(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレキシブル基板と前記表示部との間には、前記表示部が形成されている表示部形成領域と、前記第1の端子部が形成されている端子部形成領域と、前記表示部形成領域および前記端子部形成領域の間の中間領域とに連続して、下地層が設けられており、
前記下地層における前記端子部形成領域の部分が前記緩衝層である、
請求項1に記載されたフレキシブル表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の一態様の概要]
本発明の一態様に係るフレキシブル表示装置は、フレキシブル基板と、当該フレキシブル基板上に形成された表示部及び第1の端子部と、を備えたデバイス基板と、第2の端子部を備えたフレキシブル回路基板と、を具備したフレキシブル表示装置において、前記第1の端子部と前記第2の端子部とは、導電性粒子を含む異方性導電膜を介して接続されており、前記フレキシブル基板と前記第1の端子部との間に、電極層及び緩衝層が設けられており、前記導電性粒子のコア部の平均粒径と弾性率との積と、前記コア部を被覆する金属層の平均厚みの2倍と弾性率との積との和を、前記第1の端子部の平均厚みと弾性率との積と、前記緩衝層の平均厚みと弾性率との積と、前記電極層の平均厚みと弾性率との積との和で除した値が1.5以下となることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係るフレキシブル表示装置の特定の局面では、前記緩衝層は、樹脂からなる。
【0015】
本発明の一態様に係るフレキシブル表示装置の特定の局面では、前記フレキシブル基板と前記表示部との間には、前記表示部が形成されている表示部形成領域と、前記第1の端子部が形成されている端子部形成領域と、前記表示部形成領域および前記端子部形成領域の間の中間領域とに連続して、下地層が設けられており、前記下地層における前記端子部形成領域の部分が前記緩衝層である。
【0016】
[表示装置]
以下、本発明の一態様に係るフレキシブル表示装置について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面における部材の縮尺は実際のものとは同じとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の一態様に係るフレキシブル表示装置の全体構成を示す図である。
図1に示すように、本発明の一態様に係るフレキシブル表示装置1は、表示パネル100と、駆動制御部200と、複数のフレキシブル回路基板300とを備えた、フレキシブルディスプレイである。
【0018】
表示パネル100は、例えば、エレクトロルミネッセンス効果を利用した有機EL(Electro Luminescence)パネルである。駆動制御部200は、4つの駆動回路210と、制御回路220とから構成されている。フレキシブル回路基板300には、駆動回路210としてのICが搭載されている。
【0019】
図2は、本発明の一態様に係る表示パネルとフレキシブル回路基板との接続構造を示す斜視図である。
図3は、実施例に係るフレキシブル表示装置の
図2のA−A線に沿った箇所の断面図である。
図4は、実施例に係るフレキシブル表示装置の
図2のB−B線に沿った箇所の断面図である。
【0020】
図2に示すように、表示パネル100のTFT基板111上(フレキシブル基板111a上でもある)には、その中央領域に表示部101が形成されており(
図2において二点鎖線で囲んだ部分)、中央領域を囲繞する外周領域には、その外周領域の4辺全てに、
図3および
図4に示すように、それぞれ複数の第1の端子部114が形成されている。なお、以下では、表示部101が形成されている領域を表示部形成領域と称し、第1の端子部114が形成されている領域を端子部形成領域と称し、その間の領域を中間領域と称する。
【0021】
フレキシブル回路基板300は、例えば、ポリイミド製のベースフィルム310に、銅等によって導電パターン(不図示)が形成されたものであって、ベースフィルム310の表示パネル100側の端部の下面(TFT基板111と対向する面)には、各第1の端子部114と対応する位置に、前記導電パターンと電気的に接続された第2の端子部320が複数形成されている。
【0022】
TFT基板111の外周領域には、その4辺全てにそれぞれベースフィルム310の表示パネル100側の端部がACF400を介して接続されている。このACF400は、熱硬化性樹脂を膜状に成型したフィルムであって、第1の端子部114と第2の端子部320との間に介在し、熱圧着により第1の端子部114および第2の端子部320に接着されている。
【0023】
ACF400には導電性粒子410が含まれており、表示パネル100の各第1の端子部114とそれに対応するフレキシブル回路基板300の第2の端子部320とは、ACF400の導電性粒子410を介して電気的に接続されている。導電性粒子410は、例えば、PP(ポリプロピレン)等の樹脂材料からなるコア部411の表面を、Ni(ニッケル)、Au(金)等の金属からからなる金属層412でコーティングしたものである。
【0024】
なお、第1の端子部114は、必ずしもTFT基板111の外周領域の4辺全てに形成されている必要はなく、1辺にだけ形成されていても良いし、2辺或いは3辺に形成されていても良い。そして、駆動回路210およびフレキシブル回路基板300は、第1の端子部114が形成されている辺にだけ接着されていれば良い。
【0025】
[表示パネル]
表示パネル100は、例えば、デバイス基板110と、CF(Color Filter)基板120とを備える。デバイス基板110およびCF基板120は対向配置され貼り合わされている。
【0026】
デバイス基板110の上方には、シール部材102を介してCF基板120が配置され、EL基板110とCF基板120との間には樹脂層103が充填されている。シール部材102および樹脂層103は、緻密な樹脂材料(例えばシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等)からなり、デバイス基板110の表示部101を封止し有機発光層116が水分やガス等に触れるのを防止している。
【0027】
TFT基板111の上面(CF基板120側の主面。以下の説明では、デバイス基板110を構成する各層についても、CF基板120側の面を「上面」と称する。)には、マトリクス状に配置された複数の画素で構成される表示部101が形成されており、それら各画素が出射するR(赤色)、G(緑色)またはB(青色)の光がCF基板120を透過し、表示パネル100の正面にカラー画像が表示される。そして、TFT基板111の上面の表示部101を囲繞する領域に第1の端子部114が設けられている。
【0028】
なお、本実施の形態ではCF基板120が設置される例を説明したが、CF基板は必ずしも設置される必要はない。
【0029】
<デバイス基板>
デバイス基板110は、TFT基板111と、EL(Electro Luminescence)基板124とからなり、EL基板124は、TFT基板111の上面に、平坦化膜112、下部電極113、コンタクトホール113X、アノードリング113Y、第1の端子部114、バンク115、有機発光層116、電子輸送層117、上部電極118、封止層119a、および保護膜119b等が積層された積層構造を有し、デバイス基板110の表示部101を構成する各画素は、下部電極113、有機発光層116、電子輸送層117、上部電極118等で構成されるトップエミッション型の有機EL素子で構成されている。
【0030】
TFT基板111は、例えば、フレキシブル基板111aの上面に、TFT層111bを形成した構造である。TFT層111bには、SD配線111cおよびパッシベーション膜111dなどが含まれる。
【0031】
フレキシブル基板111aは、例えば、ポリイミド、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルスルホン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、硫化ポリフェニレン、ポリプロピレン、ポリアミド、アラミド、ポリアミドイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン、環状オレフィンコポリマーおよび塩化ポリビニル等の樹脂材料からなる。
【0032】
図3および
図4に示す実施例では、パッシベーション膜111dおよび平坦化膜112で下地層104が構成されている。そして、下地層104のうちの第1の端子部114に相当する部分が、緩衝層104aとして機能している。
【0033】
緩衝層は、
図4に示したように、複数の第1の端子部に連続した層として形成されていてもよい。また、緩衝層は、
図4の各々の緩衝層104aのみが本発明の特徴を有する緩衝層として形成されているような、複数の第1の端子部の各々に対応して、第1の端子部ごとに独立した層として形成されていてもよい。 SD配線111cは、Ag、Cu、Ti、Mo、Al、Wまたはこれらの合金などの導電性材料からなり、TFT基板111の引出配線(不図示)と電気的に接続されている。また、SD配線111cと第1の端子部114とは、パッシベーション膜111dおよび平坦化膜112を貫通するビア接続部114Xを介して電気的に接続されている。
【0034】
SD配線111cにおける端子部形成領域の部分が、電極層105を構成している。電極層105は、フレキシブル基板111aと第1の端子部114との間であって、フレキシブル基板111aの上面に存在する。なお、電極層105は、フレキシブル基板111aの上面における端子部形成領域だけでなく、それ以外の領域にも設けられていても良い。電極層の厚みは、第1の端子部の厚みよりも薄いのが好ましい。
【0035】
パッシベーション膜111dは、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などの水溶性樹脂、フッ素系樹脂、SiO(酸化シリコン)、SiN(窒化シリコン)等からなり、SD配線111cを被覆し、これらを保護している。
【0036】
平坦化膜112は、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂等の絶縁材料からなり、パッシベーション膜111dの上面の段差を平坦化している。なお、平坦化膜112は必ずしも必要ではない。
【0037】
下部電極(画素電極)113は、コンタクトホール113Xを介してTFT層111bと電気的に接続されている。なお、下部電極113は、例えば、金属層と金属酸化物層との2層構造であってもよい。金属層は、例えば、Ag(銀)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等の光反射性導電材料からなり、各画素に対応した領域にマトリクス状に形成されている。金属酸化物層は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の導電材料からなり、金属層上に金属層を被覆するように形成されている。
【0038】
第1の端子部114は、TFT基板111の引出配線(不図示)と電気的に接続されている。なお、第1の端子部114は、金属層と金属酸化物層との2層構造であってもよい。金属層は、例えば、Ag、Cu、Ti、Mo、Al、APC、ARA、MoCr、NiCr等の導電材料からなり、TFT基板111の外周領域の4辺全てに、TFT基板111の外周縁に沿って複数個ずつ間隔を空けて形成されている。金属酸化物層は、例えば、ITO、IZO等からなり、各金属層上に各金属層を被覆するように形成されている。また、第1の端子部は、表示部における下部電極(画素電極)と同一材料・同一プロセスにより形成することもできる。この場合、第1の端子部を形成するプロセスを別に設ける必要がなく、製造プロセスの簡略化を図ることができる。 バンク115は、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等の絶縁性の有機材料からなり、TFT基板111の中央領域内に、下部電極113が形成された領域を避けるように形成されている。バンク115は、井桁構造のピクセルバンクであっても、ストライプ構造のラインバンクであっても良い。
【0039】
有機発光層116は、バンク115で規定された各画素に対応した領域に形成されており、表示パネル100の駆動時において、ホールと電子との再結合によりR、GまたはBに発光する。有機発光層116は有機材料で構成されており、有機材料としては、例えば、特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物およびアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等を挙げることができる。また、有機発光層116を構成する有機材料としては、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリアセチレン(polyacetylene)およびその誘導体、ポリフェニレン(polyphenylene(PP))およびその誘導体、ポリパラフェニレンエチレン(polyparaphenyleneethylene)およびその誘導体、ポリ3−ヘキシルチオフェン(poly-3-hexylthiophene(P3HT))およびその誘導体、ポリフルオレン(polyfluorene(PF))およびその誘導体などの高分子系材料を用いることもできる。
【0040】
電子輸送層117は、例えば、バリウム、フタロシアニン、フッ化リチウム、またはこれらの混合物等からなり、上部電極118から注入された電子を有機発光層116へ輸送する機能を有する。
【0041】
上部電極118は、例えば、ITO、IZO等の光透過性導電材料で形成された透明電極であって、バンク115および有機発光層116の上面を覆うように、表示部101のほぼ全体に亘って形成されている。
【0042】
封止層119aは、例えば、表示部101を覆って封止するための層であって、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等の光透過性の樹脂材料からなり、上部電極118上に形成されている。
【0043】
保護膜119bは、表示部101を覆って封止し、有機発光層116が水分やガス等に触れるのを防止するための膜であって、SiN、SiO、SiON(酸窒化シリコン)、SiC(炭化ケイ素),SiOC(炭素含有酸化シリコン)、Al
2O
3(酸化アルミニウム)、AlN(窒化アルミニウム)等の光透過性材料からなり、封止層119a上に形成されている。封止層119aの上にさらに保護膜119bを形成することで、例えば封止層119aにピンホールと呼ばれる封止欠陥部分が存在する場合でも、その封止欠陥部分から封止層119a内に水分やガス等が浸入するのを防止することができる。
【0044】
以上のように説明したデバイス基板110の積層構造に関して、下部電極113と有機発光層116との間には、ホール輸送層、ホール注入層等の他の層が1層または複数層さらに形成されていても良い。また、有機発光層116と上部電極118との間には、電子注入層等の他の層が1層または複数層さらに形成されていても良い。
【0045】
<CF基板>
CF基板120は、フレキシブル基板121の下面(デバイス基板110側の主面)側に、R、GまたはBのカラーフィルタ122と、ブラックマトリクス層123とが形成された構造である。カラーフィルタ122は、R、GまたはBに対応する波長の可視光を透過する透明層であって、公知の樹脂材料等からなり、各画素に対応した領域に形成されている。ブラックマトリクス層123は、パネル内部への外光の入射を防止したり、CF基板120越しに内部部品が透けて見えるのを防止したり、外光の照り返しを抑えて表示パネル100のコントラストを向上させたりする目的で形成されている黒色樹脂層であって、例えば光吸収性および遮光性に優れる黒色顔料を含む紫外線硬化樹脂材料からなる。
【0046】
<緩衝層>
(緩衝層の構成)
図3および
図4に示す本実施の形態に係るデバイス基板110では、下地層104がフレキシブル基板111aの上面全体に設けられている。すなわち、表示部形成領域、端子部形成領域および中間領域に連続して設けられている。下地層104は、端子部形成領域には必ずしも設ける必要はないが、実施例に係るデバイス基板110では、下地層104をフレキシブル基板111aの上面全体に亘って設けることで、すなわち、端子部形成領域まで拡張させて設けることで、下地層104における端子部形成領域の部分を、第1の端子部114の変形を抑制するための緩衝層104aとして利用している。このように、下地層104の一部を緩衝層104aとして利用する構成とすれば、緩衝層104aを設ける工程を別途行う必要がなくなり、表示パネル100をより簡単に製造することができる。
【0047】
なお、緩衝層104aの構成を詳細に説明しておくと、ゲート配線層における端子部形成領域の部分と、ゲート絶縁膜における端子部形成領域の部分と、隔壁における端子部形成領域の部分と、SD配線層111cにおける端子部形成領域の部分と、パッシベーション膜111dにおける端子部形成領域の部分と、平坦化膜112における端子部形成領域の部分とで構成されている。このような緩衝層104aを第1の端子部114の下側に設けることで、ACF400を圧着する際の圧力で第1の端子部114が変形するのを抑制している。
【0048】
(緩衝層の平均厚みと弾性率)
緩衝層104aの平均厚みは、例えば、3.75μmである。緩衝層104aの弾性率は、例えば、約1.5GPaであって、緩衝層104aを構成するパッシベーション膜111d、平坦化膜112のそれぞれの弾性率も、例えば、約1.5GPaである。各層の平均厚みは、上記に限定されず、各層の弾性率も、上記に限定されない。
【0049】
(緩衝層の変形抑制効果)
実施例に係るデバイス基板110には、第1の端子部114の下側に緩衝層104aが設けられているため、ACF400を圧着する際の圧力で第1の端子部114が変形し難い。その理由を以下に説明する。
【0050】
フレキシブル基板111aは、平均厚みが例えば、38μm、弾性率が3GPa〜7GPa(ポリイミド製の場合)であって、可撓性を有する。また、第1の端子部114は、平均厚みが例えば、0.2μmであって、非常に薄い層である。このようにフレキシブル基板111aが可撓性を有し、且つ、第1の端子部114が非常に薄い層であるため、緩衝層104aが設けられていない従来のデバイス基板では、ACFを圧着する際の圧力によって第1の端子部が大きく変形してしまう。
【0051】
しかしながら、実施例に係るデバイス基板110では、第1の端子部114の下側に緩衝層104aが設けられている。緩衝層104aを設けることによって、緩衝層104aの反発する力が第1の端子部114に影響し、第1の端子部114が導電性粒子410を押し返す力が強くなるため、導電性粒子410が潰れ易くなる。
【0052】
また、実施例に係るデバイス基板110では、導電性粒子410のコア部411の平均粒径と弾性率との積(以下、「コア部411の積」と称する。)と、金属層412の平均厚みの2倍と弾性率との積(以下、「金属層412の積」と称する。)との和を、第1の端子部114の平均厚みと弾性率との積(以下、「第1の端子部114の積」と称する。)と、緩衝層104aの平均厚みと弾性率との積(以下、「緩衝層104aの積」と称する。)と、電極層105の平均厚みと弾性率との積(以下、「電極層の積」と称する。)との和で除した値が1.5以下である。前記値を1.5以下に調製することで、導電性粒子410と第1の端子部114との界面を境界とする上下両側における歪みのバランスをとることができる。
【0053】
歪みのバランスについて具体的に説明すると、まず、フックの法則によれば、応力を「σ」、弾性率を「E」、歪みを「ε」とした場合に、下記の(式1)の関係が成り立つ。
【0054】
σ=E×ε ・・・ (式1)
また、緩衝層104aの断面積(厚み×幅)を「A」、力を「F」とした場合に、下記の(式2)の関係が成り立つ。
【0055】
σ=F/A ・・・(式2)
ここで、力「F」は一定であり、弾性率「E」は材料固有の値であり、緩衝層104aの幅も一定とすると、(式1)および(式2)から、歪み「ε」を表す下記の(式3)が導き出せる。
【0056】
ε
∝1/(厚み×E) ・・・(式3)
つまり、コア部411の歪みはコア部411の積によって、金属層412の歪みは金属層412の積によって、第1の端子部114の歪みは第1の端子部114の積によって、緩衝層104aの歪みは緩衝層104aの積によって、電極層105の歪みは電極層105の積によって、それぞれ表すことが可能であり、それら積が大きくなるほど歪が小さくなる。
【0057】
そして、導電性粒子410と第1の端子部114との界面を境界とする上下両側における歪みのバランスは、コア部411の積と、金属層412の積との和を、第1の端子部114の積と、緩衝層104aの積と、電極層105の積との和で除した値によって調整できると考えられ、この値が1.5以下であれば、第1の端子部114の変形を有効に抑制できることが後述する実験により確認できた。なお、コア部411の積と、金属層412の積との和を、第1の端子部114の積と、緩衝層104aの積と、電極層105の積との和で除した値は、1.5×10
-3以上であるのがよい。
【0058】
歪みのバランスについて、実施例の構成を例に挙げて説明する。
【0059】
まず、コア部411の積と、金属層412の積との和について、例えば、弾性率が約1.5GPa、平均粒径が4.0μmであるPP製のコア部411の場合、コア部411の積は、約1.5GPa×4.0μm=約6.0GPa・μmとなる。また、例えば、弾性率が約200GPa、平均厚みが0.1μmであるNi製の金属層412の場合、金属層412の積は、約200GPa×0.1μm×2=約40GPa・μmとなる。したがって、コア部411の積と、金属層412の積との和は、約46GPa・μmとなる。
【0060】
次に、第1の端子部114の積と、緩衝層104aの積との和について、第1の端子部114が、例えば、弾性率が約70GPa、平均厚み0.2μmであるACL製の金属層と、弾性率が約11GPa、平均厚み0.016μmであるIZO製の金属酸化物層とからなる場合、第1の端子部114の積は、約70GPa×0.2μm+約11GPa×0.016μm=約14.2GPa・μmとなる。また、緩衝層104aが、例えば上述したように、弾性率が約1.5GPa、平均厚みが3.75μmである場合、緩衝層104aの積は、約1.5GPa×3.75μm=約5.6GPa・μmとなる。また、例えば、電極層105が、モリブデン製であって、弾性率が約290GPa、平均厚みが0.075μmである場合、電極層105の積は、約290GPa×0.075μm=約21.8GPa・μmとなる。したがって、第1の端子部114の積と、緩衝層104aの積と、電極層105との和は、約41.6GPa・μmとなる。
【0061】
そうすると、コア部411の積と、金属層412の積との和を、第1の端子部114の積と、緩衝層104aの積と、電極層105の積との和で除した値は、1.1となり1.5以下であるため、導電性粒子410と第1の端子部114との界面を境界とする上下両側における歪みのバランスは良好である。
【0062】
図5は、実施例に係る表示パネルとフレキシブル回路基板との接続構造を説明するための概念図である。
図5(a)に示すように、デバイス基板110の緩衝層104a上に設けられた第1の端子部114と、フレキシブル回路基板300のベースフィルム310に設けられた端子部320との間にACF400を配置した状態で上方から圧力をかけて、
図5(b)に示すように、ACF400をデバイス基板110およびフレキシブル回路基板300に圧着すると共に、ACF400に含まれる導電性粒子410を両端子部114,320によって押し潰した状態とすることによって、その導電性粒子410を介して両端子部114,320が電気的に接続される。その際、第1の端子部114の変形は緩衝層104aによって抑制され、導電性粒子410を適度に扁平形状に変形させることができる。したがって、第1の端子部114と導電性粒子410との接触面積を大きく確保することができ、接触不良による導通不良が生じ難い。
【0063】
[変形例]
以上、本発明の一態様に係るフレキシブル表示装置の実施例を具体的に説明してきたが、上記態様は、本発明の構成および作用・効果を分かり易く説明するために用いた例であって、本発明の内容は、上記態様に限定されない。
【0064】
[実験]
実験により、緩衝層が圧着による端子部の変形に及ぼす影響について調べた。
図6は、変形抑制効果に関する実験の条件を説明するための図であって、
図6(a)は、サンプルの構造を説明するための概略図、
図6(b)は、サンプルを構成する材料を説明するための表である。
【0065】
実験では、
図6(a)に示すように、フレキシブル基板に設けた第1の端子部とベースフィルムに設けた第2の端子部との間に配置したACFを圧着した際に、導電性粒子によって第1の端子部がどの程度変形するのかを、フレキシブル基板の下側からサンプルの状態を観察することで評価した。
【0066】
ACFとしては、平均粒径4μmのPP製のコア部が平均厚み0.1μmのNi製の金属層でコーティングされた導電性粒子を含むものを使用した。ACFの圧着は熱圧着装置を用いて、設定温度が250℃、設定時間が15sec、設定圧力が0.12MPaで行なった。
【0067】
図6(b)に示すように、サンプル1〜6に共通して、フレキシブル基板には、平均厚み1μmのSiON層が積層された平均厚み38μmのPI(ポリイミド)製の基板を用いた。そのフレキシブル基板上に、サンプル1の場合は平均厚み25nmのMo(モリブデン)層を、サンプル2の場合は平均厚み75nmのMo層を、サンプル3の場合は平均厚み25nmのW(タングステン)層を、サンプル4の場合は平均厚み75nmのW層を、それぞれ第1の端子部の代わりとして設けた。
【0068】
また、サンプル5、6は、
図6(a)に示すような構造であって、サンプル5の場合、フレキシブル基板上に、電極層の代わりとして平均厚み25nmのMo層を、緩衝層の代わりとして平均厚み4μmのPL(樹脂)層を、第1の端子部の代わりとして平均厚み75nmのMo層を設けた。サンプル6の場合、フレキシブル基板上に電極層の代わりとして平均厚み25nmのW層を、緩衝層の代わりとして平均厚み4μmのPL層を、第1の端子部の代わりとして平均厚み75nmのW層を設けた。
【0069】
サンプル1〜4は、それぞれ緩衝層が設けられていない従来の構成であるが、サンプル5,6は、それぞれ緩衝層が設けられた本発明の構成であり、電極層が設けられた変形例2に類するサンドイッチ構造である。
【0070】
ここで、Moの弾性率は約290GPaであり、Wの弾性率は約400GPaであり、PLの弾性率は約1.5GPaであり、PPの弾性率は約1.5GPaであり、Niの弾性率は約200GPaである。これらに基づき、サンプル1〜4について、コア部の積と金属層の積との和を、第1の端子部の積で除した値を算出した。また、サンプル5,6について、コア部の積と金属層の積との和を、第1の端子部の積と緩衝層の積と電極層の積とで除した値を算出した。
【0071】
サンプル1の前記値は、(約1.5GPa×4.0μm+約200GPa×0.1μm×2)/(約290GPa×25μm)=約6.34である。
【0072】
サンプル2の前記値は、(約1.5GPa×4.0μm+約200GPa×0.1μm×2)/(約290GPa×75μm)=約2.11である。
【0073】
サンプル3の前記値は、(約1.5GPa×4.0μm+約200GPa×0.1μm×2)/(約400GPa×25μm)=約4.6である。
【0074】
サンプル4の前記値は、(約1.5GPa×4.0μm+約200GPa×0.1μm×2)/(約400GPa×75μm)=約1.53である。
【0075】
サンプル5の前記値は、(約1.5GPa×4.0μm+約200GPa×0.1μm×2)/(約290GPa×25μm+約1.5GPa×4.0μm+約290GPa×75μm)=約1.31である。
【0076】
サンプル6の前記値は、(約1.5GPa×4.0μm+約200GPa×0.1μm×2)/(約400GPa×25μm+約1.5GPa×4.0μm+約400GPa×75μm)=約1.0である。
【0077】
図7は、変形抑制効果に関する実験の結果を示す電子顕微鏡写真である。
図7(a)〜(d)に示すように、サンプル1〜4の下面には、導通不良のおそれがある程度の顕著な凹凸がみられた。このことから、金属膜である第1の端子部のみが設けられ、緩衝層が設けられていない場合は、第1の端子部が変形することが確認できた。この結果は、第1の端子部の厚さや弾性率に関係なく同じであった。
【0078】
一方、
図7(e),(f)に示すように、サンプル5,6の下面は、導通不良のおそれがない程度の小さな凹凸しか生じなかった。このことから、電極層および緩衝層を設けることによって、第1の端子部の変形を抑制する効果が得られることが確認できた。
【0079】
さらに、サンプル4,6については、ベースフィルムを剥いで、第1の端子部または電極層の下面の状態を確認した。
図8は、変形抑制効果に関する実験の結果を示す電子顕微鏡写真である。
図8(a)に示すように、サンプル4について、第1の端子部の下面に顕著な凹凸が生じていた。一方、
図8(b)に示すように、サンプル6について、電極層の下面に凹凸はほとんど見られなかった。このことからも、電極層および緩衝層を設けることによって、第1の端子部の変形を抑制できることが確認できた。
【0080】
以上をまとめると、顕著な凹凸が生じたサンプル4の前記値が約1.53であり、小さな凹凸しか生じなかったサンプル5の前記値が約1.31であったことから、前記値が1.5以下の場合に第1の端子部の変形が抑制できると判断した。