【文献】
J. Immunol.,2001年11月15日,Vol.167, No.10,pp.5517-5521
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
必要とする患者における多発性骨髄腫を治療するための、請求項8〜9のいずれか一項に記載の薬学的組成物であって、前記患者が多発性骨髄腫の臨床症状が発症していない、前記薬学的組成物。
【発明を実施するための形態】
【0054】
(発明の詳細な説明)
上記概説の目的にしたがって、本発明は、種々の障害(例えば、自己免疫障害および種々の定義した癌性病態(種々の形態の骨髄腫が含まれる))の新規の治療方法を提供する。このような障害の診断および予後評価方法ならびにこのような病態を調整する組成物のスクリーニング方法も提供する。本発明はまた、前記障害で選択的に発現するマーカーのモニタリングおよびスクリーニングを含む、このような治療の治療有効性をモニタリングする方法を提供する。
【0055】
特に、SLE、RA、およびIBDなどの自己免疫障害ならびに骨髄腫および形質細胞性白血病などの癌性病態で選択的に発現するマーカーの発現を、診断、予後、または治療方法において使用することが可能である。したがって、本発明は、これらのマーカーを選択的に同定するのに有用な種々の組成物(例えば、核酸、ポリペプチド、抗体、および小分子アゴニスト/アンタゴニスト)を定義する。マーカーは、サブセットが実際に非常に異なる治療に必要であり得る疾患のサブセットの分子特徴づけに有用であり得る。さらに、マーカーはまた、例えば、このような病態の場合に類似の組織に影響を与えるか、類似の誘導/維持機構を有する自己免疫障害、骨髄腫、および形質細胞性白血病に関連する疾患で重要であり得る。例えば、腫瘍のプロセスまたは特徴をターゲティングすることもできる。診断および予後を、例えば、関連するが異なる疾患のサブセット、自己免疫障害、骨髄腫、もしくは形質細胞性白血病の悪性度の識別、またはこのような病態の治療ストラテジーの決定に利用可能である。検出方法は、核酸(例えば、PCRまたはハイブリッド形成技術)またはタンパク質(例えば、ELISA、画像化、IHCなど)に基づき得る。診断は定性的または定量的であってよく、発現レベルの増減を検出することができる。
【0056】
(定義)
用語「CS1タンパク質」または「CS1ポリヌクレオチド」または「CS1関連転写物」は、(1)CS1遺伝子(表2)のヌクレオチド配列もしくはこれと会合する(CS1遺伝子(表2)のヌクレオチド配列またはこれと会合するヌクレオチド配列およびその保存改変変異型によってコードされるアミノ酸配列を含む免疫原に対して惹起された結合パートナー(例えば、ポリクローナル抗体)へのCS1遺伝子(表2)の結合)ヌクレオチド配列に対して、約60%を超えるヌクレオチド配列が同一、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは約92%、94%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のヌクレオチド配列が同一のヌクレオチド配列と好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000、またはそれ以上のヌクレオチド領域を有するか、(3)ストリンジェントなハイブリッド形成条件下でCS1(表2)およびその保存的改変変異型の核酸配列またはその相補物と特異的にハイブリッド形成するか、(4)CS1遺伝子(表2)のヌクレオチド配列もしくはこれと会合するヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して、約60%を超えるアミノ酸配列が同一、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、93%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上のアミノ酸配列と好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000、またはそれ以上のアミノ酸領域が同一のアミノ酸配列を有する核酸ならびにポリペプチドの多型変異型、対立遺伝子、変異体、および種間ホモログをいう。ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、典型的には、哺乳動物(霊長類(例えば、ヒト)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、または他の哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない)に由来する。「CS1ポリペプチド」および「CS1ポリヌクレオチド」には、天然形態または組換え形態の両方が含まれる。
【0057】
「全長」CS1タンパク質または核酸は、通常、1つまたは複数の天然に存在する野生型CS1ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列中に含まれるエレメントを含むCS1ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列をいう。「全長」は、翻訳後プロセシング
またはスプライシング(選択的スプライシングが含まれる)の種々の段階の前後であり得る。
【0058】
本明細書中で使用される、「生体サンプル」は、例えば、CS1タンパク質、ポリヌクレオチド、または転写物の核酸またはポリペプチドを含む生体組織または流動物のサンプルである。このようなサンプルには、霊長類(例えば、ヒト)またはげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)から単離された組織が含まれるが、これらに限定されない。生体サンプルには、生検サンプルおよび剖検サンプルなどの組織切片、組織学的目的のために採取した凍結切片、記録用サンプル、血液、血漿、血清、唾液、便、涙、粘液、毛髪、皮膚なども含まれ得る。生体サンプルには、外植片ならびに患者の組織由来の初代および/または形質転換細胞培養物も含まれる。生体サンプルを、典型的には、真核生物(最もの好ましくは、霊長類(例えば、チンパンジーまたはヒト)、ウシ、イヌ、ネコ、げっ歯類(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ)などの哺乳動物、またはトリ、爬虫類、または魚類)の器官から得る。家畜およびペットも目的とする。
【0059】
「生体サンプルの提供」は、本発明に記載の方法で使用するための生体サンプルを得る
ことを意味する。ほとんどの場合、動物からの細胞サンプルの取出しによってこれを行う
が、以前に単離した細胞の使用(例えば、別のヒト、別の時間、および/または別の目的
のために単離)または本発明のインビボでの実施によって行うことができる。治療または
結果の経緯を有する記録用の組織または材料は特に有用である。
【0060】
2つまたはそれ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における用語、「同一」または「同一」率は、例えば、下記のデフォルトパラメータを使用したBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用するか、マニュアルアラインメントおよび目視によって測定したところ、同一であるか特定の比率でアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一である(例えば、比較ウィンドウまたは指定された領域に関して最大に対応するように比較およびアラインメントを行った場合に、特定の領域について約70%同一、好ましくは、75%、80%、85%、90%、91%、93%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である)2つまたはそれ以上の配列またはサブシーケンスをいう。以後、このような配列を、「実質的に同一」であるという。この定義はまた、試験配列の相補物をいうか、これに適用することができる。この定義には、欠失および/または挿入、置換、および天然に存在する変異型(例えば、多型または対立遺伝子変異型)、および人為的変異型も含まれる。下記のように、好ましいアルゴリズムにより、ギャップなどを計算することができる。好ましくは、少なくとも約25アミノ酸長またはヌクレオチド長の領域、より好ましくは約50〜100アミノ酸長またはヌクレオチド長の領域について同一である。
【0061】
配列比較のために、典型的には、1つの配列を試験配列と比較する基準配列の役割を果たす。配列比較アルゴリズムを使用した場合、試験配列および基準配列をコンピュータに入力し、サブシーケンス座標を指定し、必要に応じて、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。好ましくは、デフォルトプログラムパラメータを使用するか、別のパラメータを指定することができる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、基準配列と比較した試験配列の配列同一率を計算する。
【0062】
本明細書中で使用される、「比較ウィンドウ」には、2つの配列を最適に整列させた後に同数の連続位置の基準配列と比較することができる、典型的には約20〜600、通常約50〜200、より通常には約100〜150からなる群から選択される連続部分のセグメントに対する基準が含まれる。比較のための配列アラインメント法は周知である。比較のための最適な配列アラインメントを、例えば、Smith and Waterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482−489の局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443−453の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman(1988)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2
444−2448の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、またはマニュ
アルアラインメントおよび目視(例えば、Ausubelら(eds.1995 and
supplements)Current Protocols in Molecular Biology Wileyを参照のこと)によって行うことができる。
【0063】
配列同一率および配列類似率の決定に適切なアルゴリズムの好ましい例には、Altschulら(1977)Nuc.Acids Res.25:3389−3402およびAltschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−410に記載のBLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムが含まれる。本発明の核酸およびタンパク質の配列同一率を決定するために、BLASTおよびBLAST2.0を本明細書中に記載のパラメータと共に使用する。BLAST分析の実行ソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationから公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同一の長さのワードと整列させた場合に、いくつかの正の数閾値スコアTに適合するかこれを満たす、クエリー配列中の長さWのショートワードの同定による高スコアリング配列対(HSP)の最初の同定を含む。Tは、隣接ワードスコア閾値をいう(Altschulら,前出)。これらの最初の隣接ワードのヒットを、これらを含むより長いHSPを見出すための検索開始の元として使用する。累積アラインメントスコアを増加することができる限り、各配列に沿って両方向にワードヒットを伸長する。累積スコアを、例えば、ヌクレオチド配列についてはパラメータM(適合残基対についてのリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティスコア;常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列については、スコアリング行列を使用して、累積スコアを計算する。累積アラインメントスコアがその最大達成値から量X低下した場合、1つまたは複数の負のスコアリング残基アラインメントの蓄積に起因して累積スコアがゼロまたはそれ以下になった場合、またはいずれかの配列が末端に達した場合に各方向でのワードヒットの伸長を中止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルト値として、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムは、デフォルト値として、ワード長3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリング行列(Henikoff and Henikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−919を参照のこと)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。
【0064】
BLASTアルゴリズムは、2配列間の類似性の統計的分析も行う。例えば、Karlin and Altschul(1993)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873−5787を参照のこと。BLASTアルゴリズムによって提供された類似性の1つの基準は、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の適合が偶然に起こる確率の目安を提供する最小確率和(smallest sum probability)(P(N))である。例えば、試験核酸と基準核酸との比較における最小確率和が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は基準配列に類似すると見なす。Log値は、負の多数(例えば、
5、10、20、30、40、40、70、90、110、150、170など)であり得る。
【0065】
2つの核酸配列が実質的に同一である目安は、第1の核酸によってコードされたポリペプチドが、第2の核酸によってコードされたポリペプチドに対して惹起した抗体と免疫学的に交差反応性を示すことである。したがって、ポリペプチドは、典型的には、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、第2のポリペプチドと実質的に同
一である。2つの核酸配列が実質的に同一である別の目安は、2つの分子またはその相補物がストリンジェントな条件下で互いにハイブリッド形成することである。2つの核酸配列が実質的に同一であるさらに別の目安は、同一のプライマーを使用して配列を増幅することができることである。
【0066】
「宿主細胞」は、発現ベクターを含み、発現ベクターの複製または発現を支持する天然に存在する細胞または形質転換細胞である。宿主細胞は、培養細胞、外植片、およびインビボでの細胞などであり得る。宿主細胞は、E.コリなどの原核細胞、酵母、昆虫、両生類などの真核細胞、またはCHOおよびHeLaなどの哺乳動物細胞であり得る(例えば、American Type Culture Collection catalogまたはウェブサイトを参照のこと)。
【0067】
用語「単離」、「精製」、または「生物学的に純粋」は、その天然の状態で見出される通常含まれる成分を実質的にまたは本質的に含まない物質をいう。典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィなどの分析化学的技術を使用して、純度および均一性を決定する。調製物中に存在する主要な種であるタンパク質または核酸を実質的に精製する。特に、単離核酸を、天然に遺伝子に隣接し、この遺伝子によってコードされるタンパク質以外のタンパク質をコードするいくつかの読み取り枠から単離する。いくつかの実施形態では、用語「精製」は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルに本質的に1つのバンドを生じることを示す。好ましくは、核酸またはタンパク質は、少なくとも純度約85%、より好ましくは少なくとも純度95%、最も好ましくは少なくとも純度99%であることを意味する。他の実施形態では、「純度」または「精製」は、精製すべき組成物からの少なくとも1つの夾雑物または成分の除去を意味する。この意味では、精製された化合物が均一である(例えば、純度100%)ように精製する必要はない。
【0068】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーをいうために相互交換可能に使用される。この用語を、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人為的化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー、修飾残基を含むもの、および天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用する。
【0069】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝コードによってコードされるアミノ酸ならびにその後修飾されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン)である。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸(例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)に結合するα炭素)と基本的化学構造が同一である化合物をいう。このようなアナログは、修飾R基(例えば、ノルロイシン)また
は修飾ペプチド骨格を有し得るが、天然に存在するアミノ酸のいくつかの基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、あるアミノ酸の一般的な化学構造と異なるが、別のアミノ酸と同様に機能する構造を有する化合物をいう。
【0070】
本明細書中で、その一般的に公知の三文字表記またはIUPAC−IUB Biochenmical Nomenclature Commissionが推奨する一文字表記によってアミノ酸をいうことができる。同様に、一般に受け入れられている一文字表記によってヌクレオチドをいうことができる。
【0071】
「保存的修飾変異型」を、アミノ酸配列および核酸配列に適用する。特定の核酸配列に関して、保存的修飾変異型は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一または会合した(例えば、天然に連続した)配列をいう。遺伝コードの縮重により、非常に多数の機能的に同一の核酸がほとんどのタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはそれぞれアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定される各位置では、コドンを、コードされるポリペプチドを変更することなく記載の対応する別のコドンに変更することができる。このような核酸の変異は、「サイレント変異」であり、保存的修飾変異型の1種である。ポリペプチドをコードする本明細書中に記載の各核酸配列はまた、核酸のサイレント変異を記載する。一定の文脈では、核酸中の各コドン(通常メチオニンのみのコドンであるAUGおよび通常トリプトファンのみのコドンであるTGGを除く)を、機能的に類似の分子が得られるように修飾することができる。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異は、発現産物に関して記載の配列中に隠れているが、必ずしも実際のプローブ配列に関してではない。
【0072】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コード配列中の1つのアミノ酸または少数のアミノ酸を変更、付加、または欠失する核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列の各置換、欠失、または付加は、変化によりアミノ酸が化学的に類似のアミノ酸と置換される場合、「保存的修飾変異型」であることを認識する。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は周知である。このような保存的置換変異型に本発明の多型変異型、種間ホモログ、および対立遺伝子が加えられ、これらを除外しない。典型的には、保存的置換には、以下の数字内の相互置換が含まれる:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)シトシン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton(1984)Proteins:Structure and Molecular Properties Freemanを参照のこと)。
【0073】
ポリペプチド構造などの高分子構造を、種々の組織化レベルで記載することができる。この組織化の一般的考察については、例えば、Albertsら(eds.2001)Molecular Biology of the Cell(4th ed.)Garland;およびCantor and Schimmel(1980)Biophysical Chemistry PartI:The Conformation of Biological Macromolecules Freemanを参照のこと。「一次構造」は、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。「二次構造」は、ポリペプチド内の局所的に整列された三次元構造をいう。これらの構造は、一般にドメインとして公知である。ドメインは、たいていポリペプチドの小型の単位を形成し、典型的には、25〜約500アミノ酸長であるポリペプチドの一部である。典型的なドメインは、βシートおよびαヘリックスなどのストレッチなどの低組織化部分から構成される。「三次構造」は、ポリペプチド単量体の完全な三次元構造をいう。「四次構造」は、通常、独立した三次元単位の非共有結合によって形成された三次元構造をいう。
【0074】
本明細書中で使用される、「核酸」、「オリゴヌクレオチド」、もしくは「ポリヌクレオチド」、または文法上の等価物は、少なくとも2つの互いに共有結合したヌクレオチドを意味する。オリゴヌクレオチドは、典型的には、約5、6、7、8、9、10、12、15、25、30、40、50、またはそれ以上のヌクレオチド長から約100ヌクレオチド長までである。核酸およびポリヌクレオチドは、より長い任意の長さ(200、300、500、1000、2000、3000、5000、7000、10,000など)のポリマーである。本発明の核酸は、一般に、ホスホジエステル結合を含むが、いくつかの場合、少なくとも1つの異なる結合(例えば、ホスホラミデート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、またはO−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein(1992)Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach Oxford Univ.Pressを参照のこと))ならびにペプチド核酸骨格および結合を有し得る核酸アナログが含まれる。他のアナログ核酸には、正の骨格(positive backbone)、非イオン性骨格、および非リボース骨格を有するアナログが含まれる(米国特許第5,235,033号および同第5,034,506号,およびChapters 6 and 7 of Sanghvi and Cook(eds.1994)Carbohydrate Modifications in Antisense Research ACS Symposium Series 580に記載のアナログが含まれる)。1つまたは複数の炭素環式糖を含む核酸も核酸の1つの定義に含まれる。種々の理由のために(例えば、生理学的環境下においてこのような分子の安定性および半減期を増加させるためまたはバイオチップにおけるプローブとして)、リボース−ホスフェート骨格を修飾することができる。天然に存在する核酸とアナログとの混合物を作製することができ、あるいは、異なる核酸アナログの混合物および天然に存在する核酸とアナログとの混合物を作製することができる。
【0075】
種々の参考文献が、このような核酸アナログを開示しており、例えば、ホスホラミデート(Beaucageら(1993)Tetrahedron 49:1925−1963およびその参考文献;Letsinger(1970)J.Org.Chem.35:3800−3803;Sprinzlら(1977)Eur.J.Biochem.81:579−589;Letsingerら(1986)Nucl.Acids Res.14:3487−499;Sawaiら(1984)Chem.Lett.805,Letsingerら(1988)J.Am.Chem.Soc.110:4470−4471;およびPauwelsら(1986)Chemica Scripta 26:141−149)、ホスホロチオエート(Magら(1991)Nucleic Acids Res.19:1437−441;および米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Brillら(1989)J.Am Chem.Soc.111:2321−2322)、O−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein(1992)Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,Oxford Univ.Pressを参照のこと)、ならびにペプチド核酸骨格および結合(Egholm(1992)J.Am.Chem.Soc.114:1895−1897;Meierら(1992)Chem.Int.Ed.Engl.31:1008−1010;Nielsen(1993)Nature 365:566−568;Carlssonら(1996)Nature 380:207(これら全てが参考として援用される)を参照のこと)が含まれる。他のアナログ核酸には、正の骨格(Denpcyら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:6097−101;非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号,同第5,637,684号,同第5,602,240号,同第5,216,141号および同第4,469,863号;Kiedrowskiら(1991)Angew.Chem.Intl.Ed.English 30:423−426;Letsingerら(1988)J.Am.Chem.Soc.110:4470−4471;Letsingerら(1994)Nucleoside and Nucleotide 13:1597;Chapters 2 and 3 in Sanghvi and Cook(eds.1994)Carbohydrate Modifications in Antisense Research ACS Symposium Series 580;Mesmaekerら(1994)Bioorganic and Medicinal Chem.Lett.4:395−398;Jeffsら(1994)J.Biomolecular NMR 34:17;Hornら(1996)Tetrahedron Lett.37:743)、および非リボース骨格(米国特許第5,235,033号および同第5,034,506号およびChapters 6 and 7 in Sanghvi and Cook(eds.1994)Carbohydrate Modifications in Antisense Research ACS Symposium Series580に記載のものが含まれる)を有するものが含まれる。
1つまたは複数の炭素環式糖を含む核酸も核酸の1つの定義に含まれる(Jenkinsら(1995)Chem.Soc.Rev.pp 169−176を参照のこと)。いくつかの核酸アナログは、Rawls(page35,June 2,1997)C & E Newsに記載されている。
【0076】
ペプチド核酸アナログを含むペプチド核酸(PNA)が特に好ましい。ペプチド核酸は、ペプチド結合によって結合した反復N−(2−アミノイエチル)−グリシン単位から作製された骨格を有する。異なる塩基(プリンおよびピリミジン)は、メチレンカルボニル結合によって骨格に結合している。これらの骨格は、天然に存在する核酸の高荷電ホスホジエステル骨格と比較して、中性条件下で実質的に非イオン性である。これにより、少なくとも2つの利点が得られる。PNA骨格はハイブリッド形成速度が改善されており、その結果PNA鎖とDNA鎖との間よりもPNA/DNA鎖の間の結合が強くなる。PNAは、ミスマッチと完全に適合した塩基対では融点(T
m)がより大きく異なる。DNAおよびRNAは、典型的には、内部ミスマッチのためにT
mは2〜4℃低下する。非イオン性PNA骨格では、低下は7〜9℃付近である。同様に、その非イオン性のために、これらの骨格に結合した塩基のハイブリッド形成は、塩濃度に比較的感受性を示す。さらに、PNAは、細胞酵素によって分解されないので、より安定であり得る。
【0077】
核酸は、基底されるように、一本鎖または二本鎖であり得るか、二本鎖配列または一本鎖配列の一部を含み得る。一本鎖の描写は相補鎖の配列も定義するので、本明細書中に記載の配列はまた配列の相補物を提供する。核酸は、DNA(ゲノムDNAおよびcDNAの両方)、RNA、または核酸がデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの組み合わせおよび塩基(ウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニンなどが含まれる)の組み合わせを含み得るハイブリッドであり得る。「転写物」は、典型的には、天然に存在するRNA(例えば、プレmRNA、hnRNA、またはmRNA)をいう。本明細書中で使用される、用語「ヌクレオシド」には、ヌクレオチドならびにヌクレオシドおよびヌクレオチドのアナログ、ならびにアミノ修飾ヌクレオシドなどの修飾ヌクレオシドが含まれる。さらに、「ヌクレオシド」には、天然に存在しないアナログ構造が含まれる。したがって、例えば、それぞれ塩基を含むペプチド核酸の各単位を、本明細書中ではヌクレオシドという。
【0078】
「標識」または「検出可能な部分」は、顕微鏡手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、生理学的手段、化学的手段、または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。一般に、標識は、以下の3つのクラスに分類される:a)放射性同位体または重同位体であり得る同位体標識、b)抗体、抗原、またはエピトープタグであり得る免疫標識、c)着色または蛍光色素。標識を、CS1の核酸、タンパク質、および抗体に組み込むことができる。例えば、標識は、直接または間接的に検出可能なシグナルを産生することができるはずである。検出可能な部分は、放射性同位体(
3H、
14C、
32P、
35S、または
125Iなど)、高電子密度試薬、蛍光もしくは化学発光化合物(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、またはルシフェリンなど)、酵素(例えば、ELISAで一般的に使用されているもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテンおよびタンパク質、またはアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、または西洋ワサビペルオキシダーゼなどの検出可能にすることができる他の物質であり得る。抗体と標識との抱合方法は公知である。例えば、Hunterら(1962)Nature 144:945;Davidら(1974)Biochemistry 13:1014−1021;Painら(1981)J.Immunol.Meth.40:219−230;およびNygren(1982)J.Histochem.andCytochem.30:407−412を参照のこと。
【0079】
「エフェクター」、「エフェクター部分」、または「エフェクター成分」は、抗体とリンカーまたは化学結合を介して供給結合するか(結合または抱合)、イオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合、または水素結合を介して非共有結合する分子である。「エフェクター」は、種々の分子(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、酵素もしくは基質、タグ(エピトープタグなど)、毒素を含む検出部分;活性化可能な部分、化学療法薬;リパーゼ;抗生物質;化学誘因部分、免疫調節物質(micA/B)、または例えば、「硬」β放射線を放射する放射性同位体が含まれる)であり得る。
【0080】
「標識核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、プローブに結合した標識の存在の検出によってプローブの存在を検出することができるように、例えば、リンカーもしくは化学結合を介して共有結合するか、イオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合、または水素結合を介して非共有結合するものである。あるいは、高親和性相互作用を使用した方法により、結合パートナー対の一方が他方(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン)に結合する同一の結果を得ることができる。
【0081】
本明細書中で使用される、「核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、1つまたは複数の化学結合型を介して(通常は相補性塩基対合を介して(例えば、水素結合形成を介して))相補配列の標的核酸に結合することができる核酸である。本明細書中で使用される、プローブには、天然(例えば、A、G、C、またはT)または修飾塩基(7−デアザグアノシン、イノシンなど)が含まれ得る。さらに、ホスホジエステル結合以外の結合(好ましくは、ハイブリッド形成を機能的に妨害しないもの)によってプローブ中の塩基を結合することができる。したがって、例えば、プローブは、ホスホジエステル結合よりもむしろペプチド結合によって構成性塩基を結合するペプチド核酸であり得る。プローブは、ハイブリッド形成条件のストリンジェンシーに依存してプローブ配列との完全な相補性を欠く配列をターゲティングすることができる。プローブを、好ましくは、例えば、同位体、発色団、ルミフォア、色原体で直接標識するか、例えば、後にストレプトアビジン複合体と結合することができるビオチンで間接的に標識する。プローブの有無についてのアッセイにより、選択した配列またはサブシーケンスの有無を検出することができる。診断または予後は、ゲノムレベルまたはRNAもしくはタンパク質の発現レベルに基づき得る
。
【0082】
用語「組換え」は、例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用する場合、異種核酸もしくはタンパク質の移入または天然の核酸もしくはタンパク質の変更によって細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが修飾されていることを示すか、細胞がこのようにして修飾された細胞に由来する。したがって、例えば、組換え細胞は、天然(非組換え)形態の細胞内で見出されない遺伝子を発現するか、天然の遺伝子を別に異常に発現するか、過小発現するか、全く発現しない。本明細書中の用語「組換え核酸」は、一般に、核酸の操作(例えば、ポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを使用)によって元はインビトロで形成された天然で見出されない形態の核酸を意味する。この様式では、異なる配列は作動可能に連結される。したがって、線状形態の単離核酸または通常は連結しないDNA分子のライゲーションによってインビトロで形成された発現ベクターは共に本発明目的のための組換えと見なされる。一旦組換え核酸が作製されて宿主細胞または生物に再移入されると、例えば、インビトロ操作よりもむしろインビボでの宿主細胞の細胞機構を使用して非組換え的に複製されるが、一旦組換えで産生されるがその後非組換え的に複製されると、このような核酸は本発明の目的のための組換えと見なされることが理解される。
【0083】
同様に、「組換えタンパク質」は、例えば、上記の組換え核酸の発現による組換え技術を使用して作製されたタンパク質である。少なくとも1つまたは複数の特徴によって、組換えタンパク質は、天然に存在するタンパク質と区別される。タンパク質を、その野生型宿主中で通常は会合しているタンパク質および化合物のいくつかまたはほとんどから単離または精製することができるので、実質的に純粋であり得る。単離タンパク質は、所与のサンプル中の総タンパク質の好ましくは少なくとも約0.5重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%を構成するその天然状態で通常は会合している物質の少なくともいくつかを含んでいない。実質的に純粋なタンパク質は、総タンパク質の少なくとも約75重量%を占め、少なくとも約80重量%が好ましく、少なくとも約90重量%が特に好ましい。この定義には、異なる生物または宿主細胞におけるある生物からのCS1タンパク質の産生が含まれる。あるいは、タンパク質濃度レベルが増加するように誘導プロモーターまたは高発現プロモーターの使用によって通常認められるよりも有意に高い濃度でタンパク質を作製することができる。あるいは、以下で考察するように、タンパク質は、エピトープタグの付加またはアミノ酸の置換、挿入、および欠失の目的のために通常は天然で見出されない形態であり得る。
【0084】
核酸の一部に関して使用する場合の用語「異種」は、核酸が天然での相互の同一の関係で通常は見出されない2つまたはそれ以上のサブシーケンスを含むことを示す。例えば、新規の機能的核酸を作製するように配置された無関係の遺伝子(例えば、ある起源由来のプロモーターおよび別の起源由来のコード領域)から2つまたはそれ以上の配列を有する核酸を典型的に組換え的に産生する。同様に、異種タンパク質は、たいてい、天然では互いに同一の関係で見出されない2つまたはそれ以上のサブシーケンス(例えば、融合タンパク質)をいう。
【0085】
「プロモーター」は、典型的には、核酸の転写を指示する核酸調節配列のアレイである。本明細書中で使用される、「プロモーター」には、転写開始部位付近の必要な核酸配列(ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATAエレメントなど)が含まれる。プロモーターには、任意選択的に、転写開始部位から数千塩基対も離れて存在することができる遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントも含まれる。「構成性」プロモーターは、ほとんどの環境条件および発生条件下で活性なプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境または発生調節下で活性である。用語「作動可能に連結された」は、例えば、発現調節配列が第2の配列に対応する核酸の転写を指示する、核酸発現調節配列(プロモーターまたは転写因子結合部位のアレイなど)と第2の核酸配列との間の機能的結合をいう。
【0086】
「発現ベクター」は、宿主細胞中で特定の核酸を転写させる一連の特定の核酸エレメントを有する組換えまたは合成によって生成された核酸構築物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、または核酸フラグメントの一部であり得る。典型的には、発現ベク
ターは、プロモーターに操作可能に連結された転写されるべき核酸を含む。
【0087】
句「〜と選択的に(または特異的に)ハイブリッド形成する」は、配列が複合混合物(例えば、全細胞またはライブラリーDNAまたはRNA)中に存在する場合のストリンジェントなハイブリッド条件下での特定のヌクレオチド配列への選択的な分子の結合、二本鎖形成、またはハイブリッド形成をいう。
【0088】
句「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」は、プローブが典型的には複合混合物中でその標的サブシーケンスとハイブリッド形成するが他の配列とはハイブリッド形成しない条件下をいう。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、異なる環境下では異なる。より長い配列が特異的により高い温度でハイブリッド形成する。核酸のハイブリッド形成に関する詳細なガイドは、Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”in Tijssen(1993)Hybridization with Nucleic Probes(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology)(vol.24)Elsevierで見出される。一般に、定義されたイオン強度、pHでの特定の配列についてのストリンジェントな条件は、融点(T
m)よりも約5〜10℃低い温度が選択される。T
mは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリッド形成する(定義されたイオン強度、pH、よび核酸濃度での)温度である(標的配列が過剰に存在するので、T
mでは、50%のプローブが平衡状態である)。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3で塩濃度が約1.0Mのナトリウムイオン未満、典型的には約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度が短いプローブ(例えば、約10〜15ヌクレオチド)では少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、約50ヌクレオチド超)では少なくとも60℃である条件である。ホルムアミドなどの脱安定剤の添加によってストリンジェントな条件を達成することもできる。選択的または特異的ハイブリッド形成のために、正のシグナルは、典型的には、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくは、バックグラウンドハイブリッド形成の10倍である。ストリンジェントなハイブリッド条件の例は以下であり得る:50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDS(42℃でインキュベーション)または5×SSC、1%SDS(65℃でインキュベーション)および65℃で0.2×SSCおよび0.1%SDSでの洗浄。PCRについて、低ストリンジェンシー増幅では約36℃が典型的であるが、アニーリング温度はプライマーの長さに依存して約32℃〜48℃の間で変化し得る。高ストリンジェンシーPCR増幅について、約62℃が典型的であるが、高ストリンジェンシーのアニーリング温度は、プライマーの長さおよび特異性に依存して約50〜65℃の範囲であり得る。高いまたは低いストリンジェンシーでの増幅のための典型的なサイクル条件は、90〜95℃で30〜120秒の変性段階、30〜120秒持続させるアニーリング段階、および約72℃で1〜2分間の伸長段階を含む。低および高ストリンジェンシーでの増幅反応についてのプロトコールおよびガイドラインは、例えば、Innisら(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications Academic Press,NYに提供されている。
【0089】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリッド形成しない核酸は、これらがコードするポリペプチドが実質的に同一である場合、以前として実質的に同一である。例えば、遺伝コードによって可能な最大コドン縮重を使用して核酸のコピーを作製した場合にこれが起こる。このような場合、核酸は、典型的には、中程度のストリンジェントのハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する。「中程度のストリンジェントなハイブリッド形成条件」の例には、37℃での40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝液中でのハイブリッド形成および45℃で1×SSCでの洗浄が含まれる。正のハイブリッド形成は、典型的には、バックグラウンドの少なくとも2倍である。別のハイブリッド形成および洗浄条件を使用して、類似のストリンジェンシー条件を得ることができる。ハイブリッド形成パラメータを決定するためのさらなるガイドラインは、多数の参考文献(例えば、Ausubelら(eds.1991 and supplements)Current Protocols in Molecular Biology Wiley)で提供されている。
【0090】
句「細胞形態学の変化」または「細胞の特徴の変化」は、細胞の生存度、細胞成長、成長因子もしくはケモカイン因子の分泌、細胞形態学の変化、炎症特異的マーカーの増加もしくは喪失、適切な動物宿主に注射した場合の炎症の誘導もしくは抑制能力、および/または適切な宿主における病態(例えば、自己免疫障害および癌性病態)の誘導などのインビトロまたはインビボでの細胞の形態学または増殖特性の任意の変化をいう。例えば、pp.231−241 in Freshney(1994)Culture of Animal Cells a Manual of Basic Technique(2d ed.)Wiley−Lissを参照のこと。
【0091】
「疾患細胞」は、新規の遺伝物質の取り込みを必ずしも含まない自発的または誘導性の表現型の変化をいう。例えば、骨髄腫形成が形質転換ウイルスの感染および新規の遺伝子DNAの組み込みまたは外因性DNAの取り込みから惹起され得るにもかかわらず、自発的または薬剤への曝露後にも惹起され、それにより既存遺伝子の発現を誘導するか変化させることができる。腫瘍成長は、形態学的変化、異常な細胞成長、および/または非形態学的変化などの表現型およびタンパク質発現の変化に関連する。Freshney(2000)Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique(4th ed.)Wiley−Lissを参照のこと。同様に、自己免疫疾患プロセスの影響を受けた細胞も、表現型およびタンパク質発現の変化に関連する。
【0092】
「有効」量の分子、抗体、薬物、薬学的に活性な薬剤、または薬学的処方物は、所望の効果を得るのに十分な量の分子、抗体、薬物、薬剤、または処方物を意味する。
【0093】
「被験体」または「患者」を、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトをいうために本明細書中で交換可能に使用する。
【0094】
本明細書中で使用される、用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質をいう。認識されている免疫グロブリンには、κ、λ、α、γ(IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4)、δ、ε、およびμ定常領域ならびに無数の免疫グロブリン可変V領域遺伝子(下に示すように、H(重)およびL(軽)鎖の両方にV遺伝子は存在する)が含まれる。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kdまたは214アミノ酸)は、NH2末端(約110アミノ酸)で可変領域遺伝子(V−κまたはV−λ)、COOH末端でκまたはλ定常領域遺伝子によってそれぞれコードされる。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50Kdまたは446アミノ酸)は、同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)および他の上記定常領域遺伝子の1つ(例えば、γ)(約330アミノ酸をコードする)に
よってコードされる。
【0095】
免疫グロブリンの1つの形態は、抗体の基本構造単位を構成する。この形態は四量体であり、免疫グロブリン鎖の2つの同一の対(各対は1つの軽鎖および1つの重鎖を有する)からなる。各対では、軽鎖および重鎖の可変領域は合わせて抗原への結合を担い、定常領域は抗体エフェクター機能を担う。四量体抗体に加えて、免疫グロブリンは、種々の他の形態(例えば、Fv、Fab、および(Fab’)
2ならびに二機能性ハイブリッド抗
体(例えば、Lanzavecchiaら,Eur.J.Immunol.17,105(1987))および一本鎖(例えば、Hustonら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85,5879−5883(1988)およびBirdら,Science,242,423−426(1988)(本明細書中で参考として援用される))が含まれる)で存在し得る(一般に、Hoodら,”Immunology”,Benjamin,N.Y.,2nd ed.(1984),and Hunkapiller and Hood,Nature,323,15−16(1986)(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0096】
抗体はまた、例えば、種々のペプチダーゼでの消化によって産生された多数の十分に特徴づけられたフラグメントとして存在する。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域中のジスルフィド結合の下で抗体を消化して、F(ab)’
2(それ自体がジスルフィド結合によってV
H−C
H1に結合した軽鎖であるFabの二量体)が得られる。穏やかな条件下でF(ab)’
2を還元してヒンジ領域中のジスルフィド結合を破壊し、それにより、F(ab)’
2二量体をFab’単量体に変換することができる。Fab’単量体は、本質的に、ヒンジ領域の一部を含むFabである(Paul(ed.1999)Fundamental Immunology(4th ed.)Ravenを参照のこと)。インタクトな抗体の消化に関して種々の抗体フラグメントを定義するが、当業者は、このようなフラグメントを、化学的または組換えDNA法の使用によってde novoで合成することができることを認識する。したがって、本明細書中で使用される、用語「抗体」には、全抗体の修飾によって産生された抗体フラグメント、組換えDNA法を使用してde novoで合成した抗体フラグメント(例えば、単鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを使用して同定した抗体フラグメントも含まれる(例えば、McCaffertyら(1990)Nature 348:552−554を参照のこと)。
【0097】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)がキメラ抗体に新規の性質を付与する異なるまたは変化したクラスおよび/または種または完全に異なる分子(例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物、エフェクター機能、化学誘因物質、免疫調節薬など)の定常領域に結合するように定常領域またはその一部が変化、置換、または交換されているか、(b)異なるまたは変化した抗原特異性を有する可変領域で可変領域またはその一部が変化、置換、または交換された抗体分子である。
【0098】
用語「ヒト化抗体」または「ヒト化免疫グロブリン」は、ヒトフレームワーク、非ヒト抗体由来の少なくとも1つ、好ましくは全ての相補性決定領域(CDR)を含み、存在する任意の定常領域がヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一である(すなわち、少なくとも約85〜90%同一、好ましくは少なくとも95%同一)免疫グロブリンをいう。したがって、おそらくCDRを除くヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、1つまたは複
数の天然のヒト免疫グロブリン配列の対応部分と実質的に同一である。例えば、Queenら,米国特許第5,5301,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号;および同第6,180,370号(これらおよび他の米国特許/特許出願全体が、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0099】
抗体(例えば、組換え抗体、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体)の調製のための多数の技術が公知である。例えば、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495−497;Kozborら(1983)Immunology Today 4:72;Coleら(1985)pp.77−96 in Reisfeld and Sell(1985)Monoclonal Antibodies and Myeloma Therapy Liss;Coligan(1991)Current Protocols in Immunology Lippincott;Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual CSH Press;およびGoding(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(2d ed.)Academic Pressを参照のこと。単鎖抗体の産生技術(米国特許第4,946,778号)を、本発明のポリペプチドに対する抗体の産生に適合することができる。また、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物などの他の生物を使用して、ヒト化抗体を発現することができる。あるいは、ファージディスプレイテクノロジーを使用して、選択した抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFabフラグメントを同定することができる。例えば、McCaffertyら(1990)Nature348:552−554;Marksら(1992)Biotechnology 10:779−783を参照のこと。
【0100】
用語「エピトープ」は、免疫応答を誘発して抗体によって特異的に結合することができるタンパク質の任意の部分(決定基)をいう。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸またはGAG側鎖などの分子の活性表面集団からなり、通常、特異的三次元構造特性および特異的電荷特性を有する。一方の抗体の結合を減少または消滅させるタンパク質中のアミノ酸変異が他の抗体の結合も減少または消滅させる場合および/または抗体がタンパク質への結合を競合する場合(すなわち、一方の抗体のタンパク質への結合が他の抗体の結合を減少または消滅させる場合)、2つの抗体は、実質的に同一のタンパク質のエピトープ(またはタンパク質の重複エピトープ)に結合するといわれている。2つの抗体が同一のエピトープに実質的に結合するかどうかの決定を、競合アッセイなどの当該分野で公知の方法によって行う。コントロール抗体(例えば、本明細書中に記載の抗CS1抗体の1つ)と任意の試験抗体との間の抗体競合研究の実施では、その後の同定を可能にするために、コントロール抗体を、ビオチン、酵素標識、放射性標識、または蛍光標識などの検出可能な標識で最初に標識することができる。コントロール(標識)抗体と同一のエピトープに実質的に結合する試験(非標識)抗体は、コントロール抗体の結合を遮断することができるはずであり、それによりコントロール抗体の結合が減少するはずである。
【0101】
例示的実施形態では、抗体がLucモノクローナル抗体の同一のエピトープに実質的に結合する場合(Lucモノクローナル抗体は本発明の産生された抗CS1モノクローナル抗体をいう)、抗体は、Lucモノクローナル抗体が結合するCS1エピトープと重複するCS1のエピトープと結合するはずである。重複領域は、1つのアミノ酸残基から数百のアミノ酸残基までの範囲であり得る。次いで、この抗体は、CS1へのLucモノクローナル抗体の結合を競合および/または遮断し、それにより、競合アッセイにおいてCS1へのLucモノクローナル抗体の結合を好ましくは少なくとも約50%減少させるはずである。
【0102】
用語「〜に由来する」は、「〜から得られる」、「〜によって産生される」、または「〜伝わる」を意味する。
【0103】
(CS1抗原および抗体)
配列番号2は、全長野生型ヒトCS1のアミノ酸配列を示す。「機能的に活性な」CS1フラグメントまたは誘導体は、抗原活性、免疫原性活性、天然の細胞基質に結合する能力などの全長野生型CS1タンパク質に関連する1つまたは複数の機能活性を示す。CS1タンパク質、誘導体、およびフラグメントの機能活性を、当業者に公知の種々の方法によってアッセイすることができる(Current Protocols in Protein Science,Coliganら,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,Somerset,New Jersey(1998))。本明細書中の目的のために、機能的に活性なフラグメントには、結合ドメインなどのCS1ポリペプチドの1つまたは複数の構造ドメインを含むフラグメントが含まれる。PFAMプログラムを使用して、タンパク質ドメインを同定することができる(Bateman A.ら,Nucleic Acids Res.27:260−2(1999))。
【0104】
CS1ポリペプチド誘導体は、典型的には、配列番号2またはそのフラグメントと一定の程度の配列同一性または配列類似性を有する。当該分野で公知の種々の方法によって、CS1誘導体を産生することができる。操作により、遺伝子またはタンパク質レベルで産生することができる。例えば、クローン化CS1遺伝子配列(例えば、配列番号1)を、制限エンドヌクレアーゼを使用して適切な部位で切断し(Wellsら,Philos.Trans.R.Sot.London SerA 317:415(1986))、その後さらに酵素修飾を行い、所望ならば、その後単離し、インビトロでライゲーションし、発現させて所望の誘導体を産生することができる。あるいは、CS1遺伝子をインビトロで変異させて翻訳配列、開始配列、および/または終止配列を作製および/または破壊するか、コード領域を変異させ、そして/または新規の制限エンドヌクレアーゼ部位を形成するか、先在するエンドヌクレアーゼ部位を破壊してさらなるインビトロ修飾を促進することができる。化学的変異誘発、インビトロ部位特異的変異誘発(Carterら,Nucl.Acids Res.13:4331(1986))またはTABリンカー(Pfizer,Inc.から市販されている)の使用などの種々の変異誘発技術が当該分野で公知である。
【0105】
1つの態様では、本発明の抗体は、CS1の生物活性の少なくとも1つ、好ましくは全てを中和する。CS1の生物活性には、以下が含まれる:1)そのリガンドなどのその細胞基質の結合活性(例えば、これらの中和抗体は、そのリガンドの少なくとも1つ、好ましくは全てへのCS1の結合と競合するか完全に遮断することができるはずである)、2)シグナル伝達活性、および3)CS1によって誘導された細胞応答。
【0106】
本発明は、以下のハイブリドーマ細胞株を提供する:Luc2、Luc3、Luc15、Luc22、Luc23、Luc29、Luc32、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc39、Luc56、Luc60、Luc63、またはLuc90。ハイブリドーマ細胞Luc90は、アクセッション番号PTA5091としてAmerican Type Culture Collection(ATCC)at P.O.Box 1549,Manassas,VA 20108に受託された。このハイブリドーマ細胞株の寄託は、2003年3月26日にATCCに認められた。ハイブリドーマ細胞株Luc63もまた上記列挙の住所のATCCで受託された。Luc63抗体の寄託は、2004年5月6日に認められた。
【0107】
本発明は、以下のハイブリドーマ細胞株によって産生されたモノクローナル抗体を提供する:Luc2、Luc3、Lucl5、Luc22、Luc23、Luc29、Luc32、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc39、Luc56、Luc60、Luc63、またはLuc90(ATCCアクセッション番号PTA5091)。これらのモノクローナル抗体を、今後それぞれ以下の抗体として命名する:Luc2、Luc3、Luc15、Luc22、Luc23、Luc29、Luc32、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc39、Luc56、Luc60、Luc63、およびLuc90。
【0108】
本発明は、本明細書中に記載のLucモノクローナル抗体の任意の1つと同一のエピトープに実質的に結合する抗体、好ましくはモノクローナル抗体を提供する。
【0109】
本発明は、1つまたは複数の上記Lucモノクローナル抗体と同一のエピトープに実質的に結合しない抗体、好ましくはモノクローナル抗体を提供する。
【0110】
抗体競合の評価のための種々の免疫学的スクリーニングアッセイを使用して、本発明の抗体と同一のエピトープと実質的に結合するか本発明の抗体と異なるエピトープに結合する抗体を同定することができる。
【0111】
コントロール抗体と任意の試験抗体(種またはイソ型に無関係)との間の抗体競合研究の実施では、その後の同定を可能にするために、コントロール抗体を、ビオチンまたは酵素(または放射性)標識などの検出可能な標識で最初に標識することができる。この場合、非標識抗体をCS1タンパク質を発現する細胞と予め混合するかインキュベートする。次いで、標識抗体を、予備インキュベーション細胞に添加する。結合標識の強度を測定する。標識抗体が重複エピトープへの結合によって非標識抗体と競合する場合、負のコントロールである非標識抗体(CS1に結合しない既知の抗体)による結合と比較して強度が減少する。
【0112】
アッセイは、抗体競合に基づいた一定範囲の免疫学的アッセイの任意の1つであってよく、コントロール抗体をその標識の検出手段(例えば、ビオチン化抗体の場合のストレプトアビジンの使用、酵素標識と結合した発色基質の使用(ペルオキシダーゼを含む3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質など)、または放射性標識または蛍光標識の単純な検出)によって検出する。コントロール抗体と同一のエピトープに結合する抗体は、効果的にに結合を競合することができ、それにより、結合標識の減少によって証明したところ、コントロール抗体の結合を有意に(例えば、少なくとも50%)減少させることができる。
【0113】
完全に無関係抗体の非存在下での(標識)コントロール抗体の反応性は、コントロール高値である。コントロール低値は、非標識試験抗体のCS1発現細胞とのインキュベーションによって得られ、その後、標的抗体の結合と競合して減少する場合、正確に同型の標
識コントロール抗体との細胞/抗体混合物をインキュベートする。試験アッセイでは、試験抗体の存在下での標識抗体の反応性の有意な減少は、実質的に同一のエピトープを認識する試験抗体の指標である。
【0114】
全種の供給源のCS1に対する抗体が本発明に含まれる。天然抗体の非限定的な例には、ヒト、ニワトリ、ヤギ、およびげっ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター、およびウサギ)(ヒト抗体を産生するように遺伝子操作されたトランスジェニックげっ歯類が含まれる)由来の抗体が含まれる(例えば、Lonbergら,W093/12227;米国特許第5,545,806号;およびKucherlapatiら,W091/10741;米国特許第6,150,584号を参照のこと(その全体が本明細書中で参考として援用される))。天然の抗体は、ポリペプチド、好ましくはヒトポリペプチドなどの抗原での免役化後に宿主動物によって産生された抗体である。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、CS1に結合し、そして/または中和する単離天然抗体である。
【0115】
遺伝的に変化した抗CS1抗体は、上記天然抗体と機能的に等価なはずである。安定性および/または治療有効性が改善された修飾抗体が好ましい。修飾抗体の例には、アミノ酸残基の保存的置換および抗原結合での使用後に有意に有害ではないアミノ酸の1つまたは複数の欠失または付加が行われた抗体が含まれる。置換は、治療有用性が維持される限り、1つまたは複数のアミノ酸残基の変更または修飾から領域の完全な再デザインまでの範囲であり得る。本発明の抗体を翻訳後に修飾することができるか(例えば、アセチル化および/またはリン酸化)、合成によって修飾することができる(例えば、標識基の結合)。好ましい遺伝子を変更した抗体は、キメラ抗体およびヒト化抗体である。
【0116】
キメラ抗体は、2つの異なる抗体、好ましくは別の種由来の可変領域および定常領域を有する抗体である。好ましくは、キメラ抗体の可変領域はマウスに由来し、定常領域はヒトに由来する。
【0117】
1つの実施形態では、マウス可変領域は、本明細書中に記載の任意の1つのモノクローナル抗体に由来する。キメラ抗体を産生するために、2つの異なる種由来の部分(例えば、ヒト定常領域およびマウス可変領域または結合領域)を従来技術によって互いに化学的に連結するか、遺伝子操作技術を使用して、1つの連続タンパク質として調製することができる。キメラ抗体の軽鎖部分および重鎖部分の両方のタンパク質をコードするDNA分子を、連続タンパク質として発現することができる。キメラ抗体の作製方法は、米国特許第5,677,427号;米国特許第6,120,767号;および米国特許第6,329,508号(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)に開示されている。
【0118】
本発明で使用される遺伝子改変抗体には、CS1を中和するヒト化抗体が含まれる。1つの実施形態では、ヒト化抗体は、マウスドナー免疫グロブリンのCDR、重鎖および軽鎖フレームワーク、ならびにヒトアクセプター免疫グロブリンの定常領域を含む。1つの例では、ヒト化抗体は、本明細書中に記載の任意の1つの抗体のヒト化異形(version)である。ヒト化抗体の作製方法は、米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;および同第6,180,370号(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)に開示されている。
【0119】
抗CS1全ヒト抗体も本発明に含まれる。本発明の好ましい実施形態では、完全ヒト抗体は、本明細書中に記載のCS1活性を中和する単離ヒト抗体である。
【0120】
CS1に対する完全ヒト抗体を種々の技術によって産生する。1つの例は、トリオーマ法である。このアプローチで使用される基本アプローチおよび細胞融合パートナーの例(SPAZ−4)は、Oestbergら,Hybridoma 2:361−367(1983);Oestberg,米国特許第4,634,664号;およびEnglemanら,米国特許第4,634,666号(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0121】
CS1に対するヒト抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の少なくともセグメントをコードする導入遺伝子を有する非ヒトトランスジェニック動物から産生することもできる。これらの性質を有する動物の産生および性質は、例えば、Lonbergら,W093/12227;米国特許第5,545,806号;Kucherlapatiら,W091/10741;米国特許第6,150,584号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に詳述されている。
【0122】
種々の組換え抗体ライブラリーテクノロジーを使用して、完全ヒト抗体を産生することもできる。例えば、1つのアプローチは、Huseら,Science 246:1275−1281(1989)に概説の一般的プロトコールにしたがってヒトB細胞からDNAライブラリーをスクリーニングすることである。CS1またはそのフラグメントに結合する抗体を選択する。次いで、このような抗体をコードする配列(またはその結合フラグメント)をクローン化し、増幅する。Huseによって記載されたプロトコールは、ファージディスプレイテクノロジーと組み合わせてより有効になる。例えば、Dowerら,WO 91/17271およびMcCaffertyら,WO 92/01047;米国特許第5,969,108号(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。これらの方法では、メンバーがそのディスプレイに異なる抗体を表示するファージライブラリーを産生する。抗体は、通常、FvまたはFabフラグメントとして表示される。所望の特異性を有する抗体を表示するファージを、CS1またはそのフラグメントの親和性富化によって選択する。
【0123】
Coia Gら,J.Immunol.Methods 1:254(1−2):191−7(2001);Hanes J.ら,Nat.Biotechnol.18(12):1287−92(2000);Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95(24):14130−5(1998);Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94(10):4937−42(1997)(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)に記載のように、真核生物リボゾームを、CS1などの標的抗原のスクリーニングよって抗体ライブラリーを表示して結合ヒト抗体を単離するための手段として使用することもできる。
【0124】
酵母系はまた、抗体などの哺乳動物細胞表面タンパク質または分泌タンパク質のスクリーニングに適切である。標的抗原に対するヒト抗体を得る目的で、抗体ライブラリーを、酵母細胞の表面上に表示することができる。このアプローチは、Yeungら,Biotechnol.Prog.18(2):212−20(2002);Boeder,E.T.ら,Nat.Biotechnol.15(6):553−7(1997)(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。あるいは、ヒト抗体ライブラリーを細胞内で発現させ、酵母2ハイブリッド系によってスクリーニングすることができる(WO0200729A2(その全体が本明細書中で参考として援用される))。
【0125】
CS1への特異的結合を保持する抗CS1抗体のフラグメントも本発明に含まれる。これらの抗原結合フラグメントの例には、本明細書中に記載の任意の抗CS1抗体の部分的もしくは全ての重鎖もしくは軽鎖、可変領域、またはCDR領域が含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
本発明の好ましい実施形態では、抗体フラグメントは、短縮鎖である(カルボキシル末端で切断)。好ましくは、これらの短縮鎖は、1つまたは複数の免疫グロブリン活性(例えば、補体結合活性)を有する。短縮鎖の例には、Fabフラグメント(VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる);Fdフラグメント(VHおよびCH1ドメインからなる);Fvフラグメント(抗体の単鎖のVLおよびVHドメインからなる);dabフラグメント(VHドメインからなる);単離CDR領域;(Fab’)
2フラグメント、二価フラグメント(ジスルフィド結合によってヒンジ領域で結合した2つのFabフラグメントを含む)が含まれるが、これらに限定されない。従来の生化学的技術(酵素切断など)または組換えDNA技術(それぞれ当該分野で公知)によって短縮鎖を産生することができる。当該分野で周知の方法によるインタクトな抗体のタンパク質分解性切断または部位特異的変異誘発を使用したベクター中の所望の位置(Fabフラグメントを産生するためのCH1または(Fab’)
2フラグメントを産生するためのヒンジ領域の後など)での終止コドンの挿入によって、これらのポリペプチドフラグメントを産生することができる。V
LおよびV
Hコード領域とVLおよびVHタンパク質フラグメントを連結するペプチドリンカーをコードするDNAとの連結によって単鎖抗体を産生することができる。
【0127】
免疫グロブリン関連遺伝子は、個別の機能的領域(それぞれ1つまたは複数の異なる生物活性を有する)を含むので、抗体フラグメントの遺伝子を、他の遺伝子由来の機能的領域(例えば、酵素、米国特許第5,004,692号(その全体が本明細書中で参考として援用される))と融合して、新規の性質を有する融合タンパク質(例えば、免疫毒素)または抱合体を産生することができる。
【0128】
本発明は、免疫毒素における抗CS1抗体の使用を含む。抗体を含む免疫毒素である抱合体は、当該分野で広範に記載されている。従来のカップリング技術によって毒素を抗体にカップリングすることができるか、タンパク質毒素部分を含む免疫毒素を融合タンパク質として産生することができる。本発明の抱合体を、このような免疫毒素を得るための対応する方法で使用することができる。このような免疫毒素の例は、Byers,B.S.ら,Seminars Cell Biol 2:59−70(1991)およびFanger,M.W.ら,Immunol Today 12:51−54(1991)に記載されている。
【0129】
組換えDNA技術を使用して、任意の発現系(細菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞、および哺乳動物細胞(例えば、NSO細胞)などの原核生物および真核生物発現系が含まれる)で組換え抗CS1抗体ならびにキメラもしくはヒト化抗CS1抗体または任意の他の抗CS1遺伝子改変抗体、およびそのフラグメントもしくは抱合体を産生することができる。
【0130】
一旦産生されると、本発明の全抗体、その二量体、各軽鎖および重鎖、または他の免疫グロブリン形態を、当該分野で標準的な手順(硫酸アンモニウム沈殿、親和性カラム、カラムクロマトグラフィ、ゲル電気泳動などが含まれる)にしたがって精製することができる(一般に、Scopes,R.,Protein Purification(Springer−Verlag,N.Y.,1982)を参照のこと)。薬学的使用では少なくとも約90〜95%均一な実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98〜99%またはそれ以上均一であることが最も好ましい。一旦精製されると(部分的、望ましくは均一)、ポリペプチドを、治療(体外が含まれる)またはアッセイ手順、免疫蛍光染色などの開発および実施で使用することができる(一般に、Immunological Methods,Vols.I and II(Lefkovits and Pernis,eds.,Academic Press,NY,1979 and 1981を参照のこと)。実施例に記載のように、単離または精製抗CS1抗体を、そのCS1の生物活性を中和する能力についてさらにスクリーニングすることができる。
【0131】
(CS1核酸の使用)
上記のように、実質的な核酸および/またはアミノ酸配列の相同性または表2のCS1配列への結合によってCS1配列を最初に同定する。このような相同性は、全核酸またはアミノ酸配列に基づくことができ、一般に、相同性プログラムまたはハイブリッド形成条件のいずれかを使用して決定する。典型的には、mRNA上の結合配列は、同一分子上に見出される。
【0132】
BLASTなどのアルゴリズムを使用して、配列の同一率を決定することができる。好ましい方法は、デフォルトパラメータを設定し、重複スパンおよび重複画分をそれぞれ1および0.125に設定したWU−BLAST−2のBLASTNモジュールを使用する。アラインメントには、整列させる配列へのギャップの導入が含まれ得る。さらに、記載の核酸よりも多いか少ないヌクレオチドを含む配列のために、総ヌクレオシド数に対する相同ヌクレオシド数に基づいて相同率を決定することができる。したがって、例えば、より短い配列中のヌクレオシド数を使用して、同定した配列相同性よりも短い配列相同性を決定する。
【0133】
1つの実施形態では、ハイブリッド形成研究によって核酸相同性を決定する。したがって、例えば、高ストリンジェンシー下で記載の核酸またはその相補物とハイブリッド形成するか、天然に存在するmRNAでも見出される核酸を、相同配列と見なす。別の実施形態では、より低いストリンジェントなハイブリッド形成条件を使用し、例えば、中程度または低ストリンジェンシー条件を使用することができる(Ausubel,前出およびTijssen,前出を参照のこと)。
【0134】
本発明のCS1核酸配列(例えば、表2中の配列)は、より大きな遺伝子のフラグメントであり得る(例えば、これらは核酸セグメントである)。本文脈中の「遺伝子」には、コード領域、非コード領域、ならびにコード領域および非コード領域の混合物が含まれる。したがって、本明細書中に提供した配列を使用し、より長い配列または全長配列の周知のクローニング技術を使用して、CS1遺伝子のいずれかの方向への伸長配列を得ることができる(Ausubelら,前出を参照のこと)。インフォマティクスによってマッチングを行い、1つの遺伝子に対応する複数の配列を含むように多数の配列を集団化することができる(UniGeneなどのシステム)。
【0135】
本発明のCS1核酸をいくつかの方法で使用する。1つの実施形態では、CS1の核酸プローブを作製し、以下に概説のスクリーニング法および診断法または投与(例えば、遺伝子療法、ワクチン、RNAi、および/またはアンチセンス適用)のために使用されるバイオチップに付着する。あるいは、スクリーニングまたは患者への投与のために、CS1タンパク質のコード領域を含むCS1核酸を、再度CS1タンパク質発現用の発現ベクターに移入することができる。
【0136】
別の実施形態では、CS1核酸(図に概説の両核酸配列および/またはその相補物)の核酸プローブを作製する。バイオチップに付着した核酸プローブを、CS1核酸(例えば、標的配列(例えば、サンドイッチアッセイにおけるサンプルの標的配列または他のプローブ配列のいずれか))と実質的に相補的になるようにデザインし、それにより、標的配列と本発明のプローブとがハイブリッド形成する。下記概説のように、この相補性は完全である必要はなく、標的配列と本発明の一本鎖核酸との間のハイブリッド形成を妨害する任意の数の塩基対ミスマッチが存在し得る。しかし、変異数が非常に多いので、最小ストリンジェントのハイブリッド形成条件下でさえハイブリッド形成は起こらず、配列は相補的標的配列ではない。したがって、本明細書中の「実質的に相補的な」は、本明細書中に概説のように、通常の反応条件下(特に、高ストリンジェンシー条件)でプローブが標的配列とハイブリッド形成するのに十分に相補的であることを意味する。
【0137】
核酸プローブは、一般に、一本鎖であるが、部分的一本鎖および部分的二本鎖であり得る。プローブの鎖形成性を、標的配列の構造、組成、および性質によって予想する。一般に、核酸プローブは、約8〜100塩基長の範囲であり、約10〜80塩基が好ましく、約30〜50塩基が最も好ましい。すなわち、一般に全遺伝子を使用しない。いくつかの実施形態では、数百塩基までの遥かに長い核酸を使用することができる。
【0138】
別の実施形態では、配列あたり1つを超えるプローブを使用し、重複プローブまたは標的の異なる部分に対するプローブを使用する。すなわち、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のプローブ(3つが好ましい)を使用して、特定の標的について冗長に構築する。プローブは、重複(例えば、共通のいくつかの配列を有する)または個別であり得る。いくつかの場合、感度をより高くするためにPCRプライマーを使用してシグナルを増幅することができる。
【0139】
核酸を、広範な種々の方法で固体支持体に付着するか固定することができる。「固定」および本明細書中の文法上の等価物は、概説の結合、洗浄、分析、および除去条件下で十分に安定な核酸プローブと固体支持体との間の会合または結合を意味する。結合は、典型的は、共有結合または非共有結合であり得る。「非共有結合」および本明細書中の文法上の等価物は、1つまたは複数の静電気的、親水性、および疎水性の相互作用を意味する。非共有結合には、分子(例えば、ストレプトアビジン)の支持体への共有結合およびビオチン化プローブのストレプトアビジンの非共有結合が含まれる。「共有結合」および本明細書中の文法上の等価物は、2つの部分(固体支持体およびプローブ)が少なくとも1つの結合(σ結合、π結合、および配位結合が含まれる)によって結合することを意味する。共有結合を、プローブと固体支持体との間で直接形成することができるか、架橋リンカーまたは固体支持体もしくはプローブもしくは両分子への特定の反応基の封入によって形成することができる。固定化はまた、共有性および非共有性相互作用の組み合わせを含み得る。
【0140】
一般に、広範な種々の方法においてプローブをバイオチップに付着することができる。本明細書中に記載のように、核酸を最初に合成してその後バイオチップに付着させるか、バイオチップ上で直接合成することができる。
【0141】
バイオチップは、適切な固体基質を含む。「基質」、「固体支持体」、または本明細書中の他の文法上の等価物は、核酸プローブの付着または会合のために修飾することができ、且つ少なくとも1つの検出方法を使用することができる物質を意味する。たいてい、基質は、それぞれの区画化および同定に適切な個別の各部位を含み得る。可能な基質数は非常に多く、ガラスおよび修飾または機能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、およびスチレンと他の物質とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)Jなどが含まれる)、多糖、ナイロンもしくはニトロセルロース、樹脂、シリカもしくはシリカベースの物質(シリコンおよび修飾シリコンが含まれる)、カーボン、金属、無機ガラス、プラスチックなどが含まれるが、これらに限定されない。一般に、基質により最適に検出可能であり、感知可能に蛍光を発しない。WO 0055627を参照のこと。
【0142】
一般に、基質は平面であるが、他の基質形状を同様に使用することができる。例えば、サンプル体積を最小にするために、プローブを流入サンプル用チューブの内面に配置することができる。同様に、基質は軟質である(軟質フォーム(特定のプラスチックから作製された独立気泡フォームが含まれる)など)。
【0143】
1つの実施形態では、バイオチップおよびプローブの表面を、その後の2者の付着のために化学官能基で誘導体化することができる。したがって、例えば、バイオチップを、化学官能基(アミノ基、カルボキシル基、オキソ基、およびチオール基が含まれるが、これらに限定されない)で誘導体化し、アミノ基が特に好ましい。これらの官能基を使用して、プローブをプローブ上の官能基を使用して付着することができる。例えば、アミノ基を含む核酸を、例えば、周知のリンカー(例えば、周知のホモまたはヘテロ二官能性リンカー)を使用して、アミノ基を含む表面に付着することができる(1994 Pierce Chemical Company catalog,technical section on cross−linkers,pages 155−200を参照のこと)。さらに、いくつかの場合、アルキル基(置換およびヘテロアルキル基が含まれる)などのさらなるリンカーを使用することができる。
【0144】
この実施形態では、オリゴヌクレオチドを合成し、その後固体支持体表面に付着する。5’または3’末端のいずれかを、固体支持体に付着させるか、結合を介して内部ヌクレオシドに付着することができる。別の実施形態では、固体支持体への固定は非常に強力であり得るが、非共有性である。例えば、ストレプトアビジンで共有結合的にコーティングされた表面に結合し、その結果付着するビオチン化オリゴヌクレオチドを作製することができる。
【0145】
あるいは、表面上にオリゴヌクレオチドを合成することができる。例えば、光重合化合物および技術を利用する光活性化技術を使用する。別の実施形態では、WO 95/25116;WO 95/35505;米国特許第5,700,637号および同第5,445,934号ならびに引用文献(その全てが明白に参考として援用される)などに記載の公知のフォトリソグラフィ技術を使用して核酸を合成することができ、これらの付着技術は、Affymetrix GENECHIP(登録商標)(DNマイクロアレイチップ)テクノロジーを基礎とする。
【0146】
たいてい、CS1関連配列の発現レベルを測定するために、増幅ベースのアッセイを行う。これらのアッセイを、典型的には、逆転写と組み合わせて行う。このようなアッセイでは、CS1会合核酸配列は、増幅反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応すなわちPCR)においてテンプレートとして作用する。定量的増幅では、増幅産物量は、元のサンプル中のテンプレート量に比例する。適切なコントロールとの比較により、CS1会合RNA量を測定する。増幅の定量方法は周知である。定量的PCRの詳細なプロトコールは、例えば、Innisら(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications Academic Pressに記載されている。
【0147】
いくつかの実施形態では、TAQMAN(登録商標)(蛍光オリゴヌクレオチドプローブ)ベースのアッセイを使用して、発現を測定する。TAQMAN(登録商標)ベースのアッセイは、5’蛍光色素および3’消光剤を含む蛍光性オリゴヌクレオチドプローブを使用する。プローブは、PCR産物とハイブリッド形成するが、3’末端の遮断剤によってそれ自体が伸長できない。次のサイクルでPCR産物増幅する場合、ポリメラーゼ(例えば、AMPLITAQ(登録商標)(DNAポリメラーゼ))の5’ヌクレアーゼ活性により、TAQMAN(登録商標)プローブが切断される。この切断によって5’蛍光色素と3’消光剤が分離し、それにより、増幅の関数として蛍光が増加する(例えば、Perkin−Elmerによって提供された文献を参照のこと)。
【0148】
他の適切な増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallace(1989)Genomics 4:560−569,Landegrenら(1988)Science 241:1077−1080およびBarringerら(1990)Gene89:117−122を参照のこと)、転写増幅(Kwohら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:1173−1177)、自律配列複製(Guatelliら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:1874−1878)、ドットPCR、リンカーアダプターPCRなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0149】
(核酸からのCS1タンパク質の発現)
1つの実施形態では、例えば、CS1タンパク質をコードするCS1核酸を使用して、CS1タンパク質を発現させ、その後下記の診断アッセイ用の試薬の開発に使用することができる種々の発現ベクターを作製する。タンパク質を発現するための発現ベクターおよび組換えDNA技術は周知である(例えば、Ausubel,前出およびFernandez and Hoeffler(eds.1999)Gene Expression Systems Academic Pressを参照のこと)。発現ベクターは、自律複製染色体外ベクターまたは宿主ゲノムに組み込まれるベクターのいずれかであり得る。一般に、これらの発現ベクターには、CS1タンパク質をコードする核酸に作動可能に連結された転写および翻訳調節核酸が含まれる。用語「調節配列」は、特定の宿主生物中での作動可能に連結されたコード配列の発現に使用されるDNA配列をいう。原核生物に適切な調節配列には、例えば、プロモーター、任意選択的にはオペレーター配列、およびリボゾーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを使用することが公知である。
【0150】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係におかれた場合に「作動可能に連結する」。例えば、プレシーケンスまたは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現する場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結し、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を与える場合にコード配列に作動可能に連結し、リボゾーム結合部位は、翻訳を促進するように配置された場合にコード配列と作動可能に連結する。一般に、「作動可能に連結された」は、連結したDNA配列が連続し、分泌リーダーの場合、連続し、且つ読み取り相に存在することを意味する。しかし、エンハンサーは連続する必要はない。典型的には、従来の制限部位でのライゲーションによって連結する。このような部位が存在しない場合、従来の慣例にしたがって、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを使用する。転写および翻訳調節核酸は、一般に、CS1タンパク質の発現のための使用される宿主細胞に適切である。種々の宿主細胞のための多数の適切な発現ベクター型および適切な調節配列が公知である。
【0151】
一般に、転写および翻訳調節配列には、プロモーター配列、リボゾーム結合部位、転写開始および終止配列、転写開始および終止配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列が含まれ得るが、これらに限定されない。1つの実施形態では、調節配列には、プロモーター配列ならびに転写開始および終止配列が含まれる。
【0152】
プロモーター配列は、構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれかであり得る。プロモーターは、天然に存在するプロモーターまたはハイブリッドプロモーターのいずれかである。1つを超えるプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターも公知であり、本発明で有用である。
【0153】
発現ベクターは、さらなるエレメントを含み得る。例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有することができるので、2つの生物中(例えば、発現のための哺乳動物または昆虫細胞およびクローニングおよび増幅用の原核宿主)で保持可能である。さらに、発現ベクターの組み込みのために、発現ベクターは、たいてい、宿主細胞ゲノムに相同な少なくとも1つの配列、好ましくは発現構築物に隣接した2つの相同配列を含む。ベクター中の封入のための適切な相同配列の選択によって、組み込みベクターを宿主細胞中の特定の遺伝子座に指向させることができる。組み込みベクター用の構築物が利用可能である。例えば、Fernandez and Hoeffler,前出;およびKitamuraら(1995)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 92:9146−9150を参照のこと。
【0154】
さらに、別の実施形態では、発現ベクターは、形質転換宿主細胞を選択するための選択マーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は周知であり、使用する宿主細胞によって変化する。
【0155】
通常、CS1タンパク質の発現を誘導するか生じさせるのに適切な条件下でのCS1タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞の培養によって、本発明のCS1タンパク質を産生する。CS1タンパク質発現に適切な条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択によって変化し、日常的な実験または最適化によって容易に確認される。例えば、発現ベクター中での構成性プロモーターの使用には宿主細胞の成長および増殖を至適化する必要がある一方で、誘導性プロモーターの使用には誘導のための適切な成長条件が必要である。さらに、いくつかの実施形態では、採取のタイミングが重要である。例えば、昆虫細胞発現で使用されるバキュロウイルス系は溶菌ウイルスであるので、採取期間の選択は産物の収率に極めて重要であり得る。
【0156】
適切な宿主細胞には、酵母、細菌、古細菌、真菌、昆虫、および動物の細胞(哺乳動物細胞が含まれる)が含まれる。サッカロミセス・セレビシエおよび他の酵母、E.コリ、バチルス・ズブチリス、Sf9細胞、C129細胞、293細胞、アカパンカビ、BHK、CHO、COS、HeLa細胞、HUVEC(ヒト臍静脈内皮細胞)、THP1細胞(マクロファージ細胞株)、ならびに種々の他のヒト細胞および細胞株は特に興味深い。
【0157】
1つの実施形態では、哺乳動物細胞中でCS1タンパク質を発現する。哺乳動物発現系を使用することができ、これにはレトロウイルス系およびアデノウイルス系が含まれる。1つの発現ベクター系は、一般に、PCT/US97/01019およびPCT/US97/01048などに記載のレトロウイルスベクター系である。ウイルス遺伝子はたいてい高度に発現され、広範な宿主範囲を有するので、哺乳動物ウイルス遺伝子由来のプロモーターが哺乳動物プロモーターとして特に使用される。例には、SV40初期プロモーター、マウス哺乳動物腫瘍ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびCMVプロモーター(例えば、Fernandez and Hoeffler,前出を参照のこと)が含まれる。典型的には、哺乳動物細胞によって認識される転写終結配列およびポリアデニル化配列は、翻訳終止コドンに対して3’側に存在し、それによりプロモーターエレメントと共にコード配列に隣接する調節領域である。転写ターミネーターおよびポリアデニル化シグナルの例には、SV40由来のものが含まれる。
【0158】
哺乳動物宿主ならびに他の宿主への異種核酸の移入方法が利用可能であり、使用される宿主細胞によって変化する。この技術には、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ウイルス感染、リポソームへのポリヌクレオチドのカプセル化、および核へのDNAの直接微量注入が含まれる。
【0159】
別の実施形態では、CS1タンパク質を、細菌系で発現させる。バクテリオファージ由来のプロモーターを使用することもできる。さらに、合成プロモーターおよびハイブリッドプロモーターも有用であり、例えば、tacプロモーターは、trpおよびlacプロモーター配列のハイブリッドである。さらに、細菌プロモーターには、細菌RNAポリメラーゼに結合して転写を開始する能力を有する天然に存在する非細菌起源のプロモーターが含まれ得る。機能的プロモーター配列に加えて、有効なリボゾーム結合部位が望ましい。発現ベクターには、細菌中でCS1タンパク質を分泌するシグナルペプチド配列が含まれ得る。タンパク質は、成長培地(グラム陽性菌)または細胞の内膜と外膜との間に存在する細胞膜周辺腔に分泌される(グラム陰性菌)。細菌発現ベクターには、形質転換された細菌株の選択を可能にするための選択マーカー遺伝子も含まれ得る。適切な選択遺伝子には、細菌にアンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、およびテトラサイクリンなどに対する薬物耐性を付与する遺伝子が含まれる。選択マーカーには、ヒスチジン、トリプトファン、およびロイシンの生合成経路などにおける生合成遺伝子も含まれる。これらの成分を、発現ベクターにアセンブリする。細菌用の発現ベクターは周知であり、特に、バチルス・ズブチリス、E.コリ、ストレプトコッカス・クレモリス、およびストレプトコッカス・リビダンス用のベクターが含まれる(例えば、Fernandez and Hoeffler,前出)。塩化カルシウム処理およびエレクトロポレーションなどの技術を使用して、細菌発現ベクターを細菌宿主細胞に形質転換する。
【0160】
1つの実施形態では、例えば、昆虫細胞の形質転換用発現ベクター(特に、バキュロウイルスベースの発現ベクター)を使用して、昆虫細胞中にCS1タンパク質を産生する。
【0161】
別の実施形態では、酵母細胞中にCS1タンパク質を産生する。酵母発現系は周知であり、サッカロミセス・セレビシエ、カンジダ・アルビカンス、C.マルトサ、ハンセヌラ・ポリモルファ、クルイベロマイセス・フラギリス、K.ラクチス、ピキア・グイレリモンジイ、およびP.パストリス、シゾサッカロマイセス・ポンベ、およびヤロウィア・リポリチカ用の発現ベクターが含まれる。
【0162】
利用可能な技術を使用して、CS1タンパク質を融合タンパク質として作製することもできる。したがって、例えば、モノクローナル抗体の作製のために、所望のエピトープが小さい場合、CS1タンパク質をキャリアタンパク質と融合して、免疫原を形成することができる。あるいは、発現を増加させるためまたは他の理由のために、CS1タンパク質を融合タンパク質として作製することができる。例えば、CS1タンパク質がCS1ペプチドである場合、発現させるためにペプチドをコードする核酸を他の核酸に連結することができる。検出エピトープタグ(例えば、FLAG、His6、myc、HAなど)と融合することができる。
【0163】
さらに別の実施形態では、CS1タンパク質を発現後に精製または単離する。どのような他の成分がサンプル中に存在するかおよび精製産物の要件(例えば、天然の高次構造または変性)に依存して、CS1タンパク質を種々の方法で単離または精製することができる。標準的な精製方法には、硫酸アンモニウム沈殿、電気泳動技術、分子技術、免疫学的技術、およびクロマトグラフィ技術(イオン交換、疎水性、親和性、および逆相HPLCクロマトグラフィが含まれる)、およびクロマトフォーカシングが含まれる。例えば、標準的な抗CS1タンパク質抗体カラムを使用してCS1タンパク質を精製することができる。タンパク質濃縮と組み合わせた限外濾過およびダイアフィルトレーションも有用である。例えば、Walsh(2002)Proteins:Biochemistry and Biotechnology Wiley;Hardinら(eds.2001)Cloning,Gene Expression and Protein Purification Oxford Univ.Press;Wilsonら(eds.2000)Encyclopedia of Separation Science Academic Press;およびScopes(1993)Protein Purification Springer−Verlagを参照のこと。必要な精製度は、CS1タンパク質の使用に依存して変化する。いくつかの例では、精製は必要ない。
【0164】
一旦発現され、必要に応じて精製されると、CS1タンパク質および核酸は、多数の用途において有用である。これらを、免疫選択薬、ワクチン試薬、スクリーニング剤、治療物質として使用することができるか、抗体産生のための転写または翻訳インヒビターとして使用することができる。
【0165】
(CS1タンパク質の変異型)
本明細書中で決定したところ、天然に存在する配列のアミノ酸変異型もCS1タンパク質の1つの実施形態に含まれる。好ましくは、変異型は、好ましくは野生型配列の約75%を超えて相同であり、より好ましくは約80%超、さらにより好ましくは約85%超、最も好ましくは90%超が相同である。いくつかの実施形態では、相同性は約93〜95%または98%もの高さである。核酸に関しては、この文脈における相同性は、配列類似性または同一性を意味し、同一性が好ましい。核酸相同性について上記で概説のように、標準手異な技術を使用してこの相同性を決定する。
【0166】
本発明のCS1タンパク質は、野生型アミノ酸配列よりも短くても長くてもよい。したがって、1つの実施形態では、本明細書中の野生型配列の一部またはフラグメントは、CS1タンパク質の定義の範囲内に含まれる。さらに、上記概説のように、本発明のCS1核酸を使用して、さらなるコード領域およびそれによるさらなるタンパク質配列を得ることができる。
【0167】
1つの実施形態では、CS1タンパク質は、野生型配列と比較して誘導体または変異CS1タンパク質である。すなわち、以下により完全に概説するように、誘導CS1ペプチドは、たいてい、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失、または挿入を含み、アミノ酸の置換が特に好ましい。CS1ペプチド内の多数の残基位置でアミノ酸の置換、挿入、または欠失が起こり得る。
【0168】
アミノ酸配列変異型も本発明のCS1タンパク質の1つの実施形態に含まれる。これらの変異型は、典型的には、以下の3つのクラスの1つまたは複数に含まれる:置換、挿入、または欠失変異型。これらの変異型を、通常、上記に概説するように、変異型をコードするDNAを産生するためのカセットもしくはPCR変異誘発または他の技術を使用したCS1タンパク質をコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的変異誘発およびその後の組換え細胞培養におけるDNAの発現によって調製する。しかし、確立された技術を使用したインビトロ合成によって、約100〜150残基までを有する変異CS1タンパク質フラグメントを調製することができる。アミノ酸配列変異型を、変異型の所定の性質(CS1タンパク質のアミノ酸配列の天然に存在する対立遺伝子または種間変異とは別の特徴)によって特徴づける。変異型は、典型的には、天然に存在するアナログに類似の定性的生物活性を示すが、特徴が改変された変異型を選択することもできる。
【0169】
アミノ酸配列の移入部位または移入領域はたいてい予め決定されるが、変異自体は予め決定する必要はない。例えば、所与の部位での変異能力を最適にするために、標的コドンまたは領域でランダム変異誘発を行い、発現したCS1変異型を所望の活性の最適な組み合わせについてスクリーニングすることができる。既知の配列を有するDNA中の所定の部位での置換変異のための技術は周知である(例えば、M13プライマー変異誘発およびPCR変異誘発)。CS1タンパク質活性のアッセイを使用して、変異をスクリーニングする。
【0170】
アミノ酸置換は、典型的には1残基であり、挿入は約1〜20アミノ酸の規模であるにもかかわらず、非常に大きな挿入も許容することができる。欠失は、一般に、約1〜20残基の範囲であるが、いくつかの場合、欠失はさらに大きくてよい。
【0171】
置換、欠失、挿入、またはその組み合わせを使用して、最終的な誘導体に到達することができる。一般に、分子の変化を最小にするために、これらの変化を少数のアミノ酸で行う。しかし、一定の環境下では、より大きな変化を許容することができる。CS1タンパク質の特徴の変化が小さい方が良い場合、一般に、記載のアミノ酸置換関係に従って置換する。
【0172】
変異型は、典型的には、本質的に同一の定量的生物活性を示し、天然に存在するアナログと同一の免疫応答を誘発するにもかかわらず、変異型はまた必要に応じてCS1タンパク質の特徴を改変するように選択する。あるいは、CS1タンパク質の生物活性が変化するように変異型をデザインすることができる。例えば、グリコシル化部位を、付加、変更、または除去することができる。
【0173】
機能または免疫学的同一性を、時折、上記よりも保存されない置換の選択によって実質的に変化させる。例えば、変化領域のポリペプチド骨格構造(例えば、αヘリックス構造またはβシート構造)、標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または側鎖の大部分により有意に影響を与える置換を行うことができる。一般に、ポリペプチドの性質を最も変化させると予想される置換は、以下の置換である:(a)親水性残基(例えば、セリンまたはトレオニン)を、疎水性残基(例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、またはアラニン)に置換すること(またはその逆)、(b)システインまたはプロリンを別の残基に置換すること(またはその逆)、(c)正電荷の側鎖を有する残基(例えば、リジン、アルギニン、またはヒスチジン)を、負電荷の残基(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)に置換すること(またはその逆)、(d)かさ高い側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)を、側鎖を含まない残基に置換すること(またはその逆)、または(e)ペプチド結合の回転自由度を変化させるプロリン残基を組み込むか置換すること。
【0174】
変異型は、典型的には、類似の定性的生物活性を示し、天然に存在するアナログと同一の免疫応答を誘発するにもかかわらず、変異型はまた、必要に応じて皮膚CS1タンパク質の特徴を改変するために選択される。あるいは、CS1タンパク質の生物活性が変化するように変異型をデザインすることができる。例えば、グリコシル化部位を変化させるか除去することができる。
【0175】
CS1ポリペプチドの共有結合の改変は本発明の範囲内に含まれる。1つの共有結合修飾の型には、CS1ポリペプチドのターゲティングアミノ酸残基とCS1ポリペプチドの選択された側鎖またはN末端残基もしくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤との反応が含まれる。二官能性剤での誘導体化は、例えば、抗CS1ポリペプチド抗体の精製方法またはスクリーニングアッセイでの使用のためのCS1ポリペプチドの水溶液支持マトリクスまたは表面への架橋に有用である。一般的に使用されている架橋剤には、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、4−アジドサリチル酸とのエステル)、ホモ二官能性イミドエステル(3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)などのジスクシンイミジルエステルが含まれる)、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタンなどの二官能性マレイミド、ならびにメチル−3−((p−アジドフェニル)ジチオ)プロピロイミデートなどの薬剤が含まれる。
【0176】
他の修飾には、グルタミニル残基およびアスパラギニル残基の対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基への脱アミド化、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリニル残基、トレオニル残基、またはチロシル残基の水酸基のリン酸化、リジン側鎖、アルギニン側鎖、およびヒスチジン側鎖のアミノ基のメチル化(例えば、pp.79−86,Creighton(1992)Proteins:Structure and Molecular Properties Freeman)、N末端アミンのアセチル化、ならびにC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
【0177】
本発明の範囲内に含まれるCS1ポリペプチドの別の共有結合修飾型は、ポリペプチドの天然のグリコシル化パターンが変化している。「天然のグリコシル化パターンの変化」は、本明細書中での目的のために、天然のCS1ポリペプチド配列で見出される1つまたは複数の炭水化物部分の欠失および/または天然のCS1ポリペプチド配列中に存在しない1つまたは複数のグリコシル化部位の付加を意味することを意図する。多数の方法でグリコシル化パターンを変化させることができる。CS1関連配列を発現するための異なる細胞型により、異なるグリコシル化パターンを得ることができる。
【0178】
CS1ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加を、そのアミノ酸配列の変化によって行うこともできる。例えば、(O結合グリコシル化部位について)天然のCS1ポリペプチド配列への1つまたは複数のセリン残基またはトレオニン残基の付加または置換によって変化させることができる。特に、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンが生成されるように予め選択した塩基でCS1ポリペプチドをコードするDNAを変異することによるDNAレベルでの変化によって、CS1アミノ酸配列を任意選択的に変化させることができる。
【0179】
CS1ポリペプチドの炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的または酵素的カップリングによるものである。例えば、WO87/05330;pp.259−306 in Aplin and Wriston(1981)CRC Crit.Rev.Biochem.を参照のこと。
【0180】
CS1ポリペプチドに存在する炭水化物部分を、化学的もしくは酵素的またはグリコシル化の標的として作用するアミノ酸残基をコードするコドンの変異置換によって除去することができる。化学的脱グリコシル化技術が適用可能である。例えば、Sojar and Bahl(1987)Arch.Biochem.Biophys.259:52−57およびEdgeら(1981)Anal.Biochem.118:131−137を参照のこと。種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用によって、ポリペプチドの炭水化物部分の酵素的切断を行うことができる。例えば、Thotakuraら(1987)Meth.Enzymol.138:350−359を参照のこと。
【0181】
CS1ポリペプチドの別の共有結合修飾型は、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号または同第4,179,337号に記載の様式での種々の非タンパク質性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレン)の1つへのCS1ポリペプチドの結合を含む。
【0182】
本発明のCS1ポリペプチドを、別の異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合したCS1ポリペプチドを含むキメラ分子を形成するための方法で修飾することもできる。1つの実施形態では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体と選択的に結合することができるエピトープを提供するタグポリペプチドとのCS1ポリペプチドの融合を含む。エピトープタグを、一般に、CS1ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に配置する。CS1ポリペプチドのこのようなエピトープタグ化形態を、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出することができる。また、エピトープタグの提供により、抗タグ抗体またはエピトープタグに結合する別の親和性マトリクス型を使用した親和性精製によってCS1ポリペプチドを容易に精製することができる。別の実施形態では、キメラ分子は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域とのCS1ポリペプチドの融合を含み得る。キメラ分子の二価形態のために、このような融合は、IgG分子のFc領域への融合であり得る。
【0183】
種々のタグポリペプチドおよびその各抗体が利用可能である。例には、ポリ−ヒスチジン(poly−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(poly−his−gly)タグ;HIS6および金属キレート化タグ、fluHAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5(Fieldら(1988)Mol.Cell.Biol.8:2159−2165);c−mycタグならびにその8F9、3C7、6E10、G4、B7、および9E10抗体(Evanら(1985)Molecular and Cellular Biology 5:3610−3616);ならびに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborskyら(1990)Protein Engineering 3(6):547−553)が含まれる。他のタグポリペプチドには、Flag−ペプチド(Hoppら(1988)BioTechnology 6:1204−1210);KT3エピトープペプチド(Martinら(1992)Science 255:192−194);チューブリンエピトープペプチド(Skinnerら(1991)J.Biol.Chem.266:15163−15166);ならびにT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz−Freyermuthら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6393−6397)が含まれる。
【0184】
下記概説のようにクローン化および発現した他の生物由来のCS1タンパク質も含まれる。したがって、プローブまたは縮重ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列を使用して、ヒトまたは他の生物由来の他の関連CS1タンパク質を見出すことができる。特に有用なプローブおよび/またはPCRプライマー配列には、CS1核酸配列の固有の領域が含まれる。好ましいPCRプライマーは、約15〜35ヌクレオチド長であり、約20〜30ヌクレオチド長が好ましく、必要に応じてイノシンを含むことができる。PCRの反応条件は十分に記載されている(例えば、Innis,PCR Protocols,前出)。
【0185】
さらに、例えば、伸長配列の解明、エピトープまたは精製タグの付加、他の融合配列の付加などによって、表2の核酸によってコードされるものよりも長いCS1タンパク質を作製することができる。
【0186】
CS1核酸によってコードされるCS1タンパク質を同定することもできる。したがって、本明細書中に概説のように、CS1タンパク質は、配列表の配列またはその相補物とハイブリッド形成する核酸によってコードされる。
【0187】
(CS1タンパク質への結合パートナー)
(CS1抗体)
本発明のCS1抗体は、CS1タンパク質に特異的に結合する。本明細書中の「特異的に結合する」は、抗体が、タンパク質に少なくとも0.1mM、より通常には少なくとも約1μM、好ましくは少なくとも約0.1μMまたはそれ以下、最も好ましくは0.01μMまたはそれ以下のKdで結合することを意味する。特異的標的に結合するが関連配列に結合しない選択性もたいてい重要である。
【0188】
1つの実施形態では、結合パートナー(例えば、免疫グロブリンの抗体)の生成にCS1タンパク質を使用する場合、CS1タンパク質は、全長タンパク質と少なくとも1つのエピトープまたは決定基を共有しなければならない。本明細書中の「エピトープ」または「決定基」は、典型的には、MHCの文脈で、抗体またはT細胞受容体を生成および/または結合するタンパク質部分を意味する。したがって、ほとんどの場合、より小さなCS1タンパク質に対して作製した抗体は、全長タンパク質(特に、線状エピトープ)に結合することができる。別の実施形態では、エピトープは固有である。したがって、固有のエピトープに対して生成した抗体は、交差反応性をほとんどまたは全く示さない。さらに別の実施形態では、エピトープを、表に記載のタンパク質配列から選択する。
【0189】
ポリクローナル抗体の調製方法が存在する(例えば、Coligan,前出およびHarlow and Lane,前出)。ポリクローナル抗体を、例えば、1回または複数回の免役化剤および(所望ならば)アジュバントの注射によって哺乳動物中で惹起することができる。典型的には、免役化剤および/またはアジュバントを、複数回の皮下注射または腹腔内注射によって哺乳動物に注射する。免役化剤には、表2の核酸によってコードされるタンパク質またはそのフラグメントもしくは融合タンパク質が含まれ得る。これは、免役化される哺乳動物で免疫原性を示すことが公知のタンパク質への免役化剤の抱合に有用であり得る。このような免疫原性タンパク質の例には、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、およびダイズトリプシンインヒビターが含まれるが、これらに限定されない。使用することができるアジュバントの例には、フロイント完全アジュバントおよびMPL−TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)が含まれる。種々の免疫化プロトコールを使用することができる。
【0190】
あるいは、抗体は、モノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体を、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495などに記載のハイブリドーマ法を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物を、典型的には、免役化剤に特異的に結合する抗体を産生するか産生することができるリンパ球を誘発するための免役化剤で免役化する。あるいは、リンパ球をインビトロで免役化することができる。免役化剤には、典型的には、表の核酸によってコードされたポリペプチドまたはそのフラグメントまたは融合タンパク質が含まれる。一般に、ヒト起源の細胞が望ましい場合にいずれかの末梢血リンパ球(「PBL」)を使用するか、非ヒト哺乳動物起源が望ましい場合に脾臓細胞またはリンパ節細胞を使用する。次いで、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使用して、リンパ球を不死化細胞株と融合してハイブリドーマ細胞を形成する(例えば、pp.59−103 in Goding(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice Academic Press)。不死化細胞株は、通常、哺乳動物細胞(特に、げっ歯類、ウシ、またはヒト起源の細胞)である。通常、ラット細胞またはマウス細胞を使用する。ハイブリドーマ細胞を、好ましくは非融合不死化細胞の成長または生存を阻害する1つまたは複数の物質を含む適切な培養培地で培養することができる。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の成長を防止するヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(「HAT培地」)を含む。
【0191】
1つの実施形態では、抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に結合特異性を有するか、同一抗原上の2つのエピトープに結合特異性を有するモノクローナル抗体(好ましくは、ヒト抗体またはヒト化抗体)である。1つの実施形態では、一方の結合特異性は、表の核酸によってコードされるタンパク質またはそのフラグメントに対する特異性であり、他方は、別の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質、受容体、または受容体サブユニット、好ましくはCS1に特異的なものに対する特異性である。あるいは、四量体型技術により、多価試薬を作製することができる。
【0192】
別の実施形態では、抗体は、低レベルのフコースを有するか、フコースを欠く。フコースを欠く抗体は、特に低用量で、ADCC(抗体依存性細胞傷害性)活性と相関していた。Shields,R.L.ら,(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740;Shinkawa,T.ら,(2003),J.Biol.Chem.278:3466。無フコース抗体の調製方法には、ラット骨髄腫YB2/0細胞(ATCC CRL 1662)での成長が含まれる。YB2/0細胞は、ポリペプチドのフコシル化に必要な酵素(α1,6−フコシルトランスフェラーゼ)をコードする低レベルのFUT8mRNAを発現する。
【0193】
ADCC活性の別の増加方法には、CS1抗体のFc部分の変異、特に、FcγR受容体の抗体親和性を増加させる変異が含まれる。FcγR結合の増加と変異Fcとの間の相関は、ターゲティング細胞傷害性ベースのアッセイを使用して証明されている。Shields,R.L.ら(2001)J.Biol.Chem 276:6591−6604;Prestaら(2002),Biochem Soc.Trans.30:487−490。特異的Fc領域変異によるADCC活性の増加方法には、234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330および332(Fc領域中の残基の番号づけは、KabatなどのEUインデックスの番号づけである)からなる群から選択される位置での少なくとも1つのアミノ酸置換を含むFc変異型が含まれる。好ましい実施形態では、Fc変異型は、L234D、L234E、L234N、L234Q、L234T、L234H、L234Y、L234I、L234V、L234F、L235D、L235S、L235N、L235Q、L235T、L235H、L235Y、L235I、L235V、L235F、S239D、S239E、S239N、S239Q、S239F、S239T、S239H、S239Y、V240I、V240A、V240T、V240M、F241W、F241L、F241Y、F241E、F241R、F243W、F243L、F243Y、F243R、F243Q、P244H、P245A、P247V、P247G、V262I、V262A、V262T、V262E、V263I、V263A、V263T、V263M、V264L、V264I、V264W、V264T、V264R、V264F、V264M、V264Y、V264E、D265G、D265N、D265Q、D265Y、D265F、D265V、D265I、D265L、D265H、D265T、V266I、V266A、V266T、V266M、S267Q、S267L、E269H、E269Y、E269F、E269R、Y296E、Y296Q、Y296D、Y296N、Y296S、Y296T、Y296L、Y296I、Y296H、N297S、N297D、N297E、A298H、T299I、T299L、T299A、T299S、T299V、T299H、T299F、T299E、W313F、N325Q、N325L、N3251、N325D、N325E、N325A、N325T、N325V、N325H、A327N、A327L、L328M、L328D、L328E、L328N、L328Q、L328F、L328I、L328V、L328T、L328H、L328A、P329F、A330L、A330Y、A330V、A330I、A330F、A330R、A330H、I332D、I332E、I332N、I332Q、I332T、I332H、I332Y、およびI332A(Fc領域中の残基の番号づけは、KabatなどのEUインデックスの番号づけである)からなる群から選択される少なくとも1つの置換を含む。Fc変異型を、V264L、V264I、F241W、F241L、F243W、F243L、F241L/F243L/V262I/V264I、F241W/F243W、F241W/F243W/V262A/V264A、F241L/V262I、F243L/V264I、F243L/V262I/V264W、F24lY/F243Y/V262T/V264T、F241E/F243R/V262E/V264R、F241E/F243Q/V262T/V264E、F241R/F243Q/V262T/V264R、F241E/F243Y/V262T/V264R、L328M、L328E、L328F、I332E、L3238M/I332E、P244H、P245A、P247V、W313F、P244H/P245A/P247V、P247G、V264I/I332E、F241E/F243R/V262E/V264R/I332E、F241E/F243Q/V262T/V264E/I332E、F241R/F243Q/V262T/V264R/I332E、F241E/F243Y/V262T/V264R/I332E、S298A/I332E、S239E/I332E、S239Q/I332E、S239E、D265G、D265N、S239E/D265G、S239E/D265N、S239E/D265Q、Y296E、Y296Q、T299I、A327N、S267Q/A327S、S267L/A327S、A327L、P329F、A330L、A330Y、1332D、N297S、N297D、N297S/I332E、N297D/I332E、N297E/I332E、D265Y/N297D/I332E、D265Y/N297D/T299L/I332E、D265F/N297E/I332E、L328I/I332E、L328Q/I332E、I332N、I332Q、V264T、V264F、V240I、V263I、V266I、T299A、T299S、T299V、N325Q、N325L、N3251、S239D、S239N、S239F、S239D/I332D、S239D/I332E、S239D/I332N、S239D/I332Q、S239E/I332D、S239E/I332N、S239E/I332Q、S239N/I332D、S239N/I332E、S239N/I332N、S239N/I332Q、S239Q/I332D、S239Q/I332N、S239Q/I332Q、Y296D、Y296N、F241Y/F243Y/V262T/V264T/N287D/I332E、A330Y/I332E、V264I/A330Y/I332E、A330L/I332E、V264I/A330L/I332E、L234D、L234E、L234N、L234Q、L234T、L234H、L234Y、L234I、L234V、L234F、L235D、L235S、L235N、L235Q、L235T、L235H、L235Y、L235I、L235V、L235F、S239T、S239H、S239Y、V240A、V240T、V240M、V263A、V263T、V263M、V264M、V264Y、V266A、V266T、V266M、E269H、E269Y、E269F、E269R、Y296S、Y296T、Y296L、Y296I、A298H、T299H、A330V、A330I、A330F、A330R、A330H、N325D、N325E、N325A、N325T、N325V、N325H、L328D/I332E、L328E/I332E、L328N/I332E、L328Q/I332E、L328V/I332E、L328T/I332E、L328H/I332E、L328I/I332E、L328A、I332T、I332H、I332Y、I332A、S239E/V264I/I332E、S239Q/V264I/I332E、S239E/V264I/A330Y/I332E、S239E/V264I/S298A/A330Y/I332E、S239D/N297D/I332E、S293E/N297D/I332E、S293D/D265V/N297D/I332E、S293D/D265I/N297D/I332E、S293D/D265L/N297D/I332E、S293D/D265F/N297D/I332E、S293D/D265Y/N297D/I332E、S293D/D265H/N297D/I332E、S293D/D265T/N297D/I332E、V264E/N297D/I332E、Y296D/N297D/I332E、Y296E/N297D/I332E、Y296N/N297D/I332E、Y296Q/N297D/I332E、Y296H/N297D/I332E、Y296T/N297D/I332E、N297D/T299V/I332E、N297D/T299I/I332E、N297D/T299L/I332E、N297D/T299F/I332E、N297D/T299H/I332E、N297D/T299E/I332E、N297D/A330Y/I332E、N297D/S298A/A330Y/I332E、S239D/A330Y/I332E、S239N/A330Y/I332E、S239D/A330L/I332E、S239N/A330L/I332E、V264I/S298A/I332E、S239D/S298A/I332E、S239N/S298A/I332E、S239D/V264I/I332E、S239D/V264I/S298A/I332E、およびS239D/264I/A330L/I332E(Fc領域中の残基の番号づけは、KabatなどのEUインデックスの番号づけである)からなる群から選択することもできる。PCTWO2004/029207,April8,2004(本明細書中で参考として援用される)も参照のこと。
【0194】
抗体関連ADCC活性を、損傷時に原形質膜に急速に放出される上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出の測定によってモニタリングおよび定量することができる。
【0195】
抗体処置を使用した細胞の細胞傷害性を促進するための別の実施形態には、細胞死に至る抗体結合細胞へのシグナル伝達カスケードの抗体媒介刺激が含まれる。さらに、(例えば、NK細胞による)先天性免疫系の抗体媒介刺激により、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞を死滅させることもできる。
【0196】
(診断への適用のためのCS1配列の検出)
1つの態様では、自己免疫障害または癌(例えば、骨髄腫)の表現型における異なる細胞状態についての遺伝子のRNA発現レベルを決定する。発現プロフィールを得るために、正常組織(例えば、障害を罹患していない)および罹患組織の遺伝子の発現レベル(および、いくつかの場合、以下に概説のように、予後に関する障害の重症度の変化について)を評価する。特定の細胞状態または発生時点の遺伝子発現プロフィールは、本質的に、細胞の状態の「フィンガープリント」である。2つの状態は、同様に発現した特定の遺伝子を有し得るが、多数の遺伝子の評価により、細胞状態を反映する遺伝子発現プロフィールを同時に作製可能である。異なる状態の細胞の発現プロフィールの比較により、これらの各状態での遺伝子の重要な情報(遺伝子の上方および下方制御が含まれる)が得られる。次いで、組織サンプルが正常組織または罹患組織の遺伝子発現プロフィールを有するかどうかを診断または確認することができる。これにより、関連病態の分子診断が得られる。
【0197】
「異なる発現」または本明細書中で使用される文法上の等価物は、細胞および組織内およびその間の一過性および/または細胞遺伝子発現の定性的または定量的相違をいう。したがって、異なって発現した遺伝子は、例えば、正常組織と罹患組織との間でその発現が定性的に変化し得る(活性化または不活化が含まれる)。遺伝子は、別の状態と比較して特定の状態でオンまたはオフになり得るので、2またはそれ以上の状態を比較することができる。定量的に調節された遺伝子は、状態内または細胞型内で標準的な技術で検出可能な発現パターンを示す。いくつかの遺伝子は、一方の状態または細胞型で発現するが、その両方では発現しない。あるいは、例えば、発現が増減する(例えば、遺伝子発現が上方制御される場合は転写物量が増加し、下方制御される場合は転写物量が減少する)という点で、発現の相違は定量的であり得る。発現が異なる程度は、以下に概説のように、Affymetrix GENECHIP(登録商標)(DNAマイクロチップアレイ)発現アレイなどの使用による標準的な特徴づけ技術による定量に十分な大きさであればよい。Lockhart(1996)Nature Biotechnology 14:1675−1680を参照のこと。他の技術には、定量的逆転写酵素PCR、ノーザン分析、およびRNアーゼ保護が含まれるが、これらに限定されない。上記概説のように、好ましくは、発現の変化(例えば、上方制御または下方制御)は、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約150%、より好ましくは少なくとも約200%であり、300%から少なくとも1000%までが特に好ましい。
【0198】
遺伝子転写物またはタンパク質レベルで評価することができる。遺伝子発現量を遺伝子転写物のRNAまたはDNA等価物の核酸プローブを使用してモニタリングすることができ、遺伝子発現レベルまたは最終遺伝子産物自体(タンパク質)の量を、例えば、CS1タンパク質に対する抗体および標準的な免疫アッセイ(ELISAなど)または他の技術(質量分析、二次元ゲル電気泳動アッセイなどが含まれる)を使用してモニタリングすることができる。CS1に対応するタンパク質(例えば、疾患表現型において重要であると同定されたタンパク質)を、疾患診断試験で評価することができる。別の実施形態では、多数の遺伝子について同時に遺伝子発現のモニタリングを行う。複数のタンパク質発現を同様にモニタリングすることができる。
【0199】
この実施形態では、特定の細胞中のCS1配列の検出および定量のために、CS1核酸プローブを、本明細書中に概説のようにバイオチップに付着させる。アッセイを、以下の実施例にさらに記載する。PCR技術を使用して、より高い感度を得ることができる。
【0200】
1つの実施形態では、CS1をコードする核酸を検出する。CS1タンパク質をコードするDNAまたはRNAを検出することができるにもかかわらず、CS1タンパク質をコードするmRNAを検出する方法が特に興味深い。mRNAを検出するためのプローブは、mRNAと相補的であり、且つハイブリッド形成するヌクレオチド/デオキシヌクレオチドプローブであり、オリゴヌクレオチド、cDNA、またはRNAが含まれるが、これらに限定されない。プローブはまた、本明細書中に定義の検出可能な標識を含まなければならない。1つの方法では、ナイロンメンブレンなどの固体支持体上への試験すべき核酸の固定およびプローブとサンプルとのハイブリッド形成の後にmRNAを検出する。非特異的結合プローブを除去するための洗浄後、標識を検出する。別の方法では、in situでmRNAの検出を行う。この方法では、浸透した細胞または組織サンプルを、プローブと標的mRNAとのハイブリッド形成に十分な時間検出可能に標識された核酸プローブと接触させる。非特異的結合プローブを除去するための洗浄後、標識を検出する。例えば、骨髄腫タンパク質をコードするmRNAと相補的なジゴキシゲニン標識リボプローブ(RNAプローブ)を、ジゴキシゲニンと抗ジゴキシゲニン二次抗体との結合によって検出し、ニトロブルーテトラゾリウムおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェートで発色させる。
【0201】
別の実施形態では、本明細書中に記載の3つのタンパク質クラス由来の種々のタンパク質(分泌タンパク質、膜貫通タンパク質、または細胞内タンパク質)を、診断アッセイで使用する。CS1タンパク質、抗体、核酸、修飾タンパク質、およびCS1配列を含む細胞を、診断アッセイで使用する。各遺伝子レベルまたは対応するポリペプチドレベルでこれを行うことができる。1つの実施形態では、好ましくは発現プロフィール遺伝子および/または対応するポリペプチドをモニタリングするための高処理スクリーニング技術と組み合わせて発現プロフィールを使用する。
【0202】
本明細書中に記載および定義するように、CS1タンパク質は、SLE、RA、およびIBDなどの自己免疫障害、ならびに骨髄腫および形質細胞性白血病などの癌の疾患マーカーとして適用される。さらに、CS1は、予後または診断目的のマーカーとして適用される。推定罹患組織中のこれらのタンパク質の検出により、このような病態を検出、予後、または診断ならびに治療ストラテジーの選択が可能である。1つの実施形態では、抗体を使用してCS1を検出する。好ましい方法は、ゲル(典型的には、変性および還元タンパク質ゲルであるが、別のゲル型(等電点電気泳動ゲルなどが含まれる)も可能である)での電気泳動によってサンプルからタンパク質を分離する。タンパク質の分離後、例えば、CS1に対して惹起された抗体での免疫ブロッティングによってCS1を検出する。
【0203】
別の方法では、CS1に対する抗体は、in situ画像化技術(例えば、組織学)で適用される。例えば、Asaiら(eds.1993)Methods in Cell Biology:Antibodies in Cell Biology(vol.37)Academic Pressを参照のこと。この方法では、細胞を、骨髄腫タンパク質に対する1つから多数の抗体と接触させる。非特異的抗体結合を除去するための洗浄後、抗体の存在を検出する。1つの実施形態では、検出可能な標識を含む二次抗体とのインキュベーションによって抗体を検出する。別の方法では、CS1に対する一次抗体は、検出可能な標識(例えば、基質上で作用することができる酵素マーカー)を含む。別の実施形態では、各一次抗体はそれぞれ異なる検出可能な標識を含む。この方法は、特に、CS1と上記病態の他のマーカーとの同時スクリーニングで適用される。多数の他の組織学的画像化技術も本発明で提供する。
【0204】
1つの実施形態では、異なる波長の放射を検出および区別する能力を有する蛍光光度計で標識を検出する。さらに、この方法では蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用することができる。
【0205】
別の実施形態では、血液、血清、血漿、便、および他のサンプル由来の抗体は、SLE、RA、およびIBDなどの自己免疫障害ならびに骨髄腫および形質細胞性白血病などの癌の診断で適用される。したがって、このようなサンプルは、CS1の存在を探索または試験すべきサンプルとして有用である。抗体を使用して、以前に記載の免疫アッセイ技術(ELISA、免疫ブロッティング(ウェスタンブロッティング)、免疫沈降、およびBIACOREテクノロジーなどが含まれる)によってCS1を検出することができる。逆に、抗体の存在は、内因性CS1タンパク質に対する免疫応答を示し得る。
【0206】
別の実施形態では、標識CS1核酸プローブの組織アレイへのin situハイブリッド形成を行う。例えば、組織サンプルのアレイ(罹患組織および/または正常組織が含まれる)を作製する。次いで、in situハイブリッド形成(例えば、Ausubel,前出を参照のこと)を行う。個体と標準との間のフィンガープリントを比較する場合、診断、予後、または予想は所見に基づき得る。診断を示す遺伝子は予後を示す遺伝子と異なっていてよく、細胞状態の分子プロファイリングによって反応性病態と難治性病態とを区別することができるか、結果を予想することができることがさらに理解される。
【0207】
1つの実施形態では、CS1タンパク質、抗体、核酸、修飾タンパク質、およびCS1配列を含む細胞を、予後アッセイで使用する。上記のように、長期予後に関する病態、臨床、病理学的、または他の情報に相関する遺伝子発現プロフィールを作製することができる。また、タンパク質または遺伝子レベルでこれを行うことができ、遺伝子の使用が好ましい。1つまたは複数の遺伝子が種々の組み合わせで有用であり得る。上記のように、組織または患者におけるCS1配列の検出および定量のためにCS1プローブをバイオチップに付着させることができる。診断のために上記概説のようにアッセイを進める。PCR法により、より高感度且つ正確に定量することができる。
【0208】
予後アッセイで有用な遺伝子は、患者の疾患悪性度によって異なって発現する遺伝子である。1つの実施形態では、遺伝子は、患者の悪性度によって固有に発現し得る。別の実施形態では、患者の悪性度によって異なるレベルで発現し得る。例えば、骨髄腫では、疾患の範囲および位置にしたがって以下の3つの異なる悪性度に分類される:悪性度I、II、およびIII。悪性度Iでは、症状が軽微であるか存在せず、多数の患者は骨髄腫の症状を示さない。腫瘍細胞の存在で陽性と診断される。しかし、赤血球数は正常であるか正常範囲よりわずかに低く、血中カルシウムの増加は検出不可能であり、血中および尿中のMタンパク質レベルは非常に低く、X線では検出可能な骨画像は認められない。悪性度IIでは、より多数の癌細胞が蔓延している。腎機能が影響を受け、ほとんどの患者の予後診断は悪化する。悪性度IIIでは、貧血、高カルシウム血症、骨損傷の進行、および高レベルの血中および尿中Mタンパク質が認められる。自己免疫障害におけるタンパク質発現と異なる悪性度との相関はまた、このような障害の予後の決定で有用であることが明らかであり得る。固有に発現するか悪性度によって異なる発現レベルを有する、異なる悪性度で発現した遺伝子の相関を使用して、患者の寛解誘導の実現可能性を決定することができる。骨髄腫患者がほとんど症状を示さないより初期の悪性度でこれは特に有用である。さらに、β−2ミクログロブリン(腎臓損傷の指標)ならびに高レベルの血清アルブミンおよび乳酸デヒドロゲナーゼなどの長期合併症の発症を示す発現遺伝子も予後ツールとして有用であり得る。
【0209】
固有に発現するか悪性度によって異なる発現レベルを有する、異なる悪性度で発現した遺伝子の相関を、本発明に開示した治療法を使用した治療有効性を決定するためにモニタリングすることもできる。例えば、本発明のアンタゴニストで治療した患者を、マーカー(例えば、CS1が含まれる)または障害特異的マーカーと組み合わせたCS1のモニタリング(例えば、骨髄腫治療についてのMタンパク質のモニタリング)によって、アンタゴニストの治療有効性をモニタリングすることができる。これらの特異的マーカーのモニタリングは、本発明の治療有効性の決定ならびに本発明の異なる指標についての投薬量および治療方法の検討で重要である。
【0210】
(インビボモデル系としての疾患の誘導)
(炎症性腸疾患)
炎症性腸疾患の病理学的プロセスの調査のためのインビボ実験モデルは開発されている。Sartor RB,Aliment.Pharmacol.Ther.11:89−96(1997)。例えば、炎症性腸疾患遺伝子が破壊されているか、炎症性腸疾患遺伝子が挿入されているノックアウトトランスジェニックマウスを作製することができる。相同組換えによるマーカー遺伝子または他の異種遺伝子のマウスゲノム中の内因性炎症性腸疾患遺伝子部位への挿入によってノックアウトトランスジェニックマウスを作製することができる。このようなマウスを、内因性炎症性腸疾患遺伝子の炎症性腸疾患遺伝子の変異体との置換または内因性炎症性腸疾患遺伝子の変異(例えば、発癌物質への曝露)によって作製することもできる。
【0211】
DNA構築物を、胚幹細胞の核に移入する。新たに操作した遺伝子損傷を含む細胞を、宿主マウスの胚に注射し、レシピエント雌に再移植する。いくつかのこれらの胚は、部分的に変異細胞株に由来する生殖細胞を有するキメラマウスに成長する。したがって、キメラマウスの交配によって、移入された遺伝子損傷を含む新規のマウス系統を得ることが可能である(例えば、Capecchiら(1989)Science 244:1288−1292を参照のこと)。キメラターゲティングマウスは、Hoganら(1988)Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual CSH Press;およびRobertson(ed.1987)Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach IRL Press,Washington,D.C.に由来し得る。
【0212】
動物モデルの非遺伝子操作を使用して他のモデルを構築することができる。特に、小分子スクリーニングにおいて1つのモデルが広範に使用されている。このモデルは、ハプテン2,4−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)溶液での単回結腸内攻撃誘発によって、ラットまたはマウスに大腸炎を誘導する。Morris GPら,Gastroenterology 96:795−803(1989);Boughton−SmithNK,Br.J.Pharmacol.94:65−72(1988)。TNBSでの処置により激症性局所炎症反応が得られ、これは2〜3日目にピークに達し、21日目まで持続し得るが、攻撃誘発の強さに依存する。
【0213】
TNBS処置によって得られた炎症反応は、クローン病の多数の巨視的、組織学的、および免疫学的特性を再現すると考えられる。Grisham MBら,Gastroenterology 101:540−547(1991);Yamada Yら,Gastroenterology 102:524−534(1992);Torres MIら,Dig.Dis.Sci 44:2523−29(1999);Neruath M,FussI,Strober W,Int.Rev.Immunol.19:51−62(2000)。貫壁性炎症および腸壁の肥厚を伴う開放性潰瘍形成が認められる。組織学的特徴には、陰窩構造の歪み、陰窩萎縮、肉芽腫、巨細胞、基底リンパ球凝集、および炎症性浸潤の存在が含まれる。
【0214】
結腸炎症を研究および立証し、炎症性腸疾患の局面に取り組むためにモデルが使用されている。Hoffman P etal.,Gut 41:195−202(1997);Jacobson K,McHughK,Collins SM,Gastroenterology 112:156−62(1997)。
【0215】
他の動物モデルには、HLA−B27 トランスジェニックラット(Hammer REら,Spontaneous inflammatory disease in transfenic rats expressing HLA−B27 and Human b2M:An animal model of HLA−B27 associated human disorders,Cell 63:1088−1112(1990))、トランスジェニックIL−2欠損マウス(Baumgart DCら,Mechansisms of intestinal epithelial cell injury and colitis in interleukin 2 deficient mice,Cell Immunol.187:52−66(1998))、mdrla欠損マウス(Panwala CMら,A Novel Model of Inflammatory Bowel Disease:Mice deficient for the multiple drug resistance gene,mdrla,spontaneously develop colitis,J.Immunol.161:5733−44(1998))、およびIL10欠損マウス(Freeman HJ,Studies on the interleukin−10 gene in animal models of colitis,Canadian Gastroenterology(2003))が含まれる。
【0216】
(骨髄腫)
骨髄腫の病理学的プロセスの調査のためのインビボ実験モデルは開発されている。Sartor RB,Aliment.Pharmacol.Ther.11:89−96(1997)。例えば、骨髄腫遺伝子が破壊されているか、骨髄腫遺伝子が挿入されているノックアウトトランスジェニックマウスを作製することができる。相同組換えによるマーカー遺伝子または他の異種遺伝子のマウスゲノム中の内因性骨髄腫遺伝子部位への挿入によってノックアウトトランスジェニックマウスを作製することができる。このようなマウスを、内因性骨髄腫遺伝子の骨髄腫遺伝子の変異体との置換または内因性骨髄腫遺伝子の変異(例えば、発癌物質への曝露)によって作製することもできる。
【0217】
DNA構築物を、胚幹細胞の核に移入する。新たに操作した遺伝子損傷を含む細胞を、宿主マウスの胚に注射し、レシピエント雌に再移植する。いくつかのこれらの胚は、部分的に変異細胞株に由来する生殖細胞を有するキメラマウスに成長する。したがって、キメラマウスの交配によって、移入された遺伝子損傷を含む新規のマウス系統を得ることが可能である(例えば、Capecchiら(1989)Science 244:1288−1292を参照のこと)。キメラターゲティングマウスは、Hoganら(1988)Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual CSH Press;およびRobertson(ed.1987)Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach IRL Press,Washington,D.C.に由来し得る。
【0218】
動物モデルの非遺伝子操作を使用して他のモデルを構築することができる。例えば、C57BL/6JマウスへのB細胞腫瘍(例えば、LLC細胞)の注射により、肺転移を誘導することができる。他の動物モデルは、SCIDマウスを使用し、骨髄腫様特徴を誘導するために、B細胞腫瘍株(例えば、HsSultan細胞(ATCC)または多発性骨髄腫株(例えば、L363、LP−1、OPM−2、またはRPMI8226であるが、これらに限定されない)を注射する。さらに他の動物モデルには、NOD/SCIDマウスの皮下部位へのヒト胎児骨(FB)の移植およびその後の多発性骨髄腫患者から得た原発性骨髄腫単核細胞とFBとのインキュベーションによって作製されたヒト多発性骨髄腫のNOD/SCIDマウスモデルが含まれる。Shang−Yi H.ら,Amer.J.Invest.Pathol.164:747−756(2004)を参照のこと。マウス形質細胞腫モデル(その形成はプリスタンオイル(2,6,10,12−テトラメチルペンタデカン)処理によって誘導される)も使用することができる。さらに、SCID、SCID/ベージュ、またはNOD/SCIDマウスの骨髄腫細胞が骨髄に直接注射されたマウスモデル(同所注射モデル)も使用することができる。
【0219】
骨髄腫細胞などの形質転換された細胞は、その正常な対応物よりも大量の一定の因子(以後、「骨髄腫特異的マーカー」)を放出する。例えば、骨髄腫細胞の発現において、CD38、CD9、CD10、HLA−DR、およびCD20が増加する。Ruiz−Arugelles GJ and San Miguel JF,Cell Surface Markers in Multiple Myeloma,Mayo Clin.Proc.69:684−90(1994)。
【0220】
これらの因子の放出を測定する種々の技術は、Freshney(1998),前出に記載されている。Unkelessら(1974)J.Biol.Chem.249:4295−4305;Strickland and Beers(1976)J.Biol.Chem.251:5694−5702;Whurら(1980)Br.J.Cancer 42:305−312;Gullino”Angiogenesis,tumor vascularization,and potential interference with tumorgrowth”pp.178−184 in Mihich(ed.1985)Biological Responses in Cancer Plenum;Freshney(1985)Cancer Res.5:111−130も参照のこと。
【0221】
(治療方法)
(自己免疫疾患の治療)
1つの態様では、本発明は、白血球を本明細書中に記載のCS1のアンタゴニストに接触させる工程を含む、白血球の増殖、付着、分化、活性化、および/または同時活性化を減少させる方法に関する。
【0222】
別の態様では、本発明は、白血球を本明細書中に記載のCS1のアンタゴニストに接触させる工程を含む、リンパ球(B細胞など)による免疫グロブリンの分泌(または産生)を減少させる方法に関する。本発明のアンタゴニストは、免疫グロブリン(IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEなど)の産生を少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、または50%減少させることができる。第1の用量の抗体の投与前(0日目)の免疫グロブリン濃度を投与後(x日目)の免疫グロブリン濃度から引き、これを第1の用量前(0日目)の免疫グロブリン濃度で割り、100を掛けることにより変化率を計算する(例えば、[(x日目−0日目)/0日目]×100)。
【0223】
さらに別の態様では、本発明は、細胞を本明細書中に記載のCS1に対する抗体と接触させる工程を含む、CS1を発現する細胞のアポトーシスまたは細胞溶解を誘導する方法に関する。好ましい実施形態では、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を介して誘導される。一般に、本発明の抗体は、エフェクター細胞(ナチュラルキラー細胞またはマクロファージなど)の存在下で標的細胞(CS1を発現する細胞)の表面上の抗原に結合する。エフェクター細胞上のFc受容体は、結合した抗体を認識する。Fc受容体の架橋は、エフェクター細胞に細胞溶解またはアポトーシスによって標的細胞を死滅させるように合図する。溶解細胞からの標識または乳酸デヒドロゲナーゼの放出の検出または標的細胞の生存性の減少の検出(例えば、アネキシンアッセイ)によって細胞溶解を検出することができる。末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介ジゴキシゲニン−11−dUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイによってアポトーシスアッセイを行うことができる(Lazebnikら,Nature:371,346(1994))。Roche Applied Science(Indianapolis,IN)の細胞傷害性検出キットなどの当該分野で公知の検出キットによって細胞傷害性を直接検出することもできる。好ましくは、本発明の抗体は、標的細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または80%の細胞傷害性を誘導する。実施例に開示の方法によって比率を計算する。
【0224】
アンタゴニストを、インビトロ(白血球を培養する細胞培養環境へのアンタゴニストの添加など)、エキソビボ、またはインビボ(例えば、被験体へのアンタゴニストの投与)で白血球と接触させることができる。
【0225】
好ましい実施形態では、白血球は、a)活性化リンパ球(B細胞および/またはT細胞、好ましくはCD19
+B細胞および/またはCD3
+T細胞など)、b)CD14
+活性化細胞および/またはナイーブ細胞、c)活性化および/または非活性化樹状細胞、および/またはc)CD56
+NKおよび/またはNKT細胞である。
【0226】
好ましい態様では、本発明は、被験体に有効量のCS1のアンタゴニストを投与する工程を含む、必要とする被験体のB細胞による免疫グロブリン分泌を減少させる方法を提供する。
【0227】
別の好ましい態様では、本発明は、被験体に有効量のCS1のアンタゴニストを投与する工程を含む、必要とする被験体のCS1発現細胞の細部傷害性、細胞溶解、および/またはアポトーシスを誘導する方法を提供する。
【0228】
アンタゴニスト、好ましくは本発明の抗体を、自己免疫疾患(アジソン病、耳の自己免疫疾患、眼の自己免疫疾患(ブドウ膜炎など)、自己免疫性肝炎、クローン病、糖尿病(I型)、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身紅斑性狼瘡(SLE)、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、乾癬、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、潰瘍性大腸炎、および/または血管炎が含まれるが、これらに限定されない)の予防または治療に使用することができる。
【0229】
好ましい実施形態では、本発明の方法で予防および/または治療することができる自己免疫疾患は、SLE、RA、またはIBDである。SLE、RA、またはIBDの症状が発症した被験体への投与後、抗CS1抗体が症状の重症度を軽減することができるはずである。あるいは、被験体がSLE、RA、またはIBDの任意の臨床症状が発症する前に抗CS1抗体を被験体に投与することができる。このような抗体の予防的投与により、任意のSLE、RA、またはIBDを発症する被験体を完全に予防するか、少なくとも抗体治療を行わない病態ほど重篤な症状から被験体が予防されるはずである。当該分野で公知のSLE、RA、またはIBDの標準的な臨床試験(抗DNA抗体、タンパク尿、および患者の死亡率など)によって、SLE、RA、またはIBDの症状の重症度を測定することができる。
【0230】
治療方法を、通常、ヒト患者に適用するが、他の哺乳動物に適用することができる。
【0231】
(癌治療)
骨髄腫細胞を骨髄腫タンパク質のアンタゴニスト、好ましくは抗体または他のアンタゴニスト(本明細書中に記載のCS1抗体など)と接触させる工程を含む、骨髄腫細胞の増殖減少させるための治療方法も含まれる。例えば、抗体を、インビトロ(骨髄腫細胞を培養する細胞培養環境へのアンタゴニストの添加など)、エキソビボ、またはインビボ(例えば、被験体へのアンタゴニストの投与)で骨髄腫細胞と接触させることができる。別の態様では、本発明は、有効量の骨髄腫タンパク質アンタゴニストを被験体に投与する工程を含む、骨髄腫細胞の増殖を減少させる方法を提供する。
【0232】
1つの態様では、好ましくは本発明の抗体を、骨髄腫の予防または治療に使用することができる。骨髄腫の症状が発症した被験体への投与後、抗体またはアンタゴニストが症状の重症度を軽減することができるはずである。あるいは、被験体が骨髄腫の任意の臨床症状が発症する前に本発明の抗体を被験体に投与することができる。当該分野で公知の骨髄腫の標準的な臨床試験(骨密度X線分析、β−2ミクログロブリンレベル、または高カルシウム血症など)によって、骨髄腫の症状の重症度を測定することができる。治療方法を、通常、ヒト患者に適用するが、他の哺乳動物に適用することができる。
【0233】
さらに別の態様では、本発明は、細胞を本明細書中に記載のCS1に対する抗体に接触させる工程を含む、CS1を発現する細胞のアポトーシスまたは細胞溶解を誘導する方法に関する。好ましい実施形態では、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)によって誘導する。一般に、本発明の抗体は、エフェクター細胞(ナチュラルキラー細胞またはマクロファージなど)の存在下で標的細胞(CS1を発現する細胞)の表面上の抗原に結合する。エフェクター細胞上のFc受容体は、結合した抗体を認識する。Fc受容体の架橋は、エフェクター細胞に細胞溶解またはアポトーシスによって標的細胞を死滅させるように合図する。溶解細胞からの標識または乳酸デヒドロゲナーゼの放出の検出のまたは標的細胞の生存性の減少の検出(例えば、アネキシンアッセイ)によって細胞溶解を検出することができる。末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介ジゴキシゲニン−11−dUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイによってアポトーシスアッセイを行うことができる(Lazebnikら,Nature:371,346(1994))。Roche Applied Science(Indianapolis,IN)の細胞傷害性検出キットなどの当該分野で公知の検出キットによって細胞傷害性を直接検出することもできる。好ましくは、本発明の抗体は、標的細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または80%の細胞傷害性を誘導する。実施例に開示の方法によって比率を計算する。
【0234】
アンタゴニストを、インビトロ(白血球を培養する細胞培養環境へのアンタゴニストの添加など)、エキソビボ、またはインビボ(例えば、被験体へのアンタゴニストの投与)で白血球と接触させることができる。
【0235】
好ましい実施形態では、白血球は、a)活性化リンパ球(B細胞および/またはT細胞、好ましくはCD19
+B細胞および/またはCD3
+T細胞など)、b)CD14
+活性化細胞および/またはナイーブ細胞、c)活性化および/または非活性化樹状細胞、および/またはc)CD56
+NKおよび/またはNKT細胞である。
【0236】
好ましい態様では、本発明は、被験体に有効量のCS1のアンタゴニストを投与する工程を含む、必要とする被験体のB細胞による免疫グロブリン分泌を減少させる方法を提供する。このようなB細胞による免疫グロブリン分泌の減少は、骨髄腫の合併症(過粘稠血症候群が含まれる)の寛解の一助となり得る。
【0237】
本発明の別の好ましい態様は、有効量のCS1の抗体を被験体に投与する工程を含む、必要な被験体のCS1を発現する細胞の細胞傷害性、細胞溶解、および/またはアポトーシスの誘導方法を提供する。
【0238】
(治療薬の投与)
アンタゴニスト(例えば、本発明の抗体)の種々の投与方法が存在する。非経口投与が好ましい。抗体を、ボーラスとして患者に静脈内に投与するか、長期間の連続注入によるか、筋肉内、皮下、腹腔内、または脳脊髄内に投与することができる。経口経路、局所経路、吸入経路、または当業者に公知の他の送達手段も本発明に含まれる。
【0239】
本発明の薬学的組成物は、一般に、許容可能なキャリア、好ましくは水性キャリアに溶解したアンタゴニスト(例えば、抗体)またはそのカクテルの溶液を含む。種々の水性キャリア(例えば、注射用の水(WFI)またはリン酸、クエン酸、酢酸などで典型的にはpH5.0〜8.0、最も頻繁には6.0〜7.0に緩衝化し、そして/または等張にするために塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩を添加した水)を使用することができる。キャリアはまた、活性タンパク質を保護するためのヒト血清アルブミン、ポリソルベート80、糖、またはアミノ酸などの賦形剤を含み得る。これらの処方物中のアンタゴニスト(例えば、抗体)の濃度は、約0.1〜100mg/mlで広範に変化するが、たいてい1〜10mg/mlの範囲である。処方されたモノクローナル抗体は、非経口投与に特に有用であるが、静脈内注入、皮下、筋肉内、または静脈内注射によって投与することができる。非経口投与可能な組成物の実際の調製方法は当業者に公知であるか自明であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(15th Ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1980)(本明細書中で参考として援用される)により詳細に記載されている。本発明は、本明細書中に記載の抗体の任意の1つ含む薬学的組成物を提供する。
【0240】
CS1とその細胞基質との間の相互作用の阻害、罹患細胞の付着の阻害、または上記障害の臨床症状の防止および/または軽減を含む予防および/または治療上の処置のために組成物を投与することができる。これらの所望の効果の任意の1つを達成するための適量を、「有効量」と定義する。単回または複数回投与によって抗体を送達させることができる。
【0241】
疾患治療の目的で、アンタゴニスト(例えば、抗体)の適切な投薬量は、疾患の重症度および経路、患者の病歴および反応、抗体の毒性、および主治医の判断に依存する。1回または一連の治療で患者にアンタゴニストを適切に投与する。最初の候補投薬量を患者に投与することができる。当業者に公知の従来技術を使用した治療の進行状態のモニタリングによって適切な投薬量および治療計画を確立することができる。
【0242】
さらに、アンタゴニスト(抗体など)を、実質的に純粋な形態で単独で使用するか、当業者に公知の自己免疫疾患用治療薬と共に使用することができる。抗体での治療と組み合わせて使用することができる他の治療には、アンチセンス核酸分子または生物製剤(さらなる治療抗体など)の投与が含まれる。したがって、本発明の治療薬を、自己免疫疾患の別の治療薬を連続的または組み合わせて投与可能な様式で処方する。自己免疫疾患および骨髄腫の治療のために、たいてい抗体を1つまたは複数の他の免疫抑制薬および免疫調節薬の投与後または組み合わせて投与する。
【0243】
(診断および/または予後適用で使用するためのキット)
上記で示唆した診断および研究で使用するために、本発明はキットも提供する。診断および研究への適用では、このようなキットには、少なくとも1つの以下を含む:アッセイ試薬、緩衝液、CS1特異的核酸もしくは抗体、ハイブリッド形成プローブおよび/またはプライマー、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、ドミナントネガティブなCS1ポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、CS1関連配列の分子インヒビターなど。
【0244】
さらに、キットは、本発明の方法の実施のための説明書(例えば、プロトコール)を含む説明書類を含み得る。説明書類は、典型的には、文書または印刷物を含むが、これらに限定されない。本発明は、このような説明書を保存してエンドユーザーに伝達する媒体を意図する。このような媒体には、電子保存媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)および光媒体(例えば、CDROM)などが含まれるが、これらに限定されない。このような媒体は、このような説明書類を提供するインターネットサイトのアドレスを含み得る。
【0245】
本発明はまた、CS1関連配列のモジュレーターのスクリーニング用キットを提供する。このようなキットを、容易に利用可能な材料および試薬から調製することができる。例えば、このようなキットは、1つまたは複数の以下の材料を含み得る:CS1会合ポリペプチドまたはポリヌクレオチド、反応チューブ、およびCS1関連活性試験のための説明書。任意選択的に、キットは、生物活性CS1タンパク質を含む。意図するキットのユーザーおよびユーザーの特定のニーズに依存して、本発明にしたがって広範なキットおよび成分を調製することができる。診断は、典型的には、複数の遺伝子または産物の評価を含む。典型的には、遺伝子を、病歴または転帰データで同定することができる疾患の重要なパラメータとの相関に基づいて選択する。
【実施例】
【0246】
(実施例1:CS1の単離および同定)
正常な健常成体の末梢血由来のB細胞サブセット(ナイーブ対記憶細胞+血漿B細胞(plasma B cells))のcDNAサブトラクションライブラリーからCS1を同定した。CS1は、記憶細胞および血漿B細胞の間で優先的に発現する。下記のプロトコールによってサブトラクションライブラリーを作製した。
【0247】
(B細胞サブセットの単離:)
末梢血単核細胞(PBMC)を、標準的なFicll−hypaque勾配を使用して9人の健常な成人ドナーから単離した。下記の標準的な陰性選択プロトコールによりPBMCからB細胞を単離した。精製マウス抗ヒトCD2、CD3、CD4、CD14、CD16、CD56、CD66、およびグリコホリンAの抗体カクテル中でPBMCをインキュベートした。インキュベーションおよび洗浄後、ヤギ抗マウス磁性Dynalビーズを、7〜10ビーズ/細胞で添加した。その後、上清中の富化B細胞を遊離するために標準的なDynal磁性ホルダーを使用して抗体結合細胞を単離した。次いで、回収した上清を、RPMI+10%ウシ胎児血清(FBS)で洗浄した。
【0248】
(B細胞サブセット(ナイーブ対記憶細胞+血漿B細胞(plasma B cells))の分取:)
Dynal富化B細胞を、IgD−FITC、CD38−cychrome、CD19−APC、およびCD27−PEで染色し、その後標準的な染色プロトコールで染色した。ナイーブB細胞(IgD
+CD19
+CD38
int/−CD27
−)対記憶細胞および血漿B細胞(IgD
−CD19
+CD38
int/+CD27
+)の2つの個別の集団を、spectra physics社製の空冷アルゴンレーザ(488nm)および635nmのダイオードレーザならびにFITC(530/40nm)、PE(580/30nm)、APC(670/20nm)、およびサイクローム(PE−Cy5)(670/30nm)検出用のフィルターを備えたMoFlo High Performance Flow cytometer−MLSで分取した。分取したB細胞を、純度についてMoFlo cytometerで分析し、97%(記憶細胞および血漿B細胞)および98%(ナイーブB細胞)の純度であることが見出された。分取した細胞を、Trizol中に入れ、−70℃で保存した。
【0249】
(cDNAライブラリーの産生)
cDNAサブトラクションライブラリーを、標準的なRDA法(representational difference analysis)であるサブトラクションハイブリッド形成プロトコールの使用によって分取B細胞サブセットから作製した。サブトラクションライブラリーは、ナイーブcDNAを2回差し引く場合は記憶細胞+血漿B細胞cDNAライブラリーを含み、記憶+血漿cDNAを2回差し引く場合はナイーブB細胞cDNAライブラリーを含む。標準的な分子生物学技術を使用して、cDNAサブトラクションライブラリーを標準的なプラスミドベクターにライゲーションし、エレクトロコンピテントE.コリ(DH−10B)細胞に形質転換する。形質転換E.コリ細胞を、分泌抗体の存在下でLB寒天プレートにプレートした。1つの細菌コロニー(それぞれ1つの特異的インサートを示す)を、標準的なコロニーPCRを使用して増幅した。
【0250】
(差分発現のスクリーニングおよび確認)
cDNAサブトラクションライブラリーインサートを変性し、2つの同一のナイロンフィルターにブロッティングし、2つの異なる標識された変性プローブ−(記憶+血漿)−(ナイーブcDNA)(2回差し引く)およびナイーブ−(記憶+血漿)cDNA(2回差し引く)と個別にハイブリッド形成した。インサートが2つのプローブのうちの1つに選択的にハイブリッド形成する場合、サブトラクションライブラリーcDNAインサートを陽性と見なした。CS1のcDNAクローンは、(記憶+血漿)−ナイーブcDNAプローブ(2回差し引く)と選択的にハイブリッド形成した。
【0251】
(CS1の同定)
陽性クローンで形質転換した細菌細胞を成長させ、製造者のプロトコール(Qiagen,Valencia,Calfornia)にしたがって、Qiagen(登録商標)Mini−Prepキット(インビトロ診断調製物)を使用してDNAを単離した。精製プラスミドを配列決定し、DNA配列の同一性を、NCBIデータベース検索によって決定した。
【0252】
(CS1遺伝子発現の特徴づけおよび確認)
ドットブロット分析によって選択した陽性クローン(CS1が含まれる)の優先的発現を確認した。ナイロンフィルターにスポットして分取したナイーブ対記憶細胞+血漿B細胞から単離した等量の(非サブトラクション)cDNA(20ng)を、陽性クローンのために標識cDNAインサートとハイブリッド形成した。これらのアッセイでは、2つの個別のソート(n=9(健常成体)およびn=10健常成体、それぞれ純度は97%超および98%超)から得た末梢血B細胞サブセットからcDNAを合成した。フィルターを洗浄し、ハイブリッド形成プローブ由来のシグナルをオートラジオグラフィによって検出した。cDNAが分取したナイーブ対記憶細胞+血漿B細胞の両セットを超えて記憶細胞+血漿B細胞cDNAに選択的にハイブリッド形成する場合、クローンを陽性と見なす。
図1Aに示すように、データは、血漿および記憶B細胞中でCS1が選択的に発現することを示した。
【0253】
(CS1はリンパ組織で主に発現する)
ドットブロットを、Clontech(Palo Alto,California)から購入し、以下の組織:脾臓、リンパ節、骨髄、小腸、脳、肺、骨格筋、心臓、腎臓、および肝臓から作製したpolyA
+RNAから合成したcDNAから調製した。製造者の説明書(Boehringer−Mannheim DIGキット)にしたがって、ドットブロットをジゴキシゲニン(DIG)標識CS1 DNAを使用して探索し、化学発光(アルカリホスファターゼ標識抗DIG抗体およびCDP−Star)によって視覚化した。
図1Bに示すように、結果は、CS1は主にリンパ組織(脾臓、リンパ節、骨髄、および小腸−おそらくパイエル板中の残存リンパ球による)で発現し、他の非リンパ器官(脳、肺、骨格筋、心臓、腎臓、および肝臓)では存在しないか発現が低いことを示す。
【0254】
(実施例2:CS1の差分発現)
(ヒト細胞:)
末梢血単核細胞(PBMC)を、標準的なFicoll−hypaque勾配からの単離によって得た。次いで、単離PBMCを、新鮮な培養培地に2×10
6細胞/mlで再懸濁した。PBMCを、3μg/mlの濃度で3日間フィトヘムアグルチニン(PHA)または10μg/mlの濃度で8日間ヤマゴボウマイトジェン(PWM)で刺激した。非
刺激コントロールPBMCを、いかなる刺激も与えずに調製した。細胞を、10%FBS、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびグルコース添加剤を含むRPMI培地中、37℃の7%CO
2中で培養した。
【0255】
(マウス細胞)
2匹のBalb/cマウスから脾臓を得た。脾臓を、100ミクロンのフィルターに入れた。細胞をばらばらにし、PBSで洗浄し、1,500rpmで10分間遠心分離した。赤血球を、2mlの溶解緩衝液にて37℃で2分間溶解した。細胞を2回洗浄し、10mlの培地に再懸濁し、計数した。非刺激細胞の一部を直接凍結した。残りの細胞を、5μg/mlの濃度のconAで3日間または1μg/mlの濃度のLPSで3日間刺激した。細胞を、10%FBS、抗生物質、およびグルコース添加剤を含むDMEM培地中で培養した。
【0256】
(狼瘡患者対年齢適合健常個体由来のBリンパ球:)
FITC標識抗ヒトCD19抗体での細胞の染色によって、狼瘡患者および健常な個体の末梢血単核細胞からB細胞を分取した。実施例1に記載のように、MoFLo High Performance Flow Cytometer−MLSで細胞を分取した。RNA分析のために、細胞を滅菌培地に回収した。
【0257】
(リアルタイムPCRのための総RNA単離:)
細胞を1回洗浄し、Trizol(登録商標)(Life Technologies,Gaithersburg,Maryland)に入れ、製造者のプロトコールにしたがって総RNAを単離した。総RNAを、RNアーゼ無含有DNアーゼ(GenHunter,Nashville,Tennessee)で処理した。DNアーゼ消化RNAを、フェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで一晩沈殿させた。RNAを、75%エタノールで洗浄し、無ヌクレアーゼ水に溶解した。単離RNAを定量し、その完全性をアガロースゲルで分析した。
【0258】
(リアルタイムPCR:)
標準的なTaqman逆転写試薬(Applied Biosystems,Foster City,California)の使用によって、100μlの反応混合物中の狼瘡患者対健常な個体の分取Bリンパ球から総RNA(2μg)を逆転写した。Applied BiosystemsのSYBRグリーンPCRマスターミックスを使用して、PCR反応を準備した。狼瘡患者および健常個体のcDNA中でのCS1の発現レベルを試験するために、CS1プライマーをミックス中に組み込んだ。公開された配列(Genbankアクセッション番号XM−001635、AF390894)からCS1プライマーをデザインした。正規化のコントロールとしてβ−アクチンおよび18SrRNAプライマーを使用した。Applied Biosystemsから購入したPrimer Expressソフトウェアを使用して、プライマーをデザインした。PCR増幅産物は、CS1プライマーについては85bpであり、β−アクチンプライマーについては84bpであり、18SrRNAプライマーについては61bpであった。推奨プロトコールを使用して、Applied BiosystemsのgeneAmp5700SDSでリアルタイムPCRを行った。
【0259】
(新規のマウスLy9のリアルタイムPCR:)
標準的なTaqman逆転写試薬(Applied Biosystems)を使用して、100μlの反応混合物中でconA、LPS、および非刺激サンプルから総RNA(2μg)を逆転写した。Applied BiosystemsのSYBRグリーンPCRマスターミックスを使用して、PCR反応を準備した。公開された配列(Genbankアクセッション番号AF467909)から新規のマウスLy9に特異的なプライマーをデザインし、刺激対非刺激cDNAサンプル中の発現レベルを試験するために、混合物に組み込んだ。正規化のために18SrRNAプライマーを使用した。Applied Biosystemsから購入したPrimer Expressソフトウェアを使用して、プライマーをデザインした。PCR増幅産物は、マウスLy9プライマーについては65bpであり、18SrRNAプライマーについては61bpであった。推奨プロトコールを使用して、Applied BiosystemsのGeneAmp5700配列検出システムでリアルタイムPCRを行った。
【0260】
(マイクロアレイアッセイ:サンプル調製、標識マイクロチップ、およびフィンガープリント)
遺伝子チップを使用して、活性化および非活性化白血球集団の発現プロフィールを決定および分析した。Custom Affymetrix GeneChip(登録商標)オリゴヌクレオチドマイクロアレイにより、約35,000個の固有のmRNA転写物を調査可能である。
【0261】
記載のようにRNAを単離し、遺伝子チップ分析を行った(Henshallら(2003)Cancer Research 63:4196−4203;Henshallら(2003)Oncogene 22:6005−12;Glynneら(2000)Nature 403:672−676;Zhaoら(2000)Genes Dev.14:981−993(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0262】
・QiagenのRNEASY(登録商標)キットでの総RNAからのpolyA
+mRNAの精製または総RNAの浄化)(総RNAからのpolyA
+mRNAの精製
Oligotex懸濁液を37℃に加熱し、RNA添加の直前に混合した。溶離緩衝液を70℃でインキュベートした。緩衝液中に沈殿が存在する場合、2×結合緩衝液を65℃に加熱することに留意のこと。Oligotex Handbookの16ページの表2にしたがって、総RNAを、DEPC処理水、2×結合緩衝液、およびOligotexと混合した。混合物を65℃で3分間インキュベートし、その後室温で10分間インキュベートした。
【0263】
チューブを、14,000〜18,000gで2分間遠心分離した。遠心分離器が「ソフトな設定」を有する場合、これを使用すべきであることに留意のこと。Oligotexペレットを破壊することなく上清を除去した。Oligotexの喪失を減少させるために少量の溶液を静置することができる。一定の満足な結合およびpolyA
+mRNAの溶離が認められるまで、上清を保持しなければならない。
【0264】
ペレットを洗浄緩衝液OW2にゆっくりと再懸濁し、スピンカラムでピペッティングする。フルスピード(可能な場合、ソフト設定)で1分間スピンカラムを遠心分離した。遠心分離後、スピンカラムを新規の回収チューブに移し、洗浄緩衝液OW2にゆっくりと再懸濁し、本明細書中に記載のように再度遠心分離した。
【0265】
スピンカラムを新規のチューブに移し、20〜100μlの予め加熱した(70℃)溶離緩衝液で溶離した。上下のピペッティングでOligotex樹脂をゆっくりと再懸濁し、上記のように遠心分離した。新鮮な溶離緩衝液を使用して、溶離手順を繰り返した。さもなければ、溶離体積を小さくする必要がある場合、第1の溶離のみを使用することができる。
【0266】
ブランクとして希釈溶離緩衝液を使用して、吸光度を読み取った。
【0267】
・エタノール沈殿
cDNA合成を進行させる前に、mRNAを沈殿させた。いくつかの残存成分またはOligotex精製手順由来の溶離緩衝液は、mRNAの下流の酵素反応を阻害する。
【0268】
0.4倍体積の7.5M NH
4OAc+2.5倍体積の冷100%エタノールを溶離物に添加した。溶液を、−20℃で1時間から一晩(または−70℃で20〜30分間)沈殿させた。沈殿溶液を、1,4000〜16,000×gにて4℃で30分間遠心分離した。ペレットを0.5mlの80%エタノール(−20℃)で洗浄し、14,000〜16,000×gにて室温で5分間遠心分離した。80%エタノール洗浄を1回繰り返した。ペレットをフードで乾燥させた。(急激に吸引しないこと)。ペレットを、1μg/μlの濃度のDEPC・H
2Oに懸濁した。
【0269】
・QiagenのRNeasyキットを使用した総RNAの浄化
わずか100μgのRNAをRNeasyカラムに添加すればよい。無RNアーゼ水でサンプル体積を100μlに調整し、350μlの緩衝液RLTおよびその後250μlエタノール(100%)をサンプルに添加した。ピペッティング(遠心分離しないこと)によって溶液を混合し、その後サンプルをRNeasyミニスピンカラムに適用した。ミニスピンカラムを、10,000rpm超で15秒間遠心分離した。収率が心配な場合、カラムへの流入を繰り返して再度遠心分離することができる。
【0270】
カラムを新規の2ml回収チューブに移し、500μlの緩衝液RPEを添加し、10,000rpm超で15秒間遠心分離した。フロースルーを破棄した。500μlの緩衝液RPEをミニスピンカラムに再度添加し、10,000rpm超で15秒間遠心分離した。フロースルーを再度破棄し、最大速度で2分間遠心分離して、カラムのメンブレンを乾燥させた。カラムを新規の1.5ml回収チューブに移し、30〜50μlの無RNアーゼ水をカラムメンブレンに直接アプライした。カラムを10,000rpm超で1分間遠心分離し、溶離を繰り返した。
【0271】
吸光度を読み取った。必要に応じて、溶離液を酢酸アンモニウムおよび2.5倍体積の100%エタノールで沈殿させることができる。
【0272】
(Gibcoの「SUPERSCRIPT(登録商標)Choice System for cDNA Synthesis」キットを使用したcDNAの作製)
・第1のcDNA鎖の合成
出発物質として5μgの総RNAまたは1μgのpolyA+mRNAを使用した。総RNAのために、2μlのSUPERSCRIPT(登録商標)RT(cDNA合成のために逆転写酵素を使用するキット)を使用した(polyA+mRNAのために1μlのSUPERSCRIPT(登録商標)RTを使用する)。第1の鎖合成混合物の最終体積は、20μlにすべきである。RNAの体積は、10μlを超えてはならない。RNAを、1μlの100pmolT7−T24オリゴと70℃で10分間インキュベートした。氷上で、7μlの(4μlの5×第1の鎖の緩衝液、2μlの0.1M DTT、および1μlの10mM dNTP)混合物を添加した。混合物を37℃で2分間インキュベートし、SUPERSCRIPT(登録商標)RTを添加した。
【0273】
混合物を37℃で1時間インキュベートした。
【0274】
・第2の鎖の合成
第1の鎖の反応物を氷上においた。
混合物に以下を添加した。
91μl DEPC H
20
30μl5×第2の鎖の緩衝液
3μl lOmM dNTP混合物
1μl10U/μlE.コリ DNAリガーゼ
4μl10U/μlE.コリ DNAポリメラーゼ
1μl2U/μlRNアーゼH
2つを超えるサンプルが存在する場合、上記を混合物にすべきである。添加した混合物を、16℃で2時間インキュベートした。
【0275】
2μlのT4 DNAポリメラーゼを添加し、16℃で5分間さらにインキュベートした。反応停止のために10μlの0.5M EDTAを添加した。
【0276】
・cDNAの浄化
ゲルチューブ中でのフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)精製を使用して、cDNAを浄化した。
【0277】
PLG(フェーズロックゲル)チューブを、最大速度で30秒間遠心分離し、新規のPLGチューブに移した。同体積のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールを添加し、強く振った(ボルテックスしないこと)。チューブを最大速度で5分間遠心分離した。上部の水相の溶液を新規のチューブに移した。水溶液を、7.5倍体積5MのNH4Oacおよび2.5倍体積の100%エタノールの添加によってエタノール沈殿を行った。その直後にチューブを最大速度にて室温で20分間遠心分離した。上清を除去し、ペレットを80%冷エタノールで2回洗浄した。できるだけエタノールを除去し、ペレットを風乾した。ペレットを、3μlの無RNアーゼ水に再懸濁した。
【0278】
・インビトロ転写(IVT)およびビオチンでの標識
1.5μlのcDNAを、薄壁PCRチューブにピペッティングした。NTP標識混合物を室温でPCRチューブに添加した。
NTP標識混合物:
2μl T7 1O×ATP(75mM)(Ambion)
2μl T7 10×GTP(75mM)(Ambion)
1.5μl T7 lO×CTP(75mM)(Ambion)
1.5μl T7 lO×UTP(75mM)(Ambion)
3.75μl 10 mM Bio−11−CTP
0.75μl 10 mM Bio−16−UTP
2μl lO×T7転写緩衝液(Ambion)
2μl 10×T7酵素混合物(Ambion)
全反応の最終体積は20μlであった。チューブをPCR機器中、37℃で6時間インキュベートした。
【0279】
(IVT産物のRNeasyの浄化)
手順については上記を参照のこと。
【0280】
標識cRNAをエタノール沈殿させ、断片化ステップに適合する体積に再懸濁した。
【0281】
・断片化
以下の技術を使用して、約15μgの標識RNAを断片化した。ハイブリッド形成緩衝液のマグネシウムが沈殿する問題のために、断片化反応体積を約10μlの体積に最小化するが、20μlを超えないようにした。
【0282】
1×断片化緩衝液中での94℃で35分間のインキュベーションによってRNAを断片
化した。
5×断片化緩衝液:
200mM Tris−酢酸(pH8.1)
500mM KOAc
150mM MgOAc
断片化の前後に標識RNA転写物を分析した。サンプルを65℃で15分間加熱し、転写物のサイズ範囲をほぼ把握するために1%アガロース/TBEゲルで電気泳動を行った。
【0283】
・マイクロチップアレイ
全実験で使用したEOS HuO3マイクロチップアレイは、ヒトゲノムの第1のドラフトに基づいた既知のエクソンおよびFGENESH推定エクソンを含む46,000個の固有の配列を示す59,680個のプローブセットを含むカスタマイズしたAffymetric GENECHIP(登録商標)オリゴヌクレオチドアレイである。Hu03プローブセットは、完全適合プローブのみからなり、ほとんどのプローブセットは6〜7個のプローブを有する。
【0284】
・マイクロチップアレイ上へのハイブリッド形成
200μl(10μgのcRNA)のハイブリッド形成混合物を、チップ上にピペッティングした。複数のハイブリッド形成を行う場合(5チップセットによるサイクリングなど)、300μlまたはそれ以上の最初のハイブリッド形成混合物を作製することを勧める。
ハイブリッド形成混合物:断片化標識RNA(最終濃度50ng/μl)
50pM 948−bコントロールオリゴ
1.5pM BioB
5pM BioC
25pM BioD
100pM CRE
0.lmg/ml ニシン精子DNA
0.5mg/ml アセチル化BSA
上記をl×MESハイブリッド形成緩衝液で300μlにする
フィコエリトリン抱合ストレプトアビジンを使用して、ハイブリッド形成シグナルを視覚化した。
【0285】
・遺伝子発現データの正規化
所望のγ分布に実験による強度の累積分布をマッピングするための逆γ関数を使用して、固定γ分布に対する各アレイ由来のプローブレベル強度の適合によって、遺伝子発現データを正規化した。この手順は、1つまたは複数のパラメータよりもむしろ強度の全分布を固定するという点でストリンジェントであること以外は、標準値への各チップの平均およびSDの固定などの他のチップあたりの正規化手順に類似する。チップあたりの正規化の目的は、非生物因子(すなわち、技術上のノイズ)に起因するという想定の下にチップ間の変動を除去することである。任意の平均値300を含む分布が得られるように分布についてのスケールパラメータを選択し、良好なサンプル中で認められる経験分布の典型的な形状を再現するために0.81の形状パラメータを選択した。
【0286】
平均強度の1つの基準を、構成性プローブの強度のテューキーの3項平均を使用して各プローブセットについて計算した。3項平均は、外れ値の影響に耐える中心傾向の基準である。最後に、非特異的ハイブリッド形成を補正するために各平均強度基準からバックグラウンドを差し引いた。乱雑な配列を含む491プローブセットからなる「ヌル」プローブセットの平均強度基準を、チップ上の他の全プローブセットから差し引いた。
【0287】
本明細書中で使用した産物についての解説書は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0288】
(本明細書中に提供される標識化プロトコール)
ハイブリッド形成反応:
非ビオチン化IVT(RNeasyカラムで精製)から開始する(組織からIVTへのステップについては実施例1を参照のこと)
IVTアンチセンスRNA;4μg: μl
ランダム六量体(1μg/μl): 4μl
H
20: μl
全体積: 14μl
−70℃で10分間インキュベートする。氷上に置く。
【0289】
逆転写:
5×第1の鎖の緩衝液(BRL): 6μl
0.1M DTT: 3μl
50×dNTP混合物: 0.6μl
H
20: 2.4μl
Cy3またはCy5 dUTP(1mM): 3μl
SS RT II(BRL): 1μl
全体積: 16μl
−ハイブリッド形成反応物に添加する。
−42℃で30分間インキュベートする。
−1μlSSIIを添加し、さらに1時間静置する。
氷上に置く。
−50×dNTP混合物(25mMの冷dATP、dCTP、およびdGTP、lOmMのdTTP:25μlの各100mM dATP、dCTP、およびdGTP;10μlの100mM dTTP、H20で15μlにする)
RNA分解:
−1.5μl1M NaOH/2mM EDTAを添加し、65℃で10分間インキュベートする。
H
20 86μl
10N NaOH 10μl
50mM EDTA 4μl
U−Con30
500μlのTE/サンプルを7000gで10分間スピンし、精製のためにフロースルーを保存する。
【0290】
Qiagen精製:
−u−con回収物質を500μlの緩衝液PBに懸濁する。
−w/ノーマルQiagenプロトコールを進める。
【0291】
DNアーゼ消化:
−1μlの100倍希釈のDNアーゼ/30μl Rxを添加し、37℃で15分間インキュベートする。
−95℃で5分間酵素を変性させる。
【0292】
サンプル調製:
−以下を添加する:
Cot−1 DNA: 10μl
50×dNTPs: 1μl
20×SSC: 2.3μl
ピロリン酸ナトリウム: 7.5μl
10mg/mlニシン精子DNA(1μlの10倍希釈物)
最終体積: 21.8μl
−高速吸引で乾燥させる。
−15μlH
2Oに再懸濁する。
−0.38μlの10%SDSを添加する。
−95℃で2分間加熱する。
−室温で20分間ゆっくり冷却する。
スライドに置き、64℃で一晩ハイブリッド形成させる。
【0293】
ハイブリッド形成後の洗浄:
3×SSC/0.03%SDS:37.5mlの20×SSC+0.75mlの10%SDSを含む250mlのH
20で2分間。
1×SSC:12.5mlの20×SSCを含む250mlのH
20で5分間。
0.2×SSC:2.5mlの20×SSCを含む250mlのH
20で5分間。
スライドを、1000RPMで1分間の遠心分離で乾燥させる。
【0294】
適切な行電子増倍管設定および蛍光チャネルでスキャンする。
CS1は白血球中で過剰発現するが、種々の非リンパ組織型では過剰発現しない
CS1の発現プロフィールを評価するために、白血球および他の組織から単離したmRNAを、リアルタイムPCRによって分析した。
図2Aに示すように、mRNA発現レベルは、ほとんどの他の正常な成体組織よりも白血球が遥かに高い。ベースラインを超えるCS1発現を示さない他の正常生体組織には、脂肪、副腎、大動脈、大動脈弁、虫垂、冠状動脈、膀胱、骨、骨髄、乳房、気管支、子宮頸部、脳、脊髄、横隔膜、子宮内膜、精巣上体、食道、胆嚢、神経節、心臓、喉頭、唇、肝臓、肺、筋肉、子宮筋層、迷走神経、網、口腔粘膜、卵巣、膵臓、副甲状腺、咽頭粘膜、胎盤、前立腺、網膜、唾液線、皮膚、胃、滑膜、精巣、胸腺、甲状腺、舌、気管、臍帯、尿管、子宮、膣、または静脈が含まれていた。CS1 mRNAは、結腸(2/11)、腎臓(1/20)、小腸(1/3)、脾臓、および扁桃腺(2/4)の選択されたサンプル中で発現した。結果は、CS1は白血球で主に発現し、自己免疫疾患の良好な標的であることを示した。
CS1発現は複数の活性化白血球集団で増加する
CS1発現と白血球の活性化との間の相関を評価するために、複数の活性化および非活性化白血球集団におけるCS1mRNA発現を分析した。
図2Bに示すように、対応する非活性化コントロール集団と比較して、活性化B細胞、成熟DC細胞、活性化CD3細胞(低レベルから中程度の増加)、活性化CD4細胞(低レベルの増加)、および活性化CD8細胞(低レベルから中程度の増加、ドナーによる)でCS1発現が増加した。これらの結果は、CS1の過剰発現はいくつかの白血球サブセットの活性化と相関することを示した。
【0295】
(実施例3:CS1に対するモノクローナル抗体の生成のための抗原の産生。
クローニング:)
CS1の細胞外ドメイン(ECD)を、CS1の細胞外ドメイン(CS1 ECD)に隣接するプライマーを使用して、Raji細胞から単離した。PCR産物をゲル精製し、IgG3の定常領域(ヒトFc−γ3)をコードするベクターにライゲーションした。CS1 ECD−Fcγ3を含むプラスミドを大量に精製し、DNA配列決定によって確認した。
【0296】
(CS1 ECD−Fcγ3の安定なトランスフェクション:)
50μgのCS1 ECD−Fcγ3プラスミドをFsp1酵素で線状化し、DNAをエタノール中に沈殿させ、洗浄し、500μlの滅菌PBSに再懸濁した。NSO細胞を冷PBSで2回洗浄し、1mlのPBSあたり2×10
7個を再懸濁した。1×10
7個の細胞をトランスフェクションに使用した。
【0297】
500μlのNSO細胞を、500μlのDNAを含むPBSと合わせた。細胞を1.5Vおよび3μFに設定したBioRad Gene pulerによるエレクトロポレーションに供した。細胞を100mlのDMEM完全培地に添加し、10個の96ウェルプレートにプレートした。トランスフェクションから24時間後に1μg/mlのミコフェノール酸選択培地を添加した。10日後に陽性トランスフェクタントをスクリーニングし、48および24ウェルプレートに拡大した。陽性トランスフェクタントを再度スクリーニングし、高産生のものをタンパク質精製のために拡大した。
【0298】
(CS1 ECD−Fcγ3タンパク質の精製:)
CS1−ECDFcγ3融合タンパク質を発現する安定なトランスフェクタントを、グルコース添加剤を含む600mlのDMEM完全培地に5日間拡大した。融合タンパク質を、プロテインG Sepharoseカラムで精製し、1×PBSに対して透析した。CS1 ECD−Fcγ3の還元および非還元形態を、クーマシーによって分析した。CS1 ECDFcγ3を抗HuIgGを使用したウェスタンブロットによっても分析し、N末端配列決定によって確認した。精製CS1−Fc−γ3融合タンパク質を使用してマ
ウスを免役化した。
【0299】
(CS1 ECD−myc−GPI融合タンパク質の産生:)
CS1の細胞外ドメイン(ECD)を、CS1の細胞外ドメインに隣接するプライマーを使用して、Raji細胞から単離した。PCR産物をゲル精製し、細胞表面発現のためのmycタグおよびグリコシルホスファチジルイノシトール結合を発現するベクター(myc−GPIベクター)にライゲーションした。CS1 ECD−myc−GPIを含むプラスミドを大量に精製し、DNA配列決定によって確認した。
【0300】
(CS1 ECD−myc−GPIの安定なトランスフェクション)
50μgのCS1 ECD−myc−GPIプラスミドをFsp1酵素で線状化し、DNAをエタノール中に沈殿させ、洗浄し、500μlの滅菌PBSに再懸濁した。NSO細胞を冷PBSで2回洗浄し、1mlのPBSあたり2×10
8個を再懸濁した。1×10
8個の細胞をトランスフェクションに使用した。
【0301】
500μlのNSO細胞を、500μlのDNAを含むPBSと合わせた。細胞を1.5Vおよび3μFに設定したBioRad Gene pulerによるエレクトロポレーションに供した。細胞を、1μg/mlのミコフェノール酸選択培地と共に5%CO
2中にて37℃で成長させ、その後96ウェルプレートにサブクローン化した。陽性トランスフェクタントを抗myc抗体でスクリーニングした。高産生のCS1 ECD−myc−GPIトランスフェクタントを選択し、インビトロアッセイのために拡大した。
【0302】
(実施例3:抗CS1モノクローナル抗体の産生)
(ヒトCS1の免疫原:)
精製組換えヒトCS1 ECD−γ3融合タンパク質を使用して、足蹠を介してBalb/cマウスを免役化した(CS1 ECDは、上記のCS1の細胞外ドメインをいう)。簡単に述べれば、マウスの後足蹠に全体積が25μlの同量のRibiアジュバントを含む10μgのタンパク質で免役化した。足蹠免疫化を、4〜5日間隔で4回行った。
【0303】
a.細胞融合:
CS1−ECD−γ3で免役化した2匹のマウスを屠殺した。マウスから大腿および仙骨のリンパ節を取出した。組織からリンパ球を単離し、標準的な手順によってハイブリドーマを作製した。簡単に述べれば、リンパ球とマウス骨髄腫細胞株(NSO細胞)との間のポリエチレングリコール(PEG)1500媒介融合によってハイブリドーマを作製した。融合細胞を、10
7細胞/プレートの密度で96ウェルプレートにプレートした。HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)培地を使用して、融合細胞を選択した。
【0304】
b.ハイブリドーマのスクリーニング
ハイブリドーマによって分泌された抗体の特異性を、フローサイトメトリー(FACS)ベースのCS1発現細胞への結合アッセイによって決定した。標準的なプロトコールを使用して、FACSアッセイを行った。表面CS1細胞外ドメインを発現するNSO安定トランスフェクタント(2×10
5)を、50μlのハイブリドーマ培養上清を含む50μlの氷冷PBSに氷上で1時間再懸濁した。強い洗浄後、細胞を、フィコエリトリン抱合ヤギ抗マウスIgG特異的抗体と氷上で1時間インキュベートした。細胞を再度洗浄し、細胞表面結合抗体を、Becton Dickinson FACScanを使用したFACSによって検出した。表1に示すように、抗体:Luc2、Luc3、Lucl5、Luc20、Luc22、Luc23、Luc29、Luc32、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc39、Luc56、Luc60、Luc63、またはLuc90は、CS1でトランスフェクトしたNSO−CS1細胞に強く結合するが、NSO−FcRnには結合しなかった。抗ヒトCS1抗体は、K562およびDaudi細胞(天然のCS1を発現することが公知)に結合したが、陰性コントロールであるJurkat細胞には結合しなかった。データは、産生された抗CS1抗体がCS1と特異的に結合することができることを示す。CS1−γ3融合タンパク質対陰性コントロールであるAR−G3(γ3融合タンパク質)へのLuc抗体の結合のアッセイ(ELISAによる)由来の結果も表に示した。Luc抗体は、CS1−γ3に特異的に結合したが、陰性コントロールAR−γ3融合タンパク質には結合しなかった。
【0305】
【表1】
(産生した抗CS1モノクローナル抗体のアミノ酸配列)
抗体重鎖および軽鎖可変領域を、標準的な技術を使用してクローン化した。簡単に述べれば、1〜5×10
6個の細胞由来の総RNAを使用し、SMART RACEcDNA増幅キット(BD Biosciences Clontech)を使用してcDNAを調製し、マウス重鎖および軽鎖定常領域に相補的な遺伝子特異的プライマーを使用して、可変領域をPCRで増幅した。
【0306】
抗体Luc90、Luc63、およびLuc34の成熟重鎖および成熟軽鎖のアミノ酸配列を、表4に示す。
【0307】
(実施例4:CS1抗体の特徴づけ)
フローサイトメトリー競合アッセイを使用して、15の異なる抗CS1モノクローナル抗体のエピトープ特異性を決定した。表面CS1を発現するNSO安定トランスフェクタント(2×10
5)を、50μlの抗CS1抗体(Luc23、Luc29、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc63、およびLuc90の対合組み合わせ(pairwise combination)が含まれる)と共に氷上で1時間インキュベートした。並行して、陰性コントロールとしてイソ型コントロール抗体(AIP−13)を使用した。1μg/mlのビオチン化抗CS1モノクローナル抗体(Luc23、Luc34、Luc37、Luc38、Luc63、およびLuc90)を、細胞/抗体混合物と共に氷上でさらに30分間インキュベートした。強い洗浄後、細胞を、フィコエリトリン抱合ストレプトアビジンと氷上で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、細胞表面結合ビオチン化抗体を、Becton Dickinson FACScanを使用したFACSによって検出した。
【0308】
非標識抗体(Luc23、Luc34、Luc37、Luc38、Luc63、およびLuc90)を、互いに15μg/ml、3μg/ml、および0.6μg/mlの濃度で競合する能力について試験し、1μg/mlの競合抗体または遮断抗体を添加した。CS1と結合せず、且ついかなるLuc抗体とも競合しないので、AIP−13を陰性コントロールとして使用した。ビオチン化抗体の蛍光レベル(平均蛍光強度)(MFI)を図に示す。MFIの有意な減少は、コントロール抗体のMFIと比較して、Mabによるビオチン化抗CS1対非標識抗CS1 Mabによって細胞表面CS1を少なくとも50%競合した。
【0309】
図3は、遮断Lucモノクローナル抗体を15μg/mlおよび3μg/mlの濃度で使用した場合のLuc抗体間の競合アッセイの結果の例を示す。競合アッセイは、いくつかのLuc抗体が異なるエピトープと接触することを示した。Luc38は、Luc37、23、90、および63のエピトープと異なるエピトープと接触する。Luc63は、Luc37、23、90、および38エピトープと異なる個別の非重複エピトープと接触する。Luc90は、Luc37、23、63、および38のエピトープと異なる、異なる非重複エピトープと接触する。Luc23は、Luc90、63、38のエピトープと異なる別の非重複エピトープと接触する。Luc37は、Luc90、63、38と接触するエピトープと異なるさらなる非重複エピトープと接触する。Luc63は、Luc34と重複するエピトープに接触し、Luc90はLuc34と重複するエピトープと接触する。Luc37は、Luc23のエピトープと重複するエピトープと接触する。Luc34は全Luc抗体の結合を遮断するか有意に減少させ、広範な露呈したエピトープと接触し得るか、CS1に対するより高い親和性を有し得る。Luc37、Luc23、およびLuc38は、Luc34抗体によるCS1への結合を遮断しない。Luc37、Lu
c23、およびLuc38のエピトープを、CS1二次構造内に「埋め込む」ことができるか、CS1に対する親和性がLuc34抗体の親和性よりも低い可能性がある。
【0310】
3つのモノクローナル抗体の相対親和性もBiacore分析によって試験した。ヒトCS1−Fc融合タンパク質と抗ヒトCS1モノクローナルマウス抗体Luc34.1、63.2、および90H1との間のSPRKinetics測定のCS1 MAbの速度分析を、BIAcore2000(BIAcore,Sweden)を使用して行った。異なるフローセルへの10000RUの各抗体の固定および表面上へのCS1−Fcの注入およびその後の最良の緩衝液が各抗体からのCS1−Fcのクリアランスを最適にすることが認められるまでの一連の異なる緩衝液の試験によって再生条件を確立した。10mMグリシン(pH2.0)の緩衝液が、最適な再生緩衝液であることが見出され、その直後に10サイクルのCS1−Fc注入および緩衝液再生によってその再現性について試験した。この緩衝液は、抗体表面の再生可能な再生に適切であることが見出された。したがって、10mMグリシン(pH2.0)をCS1−Fcおよび抗チアBIAcore実験のための再生緩衝液に指定した。
【0311】
自家産生CS1抗体を、BIAcoreアミンカップリング試薬(N−エチル−N’−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド、EDC;N−ヒドロキシスクシンイミド、NHS;および塩酸エタノールアミン(pH8.5))によって99.4RU〜133.7RUの範囲の低反応単位(RU)で研究グレードのCM5センサーチップに固定した。室温で流速30μl/分にてアッセイを行った。3分間のCS1−Fcの会合段階の後に、各結合サイクルの解離をモニタリングするために、サイクルあたり異なるCS1−Fc濃度のランニング緩衝液(10mM Hepes、300mM塩化ナトリウム、3mM EDTA、0.05%P−20(pH7.4))を10分間注入した。10mMグリシン(pH2.0)を使用して再生表面を再生させた。各CS−Fcおよび抗体対の結合速度を、BIAevaluateプログラムを使用して、12種の異なる濃度CS1−Fc(1024nM、512nM、256nM、128nM、64nM、32nM、16nM、8nM、4nM、2nM、lnM、0.5nM)から2連で回収したセノルグラム(senorgram)データの大域分析から計算した。基準表面および緩衝液のみのコントロール由来のバックグラウンド応答を排除するために各分析で二重参照(double referencing)を適用した。BIAevaluateソフトウェアによる二価分析物モデルを使用した一連の分析物濃度由来のセンサーグラムの会合段階および解離段階の同時適合によって結合親和性(K
D)を得た。データの標準偏差を研究するために、実験を3回行った。
【0312】
Luc90.H1、Luc63.2、およびLuc43.1の結合親和性を、
図4にまとめる。Luc90.H1の結合親和性は、これら3つの抗体の間で最も高い。Luc90.H1の結合親和性は、Luc63.2の5.5倍であり、Luc34.1の28倍である。
【0313】
(抗CS1抗体での免疫組織学的染色)
CS1トランスフェクション細胞も、抗CS1抗体での免疫組織学的染色について試験した。10μg/mlの一次モノクローナル抗CS1抗体を、CS1でトランスフェクトした細胞に添加した。次いで、細胞を血清でブロッキングし、ビオチン抗マウスIgとインキュベートした。次いで、アビジン−ペルオキシダーゼを細胞と混合し、AEC(標準的なペルオキシダーゼ試薬)で発色させた。AECによる赤色が陽性染色を示す一方で、試験細胞の核をヘマトキシリン(青色)で対比染色した。データは、CS1トランスフェクション細胞が抗CS1抗体で陽性染色されることを示し、このことは、産生された抗CS1抗体が細胞表面上に発現したCS1に結合することができることを示す(
図5A)。したがって、抗CS1抗体は、溶液中の末梢血細胞表面上の発現の検出だけでなく、組織切片(例えば、患者のリンパ節または組織生検)の分析で典型的に使用される免疫組織化学(IHC)による検出での使用に適切である。
【0314】
図5Bは、2つの抗CS1抗体(Luc90およびLuc60)での炎症扁桃腺の免疫組織学的染色を示す。
図5B中のパネルCおよびDは、形質細胞および上皮細胞を染色するCD138での染色を示す。上のパネル(
図5BのパネルAおよびB)は、抗CS1抗体で染色した一連の切片を示す。染色パターンの重複から、CS1抗体が炎症扁桃腺中の形質細胞を染色することが明らかである。
【0315】
図5Cは、関節リウマチ患者の関節由来の滑膜組織の抗CS1Luc63での免疫組織学的染色を示す。形質細胞は、CD138での染色によって示すように、滑膜に浸潤した(右上のパネル)。重複染色パターンから(右上のパネルと左上のパネルとの比較)、抗CD1抗体は関節リウマチ患者の関節中の形質細胞を染色することが明らかである。
【0316】
(CS1タンパク質発現パターン:)
産生されたLuc抗体を使用して、FACS分析によってCS1タンパク質発現をさらに試験した(
図6)。標準的なFicoll Hypaque濃度勾配手順によって、健常な個体および狼瘡患者からPMBCを単離した。以下の標準的な手順に示すように、抗体でPMBCを染色した。PBMCのヤマゴボウマイトジェン(PWM)活性化のために、100倍希釈のPWMをPBMCに添加し、その後7%CO
2中に37℃で8日間おいた。PWM刺激細胞を採取し、抗体染色前に洗浄した。本明細書中で使用したマウス抗CS1抗体は、Luc90(IgG
2b)、Luc63、Luc38、および他の産生抗CS1 Luc抗体である。イソ型コントロール抗体は、イソ型適合マウスIgG抗体であった。
【0317】
結果は、活性化B細胞、CD8
+T細胞(活性化およびナイーブの両方)、NK細胞(CD3−CD56
+)、NKT細胞(CD56
+CD3
+)、CD14
+/lo白血球(単球および/またはマクロファージ)、およびCD4
+T細胞(インビトロ活性化細胞において低レベル)でCS1が正に発現することを示した。CS1は、健常な成体および狼瘡患者の両方由来のこれらの細胞集団で発現した。健常な成体、血小板、HuVEC、腎臓細胞、気管支細胞、末梢気道細胞、前立腺細胞、肝細胞、および乳房細胞由来の非活性化CD4
+T細胞ではCS1タンパク質は検出されなかった。
【0318】
活性化B細胞のサンプル染色を
図6に示し、この図は、PWM活性化PBMCの染色を太線で示し、イソ型コントロール染色および非活性化PBMCをその下に点線で示す。治療抗体が主に標的細胞に結合し、他の細胞および組織(特に、血小板)に結合しないので
、CS1発現パターンが有意である。データにより、抗CS1抗体が適切な候補治療抗体であることが示唆される。
【0319】
(実施例5:CS1抗体のヒト化)
この実施例は、マウス抗CS1モノクローナル抗体Luc63(MuLuc63)のヒト化を記載する。本質的にQueen,C.ら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989))にしたがって、MuLuc63のヒト化を行った。第1に、それぞれMuLuc63VHおよびVLアミノ酸配列と相同性の高いヒトVHおよびVLセグメントを同定した。次に、CDRの構造維持に重要なフレームワークアミノ酸を含むCDR配列を、選択したヒトフレームワーク配列にグラフティングした。得られたヒト化モノクローナル抗体(HuLuc63)は、マウス骨髄腫細胞株NSOで発現した。ヒト化HuLuc63抗体は、ELISAアッセイにおいて70.1ng/mlのEC50値で組換えヒトCS1に結合し、これは同一アッセイにおけるMuLuc63について測定した66.1ng/mlと類似し、HuLuc63がヒトCS1に対する結合親和性が保持されていることを示す。
【0320】
(MuLuc63可変領域cDNAのクローニングおよび配列決定)
TRIzol試薬(Life Technologies,Inc.,Rockville,MD)を使用して、約5×10
7個のMuLuc63産生ハイブリドーマ細胞から総RNAを抽出した。供給者のプロトコールにしたがってSMART RACE cDNA増幅キット(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)を使用して、二本鎖cDNAを合成した。SMART RACE DNA増幅キットに含まれるマウスγ鎖およびκ鎖のC領域にそれぞれアニーリングする3’プライマーおよび5’ユニバーサルプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、重鎖および軽鎖の可変領域cDNAを増幅した。VHPCRについて、3’プライマーは、配列5’−AGCTGGGAAGGTGTGCACAC−3’(配列番号51)を有する。VLPCRについて、3’プライマーは、配列5’−TTCACTGCCATCAATCTTCC−3’(配列番号52)を有する。VHおよびVLのcDNAを、配列決定のためにpCR4Blunt−TOPOベクター(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にサブクローン化した。製造者の説明書にしたがって、蛍光ジデオキシ鎖ターミネーター(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用したPCRサイクル配列決定反応によってDNA配列決定を行った。
【0321】
各重鎖および軽鎖について4つのプラスミドクローンを配列決定した。典型的なマウス重鎖および軽鎖可変領域に相同な固有の配列を同定した。cDNA配列を、MuLuc63の重鎖および軽鎖のV領域の推定アミノ酸配列と共に表5および6に示す。
HuLuc63V領域のデザイン
Queen,C.ら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989))に概説のように、抗体V領域をヒト化した。第1に、コンピュータプログラムABMODおよびENCAD(Levitt,M.,J.Mol.Biol.168:595−620(1983))の支援の下でMuLuc63可変領域の分子モデルを構築した。次に、ヒト抗体のcDNA配列についての相同性検索に基づいて、ヒトVH配列E55 3−14(Cuisinier et al,Eur.J.Imm.23:110−118(1993))およびJセグメントJH1(Ravetch,J.V.ら,Cell 27:583−591(1981))を、HuLuc63重鎖可変領域のフレームワークが得られるように選択した。HuLuc63軽鎖可変領域については、cDNAのVL配列III−2R(Manheimer−Lory et al,J.Exp.Med.174:1639−1652(1991))を使用した。MuLuc63のVHとアクセプターヒトフレームワークとの間のフレームワークアミノ酸の同一性は、81.6%であった(71/87.)、一方MuLuc63のVLとアクセプターヒトフレームワークとの間の同一性は、76.3%であった(61/81)。
【0322】
コンピュータモデルによってCDRとの有意な接触が示唆されるフレームワーク位置で、元のヒトフレームワークアミノ酸をMuLuc63のV領域由来のアミノ酸と置換した。重鎖の残基28、48、49、66、および68でこれを行った(表7)。軽鎖については、残基60で置換を行った(表8)。本明細書中で使用した番号づけはKabatのものであることに留意のこと(Sequences of Proteins ofImmunological Interest,5th ed.,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。
【0323】
さらに、MuLuc63アミノ酸配列の調査により、VH領域のCDR2中の潜在的なN結合グリコシル化が明らかとなった。このようなN結合グリコシル化部位は、一般的な配列N−X−T/S(N=アスパラギン、X=任意のアミノ酸、およびS/T=セリンまたはトレオニン)を有する。可変ドメイン中のN結合グリコシル化の存在は治療抗体としてのHuLuc63の発生中に悪影響を与え得るので、ヒト化デザインにおいてトレオニンをアラニンに置換する変異(N−Y−A)によってCDR2中の潜在的グリコシル化部位(N−Y−T)を除去した。
【0324】
VHおよびVLについてのMuLuc63、HuLuc63、およびヒトアクセプターアミノ酸配列のアラインメントを、それぞれ表7および8に示す。
【0325】
(HuLuc63のVHおよびVL遺伝子の構築)
HuLuc63のVHおよびVLをそれぞれコードする遺伝子を、シグナルペプチド、スプライスドナーシグナル、および哺乳動物発現ベクターへのその後のクローニングに適切な制限酵素を含むミニエクソンとしてデザインした。VHおよびVLミニエクソンのスプライスドナーシグナルは、それぞれ対応するヒト生殖系列JH6およびJK4配列に由来していた。HuLuc63のVHおよびVLミニエクソン中のシグナルペプチド配列は、それぞれ対応するMuLuc63のVHおよびVL配列に由来していた。Luc63のVHおよびVL遺伝子のヌクレオチド配列を、推定アミノ酸配列とともに表5および6に示す。
【0326】
33〜43塩基長の範囲の重複合成オリゴヌクレオチドの伸長およびPCR増幅によってHuLuc63のVHおよびVL遺伝子を構築した(Stemmer et al,Gene 164:49−53(1995))。HuLuc63のVHおよびVL遺伝子の合成用のオリゴヌクレオチドを表9に列挙する。
【0327】
PCR増幅フラグメントをQiaquickPCR精製キット(Qiagen)によって精製し、MluIおよびXbaIで消化した。HuLuc63のVH遺伝子をpHuHCgl.Dにサブクローン化してpHuHCgl.D−HuLuc63を作製した。HuLuc63のVL遺伝子をpHuCkappa.rgpt.dE(κ軽鎖発現ベクターpOKT3.Vk.rgの誘導体)(Cole,M.S.ら,J.Immunol.159:3613−3621(1997))にサブクローン化して、プラスミドpHuCkappa.rgpt.dE−HuLuc63を作製した。
【0328】
(HuLuc63の発現)
組織培養細胞の一過性トランスフェクションによってHuLuc63 IgG1/κ抗体を産生した。ヒト胚腎臓細胞株293−H(Invitrogen,Carlsbad,CA)を、10%FBS(HyClone,Logan,UT)および非必須アミノ酸(Invitrogen)を含むDMEM(BioWhittaker,Walkersville,MD)で維持した。標準的な培地(DMEM+10%FBS+非必須アミノ酸)を使用して、トランスフェクションの前日に、1×10
6細胞/ウェルで6ウェルプレートに2.5mlの体積で293−H細胞をプレートした。トランスフェクションの当日に、ウェルあたり4μgのプラスミドDNAを、250μlのハイブリドーマ−SFM(H−SFM,Invitrogen)で希釈した。ウェルあたり10μlのリポフェクタミン2000試薬(LF2000,Invitrogen)を、250μlのH−SFMで希釈した。希釈DNAを希釈LF2000と組み合わせ、20分間インキュベートして、DNA−LF2000複合体を形成した。500μlのDNA−LF2000複合体を各ウェルに添加し、プレートを前後に傾けることによって混合した。細胞を5日間インキュベートし、その後分析のために上清を回収した。
【0329】
HuLuc63の発現をサンドイッチELISAによって測定した。Immulon4HBXプレート(Thermo Labsystems,Franklin,MA)を、100μl/ウェルの1.8μl/mlのヤギ抗ヒトIgG Fcγ鎖特異的ポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.,West Grove,PA)を含む0.2M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.4)にて4℃で一晩コーティングし、洗浄緩衝液(0.1%Tween20を含むPBS)で洗浄し、150μl/ウェルのsuperBlockブロッキング緩衝液を含むTBS(Pierce Chemical Company,Rockford,IL)にて室温で30分間ブロッキングした。洗浄緩衝液での洗浄後、HuLuc63を含むサンプルを、ELISA緩衝液(1%BSAおよび0.1%Tween20を含むPBS)で適切に希釈し、100μl/ウェルをELISAプレートに適用した。標準として、ヒト化抗CD33IgG1/κモノクローナル抗体HuM195(Co,M.S.ら,J.Immunol.,148:1149−1154(1992))を使用した。プレートの室温で1時間のインキュベーションおよび洗浄緩衝液での洗浄後、結合した抗体を、100μl/ウェルの1000倍希釈のHRP抱合ヤギ抗ヒトκ鎖ポリクローナル抗体(SouthernBiotech,Birmingham,AL)を使用して検出した。室温で1時間のインキュベーションおよび洗浄緩衝液での洗浄後、100μl/ウェルのABTS基質(KPL,Inc.,Gaithersburg,MD)の添加によって発色させた。100μl/ウェルの2%シュウ酸の添加によって発色を停止させた。VersaMaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices Corporation,Sunnyvale,CA)を使用して、415nmでの吸光度を読み取った。
【0330】
(MuLuc63およびHuLuc63の結合特性)
ヒトCS1に対するMuLuc63およびHuLuc63の親和性を、直接結合ELISAによって分析した。96ウェルELISAプレート(Immulon 4 HBXプレート、Thermo Labsystems,Franklin,MA)のウェルを、100μlの1μg/ml可溶性ヒトCS1−ヒトFcγ3融合タンパク質を含むPBSにて室温で一晩コーティングした。洗浄緩衝液での洗浄後、ウェルを150μlのSuperblockブロッキング緩衝液にて室温で30分間ブロッキングした。一過性に発現したHuLuc63抗体または精製MuLuc63抗体を、ELISA緩衝液で適切に希釈し、ELISAプレートに適用した(100μl/ウェル)。ELISAプレートを室温で1時間インキュベートし、ウェルを洗浄緩衝液で洗浄した。次いで、ELISA緩衝液で1000倍希釈した100μlのHRP抱合ヤギ抗ヒトCκ抗体またはHRP抱合ヤギ抗マウスCκ抗体(共にsouthern Biotech)を、HuLuc63およびMuLuc63プレートの各ウェルにそれぞれ添加し、室温で1時間インキュベートした。洗浄緩衝液での洗浄後、100μlのABTS基質(KPL)を各ウェルに添加した。ウェルあたり100μlの2%シュウ酸の添加によって発色を停止させた。VERSAmaxマイクロプレートリーダーを使用して、415nmでの吸光度を読み取った。ELISA結合実験の結果を
図7に示す。MuLuc63およびHuLuc63は、ヒトCS−1−Fcγ3に濃度依存様式で結合する。コンピュータソフトウェアGraphPad Prism(GraphPad Software Inc.,SanDiego,CA)を使用して得たHuLuc63のEC
50値は70.1ng/mlであった。これは、muLuc63について得られた66.1ng/mlのEC
50値と類似しており、マウス抗CS1モノクローナル抗体MuLuc63のヒト化が成功したことを示し、HuLuc63はヒトCS1に対する高い結合親和性を保持した。ヒト化Luc63可変領域モデルを
図8に示す。
【0331】
(実施例6:自己免疫障害におけるCS1の役割)
(CS1は非刺激細胞と比較して刺激T細胞およびB細胞で高度に発現する:)
CS1の発現を決定するために、ヤマゴボウマイトジェン(PWM)およびフィトヘムアグルチニン(PHA)刺激を使用して末梢血Bリンパ球およびTリンパ球を刺激するためのインビトロアッセイを準備した。刺激を行わない非刺激コントロール末梢血単核細胞を並行して調製した。PolyA
+mRNAを単離し、標準的な技術を使用して、これらのサンプルからcDNAを合成した。CS1特異的オリゴヌクレオチドプライマー(上記を参照のこと)を使用したPCRによってCS1遺伝子を増幅し、Biorad GelDoc2000を使用して発現を定量した。シグナル強度をコントロールヒトβ−アクチンに対して正規化した。リアルタイムPCR分析は、非刺激細胞と比較して、CS1が活性化末梢血B細胞で約23倍上方制御され、活性化末梢血Tリンパ球で約30倍上方制御されることを示した(
図9)。
【0332】
(CS1は年齢適合健常成体と比較して狼瘡患者の末梢血Bリンパ球で上方制御される:)
健常な個体と比較した狼瘡患者のCS1発現を評価するために、CD19
+細胞の細胞分取によって、狼瘡患者対健常成体のプールから末梢血Bリンパ球を単離した。PolyA
+mRNAを単離し、標準的な技術の使用によってcDNAを合成した。CS1に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用したリアルタイムPCRによってS1発現を評価した。リアルタイムPCRデータは、CS1が健常な個体と比較して狼瘡患者由来のBリンパ球で約2倍上方制御されることを示した。β−アクチンでの正規化により、CS1遺伝子は、健常な個体のcDNAと比較して狼瘡患者のBリンパ球のcDNAで2.3倍に増加した。18S rRNAプライマーで正規化した場合、CS1は各cDNAサンプ
ルで1.8倍に増加した(
図10)。
【0333】
(活性化B細胞および活性化T細胞における新規のマウスLy9の上方制御:)
新規のマウスLy9は、ヒトCS1の推奨されるオルソログである(Tovarら,Immunogenetics 54:394−402(2002))。活性化B細胞および活性化T細胞での新規のマウスLy9の発現を、リアルタイムPCRを使用して試験した。データは、新規のマウスLy9が活性化B細胞および活性化T細胞中で上方制御されることを示した。
【0334】
新規のマウスLy9の発現を、ABI GeneAmp 5700配列検出システムを使用して分析した(実施例2を参照のこと)。18S rRNAプライマーで正規化した場合、Ly9遺伝子は非刺激脾臓cDNAと比較してconA刺激cDNAで3倍に増加し、LPS刺激cDNAで6倍に上方制御された。
【0335】
(炎症性腸疾患組織中でのCS1の上方制御)
IBD組織(クローン病および潰瘍性大腸炎の両方)対正常組織におけるIBDモジュレータータンパク質の発現を、上記のマイクロチップアレイで決定した。オリゴヌクレオチドマイクロアレイを、複数の組織由来のcRNAを使用して調査した。より詳細には、インビトロ転写アッセイ(IVT)によって、9つのIBDおよび9つの適合隣接正常腸標本ならびに24個の結腸上皮サンプルからcRNAを作製した。遺伝子の発現レベルと正比例する平均蛍光強度(AI)によって、オリゴヌクレオチドマイクロアレイへのcR
NAハイブリッド形成を測定した。
【0336】
IBD中の遺伝子発現レベルと非罹患成体の組織および器官との比較によって、データを分析した。正常組織と比較した炎症性腸疾患組織中の遺伝子発現の有意な増加によって同定した遺伝子の1つはCS1である。
図11は、健常な成体の結腸上皮細胞と比較してCS1遺伝子発現が潰瘍性大腸炎およびクローン病で増加することを示すマイクロアレイ分析のグラフである。健常個体と比較した炎症性腸疾患患者におけるCS1発現をさらに評価するために、2人のクローン病患者および3人の潰瘍性大腸炎患者由来の大腸の罹患切片由来のサンプル対3人の健常な成人由来の正常な大腸サンプルをばらばらにし、洗浄し、TRIZOL(登録商標)に入れた。製造者のプロトコールにしたがって、総RNAを単離した。総RNAを、RNアーゼ無含有DNアーゼ(GenHunter)で処置した。Dnアーゼ消化RNAを、フェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで一晩沈殿させた。RNAを75%エタノールで洗浄し、無ヌクレアーゼ水に溶解した。RNAを定量し、RNAの完全性をアガロースゲルで分析した。リアルタイムPCRデータ(
図12)は、健常な個体(n=3)由来のプールした正常な腸と比較してCS1がクローン病患者(n=2)由来の罹患大腸で7倍および6倍に上方制御され、潰瘍性大腸炎患者(n=3)由来の罹患大腸で13倍、14倍、および46倍に上方制御されたことを示した。
【0337】
(実施例7:癌細胞におけるCS1発現)
(CS1タンパク質の発現パターン:)
産生されたLuc抗体を使用して、FACS分析によってCS1タンパク質発現をさらに試験した。細胞株を、抗CS1 Luc90.H1抗体またはマウスIgG2bイソ型コントロール抗体と氷上で30分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、フィコエリトリン(PE)抱合抗マウスIgを細胞に添加し、氷上で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、FACS Caliber(Becton Dickinson)でのフローサイトメトリーによって分析した。Luc90.H1抗体由来のシグナルを重複
した太線として示したヒストグラムプロットを
図13に示す。下線は、陰性コントロール(非染色細胞、二次抗体(一次抗体を含まない抗マウスIg−PE)、またはイソ型コントロール抗体)を含む。これらのデータは、ARH−77白血病株細胞、CESSおよびIM9 Bリンパ芽球腫細胞株、ならびにL363、LP1、およびOPM2骨髄腫細胞株でCS1が発現することを示す。
【0338】
多発性骨髄腫患者(n=21、骨髄腫サンプル)、MGUS患者(意義不明のモノクローナル免疫グロブリン血症;n=1)、形質細胞性白血病患者(n=1)、骨髄細胞から動員されたCD34+幹細胞(n=5)、正常な骨髄細胞(n=3)、正常なリンパ節組織(n=1)、慢性リンパ芽球性白血病患者(CLL;n=15)、急性骨髄性白血病患者(AML;n=11)、非ホジキンリンパ腫患者(NHL;n=1)、およびホジキンリンパ腫患者(n=1)、由来のサンプルを、CS1(Luc90またはLuc60)、CD45−PerCP、CD38−PE、および/またはCD138−PEに対するFITC抱合抗体とインキュベートし、上記で詳述するように骨髄腫細胞のFACS分析のために処理した(
図14を参照のこと)。本明細書中で使用されたマウス抗CS1抗体は、Luc90(IgG
2b)、Luc63(IgG2a)、Luc38(IgG2b)、および他の産生された抗CS1抗体である。イソ型コントロール抗体は、イソ型適合マウスIgG抗体であった。
【0339】
Cleveland Clinicの多発性骨髄腫患者から骨髄穿刺液を得た。骨髄腫細胞株(LP1、L363、OPM2、NCI−H929、RPMI 8226、およびU266B1)、白血病細胞株ARH−77、Bリンパ芽球腫株(IM9,CESS)、および骨髄細胞を、標準的な染色プロトコールにしたがって、抗CS1モノクローナル抗体対イソ型コントロール抗体(Becton Dickinson)で染色した。細胞を洗浄し、染色緩衝液(ヒト細胞については10%FBSを含むRPMIまたは10%FBSを含むDMEM)に入れ、抗CS1対イソ型コントロール抗体を、最終体積0.1mlで、100万個の細胞あたり0.5〜1μg添加した。患者サンプルのために、赤血球を溶解し、遠心分離で細胞をペレット化し、染色緩衝液に再懸濁した。FITCに直接抱合しない抗体について、第2段階の抗体を、最終体積0.1mlで、100万個の細胞あたり0.5〜1μg添加した。細胞を洗浄し、CellQuestソフトウェアを使用したBecton DickinsonFACSCaliberによるFACS分析のための染色緩衝液に再懸濁した。形質細胞を区別するために、多発性骨髄腫細胞を、抗CD45、抗シンデカン1(CD138)、および抗CD38モノクローナル抗体で染色した。抗シンデカン1(CD138)は、形質細胞を特異的に染色し、他の白血球は染色しない。
【0340】
結果は、CS1は、多発性骨髄腫患者由来の形質細胞(例えば、CD138+細胞)、形質細胞性白血病患者(
図14I)、およびいくつかの骨髄腫細胞株(L363、LP1、およびOPM2;
図13を参照のこと)で高度に発現することを示す。多発性骨髄腫患者由来の21種の全ての異なる骨髄サンプルをフローによって分析し、21サンプルのうちの全て、実質的に全ての骨髄形質細胞がCS1を発現する。ARH−77白血病細胞およびBリンパ芽球腫細胞株(IM9およびCESS)においてもCS1が発現する(
図13を参照のこと)。
【0341】
(実施例8:骨髄腫患者由来の形質細胞におけるCS1の発現)
多発性骨髄腫患者由来の骨髄サンプルを、CD138−PE、CD45PerCP、Luc90−FITC、および/またはIgG2b−FITC(イソ型コントロール抗体)で染色し、上記で詳述するようにFACSによって分析した(実施例5を参照のこと)。ゲーティングした細胞は以下である:ゲートR1はリンパ球を含み(「R1」)、ゲートR2は単球を含み(「R2」)、ゲートR3は顆粒球を含み(「R3」)、ゲートR4は赤血球を含み(「R4」)、ゲートR5は形質細胞を含み(「R5」)、ゲートR6は芽球を含む(「R6」)。
図15は、CS1が多発性骨髄腫患者由来の形質細胞(例えば、CD138+細胞)で発現することを示す。
【0342】
(実施例9:抗CS1モノクローナル抗体は活性化末梢血B細胞によるIgM分泌を減少させる)
正常成体由来の末梢血単核細胞を、標準的なFicoll勾配によって単離し、10μg/mlのヤマゴボウマイトジェン(GIBCO/BRL,England,the United Kingdom)とインキュベートし、1mlの総体積で24ウェルプレート中にプレートした。100μg/mlまたは10μg/mlのモノクローナル抗体(マウス抗ヒトCS1(Luc63)またはマウスIgGイソ型コントロール)をサンプルウェルに添加した。細胞および抗体を、7%CO
2中にて37℃で8日間インキュベートした。培養物由来の上清を単離し、IgMを上記のようにELISAによってアッセイした。
図16に示すように、100μg/mlまたは10μg/mlの抗体Luc63(それぞれPwLuc100およびPwLuc10)は、100μg/mlまたは10μg/mlのイソ型コントロール(それぞれPwIg100およびPwIg10)または抗体を含めずに(Pw(−))インキュベートした細胞によるIgM分泌と比較して、末梢血単核細胞のIgM分泌を減少させた。
【0343】
(抗CS1モノクローナル抗体は自己免疫疾患患者によるIgM分泌を減少させる)
(活性化末梢血B細胞:)
末梢血単核細胞の細胞培養物由来の上清を上記に詳述のように単離し、ELISAによってアッセイした。Immulon−1プレートを、100μlの1μg/mlマウス抗ヒトIgMモノクローナル抗体(カタログ番号05−4900、Zymed Laboratories,Inc.,South San Francisco,California)を含むPBSでコーティングした。プレートをELISA緩衝液(「EB」=PBS+0.1%BSA+0.05%Tween20)で1時間ブロッキングした。(EBでの)種々の希釈率の培養上清を100μl/ウェルで添加した。上清および標準的なヒトIgM(カタログ番号009−000−012,Jackson Laboratory,Bar Harbor,Maine)を、室温で1〜2時間インキュベートした。捕捉ヒトIgMを、製造者のプロトコールにしたがって、ヤギ抗ヒトIgM−HRPポリクローナル抗体(カタログ番号2020−05,Southern Biotech Association,Birmingham,Alabama)およびHRP基質で発色させた。結合したIgMを、標準的なELISAプレートリーダーにおける分光測光法(405nm OD)によって視覚化した。
図17に示すように、狼瘡患者のPBMCの分泌IgM量は、イソ型コントロールと比較して、抗CS1抗体(Luc90H1)での処理によって減少した。陽性コントロールである抗CD2抗体(GLO1)は、抗CS1が抗CD2抗体よりもさらによりIgM抗体産生を減少させることを示した。
【0344】
(抗CS1モノクローナル抗体は健常な成体および自己免疫疾患患者由来の末梢血B細胞によるIgG産生が減少させる)
健常な成体および自己免疫疾患(狼瘡)患者由来の末梢血B細胞によるIgG産生を、IgM産生と同一の方法で分析した。
図18に示すように、抗CS1抗体(Luc90H.1)での処置から9日後の健常な成体の末梢血単核細胞による全産生は、IhG2bイソ型コントロールと比較して約23%減少した。抗CS1抗体(Luc90H.1)での処置から9日後の狼瘡患者の末梢血単核細胞によるIgGの全産生は、IgG2bイソ型コントロールと比較して約56%減少した。表3AおよびBは、多数の作製した抗CS1抗体によるIgG産生の阻害をまとめている。表3Aに示すように、Luc90.H1は、リポ多糖またはヤマゴボウマイトジェンで活性化したPBMCによるIgG産生を約40%減少させた。Luc34.1は、ヤマゴボウマイトジェンで活性化したPBMCによるIgG産生を約38%減少させた。表3Bに示すように、Luc90.H1は、健常な成体および成熟B細胞株(IM9細胞)のPBMCのIgG産生を約48%減少させた。Luc34.1は、健常な成体のPBMCのIgG産生を約53%減少させた。Luc63.2は、PBMCおよびIM9細胞のIgG産生を約47%減少させた。これらの実験から、Luc90H.1、Luc34.1、およびLuc63.2が最良の機能的抗体であることが明らかである。エピトープマッピングから、Luc90およびLuc63は、非重複エピトープを有する。
【0345】
【表2】
実験結果は、抗CS1抗体はインビトロでの末梢血B細胞によるIgGおよびIgM産生の両方を減少させることを示した。
【0346】
(実施例10:SCID−HuPBMCマウスモデルにおけるCS1モノクローナル抗体によるIgGのインビボでの減少)
(SCID−HuPBMCマウスモデル)
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、標準的なFicoll−paque(Amersham Biosciences)密度勾配によって単離し、2×10
7PBMC/mlでリン酸緩衝化溶液(PBS)に再懸濁した。再懸濁したPBMC(1ml)を、C.B−17SCIDマウスに腹腔内(i.p.)注射した。PBMC注射から2〜3週間後、マウスから血清サンプルを採取し、ELISAによってヒトIgGについてアッセイした。グラフティングしたマウス(血清中に1μg/mlを超えるヒトIgGを産生する)を、治療群に無作為に分け、マウス抗ヒトCS−1モノクローナル抗体(Luc90.H1またはLuc63.2.22)、マウスイソ型コントロール抗体(それぞれIgG2bまたはIgG2a)、またはPBSで処置した。マウスに200μgの抗体を含む500μlPBSを3〜4日毎に3回または4回投与した。マウス血清を、標準的なプロトコールを使用したELISAによってヒトIgGについて分析した。
【0347】
投与後のヒトIgG濃度(x日目)〜第1の抗体投与前のヒトIgG濃度(0日目)を差し引き、これを第1の投与前のヒトIgG濃度(0日目)で割り、100を掛けることによって、各マウスについての血清ヒトIgGの変化率を計算した(例えば、[(x日目−0日目)/0日目]×100)。データは、各マウス群についての標準誤差を含む平均変化率を示す。ヒトIgG濃度は、各マウス群について標準誤差を含む平均濃度である。Welchの2サンプルt検定を使用して、治療群のヒトIgGの変化率を比較した。
抗CS1抗体はインビボでのヒトIgG産生を減少させた
データは、本発明の抗CS1抗体がSCID−HuPBMC導入モデルにおけるヒト免疫グロブリン産生を実質的に減少させることを示した。
図19Aに示すように、Luc90.H1が早くも4日目にPBSおよびイソ型コントロールにおけるIgG産生の減少を保持した(第1の抗体投与での治療から4日後)。この減少は、7週間(32日目)の試験期間を通して維持された。例えば、18日目では、ヒトIgG産生は、IgG2bイソ型コントロールでは225%増加し、PBSコントロールでは181%増加する一方で、ヒトIgG産生はLuc90H.1処置で14%減少した。Luc90H.1は、コントロール群でのヒトIgG産生の181〜225%の増加をなくすだけでなく、IgG産生をさらに14%減少させた。25日目で、Luc90H.1は、コントロール群でのヒトIgG産生の3倍増加をなくすだけでなく、ヒトIgG産生をさらに24%減少させた。
【0348】
Luc63.2はまた、インビボでのIgG産生を有効に減少させた。
図19Bに示すように、Luc63.2は、コントロール群(PBSおよびIgG2aイソ型コントロール)におけるヒトIgG産生の37〜46%の増加をなくし、IgG産生をさらに59%減少させる。この同一の研究では、Luc90.H1をLuc63.2と比較し、Luc90.H1は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をグラフティングしたマウスにおいて、コントロール群(PBSおよびIgG2bイソ型コントロール)における37〜114%の増加をなくし、IgG産生をさらに14%減少させた。
【0349】
図19Cは、SCID−HuPBMCモデルのLuc90およびLuc63処置によるIg産生の減少をさらにまとめている。イソ型およびPBSコントロールで処置したマウスにおけるIgG産生の減少をなくす一方で、Luc90はIgG産生を14%、22%、24%、および39%さらに減少させ、Lu63はさらに40%および59%減少させた。したがって、ヒトPBMCをグラフティングしたSCIDマウス(SCID−HuPBMC)の抗Luc処置はこれらの動物の血清で通常認められるヒト免疫グロブリンの増加を完全になくすだけでなく、前処置レベルと比較してさらに減少させると結論づけることができる。
【0350】
(実施例11:抗CS1抗体のADCC活性化)
(エフェクター細胞の調製:)
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)(エフェクター細胞)を、標準的な密度Ficoll−Paque(Amersham Biosciences)勾配を使用して、全血から単離した。細胞を洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補足したRPMI培地に再懸濁した。
【0351】
(標的細胞の調製:)
細胞表面CS−1を発現する安定なトランスフェクタント細胞(標的細胞)を洗浄し、1%BSAを補足したRPMI培地に再懸濁した。100,000細胞/ウェルの細胞を50μlの全体積でプレートした。種々の濃度のマウス抗ヒトCS−1モノクローナル抗体(Luc90.H1またはLuc63.2.22)またはイソ型コントロール抗体(そ
れぞれマウスIgG2bまたはIgG2a)を、100μlの最終体積で標的細胞に添加し、室温で30分間インキュベートした。
【0352】
インキュベーション後、100μlのエフェクターPBMCを、200μlの最終体積で標的細胞に20:1の比率で添加した。標的細胞およびエフェクター細胞を、37℃で5時間または一晩インキュベートした。細胞を350×gで5分間遠心分離し、100μl/ウェルの上清を回収し、光学的に透明な96ウェル平底マイクロタイタープレートに移した。
【0353】
(乳酸デヒドロゲナーゼアッセイ)
上清に含まれる乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を決定するために、細胞傷害性検出キット(Roche Applied Science,Indianapolis,IN)に含まれる100μlの反応混合物を各ウェルに添加し、サンプルを15〜25℃で30分間までインキュベートした。このインキュベーション期間に、マイクロタイタープレートを遮光した。ELISAリーダーを使用して490nmのサンプルの吸光度を測定した。
【0354】
細胞媒介細胞傷害性率を決定するために、以下の式を使用してサンプルの平均吸光度を計算し、バックグラウンドコントロールを差し引いた。
【0355】
【数1】
実験コントロールは、標的細胞のみまたはエフェクター細胞のみの自発的放出であった。標的細胞を、2%Triton−X100(1:1)溶液中でアッセイした。
【0356】
(抗CS1抗体は抗体由来細胞傷害性(ADCC)を誘導する)
実験は、抗CS1抗体であるLuc63.2およびLuc90がPBMC(エフェクター細胞)の存在下でCS1を発現する細胞の抗体由来細胞傷害性(ADCC)を誘導することを示した。
図20に示すように、Luc90は投与量依存性様式で細胞傷害性を誘導する。50μg/mlのLuc90は、標的細胞の細胞傷害性をほぼ50%誘導した。Luc63.2は、一般に、10〜50μg/mlの用量範囲で標的細胞の細胞傷害性を60〜80%誘導した。2つのさらなるドナーを使用して行った実験から類似の結果が得られた。
【0357】
(実施例12:低フコースCS1抗体でのADCC活性)
(Luc90可変領域cDNAのクローニング)
マウス可変領域(配列番号3および4)を、標準的な方法によって、Luc90ハイブリドーマ細胞株からクローン化した。簡単に述べれば、総RNAを抽出し、供給者のプロトコールにしたがって、SMART 5’−RACEcDNA増幅キット(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)を使用して二本鎖cDNAを合成した。配列決定のために、可変領域cDNAのPCRフラグメントを、pCR4Blunt−TOPOベクター(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にクローン化した。各重鎖および軽鎖についていくつかのプラスミドクローンを配列決定した。典型的なマウス重鎖および軽鎖の可変領域に相同な固有の配列を同定した。
【0358】
(キメラLuc90VHおよびVL発現ベクターの構築)
各Luc90のVHおよびVLをそれぞれコードする遺伝子を、シグナルペプチド、スプライスドナーシグナル、Kozak開始配列、および哺乳動物発現ベクターへのその後のクローニングに適切な制限酵素を含むミニエクソンとしてデザインした。VH遺伝子またはVL遺伝子のいずれかを含むTOPOベクターから、PCRのための適切な制限部位および相補物を含むようにプライマーをデザインした。PCR増幅フラグメントを、Qiaquick PCR精製キット(Qiagen)によって精製し、MluIおよびXbaIで消化した。Luc90VH遺伝子をpHuHCgl.D(野生型)またはpHuHCgl.D.AA(BS変異体)にサブクローン化して、プラスミドpChiHuHCgl.D−MuLuc90VHおよびpChiHuHCgl.D.AA−MuLuc90VHをそれぞれ作製した。BS変異体は、Fc受容体への結合がなくなるように、IgG1のCH2領域中に2つのアミノ酸が変化している(L234A/L235A)(Xuら,(2000)Cell Immunol.200:16−26)。Luc90VL遺伝子をpVkにサブクローン化してプラスミドpChiVk−MuLuc90VLを作製した。重鎖および軽鎖の遺伝子を1つのプラスミドから発現することができるように、単一のプラスミド発現ベクターを作製した。重鎖ベクターをEcoRIで消化して全重鎖領域を除去し、軽鎖ベクター中の単一のEcoRI部位にサブクローン化した。BS変異重鎖をpChiVk−MuLuc90VLベクターフラグメントと組み合わせてプラスミドpChiLuc90−BSKを作製し、野生型重鎖をpChiVk−MuLuc90VLベクターにサブクローン化してプラスミドpChiLuc90−glKを作製した。
【0359】
(キメラLuc90の発現)
pChiLuc90−glKおよびpChiLuc90−BSKベクターでのSp2/0細胞の安定なトランスフェクションによって、キメラLuc90IgGl/κ野生型およびBSを産生した。pChiLuc90−glKベクターでのYB2/0細胞の安定なトランスフェクションによって、低フコース抗体を産生した。ミコフェノール酸培地で陽性クローンを選択し、ELISAによってスクリーニングした。野生型クローンAH4、BS変異体HG12、および低フコースクローン5E4を、高発現について選択し、2%低Igウシ胎児血清を含むGibcoハイブリドーマ無血清培地に馴化させた。精製用の回転ボトル中で2リットルの培養物を成長させた。標準的なプロテインGアフィニティカラムクロマトグラフィによって抗体を精製した。
【0360】
図21A〜Cは、細胞傷害性アッセイにおける低フコース抗体の効果についてのデータを示す。CS1発現細胞(安定なトランスフェクタントおよびヒト多発性骨髄腫細胞株)を、抗CS1 Luc90キメラ抗体(野生型および低レベルのフコースで修飾した抗体)で処置した。抗CS1 Luc90キメラ抗体は、CS1を発現する細胞の抗体依存性細胞傷害性を刺激する(
図21AはヒトCS1を発現する安定な細胞株の細胞傷害性を示し、
図21Bおよび21Cは2つのヒト骨髄腫細胞株(OPM2(
図21B)およびL363(
図21C))の細胞傷害性を示す。それぞれの場合、(上記で詳述のYB2/0中での成長による)低レベルのフコースを有する抗体によって有意に増強される)。
【0361】
(実施例13:抗CS1抗体での骨髄腫の治療)
試験被験体への抗体の腹腔内注射によって、骨髄腫マウス腫瘍をインビボにて抗CS1抗体で処置した。
図22に示すように、抗CS1抗体の処置(Luc63およびLuc90)により、イソ型コントロール処置動物と比較して腫瘍サイズが減少する。この研究では、1×10
7個の骨髄腫細胞(L363骨髄腫細胞株)を、CB.17SCIDマウスに腹腔内注射した。2週間後、腫瘍サイズが約80mm
3に達した時に、マウスを無作為に群あたり8匹で4群に分けた。マウスを抗CS1抗体(Luc63またはLuc90)またはイソ型コントロール抗体(マウスIgG2aまたはマウスIgG2b)で処置した。マウスに8回投与でマウスあたり200μgの抗体を1週間に3回投与した。結果は、抗CS1抗体で処置したマウスがイソ型コントロール抗体処置マウスと比較して腫瘍体積を有意に減少させたことを示す。研究25日目(5回投与後)までに、Luc63処置マウスの平均腫瘍サイズは、IgG2aイソ型コントロール抗体処置マウス(平均腫瘍サイズは約800mm
3)と比較して約100mm
3である。Luc90処置マウスの平均腫瘍サイズは、IgG2bイソ型コントロール抗体処置マウス(平均腫瘍サイズは約950mm
3)と比較して約400mm
3である。抗CS1 Luc63で処置したマウスでは、処置から2.5週間後までに測定可能な腫瘍は認められず、腫瘍形成性細胞の排除に対するこの抗体の顕著な効果を示す。
【0362】
骨髄腫のさらなるモデル系には、蛍光標識または非標識骨髄腫細胞株または成熟B細胞株(例えば、ARH77、CESS、IM9、L363、LP1、およびOPM2)を静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)に移植するか、骨に直接注射した(同所的)SCIDマウスが含まれる。これらの株を使用して、骨髄腫動物モデル系におけるアンタゴニスト処置の効果を試験する。これらの細胞株は、抗ヒトCS1抗体によって認識される抗体を発現する。動物を無作為に群に分け、抗ヒトCS1抗体またはコントロール抗体(例えば、イソ型コントロール抗体)を使用した治療計画に供する。抗体をいくつかの投与量レベルで投与する(例えば、全部で9〜10回の投与で1〜10mg/kgの用量を3〜4日毎に腹腔内に注射する)。腫瘍サイズを、各治療群について1週間に2回ずつ35〜40日間測定する。骨髄腫の臨床症状が認められる。各マウスの死亡日を記録する。
【0363】
抗CS1抗体治療と化学療法との潜在的相乗効果を決定するための動物実験も開始する。腫瘍の異種移植片を、50〜100mm
3の適切なサイズに到達するまで成長させ、i.v.、i.p.または同所に注射したマウスについて、癌細胞を動物にグラフティングする。その時、動物を無作為に群に分け、抗ヒトCS1抗体またはコントロール抗体(例えば、イソ型コントロール抗体)を使用した治療計画に供する。あるいは、動物を、標準的な化学療法薬と組み合わせた抗ヒトCS1抗体またはコントロール抗体(例えば、イソ型コントロール抗体)を使用した治療(プレドニゾンおよびメルファランまたは他のアルキル化剤(例えば、シクロホスファミドまたはクロランブシル)、またはビンクリスチンの組み合わせが含まれる)、ドキソルビシンおよび高用量デキサメタゾン(VAD)治療、または当業者に公知の他の化学療法計画に供することができる。抗体を、いくつかの投与量レベル(例えば、9〜10回の投与で1〜10mg/kgの用量を3〜4日毎に腹腔内に投与する)で投与する。有効濃度(例えば、1mg/kgまたは当業者に公知の他の有効用量)の化学療法薬を3〜4日毎に腹腔内に投与する。(s.c.注射マウスの)腫瘍サイズを、各治療群について1週間に2回ずつ35〜40日間測定する。骨髄腫の臨床症状が認められ、これには、ヒト免疫グロブリンを分泌する細胞株(IM9、CESS、ARH−77、およびLP−1)を注射したマウスにおける血清免疫グロブリンが含まれる。各マウスの死亡日を記録する。化学療法の有無における抗体治療の有効性を評価する。
【0364】
上記の実施例は本発明の真の範囲を決して制限することはなく、むしろ、例示の目的のために記載していることが理解される。全ての刊行物、アクセッション番号の配列、および本明細書中で引用された特許出願は、参考として援用するために各刊行物、アクセッション番号、または特許出願が具体的且つ個別に示されるかのように本明細書中で参考として援用される。
【0365】
【表3】
【0366】
【表4】
【0367】
【表5】
【0368】
【表6】
【0369】
【表7】
【0370】
【表8】
【0371】
【表9】