
表示部41,42は、例えば、
図14に示すような操作設定画面100において、撮像部1ebで撮影した実習時の擬似患者体2の受診状況を表示したり、必要な情報を随時呼出して表示できる他、PC本体40に内蔵した特定のプログラムを稼動させることで、擬似患者体設定操作部G(
図4参照)としても機能し、同じく患者情報設定部としても機能する。実習指導者が、実習者Zの状況を把握しながら選択操作することで、擬似患者体2の動作や、表情をコントロールできるように構成している。
【0052】
また、後述するように、表示部41,42に表示したセンサ選択ボタン(図示省略)を選択操作することによって、擬似患者体2の各部に内蔵した各種のセンサを呼び出して、検知信号をモニタ表示させるように構成してもよい。
【0053】
医療用実習装置Tは、生体信号測定機具5として、上述したように血圧計51、パルスオキシメータ52、及び心電計53を備えている。
生体信号として血圧を測定する血圧計51は、血圧計本体511と、生体信号測定箇所Xに装着するカフ513と、血圧計本体511とカフ513とを接続する接続チューブ512とで構成し、血圧計本体511には、測定を開始するための測定開始ボタン515と、測定結果を表示する表示部514とを備えるとともに、接続チューブ512を介してカフ513にエアを供給するポンプ(図示省略)を内蔵している。
図1では、生体信号測定機具5として、血圧計51、パルスオキシメータ52、及び心電計53を別々に配置した例を示しているが、これら個別の計測機器ではなく、これらの生体情報を統合して一台で検出する生体情報モニタを配置しても良いことは勿論である。
【0054】
生体信号として動脈血の酸素飽和度を測定するパルスオキシメータ52は、測定器本体521と、生体信号測定箇所Xに装着するプローブ523と、測定器本体521とプローブ523とを接続する接続ケーブル522とで構成し、測定器本体521には、測定を開始するための測定開始ボタン525と、測定結果を表示する表示部524とを備えている。
【0055】
生体信号として心電位を測定して心電波形を出力する心電計53は、測定器本体531と、生体信号測定箇所Xに装着する電極533と、測定器本体531と電極533とを接続する接続ケーブル532と、測定結果である心電波形を出力する出力部534と、接続ケーブル532及び電極533を吊るして保持するハンガー536とで構成し、測定器本体531には、測定を開始するための測定開始ボタン535を備えている。図示しないが前記測定開始ボタン535の上部に前記測定開始ボタン535の押し上げを検出する圧力センサを設け、その検出信号を測定開始検出部Oの信号として制御部I(CPU)に取り込むことで測定開始を検出できる。また、GUIの擬似患者体設定操作部Gに設けた測定開始操作部d−11の操作によっても測定開始信号とすることができる。また、後述する装着検出部による装着検出信号を基にして擬似生体信号の測定開始信号としても良い。
【0056】
擬似患者体2は、頭部2aと、胴体部2bと、左右の上肢部2cと、左右の下肢部2dとで構成し、頭部2aは全体に柔軟性材料からなる人工皮膚を被せて構成するとともに頭髪となるカツラを被せることで、人体に極めて酷似させた、いわゆるアンドロイド型のロボットとして構成している。
【0057】
擬似患者体2の内部には、後述する擬似患者体2の姿勢、表情を変化させる擬似患者体駆動部D、擬似患者体2に対する診療状態を検出する擬似患者体の受診状態検出部C、測定器具5aの生体信号測定箇所Xへの装着状態を検出する測定器具の装着状態検出部M、測定器具5aによる測定開始を検出する測定開始検出部O、(
図4参照)を備えている。
【0058】
このように構成する擬似患者体2は、人と同様に診療台3に載せられて、種々の処置を行うことができ、後述する姿勢、顔の表情を変化させるため機械的、電気的、流体的なエネルギー(駆動媒体)を供給する駆動源に接続されている。なお、擬似患者体2は、診療台3と一体型あるいは連動するように構成してもよく、また、診療台3を用いずに擬似患者体2だけで独立して動作する構成としてもよい。
【0059】
次に、受診状態検出信号や診療器具状態検出信号に基づいて、表情を変化させたり、動作する擬似患者体2における各部について詳細に説明する。
擬似患者体2は、
図3に示すように、頭部2aと、胴体部2bと、左右の上肢部2cと、左右の下肢部2dとで構成し、頭部2aと胴体部2bとの間、胴体部2bと左右の上肢部2cとの間、胴体部2bと左右の下肢部2dとの間、さらには、左右の上肢部2cのひじ部、下肢部2dのひざ部に関節機構2eを設け、人体の関節と同様な動きとなるように屈曲自在に構成している。
【0060】
関節機構2eは、エアシリンダを進退させることで屈曲動作可能に構成されており、例えば、上肢部2cのひじ部では、エアシリンダを伸長させることで、ひじの伸ばし、曲げができるように構成され、他の関節機構2eも同様な構造で構成している。
【0061】
なお、腰及び膝の関節機構2eなどはエアシリンダを駆動させずとも、診療台3の位置変化に応じて受動的に動く構成にしてもよい。また、首、腰、腕及び膝の関節機構2eなどの駆動は、エアシリンダのみならず、エアシリンダの代わりに各種の電気モータや油圧シリンダを採用してもよい。
【0062】
擬似患者体2は、顔面の各部、眼球、瞼、眉毛、頬、口、唇、首を駆動する擬似患者駆動部Dの他、実習者Zの音声を認識するとともに音声を出力するため音声認識・出力部21fを備えている。
【0063】
また、擬似患者体2はこれらの擬似患者駆動部Dを駆動することで、眉の上下可動、瞼の開閉、眼球の上下左右移動、口部の開閉動作ができ、人に酷似した顔面表情を作れるように構成するとともに、前後方向の屈曲、左右への振れ、左右への傾き、左右への回転を可能に構成した首部を有している。
【0064】
次に、
図2とともに頭部2aの内部構造について、さらに詳細に説明する。
頭部2aは、
図2に示すように、硬質樹脂で形成された頭骨部材24を、皮膚に似た柔らかさのシリコンゴムで形成し、表面が適宜着色加工された皮膚部材24aで覆って構成している。なお、頭骨部材24の内部には、頑丈な部材で構成するフレーム25が組み込まれている。
【0065】
フレーム25は、上顎模型23aと下顎模型23cとを顎関節部23bで連結するとともに、エアシリンダを伸張することで、下顎模型23cを、顎関節部23bに対して回動しながら下方向に開くように構成している。逆に、エアシリンダを縮小させることで、下顎模型23cを、顎関節部23bに対して回動しながら上方向に閉じるように構成している。
【0066】
また、フレーム25には、擬似眼球26を有した眼球駆動部21a、瞼駆動部21b、眉毛駆動部21c、音声認識・出力部21f、及び首駆動部27を備えている。眼球駆動部21a、瞼駆動部21b、眉毛駆動部21c及び音声認識・出力部21fは、いずれも擬似患者体駆動部Dの眼球駆動部a、瞼・眉毛駆動部b、音声出力部e、音声認識部f、首駆動部gに対応している。
【0067】
瞼24bは、その一端をフレーム25に対して回転可能に固着した部材を有し、瞼駆動部21bを進退させることで、擬似眼球26の前方で上下させて、瞼24bを開閉させるように構成している。
【0068】
また、眉毛駆動部21cは、エアシリンダを進退させることで、人工皮膚の眉毛に相当する部分を上下に移動させることにより、眉毛を上下に移動させる構成である。
【0069】
首27は、首駆動部gによって頭部2aと胴体部2bとを前後、左右に傾倒可能に連結するジョイント機構を備え、このジョイント機構により、首27は前後に+10度から−30度まで、左右に±45度の範囲で傾倒できるとともに、左右に±45度の範囲で回動できるように構成している。
【0070】
また、左右の頬には、診療中の術者の不用意な接触を検出する接触センサ(図示省略)を内蔵している(
図4参照:擬似患者体の受診状態検出部Cの頬部の接触検出部a)。
【0071】
上顎模型23aと下顎模型23cとを組み合わせて構成された顎模型23には、歯牙23dが1本毎に交換可能に植立されている。これによって、切削実習をした際に消耗した歯牙23dを交換したり、虫歯や歯石を付けた特別な歯牙23dに交換したりすることができる。
【0072】
また、上顎模型23aや下顎模型23cは、実習時の処置、治療を検出するため、診療器具1dが歯牙23dに接触したときの衝撃を検出する衝撃センサ、切削治療時に歯牙や上下顎に加えられる圧力を検出する圧力センサ、振動を検出する振動センサ、温度上昇(例えば、印象採得時、レーザ切削時など)を検出する温度センサ、歯牙の切削度合いを検出する導通あるいは抵抗値の変化を検出するセンサなどが設けられている。
【0073】
これらのセンサから受診状態検出信号を制御部Iに送信することで、実習時における擬似患者体2の受診状態を客観的に把握でき、受診データとして利用できるように構成している。これらのセンサによって、擬似患者体の受診状態検出部Cを構成し、さらに診療状態検出信号として出力されて、情報処理装置4に送信される構成である。
【0074】
また、擬似患者体2は、
図5に示すように、胴体部2b、上肢部2c及び下肢部2dに生体信号測定箇所Xを設けている。
詳述すると、胴体部2bには、心電計53のプローブ523の装着を許容する生体信号測定箇所Xb1〜Xb5が設けられ、下肢部2dには、心電計53のプローブ523の装着を許容する生体信号測定箇所Xdが設けられている。
【0075】
胴体部2bの左右に設けた上肢部2cには、それぞれ、血圧計51のカフ513の装着を許容する生体信号測定箇所Xc1が肘に設けられ、脈拍計の装着を許容する生体信号測定箇所Xc2が手首に設けられ、及びパルスオキシメータ52のプローブ523の装着を許容する生体信号測定箇所Xc3が指先に設けられている。
【0076】
なお、上述の生体信号測定箇所Xには、各測定器具5aの装着及び装着状態を検出する装着状態検出部Mが装着されている。具体的には、生体信号測定箇所Xb1〜Xb6及びXdには、測定器具の装着状態検出部Mにおける心電計の電極の装着検出部bが装着され、生体信号測定箇所Xc3には、プローブの装着検出部dが設けられ、生体信号測定箇所Xc2には脈拍計の装着検出部cが設けられ、生体信号測定箇所Xc1にはカフの装着検出部aが設けられている。
【0077】
生体信号測定箇所Xc1に設けられたカフの装着検出部aについて、
図6とともに説明する。なお、カフの装着検出部aは測定開始検出部Oも兼ねており、具体的には、
図6に示すように、装着センサSが上肢部2cに埋設されている。
【0078】
装着センサSは、生体信号測定箇所Xc1に所定の締め付け圧力でカフ513が装着されたことを検出するとともに、血圧計51の測定が開始すると、カフ513の締め付け圧力が増大するため、その締め付け圧力の増大を検知して、血圧計51による測定開始を検出する構成である。なお、装着センサSは、装着状態におけるカフ513による締め付け圧力の当初値と、測定開始による値の増加を検出しており、その検出結果を、制御部Iに送信し、後述する装着状態判定部Nが、当初値が所定値未満である場合は、正常な装着状態でないと判定する構成である。なお、カフなどの生体信号検出用の検出機器などの装着検出部aによる装着検出信号を基にした擬似生体信号の測定開始信号としても良い。
このように構成された医療用実習装置Tは、上述の擬似患者体2、診療台3、情報処理装置4及び生体信号測定機具5が、院内LANなどを介して相互に接続されている。
【0079】
続いて、医療用実習装置Tについて、
図4に示す機能ブロック図に基づいて説明する。
医療用実習装置Tは、
図4において中央に示し、CPUで構成する制御部Iによって、各機能ブロックA〜H,J〜Pとして機能する機器や機構が制御されるように構成されており、制御部Iと各機能ブロックとは直接信号線あるいは院内LANなどで接続されている。
【0080】
診療器具駆動部及び操作部Aは、診療器具1dを駆動する駆動部とともに、図示省略する口腔カメラ、光重合照射器、及びフートコントローラ3dを組み合わせて構成し、さらに、これらの駆動状態を検出するために診療器具状態検出部Bを設けている。
【0081】
診療器具状態検出部Bは、上述の診療器具駆動部及び操作部Aによって駆動される各診療器具1d、口腔カメラ、光重合照射器、フートコントローラ3dの実習中の操作状態、つまり、オン、オフ、回転数、回転数に相当する電圧値、電流値、又は診療器具が駆動するエア圧、エア流量、周波数、振動数、負荷などを検出する。このため、診療器具状態検出部Bは、エアータービンハンドピース状態検出部a、マイクロモータハンドピース状態検出部b、スリーウエイシリンジ状態検出部c、スケーラ状態検出部d、バキュームシリンジ状態検出部e、口腔カメラ状態検出部f、光重合照射器状態検出部g、フートコントローラ操作状態検出部hを組み合わせて構成されている。
【0082】
このように、診療器具駆動部及び操作部Aは、診療器具1dをオン、オフ駆動し、診療器具状態検出部Bは、器具ホルダ1bに設けられたセンサによって、各診療器具1dが取り上げられたことを検出したり、フートコントローラ3dの操作を検出して、使用状態のオン、オフを検出している。しかしながら、診療器具本体に操作部を有する診療器具である場合には、当該操作部の操作をセンサによって検出してもよい。
【0083】
擬似患者体の受診状態検出部Cは、擬似患者体2に内蔵した各種センサや、診療時の状態を撮像する撮像部1ebで構成されている。各種センサしては、後述するように、擬似患者体2の頬部に対する接触を検出する検出部a、胸に対する接触を検出する検出部b、歯牙への衝撃や圧力を検出する検出部c、歯牙の温度上昇を検出する検出部d、擬似患者体姿勢検出部e、撮像部f、マイクなどを含んでおり、これらのセンサや撮像部f、マイクによって、実習中に擬似患者体2に対して処置、治療時に与えられる刺激の有無、度合いが検出され、受診状態検出信号として出力されるように構成している。
【0084】
擬似患者体駆動部Dは、眼球駆動部a、瞼・眉毛駆動部b、下顎開閉駆動部c、腕駆動部d、音声出力部e、音声認識部f、首駆動部gなどを組み合わせて構成され、人体に酷似させた擬似患者体2の頭部2aにおける顔面や身体に組み込まれ、これらの駆動を組み合わせることによって擬似患者体2の頭部2aにおける顔面の表情、身体の動作などを実現している。
【0085】
記憶部Eは、擬似患者体の受診状態検出部Cから出力された受診状態検出信号や、実習結果評価演算部Fで使用される評価基準情報、装着状態判定部Nで使用される判定基準情報、後述する実習シナリオ、設定した患者情報、常用薬の禁忌情報など実習に必要な各種データ、生体信号を模した擬似生体信号データや制御プログラム等を記憶している。
【0086】
実習結果評価演算部Fは、実習者Zによる実習終了後に、予め記憶部Eに記憶している評価基準と、診療器具状態検出部Bで検出した診療器具状態検出信号及び又は擬似患者体の受診状態検出部Cで検出した診療状態検出信号とを比較し、所定のアルゴリズムに基づいて実習の評価結果を出力する構成であり、実習者Zの技能に応じてランク付けしたり、禁忌の判定をおこなったり、評価結果に応じて不適切な診療項目を情報処理装置4の表示部41,42に表示できるように構成してもよい。
【0087】
擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gは、擬似患者体2に組み込まれた擬似患者体駆動部Dの動きを制御し、頭部2aの表情を設定する表情設定部a、標準医療行為の実習内容に応じた実習シナリオを設定する実習シナリオ設定部b、表示部に表示する表示内容を設定する表示情報設定部c、患者情報設定部dで構成している。なお、患者情報設定部dは、模擬患者の性別を設定する性別設定部d−1、模擬患者の年齢層(成人・老人・子供等の患者モード)を設定する年齢設定部d−2、患者モードに応じて擬似患者体駆動部Dの動きの速度を設定する動作速度設定部d−3、常用薬の有無や種類を設定する常用薬設定部d−4、患者のアレルギー体質の有無の設定を行う患者体質設定部d−5、後述する音声認識・出力部21fによる音声認識度を設定する音声認識度設定部d−6、擬似患者体2の音声出力部21fから出力する音声の男女、子供、成人等を区別して音声出力を設定する音声出力設定部d−7、擬似患者体2の音声認識・出力部21fから出力する音声の音声出力を設定する音量設定部d−8、生体信号出力部Lへの出力となる患者の血圧、脈拍等を例えば異常状態となるように設定して実習者Zの対応実習を行う生体信号出力設定部d−9、及び患者対応シナリオ及び患者情報を組み合わせて設定する患者対応シナリオ組み合わせ設定部d−10で構成している。したがって、例えば、表情設定部aにより、例えば、擬似患者体2の嘔吐、苦痛、不安、リラックス、不快などの表情変化を再現できるように構成している。また、測定開始操作部d−11は、操作者が実習者のカフなどの測定器の装着動作を見てGUIの操作部から操作する事で測定開始信号の入力を行うことが出来るように構成している。
【0088】
このように構成した擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gを設けることにより、実習者Zの治療行為が擬似患者体2の表情や身体の動作に自動的に反映される本来の制御動作に加えて、後述するように、実習指導者が、実習者Zの状況を判断して、上記表示選択ボタンを選択操作することで、擬似患者体2の表情をコントロールすることができる。
【0089】
情報処理装置4の表示部41,42で構成する表示設定部Hは、PCモニタやタブレットで構成する表示部aと、マウスなどで選択する設定操作部bとを組み合わせて構成している。この情報処理装置4の表示部42の設定操作部bを用いて上記擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)Gの操作を画面上でタッチパネルやタッチペン、マウス、キーボード等を使用して操作できる。
【0090】
診療台駆動部及び操作部Jは、座部シート3aを昇降する座部シート昇降部a、背板シート3bを傾倒する背板シート傾倒部b、ヘッドレスト3cを傾倒するヘッドレスト傾倒部c及びフートコントローラd(3d)を備えており、フートコントローラd(3d)によって、座部シート昇降部a、背板シート傾倒部b、及びヘッドレスト傾倒部cが操作制御されるように構成している。なお、座部シート昇降部a及び背板シート傾倒部bとしては従来技術の油圧シリンダや電動モータ等を用いることができ、ヘッドレスト傾倒部cには、電動モータ等を使用することができる。
【0091】
患者情報設定読取部(常用薬読取部)Kは、RFIDやバーコード等で予め設定した患者の常用薬や体質、病歴等の患者情報を持ち歩き可能にしておき、それを読み取りできるようにしたものである。将来予定されているRFIDやICカード化された保険証やお薬手帳の情報がこれらの患者情報として保存されるので、それらの情報の読取装置として使用される。患者情報設定読取部(常用薬読取部)Kは実習装置自体若しくは、その近傍に配置され、RFIDリーダ若しくは、カードリーダに該当するものである。
【0092】
生体信号出力部Lは、カフ513などの測定器具5aの生体信号測定箇所Xへの装着を後述する装着状態検出部Mが検出するとともに、装着状態判定部Nによって正常な装着状態であると判定され、さらに、測定器具5aによる測定開始を測定開始検出部Oが検出すると、生体信号測定箇所Xに装着された測定器具5aに応じた擬似生体信号を記憶部Eから読み出して、血圧計51やパルスオキシメータ52における表示部514,524に表示する、あるいは心電計53における出力部534からプリントアウトするように出力する構成である。
【0093】
測定器具の装着状態検出部Mは、上述したように上肢部2cの生体信号測定箇所Xc1に設けた装着センサSで構成し、カフ513の装着を検出するカフの装着検出部a、生体信号測定箇所Xb1〜Xb5、Xdに設けられ、電極533の装着を検出する心電計の電極の装着検出部b、生体信号測定箇所Xc2に設けられ、脈拍計の装着を検出する脈拍計の装着検出部c及び生体信号測定箇所Xc3に設けられ、プローブ523の装着を検出するプローブの装着検出部dで構成され、検出結果を制御部Iに送信する構成である。
【0094】
装着状態判定部Nは、装着状態検出部Mから送信された装着状態の検出結果を制御部Iから受信し、記憶部Eに記憶された判定基準情報に基づいて、生体信号測定箇所Xに装着された測定器具5aの装着状態を判定し、判定結果を制御部Iに送信する構成であり、例えば、上述したように生体信号測定箇所Xc1にカフ513を装着した場合、装着状態検出部Mのカフの装着検出部aとして機能する装着センサSによる検出結果が所定の締め付け圧力未満である場合は装着状態が正常でないと判定し、制御部Iに送信する構成である。
【0095】
測定開始検出部Oは、生体信号測定機具5に備えた測定開始ボタン515やPC本体40における操作部43による開始操作、あるいは、生体信号測定箇所Xc1に装着した装着センサSによる検出結果に基づいて測定開始を検出し、検出結果を制御部Iに送信する構成である。
【0096】
状態変更判定部Pは、異常モードにおける実習者Zの対処を、記憶部Eに記憶した復帰条件と比較して、復帰条件を満足する場合は正常モードに復帰する、あるいは正常モードから異常モードに変更するように判定する構成である。
【0097】
このように構成した医療用実習装置Tは、診療を受ける患者を模した擬似患者体2と、その擬似患者体2が載置される診療台3と、情報処理装置4と、生体信号測定機具5とで構成するとともに、診療器具駆動部及び操作部A、診療器具状態検出部B、受診状態検出部C、擬似患者体駆動部D、記憶部E、実習結果評価演算部F、擬似患者体設定操作部(患者情報設定部)G、表示設定部H、制御部I、及び診療台駆動部及び操作部Jを有するため、擬似患者体の受診状態検出部Cが出力する受診状態検出信号とに基づいて、擬似患者体2の表情を変化させたり、動作させることができる。
【0098】
また、医療用実習装置Tは、例えばカフ513などの測定器具5aを生体信号測定箇所Xに装着し、測定器具5aの装着を装着状態検出部Mで検出するとともに、その測定状態を装着状態判定部Nで判定し、正常な装着状態であり、測定開始検出部Oによって測定開始を検出すると、生体信号出力部Lは、記憶部Eに記憶した擬似生体信号を出力することができる。
【0099】
続いて、このように構成した医療用実習装置Tを用いた実習を行うために、あらかじめ設定する設定内容等について、
図7乃至
図12とともに説明する。
なお、
図7は記憶部に格納した擬似生体信号の有無を示す表であり、
図8は正常状態の表示例と異常状態の表示例と、異常状態における患者模型の動作例を示し、
図9は正常状態に復帰させるべきかどうかを判定する条件例を示している。
【0100】
また、
図10は異常状態にすべきかどうかを判定する他の条件例を示し、
図11は正常状態の表示例と異常状態の他の表示例と、異常状態における患者模型の他の動作例を示し、
図12は正常状態に復帰させるべきかどうかを判定する他の条件例を示している。
【0101】
記憶部Eには、上述したように、擬似患者体の受診状態検出部Cから出力された受診状態検出信号や、実習結果評価演算部Fで使用される評価基準情報、装着状態判定部Nで使用される判定基準情報、後述する実習シナリオ、設定した患者情報、常用薬の禁忌情報など実習に必要な各種データや制御プログラム等とともに、生体信号を模した擬似生体信号データを記憶しているが、擬似生体信号データとして、
図7に示すような複数パターンの擬似生体信号を記憶している。
【0102】
具体的には、本実施例では、擬似生体信号として、血圧計51で測定する血圧、脈拍、パルスオキシメータ52で測定する酸素飽和度、心電計53で測定する心電位、及び筋電位について記憶している。
【0103】
さらには、各種擬似生体信号について、年齢分類として子供、成人及び老人、基礎疾患分類として、心臓病、高血圧及び糖尿病など、さらには常用薬分類としてワーファリンなどの薬剤情報、それぞれの生体情報の特徴を表した擬似生体信号を記憶している。
【0104】
さらには、上述のような分類に加えてそれぞれの正常時と異常時についての特徴を表した擬似生体信号を記憶している。なお、異常時については、当該異常発生時の生体反応に基づいた駆動制御を行うための各駆動部の反応を記憶している。
【0105】
具体的には、
図8に示すように、異常状態を示す異常モードの状態例として過換気症候群を想定し、正常状態である正常モードの擬似生体信号の表示例と異常状態の擬似生体信号の表示例と、異常モードにおける擬似患者体2の動作に関する反応例について記憶している。
【0106】
まず、正常モードから異常モードへ移行すると、最高血圧、最低血圧が下降し、脈拍数、血中酸素飽和度、呼吸数、精神性発汗量が上昇し、また、心電波形は、早くかつ上下に大きく振れるように設定され、異常モードの擬似生体信号として記憶部Eに記憶されている。
【0107】
また、異常モードにおける擬似患者体2の反応例としては、擬似眼球26を見開くように瞼24bを開き、顎模型23を開口したまま、頭部2aを仰け反らせ、上肢部2cの手を胸部に移動させ、胴体部2bを早く激しく上下させる動作を擬似患者体駆動部Dで実行するように設定されて、記憶部Eに記憶されている。
【0108】
別の異常モードの状態例として頻脈を想定した場合、
図9に示すように、最高血圧、最低血圧、脈拍数、呼吸数、精神性発汗量が上昇し、また、心電波形は、早くかつ上下に大きく振れるように設定され、異常モードの別の擬似生体信号として記憶部Eに記憶されている。
【0109】
また、異常モードにおける頻脈を想定した場合の擬似患者体2の反応例としては、擬似眼球26をキョロキョロと左右上下に動かし、顎模型23を閉じようとする動作を擬似患者体駆動部Dで実行するように設定され、記憶部Eに記憶されている。
【0110】
さらに、記憶部Eには、実習において設定された異常モードにおいて、擬似患者体の受診状態検出部Cから出力された受診状態検出信号に基づいて、異常発生時における実習者Zの対処について正常モードに復帰させるかどうかを状態変更判定部Pが判定するための条件について記憶している。
【0111】
詳しくは、
図10に示すように、受診状態検出部Cで取得された診療状況に基づいて正常モードに復帰させるべきかどうかを判定する条件例として次の6つの条件(処置)について記憶している。
【0112】
条件1は、診療器具1dの駆動信号がOFFになったこと(実習者Zが処置を止める)であり、条件2は、顎模型23の角度センサが初期値(閉口時)に戻ること(実習者Zが処置を止めて、顎模型23を閉じさせる)であり、条件3は音声検出用マイク等で「大丈夫ですか」等の音声を認識すること(実習者Zが声掛けをする)であり、条件4は診療台3の傾斜方向への傾動信号がONになったこと(実習者Zの操作により診療台3の椅子を倒す)であり、条件5は、音声検出用マイク等で「口を閉じて、ゆっくり鼻で呼吸して下さい」等の音声を認識すること(鼻呼吸(複式呼吸)指示)であり、条件6は処置を止めてから所定時間の経過を検出すること(休憩させる)を条件として記憶している。これらの6つの条件が満たされた場合に、状態変更判定部Pは正常モードに復帰させるべきと判定する構成である。
【0113】
逆に、例えば、実習における処置によって、正常モードから異常モードに移行するかどうかを状態変更判定部Pで判定するための条件について説明する。
図11に示すように、受診状態検出部Cで取得された診療状況に基づいて異常モードにすべきかどうかを判定する条件例として次の6つを記憶部Eに記憶している。
【0114】
条件1は、プログラムの開始時の設定等において、患者(擬似患者体2)が高血圧症の患者であると設定されていることであり、条件2は、口部を構成する顎模型23に組込まれた下顎の開口度合を検出する角度センサの出力に基づいて顎模型23の開口状態が所定時間を超過していることが検出されたことであり、条件3は同角度センサの出力に基づいて顎模型23の開口状態が所定角度より大きいことが検出されたことであり、条件4は歯牙23dの圧力センサに基づいて強い力での切削によって所定値を上回る圧力が加えられたことが検出されたことであり、条件5は歯牙23dに設けられてその切削量を検出する導通センサによって、切削過多が検出されたこと(切削過多によって歯牙23dに導通された電気の抵抗値が小さくなり、電圧値又は電流値が大きくなった場合)であり、条件6は歯牙23dに設けられた温度センサによって切削に伴う摩擦によって所定温度を超過していることが検出されたことを条件として記憶部Eに記憶している。
なお、状態変更判定部Pは、条件1の他に、条件2〜条件6中の2つ以上の条件が満たされた場合に、異常モードにすべきと判定するように構成している。
【0115】
さらに、記憶部Eには、実習における処置によって、正常モードから移行した異常モードにおける実習者Zの対処について正常モードに復帰させるかどうかを状態変更判定部Pが判定するための条件について記憶している。
【0116】
詳しくは、
図12に示すように、受診状態検出部Cで取得された診療状況に基づいて正常モードに復帰させるべきかどうかを判定する条件例として次の6つの条件(処置)について記憶している。
条件1は、診療器具1dの駆動信号がOFFになったこと(実習者Zが処置を止める)であり、条件2は、顎模型23の角度センサが初期値(閉口時)に戻ること(実習者Zが処置を止めて、顎模型23を閉じさせる)であり、条件3は音声検出用マイク等で「大丈夫ですか」等の音声を認識すること(声掛けをする)であり、条件4は診療台3の起立方向への傾動信号がONになったこと(実習者Zの操作により診療台3の椅子を起す)であり、条件5は、スピットン12に設けられたコップ注水用の注水センサ(注水されたか否かを検出するスイッチ)がONになったことであり、条件6は処置を止めてから所定時間の経過を検出すること(患者を休憩させる)ことである。これらの6つの条件が満たされた場合に、正常モードに復帰させるべきと判定する構成である。
【0117】
続いて、このように構成した医療用実習装置Tを用いた実習について、
図13から
図18とともに説明する。
図13はメイン処理部としての処理を示すフローチャートであり、
図14は患者情報設定部の概略図であり、
図15は異常発生シナリオの処理を示すフローチャートであり、
図16は生体信号測定処理を示すフローチャートである。また、
図17、
図18は別の生体信号測定処理を示すフローチャートである。
【0118】
まず、実習のメイン処理では、PC本体40は、患者情報の設定を受付ける。
具体的には、例えば、
図14に示すような操作設定画面100を用いて患者情報を設定する。
図14に示すような操作設定画面100で設定する患者情報は、
図1に示す表示部42の画面であって、実習者Zを指導する実習指導者が操作する操作画面であり、シナリオ表示部101、実習状況拡大表示部102、実習状況表示部103、年齢層設定部110、常用薬設定部120、及び体質設定部130、並びに図示省略する性別設定部、実習内容設定部及びシナリオ変更部とで構成している。
【0119】
シナリオ表示部101は、後述する操作によって生成された実習シナリオが文字表示される部分であり、実習状況拡大表示部102は、実習を受けている擬似患者体2の顔をズームアップして映し出し、実習状況表示部103は当該擬似患者体2の上半身と実習者Zとによる実習状況を映し出す部分である。
【0120】
年齢層設定部110は、老人患者設定部111、成人患者設定部112及び子供患者設定部113を有している。常用薬設定部120は、常用薬なし設定部121、ワーファリン設定部122及びビスホスホネート系薬剤設定部123を有している。体質設定部130は、特異体質なし設定部131、アレルギー設定部132及び妊婦設定部133を有している。
【0121】
この操作設定画面100において、実習指導者が、年齢層設定部110の老人患者設定部111、成人患者設定部112及び子供患者設定部113のうちいずれかを操作することで患者モードを特定するとともに、常用薬設定部120の常用薬なし設定部121、ワーファリン設定部122及びビスホスホネート系薬剤設定部123のいずれかと、体質設定部130の特異体質なし設定部131、アレルギー設定部132及び妊婦設定部133のいずれかを操作することで実習において想定する患者の患者情報を設定することができる。
【0122】
このように構成された操作設定画面100により、患者情報を設定するが、病種設定部など、実習内容に応じて、適宜設定項目を設けて設定すればよい。
次に、PC本体40は、シナリオ選択を受付ける(ステップS2)。シナリオ選択の指示は、例えば、実習指導者が表示部41に表示されたシナリオを、操作部43を通じて選択することにより行われる。ここで、シナリオは、医療実習(診療実習)で実習者Z、または実習者Z及び患者が行う行為(発声も含む)を時系列に整理した情報であり、例えば、治療にあたって事前に行われる医療面接シナリオ、治療にあたって実習者Zが患者模型に接したり装置等を使って病状を調べたりする検診(または診察)シナリオ、医療面接及び検診によって特定された患部に対して処置を施す治療に関する治療シナリオ等が想定される。
【0123】
ステップS2において、シナリオ選択が受付けられると、次のステップS3において、PC本体40は、選択されたシナリオを実行する。
ステップS3の終了後、ステップs4において、PC本体40は、実習結果評価演算部Fにより得られた実習に対する評価を通知する。評価の通知は、表示部41、42に表示すること等により行われる。もっとも、評価の通知は、PC本体40と通信可能なように別途設けられたプリンタ等の出力装置によって行われるように構成してもよい。
【0124】
そして、ステップS5では、シナリオ実行中の諸履歴データを再現するかどうかが判定される。再現をすべきかどうかは、例えば、キーボードやマウスなどの操作部43を通じた指示に応じて決定される。再現不要と判定された場合には処理を終了し、再現必要と判定された場合には、ステップS6に進む。
【0125】
ステップS6では、シナリオ実行中の諸履歴データが再現される。再現される諸履歴データは、シナリオ中に含まれる行為の撮像データ、評価データ、受診状態検出部Cで取得された各診療状況検出信号のデータ等の少なくとも一部である。これにより、実習者Zは自己の行為の復習等を行える。この後、処理を終了する。
【0126】
次に、上述のメイン処理におけるステップS3のシナリオの実行において、異常モードとなる異常モード処理について説明する。
異常モード処理は、概略的には、所定の条件に応じて異常モードにすべきか否かを判定し、異常モードにすべきと判定された場合に、生体情報表示部である実習者用の表示部42に異常モードを示す擬似生体信号を表示させる処理である。
【0127】
すなわち、ステップT1において、PC本体40は、状態変更判定部Pによって異常モードにすべきか否かを判定する。異常モードにすべきか否かの判定は、上述したような所定の条件を満たすか否かによって行われる。所定の条件を満たすか否かの判定は、受診状態検出部Cで取得された診療状況に基づいて行われるが、診療状況に拘らず、確率的に状態変更判定部Pによって判定される構成であってもよい。
【0128】
また、受診状態検出部Cで取得された診療状況に基づいて、異常モードにすべきか否かを判定する場合、実習の開始時等に設定される患者情報(例えば、患者の体質、気質等)を加味して判定が行われてもよい。
【0129】
ステップT1において、状態変更判定部Pによって異常モードに移行すべきであると判定された場合(ステップT1:YES)、擬似患者体駆動部Dは、例えば、
図8に示す反応例のような異常状態の動作となるように駆動制御する(ステップT2)。
【0130】
逆に、ステップT1において、異常モードでなく正常モードであると判定された場合(ステップT1:NO)、ステップT9に示すように、生体信号出力部Lによって、正常な擬似生体信号を出力してもよいし、そのまま実習を終了してもよい。
【0131】
ステップT2における異常な動作を確認した実習者Zによって、測定器具5a(513,523,533)が生体信号測定箇所Xに装着されたことを装着状態検出部Mが検出すると(ステップT3:YES)、装着状態判定部Nによってその装着状態について判定される(ステップT4)。
【0132】
装着状態判定部Nによって、測定器具5aの装着状態が異常であると判定された場合(ステップT4:NO)は実習を終了してもよいが、正常な装着状態でないことを警告表示してもよい。
【0133】
装着状態判定部Nによって、測定器具5aの装着状態が正常であると判定されたうえで(ステップT4:YES)、測定開始検出部Oによって測定開始が検出されると(ステップT5:YES)、生体信号出力部Lは、例えば
図8において異常状態における表示例に示すような、異常モードの擬似生体信号を表示部41,42に出力(表示)する(ステップT6)。
【0134】
異常な擬似生体信号の表示を確認した実習者Zによる対処や処置について、状態変更判定部Pが判定し、異常モードを維持すべきと判定した場合(ステップT7:NO)、ステップT2に戻り、擬似患者体駆動部Dが異常状態の動作となるように駆動制御する。
【0135】
逆に、状態変更判定部Pが正常モードに変更すべきと判定した場合(ステップT7:YES)、擬似患者体駆動部Dは正常な反応となるように駆動制御するとともに(ステップT8)、生体信号出力部Lは正常モードの擬似生体信号を出力(表示)する(ステップT9)。
【0136】
次に、上述のステップT3〜T6,T9において、生体信号出力部Lが擬似生体信号を表示する出力処理について、血圧計51を用いて血圧測定をする具体例として、
図16とともに、説明する。
【0137】
まず、生体信号測定箇所Xc1にカフ513を装着すると、生体信号測定箇所Xc1に装着し、装着状態検出部Mとして機能する装着センサSによって、カフ513の装着が検出され(ステップU1)、血圧計51の血圧計本体511に設けた測定開始ボタン515が実習者Zによって押下されると(ステップU2)、血圧計51は血圧計本体511に内蔵したポンプによって。接続チューブ512を介してカフ513にエアを供給する(ステップU3)。
【0138】
供給されたエアによる締め付け圧力の増大を検出した装着センサSは、測定開始検出部Oとして機能して、測定開始を検出した検出結果を制御部Iに送信し、制御部Iに制御された生体信号出力部Lは、設定された患者情報に基づく擬似生体信号を選択して出力し(ステップU4)、血圧計本体511に設けた表示部514に選択された擬似生体信号を表示する。
【0139】
なお、装着センサSを装着状態検出部Mとして機能させずとも、
図17に示すように、カフ513の生体信号測定箇所Xc1への装着を、実習指導者が目視で確認し、情報処理装置4の操作部43を操作して、カフ513の装着検出情報として制御部Iに送信してもよい(ステップU1a)。
【0140】
さらには、装着センサSを装着状態検出部M及び測定開始検出部Oとして機能させずとも、
図18に示すように、実習指導者が目視で確認したうえで(ステップU1a)、情報処理装置4の操作部43を操作して、測定開始検出情報として制御部Iに送信してもよい(ステップU2a)。
【0141】
さらには、ステップU1(U1a)からU4までの間のステップの中で、装着状態判定部Nを機能させて、カフ513が装着され、測定開始ボタン515の押下操作や、測定開始を指示する情報処理装置4の操作部43の入力操作があっても、装着状態判定部Nによる装着状態が正常でない場合に、ステップU4での擬似生体情報を生体信号出力部Lが出力しないように構成してもよい。
【0142】
このように医療用実習装置Tは、胴体部2b、頭部2a、上肢部2c及び下肢部2dを有する擬似患者体2と、擬似患者体2に装備した擬似患者体駆動部Dの駆動を制御する制御部Iと、制御部Iに接続された操作部43と、生体信号を測定する生体信号測定箇所Xへ装着可能な測定器具5aと、測定器具5aによる測定開始を検出する測定開始検出部Oと、測定開始検出部Oが擬似測定開始を検出することにより、生体信号を模した擬似生体信号を出力する生体信号出力部Lとを備えたため、測定開始検出部Oが測定開始を検出することで、擬似生体信号を生体信号出力部Lに出力するため、例えば、表面にスキン層を設けた発泡体で構成された擬似患者体の脈動動作装置におけるチューブに空気を供給して脈動させるなど複雑な構造を必要とせず、あたかも、測定器具5aを有する生体信号測定機具5を用いて生体信号を測定したような実習を簡単な構造の擬似患者体2を用いて行うことができる。
【0143】
また、生体信号測定箇所Xへの測定器具5aの装着を検出する装着状態検出部Mを備えるとともに、生体信号出力部Lが、測定開始検出部Oによる擬似測定開始の検出、及び装着状態検出部Mによる測定器具5aの装着検出により、擬似生体信号を出力するため、仮に、測定器具5aが生体信号測定箇所Xへ装着していない状態で、血圧計51の測定開始ボタン515が押下されたとしても、生体信号出力部Lは擬似生体信号を出力しない。
【0144】
また、生体信号測定箇所Xへの測定器具5aの装着状態を判定する装着状態判定部Nを備えるとともに、生体信号出力部Lが、測定開始検出部Oによる擬似測定開始の検出、装着状態検出部Mによる測定器具5aの装着検出、並びに、装着状態判定部Nによる測定器具5aの正常装着判定により、擬似生体信号を出力するため、仮に、測定器具5aが生体信号測定箇所Xに正しく装着していない状態で、血圧計51の測定開始ボタン515が押下されたとしても、生体信号出力部Lは擬似生体信号を出力しない。このように、医療用実習装置Tは、擬似生体信号を生体信号出力部Lが出力する構成とすることで、簡単な構造であるものの、あたかも測定器具5aを用いて生体信号測定機具5などで生体信号を測定したような実習を行うことができるが、測定器具5aなどの測定器具5aが、生体信号測定箇所Xに正常に装着されていなければ、生体信号出力部Lが出力しないため、実際の診療に即した実習を行うことができる。
【0145】
また、例えば、
図8や
図9の異常モードにおける表示例に示すような様々な状態の生体信号を模した複数の擬似生体信号を記憶部Eに記憶し、生体信号出力部Lは、記憶部Eに記憶した複数の擬似生体信号のうち選択された擬似生体信号を出力する構成とするため、例えば、実習を行う際に、
図8に示すような過換気症候群による異常な状態の擬似生体信号ばかりが出力されると、その症状に対する対処や処置などが決まるため、実習者Zは出力された擬似生体信号を確認し、施さなければならない対処を考えるという行為を行わなくて済むという弊害が生じるが、記憶部Eに記憶された複数の擬似生体信号から選択された擬似生体信号が出力されると、実習者Zは出力された擬似生体信号が正常なのか、あるいは異常なのか、また異常な擬似生体信号であれば、その症状に応じた対処は何かを考える必要があり、実際の診療に即したリアリティのある実習を行うことができる。
【0146】
また、擬似患者体駆動部Dが、少なくとも顎模型23、擬似眼球26、瞼24b、首27、及び上肢部2cのうちいずれかひとつ、あるいは二つ以上を組み合わせて駆動することにより、例えば、瞬きや目線方向を変えるなどの眼部の動作などによって、実習者Zによる対処に対する患者の反応などを表現でき、実際の診療に即したより臨場感のある実習を行うことができる。なお、表情をつかさどる頬部や眉毛などが駆動する構成であってもよい。
【0147】
また、実習者Zの音声を聞き取り認識する音声認識・出力部21fと、模擬患者の音声を出力する音声認識・出力部21fとを備え、実習者Zと模擬会話可能に構成することにより、例えば、患者に対する問診や患者とのやり取りなどを再現するような、さらに臨場感のある実習を行うことができる。
【0148】
また、正常でない異常状態を模した異常モードが設定された場合、生体信号出力部Lは、異常状態の生体信号を模した擬似生体信号を出力するとともに、擬似患者体駆動部Dおよび/または音声認識・出力部21fは、異常状態の行動や音声を制御するため、実際の診療において、異常発生時に生体信号を取得して、症状や生体信号に基づいて状態を診断するという診療において非常に重要な診療行為を実習することができる。
【0149】
また、実習者Zが行った対処について合否を判定する状態変更判定部Pを備え、異常モードが設定された場合における実習者Zの対処について、状態変更判定部Pが合格判定した場合、異常モードの設定から正常モードに設定変更し、生体信号出力部Lは、正常状態の生体信号を模した擬似生体信号を出力するとともに、擬似患者体駆動部Dおよび/または音声認識・出力部21fは、正常状態を模した駆動および/または正常状態を模した音声出力を行う構成とすることにより、実際の診療において、異常発生時に生体信号を取得して、症状や生体信号に基づいて状態を診断し、その診断結果に基づいて施した対処が適していた場合に、状況が改善するという診療における場面を実習することができる。
【0150】
また、予め記憶され、実習内容に応じた複数のシナリオから少なくとも一つのシナリオを選択可能とした擬似患者体設定操作部Gを備え、擬似患者体設定操作部Gのシナリオ設定部bが設定したシナリオの実習内容に応じて、制御部Iが生体信号出力部L及び擬似患者体駆動部Dを制御する構成とすることにより、実際の診療のように、それぞれの場面における診療の実習ではなく、ストーリのある診療行為についての実習を行うことができる。
【0151】
また、実習状況を撮像する撮像部1ebと、撮像部1ebによって撮像された実習状況撮像情報を記憶する記憶部Eとを備え、実習状況撮像情報を再生可能に構成することにより、実習を指導する実習指導者や実習者Zが、実習状況撮像情報として実習状況を再確認することができる。
【0152】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の駆動機構は、擬似患者体駆動部Dに対応し、
以下同様に、
駆動機構は、擬似患者体駆動部Dに対応し、
擬似測定部は、測定器具5a,カフ513,プローブ523、あるいは電極533に対応し、
擬似生体信号出力部は、生体信号出力部Lに対応し、
装着検出部は、装着状態検出部Mに対応し、
装着判定部は、装着状態判定部Nに対応し、
擬似生体信号記憶部は、記憶部Eに対応し、
口は、顎模型23に対応し、
眼球は、擬似眼球26に対応し、
腕は、上肢部2cに対応し、
音声認識部、及び音声出力部は、音声認識・出力部21fに対応し、
対処判定部は、状態変更判定部Pに対応し、
シナリオ設定部は、擬似患者体設定操作部Gのシナリオ設定部bに対応し、
実習状況撮像情報記憶部は、記憶部Eに対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0153】
例えば、上述の説明では、擬似患者体2を診療台3に載置して、寝位状態の擬似患者体2に対して実習を行う例の構成について説明したが、例えば、在宅診療や訪問診療等を想定し、布団400やベッドに寝かせた擬似患者体2に対して実習を行ってもよい。
在宅診療や訪問診療と呼ばれる診療では、布団400に寝たままの患者に対して、例えば、訪問医療用の携帯診療ユニット300を持参し、携帯診療ユニット300に内蔵した診療器具1dを用いて診療する。
【0154】
このような在宅診療や訪問診療は、
図19に示すように、不自由な姿勢での診療など、診療台3などの設備の整った医院での診療と異なり、診療器具の種類が少ない携帯診療ユニット300を用いて行うため、熟練した技術が必要である。
【0155】
図19に示すように、擬似患者体2を布団400に寝かせるように配置するとともに、携帯診療ユニット300の診療器具1dを用いることで、熟練した技術の必要な在宅診療や訪問診療をリアルに再現することができ、臨場感のある実習を行うことができる。
【0156】
また、胴体部2b、頭部2a、上肢部2c及び下肢部2dを有する擬似患者体2を用いたが、胴体部2b、頭部2a、及び上肢部2cで構成する擬似患者体2を用いてもよい。
【0157】
生体信号測定機具5として、実際に測定可能な市販の血圧計や心電計などの測定機具を用いてもよいが、外見だけ測定機具を模したものを用いてもよい。また、本実施例のような複数の生体信号測定機具5を備えずとも、例えば血圧計51のみを有する医療用実習装置Tであってもよい。
【0158】
記憶部Eに記憶する擬似生体信号は、予め実際に測定した生体信号の実測値を用いてもよい。
さらには、状態変更判定部Pなどで、正常モードと異常モードの変更を判定せずとも、例えば、実習指導者が、実習者Zの実習状況を見ながら、PC本体40における操作部43を操作して、モード変更してもよい。
また、擬似患者体2に擬似生体信号を表示する表示部を設け、常時、擬似生体信号を表示しながら実習するように構成してもよい。