(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記帯状導体が、導電体によって形成される導体テープ、又は導電体粉末を含有する導体塗料若しくは導体接着剤のいずれかの材料を少なくとも一つ使って形成されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の仕切体。
前記媒質部が、コンクリート、モルタル、石こう、木材、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合物、四フッ化エチレン、パラフィン、ウレタン、エポキシ、塩化ビニール、シリコン、ベークライト、発泡スチロール、紙又はゴムのいずれかの材料を少なくとも一つ使って成形されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の仕切体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態の仕切体1は、
図1に示すように、一方の空間R1と他方の空間R2とを仕切るものである。この仕切体1が設けられることによって、例えば建物の内部の空間R1から外部の空間R2という伝搬方向、又は外部の空間R2から内部の空間R1という伝搬方向に伝搬される対象周波数の電磁波の遮蔽又は透過が選択的におこなわれる。
【0012】
ここで「遮蔽」とは、伝搬される電磁波が減衰されることで電磁波シールド効果(SE:Shield Effectiveness)が得られる状態をいう。また、「電磁波が減衰する」とは、仕切体1を通過することによって電界強度が弱くなることをいう。これに対して「透過」とは、伝搬される電磁波が仕切体1によって減衰される程度が低く電磁波の受信に影響がでない、ほとんど減衰されない、又は仕切体1がない場合よりも電界強度が強くなることをいう。例えば、透過損失が閾値より小さい状態を「透過」と呼ぶ。
【0013】
まず、
図1,2を参照しながら仕切体1の構成について説明する。
この仕切体1は、
図1,2に示すように、媒質部としてのコンクリート部4と、コンクリート部4の空間R1側に面する第1の面(前面11)に配置される第1導体部としての前側格子2と、コンクリート部4の空間R2側に面する第2の面(後面12)に配置される第2導体部としての後側格子3とを備えている。すなわち、電磁波の伝搬方向にコンクリート部4の厚さd分の距離を置いて側方から見て略平行に配置される前側格子2と後側格子3、及び前面11と後面12とが略平行になる壁状のコンクリート部4によって仕切体1が形成される。
【0014】
ここで、媒質部として本実施の形態ではコンクリートによって成形されるコンクリート部4について説明するが、これに限定されるものではなく、誘電率の明らかな任意の材料が使用できる。例えば、鉄筋コンクリート、モルタル、石こう(石こうボード)若しくは木材などの建材、ガラス、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合物(ABS)、四フッ化エチレン(例えば、テフロン(登録商標))、パラフィン、ウレタン、エポキシ、塩化ビニール、シリコン、ベークライト若しくは発泡スチロールなどの樹脂、紙又はゴムのいずれかの材料によって媒質部を成形することもできる。
【0015】
また、第1導体部及び第2導体部は、任意の導電体によって形成される。そして、導電体には、電気伝導率がグラファイト(電気伝導率:10
6 S/m)と同等以上の材料が使用できる。例えば、鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、金若しくは銀などの金属、グラファイトなどの鉱物、炭素、セラミック又は導電性プラスチックなどの材料によって導体部を形成することができる。
【0016】
前側格子2は、
図2に示すように、鉛直方向に向けて配置された複数の第1の帯状導体としての縦テープ21,・・・と、縦テープ21に略直角となるように交差する複数の帯状導体としての横テープ22,・・・とによって格子状に形成される。すなわち、縦テープ21,・・・及び横テープ22,・・・は、それぞれコンクリート部4の厚さ方向に略直交する方向に一定の間隔(格子間隔P)を置いて並べられる。なお、縦テープ21と横テープ22のいずれが第1の帯状導体となってもよい。
【0017】
前側格子2は、アルミテープや銅テープなどの導体テープを縦テープ21及び横テープ22としてコンクリート部4の前面11に格子状に貼り付けることによって形成される。すなわち、横テープ22,22及び縦テープ21,21は、それぞれ一定の格子間隔Pで略平行に配置されている。また、縦テープ21と横テープ22の幅wは略同じである。ここで、縦テープ21及び横テープ22は、両側縁が略平行となる帯状部材であり、延伸方向に略直交する方向の側縁間の距離がテープ幅wとなる。
また、格子間隔Pとテープ幅wとの関係から、
図2に示すように格子の目となる開口幅SはS=P−wとなる。
【0018】
一方、後側格子3は、前側格子2と同様に、鉛直方向に向けて配置された複数の第2の帯状導体としての縦テープ31,・・・と、縦テープ31に略直角となるように交差する複数の帯状導体としての横テープ32,・・・とによって格子状に形成される。すなわち、縦テープ31,・・・及び横テープ32,・・・は、それぞれコンクリート部4の厚さ方向に略直交する方向に一定の間隔(格子間隔P)を置いて略平行に配置される。また、縦テープ31と横テープ32には、前側格子2と同様に、略同じ幅wのアルミテープや銅テープなどの導体テープが使用される。
【0019】
ここで、本実施の形態では、厚さがコンクリート部4の厚さに比べてほとんど無視できるほど薄い縦テープ21,31と横テープ22,32を使用する場合について説明するため、前側格子2(第1導体部)と後側格子3(第2導体部)との電磁波の伝搬方向の距離は、導体テープの交差面や内側面や外側面といった位置を特定しなくてもコンクリート部4の厚さdとほぼ等しくなる。
これに対して厚い帯状導体を使用する場合は、縦方向と横方向の帯状導体を交差部で重ね合わせることなく面一の一面が形成されるような格子にし、その面一の面(格子の内側面)を前面11及び後面12にそれぞれ貼り付けて、その内側面間の距離を第1導体部と第2導体部との電磁波の伝搬方向の距離にすればよい。
なお、厚い帯状導体を使用する場合は、第1導体部(又は第2導体部)の外側面がコンクリート部4の前面11(又は後面12)から大きく突出するようになってもよい。
【0020】
次に、
図3から
図6を参照しながら、本実施の形態の仕切体1に特定の周波数の電磁波を透過させたり遮蔽させたりする特性があることについて説明する。
図3は、有限要素法による数値シミュレーションで使用する解析モデルを模式的に示した図である。この
図3に示すように、モデル化された仕切体M1の両側に内部空間MR1と外部空間MR2がモデル化される。また、仕切体M1の内部空間MR1側が前面M11となり、仕切体M1の外部空間MR2側が後面M12となる。そして、コンクリート部M4の前面M11には+字状(プラス字状)の前側格子M2がモデル化され、後面M12には後側格子M3がモデル化されている。なお、コンクリート部M4の厚さを48.2mm、比誘電率ε
rは後述するように4.3とした。また、前側格子M2及び後側格子M3の格子間隔Pを77.2mm、テープの厚さを0.11mmとし、テープ幅wを後述するように変化させた。
【0021】
この解析では、内部空間MR1側から仕切体M1に向けて垂直偏波の平面波を伝搬させて、外部空間MR2側まで伝搬される電磁波の電界強度を確認した。また、垂直偏波は、周波数を0.0GHz〜3.0GHzまで0.01GHz刻みで変化させてシミュレーションをおこなった。
【0022】
図4は、テープ幅wを2mm,20mmと変化させた各仕切体M1のモデルに、周波数fを0.0GHz〜3.0GHzまで0.01GHz刻みで変化させてシミュレーションをおこなった結果を示したグラフである。
ここで、縦軸のデシベル(dB)の単位で表される透過損失は、値が大きくなるほど電磁波が遮蔽されることを示し、0dBに近ければ電磁波が透過されることを示す。
【0023】
図4において、テープ幅wを2mmとしたグラフ(実線)と、テープ幅wを20mmとしたグラフ(破線)とを比較すると、テープ幅wが広い方が遮蔽できる周波数の幅が広くなることがわかる。
【0024】
さらに
図5において、テープ幅wを20mmとしたグラフ(実線)と、テープ幅wを25mmとしたグラフ(破線)と、テープ幅wを30mmとしたグラフ(一点鎖線)とを比較すると、テープ幅wが20mmと25mmとでは遮蔽できる周波数のピークが近いが、テープ幅wが30mmになると遮蔽できる周波数のピークがずれることがわかった。
【0025】
そして
図6において、テープ幅wを30mmとしたグラフ(実線)と、テープ幅wを40mmとしたグラフ(破線)とを比較すると、テープ幅wが広くなりすぎると、遮蔽される周波数の範囲が広くなりすぎることがわかった。よって、透過させたい周波数を設定するには、テープ幅wを適切な幅に調整する必要があることがわかった。
【0026】
続いて、透過させたい周波数についての検討をおこなう。ここで、コンクリート部内の電磁波の波長λ
mは、コンクリートの比誘電率をε
r、電磁波の周波数をf、光速をvとすると次の変換式によって算出できる。
λ
m=v/f×1/√ε
r (1)
ここで、コンクリートの比誘電率ε
rは4.3とすることができる。なお、ガラスは比誘電率ε
r=6.4、アクリルは比誘電率ε
r=1.7、ポリカーボネートは比誘電率ε
r=2.7、石こうボード及び木材は比誘電率ε
r=2.3を使って計算することができる。
【0027】
そして、コンクリート部4の前面11と後面12の位置に透過させたい電磁波の反射面が形成されるとすると、コンクリート部内の波長λ
mの半分(すなわち半波長:λ
m/2)のn倍(nは0又は正の整数)となる周波数fの電磁波が強く透過されるといえる。
d=nλ
m/2 (2)
しかしながら、この反射面位置の仮定では実際の測定結果とずれが生じることが判明した。
【0028】
図7は、透過させたい電磁波の反射面が、格子の目、すなわち横テープ22,22(32,32)間から突出していると考えた場合の説明図である。ここで、横テープ22,22(32,32)間の距離を開口幅Sとすると、開口幅Sにテープ幅wを加えた距離が格子間隔Pになる。
また、反射面の前面11(又は後面12)からの突出している長さを反射面突出長Qとすると、反射面間距離drは、コンクリート部4の厚さdに2Qを加算した距離になる。
そして、
図7に図示した関係に基づけば、コンクリート部4内の波長λ
mとその次数n(nは0又は正の整数)とから、反射面突出長Qは以下の式で算定することができる。
Q=(nλ
m/2−d)/2 (3)
【0029】
そこで、開口幅Sと反射面突出長Qとの相関関係を調べた結果を
図8に示した。ここで、開口幅Sと反射面突出長Qとは、コンクリート部内の波長λ
mによって無次元化している。
【0030】
一方、開口幅S(=P−w)と反射面突出長Qとの関係は次式で表せる。
Q/λ
m=α・S/λ
m+β=α(P−w)/λ
m +β (4)
また、式(3)を参照すると、次の式が成り立つ。
Q/λ
m=(nλ
m/2−d)/2/λ
m (5)
そして、式(4)、(5)から以下の式が導ける。
(nλ
m/2−d)/2/λ
m=α(P−w)/λ
m+β (6)
d=nλ
m/2−2α(P−w)−2βλ
m (7)
ここで、αとβは、
図8の回帰直線(Q/λ
m=0.1058S/λ
m−0.028;決定係数R
2=0.9776)から、α=0.1058±0.0333、β=-0.0280±0.0169となる。
【0031】
以上のことから、透過させたい電磁波の周波数f
mと次数nとテープ幅wと格子間隔Pとが特定されれば、式(1)、(7)を使って算出される厚さdにコンクリート部4を設定した仕切体1を構築することで、対象周波数f
mの電磁波を透過させることができる。
【0032】
例えば、無線LAN(Local Area Network)でよく使用される電磁波の周波数は2.45GHz周辺である。隣室にあるプリンタやサーバなどに無線LANの電磁波を送りたい場合は、隣室との境界に無線LANの周波数の電磁波を透過できるように設定された仕切体1を設置すればよい。
【0033】
続いて、遮蔽のピークとなる周波数について検討を進める。
電磁波が遮蔽されるときには、仕切体1は、前側格子2と後側格子3を共振方向(
図3のy軸方向)と平行な境界とする矩形空洞共振器(導波管)として動作しているといえる。導波管は、1辺がaの正方形断面の直方体状の方形導波管である。
この導波管の中を軸方向に電磁波が伝わるときに、電界が強い箇所と弱い箇所が交互に発生する。すなわち、導波管の軸方向に沿って周期的に電界が分布する。この電界の周期距離(例えば、電界が強い箇所から次の強い箇所までの距離)が管内波長λ
gになる。そして、管内波長λ
gは、次の式によって算出できる。
λ
g=λ
a/(√(1−(nλ
a/2d)
2)) (8)
ここで、λ
aはコンクリート部内の波長、nは0又は正の整数、dはコンクリート部4の厚さ(=導波管断面の1辺の長さa)である。
【0034】
そして、格子間隔Pとほぼ等しい管内波長λ
gとなる周波数fの電磁波が強く遮蔽されることになる。
P=λ
g (9)
よって、式(8)、(9)から次の式が導ける。
P=λ
a/(√(1−(nλ
a/2d)
2)) (10)
ここで、λ
aは遮蔽させたい電磁波(周波数f
a)のコンクリート部内の波長、nは0又は正の整数、dはコンクリート部4の厚さである。なお、式(10)は、λ
a/P<1の場合に適用される。
【0035】
以上のことから、遮蔽させたい電磁波の周波数f
aと次数nとコンクリート部4の厚さdとが特定されれば、式(1)、(10)を使って算出される格子間隔Pに設定された前側格子2及び後側格子3を備えた仕切体1を構築することで、対象周波数f
aの電磁波を遮蔽させることができる。
【0036】
例えば、無線LANの電磁波を建物の外部に漏洩させたくない場合は、建物の内外の境界にこの周波数の電磁波を遮蔽できるように設定された仕切体1を設置すればよい。
【0037】
次に、本実施の形態の仕切体1の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の仕切体1は、壁状又はスラブ状に形成されたコンクリート部4の前面11及び後面12に、複数の縦テープ21,・・・と複数の横テープ22,・・・とによって格子間隔Pで格子状に形成された前側格子2と、これと同様に形成された後側格子3とを備えている。
そして、対象周波数f
mの電磁波を透過させる場合は、コンクリート部内の波長λ
mとその次数nとテープ幅wとを特定し、これらの値を関係式(7)に代入して算出された値に基づいてコンクリート部4の厚さdを設定する。すなわち、上記した変換式(1)によって仕切体1を透過させたい対象周波数f
mの波長λ
mを算出し、次数nを決める。続いて、関係式(7)を使って算出された値を、コンクリート部4の厚さdに設定する。
【0038】
これに対して、対象周波数f
aの電磁波を遮蔽させる場合は、コンクリート部内の波長λ
aとその次数nとコンクリート部4の厚さdとを特定し、これらの値を関係式(10)に代入して算出された値に基づいて前側格子2及び後側格子3の格子間隔Pを設定する。すなわち、上記した変換式(1)によって仕切体1によって遮蔽させたい対象周波数f
aの波長λ
aを算出し、次数nとコンクリート部4の厚さdとを決める。続いて、関係式(10)を使って算出された値を、前側格子2及び後側格子3の格子間隔Pに設定する。
【0039】
このように、コンクリート部4の厚さd、又は縦テープ21,31及び横テープ22,32の格子間隔Pやテープ幅wを調整することで、対象とする周波数f
m,f
aの電磁波を透過させたり減衰させたりすることができる。このため、仕切体1によって区切られた空間と外部との間で特定の周波数f
aの電磁波を遮蔽させたい場合や、反対に特定の周波数f
mの電磁波を透過させたい場合などに、様々な場所の既存又は新設の壁やスラブの表面に前側格子2や後側格子3を貼り付けるだけで、電磁波を減衰又は透過させることができる。
【0040】
このような仕切体1を構築する建物又は部屋として、病院、無線LANが利用可能なオフィス、会議室などが挙げられる。これらの空間には、特定の電磁波のみを遮蔽させたり、透過させたりしたいという要望がある。
例えば、携帯電話や自営無線の電磁波の周波数は、1.5GHz周辺である。オフィスなどで携帯電話の受信をしたい場合は、建物の内外の境界に周波数1.5GHz周辺の電磁波が透過されるように設定された仕切体1を設置すればよい。
これに対して、コンサートホールなどで携帯電話等の電磁波を外部から侵入させたくない場合は、ホールの内外の境界にこの周波数の電磁波を遮蔽できるように設定された仕切体1を設置すればよい。
【0041】
また、建物の内部にいても携帯電話の電波は受信したいが、無線LANの電波は外部に漏洩させたくない場合など、透過させたい周波数f
mの電磁波と遮蔽させたい周波数f
aの電磁波とがあるときには、コンクリート部4の厚さd並びに前側格子2と後側格子3の格子間隔P及びテープ幅wを調整した仕切体1を設けることによって、周波数f
m,f
aに応じて電磁波を透過させたり遮蔽させたりする制御を行うことができる。
【0042】
他方、データセンター、サーバルーム、放送スタジオ、撮影スタジオ、空港レーダ管制室、電磁波シールドルームなどのほとんどの電磁波を遮蔽させる必要がある場合にも、コンクリート部4の厚さdや格子間隔Pやテープ幅wを調整することで所望する機能が発揮される仕切体1を配置することができる。
【0043】
また、このような仕切体1は建物の建築現場で直接、構築することができる。さらに、工場や作業ヤードなどで仕切体1を構成するプレキャストパネルを予め製造し、建築現場でプレキャストパネルを組み立てることによって仕切体1とすることもできる。
そして、工場などでプレキャストパネルを製造する方法であれば、正確な格子間隔Pの前側格子2及び後側格子3を、正確な厚さdのコンクリート部4に配置することが安定的にできる。さらに、コンクリート部4も高品質に形成することができるので、所望する機能を備えた安定した品質の仕切体1を構築することができる。
【0044】
また、建物の内部の空間R1と外部の空間R2との間を仕切る外壁だけではなく、内部空間の間仕切り壁、床や天井のスラブを仕切体1で形成することができる。さらに、既存の壁や床スラブなどの前後又は上下の表面を前面11及び後面12として、前側格子2及び後側格子3を設けることで仕切体1にすることができる。
【0045】
また、縦テープ21,31や横テープ22,32のようにテープを貼り付けるのであれば、鉄筋を壁に埋設させる場合などに比べて施工性がよく、簡単に仕切体1を構築することができる。
さらに、アルミテープなどの導体テープは容易に入手することができるうえに、テープ幅wなどの寸法の選択や加工も容易に行えるため、経済性や施工性に優れている。
そして、縦テープ21,31や横テープ22,32を貼り付けることで前側格子2や後側格子3を形成するのであれば、格子間隔Pを任意の大きさに容易に調整することができる。
【0046】
また、縦テープ21,31や横テープ22,32のように幅(テープ幅w)のある帯状導体を使用することによって、減衰させる周波数の幅を広げることができる。さらに、ある程度の寸法誤差が生じても、ピーク周波数として設定された対象周波数f
aについては確実に減衰させることができる。
【実施例1】
【0047】
以下、前記実施の形態で説明した仕切体1の実施例について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を用いて説明する。
【0048】
前記実施の形態ではコンクリート部4を媒質部とする仕切体1について説明したが、実施例1では戸境壁を媒質部とした場合について説明する。この実施例1の戸境壁は、間隔を置いて配置される一組のプラスターボードの間にグラスウールが充填されて壁厚d=119mmに形成されている。そして、戸境壁の前面11と後面12には、テープ幅wが25mmのアルミテープ(厚さ0.11mm)を格子状に貼り付けることによって、前側格子2と後側格子3とが形成される(
図2参照)。なお、戸境壁の比誘電率をε
rは、空気とほぼ同じ1.0である。
【0049】
この戸境壁によって無線LANの電磁波(周波数2.45GHz)のみを遮蔽させることを検討する。
周波数f=2.45GHzの電磁波を遮蔽したいので、前記実施の形態で説明した式(1)にε
r=1.0を代入して計算すると、電磁波の戸境壁内の波長λ
aは122.4mmとなる。
続いて、次数n=1の場合について、式(10)によって計算を行うと、格子間隔Pは142.7mmとなる。そして、テープ幅w=25mm、格子間隔P=142.7mmの前側格子M2と後側格子M3が設けられた厚さ119mmの仕切体M1のモデル(
図3参照)について、シミュレーションをおこなった結果を
図9に示す。
【0050】
図9を見ると、透過損失27.0dBとなって最も遮蔽されている電磁波の周波数(ピーク周波数)は、2.36GHzとなった。すなわち、最も遮蔽したかった無線LANの電磁波の周波数2.45GHzからは少しずれている。
このように遮蔽したい周波数のピークは、式(10)で算出される結果からずれる場合がある。このようなずれがどのような場合に発生するかは不明な点もあるが、このようなずれは補正することができるので、以下でその方法について説明する。
【0051】
上述したように減衰させたい電磁波のピークとなる対象周波数にずれが生じる場合に、ピークとしたい対象周波数f
a(=2.45GHz)の空気中の波長λ
C(=122.4mm)と、格子間隔P(=142.7mm)の場合にピークとなる周波数f(=2.36GHz)の空気中の波長λ
0(=127.0mm)とから補正間隔P
Cを以下の式で算出する。
P
C=λ
C×P/λ
0 (11)
=122.4×142.7/127.0=137.5 mm
【0052】
式(11)は、格子間隔P/波長λが一定になることを利用した関係式である。そして、式(11)で算出された補正間隔P
Cを使って、テープ幅w=25mm、格子間隔P=137.5mmの前側格子M2と後側格子M3が設けられた厚さ119mmの仕切体M1のモデルについて、シミュレーションをおこなった結果を
図10に示す。
図10を見ると、電磁波の周波数(ピーク周波数)が2.46GHzのときに透過損失が42.8dBとなって最も遮蔽されている。すなわち、式(11)を使って算出された補正間隔P
Cに格子間隔Pを補正することで、所望する無線LANの電磁波(周波数f
a=2.45GHz)を確実に遮蔽することができるようになる。
なお、実施例1のこの他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【実施例2】
【0053】
以下、前記実施の形態で説明した仕切体1とは別の形態の仕切体5について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を用いて説明する。
【0054】
実施例2の
図11に示した仕切体5は、前側格子2と後側格子3との間に第3導体部としての中間格子53がコンクリート部4に埋設されている。すなわち中間格子53は、コンクリート部4の厚さ方向の略中央に前側格子2と後側格子3とに略平行になるように配置される。
【0055】
中間格子53は、鉛直方向に向けて立設された複数の第3の帯状導体としての縦テープ531,・・・と、縦テープ531に略直角となるように交差する複数の帯状導体としての横テープ532,・・・とによって格子状に形成される。すなわち、縦テープ531,・・・及び横テープ532,・・・は、それぞれコンクリート部4の厚さ方向に略直交する方向に一定の間隔(格子間隔P
1)を置いて略平行に配置される。また、縦テープ531と横テープ532には、アルミテープや銅テープなどのテープ幅w
1の導体テープが使用できる。
【0056】
そして、
図11に示すように、前側格子2と後側格子3との厚さ方向の距離の略中央に位置するように中間格子53が配置される。よって、仕切体5の第1の面としての前面51と第2の面としての後面52との距離(厚さd)の半分が、前面51又は後面52と中間格子53との距離d
1になる。
【0057】
このように中間格子53を配置した場合について
図11と
図1とを比較しながら説明すると、次数nが奇数(n=1,3,・・・)の電磁波の波長λ
mの共振が、中間格子53が配置されることによって消滅し、中間格子53の位置と共振の節が一致する次数nが偶数(n=2,4,・・・)の電磁波の波長λ
mの共振のみが残る。すなわち、コンクリート部4の厚さdを(N=)2等分する位置に中間格子53を配置した場合、2×n次以外の奇数次の波長λ
mは、中間格子53が配置されるコンクリート部4の中央に共振の開放面が位置するため、共振が抑制される。
【0058】
また、中間格子53を配置した場合でも、中間格子53の格子間隔P
1を変化させることによって、透過のピークの状態を変えることができる。すなわち、中間格子53を配置した場合は、1次の透過のピークが2次の透過のピークに近づき、中間格子53の格子間隔P
1の大きさによっては、2つのピークが合体して一つとみなせる幅のあるピークに変化する場合がある。
例えば、中間格子53の格子間隔P
1を、波長λ
mの1/4以下にすることによって、透過可能な2次(偶数次)の周波数f
mの帯域幅を広げることができる。
【0059】
このように前側格子2と後側格子3の間に、適切に格子間隔P
1が設定されたテープ幅w
1の中間格子53を配置することで、対象周波数f
mの周辺領域にまで広げた周波数帯の電磁波を透過させることが可能な仕切体5に設定できる。
また、透過させる周波数帯の幅を広げることができれば、比誘電率や寸法誤差などの不確定要因による誤差が発生しても、対象周波数f
mの電磁波を透過させることができる。
【0060】
この実施例2では、中間格子53が一つの場合について説明したが、複数の第3導体部(中間格子53,・・・)を仕切体5の内部に配置することもできる。N−1個(Nは2以上の正の整数)の第3導体部(中間格子53,・・・)を配置する場合は、コンクリート部4の厚さ方向に等間隔に配置される。すなわち、仕切体5の前面51と後面52との距離(厚さd)をN等分した距離が、前面51と中間格子53、中間格子53,53間及び中間格子53と後面52との距離d
1(=d/N)になる。
【0061】
そして、前側格子2と後側格子3の間にN−1個の中間格子53,・・・が配置された仕切体5は、コンクリート部4の厚さdをN等分する位置にそれぞれ中間格子53,・・・が配置されることになり、N×n次以外の次数の波長λ
mを消滅させることができる。
すなわち、コンクリート部4の厚さd、言い換えると前側格子2と後側格子3間の距離をN等分する位置に中間格子53,・・・を配置することによって、N×n次以外の透過のピークを消滅させる制御をおこなうことができる。
【0062】
例えば2枚の中間格子53,53を配置することによって、1次と2次の透過のピークを消滅させることができるうえに、3次の透過のピークの帯域幅を広げることができる。1次と2次の透過のピーク周辺の電磁波は透過させたくなく、透過させたい電磁波の周波数f
mが3次の透過のピーク周辺である場合は、前側格子2と後側格子3の間に2枚の中間格子53,53を配置して調整することによって、比誘電率の設定や寸法に誤差があったとしても対象周波数f
mの電磁波を透過させる制御を行うことができる。
【0063】
ここまでは、中間格子53を配置することによって電磁波の透過のピークを消滅させる制御について説明してきたが、以下では遮蔽のピークを消滅させる制御について説明する。
詳細は省略するが解析結果によれば、中間格子を配置しない場合(前記実施の形態の仕切体1の解析結果)は、1次と2次の2箇所に遮蔽のピークが現れるが、中間格子53を配置した場合(仕切体5の解析結果)は、n=1次の遮蔽のピークが消滅することがわかった。これは、中間格子53をコンクリート部4の厚さ方向の略中央に配置したことによって、導波管の奇数次のモードの共振が抑制されたためであると考えられる。
【0064】
このように仕切体5に中間格子53を配置することによって、遮蔽のピークを消滅させる制御をおこなうことができる。例えば、1次の遮蔽のピーク周辺の電磁波は透過させたく、遮蔽させたい電磁波の周波数f
aが2次の遮蔽のピーク周辺のみの場合は、前側格子2と後側格子3の間に中間格子53を配置して調整することによって、対象周波数f
aの電磁波のみを遮蔽させる制御をおこなうことができる。
なお、実施例2のこの他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【実施例3】
【0065】
以下、前記実施の形態又は実施例2で説明した仕切体1,5とは別の形態の仕切体6について、
図12A,
図12Bを参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を用いて説明する。
【0066】
実施例3で説明する仕切体6は、媒質部が複数の材質によって層状に形成されている。この各層の材質は、すべてが異なる材料であっても一部が同質の材料であってもいずれでもよい。ここでは、説明のために、厚さ方向にM層が積層された構造であるとする。
【0067】
図12Bに示した仕切体6は、第1の面としての前面61と第2の面としての後面62との間に、1層目からi層目を経てM層目に至るまでの媒質部が並行に配置されている。そして、1層目の表面となる前面61には、帯状導体としての導体テープ611,・・・が等間隔で配置され、M層目の表面となる後面62には、帯状導体としての導体テープ621,・・・が等間隔で配置される。なお、この導体テープ611,621は説明を簡単にするために横方向のみを図示しているが、前面61及び後面62には、前記実施の形態で説明した前側格子2及び後側格子3と同様に略正方形の目の格子が帯状導体によって形成されている。
【0068】
このような複層構造の媒質部の仕切体6について、前記実施の形態で説明した関係式を適用するにあたって、以下のような修正をおこなう必要がある。すなわち
図12Bに示すように、各層の厚さd(i)と各層の比誘電率ε
r(i)は異なっているが、まずは
図12Aに示すように、各層を暫定的に同一の媒質(比誘電率ε
r(0))に統一して置き換えた暫定モデルを考える。この暫定モデルでは、導体テープ611,621のテープ幅も暫定幅w(0)とし、導体テープ611,621の格子間隔も暫定間隔P(0)とする。
【0069】
そして、各層の厚さd(i)を、各層の比誘電率ε
r(i)と暫定的な比誘電率ε
r(0)とを使って関係式(12)の通りd'(i)に修正する。
d'(i)=d(i)×√(ε
r(i)/ε
r(0)) (12)
ここで、d'(i)は各層の換算厚さである。そして、暫定モデルの全体の換算厚さd’は、1層目からM層目までの換算厚さd'(i)を積算した値となる。
d'=Σd'(i)=Σ{d(i)×√(ε
r(i)/ε
r(0))} (13)
一方、対象周波数fの電磁波の空気中での波長をλ
Bとすると、暫定モデル内の波長λ(0)は次式で表せる。
λ(0)=λ
B/√ε
r(0) (14)
このようにして算出された暫定モデルの換算厚さd’と、暫定モデル内の波長λ(0)と、暫定幅w(0)とを、前記実施の形態で説明した電磁波を透過させる場合の関係式(7)に代入すると、暫定間隔P(0)が算出される(
図12A参照)。
【0070】
そして、算出された暫定間隔P(0)に基づいて仕切体6の前面61の格子間隔P(1)と、後面62の格子間隔P(M)とを以下の式で算出する。
P(1)=P(0)×√(ε
r(0)/ε
r(1)) (15)
P(M)=P(0)×√(ε
r(0)/ε
r(M)) (16)
また、暫定幅w(0)に基づいて、前面61に貼り付けられる導体テープ611のテープ幅w(1)と、後面62に貼り付けられる導体テープ621のテープ幅w(M)とを以下の式で算出する。
w(1)=w(0)×√(ε
r(0)/ε
r(1)) (17)
w(M)=w(0)×√(ε
r(0)/ε
r(M)) (18)
【0071】
このような修正をおこなうことによって、複層構造の仕切体6についても格子間隔P(1),P(M)と、テープ幅w(1),w(M)とを設定することができる。
なお、実施例3のこの他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【実施例4】
【0072】
以下、実施例4では
図13を参照しながら、帯状導体に異形部が発生した場合の許容範囲について説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を用いて説明する。
【0073】
帯状導体は、
図13の左右の縦テープ21,21や横テープ22のように、全長にわたって等幅(テープ幅w)で側縁どうしが平行となっていなければならないわけではない。例えば、中央の縦テープ21Aのように、一部が変形した異形部23になっていても、対象周波数の電磁波を透過させたり減衰させたりすることができる。以下ではその許容範囲について説明する。
【0074】
この縦テープ21Aの異形部23は、上部が膨らんで開口幅Sを侵食し、下部は窪んでテープ幅が細くなっている。ここで、テープ幅wより膨らんでいる部分を凸部23aとし、最も突出している長さを出寸法23cとする。また、テープ幅wより窪んでいる部分を凹部23bとし、最も窪んでいる長さを入寸法23dとする。
【0075】
そして、出寸法23cと入寸法23dが、それぞれテープ幅wの半分以下であれば許容される。但し、異形部23として許容されるのは、凸部23aと凹部23bの面積がほとんど同じになっている場合に限られる。
【0076】
このように異形部23の存在が認められるのであれば、施工の厳密性が緩められるため、施工性を向上させることができる。
なお、実施例4のこの他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【実施例5】
【0077】
以下、実施例5では、前記実施例1で説明した仕切体1を戸境壁とした場合のシミュレーションに代わって、戸境壁を模した測定試料を使った実験結果について説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を用いて説明する。
【0078】
戸境壁の測定試料は、発泡ポリスチレン板の両側の表面に厚さ6mmのプラスチックダンボールを貼って壁を形成し、その表面にアルミテープ(テープ幅w=25mm、厚さ0.11mm)を格子状に貼り付けることによって製作した。
【0079】
図14は、壁厚d=120mmの壁に格子間隔P=137.5mmの前側格子2と後側格子3が設けられた測定試料を使って行われた測定結果を示した図である。ここで、この壁厚d=120mm、格子間隔P=137.5mmという条件は、前記実施例1のシミュレーション結果では、2.45GHzの周波数の電磁波が最も遮蔽された条件である。
【0080】
一方、
図14の測定結果を見ると、2.03GHzの周波数の電磁波が最も遮蔽される結果となった(透過損失30.2dB)。そこで、実施例1で説明した式(11)を使って、対象周波数f
a(=2.45GHz)の電磁波を遮蔽させるための補正間隔P
Cを算出する。
P
C=λ
C×P/λ
0
=122.4×137.5/147.7=113.9 mm
【0081】
そこで、壁厚d(=120mm)はそのままにして格子間隔Pを114mm(=P
C)にした測定試料を使って行われた実験の測定結果を、
図15に示す。この測定結果を見ると、周波数が2.50GHz付近に電磁波の遮蔽のピークが現れている。
よって、式(11)を使って格子間隔Pを補正間隔P
Cに修正することで、所望する無線LANの電磁波(周波数f
a=2.45GHz)を遮蔽することができるようになることが実験によっても確認できた。
なお、実施例5のこの他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【実施例6】
【0082】
以下、実施例6では、前記実施例5と同様に戸境壁を模した測定試料による実験を行って、理論式と実験による測定結果との差異を修正する方法について説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を用いて説明する。
【0083】
ここで、前記実施の形態で説明した、遮蔽させたい電磁波(周波数f
a)に対して適用される関係式(10)は、次の一般式に書き直すことができる。
P=λ
a/(√(A
e−(nλ
a/2d)
2)) (19)
ここで、A
eは1又は実験に基づいて決定される変数である。すなわち、式(10)は、A
e=1の場合を示している。
【0084】
図16は、A
e=1にして式(19)によって計算された値を理論値として曲線で示し、前記実施例5で説明した測定試料を使って測定された値を実測値としてプロットした図である。この結果を見ると、いずれの次数nにおいても、理論値と実測値との間にずれが生じていることがわかる。
【0085】
そこで、実測値に合うように式(19)のA
eを変更して理論値とした結果を
図17に示す。ここで、A
eは2.3とした。この
図17(壁厚d=120mm)を見ると、理論値と実測値とがよく一致していることがわかる。
【0086】
また、
図18−
図20は、壁厚dを130mm、110mm、100mmと変更した測定試料に対して行った実験の測定結果と理論式とを比較した図である。これらの図を見ても、A
e=2.3とした場合には、いずれの壁厚dにおいても理論値と実測値とがよく一致していることがわかる。
【0087】
このように式(19)に実験に基づいて決定される変数A
eを代入して算出される格子間隔Pの仕切体1にすることで、所望する対象周波数f
aの電磁波を遮蔽させることができる。
なお、実施例6のこの他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【0088】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0089】
例えば、前記実施の形態及び実施例では、空間R1から空間R2に向けて伝搬される電磁波を例に説明したが、これに限定されるものではなく、空間R2から空間R1に向けて伝搬される電磁波を対象とする場合にも同様の考え方によって仕切体1,5,6を配置すればよい。
【0090】
さらに、前記実施の形態及び実施例では、前側格子2の縦テープ21を横テープ22に対して後側格子3側に配置したが、これに限定されるものではなく、横テープ22に対して空間R1側に縦テープ21を配置してもよい。同じく、後側格子3の縦テープ31を横テープ32に対して空間R2側に配置してもよい。
【0091】
また、
図1,11では、前側格子2の横テープ22の位置と後側格子3の横テープ32の位置とを同じ高さに揃えて記載したが、これに限定されるものではなく、伝搬方向に直交する上下方向又は左右方向の位置がずれていてもほとんど同じ効果を得ることができるので、揃っていなくてもよい。
【0092】
さらに、前記実施の形態及び実施例では、前側格子2、後側格子3及び中間格子53を導体テープによって形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、金属粉などの導電体粉末を含有する導体塗料を壁面や壁紙の裏面に格子状に塗布することによって導体部を形成してもよい。
また、導体塗料を印刷機にインクとして充填し、壁紙の一面に導体塗料による格子状の導体部の印刷をおこない、導体部と壁紙を壁面に同時に取り付けることもできる。なお、壁紙の一面に導体テープを格子状に貼り付けることもできる。
【0093】
さらに、金属粉などの導電体粉末を含有する導体接着剤を、壁面に格子状に塗布して、壁紙などで壁面を覆うことができる。なお、壁紙の裏面に格子状に導体接着剤を塗布することによって導体部を形成してもよい。
【0094】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2012年5月9日に日本国特許庁に出願された特願2012−107416に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。