(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042809
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
F02M 59/10 20060101AFI20161206BHJP
F02M 59/26 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
F02M59/10 A
F02M59/10 Z
F02M59/26 330J
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-521038(P2013-521038)
(86)(22)【出願日】2011年7月4日
(65)【公表番号】特表2013-532792(P2013-532792A)
(43)【公表日】2013年8月19日
(86)【国際出願番号】EP2011061222
(87)【国際公開番号】WO2012013452
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2013年1月25日
【審判番号】不服2015-17628(P2015-17628/J1)
【審判請求日】2015年9月28日
(31)【優先権主張番号】102010038468.2
(32)【優先日】2010年7月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(72)【発明者】
【氏名】アムブロック、ザッシャ
(72)【発明者】
【氏名】クリステン、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ガイセルハルト、シュテファニー
【合議体】
【審判長】
伊藤 元人
【審判官】
松下 聡
【審判官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−218459(JP,A)
【文献】
特開2009−275738(JP,A)
【文献】
特開2010−14171(JP,A)
【文献】
特表2005−504926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M59/10
F02M59/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ポンプ(1)であって、少なくとも、ポンプアセンブリ(6)と、前記ポンプアセンブリ(6)に割り当てられた少なくとも1つのカム(5)を有する駆動軸(3)と、を備え、前記ポンプアセンブリ(6)は、前記カム(5)の滑走面(24)上を滑走するローラ(23)と、前記ローラ(23)を収容するローラシュー(22)と、前記ローラ(23)及び前記ローラシュー(22)を用いて前記カム(5)により作動方向(13)に作動されうるポンププランジャ(11)と、前記作動方向(13)と逆方向にタペットばね(31)の力を受けて前記ポンププランジャ(11)を導くとともに、前記ポンププランジャ(11)を前記ローラシュー(22)に当接させる伝動素子(25)と、を有する、前記高圧ポンプ(1)において、
前記伝動素子(25)は部分的に、弾性的に変形可能な伝動素子(25)として構成され、前記伝動素子(25)は少なくとも、前記ローラシュー(22)の方を向いた隆起部(37)を有し、前記隆起部(37)上で前記ポンププランジャ(11)が支えられ、前記伝動素子(25)は、半径方向に配置された複数の穴(41〜43)を有し、前記複数の穴(41〜43)の間には、弾性的に変形可能なブリッジ(44〜46)が形成されることを特徴とする、高圧ポンプ(1)。
【請求項2】
前記穴(41〜43)は、スリット状の穴(41〜43)として形成され、前記スリット状の穴(41〜43)は、少なくとも円周方向に伸びていることを特徴とする、請求項1に記載の高圧ポンプ。
【請求項3】
前記ポンププランジャ(11)は、前記伝動素子(25)の貫通孔(40)を貫通し、前記ポンププランジャ(11)は鍔部(28)を有し、前記ポンププランジャ(11)の前記鍔部(28)は、前記伝動素子(25)と、前記伝動素子(25)の方を向いた前記ローラシュー(22)の表面(30)と、の間に配置され、前記伝動素子(25)の前記隆起部(37)は、前記貫通孔(40)の隣に設けられ、前記ポンププランジャ(11)の前記鍔部(28)は、前記隆起部(37)に当接することを特徴とする、請求項1又は2に記載の高圧ポンプ。
【請求項4】
前記貫通孔(40)の隣に設けられた前記隆起部(37)は、少なくとも部分的に環状に形成され、
及び/又は、
前記貫通孔(40)の隣に設けられた前記隆起部(37)は、前記貫通孔(40)を環状に包囲する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の高圧ポンプ。
【請求項5】
前記伝動素子(25)の前記隆起部(37)は、前記ポンププランジャ(11)の鍔部(28)が当接する接触面(39)を有し、前記伝動素子(25)は、前記隆起部(37)の前記接触面(39)とは反対側の端面(38)を有し、前記端面(38)は、少なくとも平坦な端面(38)として形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高圧ポンプ。
【請求項6】
前記隆起部(37)の前記接触面(39)と、前記伝動素子(25)の前記端面(38)と、の間の間隔は、0.2mmより小さくもないことを特徴とする、請求項5に記載の高圧ポンプ。
【請求項7】
前記伝動素子(25)の前記隆起部(37)は、前記ポンププランジャ(11)の前記鍔部(28)が前記ローラシュー(22)の表面(30)と接触した状態に保たれるように形成されることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の高圧ポンプ。
【請求項8】
空気圧縮型自己着火内燃機関の燃料噴射装置のためのラジアルプランジャポンプ又はインラインプランジャポンプであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高圧ポンプ。
【請求項9】
前記複数の穴(41〜43)は、中央の貫通孔(40)の周りに分散して配置されたことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の高圧ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ポンプ、特に、ラジアルプランジャポンプ又はインラインプランジャポンプに関する。特に、本発明は、空気圧縮型自己着火内燃機関の燃料噴射装置のための燃料ポンプ分野に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102005046670号明細書には、内燃機関の燃料噴射のための高圧ポンプが開示されている。この公知の高圧ポンプは、ポンプハウジングを有し、ポンプハウジング内には、駆動軸によりストローク運動で駆動されるポンププランジャを備えるポンプ素子が配置される。ポンププランジャは、ポンプハウジングの構成要素のシリンダボア内に摺動自在に案内され、当該シリンダボア内でポンプ作業室を画定する。ポンププランジャは、中空円筒形状のタペットを介して間接的に駆動軸上で支えられ、タペットは、ポンプハウジングの構成要素のボア内に、ポンププランジャの縦軸の方向に摺動自在に案内される。タペットの、駆動軸の方を向いた末端領域には支持素子が挿入され、支持素子内では、駆動軸のカム上を転動するローラが回転自在に保持される。ローラの回転軸は、駆動軸の回転軸に対して少なくとも近似的に並行している。支持素子は、駆動軸の方を向いた側に、ローラがその内部で保持される窪み部を有する。タペット又はポンププランジャに対して、予圧が掛かった戻しばねであって、ポンプハウジング部で支さえられる上記戻しばねが作用する。この戻しばねによって、ポンププランジャ及びタペットに対して、駆動軸のカムへと力が加えられ、従って、吸入ポンププランジャが駆動軸の方に向かって移動する際にも、及び、駆動軸の回転数が高い際にも、カムへのローラの接触が保障される。ポンププランジャは、少なくともタペットの縦軸の方向に、タペットと連結可能である。代替的に、ポンププランジャはタペットと接続可能ではなくてもよく、その場合に、戻しばねによって、タペットへのポンププランジャの接触も保障される。戻りばねは、例えばばね座を介して、ポンププランジャの直径が拡大したプランジャ脚部に対して作用し、これにより、プランジャ脚部は、タペットのカバー部から内部へと突出したフランジと連結した状態に保たれ、このフランジ自身は支持素子と接触した状態に保たれ、従って、ポンププランジャと、タペットと、ローラを備える支持素子と、から成る全結合体に、駆動軸のカムの方へと力が加えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
独国特許出願公開第102005046670号明細書で公知の高圧ポンプには、ローラシューとして機能する支持素子と、ポンププランジャのプランジャ脚部と、の間に遊びが生じうるという欠点がある。高圧ポンプの駆動時にこの遊びが進行し、プランジャ脚部がローラシューにぶつかる。これにより、望まれぬ騒音が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の特徴を備える本発明にかかる高圧ポンプは、望まれぬ騒音が防止又は低減されるという利点を有する。特に、ローラシューとポンププランジャとの間の遊びが予防又は少なくとも回避されうる。
【0005】
従属請求項に記載された措置によって、請求項1で示した高圧ポンプの好適な発展形態が可能である。
【0006】
有利に、伝動素子は、ポンプブランジャが貫通する中央の貫通孔を有し、ポンププランジャは鍔部を有し、ポンププランジャの鍔部は、伝動素子とローラシューの表面との間に配置され、伝動素子は、中央の貫通孔の隣に配置される少なくとも1つの穴を有する。更に有利に、中央の貫通孔の隣に配置される孔はスリット状の穴として形成され、このスリット状の穴は、少なくとも近似的に円周方向に伸びている。これにより、合目的的に、伝動素子の弾性的な変形可能性(elastische Verformbarkeit)が予め設定されうる。これにより、ポンププランジャの伝動性が改善される。場合によっては、初期状態において、ローラシューに対して伝動素子がそれによりポンププランジャに力を加える或る程度の予圧が予め設定可能である。
【0007】
その際更に有利に、伝動素子は、半径方向に中央の貫通孔の周りに分散して配置された複数の穴を有し、当該複数の穴の間には、弾性的に変形可能なブリッジが形成される。従って、弾性的な変形可能性が特にブリッジの領域内で実現されうる。他の領域内では、合目的的に、隆起部へのポンププランジャの接触のため、又は、タペットばね等の接触のための構成が行われうる。従って、伝動素子の構成は、発生する様々な要件に関して最適化されうる。
【0008】
更に有利に、ポンププランジャは鍔部を有し、ポンププランジャの鍔部は、伝動素子とローラシューの表面との間に配置され、伝動素子の隆起部は貫通孔の隣に設けられ、ポンププランジャの鍔部は隆起部に当接する。その際更に有利に、貫通孔の隣に設けられた隆起部は、少なくとも部分的に環状に形成される。貫通孔の隣に設けられた隆起部は、貫通孔を環状に包囲することも可能である。従って、貫通孔の領域内では、鍔部を備えるポンププランジャの、伝動素子への好適な接触が可能となる。半径方向に少しだけ外側の領域内には、伝動素子の所望のしなやかさ(Flexibilitaet)を可能にする貫通孔を設けることが可能である。半径方向に外側の領域内には、好適に、例えばタペットばねを支持するために、支え面を更に形成することが可能である。
【0009】
更に有利に、伝動素子の隆起部は、ポンププランジャの鍔部が当接する接触面を有し、伝動素子は、隆起部の接触面とは反対側の端面を有し、この端面は、少なくとも基本的に平坦な端面として形成される。更に有利に、隆起部の接触面と伝動素子の端面と間の間隔は、0.2mmよりも小さくない。従って、一方では、隆起部への好適な接触が保障され、当該接触によって、ポンププランジャが確実にローラシュー上で保持される。他方では、所望の弾性を保障するために、伝動素子は比較的薄く設計されうる。加えて、伝動素子はこれにより比較的軽量に設計され、このことは、駆動中に加速されるポンプアセンブリの全質量(Gesamtmasse)に好都合に作用する。従って、隆起部は好適に、ポンププランジャの鍔部がローラシューの表面と接触した状態に保たれるように形成される。伝動素子の部分的に弾性を有した構成により、ある程度の予圧(Vorspannung)も加えられる。
【0010】
更に有利に、タペットばねが設けられ、伝動素子が、ローラシューとは反対側の端面上に、少なくとも近似的に環状の支え面を有し、タペットばねが、この環状の支え面上で支えられる。一方では、ポンププランジャの確実な連結が達成可能であり、その際に、ローラシューとのポンププランジャの接触が保障される。他方では、他の構成要素、特にローラシューと一緒にタペット本体を位置変更するために、タペットばねの好適な支持が保障されうる。これにより、タペット本体の構成も簡素化される。
【0011】
有利に、ローラシューと、当該ローラシューがその内部に挿入されるタペット本体と、は、2つの構成要素から形成される。しかしながら、ローラシューとタペット本体が一体に形成され、1つの構成要素を形成することも可能である。
【0012】
有利に、貫通孔は円形の貫通孔として形成される。しかしながら、貫通孔は、スロット形状の貫通孔としても形成されうる。貫通孔は更に、長孔形状の貫通孔として形成されうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の好適な実施例が、以下の記載において、添付の図面を用いてより詳細に記載される。添付の図面では、対応する構成要素に同じ符号を付す。
【
図1】本発明の一実施例に対応する高圧ポンプの抜粋部分の概略的な断面図を示す。
【
図2】本発明の同実施例に対応する
図1に示した高圧ポンプの抜粋部分の概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施例に対応する高圧ポンプ1の抜粋部分の概略的な断面図を示す。高圧ポンプ1は、特にラジアルプランジャポンプ又はインラインプランジャポンプとして形成されうる。特に、高圧ポンプ1は、空気圧縮型自己着火内燃機関(luftverdichtende selbstzuendende Brennkraftmaschine)の燃料噴射装置のための燃料ポンプとして適している。高圧ポンプ1は好適に、燃料配給管、即ち、ディーゼル燃料を高圧下で蓄える所謂コモンレール(Common Rail)を備えた燃料噴射装置で利用される。しかしながら、本発明に係る高圧ポンプ1は、他の用途の場合にも適している。
【0015】
高圧ポンプ1は、ハウジング部2を備え複数の構成要素から成るポンプハウジングを有する。このハウジング部2内には駆動軸3が配置され、駆動軸3は、ポンプハウジング内で適切な形態で保持される。ここでは、駆動軸3は、回転しながら内燃機関により駆動され、従って、この駆動軸3は回転軸4の周りを回転する。駆動軸3上には、カム5が設けられる。ここでは、カム5は、シングルカム又はマルチカムとして構成されうる。更に、カム5はまた、駆動軸3の偏心部分によって形成されてもよい。カム5は、高圧ポンプ1のポンプアセンブリ6に割り当てられる。
【0016】
高圧ポンプ1は、ハウジング部2と連結されたシリンダヘッド7を有する。シリンダヘッド7は、ハウジング部2のタペットボア9内へと突出する突出部8を有する。突起部8は、円筒形状の孔10を有する。
【0017】
ポンプアセンブリ6はポンププランジャ11を有し、このポンププランジャ11は、部分的に孔10内に配置され、及び、孔10内では、当該孔10の縦軸12に沿って案内される。その際に、縦軸12は、少なくとも近似的に駆動軸3の回転軸4に対して方向付けられる。ここでは、ポンププランジャ11は、作動方向13に、及び、作動方向13と逆方向に位置変更が可能である。
【0018】
ポンププランジャ11の端面14は、円筒形状の孔10内でポンプ作業室15を画定する。最初に、低圧下の燃料をポンプ作業室15へと案内し、その後、ポンププランジャ11により加圧された高圧下の燃料を、導管18を通じて燃料配給管等へと圧送するために、ここでは、吸込弁16と吐出弁17とが設けられる。
【0019】
タペットボア9内には、少なくとも基本的に中空円筒形状のタペット本体20が配置される。ここでは、タペット本体20は、タペットボア9内の縦軸12に沿って案内される。タペット本体20は、半径方向に内部の方を向いた突出部21を有する。タペット本体20には、ローラシュー22が挿入され、このローラシュー22は、タペット本体20の突出部21で支えられる。
【0020】
ローラシュー22は、駆動軸3が回転軸4の周りを回転する場合に滑走面24上を滑走するローラ23を収容する役割を果たす。従って、カム5のストローク運動に対応して、作動力が、ローラ23を介してローラシュー22へと伝達される。
【0021】
タペット本体20には、部分的に皿形状の伝動素子25が組み込まれる。その際に、伝動素子25は、ローラシュー22の方を向いた側26が突出部21に当接する。
【0022】
ポンププランジャ11はプランジャ脚部27を有し、このプランジャ脚部27に接して、末端側の鍔部28が設けられる。ポンププランジャ11の鍔部28の端面29は、ローラシュー22の表面30に当接する。その際に、伝動素子25は、タペットばね31により力が加えられる。タペットばね31はタペットボア9内に配置され、その際、タペットばね31は、シリンダヘッド7の突出部8を部分的に包囲する。
【0023】
伝動素子25は、伝動素子25の上記側26とは反対の側に、環状の支え面35を有する。タペットばね31は、一方では、伝動素子25の環状の支え面35で支えられる。他方では、タペットばね31はシリンダヘッド7の下側36で支えられる。
【0024】
従って、カム5からローラ23を介してローラシュー22へと伝達された作動力は、ローラシュー22から更にポンププランジャ11へと伝達される。これにより、燃料が、ポンプ作業室15から吐出弁17を介して圧送される。続いて、タペットばね31の力によって、作動方向13と逆方向のタペット本体20の戻り運動が達成される。その際に、タペットばね31は、伝動素子25を介してタペット本体20に力を加える。従って、ローラシュー22と、ローラシュー22に挿入されたローラ23と、にも、カム5の方向に力が加えられ、ローラ23と、カム5の滑走面24と、の接触が常に保障される。
【0025】
上死点及び下死点を超えた際に特に、方向変換及び変化する力関係に基づいて、公差、及び、発生しうる遊びが、急激な位置変更運動(Verstellbewegung)の最中のカム5とポンププランジャ11との間の機能連鎖において影響を及ぼしうるという問題が発生する。このことは特に、ローラシュー22の表面30への、ポンププランジャ11のプランジャ脚部27の接触に関係している。
【0026】
ポンプアセンブリ6の伝動素子25は、当該伝動素子25の上記側26に、ローラシュー22の方を向いた隆起部37を有する。プランジャ脚部27の鍔部28は、伝動素子25の隆起部37で支えられる。更に、伝動素子25は、部分的に弾性を有して形成される。これにより、プランジャ脚部27と、ローラシュー22の表面30と、の間の遊びが回避され、又は少なくとも低減される。従って、高圧ポンプ1の回転数が高い際に、望まれぬ騒音の発生が防止される。少なくとも、特に上死点又は下死点を超えた際にプランジャ脚部27がローラシュー22の表面30にぶつかることで生じうる騒音が低減される。ここでは、特に、プランジャ脚部27の経路を、ローラシュー22に比べて著しく短縮することが可能である。プランジャ戻しばねとして機能するタペットばね31のための作用面である環状の支え面35と、隆起部37により形成される、鍔部28のための支え面であって、ポンププランジャ11への伝動のための作用面である上記支え面と、の間隔は、隆起部37によって所望の値に設定することが可能であり、この所望の値は、好適に少なくとも0.2mmでありうる。
【0027】
伝動素子25は、本実施例では、好適に中央の貫通孔40を有し、この貫通孔40を、ポンププランジャ11が貫通している。しかしながら、貫通孔40の他の実施形態も可能である。ポンププランジャ11の鍔部28は、伝動素子25と、当該伝動素子25の方を向いたローラシュー22の表面30と、の間に配置される。伝動素子25の隆起部37は貫通孔40の隣に設けられ、ポンププランジャ11の鍔部28は隆起部37に当接する。
【0028】
以下では、伝動素子25の構成が
図2及び
図3を用いて更に記載される。
【0029】
図2は、
図1に示した高圧ポンプ1の伝動素子25の側面図を示す。環状の支え面35は、伝動素子25の端面38上に形成される。その際に、環状の支え面35は、タペットばね31のための有利な接触面を形成する。端面38は、初期状態において、好適に基本的に平坦に形成される。端面38とは反対側の隆起部37上には、接触面39が形成される。接触面39と、端面38の環状の支え面35と、は互いに反対を向いている。取り付けられた状態において、プランジャ脚部27は、その鍔部28により接触面39で支えられる。その際に、プランジャ脚部27の鍔部28は、隆起部37の接触面39に、少なくとも部分的に下から係合する(hintergreifen)。端面38の環状の支え面35と接触面との間には所定の間隔32が実現される。間隔32は、各適用ケースについて予め設定される。
【0030】
図3は、
図2で示した伝動素子25の空間図を示す。
【0031】
伝動素子25は中央の貫通孔40を有する。取り付けられた状態において、ポンププランジャ11のプランジャ脚部27は、中央の貫通孔40を貫通する。その場合に、ポンププランジャ11の鍔部28は、伝動素子25と、ローラシュー22の表面30と、の間に存在する。隆起部37は、本実施例では、環状の隆起部37として形成される。これにより、接触面39の環状の構成が獲得される。
【0032】
隆起部37は、複数のスリット状の(schlitzfoermig)穴41、42、43に囲まれている。従って、上記穴41〜43は、中央の貫通孔40の隣に配置される。スリット状の穴41〜43は、円周方向に中央の貫通孔40の周りに伸びている。スリット状の穴41〜43の間には、弾性的に変形可能なブリッジ44、45、46が形成される。更に、伝動素子25は、外側の環状部47を有し、この外側の環状部47上に、タペットばね31を支持するための環状の支え面35が形成される。外側の環状部47は、ブリッジ44〜46を介して内側の環状部48と接続する。その際、内側の環状部48は隆起部37を有する。
【0033】
ブリッジ44〜46のしなやかな構成によって、外側の環状部47と内側の環状部48との間の或る程度の弾性運動が可能となる。この弾性運動は、作動方向13に、又は、作動方向13と逆方向に起こりうる。
【0034】
高圧ポンプ1が取り付けられた状態において、伝動素子25を介して、ある程度の予圧がプランジャ脚部27に対して加えられ、従って、プランジャ脚部27は、予圧力により、ローラシュー22に抗して押し付けられる。その際に、駆動中に発生する衝撃力等は、好適に、伝動素子25の弾性的構成及び/又はタペットばね31を介して吸収されうる。従って、発生しうる騒音を防止し又は少なくとも低減する、高圧ポンプ2の堅牢な構成が獲得される。
【0035】
タペットばね31が設けられ、伝動素子25が、ローラシュー22とは反対側の端面38を有し、端面38が、タペットばね31を支持する少なくとも近似的に環状の支え面35を有することは有利である。
【0036】
本発明は、記載された実施例に限定されない。