(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の液体注入具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜
図6は、本発明の液体注入具の使用状態を順に示す縦断面図、
図7は、
図1〜
図6に示す液体注入具での本体と規制部材とを示す分解斜視図、
図8および
図9は、それぞれ、
図7に示す本体と規制部材との位置関係を示す図(
図8が液体注入具の穿刺時状態での位置関係を示し、
図9が液体注入具の穿刺後状態での位置関係を示す)である。なお、以下では、説明の都合上、
図1〜
図9中の上側を「基端」、下側を「先端」と言う。
【0018】
図1〜
図6に示すように、液体注入具1は、内部に予め薬液(液体)100が充填されたプレフィルドシリンジであり、生体内に薬液100を投与することができる。この薬液100としては、特に限定されないが、例えば、抗体等の蛋白性医薬品、ホルモン等のペプチド性医薬品、核酸医薬品、細胞医薬品、血液製剤、各種感染症を予防するワクチン、抗がん剤、麻酔薬、麻薬、抗生物質、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、ヘパリン、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、脂肪乳剤、造影剤等が挙げられる。
【0019】
液体注入具1は、内側構造体2と、生体当接部材3と、把持部材4と、コイルバネ5と、規制部材6と、キャップ7とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0020】
内側構造体2は、内側構造体本体としての筒体21と、筒体21内で摺動し得るガスケット22と、ガスケット22を移動操作する押し子23と、筒体21の先端部に配置された中空針24とを有している。
【0021】
筒体21は、有底筒状をなす胴部211と、胴部211の底部に突出形成された口部212とを有している。
【0022】
胴部211の内腔部、すなわち、胴部211とガスケット22とで囲まれる空間には、薬液100を収納することができる。また、胴部211の基端外周部には、外径が拡径したフランジ部213が突出形成されている。
【0023】
口部212は、胴部211よりも縮径した部分であり、薬液100が排出される。
図7〜
図9に示すように、口部212の外周部には、楔部25が突出形成されている。楔部25は、その側面視で幅が先端方向に向かって漸増した楔状、すなわち、本実施形態では二等辺三角形をなしている。
【0024】
また、胴部211と口部212との境界部には、外径が拡径したフランジ部214が突出形成されている。
【0025】
筒体21の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であるという点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂が好ましい。
【0026】
ガスケット22は、円柱状をなす部材で構成された弾性体である。ガスケット22の外周面が筒体21の胴部211の内周面に対し密着しつつ摺動することにより、胴部211内の液密性を確実に保持しつつ、薬液100を口部212から押し出すことができる。
【0027】
ガスケット22の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【0028】
ガスケットの基端部には、長尺状をなす押し子23が連結されている。
この押し子23の基端部には、外径が拡径した指当て部231が形成されている。押し子23を押圧操作する際には、指当て部231に例えば親指を当て、その押圧操作を行なうことができる。そして、この押圧操作により、ガスケット22が前進して、薬液100を口部212から押し出すことができる。
【0029】
また、押し子23の長手方向の途中には、突出部232が突出形成されている。突出部232は、押し子23の外周方向に沿ってリング状に形成されている。
【0030】
押し子23の構成材料としては、特に限定されず、例えば、筒体21と同様の材料を用いることができる。
【0031】
筒体21の口部212には、皮内針としての中空針24が嵌合、装着されている。そして、中空針24は、口部212を介して、胴部211と連通している。
【0032】
中空針24は、その先端に鋭利な針先241を有している。針先241で生体表面200を穿刺することができる(
図4参照)。この穿刺状態で生体内に薬液100を注入することができる(
図5参照)。
【0033】
中空針24は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材料で構成されている。
【0034】
また、
図1に示すように、液体注入具1の未使用状態では、中空針24がキャップ7で覆われている。キャップ7は、筒体21の口部212に着脱自在に装着される筒状をなすものである。
【0035】
以上のような構成の内側構造体2は、生体当接部材3の内側に当該生体当接部材3と同心的に配置されている。
【0036】
生体当接部材3は、先端に開口する先端開口部31と、基端に開口する基端開口部32とを有する筒体で構成されている。そして、先端開口部31の縁部が生体表面200に宛がわれる当て部33として機能する(
図2〜
図6参照)。
【0037】
また、生体当接部材3の当て部33が生体表面200に宛がわれた状態で、内側構造体2は、針先241が先端開口部31よりも基端側に位置する第1の位置(
図1、
図2、
図6参照)と、針先241が先端開口部31よりも先端側に突出して生体表面200を穿刺する第2の位置(
図3〜
図5参照)とに移動することができる。
【0038】
生体当接部材3の軸方向の途中には、内周部から係合部(突出部)34が突出形成されている。係合部34は、生体当接部材3の内周部の周方向に沿ってリング状に形成されている。
図4に示すように、係合部34は、内側構造体2が第2の位置に移動した際に、規制部材6が係合することができる。
【0039】
また、生体当接部材3の内周部には、係合部34よりも基端側に、外径が段階的に変化した段差部35が形成されている。段差部35は、コイルバネ5の先端51が当接するバネ座として機能する。
【0040】
生体当接部材3の外周部には、その先端側の部分と基端側の部分とにそれぞれ突部で構成されたストッパ部36、37が一対ずつ突出形成されている。
図4、
図5に示すように、ストッパ部36は、内側構造体2を移動操作するときに把持される把持部材4の先端43が当接して、内側構造体2の移動限界を規制することができる。
図1、
図2、
図6に示すように、ストッパ部37は、把持部材4の壁部(管壁)に形成されたスリット42の縁部に当接して、生体当接部材3が把持部材4から離脱するのを防止することができる。
【0041】
生体当接部材3のさらに外周側には、筒状の把持部材4が生体当接部材3と同心的に配置されている。把持部材4は、内側構造体2を生体当接部材3に対して移動可能に支持して、それを移動操作するときに把持される部材である。
【0042】
把持部材4の軸方向の途中には、内側構造体2を支持する支持部41が設けられている。支持部41は、把持部材4の内周部に突出形成されている。また、支持部41は、把持部材4の内周部の周方向に沿ってリング状に形成されている。そして、このように形成された支持部41の先端面に、内側構造体2の筒体21のフランジ部213が支持、固定されている。この固定方法としては、特に限定されず、例えば、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)による方法等が挙げられる。
【0043】
また、把持部材4には、支持部41よりも先端側の部分に、壁部を貫通する一対のスリット42が形成されている。一対のスリット42は、把持部材4の中心軸を介して対向して配置されている。各スリット42を生体当接部材3の各ストッパ部37がそれぞれ移動することができ、当該ストッパ部37がスリット42の先端側の縁部に当接することにより、生体当接部材3が把持部材4から離脱するのを防止することができる。
【0044】
生体当接部材3、把持部材4、規制部材6の構成材料としては、特に限定されず、例えば、筒体21と同様の材料を用いることができる。
【0045】
把持部材4の内側には、例えばステンレス鋼で構成されたコイルバネ5が圧縮状態で配置されている。コイルバネ5は、内側構造体2を基端方向に向かって付勢する付勢部材である。前述したように、コイルバネ5の先端51は、生体当接部材3の段差部35に当接している。一方、コイルバネ5の基端52は、把持部材4の支持部41に当接している。これにより、把持部材4を介して、内側構造体2を基端方向に向かって付勢することができる。
【0046】
内側構造体2の筒体21の口部212には、規制部材6が着脱自在に装着されている。この規制部材6は、使用後、すなわち、穿刺後に、先端側から液体注入具1内に指先等が過剰の進入するのを規制するとともに、内側構造体2の先端方向への再移動を規制するものである(
図6参照)。
【0047】
図7に示すように、規制部材6は、リング状をなす部材で構成されている。これにより、規制部材6は、筒体21の口部212の外周部に嵌合することができ、よって、当該口部212に対して着脱自在となる。なお、規制部材6は、内側構造体2に装着された状態では、内側構造体2とともに移動可能することができる。
【0048】
規制部材6の外周部には、外径が拡径したフランジ部61が突出形成されている。フランジ部61は、規制部材6の外周部の周方向に沿って形成されている。
【0049】
また、規制部材6には、フランジ部61よりも先端側に、下方に向かって突出した突片62が一対形成されている。一対の突片62は、規制部材6の中心軸を介して対向配置されている。そして、各突片62の先端部には、互いに反対方向に突出した、すなわち、外側に向かって突出した爪621が形成されている。
【0050】
図4に示すように、内側構造体2が第1の位置から第2の位置に移動した際、その第2の位置で、規制部材6は、フランジ部61と各突片62の爪621との間で、生体当接部材3の板状の突出部34を両側(先端側と基端側と)から挟持することができる。これにより、規制部材6が生体当接部材3に対して固定されることとなる。このように、フランジ部61と各突片62の爪621とは、第2の位置で規制部材6が生体当接部材3に対して固定される固定部として機能するものである言うことができる。
【0051】
また、
図6に示すように、規制部材6は、この固定状態から内側構造体2が再度第1の位置に戻るときに、内側構造体2とともに移動しそうになるが、生体当接部材3に対して固定されているため、その位置に留まり、内側構造体2から離脱する。
【0052】
このように留まった規制部材6により、生体当接部材3の先端開口部31をそれよりも若干基端側でリング状に覆うことができる。これにより、液体注入具1を生体表面200から離間させた際に、例えば操作者の指先が生体当接部材3の先端開口部31から内側に侵入しても、規制部材6で当該指先のそれ以上の進入、すなわち、当該指先が内側構造体2の針先241に届くのを規制することができる。よって、中空針24の針先241による指先の誤刺を確実に防止することができる。従って、液体注入具1は、使用後の安全性に優れたものとなっている。
【0053】
なお、規制部材6の内径φdは、指先の進入を規制する程度の大きさであり、例えば、好ましくは6〜17mmであり、より好ましくは8〜13mmである。規制部材6の内径φdがこのような大きさに設定されていることにより、指先の進入を確実に規制することができ、当該指先に対する誤刺をより確実に防止することができる。
【0054】
また、前述したように規制部材6で生体当接部材3の先端開口部31を覆ってしまえば、内側構造体2の退避量(第2の位置から第1の位置への移動量)が比較的小さくても、すなわち、内側構造体2を過剰に奥側(基端側)まで移動させなくとも、指先が内側構造体2の針先241にまで到達するのを防止することができる。これにより、内側構造体2を基端方向へ移動させるまでのコイルバネ5の伸長量をできる限り少なくすることができ、よって、液体注入具1の小型化を図ることができる。また、穿刺操作時のコイルバネ5の付勢力に抗する押し込み力も抑制することができ、よって、液体注入具1の操作性が向上する。
【0055】
図7に示すように、規制部材6のリング状をなす壁部には、欠損部63が形成されている。欠損部63は、規制部材6の周方向に沿った幅が、内側構造体2の楔部25と同様に、先端方向に向かって漸増している。なお、欠損部63の最も基端に位置する最小幅部631の幅は、楔部25の最も先端に位置する最大幅部251の幅よりも小さい。
【0056】
図8、
図9に示すように、第2の位置にある内側構造体2が再度第1の位置に戻る際、その移動に伴って、内側構造体2の楔部25が規制部材6の欠損部63を通過することができる。一方、その反対に、第1の位置に戻った内側構造体2が再度第2の位置に戻ろうとしても、内側構造体2の楔部25の最大幅部251が規制部材6の欠損部63の最小幅部631に入り込むことが阻止されるため、楔部25が欠損部63を通過することが禁止される。これにより、第1の位置に戻った内側構造体2が再度第2の位置に移動するのを確実を規制することができ、よって、内側構造体2の中空針24が不本意に外部へ突出するのを確実に防止することができる。
【0057】
このように液体注入具1では、液体注入具1内への指先の進入防止と、内側構造体2の先端方向への再移動規制との相乗効果により、使用後に中空針24で指先の誤刺を確実に防止することができる。
【0058】
次に、液体注入具1の使用方法の一例について、
図1〜
図6を参照しつつ説明する。
[1]
図1に示すように、未使用状態の液体注入具1を用意する。この液体注入具1には、キャップ7が装着されているため、使用に際しキャップ7を取り外す。
【0059】
[2] 次に、液体注入具1の把持部材4を片方の手で把持して、
図2に示すように、液体注入具1の生体当接部材3の当て部33を、穿刺が行なわれる生体表面200の目的部位に宛がう。
【0060】
[3] 次に、
図2に示す状態から、
図3に示すように、コイルバネ5の付勢力に抗して、液体注入具1全体を生体表面200に向けて押し付ける。この押し付け操作は、把持部材4を把持して容易に行なうことができる。
【0061】
また、押し付け操作により、その力が把持部材4の支持部41を介して内側構造体2に伝達され、当該内側構造体2が規制部材6とともに第1の位置から第2の位置へ移動し始める。
【0062】
[4] そして、
図4に示すように、把持部材4の先端43が生体当接部材3のストッパ部36に当接するまで、押し付け操作を行なう。これにより、内側構造体2が第2の位置に移動することとなり、中空針24で生体表面200を穿刺することができる。
【0063】
なお、このときの液体注入具1では、生体当接部材3の当て部33(先端面)は、筒体21の口部212の先端面215とほぼ同一平面上に位置している。そして、生体当接部材3の当て部33と筒体21の先端面215とで形成される平面に対して中空針24が直交している。
【0064】
よって、
図4に示すように、中空針24を生体表面200に穿刺した場合に、筒体21の先端面215が生体表面200に接触するとともに、生体当接部材3の当て部33も皮膚の表面に接触する。これにより、生体当接部材3によって中空針24を生体表面200に対してほぼ垂直に支持することができる。その結果、中空針24がブレることを防止することができ、生体表面200に対して中空針24を真っ直ぐ穿刺することを可能としている。
【0065】
なお、筒体21の先端面215は、生体当接部材3の当て部33と同一平面上に位置しなくてもよい。すなわち、筒体21の先端面215が、当て部33から生体当接部材3の軸方向基端側に位置していてもよい。
【0066】
また、このとき、規制部材6は、前述したようにフランジ部61と各突片62の爪621とが生体当接部材3の突出部34を挟持して、生体当接部材3に対し固定される。
【0067】
[5] 次に、
図4に示す状態から把持部材4を把持していた手の親指を、内側構造体2の押し子23の指当て部231に当て、
図5に示すように、そのまま押し子23を押圧操作する。これにより、薬液100が内側構造体2の口部212から押し出されて、中空針24を介して生体内に投与される。
【0068】
[6] 次に、液体注入具1に対する押し付け力を解除すると、それに伴って、コイルバネ5の付勢力により、内側構造体2が把持部材4とともに押し上げられて、再度第1の位置に戻る。また、内側構造体2が再度第1の位置に戻る際には、規制部材6は、生体当接部材3に対し固定された状態となっており、内側構造体2から離脱することができる。
【0069】
その後、液体注入具1を生体表面200から離間させる。このとき、前述したように、規制部材6で生体当接部材3の先端開口部31が覆われるため、操作者の手指等が生体当接部材3の先端開口部31から不本意に進入するのが防止され、よって、中空針24による操作者の手指等の誤刺を確実に防止することができる。また、規制部材6により、第1の位置に戻った内側構造体2が再度第2の位置に移動して中空針24が不本意に外部へ突出するのも確実に防止され、これによっても、操作者の手指等の誤刺を確実に防止することができる。
【0070】
以上、本発明の液体注入具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、液体注入具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0071】
また、規制部材は、前記実施形態ではその移動先で生体当接部材の先端開口部の一部を覆うようこうせいされているが、これに限定されず、例えば、先端開口部31の全体を覆うよう構成されていてもよい。
【0072】
また、規制部材の内径を小さくすることにより、ISO規格のタブやネストに収納することもできる。