特許第6042891号(P6042891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042891テンプ及びヒゲゼンマイを有する時計ムーブメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042891
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】テンプ及びヒゲゼンマイを有する時計ムーブメント
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/06 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G04B17/06 Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-529079(P2014-529079)
(86)(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公表番号】特表2014-525591(P2014-525591A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】IB2012001700
(87)【国際公開番号】WO2013034962
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2015年7月15日
(31)【優先権主張番号】01473/11
(32)【優先日】2011年9月7日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】501099611
【氏名又は名称】パテック フィリップ ソシエテ アノニム ジュネーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ビュカイユ ジャン−リュック
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−525504(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0069591(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンプ・ヒゲゼンマイ調速機と、前記調速機と協働する脱進機とを含み、前記ヒゲゼンマイの外側の巻き(5)が、前記ヒゲゼンマイの拡縮をより同心的にさせるように構成された補剛部分(6’、6”、6’’’)を含む、時計ムーブメントであって、前記補剛部分(6’、6”、6’’’)の位置、厚さ、及び範囲は、前記ヒゲゼンマイが振幅150°において振幅300°に対して少なくとも2s/dの歩度利得を生み出すように選択され、前記脱進機によって生じる前記テンプの振動振幅に依存した前記ムーブメントの歩度の変動を少なくとも部分的に補償する、ことを特徴とする、時計ムーブメント。
【請求項2】
前記補剛部分(6’、6”、6’’’)の位置、厚さ、及び範囲は、前記ヒゲゼンマイが振幅150°において振幅300°に対して少なくとも4s/dの歩度利得を生み出すように選択され、前記脱進機によって生じる前記歩度変動を少なくとも部分的に補償することを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント。
【請求項3】
前記補剛部分(6’、6”、6’’’)の位置、厚さ、及び範囲は、前記ヒゲゼンマイが振幅150°において振幅300°に対して少なくとも6s/dの歩度利得を生み出すように選択され、前記脱進機によって生じる前記歩度変動を少なくとも部分的に補償することを特徴とする、請求項2に記載の時計ムーブメント。
【請求項4】
前記補剛部分(6’、6”、6’’’)の位置、厚さ、及び範囲は、前記ヒゲゼンマイが振幅150°において振幅300°に対して少なくとも8s/dの歩度利得を生み出すように選択され、前記脱進機によって生じる前記歩度変動を少なくとも部分的に補償することを特徴とする、請求項3に記載の時計ムーブメント。
【請求項5】
前記補剛部分(6’)は、前記補剛部分(6’)と同じ厚さ(e)及び同じ範囲(θ)を有し且つ前記ヒゲゼンマイの拡縮を実質的に完全に同心的にさせる理論補剛部分(6)よりも前記ヒゲゼンマイの外端(4)に近いことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の時計ムーブメント。
【請求項6】
前記補剛部分(6”)は、前記補剛部分(6”)と同じ位置(α)及び同じ範囲(θ)を有し且つ前記ヒゲゼンマイの拡縮を実質的に完全に同心的にさせる理論補剛部分(6)よりも薄いことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の時計ムーブメント。
【請求項7】
前記補剛部分(6’’’)は、前記補剛部分(6’’’)と同じ位置(α)及び同じ厚さ(e)を有し且つ前記ヒゲゼンマイの拡縮を実質的に完全に同心的にさせる理論補剛部分(6)よりも範囲が狭いことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の時計ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時計ムーブメントに関し、より具体的には、テンプ・ヒゲゼンマイ型調速機と脱進機とを含むムーブメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のテンプ・ヒゲゼンマイ調速機において、テンプが振動している間、ヒゲゼンマイは、その重心が調速機の軸上にはなく、移動しているという事実により、偏心的に拡縮する。この偏心的な拡縮は、調速機のピボット軸と、その中でピボット軸が回転する軸受との間に大きい戻り力を発生させ、この力は、振動振幅に依存してさらに変化する。この戻り力は、テンプの振動を乱し、ムーブメントの等時性に影響を与え、すなわち、振動振幅に依存して歩度の変動を大きくする。この問題を克服するために、本出願人は、特許文献1において、ヒゲゼンマイの外側の巻きが、ヒゲゼンマイの拡縮を同心的にさせるように構成された補剛部分を有する、テンプ・ヒゲゼンマイ調整装置を提案した。
【0003】
しかしながら、等時性に影響を与える要因は、ヒゲゼンマイの拡縮の同心性だけではないことが知られている。調速機は、ムーブメント内に装着されると、脱進機によって乱され、これが歩度損失を生じさせる。実際に、ロック解除段階の間、調速機は、中心線より前で抵抗トルクを受け、これが損失を生じさせる。衝撃段階の間、調速機は、最初に中心線より前で、利得を生じさせる駆動トルクを受け、その後、中心線の後で、損失を生じさせる駆動トルクを受ける。全体として、脱進機はこのようにして歩度損失を生み出し、脱進機によって生じるこの外乱は、テンプの振動振幅が小さい場合に対する方が、テンプの振動振幅が大きい場合よりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1476604号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、テンプ・ヒゲゼンマイ調速機の等時性をさらに改善することを目的とするものであり、この目的のために、テンプ・ヒゲゼンマイ調速機と、該調速機と協働する脱進機とを含み、ヒゲゼンマイの外側の巻きが、ヒゲゼンマイの拡縮をより同心的にさせるように構成された補剛部分を含む、時計ムーブメントであって、補剛部分はさらに、脱進機によって生じるテンプの振動振幅に依存したムーブメントの歩度変動を少なくとも部分的に補償するように構成されることを特徴とする、時計ムーブメントを提案する。
【0006】
驚いたことに、ヒゲゼンマイの外側の巻きの補剛部分の構成、例えば、その位置、範囲又は厚さに対する実験により、ムーブメントの全体としての等時性は、ヒゲゼンマイの非同心性によって生じる外乱と、さらに脱進機によって生じる外乱とを考慮に入れると、特許文献1に記載される調速機と比べて明らかに改善できることが分かった。
【0007】
補剛部分は、振幅150°において、振幅300°と比べて少なくとも2s/d、少なくとも4s/d、さらに少なくとも6s/d、又は、さらに少なくとも8s/dの歩度利得を生み出すように構成され、好都合なことに脱進機によって生じる歩度変動を少なくとも部分的に補償する。
【0008】
第1の実施形態によれば、補剛部分は、ヒゲゼンマイの拡縮を実質的に完全に同心的にさせる理論補剛部分よりもヒゲゼンマイの外端に近く、補剛部分の厚さ及び範囲は、理論補剛部分のそれらと実質的に同一にすることが可能である。
【0009】
第2の実施形態によれば、補剛部分は、ヒゲゼンマイの拡縮を実質的に完全に同心的にさせる理論補剛部分よりも薄く、補剛部分の位置及び範囲は、理論補剛部分の位置及び範囲と実質的に同一にすることが可能である。
【0010】
第3の実施形態によれば、補剛部分は、ヒゲゼンマイの拡縮を実質的に完全に同心的にさせる理論補剛部分よりも範囲が狭く、補剛部分の位置及び厚さは、理論補剛部分のそれらと実質的に同一にすることが可能である。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来技術による補剛された外側の巻き部分を有するヒゲゼンマイを示し、このヒゲゼンマイに関連付けられたヒゲ玉は、破線で概略的に示される。
図2図1に示されるヒゲゼンマイの幾何学的中心の運動を、このヒゲゼンマイで一部が形成される調速機又は振動子は自由である、すなわち脱進機の動作に影響されないとみなして、デジタル的にシミュレーションすることによって得られた等時性曲線を示す。
図3図1に示されるようなヒゲゼンマイを有する実際のムーブメントに対して得られた、全体としての等時性測定結果を示す。
図4】本発明の第1の実施形態による補剛された外側の巻き部分を有するヒゲゼンマイを示す。
図5図4に示されるヒゲゼンマイの幾何学的中心の運動を、このヒゲゼンマイで一部が形成される調速機又は振動子は自由である、すなわち脱進機の動作に影響されないとみなして、デジタル的にシミュレーションすることによって得られた等時性曲線を示す。
図6図4に示されるようなヒゲゼンマイを有する実際のムーブメントに対して得られた、全体としての等時性測定結果を示す。
図7】本発明の第2の実施形態による補剛された外側の巻き部分を有するヒゲゼンマイを示す。
図8図7に示されるヒゲゼンマイの幾何学的中心の運動を、このヒゲゼンマイで一部が形成される調速機又は振動子は自由である、すなわち脱進機の動作に影響されないとみなして、デジタル的にシミュレーションすることによって得られた等時性曲線を示す。
図9】本発明の第3の実施形態による補剛された外側の巻き部分を有するヒゲゼンマイを示す。
図10図9に示されるヒゲゼンマイの幾何学的中心の運動を、このヒゲゼンマイで一部が形成される調速機又は振動子は自由である、すなわち脱進機の動作に影響されないとみなして、デジタル的にシミュレーションすることによって得られた等時性曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、特許文献1に記載された形式の、時計ムーブメントのテンプ・ヒゲゼンマイ調速機用の平坦なヒゲゼンマイを示す。このヒゲゼンマイは、参照符号1で示され、アルキメデス螺旋の形状であり、その内端2は、テンプのシャフト上に取り付けられたヒゲ玉3に固定され、その外端4は、テンプ受などのムーブメントの固定部分に取り付けられたヒゲ持(図示せず)に固定される。スプリング1−ヒゲ玉3組立体は、マイクロエッチング技術によって、シリコン又はダイヤモンドなどの結晶質材料内に一体成形することができる。ヒゲゼンマイ1の外側の巻き5は、ヒゲゼンマイを形成するストリップの残りの部分よりも厚い、厚さeを有する部分6を局所的に有する。この厚さeは、図示のように部分6に沿って変化させることができ、部分6を補剛し、そのことにより、ヒゲゼンマイの拡縮中、これを実質的に不作動にさせる。補剛部分6の位置及び範囲は、ヒゲゼンマイのうちの補剛部分6以外の部分の重心に実質的に対応するヒゲゼンマイの変形中心が、ヒゲ玉3の回転中心と一致するヒゲゼンマイの幾何学的中心Oと実質的に一致するように選択される。そうすることで、ヒゲゼンマイの拡縮は、同心的又はほぼ同心的になる。実際には、補剛部分6は、ヒゲゼンマイの外端4より前で終端する。この外端4、より正確には、補剛部分6を含む外側の巻き5の末端部7は、アルキメデス螺旋の軌道に比べて外側に向かって半径方向に片寄っており、最後から2番目の巻き8が半径方向に自由な状態のままであること、すなわち、ムーブメントの動作中に、ヒゲ持、外側の巻き又は調速機のピン等のいずれの要素にも接触しないことを保証するようになっている。ヒゲゼンマイの同心的な拡縮により、最後から2番目の巻き8は、ヒゲゼンマイの拡張時、半径方向にヒゲ持にさらに向かって移動するので、末端部7と最後から2番目の巻き8との間の間隔は、従来のヒゲゼンマイの場合の間隔よりも広くする必要がある。末端部7は、Cを中心とした円弧の形状である。補剛部分6の角度範囲θ及びその角度位置α(例えば、外端4の角度位置に対する補剛部分6の中心の角度位置によって定められる)は、この中心Cから定められる。厚さeは、この中心Cを始点とする半径に沿って測定される。例示の実施例において、値θ及びαは、それぞれ85.9°及び72°であり、厚さeの最大値は88.7μmである。ヒゲゼンマイを形成するストリップの厚さe0(ヒゲゼンマイの幾何学的中心Oを始点とする半径に沿って測定される)は、補剛部分6以外では32.2μmである。
【0014】
図2は、図1に示すヒゲゼンマイをデジタル的にシミュレーションすることによって得られた等時性図である。より正確には、図2の図表は、外端4が固定され、ヒゲ玉3及びテンプを固定するシャフトが自由である(すなわち、軸受に装着されていない)ものとみなして、有限要素法によって、テンプが振動するときのヒゲゼンマイの幾何学的中心Oの運動を計算し、次にその運動曲線を振動振幅の関数として補間及び積分することにより得られる。図のx軸はテンプの振動振幅を平衡位置に対する度数で示し、y軸は歩度を1日毎の秒で示す。見て分かるように、振動振幅150°と振動振幅300°との間の歩度の偏差は1s/dのオーダーであり、優れている。しかしながら、この図は、脱進機によって生じる外乱を考慮していない。
【0015】
図1に示されるヒゲゼンマイと従来の脱進機とを装備した同一の設計の20個のムーブメントに対して測定を行った。各ムーブメントについて、6つの異なる位置(VH:垂直方向高位置、VG:垂直方向左位置、VB垂直方向低位置、VD:垂直方向右位置、HB:水平方向低位置、HH:水平方向高位置)の各々において、ムーブメントの歩度が、その主ゼンマイの弛緩中に測定され、測定値がグラフ上にプロットされる。一例として、これらのムーブメントの1つについて得られたグラフを図3に示す。y軸は、歩度をs/dで示し、x軸は、テンプの振動振幅を示し、この振動振幅は、主ゼンマイの力の低減により、ムーブメントの主ゼンマイが完全に巻き込まれた状態と巻き戻された状態との間で漸進的に小さくなる。見て分かるように、歩度は、振動振幅が小さくなるにつれて漸進的に小さくなる。各ムーブメントの各位置に関して、曲線が補間され、振動振幅150°と振動振幅300°との間の歩度偏差が求められる。全ての位置及び全てのムーブメントの歩度偏差の平均は、前述の振幅間で約6.7s/dであった。換言すれば、150°における歩度は、平均で、300°における歩度よりも約6.7s/d小さかった。この、小さい振幅における大きい振幅に対する歩度の低減、すなわち損失は、本質的に脱進機によって生じるものである。
【0016】
本発明者は、補剛部分6の構成、すなわち、例えば、補剛部分6の位置α及び/又は範囲θ及び/又は厚さeを、ヒゲゼンマイの巻きに完全な又はほぼ完全な同心性を与える図1の構成に対して変更することにより、脱進機によって生じる歩度の低減を少なくとも部分的に補償できることに気づいた。
【0017】
等時性に対して特定の影響を与える補剛部分6のパラメータは、その位置αであることが特に分かった。補剛部分6をヒゲゼンマイの外端4に向かって移動させることによって、テンプの振動振幅が小さい場合に、振動振幅が大きいに場合に対する歩度利得が生み出される。従って、補剛部分6を位置α’=62°に移動し、補剛部分6の他の特性(範囲、厚さ)は一定に保つことによって、振幅150°と振幅300°との間で、約6.7s/dであるが前述の平均測定歩度偏差と比べて反対符号を有する歩度偏差を得ることができる。脱進機によって生じる歩度変動は、このようにして実質的に完全に補償することができる。図4は、補剛された外側の巻き部分が参照符号6’で示された、新たに得られたヒゲゼンマイを示す。補剛部分6の移動は、当然、ヒゲゼンマイの拡縮を変化させ、これはもはや同心的ではない。しかし、その一方で、この変更は小さいものであり、ヒゲゼンマイは依然として従来のヒゲゼンマイ(すなわち、補剛部分をもたないヒゲゼンマイ)よりも、より同心的に拡縮し、他方で、この変更はムーブメントの全体としての等時性の改善に寄与する。図5の図表は、図4に示されるヒゲゼンマイの、図2の場合と同じ方法を用いて得られた等時性曲線I4を示す。振幅300°と振幅150°との間の歩度の上昇は実質的に線形であり、脱進機によって生じる歩度変動の傾向と比べて逆の傾向を有することが分かる。図1に示されるヒゲゼンマイの等時性曲線I1も、比較目的で図5にプロットされる。図6は、図3で測定を行ったムーブメントと同一であるが、図1に示したヒゲゼンマイの代わりに図4に示したヒゲゼンマイを装備したムーブメントの歩度の測定結果を示す。これらの結果は、補剛部分を位置α’に移動させることによって、特にグラフの概略の形が平坦な180°から300°までの振幅範囲において、歩度変動が顕著に小さくなったことを示す。
【0018】
等時性に影響を及ぼす補剛部分6のさらに別のパラメータは、補剛部分6の厚さeである。厚さeを薄くすることによって、テンプの振動振幅が小さい場合に、振動振幅が大きい場合に対する歩度利得が生み出される。従って、補剛部分6の最大厚さeを、値e’=44.2μmまでに(且つ残りの厚さを比例的に)薄くし、補剛部分の他の特性(位置、範囲)は一定に保つことによって、振幅150°と振幅300°との間で、例えば、約6.4s/dであるが図3に関連して前述した平均測定歩度偏差と比べて反対の徴候を有する歩度偏差を得ることができる。図7は、補剛された外側の巻き部分が参照符号6”で示された、得られたヒゲゼンマイを示し、図8は、このようなヒゲゼンマイに対応する等時性曲線I7を示す。
【0019】
等時性に影響を及ぼす補剛部分のさらに別のパラメータは、補剛部分の範囲θである。範囲θを小さくすることによって、テンプの振動振幅が小さい場合に、振動振幅が大きいに場合に対する歩度利得が生み出される。従って、補剛部分の角度範囲θを、値θ’=43.9°まで小さくし、補剛部分の他の特性(位置、厚さ、又は最大厚さ)は一定に保つことによって、振幅150°と振幅300°との間で、例えば、約6.9s/dであるが図3に関連して述べた平均測定歩度偏差と比べて反対の徴候を有する歩度偏差を得ることができる。図9は、補剛された外側の巻き部分が参照符号6’’’で示された、得られたヒゲゼンマイを示し、図10は、このようなヒゲゼンマイに対応する等時性曲線I9を示す。
【0020】
変更例において、前述の実施形態は、当然組み合わせることができ、すなわち、パラメータα、e、及びθのうちの少なくとも2つを変更することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10