【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの実施態様では、多孔性抗癒着性ヒドロゲルの製造方法を提供し、前記方法は次のステップ:
(i)1以上の非架橋ポリマー及び結晶化可能性分子の水溶性混合物を調製し、
(ii)前記水溶性混合物を、容器、スライド、プレート、組織培養皿又はこれらの組み合わせ及びこれらの変形物にキャストしてキャスト混合物を形成し、
(iii)前記キャスト混合物を乾燥してアモルファスヒドロゲル膜を形成し、
(iv)前記キャスト混合物に前記結晶化可能分子の種結晶を植え、
(v)前記結晶化可能性分子を前記非架橋ポリマー内で結晶構造に成長させ、
(vi)前記キャスト混合物を紫外光に暴露し、前記暴露により前記ポリマーをゲル化又は架橋させ、
(vii)前記架橋ポリマー内で前記結晶構造が維持される条件下で1以上の架橋剤を添加することで前記結晶の周りの非架橋ポリマーを架橋させ、
(viii)前記1以上の前記結晶化可能ポリマーの結晶を水で洗浄することで除去して前記多孔性ヒドロゲルを形成し、及び
(ix)前記多孔性ヒドロゲルから、加圧下で制御された乾燥により水を除去する、ステップを含む。前記方法は、1つの側面では、場合により、前記乾燥ヒドロゲルを前記非架橋ポリマーと1以上の結合の形成を促進する試剤又は化学物質を含む水溶液に浸漬させることで表面をコーティングし、表面又はその組み合わせ物を変性するステップを含む。別の側面では、前記1以上の結合が、エステル結合、アミド結合、カルボキシレート結合、カルボニル結合、エーテル結合、イミド結合及びこれらの組み合わせ又はそれらの変性を含む。
【0007】
本発明の方法の他の側面では、前記ポリマーが、核酸、アミノ酸、糖類、脂質及びこれらの組み合わせを含み、これらはモノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー、マルチマー又はポリマー状を含むものであってよい。他の側面では、前記ポリマーは、コラーゲン、キトサン、ゼラチン、ペクチン、アルギネート、ヒアルロン酸、ヘパリン及びこれらの混合物からなる群から選択される。具体的な側面において、前記ポリマーは、生分解性、生体適合性及び親水性である非合成生体高分子を含む。他の側面では、前記ポリマーは、化学的架橋、物理的架橋又はこれらの組み合わせでゲル化され得るものであり;前記架橋はUV方法、温度方法、pH方法、イオン又はイオンラジカルに基づく方法又はこれらの組み合わせである。1つの実施態様では、前記水溶性混合物はアルギネート及びヒアルロン酸を含む。他の側面では、前記結晶可能性分子は、塩、尿素、ベータシクロデキストリン、グリシン及びグアニジンから選択される小分子を含む。具体的な側面では前記結晶可能性分子は尿素を含む。
【0008】
1つの側面では、前記架橋剤は、塩化カルシウム、p−アジドベンゾイルヒドラジド、N−5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド、ジスクシンイミジルグルタメート、ジメチルピメリミデート−(2)HCl、ジメチルスベリイミデート−2HCl、ジスクシンイミジルスベレート、ビス[スルホスクシンイミジルスベレート]、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド−HCl、イソシアネート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド及びそれらの誘導体からなる群から選択される。他の側面では、本方法は、場合により、医薬、成長因子、ホルモン、タンパク質又はこれらの組み合わせを、前記多孔性ヒドロゲルの1以上のポア又は前記マトリクス内に包埋するステップを含む。
【0009】
他の実施態様では、本発明は、方向付けされたネットワーク化された多孔性抗癒着性ヒドロゲルを開示し、これは次のステップ:
(i)1以上の非架橋ポリマーと結晶化可能性分子の水溶性混合物を調製し、
(ii)前記水溶性混合物を、容器、スライド、プレート、組織培養皿又はこれらの組み合わせ又は変性物にキャストしてキャスト混合物を形成し、
(iii)前記キャスト混合物を乾燥してアモルファスヒドロゲル膜を形成し、
(iv)前記キャスト混合物に前記結晶化可能性分子の種結晶を植え、
(v)前記結晶化可能性分子を、前記非架橋ポリマー内で結晶構造に成長させるステップを含み、前記結晶構造がネットワーク、分岐及び多孔性であり、
(vi)前記キャスト混合物を紫外光に暴露するステップを含み、前記暴露の結果前記ポリマーのゲル化又は架橋が生じ、
(vii)前記架橋されたポリマー内で前記結晶構造が維持される条件下で、1以上の架橋剤を添加することで前記結晶構造の周りに非架橋ポリマーを架橋させ、
(viii)前記結晶化可能性ポリマーの1以上の結晶を水を用いて洗浄して除去して前記多孔性ヒドロゲルを形成させ、
(ix)前記多孔性ヒドロゲルから、圧力下制御された乾燥により水を除去するステップを含む。
【0010】
前記開示された方法は場合により前記乾燥ヒドロゲルを前記非架橋ポリマーと1以上の結合の形成を促進する試剤又は化学物質を含む水溶液に浸漬させることで表面をコーティングし、表面又はその組み合わせ物を変性するステップを含む。1つの側面では、前記1以上の結合が、エステル結合、アミド結合、カルボキシレート結合、カルボニル結合、エーテル結合、イミド結合及びこれらの組み合わせ又はそれらの変性を含む。他の側面では、前記ポリマーが、核酸、アミノ酸、糖類、脂質及びこれらの組み合わせを含み、これらはモノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー、マルチマー又はポリマー状であってよい。他の側面では、前記ポリマーは、コラーゲン、キトサン、ゼラチン、ペクチン、アルギネート、ヒアルロン酸、ヘパリン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0011】
関連する側面では、前記ポリマーは、生分解性、生体適合性及び親水性である非合成生体高分子を含む。前記記載の方法において、前記ポリマーは、化学的架橋、物理的架橋又はこれらの組み合わせでゲル化され得るものであり;前記架橋はUV方法、温度方法、pH方法、イオン又はイオンラジカルに基づく方法又はこれらの組み合わせである。1つの側面では、前記水溶性混合物はアルギネート及びヒアルロン酸を含む。他の側面では、前記結晶可能性分子は、塩、尿素、ベータシクロデキストリン、グリシン及びグアニジンから選択される小分子を含む。具体的な側面では前記結晶可能性分子は尿素を含む。1つの具体的な側面では、前記架橋剤は、塩化カルシウム、p−アジドベンゾイルヒドラジド、N−5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド、ジスクシンイミジルグルタメート、ジメチルピメリミデート−(2)HCl、ジメチルスベリイミデート−2HCl、ジスクシンイミジルスベレート、ビス[スルホスクシンイミジルスベレート]、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド−HCl、イソシアネート、アルデヒド、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド及びそれらの誘導体からなる群から選択される。他の側面では、本方法は、場合により、医薬、成長因子、ホルモン、タンパク質又はこれらの組み合わせを、前記多孔性ヒドロゲルの1以上のポア又は前記マトリクス内に包埋するステップを含む。他の側面では、前記ヒドロゲルは、外科手術に続く組織癒着を防止し、傷の治癒を促進し、治癒を補助するために薬物又は成長因子を輸送し、血液、血液タンパク質、線維芽細胞の浸潤を防止し及び前記外科手術位置からの炎症応答を阻害又は予防し、かつ非毒性である。
【0012】
他の実施態様で、本発明は、患者の外科手術の間又はその後組織が癒着することを防止するための方法に関し、次のステップ:外科手術の間又はその後組織が癒着することを防止する必要がある前記患者を特定し、及び抗癒着性組成物の注入可能な溶液を前記手術の先立ち、その間又はその後に、投与するステップを含み、前記組成物が、非毒性、非免疫原性多孔性ヒドロゲル、膜、バリア又はこれらの組み合わせ又は変性物を含み、前記組成物の製造が次のステップ:
(a)1以上の非架橋ポリマーと結晶化可能分子の水溶性混合物を調製するステップ、
(b)前記水溶性混合物を、容器、スライド、プレート、組織培養皿又はそれらの組み合わせ又はそれらの変性物上にキャストしてキャスト混合物を形成するステップ、
(c)前記キャスト混合物を乾燥してアモルファスヒドロゲル膜を形成するステップ、
(d)前記結晶化可能分子の種結晶を前記キャスト混合物に植えるステップ、
(e)前記結晶化可能分子を前記非架橋ポリマー内で結晶構造に成長させるステップ、
(f)前記キャスト混合物をUV光に暴露させるステップを含み、前記暴露の結果前記ポリマーをゲル化又は架橋させ、
(g)前記架橋されたポリマー内の前記結晶構造が維持される条件下で1以上の架橋剤を添加することで前記結晶構造周りの前記非架橋ポリマーを架橋させるステップ、
(h)前記結晶化可能ポリマーの1以上の結晶を水で洗浄して除去して前記多孔性ヒドロゲルを形成するステップ、及び
(i)前記多孔性ヒドロゲルから、圧力下制御された乾燥により水を除去するステップ、を含む。
【0013】
1つの側面で、前記多孔性ヒドロゲルの製造方法は、場合により次のステップ、前記乾燥ヒドロゲルを、前記非架橋ポリマー及び1以上の結合を形成することを促進するための1以上の試剤又は化学物質を含む水溶液中に浸漬することにより、表面コーティングするステップ、及び表面変性ステップ又はこれらの組み合わせるステップ、及び薬物、成長因子、ホルモン、タンパク質又はこれらの組み合わせから選択される1以上の試剤を、前記多孔性ヒドロゲルの前記1以上のポア又はマトリクス内に包埋するステップを含み、そこで前記ヒドロゲルは前記1以上の試剤の調節可能な又は制御された徐放性を提供する。本発明の具体的な側面では、前記1以上の試剤はイブプロフェン又はトラネキサム酸を含む。1つの側面では、前記組成物は、傷の治癒を促進し、治癒を補助するために薬物又は成長因子を輸送し、血液、血液タンパク質、線維芽細胞の浸潤及び前記外科手術位置からの炎症応答を阻害又は予防する。他の側面では前記ポリマーは、非合成生分解性、生体適合性及び親水性である。具体的な側面では、前記水溶性混合物はアルギネート及びヒアルロン酸を含む。他の側面では、前記結晶可能性分子は、塩、尿素、ベータシクロデキストリン、グリシン及びグアニジンから選択される小分子を含む。他の側面では前記結晶可能性分子は尿素を含む。
【0014】
本発明はさらに、患者の外科手術の間又はその後組織が癒着することを防止するための組成物を開示し、抗癒着性組成物の注入可能な溶液を含み、前記組成物は、非毒性、非免疫原性多孔性ヒドロゲル、膜、バリア又はこれらの組み合わせ又は変性物を含む。本発明の前記組成物は以下のステップを含む方法により製造され、前記方法は:
(i)1以上の非架橋ポリマーと結晶化可能分子の水溶性混合物を調製するステップ、
(ii)前記水溶性混合物を、容器、スライド、プレート、組織培養皿又はそれらの組み合わせ又はそれらの変性物上にキャストしてキャスト混合物を形成するステップ、
(iii)前記キャスト混合物を乾燥してアモルファスヒドロゲル膜を形成するステップ、
(iv)前記結晶化可能分子の種結晶を前記キャスト混合物に植えるステップ、
(v)前記結晶化可能分子を前記非架橋ポリマー内で結晶構造に成長させるステップ、
(vi)前記キャスト混合物をUV光に暴露させるステップを含み、前記暴露の結果前記ポリマーをゲル化又は架橋させ、
(vii)前記架橋されたポリマー内の前記結晶構造が維持される条件下で1以上の架橋剤を添加することで前記結晶構造周りの前記非架橋ポリマーを架橋させるステップ、
(viii)前記結晶化可能ポリマーの1以上の結晶を水で洗浄して除去して前記多孔性ヒドロゲルを形成するステップ、及び
(ix)前記多孔性ヒドロゲルから、圧力下制御された乾燥により水を除去するステップ、を含む。1つの側面で前記組成物は、前記外科手術に先立ち、その間又はその後に投与される。
【0015】
1つの実施態様で本発明は、方向付けされたネットワーク化された抗癒着性ヒドロゲルの製造方法を開示し、前記方法は次のステップ:
(i)ヒアルロン酸、アルギニン酸及び尿素を含む水溶液を調製し、
(ii)前記水溶性混合物を、容器、スライド、プレート、組織培養皿又はこれらの組み合わせ又は変性物にキャストしてキャスト混合物を形成し、
(iii)前記キャスト混合物を乾燥してアモルファスヒドロゲル膜を形成し、
(iv)前記キャスト混合物に以上の尿素結晶を植え、
(v)前記尿素を前記非架橋アルギネート内で結晶構造に成長させ、
(vi)前記キャスト混合物を紫外光に暴露するステップを含み、前記暴露の結果前記アルギネートのゲル化又は架橋が生じ、
(vii)前記1以上の尿素結晶を水を用いて洗浄して除去して前記多孔性ヒドロゲルを形成させ、
(viii)前記多孔性ヒドロゲルから、圧力下制御された乾燥により水を除去するステップを含む。
【0016】
前記方法は場合により次のステップ:前記ヒドロゲルを、前記乾燥ヒドロゲルを、EDC/NHSの存在下でヒアルロン酸の水溶液に浸漬して表面変性するステップ及び前記尿素結晶構造の周りの非架橋アルギネートを、前記架橋されたアルギネート内の前記尿素結晶構造が維持される条件下で塩化カルシウムを添加することで、架橋させるステップを含む。1つの側面で、前記方法は場合により、医薬、成長因子、ホルモン、タンパク質又はこれらの組み合わせから選択される1以上の試剤を、前記ヒドロゲルの1以上のポア又はマトリクス内に包埋するステップを含む。他の側面では、前記ヒドロゲルは、外科手術に続いて組織癒着を防止し、治癒を促進し、治癒を補助するために医薬又は成長因子を輸送し、血液、血液タンパク質、線維芽細胞の浸潤を防止し、及び前記外科手術の炎症応答を防止する。
【0017】
本発明の他の側面は、生体機能化HA−系二重層膜の製造の方法に関し、前記方法は:第1の層及び第2の層を準備するステップを含み、前記第1の層及び前記第2の層が、次のステップ:
(i)ヒアルロン酸、アルギニン酸及び尿素を含む水溶性混合物を調製するステップ、
(ii)前記水溶性混合物を、容器、スライド、プレート、組織培養皿又はこれらの組み合わせ、又はこれらの変性物上にキャストしてキャスト混合物を形成するステップ、
(iii)前記キャスト混合物を乾燥させてアモルファスヒドロゲル膜を形成するステップ、
(iv)前記キャスト混合物に1以上の尿素結晶を植えるステップ、
(v)前記尿素を前記非架橋アルギネート内で結晶構造に成長させるステップ、
(vi)前記キャスト混合物をUV光に暴露するステップを含み、前記暴露の結果前記アルギネートをゲル化又は架橋させ、
(vii)前記1以上の尿素結晶を水で洗浄することで除去して前記多孔性ヒドロゲルを形成するステップ、及び
(viii)前記多孔性ヒドロゲルから圧力下で制御された乾燥により水を除去し、かつ前記第1の層と前記第2の層を融合させて、前記二重生体機能化HAー系膜を形成するステップを含む方法で製造される。1つの側面では、前記第1の層は、方向づけられたネットワーク化された多孔性抗癒着性ヒドロゲルである。他の側面では、前記第2の層は、方向づけられたネットワーク化された多孔性抗癒着性ヒドロゲルであり、前記第2の層細胞癒着又は細胞浸潤を促進する。他の側面では、前記方法は場合により、前記第2の層上に共有結合で固定化された、ペプチド、タンパク質、成長ホルモン又は成長因子を含む。他の側面では、前記ペプチドは、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(GD)ペプチドである。他の側面では、前記二重生体機能化HA−系膜は、ナーブラップ、硬膜交換、皮膚移植として使用され、骨折包帯中で骨の成長、慢性創傷の治癒を促進し、及び心臓や肺組織にパッチされて組織修復を促進させる。
【0018】
他の実施態様では、本発明は、ナーブラップ、硬膜交換、皮膚移植として使用され、骨折包帯中で骨の成長、慢性創傷の治癒を促進し、及び心臓や肺組織にパッチされて組織修復を促進させるための組成物又はその組み合わせが開示され、前記組成は、二重生体機能化HA−系膜を含み、前記膜は以下のステップを含む方法:第1の層及び第2の層を準備するステップを含み、前記第1の層及び前記第2の層が、次のステップ:ヒアルロン酸、アルギニン酸及び尿素を含む水溶性混合物を調製するステップ、前記水溶性混合物を、容器、スライド、プレート、組織培養皿又はこれらの組み合わせ、又はこれらの変性物上にキャストしてキャスト混合物を形成するステップ、前記キャスト混合物を乾燥させてアモルファスヒドロゲル膜を形成するステップ、前記キャスト混合物に1以上の尿素結晶を植えるステップ、前記尿素を前記非架橋アルギネート内で結晶構造に成長させるステップ、前記キャスト混合物をUV光に暴露するステップを含み、前記暴露の結果前記アルギネートをゲル化又は架橋させ、前記1以上の尿素結晶を水で洗浄することで除去して前記多孔性ヒドロゲルを形成するステップ、及び前記多孔性ヒドロゲルから圧力下で制御された乾燥により水を除去し、かつ前記第1の層と前記第2の層を融合させて、前記二重生体機能化HAー系膜を形成するステップを含む方法で製造される。1つの側面で、前記組成物は、外科手術手順に先立ち、その間又その後に注入、挿入又配置されることで投与されるか、又は影響を受ける領域に直接適用される。
【0019】
本発明の前記構成及び利点をより完全に理解するために、以下詳細な説明が添付の図面と共に参照される。