(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042888
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
F28D 20/02 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
F28D20/02 D
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-524224(P2014-524224)
(86)(22)【出願日】2012年9月9日
(65)【公表番号】特表2014-521918(P2014-521918A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】AU2012000938
(87)【国際公開番号】WO2013020176
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年8月6日
(31)【優先権主張番号】61/521,487
(32)【優先日】2011年8月9日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514254272
【氏名又は名称】クライメイト チェンジ テクノロジーズ プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100170380
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】ニール パーキンソン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ジョセフ グリン
【審査官】
西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/017767(WO,A1)
【文献】
特開2011−058764(JP,A)
【文献】
特公平02−051105(JP,B2)
【文献】
特許第2624822(JP,B2)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0120131(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0199998(US,A1)
【文献】
独国実用新案第002011000830(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00 − 21/00
F24H 7/00 − 7/06
F24J 2/34
F02G 1/055 − 1/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械加工可能な焼結グラファイトの連続するブロックである熱吸収材ブロックと、
格納容器に格納された相変化物質を備える複数の蓄熱素子と、
を備える蓄熱装置であって、
前記蓄熱素子のそれぞれは、前記熱吸収材ブロックと熱接触しており、前記蓄熱素子のそれぞれは、前記ブロックに形成されたホールのそれぞれに受けられる、蓄熱装置。
【請求項2】
前記熱吸収材ブロックは、複数の第1ホールが形成された蓄熱部分を備え、
前記蓄熱素子は前記のホールのそれぞれの内部に収容される、
請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
前記ホールは所定の間隔をもって形成される、請求項1又は2に記載の蓄熱装置。
【請求項4】
前記所定の間隔は、前記蓄熱部分における熱輸送を最適化するように選択される、請求項3に記載の蓄熱装置。
【請求項5】
前記蓄熱部分と熱接触している1つ又は複数の加熱素子を更に備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄熱装置。
【請求項6】
前記1つ又は複数の加熱素子は、前記蓄熱部分内の複数の第2ホール内に収容されている、請求項5に記載の蓄熱装置。
【請求項7】
前記加熱素子は電気加熱素子である、請求項5又は6に記載の蓄熱装置。
【請求項8】
前記加熱素子は、前記蓄熱部分の異なる領域に異なる量の熱を供給するように、個別に制御可能である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の蓄熱装置。
【請求項9】
前記蓄熱部分の前記異なる領域に対応した1つ又は複数の温度センサーを更に備える、請求項8に記載の蓄熱装置。
【請求項10】
前記蓄熱素子から熱を抽出するための手段を更に備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の蓄熱装置。
【請求項11】
前記熱を抽出するための手段は、前記蓄熱部分につながれた密閉サイクル熱機関である、請求項10に記載の蓄熱装置。
【請求項12】
前記密閉サイクル熱機関はスターリング機関であり、
前記スターリング機関は芯を通して前記蓄熱部分につながれている、請求項11に記載の蓄熱装置。
【請求項13】
前記相変化物質は、シリコンメタロイド、又は、共晶、過共晶、若しくは、亜共晶のシリコン組成物、を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー源としての化石燃料から離れる動きがみられる。概してよりクリーンな燃料源と特徴付けられるものに向かう動きの中で、利用可能な形態のエネルギーを提供する手段としての太陽エネルギー又は風力エネルギーの使用が、かなり発達してきている。
【0003】
まさにその性質上、太陽エネルギーの最大の落とし穴は、一日のある時間帯において、太陽は、太陽エネルギーを利用する様々なデバイスに必要な光子束を提供することができない、という事実である。同様に、風力タービンなどは、それらを駆動するのに十分な風力があるときにのみ、有効である。
【0004】
エネルギー源からのエネルギーの供給が、遮られたり、一貫しないものであったりすると、多くの場合、信頼できず、そしてまた、不経済である。
【0005】
加えて、ある時間帯においては、結果として生じる熱及びエネルギーが、太陽電池式のデバイスが利用可能なものではなく、供給過多として散逸するほど、太陽光線が過大になり得る。
【0006】
上記困難を扱った以前の試みでは、例えば、夜間や悪天候時などのように、太陽光の入射がもはや利用できないときに、後で使用するために物質内部に熱エネルギーを貯蔵する手段として、シリコンメタロイド材が使われていた。太陽活動のピークの間に、シリコンメタロイド材は、固体から液体への相変化を経つつ、熱エネルギーを吸収することができる。
【0007】
シリコンメタロイド材は、液体から固体への相変化を経ると、他の大部分の物質において期待される収縮ではなく、物質の膨張が起きるという特性により、一部分において、特徴付けられる。
【0008】
シリコンメタロイド材内部に蓄えられた熱エネルギーは、スターリング機関などのような電気装置を通して、電気的及び/又は機械的作用に変換することが可能である。このようにして、太陽活動が利用できないときの動力源が得られる。
【0009】
シリコンメタロイド材の短所は、相変化の際に熱エネルギーを吸収したり放出したりするため、とても手間がかかり、また、伸縮時の物理的な変化を理解することが必要である、という点である。シリコンメタロイド材が伸縮すると、シリコンメタロイド材が内部に置かれた容器への圧力が著しく増強される。例えば、インゴットの形態のシリコンメタロイド材を、グラファイトのような耐熱性熱吸収材料に直接接触させておくと、当該メタロイドは、その液体形態へと相変化したときに、グラファイトによって吸収される。シリコンメタロイドを、耐熱性材料内に挿入される前に、別個の容器内に格納しておくと、シリコンメタロイドのインゴットが相変化を経るときに、継続的に圧力が蓄積し、かつ、シリコンメタロイドのインゴットが崩壊し、結果として、容器に亀裂が入る。
【0010】
インゴットを別個の容器に格納する場合は、シリコンメタロイドインゴットの容器が、シリコンメタロイド素材の相変化の間に放出された熱を、周囲のグラファイトへと十分に輸送する必要が生じるであろう。
【0011】
特許文献1の内容は、参照することにより全体として本願に含まれる。特許文献1は、圧力分散パントと、放熱板として機能する一連の溝とを、端部の1つに備える、セラミックスで形成された細長のキャニスターの形態の容器を設けることにより、これらの問題を解決しようとした。特許文献1に記載されている蓄熱装置においては、このような一連のキャニスターが、シリコンメタロイドを格納するために用いられ、かつ、一連の焼結グラファイト棒が間に挟まれた配置でパックされる。しかしながら、そのような配置においては、キャニスターに亀裂が入りやすく、特に、溝の領域に亀裂が入りやすい、ということが発見されている。
【0012】
上述の困難を克服又は軽減すること、又は、少なくとも有用な代替案を提供することが、望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際特許出願公開第2011/017767号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの側面に従い、熱吸収材ブロックと、格納容器に格納された相変化物質を備える複数の蓄熱素子と、を備える蓄熱装置であって、前記蓄熱素子のそれぞれが前記熱吸収材ブロックと熱接触している、蓄熱装置が提供される。
【0015】
1つの実施例においては、熱吸収材ブロックは、複数の第1ホールが形成された蓄熱部分を備え、蓄熱素子は前記のホールのそれぞれの内部に収容される。
【0016】
熱吸収材は、機械加工可能な材料であってよい。1つの実施例においては、熱吸収材は、焼結グラファイトである。
【0017】
本発明の1つの実施例においては、所定の間隔をもって、ホールが形成される。所定の間隔は、蓄熱部分における熱輸送を最適化するように選択してもよい。
【0018】
蓄熱装置は、蓄熱部分と熱接触している1つ又は複数の加熱素子を更に備えてもよい。1つ又は複数の加熱素子は、蓄熱部分の複数の第2ホールの内部に収容してもよい。
【0019】
好ましくは、加熱素子は電気加熱素子である。加熱素子は、蓄熱部分の異なる領域に異なる量の熱を供給するように、個別に制御可能であってもよい。装置は、蓄熱部分の異なる領域に対応した1つ又は複数の温度センサーを更に備えてもよい。
【0020】
装置は、例えば、熱吸収材ブロックにつながれた密閉サイクル熱機関を含む、蓄熱素子から熱を抽出するための手段を更に備えてもよい。密閉サイクル熱機関は、カルノーサイクル熱機関であってもよい。
【0021】
本願においては、カルノーサイクル熱機関は、作動ガスの膨張及び圧縮にしたがって作動する任意の密閉サイクル熱機関を意味する。カルノーサイクル熱機関の例には、スターリング機関及びブレイトン機関が含まれる。
【0022】
1つの実施例においては、密閉サイクル熱機関は、芯を通して蓄熱部分とつながれたスターリング機関である。
【0023】
本発明の実施例において用いられるのに好ましい相変化物質には、シリコンメタロイド、又は、共晶、過共晶、若しくは、亜共晶のシリコン組成物、が含まれる。
【0024】
他の側面においては、本発明は、相変化物質用の格納容器であって、実質的にシリンダ状である側壁と、第1端部及び第2端部と、を備え、前記側壁は、相変化を経ると、前記相変化物質が優先的に前記第1端部の方向へ膨張するように、前記第1端部から前記第2端部へとその長さに沿って増加する厚さを有する、格納容器、を提供する。
【0025】
側壁は、好ましくは、炭化ケイ素を含む。好ましくは、側壁は、約8USメッシュ(US Mesh)〜−200USメッシュの範囲にわたる粒度分布を有する粒子から形成される。好ましい実施例においては、側壁は、90%以上の炭化ケイ素を含む。
【0026】
格納容器の実施例は、有利には、本願で説明される蓄熱装置の実施例とともに用いてもよい。
【0027】
また、他の側面においては、本発明は、相変化物質用の格納容器の製造方法であって、前記格納容器は炭化ケイ素を含んだ本体を有し、炭化ケイ素粒子をバインダと混合する工程と、窯内で、所定の期間及び温度のステップを含む窯スケジュールにしたがって、前記の粒子を加熱する工程と、を含み、前記所定の期間は、前記格納容器の前記本体の至るところで前記粒子の間に結合を形成するのに十分である、製造方法、を提供する。
【0028】
更なる側面においては、本発明は、熱吸収材ブロックを設ける工程と、複数の蓄熱素子を、前記のブロックと熱接触させて、設置する工程と、を含む蓄熱の方法であって、前記蓄熱素子は、格納容器に格納された相変化物質を備える、方法、を提供する。
【0029】
相変化物質は、シリコンメタロイド、又は、共晶、過共晶、若しくは、亜共晶のシリコン組成物、を含んでもよい。格納容器は、炭化ケイ素を含んでもよい。
【0030】
好ましくは、当該方法は、蓄熱素子をブロックに埋め込む工程を含む。例えば、当該方法は、1つ又は複数の蓄熱素子を受けるために、熱吸収材内に複数のホールを形成することにより、蓄熱部分を設ける工程を含んでもよい。蓄熱部分には、複数の加熱素子を設けてもよい。
【0031】
1つの実施例においては、加熱素子は、蓄熱部分の異なる領域に異なる量の熱を供給するように、個別に制御可能である。
【0032】
1つの実施例においては、当該方法は、相変化物質の融解比を1〜99%に維持する工程を更に含む。
【0033】
添付の図面を参照して、本発明に係る好ましい実施例を説明するが、本発明は実施例には制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】
図1の蓄熱装置と共に用いられる格納容器の断面図である。
【
図4】
図1の蓄熱装置と共に用いる熱芯を示す図である。
【
図10】格納容器の試験中に記録された温度対時間の曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
初めに
図1を参照すると、熱吸収材ブロック12を備える、蓄熱装置10が示されている。ブロック12は、複数のホール14が形成された熱吸収素材の連続するブロックである。
【0036】
ここに、「連続する」の語は、材料の1つの塊であって、中身が詰まっているか多孔質かに関わらず、当該塊の内部の任意の2点を連続的な経路によってつなげることのできる、塊をいうものである。
【0037】
1つ又は複数の蓄熱素子が、ホール14のそれぞれの内部に収容され、そして、各蓄熱素子は、熱吸収材ブロック12と熱接触している。ここでは、ブロック12の蓄熱素子を含む部分を、蓄熱部分と呼ぶ。
【0038】
各蓄熱素子は、格納容器に格納された相変化物質、この場合はシリコンメタロイド、を含む。格納容器は、好ましくは、ホール14内部で締まり嵌めを形成する。
【0039】
シリコンメタロイドは、1410℃の温度において、およそ497W/kgの潜熱蓄熱容量を有している。ある状況においては、シリコンメタロイドの代わりに、熱容量は小さいが相転移温度も低い共晶(あるいは亜共晶又は過共晶)のシリコン組成物を採用することが有利であるかもしれない。例えば、Al:Si比が1:12の共晶Al−Si合金は、580℃というかなり低い転移温度を有するが、一方ではそれでも、およそ200W/kgという比較的高い蓄熱容量を有する。
【0040】
熱吸収材は、機械加工可能な材料、特に、焼結グラファイトであり、浸透させたバインダ又は他の材料を含んでもよい。ホール14は、公知技術を用いた精密ボーリングによって、ブロック12内に形成される。ホール14の相対的配置は、ブロック12内部の熱輸送を最適化するために、選択される。ホール14の間の間隔は、公知の方法により、焼結グラファイト及び蓄熱素子の熱膨張係数を考慮して、最適化してもよい。例えば、ブロック12の蓄熱部分内の熱輸送特性は、ANSYS(ANSYS,Inc.、ペンシルバニア州カノンズバーグ)のモデリングソフトウェアにおいて提供されるマルチフィジックスのシミュレーションモジュールに実装されているような有限要素法を用いて計算してもよい。
【0041】
目下説明されている実施例においては焼結グラファイトが用いられているが、当業者は、他の熱吸収材でも、適度に高い熱伝導率を有し、かつ、格納容器を収容するように機械加工できるものであれば、また適切であると理解するであろう。
【0042】
例えば、太陽光をブロック12の1つ又は複数の箇所に集めるための1つ又は複数の太陽集光器を設けることにより、熱吸収材ブロック12を太陽エネルギーによって直接加熱することは、もちろん許容可能であろう。しかしながら、蓄熱素子に隣接した所与の箇所に電気加熱素子20を設けることで、ブロック12の加熱のより優れた制御が可能となる。
【0043】
電気加熱素子20は、ブロック12内の複数の第2ホール内に受けられる。好ましくは、複数の第2ホールの各ホール内部に締まり嵌めが形成される。加熱素子20は、隣接するホール14の間のギャップ内に位置する。第2複数ホールもまた、精密ボーリングによって形成される。
【0044】
例えば、上述のように正確に空けられたホールを通じて、単一の熱吸収材ブロック内に蓄熱素子を設けることで、以前のアプローチが有する破砕の問題が回避されることが、発見されている。特に、ブロック構造は、PCT/AU2010/001035で説明される配置がなされたグラファイト棒及び付随する格納容器において発生する、加熱及び冷却段階の間の相転移にはさらされない。この相転移は、格納容器への圧力を生み、その結果、破砕が生じるものと考えられる。また、相転移は、蓄熱素子及び周囲のグラファイトの間で空隙を発生させるので、目下説明する実施例により得られるものより熱輸送特性が乏しくなる。
【0045】
蓄熱装置10の作動において、外部エネルギー源によって、電気加熱素子20に電流が供給される。例えば、電流は、太陽電池アレイからの直流電流でもよいし、風力タービンからの交流電流でもよい。電流が加熱素子20を通過するとき、周囲のグラファイトの抵抗加熱が生じる。そして、グラファイトブロックと熱接触している格納容器の壁を通じて、蓄熱素子の相変化物質へと熱が輸送される。シリコンメタロイド(又は、例えば、共晶シリコン組成物)は、その温度が融解温度に到達するまで、顕熱を吸収する。融解温度の点では、シリコンメタロイドへの更なる入熱が、融解潜熱として蓄えられる。外部エネルギー源(太陽エネルギー、又は、風力エネルギー)が、もはや利用可能でなくなるか、或いは、加熱素子のコア温度(core temperature)を融解温度より上に維持するのに必要なレベルを下回ると、シリコンメタロイドは凝固する。その後、蓄えられた熱は、周囲のグラファイトへと放出される。
【0046】
加熱素子20は、好ましくは炭化ケイ素により形成され、また、従来の方式で、例えば、銅配線によって、電流源につないでもよい。
【0047】
機械的及び/又は電気的仕事をするための熱を抽出するために、装置10は、ブロック12と熱接触している芯200を通じて、スターリング機関又はブレイトン機関のようなカルノーサイクル熱機関につないでもよい。蓄熱部分が、熱機関のヘッドよりも高温であるとき、芯200を通じた熱伝導によって、蓄熱部分から熱が輸送される。
【0048】
図4〜6においてより具体的に示されているように、芯200は、複数のスルーホール210及び1つのブラインドボア212を含んでいる。これらは、対応するスターリング機関のヘッドと芯を機械的に接続するために、ヘッド上の突起部を確動的に位置決め(positive location)し、かつ、スターリング機関と芯200(そして、その結果としてブロック12)の間の適切な熱接触を確保するために、設けられる。
【0049】
芯200は、好ましくは、ブロック12と同じ材料、又は、少なくともブロック12の材料と同一の又は極めて類似した熱伝導率を有する材料、により形成される。目下説明する実施例においては、芯200は、機械加工可能な焼結グラファイトから製造される。焼結グラファイトは、ブロック12の焼結グラファイトと同じグレードでよい。
【0050】
図1及び
図4〜6においては、芯200は、別個の素子として示されているが、位置開口部210及び212は、そのままブロック12の表面内に、直接機械加工してもよいと理解されるであろう。ある環境では、別個の芯200が、モジュール性測度の高いシステムの提供に有利かもしれない。
【0051】
加熱素子20は、連続する材料部分12のうちの異なった領域に対して、異なった量の熱を供給するように、個別に制御可能であってもよい。異なった領域は、それぞれ、当該領域に対応する1つ又は複数の温度センサーを備えてもよい。各センサーからの温度測定値は、制御システム(示されていない)へ送信してもよく、また、個別の加熱素子20へ流れる電流、そしてそれ故に加熱の程度、を調節するために、制御システムにより用いられてもよい。例えば、連続する部分12のいくつかの領域は、シリコンメタロイド(又は他の相変化物質)の相転移温度を優に超える温度である一方で、他の領域はかなり下回る温度であることを、温度測定値が示している場合、各領域が相転移温度のすぐ上の温度を有するように、各領域に流れる電流を適宜調節することができる。これによって、個別の領域に対応する蓄熱素子による、より効率的なエネルギー貯蔵がもたらされる。
【0052】
次に
図2及び3を参照すると、シリンダ状の外面102及びテーパ状の内面104を有する実質的にシリンダ状の側壁を備える、格納容器100が示されている。格納容器100は、例えば、耐火セメントを用いて、蓋106で密閉してもよい。内面104は、内部において、格納容器100の第1端部107から第2端部108にかけて、側壁が第1端部107から第2端部108へとその長さに沿って厚くなるように、徐々に細くなっている。
【0053】
相変化物質が格納容器100内に格納され、そして、液体から固体(又はその逆)への相変化を経て膨張するとき、物質は、第2端部108における側壁が比較的厚いため、第1端部107の方向へ優先的に膨張することとなる。
【0054】
シリコンメタロイド又は共晶シリコン組成物を格納し、それによって、上述の蓄熱装置とともに用いるのに適した蓄熱素子として機能させるために、炭化ケイ素から製造される格納容器100を用いてもよい。適当な炭化ケイ素組成物、及び、容器100の製造方法は、後述する。
【0055】
炭化ケイ素から製造され、かつ、シリコンメタロイド又は共晶(過共晶又は亜共晶)シリコン組成物を保持するために用いられる、格納容器において、実質的に約1.2〜3.2度、より好ましくは1.33〜2.92度の範囲のテーパ角が適していることを我々は発見した。
【0056】
次に
図7〜9を参照すると、焼結グラファイトからなる連続するブロック402を備える、別の蓄熱装置400が示されている。ブロック402は、絶縁物質の上層441及び下層442の間に挟まれている。層441、442は、装置400の上部及び下部がさらされる動作温度に従って、異なる絶縁物質を採用してもよい。
【0057】
ブロック402は、それぞれ内部に形成された複数のホール414を有する、複数の蓄熱部分412を含む。
図9において最もよく示されているように、各ホール414は、一方が他方の上部に置かれた、
図2及び3に示されるタイプの炭化ケイ素格納容器100のペアを受けている。格納容器100はそれぞれ、シリコンメタロイドを格納しており、それによって、上述のように蓄熱素子として機能する。
【0058】
各蓄熱部分412は、
図1に示されている蓄熱部分12と同様に構成され、そして、複数の加熱素子20を備えており、上述のような温度センサーが対応づけられてもよい。さらには、各蓄熱部分412は、蓄えられた熱をシステムから抽出するためのスターリング機関450のヘッドと連結するための芯430と、熱接触している。
【0059】
格納容器の製造
98%以上のSiC含有量、及び、0.2%以下のFe含有量(Fe
2O
3を含む、全ての形態)、を有する耐火性炭化ケイ素粒子からスタートし、格納容器を製造した。粒子の粒径には、約8USメッシュから約−200USメッシュまで、目盛りをつけた。公知の他の不均一な粒径分布もまた採用可能であるが、粒径は一般的には正規分布又は略正規分布に従う。
【0060】
その後、セラミック酸化物バインダを炭化ケイ素粒子に加え、そして、バインダ及び炭化ケイ素を公知の方法によって混合した。特に用いられたバインダは、Al
2O
3であり、重量で4%が混合物に加えられた。他のセラミック酸化物バインダや、シリコン窒化物のような非酸化物バインダも、もちろん用いることができる。また、バインダの割合は適宜調整してもよいことが理解されよう。さらに、炭化ケイ素粒子は、セルフバインド(self−bind)させてもよく、その結果、ある環境下では、バインダを完全に省くことができる。
【0061】
その後、炭化ケイ素及びバインダの混合物は、プレス成形され、
図2に示されているような、テーパ状の内面を有するシリンダを形成した。
【0062】
その後、プレス成形されたシリンダを、窯に入れ、そして、表1に示される所定の期間及び温度(目標設定点)の一連のステップ(セグメント)を有する窯焼きスケジュールに従って、焼結した。
【0064】
表1に示される具体的なスケジュールは、焼結された炭化ケイ素シリンダ本体の全体にセラミック結合を形成するのに適切であることが、見出されている。用いられる特定のバインダ、存在するバインダの割合、炭化ケイ素粒子の分布、などの様々な要素を考慮に入れるために、当該スケジュールを変更してもよいことが理解されよう。特に、目標設定点及び期間を調整する際には、バインダの水含有量がセラミック結合の形成を促進するレベルに維持されるように、注意すべきである。窯の温度上昇が速すぎる場合は、バインダ内の水の煮沸が速すぎてしまう可能性があり、したがって、完成したシリンダの強度が落ちてしまう。
【0065】
格納容器のテスト
上述した手順によって、2つの炭化ケイ素格納容器を製造した。18キログラム(kg)のシリコンメタロイドのインゴットを各容器内に入れ、その後、容器を、産業用のガス窯における炭化ケイ素マッフル内部の焼結グラファイト内に詰めた。容器は、リン酸塩結合剤の補助と共に、容器の材料と類似の組成物を有する耐火性モルタルを用いて密閉した。我々はまた、さらなる試験により、依然として充分な結果を達成しつつも、リン酸塩結合剤を省略してよいことを発見した。
【0066】
コア温度を監視するために、R型熱電対を焼結グラファイト内部に置いた。
【0067】
一旦窯内に入れ、容器をアルゴンガスにより浄化し、そして、各容器に蓋をはめた。そして、窯焼きの手順を開始し、窯の温度を、シリンダメタロイドの融解温度である1410℃以上に上げた。焼きの手順において用いられる窯の最大温度は、1480℃であった。
【0068】
時間の関数としての窯温度及びコア温度が、
図10に示されている。窯温度の曲線502が点線で描かれており、また、コア温度の曲線602は実線で描かれている。
【0069】
まずは、その温度が1480℃のピーク値に向かって急激に上昇するように(503)、窯を焼いた。また、シリンダメタロイドが顕熱としてエネルギーを吸収するにつれ、コア温度も類似の割合で上昇し(603)、やがて、コア温度がシリンダメタロイドの融解温度である1410℃に達した。そして、窯温度を、1480℃に維持した(504)。コア温度は1410℃のままであった(604)が、このことは、エネルギーが、潜熱として吸収されていたことを示している。この状態が維持され、やがてコア温度が再び上昇し始めた(605)。このことは、シリンダメタロイドにおける100%の融解比が得られたことを示している。
【0070】
その後、窯を冷却し(505)、そして、1480℃の目標温度に向けて再び焼いた(506)。コア温度は、冷却の結果として下降し(606)、その後、窯温度が上昇した結果として1410℃に向かって再び上昇した。このことは、シリンダメタロイドによる顕熱の吸収へ戻ったことを示している。コア温度は1410℃に留まり(607)、一方で、窯温度を1480℃に維持した(507)。コア温度はついには、再び上昇した(608)。このことは、やはり、100%の融解比が得られたことを示している。
【0071】
上述と類似の方法によって、複数の加熱及び冷却サイクルを実行した。そして、格納容器を、マッフルから取り除き、検査した。容器には、繰り返しの加熱及び冷却サイクルの結果としての損傷は、何ら無いことが、確認された。
【0072】
上記の実施例の多くの変更が、本発明の範囲から離れることなく、当業者にとって明らかであろう。
【0073】
本明細書を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む」、「備える」又は「有する」の語やその活用形は、明示された、整数若しくは工程、又は、整数若しくは工程の組、を含むことを意味するものと解されるものであり、他の任意の、整数若しくは工程、又は、整数若しくは工程の組、を排除することを意味するものとは解されないものである。