(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042831
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】写真台紙
(51)【国際特許分類】
B42D 1/08 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
B42D1/08 N
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-7461(P2014-7461)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2015-134482(P2015-134482A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2015年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】萬崎 伸也
【審査官】
吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−253574(JP,A)
【文献】
実開昭56−050667(JP,U)
【文献】
実公昭44−006814(JP,Y1)
【文献】
米国特許第03738686(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/08
B42D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
写真台紙を形成したときにその写真台紙の天側となる方向から、その反対方向である地側に延びるように形成された第一折曲部において折り曲げて二つ折り可能な芯紙と、
写真等の画像が印刷され前記第一折曲部を跨ぐように前記芯紙のおもて面である上面に貼着される印画紙と、
天側から地側に延びる断面略U字状の第一溝部が上面に形成されるとともに前記第一溝部に前記第一折曲部が相対向するように前記芯紙が配置されて前記芯紙の裏面である下面に貼着される表紙と、を備える写真台紙であって、
前記第一溝部内にシート状のゴム様弾性体を貼着し補強したことを特徴とする写真台紙。
【請求項2】
写真台紙を形成したときにその写真台紙の天側となる方向から、その反対方向である地側に延びるように形成された第一折曲部及び第二折曲部において折り曲げて三つ折り可能な芯紙と、
写真等の画像が印刷され前記芯紙のおもて面である上面に前記第一折曲部及び前記第二折曲部を跨ぐように貼着される印画紙と、
天側から地側に延びる断面略U字状の第一溝部と,天側から地側に延び前記第一折曲部と前記第二折曲部との距離だけ前記第一溝部から離間するとともに前記第一溝部より幅広でかつ深さも深い第二溝部と,が上面に形成され、前記第一溝部に前記第一折曲部が相対向しかつ前記第二溝部に前記第二折曲部が相対向するように前記芯紙が配置されて前記芯紙の裏面である下面に貼着される表紙と、を備える写真台紙であって、
前記第一溝部内にシート状のゴム様弾性体を貼着し補強したことを特徴とする写真台紙。
【請求項3】
前記ゴム様弾性体を前記第一溝部内に天側から地側へ一連に貼着したことを特徴とする請求項1又は2に記載の写真台紙。
【請求項4】
前記第一折曲部で前記芯紙を折り曲げた状態において、前記第一折曲部が前記ゴム様弾性体から離間していることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の写真台紙。
【請求項5】
前記芯紙の第一折曲部の下面から上面側に向かってスリットを刻設し、しかも前記スリットは天側から地側へ延びることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の写真台紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯紙の上面に印画紙が貼着され、芯紙の下面には表紙が貼着される写真台紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結婚式や七五三等の記念の行事においてはプロのカメラマンに写真を撮ってもらうことが多く、また最近ではデジタルカメラが個人にも広く普及しているので、それらの行事のときに個人で写真を撮影することも少なくない。
そのような記念写真は、通常のスナップ写真を保存する場合に比べて高級な写真台紙で保存することが一般的であり、この写真台紙としてはアルバム台紙の他に、
図5に示すような写真台紙100が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3087133号公報
【0004】
この写真台紙100は、開状態において横長の矩形状であって、第一折曲部11及び第二折曲部12を有する芯紙10と、芯紙10の上面に貼着される印画紙20と、芯紙10の下面に貼着される表紙30を備え、第一折曲部11及び第二折曲部12において三つ折り可能である。
表紙30には、
図6に示すように、第一折曲部11の位置に対応して断面略U字状の第一溝部33が、第二折曲部12の位置に対応して断面略コ字状の第二溝部34がそれぞれ形成されている。言い換えると、写真台紙100の第一面101と第三面103との境界部分が第一折曲部11と第一溝部33であり、写真台紙100の第二面102と第三面103との境界部分が第二折曲部12と第二溝部34である。
表紙30に第一溝部33及び第二溝部34を形成したのは、折り曲げ時において表紙30側に突出する第一折曲部11や第二折曲部12の「逃げ」となり、表紙30に押圧され潰れてしまわないようにするためである。
【0005】
写真台紙100を本棚等に収納するときや持ち運ぶときには、印画紙20が貼着された面が内側になるように、まず第一面101を中央の第三面103に重ね合わせて、次に第二面102を第三面103に重ね合わせ、閉状態とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、写真台紙100を閉状態とすることで、印画紙20に天側から地側に皺Sが発生してしまうという問題がある。
すなわち、
図7に示すように印画紙20同士が接触するほど近接するので、折り曲げ部分における印画紙20の曲率半径が小さくなり、折れ目(皺S)となってしまう。
【0007】
このように生じる皺Sに写真の顔や体の部分が掛かると記念の写真が台無しになってしまうので、写真の顔の部分が折曲部を跨がないようにレイアウトする必要がある等、画像のレイアウトが制限されてしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、折り曲げ時に印画紙に皺が発生し難い写真台紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の写真台紙(200)は、
写真台紙を形成したときにその写真台紙の天側
となる方向から
、その反対方向である地側に延びるように形成された第一折曲部(11)において折り曲げて二つ折り可能な芯紙(10)と、写真等の画像が印刷され前記第一折曲部(11)を跨ぐように前記芯紙(10)の
おもて面である上面に貼着される印画紙(20)と、天側から地側に延びる断面略U字状の第一溝部(33)が上面に形成されるとともに前記第一溝部(33)に前記第一折曲部(11)が相対向するように前記芯紙(10)が配置されて前記芯紙(10)の
裏面である下面に貼着される表紙(30)と、を備える写真台紙(200)であって、前記第一溝部(33)内にシート状のゴム様弾性体(35)を貼着し補強したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の写真台紙(200)は、
写真台紙を形成したときにその写真台紙の天側
となる方向から
、その反対方向である地側に延びるように形成された第一折曲部(11)及び第二折曲部(12)において折り曲げて三つ折り可能な芯紙(10)と、写真等の画像が印刷され前記芯紙(10)の
おもて面である上面に前記第一折曲部(11)及び前記第二折曲部(12)を跨ぐように貼着される印画紙(20)と、天側から地側に延びる断面略U字状の第一溝部(33)と,天側から地側に延び前記第一折曲部(11)と前記第二折曲部(12)との距離だけ前記第一溝部(33)から離間するとともに前記第一溝部(33)より幅広でかつ深さも深い第二溝部(34)と,が上面に形成され、前記第一溝部(33)に前記第一折曲部(11)が相対向しかつ前記第二溝部(34)に前記第二折曲部(12)が相対向するように前記芯紙(10)が配置されて前記芯紙(10)の
裏面である下面に貼着される表紙(30)と、を備える写真台紙(200)であって、前記第一溝部(33)内にシート状のゴム様弾性体(35)を貼着し補強したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の写真台紙(200)は、前記ゴム様弾性体(35)を前記第一溝部(33)内に天側から地側へ一連に貼着したことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の写真台紙(200)は、前記第一折曲部(11)で前記芯紙(10)を折り曲げた状態において、前記第一折曲部(11)が前記ゴム様弾性体(35)から離間していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の写真台紙(200)は、前記芯紙(10)の第一折曲部(11)の下面から上面側に向かってスリット(13)を刻設し、しかも前記スリット(13)は天側から地側へ延びることを特徴とする。
【0014】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の写真台紙によれば、第一溝部内にシート状のゴム様弾性体を貼着し補強したので、折り曲げ時に第一溝部において表紙が厚さ方向に潰れ難くなる。それに伴い、向かい合う印画紙同士の距離を従来例よりも広く保つことができるので、印画紙の折り曲げ部分の曲率半径も従来例よりも大きくなり、印画紙に皺が発生し難い。
【0016】
また、請求項2に記載の写真台紙によれば、三つ折り可能な写真台紙においても、第一溝部内にシート状のゴム様弾性体を貼着し補強したので、二つ折り可能な請求項1に記載の写真台紙と同様に、折り曲げ時に第一溝部において表紙が厚さ方向に潰れ難くなる。それに伴い、向かい合う印画紙同士の距離を従来例よりも広く保つことができるので、印画紙の折り曲げ部分の曲率半径も従来例よりも大きくなり、印画紙に皺が発生し難い。
【0017】
また、請求項3に記載の写真台紙によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用効果に加え、ゴム様弾性体を第一溝部内に天側から地側へ一連に貼着したので、第一溝部を確実に補強でき、印画紙に皺がより発生し難い。
【0018】
また、請求項4に記載の写真台紙によれば、請求項1乃至3に記載の発明の作用効果に加え、第一折曲部で芯紙を折り曲げた状態において、第一折曲部がゴム様弾性体から離間しているので、第一折曲部がゴム様弾性体から押圧されない。よって、ゴム様弾性体からの押圧力による第一折曲部の変形がないので、第一折曲部に貼着された印画紙にも皺が発生し難い。
【0019】
また、請求項5に記載の写真台紙によれば、請求項1乃至4に記載の発明の作用効果に加え、芯紙の第一折曲部の下面から上面側に向かってスリットを刻設し、しかもスリットは天側から地側へ延びるので、折り曲げたときにスリットが広がり、折り曲げ易い。
【0020】
なお、本発明の写真台紙のように、第一溝部内にシート状のゴム様弾性体を貼着し補強する点は、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る写真台紙を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る写真台紙を示す、
図1のA−A線拡大断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る写真台紙を示す、印画紙を折り曲げた状態を示す要部拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る写真台紙を示す斜視図である。
【
図6】従来例に係る写真台紙における第一溝部及び第一折曲部を示す拡大断面図である。
【
図7】従来例に係る写真台紙における印画紙を折り曲げたときの第一溝部及び第一折曲部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1乃至
図4を参照して、本発明の実施形態に係る写真台紙200を説明する。
この写真台紙200は、三つ折り可能ないわゆる三面台紙であって、芯紙10と、印画紙20と、表紙30と、を備え、特に表紙30に特徴を有する。
この写真台紙200の三面のうち、右側の面を第一面201、左側の面を第二面202、中央の面を第三面203と呼んだときに、本実施形態では第三面203よりも第一面201が先に折り畳まれるものである。
なお、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0023】
芯紙10は、印画紙20の下地となる横長の矩形状の紙で、その厚さは印画紙20の厚さよりも厚く、表紙30の厚さよりも薄い。
芯紙10の右端から芯紙10の横幅の略1/3の位置には、第一折曲部11が天側から地側に延びるように形成されるとともに、芯紙10の左端から芯紙10の横幅の略1/3の位置には、第二折曲部12が天側から地側に延びるように形成される。
また、芯紙10の第一折曲部11及び第二折曲部12には、天側から地側に延びる複数のスリット13がそれぞれ芯紙10の下面から上面側に向かって刻設されてなる。
【0024】
詳しくは、
図2に示すようにスリット13は芯紙10の下面から刃物を垂直に入れて形成されるもので、写真台紙200を完全に開いた状態ではほとんどスリット13は幅を有さず、閉じている。スリット13の深さは芯紙10の厚さの1/2〜2/3である。
また、スリット13が形成された領域の幅は、後述する隣接する下地材31間の距離よりも広くした。
そして、このような第一折曲部11及び第二折曲部12において芯紙10は折り曲げ可能で、本実施形態に係る写真台紙200は三つ折りにされる。
また、芯紙10の上面及び下面の両面には、印画紙20や表紙30を貼着するための粘着剤がそれぞれ施されている。
【0025】
印画紙20は、芯紙10と略等しい大きさの矩形状であって、上面には写真等の画像が印刷されている。
そして、印画紙20は芯紙10の上面に第一折曲部11及び第二折曲部12を跨ぐように貼着される。つまり、印画紙20は芯紙10の上面全面を上から覆うように貼着され、芯紙10の第一折曲部11及び第二折曲部12の上面全面が印画紙20に貼着されている。
【0026】
表紙30は、それぞれの横幅が芯紙10の略1/3である三枚の下地材31と、芯紙10よりも一回り大きいカバー材32からなる。
下地材31の厚さはカバー材32や芯紙10よりも厚く、下地材31は互いに離間して左右に並べられるとともに、下地材31の下面がカバー材32の上面に貼着される。そして、下地材31の外方にはみ出したカバー材32の縁部全周が上方に折り返され、下地材31の上面縁部に貼着されている。
また、隣接する下地材31間においてはカバー材32を凹ませて、天側から地側に延びる断面略U字状の第一溝部33と、同じく天側から地側に延びる断面略コ字状の第二溝部34を形成した。
【0027】
第二溝部34は、芯紙10の第一折曲部11と第二折曲部12との距離だけ第一溝部33から離間するとともに第一溝部33より幅広でかつ深さも深くなっている。
つまり、表紙30全体で見ると、第一溝部33及び第二溝部34は表紙30の上面に形成されている。なお、本実施形態においては右側が第一溝部33に、左側が第二溝部34になっている。
また、第一溝部33に第一折曲部11が相対向しかつ第二溝部34に第二折曲部12が相対向するように芯紙10を配置し、表紙30の上面(下地材31の上面)を芯紙10の下面に貼着した。
【0028】
そして、シート状(テープ状)のゴム様弾性体35を第一溝部33内に天側から地側へ一連に貼着し、第一溝部33を補強した。ゴム様弾性体35としては、曲げ易くかつ折れ難い(折れてしまわない)弾性力を有するものが採用され、ゴムに限られるものではない。
このとき、第一溝部33が断面略U字状になっているので、第一溝部33内に貼着されたゴム様弾性体35も断面略U字状となり、ゴム様弾性体35、下地材31、及び芯紙10で囲まれた空隙が形成される。その空隙も天側から地側に延びている。
ここで、
図3に示すように、第一折曲部11で芯紙10を折り曲げた状態において、第一折曲部11はゴム様弾性体35から離間している。
【0029】
以上のように構成された写真台紙200によれば、第一溝部33内にシート状のゴム様弾性体35を貼着し補強したので、
図3に示すように折り曲げ時に第一溝部33において表紙30が厚さ方向に潰れ難くなる。それに伴い、向かい合う印画紙20同士の距離を従来例よりも広く保つことができるので、印画紙20の折り曲げ部分の曲率半径も従来例よりも大きくなり、
図4に示すように印画紙20に皺S(折れ目)が発生し難い。
また、ゴム様弾性体35を第一溝部33内に天側から地側へ一連に貼着したので、第一溝部33を確実に補強でき、印画紙20に皺Sがより発生し難い。
【0030】
また、第一折曲部11で芯紙10を折り曲げた状態において(
図3)、第一折曲部11がゴム様弾性体35から離間しているので、第一折曲部11がゴム様弾性体35から押圧されない。よって、ゴム様弾性体35からの押圧力による第一折曲部11の変形がないので、第一折曲部11に貼着された印画紙20にも皺Sが発生し難い。
しかも、芯紙10の第一折曲部11の下面から上面側に向かってスリット13を刻設し、しかもスリット13は天側から地側へ延びるので、
図3に示すように折り曲げたときにスリット13が広がり、折り曲げ易い。
【0031】
なお、本実施形態において、写真台紙200は三面台紙としたが、これに限られるものではなく、二面台紙であってもよい。すなわち、本実施形態の写真台紙200の第一面201及び第三面203からなる写真台紙200であってもよい。
【0032】
また、ゴム様弾性体35を第一溝部33内に天側から地側へ一連に貼着したが、これに限られるものではなく、第一溝部33内に天側から地側へ所定間隔を空けて複数のゴム様弾性体35を貼着してもよい。
【0033】
また、第一折曲部11で芯紙10を折り曲げた状態において、第一折曲部11がゴム様弾性体35から離間しているとしたが、これに限られるものではない。
【0034】
さらに、芯紙10の第一折曲部11の下面から上面側に向かってスリット13を刻設したが、これに限られるものではない。
また、表紙30が下地材31とカバー材32の二部材からなるとしたが、一部材からなる表紙30であってもよいし、三部材以上からなるものであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 芯紙
11 第一折曲部
12 第二折曲部
13 スリット
20 印画紙
30 表紙
31 下地材
32 カバー材
33 第一溝部
34 第二溝部
35 ゴム様弾性体
100 写真台紙
101 第一面
102 第二面
103 第三面
200 写真台紙
201 第一面
202 第二面
203 第三面
S 皺