特許第6042874号(P6042874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042874
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】軽油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/08 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   C10L1/08
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-507363(P2014-507363)
(86)(22)【出願日】2013年2月20日
(86)【国際出願番号】JP2013000948
(87)【国際公開番号】WO2013145535
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-79570(P2012-79570)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】新妻 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】岩間 真理絵
(72)【発明者】
【氏名】那須野 一八
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 司
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−526637(JP,A)
【文献】 特開2012−021085(JP,A)
【文献】 特開2007−238830(JP,A)
【文献】 特開2007−270110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄分が1質量ppm以下、芳香族分が1質量%以下、炭素数5〜15のパラフィン分が40〜70質量%、炭素数20〜27のパラフィン分が7〜16質量%、イソパラフィン分が50〜75質量%であり、
低温流動性向上剤を150〜1000質量ppm含むことを特徴とする軽油組成物。
【請求項2】
流動点が−70〜−35℃、30℃における動粘度が1.5〜4.0mm2/sであることを特徴とする請求項1に記載の軽油組成物。
【請求項3】
前記軽油組成物がフィッシャー・トロプシュ合成油を含むことを特徴とする請求項1に記載の軽油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油組成物、特に、非常に低温の環境下でも使用できる軽油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に軽油組成物は、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油に水素化精製処理や水素化脱硫処理を施したもの、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油に水素化精製処理や水素化脱硫処理を施したものを一種又は二種以上配合することにより製造されている。特に、冬場の低温流動性を確保するためには、上記灯油基材と軽油基材の配合比を制御している場合が多く、必要に応じてセタン価向上剤や清浄剤、低温流動性向上剤等の添加剤が配合される。
【0003】
ここで近年、石油系燃料の代替燃料の一つとして、一酸化炭素と水素を原料としたフィッシャー・トロプシュ合成によって得られた、フィッシャー・トロプシュ合成油(以下、「FT合成油」という。)を利用することが検討されている。FT合成油からディーゼル燃料用の軽油を製造すれば、硫黄分を含まない軽油が得られるため、該FT合成軽油は環境負荷低減の面で好ましい。
【0004】
ただし、上述したFT合成油は、比較的直鎖飽和炭化水素(ノルマルパラフィン)化合物の含有量が多く、特に重質なノルマルパラフィン化合物を含有した場合、そのもの自体がまさにワックスとして析出してしまう可能性が指摘されている。また、FT合成基材は上述のノルマルパラフィンと側鎖を有する飽和炭化水素(イソパラフィン)化合物が大部分を占めた炭化水素混合物であるため、一般には油溶性が乏しく、油溶性基(直鎖アルキル基等)に多くを依存して軽油等の燃料油に溶解するタイプの添加剤は溶解自体が困難になる可能性がある。以上のことから、低温環境下ではFT合成油に由来した軽油を使用できないという問題があった。
【0005】
上記課題を解決するべく、種々の技術が開発されている。例えば特許文献1には、特定の組成を有するFT合成軽油組成物に対して、潤滑向上剤及び低温流動性向上剤を添加混合することで、低温環境下における流動性の改善を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−270109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、北極圏や南極圏等のような寒冷地において軽油組成物を使用することを考えると、特許文献1に記載の技術によって得られたFT合成軽油組成物では、十分な流動性を得られないおそれがあり、さらなる低温性能の向上が望まれていた。
【0008】
また、上述したFT合成軽油をディーゼルエンジンの燃料として用いる場合、エンジン燃焼時の始動性やアイドリング時の回転安定性を良好に保つためには30℃における動粘度を高くする必要があり、一方、低温環境での流動性を向上するためには流動点を低くする必要があるが、これら動粘度と流動点はトレードオフの関係にあるため、従来の技術では両立させることは困難であった。そのため、厳しい低温環境においても、動粘度を低下させることなく、流動性を向上できる技術の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、FT合成油等のノルマルパラフィンの含有量が多い油を原料として含む場合であっても、従来技術に比べて優れた低温性能を発揮できる軽油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねたところ、軽油組成物の組成について適正化を図るとともに、該軽油組成物に対して、特定量の低温流動性向上剤を添加することによって、動粘度を低下させることなく、低温環境における優れた流動性を実現できることを見出した。
【0011】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)硫黄分が1質量ppm以下、芳香族分が1質量%以下、炭素数5〜15のパラフィン分が40〜70質量%、炭素数20〜27のパラフィン分が7〜16質量%、イソパラフィン分が50〜75質量%であり、低温流動性向上剤を150〜1000質量ppm含むことを特徴とする軽油組成物。
【0012】
(2)流動点が−70〜−35℃、30℃における動粘度が1.5〜4.0mm/sであることを特徴とする上記(1)に記載の軽油組成物。
【0013】
(3)前記軽油組成物がフィッシャー・トロプシュ合成油を含むことを特徴とする上記(1)に記載の軽油組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ノルマルパラフィンの含有量が多い油を原料として用いた場合であっても、従来技術に比べて優れた低温性能を有する軽油組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明による軽油組成物は、硫黄分が1質量ppm以下、芳香族分が1質量%以下、炭素数5〜15のパラフィン分が30〜85質量%、炭素数20〜27のパラフィン分が3〜20質量%、イソパラフィン分が50〜75質量%であり、低温流動性向上剤を20〜1000質量ppm含むことを特徴とする。
【0016】
(硫黄分、芳香族分)
本発明の軽油組成物は、硫黄分が1質量ppm以下、芳香族分が1質量%以下である。ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質をより低減するため、また、燃費をより向上する観点から、硫黄分を1質量ppm以下、芳香族分を1質量%以下とする。
【0017】
(炭素数5〜15のパラフィン分)
本発明の軽油組成物は、炭素数5〜15のパラフィン分が30〜85質量%であり、好ましくは40〜70質量%である。炭素数5〜15のパラフィン分は、ディーゼルエンジンの始動性やアイドリング時の回転安定性を良好にする点から30質量%以上に限定され、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質低減の点から85質量%以下に限定される。
【0018】
(炭素数20〜27のパラフィン分)
本発明の軽油組成物は、炭素数20〜27のパラフィン分が3〜20質量%であり、好ましくは7〜16質量%である。炭素数20〜27のパラフィン分は、低温流動性向上剤の溶解性を良好にするため3質量%以上とする必要があり、軽油組成物の低温流動性を良好にするために20質量%以下とすることが必要である。
【0019】
(イソパラフィン分)
本発明の軽油組成物は、イソパラフィン分が50〜75質量%であり、好ましくは60〜70質量%である。低温時の始動性および運転性を良好にするためには、イソパラフィン分を50質量%以上とする必要があり、高収率で軽油組成物を得るためには、イソパラフィン分を75質量%以下とする必要がある。
【0020】
(ノルマルパラフィンとイソパラフィンとの質量比)
また、前記ノルマルパラフィン分の前記イソパラフィン分に対する質量比(ノルマルパラフィン分/イソパラフィン分)は、0.3〜1.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.7である。この質量比(ノルマルパラフィン分/イソパラフィン分)は、非常に低温な気象条件下におけるディーゼルエンジンの燃焼時の始動性やアイドリング時の回転安定性を良好にする点から0.3以上とし、低温時の始動性及び運転性を良好にするため、異性化してイソパラフィンを一定以上含むことから、1.0以下とすることが好ましい。
【0021】
(蒸留性状)
本発明の軽油組成物は、5%留出温度が140〜200℃であることが好ましく、より好ましくは150〜195℃である。ディーゼルエンジンの始動性やアイドリング時の回転安定性を良好にするためには、5%留出温度を140℃以上とし、低温時の始動性及び運転性を良好にするためには、5%留出温度を200℃以下とすることが好ましい。
また、本発明の軽油組成物は、95%留出温度が300〜340℃であることが好ましく、より好ましくは310〜330℃である。ディーゼルエンジンの燃料消費率を良好にする観点で、95%留出温度を300℃以上とすることが好ましく、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質低減の観点から95%留出温度を340℃以下とすることが好ましい。
【0022】
(密度)
本発明の軽油組成物は、15℃における密度が0.750〜0.780g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.760〜0.780g/cmである。15℃における密度は、ディーゼルエンジンの燃料消費率を良好にするために0.750g/cm以上とし、軽油組成物の低温流動性を良好にするために0.780g/cm以下とする。
【0023】
(曇り点)
また、本発明の軽油組成物は、非常に低温な気象条件下での使用に耐えられるように、曇り点が−35℃以下であることが好ましく、より好ましくは−55℃以下である。ここで、曇り点とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準じて測定される曇り点のことを意味する。
【0024】
(30℃における動粘度)
本発明の軽油組成物の30℃における動粘度は、1.5〜4.0mm/sであることが好ましく、2.0〜3.5mm/sであることがより好ましい。30℃における動粘度については、ディーゼルエンジンの始動性やアイドリング時の回転安定性を良好にする点から、1.5mm/s以上とし、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質低減の点から、4.0mm/s以下とすることが好ましい。
【0025】
(流動点)
本発明の軽油組成物の流動点は、−35℃以下であることが好ましい。非常に低温な気象条件下における低温流動性を良好にするためには、流動点を−35℃以下とすることが好ましく、より好ましくは−55℃以下とする。
また、必要以上に流動点を低くする必要はなく、軽油組成物の製造コストの観点からは、流動点を−70℃以上とすることが好ましく、−66℃以上とすることがより好ましい。
【0026】
(低温流動性向上剤)
本発明の軽油組成物は、低温流動性向上剤を150〜1000質量ppm含むことが必要であり、150〜500質量%含むことが好ましく、200〜300質量%含むことがさらに好ましい。低温流動性向上剤の含有量(添加量)は、ディーゼル自動車のフィルターが低温時に閉塞することを防止するために150質量ppm以上とし、低温流動性向上剤の効き具合と経済性の観点から1000質量ppm以下とする。
【0027】
前記低温動粘性向上剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又は界面活性効果を有する低温流動性向上剤が用いられる。例えば、界面活性効果を有する低温流動性向上剤としては、エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、塩素化メチレン−酢酸ビニル共重合体、不飽和カルボン酸のアルキルエステル重合体、水酸基を有する含窒素化合物と飽和脂肪酸から合成されるエステルもしくはその塩、多価アルコールと飽和脂肪酸から合成されるエステル及びアミド誘導体、ポリオキシアルキレングリコールと飽和脂肪酸から合成されるエステル、多価アルコール又はその部分エステルのアルキレンオキサイド付加物と飽和脂肪酸から合成されるエステル、塩素化パラフィン/ナフタレン縮合物、アルケニルコハク酸アミド、スルホ安息香酸のアミン塩などから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0028】
(潤滑性向上剤)
また、本発明の軽油組成物は、潤滑性向上剤を活性分濃度で20〜300mg/L含むことが好ましく、50〜200mg/L含むことがより好ましい。潤滑性向上剤の添加量を20〜300mg/Lの範囲内とすることで、添加された潤滑性向上剤の効能を有効に引き出すことができ、例えば分配型噴射ポンプを搭載したディーゼルエンジンにおいて、運転中のポンプの駆動トルク増を抑制し、ポンプの摩耗を低減させることができる。
【0029】
潤滑性向上剤の種類としては、脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルからなる極性基を有する化合物を含有した潤滑性向上剤を用いる。詳細な化合物名等は特に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸系、エステル系、アルコール系およびフェノール系の各潤滑性向上剤の1種又は2種以上が任意に使用可能である。これらの中でも、カルボン酸系及びエステル系の潤滑性向上剤が好ましい。カルボン酸系の潤滑性向上剤としては、例えば、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸及び上記カルボン酸の2種以上の混合物が例示できる。エステル系の潤滑性向上剤としては、グリセリンのカルボン酸エステルが挙げられる。カルボン酸エステルを構成するカルボン酸は、1種であっても2種以上であってもよく、その具体例としては、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸等がある。また、前述の潤滑性向上剤の活性分の重量平均分子量は、軽油組成物への溶解性を上げるために200以上1000以下であることが好ましい。
【0030】
(その他添加剤)
また、本発明の軽油組成物の性能をさらに高める目的で、後述するその他の公知の燃料油添加剤(以下、便宜上「その他の添加剤」という。)を単独で、又は数種類組み合わせて添加することもできる。その他の添加剤としては、例えば、フェノール系、アミン系などの酸化防止剤;サリチリデン誘導体などの金属不活性化剤;脂肪族アミン、アルケニルコハク酸エステルなどの腐食防止剤;アニオン系、カチオン系、両性系界面活性剤などの帯電防止剤;アゾ染料などの着色剤;シリコン系などの消泡剤;2−メトキシエタノール、イソプロピルアルコール、ポリグリコールエーテルなどの凍結防止剤等が挙げられる。
その他の添加剤の添加量は任意に決めることができるが、添加剤個々の添加量は、軽油組成物の全量基準でそれぞれ好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。
なお、本発明の軽油組成物を適用するディーゼルエンジンのその他の諸元、用途、使用環境に関しては、本発明は何ら制限を加えるものではない。
【0031】
(FT合成油)
本発明の軽油組成物は、フィッシャー・トロプシュ合成油(FT合成油)をさらに含むことが好ましい。上述したように、FT合成油は、比較的直鎖飽和炭化水素(ノルマルパラフィン)化合物の含有量が多く、低温環境下ではFT合油に由来した軽油を使用できないという問題があるため、本発明による効果が最も顕著に発揮されるからである。
また、石油の代替燃料の観点で、FT合成油を活用することで、石油系の基材の消費を抑えるためには、FT合成油を含むことが好ましい。
【0032】
前記FT合成油は、例えば、FT合成油を軽質留分とワックス留分に分留する工程、前記軽質留分は水素化異性化処理をして水素化異性化処理油を得る工程、前記ワックス留分は水素化分解処理をして水素化分解油を得る工程、前記水素化異性化処理油と、前記水素化分解油を混合した後に製品分留装置に供給する工程、及び、本発明の軽油組成物が得られるように前記製品分留装置でのカット温度を調整する工程を含む製造方法によって得られる。また、該製品分留装置のボトム油はリサイクルされて前記ワックス留分と混合された後に水素化分解処理をして水素化分解油とすることが好ましい。
【0033】
さらに、前記製品分留装置から得た軽質軽油基材と重質軽油基材を所定の割合で混合し、本発明の軽油組成物を製造してもよい。前記の軽質軽油基材と重質軽油基材は、何れも、硫黄分が1質量ppm以下、芳香族分が1質量%以下である。軽質軽油基材は、密度が0.740〜0.760、5%留出温度が155〜175℃、95%留出温度が230〜250℃、炭素数5〜15のパラフィン分が90〜99.9質量%、イソパラフィン分が40〜55質量%が好ましい。重質軽油基材は、密度が0.770〜0.790、5%留出温度が240〜260℃、95%留出温度が330〜350℃、炭素数5〜15のパラフィン分が15〜35質量%、イソパラフィン分が70〜85質量%が好ましい。
さらにまた、本発明の軽油組成物の組成を満たすように、溶剤や石油精製プラントの各装置から得られる基材を適宜ブレンドして調製することもできる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、実施例における各性状の分析方法は次のとおりである。
硫黄分:JIS K 2541「硫黄分試験方法」に準じて測定。
芳香族分:JIS K 2536−3「ガスクロマトグラフによる芳香族の求め方」に準じて測定。
蒸留性状:JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」に準じて測定。
密度:JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」に準じて測定。
動粘度:JISK2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準じて測定。
引火点:JISK2265「原油及び石油製品引火点試験方法」に準じて測定。
セタン指数:JISK2280「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」に準じて測定。
曇り点:JISK2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準じて測定。
目詰まり点:JISK2288「軽油−目詰まり点試験方法」に準じて測定。
流動点:JISK2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準じて測定。
パラフィン分、イソパラフィン分:パラフィン分、炭素数ごとのパラフィン分、及びイソパラフィン分は、GC−FIDを用いて測定した。無極性カラム(ステンレスキャピラリーカラムULTRA ALLOY-1)とFID(水素炎イオン化検出器)を用い、キャリアガス(ヘリウム)流量1.0mL/minにて、所定の温度プログラム(カラム恒温層温度:140℃から355℃まで8℃/minで昇温し、試料注入温度360℃、検出器温度360℃)で測定した値より算出した。
【0035】
(軽質軽油基材、重質軽油基材)
軽質軽油基材及び重質軽油基材を、以下の手順に従って準備した。
FT合成反応によって得たFT合成油を用い、FT合成油の軽質留分を水素化異性化処理(LHSV1.8h−1、水素分圧3.0MPa、反応温度320℃)を行った。その後、得られた水素化異性化処理油と、FT合成油のワックス留分を水素化分解処理(LHSV1.8h−1、水素分圧4.0MPa、反応温度310℃)によって得られた水素化分解油とを、製品分留装置のボトム油(カット温度360℃以上の留分)をリサイクル(リサイクル比率50vol%)しつつ混合した後、前記製品分留装置に供給した。そして、前記製品分留装置で分留することで、軽質軽油基材及び重質軽油基材を得た。軽質軽油基材と重質軽油基材のカット温度は250℃である。
得られた軽質軽油基材1と重質軽油基材1の組成については、表1に示す。
【0036】
(実施例1〜4、比較例1〜2)
表1に記載の混合比に従って軽質軽油基材と重質軽油基材とを混合し、さらに低温流動性向上剤(インフィニアムジャパン社製 Infineum R240)を200質量ppm添加することで、サンプルとなる軽油組成物を得た。
【0037】
上記実施例及び比較例で得られた軽油組成物について、各性状の測定を行った後(ただし、留出温度、曇り点、引火点及びセタン指数については、実施例2、比較例1及び比較例2のみ測定した。)、流動点及び動粘度について評価を行った。結果を表1に示す。
非常に低温な気象条件下での使用に良好な条件として、流動点が−70〜−35℃、30℃における動粘度が1.5〜4.0mm/sという条件を満たす場合を「好ましい(○)」とし、さらに、流動点が−66〜−55℃、30℃における動粘度が2.0〜3.5mm/sという条件を満たす場合を「特に好ましい(◎)」とした。一方、上記条件のいずれも満たさない場合を「不良(×)」とした。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の結果から、各実施例で得られた軽油組成物については、非常に低温な気象条件下での使用に良好な品質を有することがわかり、特に本発明の好適範囲に含まれる実施例1〜3についてはより優れた品質を有することがわかった。
一方、各比較例で得られた軽油組成物については、非常に低温な気象条件下ではワックスが析出するか、あるいは動粘度の特性が不十分であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、従来技術に比べて優れた低温性能を有する軽油組成物を提供することが可能となり、FT合成油等のノルマルパラフィンの含有量が多い油を軽油組成物の原料として利用することが容易となり、格別な効果を奏する。