特許第6042837号(P6042837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワイエイシイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6042837-プレス仕上げ用鏝の製造方法 図000002
  • 特許6042837-プレス仕上げ用鏝の製造方法 図000003
  • 特許6042837-プレス仕上げ用鏝の製造方法 図000004
  • 特許6042837-プレス仕上げ用鏝の製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042837
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】プレス仕上げ用鏝の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06F 71/36 20060101AFI20161206BHJP
   D06F 71/34 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   D06F71/36
   D06F71/34
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-42300(P2014-42300)
(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2015-167607(P2015-167607A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2015年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591035209
【氏名又は名称】ワイエイシイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093953
【弁理士】
【氏名又は名称】横川 邦明
(74)【代理人】
【識別番号】100074239
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 良徳
(72)【発明者】
【氏名】宮下 紀昭
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−175798(JP,U)
【文献】 特開平02−306097(JP,A)
【文献】 実開平03−041700(JP,U)
【文献】 特開2012−139374(JP,A)
【文献】 米国特許第06539651(US,B1)
【文献】 米国特許第05146700(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 71/34
D06F 71/36
D06F 73/00
D06F 75/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の流路形成板と、
この流路形成板の一方側に配設された平板状の鏝板と、
前記流路形成板の他方側に配設された平板状の背板とからなり、
前記流路形成板、前記鏝板、前記背板は、一体になるように外周側が固定され、
前記流路形成板には、前記鏝板の全面を均等に加熱するように流路が貫通して形成され、
前記流路形成板の流路にスチームを供給するスチーム供給パイプと、このスチーム供給パイプより供給されたスチームを排出するスチーム排出パイプとが設けられ、
前記背板側には、スチームが供給されるスチームチャンバー室を形成するようにスチームチャンバー枠板が固定され、
前記流路形成板の前記流路間の仕切り部に対応して前記背板、前記流路形成板、前記鏝板には、前記スチームチャンバー室から外部に連通するスチーム噴出孔が形成されている
プレス仕上げ用鏝を製造するためのプレス仕上げ用鏝の製造方法において、
前記流路形成板、前記鏝板及び前記背板の外周側はレーザ溶接によって固定され、さらに
前記流路形成板の前記仕切り部に対応した前記鏝板、前記流路形成板、前記背板は、前記流路に沿ってレーザ溶接によって一体的に固定される
ことを特徴とするプレス仕上げ用鏝の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類をプレス仕上げするプレス仕上げ用鏝に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス仕上げ用鏝として、例えば特許文献1及び2が挙げられる。
【0003】
特許文献1は、スチームを通す金属管を鏝板の裏面に接触させ、鏝板を加熱するようにしている。
【0004】
特許文献2は、内部が中空状に形成され、この内部に外部からスチームを供給するプレス仕上げ用鏝である。プレス仕上げ用鏝の内部の中空部には、多数(実施の形態は8個)の流路形成部材が縦方向に延ばされて上下端が開放され、且つ左右方向に間隔をあけて設けられ、また左右の最も端の流路形成部材と、この流路形成部材と対向する内部の左右の内壁との間のスペースに、スチームの供給口が臨まれて設けられている。スペースの下部には、スチームの供給口から流入するスチームが下方へ流れるのを防止する遮蔽板が設けられている。
【0005】
プレス仕上げ用鏝には、鏝板を加熱するのみの構造(以下、鏝加熱のみ構造という)と、鏝板を加熱すると共に、鏝板からスチームを衣類に吹き付ける構造(以下、鏝加熱とスチーム噴出構造という)とがある。鏝加熱のみ構造は、一般的にシャツの仕上げに使用され、鏝加熱とスチーム噴出構造は、一般的にウールの衣類の仕上げに使用されている。特許文献1及び2は鏝加熱のみ構造であり、この構造を鏝加熱とスチーム噴出構造にするには、次ぎのような構造を付加する必要がある。鏝には、衣類にスチームを吹き付けるスチーム噴出孔を設け、且つスチームを前記スチーム噴出孔に供給するためにスチームが供給されるスチームチャンバーを設ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−176200号公報
【特許文献2】特開2012−139374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、金属管に流れるスチームの熱で金属管を加熱し、その熱が鏝板に伝達されるので熱伝達効率が悪い。また金属管であるので鏝板との接触面積が少なくこの点からも熱伝達効率が悪い。また金属管を用いるので厚くなるという問題があった。
【0008】
特許文献2は、鏝板と背板で形成する中空部に設けられた流路形成部材間によってスチームの流路が形成されている。このため、スチームが直接鏝板に接触するので熱伝達効率がよい。また中空部に流路形成部材を設けた構造であるので特許文献1に比べて薄くできる。しかし、多数(実施の形態は8個)の流路形成部材及び2個の遮蔽板を設け、背板は取付け部材を介して支持部材に取付けられる。また多数の流路形成部材,遮蔽板、取付け部材及び支持部材等はネジ又は溶接によって固定される。このように多くの部材を設け、これらはネジ又は溶接によって個々に固定するので加工工数が非常にかかり高価となる。
【0009】
本発明の課題は、部品点数が少なく、また加工工数が少なくて低廉化が図れるプレス仕上げ用鏝を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係るプレス仕上げ用鏝の製造方法は、平板状の流路形成板と、この流路形成板の一方側に配設された平板状の鏝板と、前記流路形成板の他方側に配設された平板状の背板とからなり、前記流路形成板、前記鏝板、前記背板は、一体になるように外周側が固定され、前記流路形成板には、前記鏝板の全面を均等に加熱するように流路が貫通して形成され、前記流路形成板の流路にスチームを供給するスチーム供給パイプと、このスチーム供給パイプより供給されたスチームを排出するスチーム排出パイプとが設けられ、前記背板側には、スチームが供給されるスチームチャンバー室を形成するようにスチームチャンバー枠板が固定され、前記流路形成板の前記流路間の仕切り部に対応して前記背板、前記流路形成板、前記鏝板には、前記スチームチャンバー室から外部に連通するスチーム噴出孔が形成されているプレス仕上げ用鏝を製造するためのプレス仕上げ用鏝の製造方法において、前記流路形成板、前記鏝板及び前記背板の外周側はレーザ溶接によって固定され、さらに前記流路形成板の前記仕切り部に対応した前記鏝板、前記流路形成板、前記背板は、前記流路に沿ってレーザ溶接によって一体的に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
鏝加熱構造は、流路形成板、鏝板、背板の3個の部材を一体的に固定した構造よりなっている。このように非常に少ない部材よりなり、またこの3個の部材を一体的に固定する非常に少ない加工工数で製作されるので、製品の低廉化が図れる。また流路形成板の表面及び裏面に鏝板及び背板を重ね合せて一体的に固定した構造であるので、厚さが非常に薄くなる。また流路形成板の流路に流れるスチームにより鏝板を直接加熱する構造であるので熱伝達効率がよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のプレス仕上げ用鏝の一実施の形態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面拡大図である。
図2】流路形成板のR曲げ前の平状態を示し、(a)は平面図、(b)は右側面図である。
図3】鏝板のR曲げ前の平状態を示し、(a)は平面図、(b)は右側面図である。
図4】背板のR曲げ前の平状態を示し、(a)は平面図、(b)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のプレス仕上げ用鏝の一実施の形態を図により説明する。本実施の形態は、鏝加熱とスチーム噴出構造に適応した例を示す。従って、図1に示すように、鏝加熱構造1とスチーム噴出構造2とを備えている。
【0016】
[ 鏝加熱構造1]
鏝加熱構造1は図2の流路形成板10と、この流路形成板10の表面に配設された図3の鏝板20と、流路形成板10の背面に配設された図4の背板30とからなっている。
【0017】
図2の流路形成板10には、流路11が打ち抜き又は切削等によって貫通して形成されている。流路11は、鏝板20の全面を均等に加熱するように蛇行した形状に形成されている。また流路11間及び流路11の外側の仕切り部12には、多数の孔13が形成されている。流路11の右上方部11a 及び右下方部11b は後記するスチーム供給パイプ43及びスチーム排出パイプ取付け穴44に連通する部分となっている。
【0018】
図3の鏝板20及び図4の背板30には、流路形成板10の多数の孔13に対応した位置に、多数の孔21及び31が形成されている。図4の背板30には、図2の流路形成板10の流路11の右上方部11a 及び右下方部11b に対応した位置にスチーム供給パイプ取付け穴32及びスチーム排出パイプ取付け穴33が形成されている。
【0019】
そこで、図2の流路形成板10の多数の孔13に対応する図3の鏝板20及び図4の背板30の孔21及び31を合せて流路形成板10、鏝板20及び背板30を重ね合せ、図1(a)に示すように、流路形成板10の周囲をレーザ溶接40して流路形成板10、鏝板20及び背板30を一体的に固定する。また流路11に沿って仕切り部12をレーザ溶接41し、流路形成板10の流路11間の仕切り部12を鏝板20及び背板30に一体的に固定する。本実施の形態は、流路形成板10、鏝板20、背板30をレーザ溶接40、41で一体的に固定したが、流路形成板10と鏝板20をレーザ溶接40、41で一体的に固定した後、流路形成板10と背板30をレーザ溶接40、41で一体的に固定してもよい。これにより、孔13、21及び31は貫通したスチーム噴出孔42となる。レーザ溶接としては、特開2012−252935号公報、特開2012−228715号公報などに示す技術が知られている。これにより、流路形成板10の上下は鏝板20と背板30で覆われ、流路11が形成される。このように、流路形成板10、鏝板20、背板30が一体的となった平状態の鏝加熱構造1を図1に示すようにR曲げ加工する。次に図4の背板30のスチーム供給パイプ取付け穴32及びスチーム排出パイプ取付け穴33を通して図2の流路形成板10のスチーム供給パイプ取付け穴14及びスチーム排出パイプ取付け穴15にそれぞれ図1に示すように、スチーム供給パイプ43及びスチーム排出パイプ44を挿入し、スチーム供給パイプ43及びスチーム排出パイプ44を背板30に溶接固定する。
【0020】
[スチーム噴出構造2]
図1に示すように、背板30の外側にはスチームチャンバー室50を形成するようにスチームチャンバー枠板51が固定されている。スチームチャンバー枠板51の中央には鏝加熱構造1の長手方向に伸びた長方形状のスチーム噴出枠体52が固定されており、このスチーム噴出枠体52の側面には多数の孔が形成されている。スチーム噴出枠体52に外部よりスチームを供給するようにスチームチャンバー枠板51には鏝ブローパイプ53が固定されている。
【0021】
次に作用について説明する。図示のプレス仕上げ用鏝を下鏝として使用する場合には、この下鏝の上方には上鏝が上下動可能に設けられている。スチーム供給パイプ43にスチームを供給すると、スチームは流路11を矢印C方向に蛇行して流れ、スチーム排出パイプ44より外部に排出される。この流路11を流れるスチームによって鏝板20は加熱される。また鏝ブローパイプ53にスチームを供給すると、スチームはスチームチャンバー室50に流れ、スチーム噴出孔42を通って外部に排出される。これにより、鏝板20上に置かれた衣類にスチームが吹き付けられると共に、加熱されている鏝板20で加熱される。次に上鏝が下降して衣類を下鏝の鏝板20に押し付けてプレス仕上げする。この場合、上鏝も下鏝と同様の構造とすることにより、衣類には上下よりスチームが吹き付けられると同時に上下が加熱されてプレス仕上げされる。
【0022】
なお、本実施の形態は、流路11を蛇行した形状に形成したが、渦巻き形状に形成してもよい。この流路11の形状は限定されなく、鏝板20の全面を均一に加熱する形状であればよい。また本実施の形態は鏝加熱とスチーム噴出構造に適用した場合について説明した。本実施の形態を鏝加熱のみ構造に適用する場合には、スチーム噴出孔42(孔13、21及び31)は形成しなくてよく、またスチーム噴出構造2(スチームチャンバー室50、スチームチャンバー枠板51、スチーム噴射板52、鏝ブローパイプ53)は設けなくてよい。
【0023】
本実施の形態の鏝加熱構造1は、流路形成板10、鏝板20、背板30の3個の部材を一体的に固定した構造よりなっている。このように非常に少ない部材よりなり、またこの3個の部材を一体的に固定する非常に少ない加工工数で製作されるので、製品の低廉化が図れる。また流路形成板10の表面及び裏面に鏝板20及び背板30を重ね合せて一体的に固定した構造であるので、厚さが非常に薄くなる。また流路形成板10の流路11に流れるスチームにより鏝板20を直接加熱する構造であるので熱伝達効率がよい。
【符号の説明】
【0024】
1 鏝加熱構造
2 スチーム噴出構造
10 流路形成板
11 流路
12 仕切り部
20 鏝板
30 背板
40、41 レーザ溶接
42 スチーム噴出孔
43 スチーム供給パイプ
44 スチーム排出パイプ
50 スチームチャンバー室
51 スチームチャンバー枠板
図1
図2
図3
図4