特許第6042901号(P6042901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042901孔あき隔膜キャップを有する吸音ハチの巣状体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042901
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】孔あき隔膜キャップを有する吸音ハチの巣状体
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20161206BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20161206BHJP
   B64D 33/00 20060101ALI20161206BHJP
   B64C 1/40 20060101ALI20161206BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20161206BHJP
   E04C 2/36 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G10K11/16 D
   E04B1/86 F
   B64D33/00 B
   B64C1/40
   G10K11/16 E
   E04C2/36 G
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-538823(P2014-538823)
(86)(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公表番号】特表2015-504176(P2015-504176A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】US2012059698
(87)【国際公開番号】WO2013062776
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年5月1日
(31)【優先権主張番号】13/279,484
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503308494
【氏名又は名称】ヘクセル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エール、アール
【審査官】 菊池 充
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−522291(JP,A)
【文献】 米国特許第03952831(US,A)
【文献】 特開昭55−038595(JP,A)
【文献】 特表2008−537604(JP,A)
【文献】 米国特許第04257998(US,A)
【文献】 米国特許第05997985(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0050420(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00−13/00
E04B 1/62− 1/99
E04C 2/00− 2/54
B64C 1/00−99/00
B64D 1/00−47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の縁及び第2の縁を備えたハチの巣状体であって、該ハチの巣状体は前記第1及び第2の縁の間に伸長する複数の壁を更に備え、該壁が複数のセルのおのおのが前記壁に垂直に測定された断面積、及び前記第1及び第2の縁の間の距離によって形成された深さを有する前記複数のセルを形成してなる前記ハチの巣状体と、
隔膜キャップであって、当該隔膜キャップを前記壁に摩擦固定のみによって前記セルのうちの少なくとも1つの内の所定の位置に固定された隔膜キャップであって、該隔膜キャップは厚さ及び外周を有し穿設されていない柔軟な材料の固体シートを備え、柔軟な材料の該シートは、前記セル間を横方向に同一平面に広がると共に、前記壁に位置する外側縁、及び穿設されていない共鳴器部分の前記外側縁及び柔軟性材料の前記シートの前記外周の間に伸長するフランジ部分を有する前記共鳴器部分を備えた前記隔膜キャップを形成すべく、前記セルに折り込まれ、挿入されるのに十分柔軟性があり、前記フランジ部分は前記壁に平行に伸長すると共に、前記壁に摩擦固定された固着表面を備え、該固着表面は、該固着表面は幅及び前記柔軟性材料の跳ね返りが前記隔膜キャップをセルの壁に対して摩擦固定するのに十分である前記幅を有してなる前記隔膜キャップと、を具備したプレカーサー吸音構造体。
【請求項2】
請求項に記載のプレカーサー吸音構造体において、柔軟性のある前記シートはプラスチックである前記プレカーサー吸音構造体。
【請求項3】
第1の縁及び第2の縁を備えたハチの巣状体を提供する段階であって、該ハチの巣状体は前記第1及び第2の縁の間に伸長する複数の壁を更に備え、該壁が複数のセルのおのおのが前記壁に垂直に測定された断面積、及び前記第1及び第2の縁の間の距離によって形成された深さを有する前記複数のセルを形成してなる前記ハチの巣状体を提供する前記段階と、
厚さ及び外周を有し穿設されていない少なくとも1つの固体シートの柔軟性材料を提供する段階であって、前記固体シートの柔軟性材料は前記セルへの挿入に対して隔膜キャップの形状に折り込まれるのに十分柔軟性があり、前記隔膜キャップは前記セル間を横方向に広がると共に、前記壁に位置すべき外側縁を有する共鳴器部分、及び該共鳴器部分の前記外側縁及び吸音材料の前記シートの前記外周の間に位置するフランジ部分を有し、該フランジ部分は前記壁に平行に伸長すると共に、幅を有する固着表面を備えてなる前記段階と、
柔軟性材料の前記固体シートを前記隔膜キャップに形成する段階と、
前記隔膜キャップを前記壁に摩擦固定のみによって前記隔膜キャップが所定の位置に固定されるようにして前記隔膜キャップを前記セルに挿入する段階であって、セルの壁に対して前記隔膜キャップの摩擦固定をもたらするのに前記固着表面が十分幅広く、かつ、前記固体シートの柔軟性材料の前記跳ね返りが十分である前記段階と、を具備したプレカーサー吸音構造体を作る方法。
【請求項4】
請求項に記載のプレカーサー吸音構造体を作る方法において、前記共鳴器部分は前記隔膜が前記セルに挿入された後に穿設される前記プレカーサー吸音構造体を作る方法。
【請求項5】
請求項に記載のプレカーサー吸音構造体を作る方法において、前記固体シートの柔軟性材料はプラスチックである前記プレカーサー吸音構造体を作る方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法において、吸音構造体を形成すべく、前記ハチの巣状体の前記壁に前記固着表面を接着接合し、前記固着表面の前後いずれかに前記共鳴器部分に穿設されることにより前記ハチの巣状態の前記壁に接着する付加的段階を備えている前記方法。
【請求項7】
請求項6に記載のプレカーサー吸音構造体を作る方法において、前記共鳴器部分は前記固着表面が前記ハチの巣状態の前記壁に接着接合された後に穿設される前記プレカーサー吸音構造体を作る方法。
【請求項8】
請求項に記載のプレカーサー吸音構造体を作る方法において、前記固体シートの柔軟性材料はプラスチックである前記プレカーサー吸音構造体を作る方法。
【請求項9】
請求項に記載のプレカーサー吸音構造体を作る方法において、前記固体シートの柔軟性材料を折り込んで前記隔膜キャップを形成する段階と、前記セルに前記隔膜キャップを挿入する段階は一緒に実行される前記プレカーサー吸音構造体を作る方法。
【請求項10】
請求項の方法に従って作られた吸音構造体。
【請求項11】
請求項による吸音構造体を具備した発電所システム。
【請求項12】
請求項による吸音構造体を具備した飛行機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は一般にノイズを減衰するのに使用する吸音システムに関する。特に、本発明はジェット・エンジン又は他のノイズ源によって発生されるノイズを低減するのに有益なエンジン室及び他の構造体を作るのにハチの巣状体を使用することを含む。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の説明)
特定の源から発生される過剰なノイズを扱う最良の方法は、源でノイズを処理することであることが広く認識されている。このことは、吸音減衰構造体(吸音処理)をノイズ源の構造体に付加することによって一般に成し遂げられる。一つの特別に問題のあるノイズ源は、大部分の旅客機上に用いられているジェット・エンジンである。吸音処理は一般に、エンジン吸気口、エンジン室、及び排気構造体に取り入れられている。これらの吸音処理は、比較的薄い吸音材料を含む吸音共鳴器、又はエンジンによって発生された音響エネルギーに対して吸音インピーダンスを生成する数百万個のホールを有するグリッドを備えている。技術者に直面する基本的な問題は、所望のノイズ減衰をもたらすのに如何にしてジェット・エンジン及び囲りのエンジン室の構造要素にこれらの薄く柔軟性のある吸音材料を付加するかということである。
【0003】
ハチの巣状体は比較的強靭で、かつ、軽量のために飛行機及び航空宇宙機に使用される一般向けの材料となってきている。吸音用途に対して、その目的は、ハチの巣状体セルが閉じられるか又は覆われるか、するように、薄い吸音材料を何とかしてハチの巣状構造体を組み入れることであった。セルを吸音材料で閉じることによって、共鳴器が基づいている音響インピーダンスが生成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薄い吸音材料をハチの巣状体に組み込むことに対する一つのアプローチは、サンドイッチ設計と称されている。このアプローチにおいて、薄い吸音シートは二片のハチの巣状体の間に置かれると共に、所定の位置に接着されて、単一の構造体を形成する。このアプローチは、的確な寸法に織られ、穿孔され又はエッチングされる精巧な吸音材料設計を誰もが活用できるという利点がある。しかしながら、この設計の欠点は、構造体の強度が二片のハチの巣状体と吸音材料との間の接着によって制限されるということである。また、二片のハチの巣状体の間の接着面はハチの巣状体の各縁に沿った表面領域に制限される。更に、吸音材料におけるホールの中には、接着工程の際に過剰な接着剤で無意識に閉じ込められる場合のものがあるという可能性がある。このことによって共鳴器の能動的吸音領域の損失になるということから、ホールを閉じ込めないことが重要である。
【0005】
第2のアプローチは、ハチの巣状体セル内の所定の位置に個々に接着される比較的厚い固体の挿入物を使用する。一度所定の位置で、挿入物はドリルで穿孔されるかさもなければ処理されて、挿入物が吸音材料として機能するのに必要なホールを形成する。このアプローチは二片のハチの巣状体を一緒に接着する必要性を排除する。この結果によって、挿入物が安全に接着される強靭な構造体が得られることになる。しかしながら、このアプローチはまた幾つかの欠点を有している。例えば、数百万個のホールを固体の挿入物に穿孔しなければならないという費用及び複雑さが主たる欠点である。また、比較的厚い固体の挿入物は、ハチの巣状体をジェット・エンジン用のエンジン室等の非平面状の構造体に形成することを無理でかつ困難なものにしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、吸音材料の個々のシートが、ハチの巣状体セルに挿入される隔膜キャップに形成されるハチの巣状体吸音構造体が提供される。隔壁キャップは吸音材料に比して十分に厚いフランジ部分を有すると共に、隔壁キャップをハチの巣状体の壁に取り付けるのに使用する固着表面をもたらす。隔膜キャップは固着表面及びセル壁の間を摩擦固定することによって最初はセル内の所定の位置に保持される、隔膜キャップが接着剤を用いて所定の位置に永久的に接着されるまで、摩擦固定は隔膜キャップを所定の位置に保持するのに十分である。
【0007】
本発明の吸音構造体はジェット・エンジン又は他の発電所等のノイズの源に近接して位置するように設計される。構造体はノイズの源に最も近接して位置すべき第1の縁と、源から離隔して位置する第2の縁とを有するハチの巣状体を備えている。ハチの巣状体は、このハチの巣状体の第1及び第2の縁の間に伸長する複数の壁を備えている。ハチの巣状体の壁は、セルのおのおのがハチの巣状体壁に垂直に測った断面積と、第1及び第2の縁の間の距離によって形成された深さとを有してなる複数のセルを形成する。
【0008】
本発明の特徴として、隔壁キャップはハチの巣状体のうちの少なくとも1つ内に位置すると共に、セルの断面領域全体を覆う。隔壁キャップは厚さ及び外周を有する吸音材料のシートから作られる。このシートは好ましくは形状が矩形である。隔壁キャップはハチの巣状体壁に隣接して位置する外側縁を有する共鳴器部分と、共鳴器部分の外側縁及び吸音材料のシートの外周の間に伸長するフランジ部分とを備えている。フランジ部分は、プレカーサー構造体を形成すべく、最初は摩擦係合を介してセル壁に取り付けられる固着表面を有する。固着表面は幅を有しており、この固着表面の幅は、隔壁キャップ及びハチの巣状体壁の間に所要の度合いの摩擦固定をもたらすように吸音材料のシートの厚さに比して十分大きい。最終的な吸音構造は、プレカーサー構造体を取ると共に、接着剤を固着表面及びセル壁に塗布して、隔膜を所定の位置に永久的に接着することによって作られる。
【0009】
本発明は既存のハチの巣状体吸音構造体を凌ぐ多数の利点を提供する。例えば、2片のハチの巣状体の間には構造体を弱める継ぎ目がない。隔膜キャップは、周知のヘルムホルツ(Helmholz)共鳴器理論に基づいてノイズ減衰の微調整をもたらすべく、ハチの巣状体セル内の異なるレベルに置かれていて良い。多数の隔膜キャップは、多数の空洞及びインピーダンス・グリッドを生成すべく、単一のハチの巣状体セルにおいて異なるレベルに置かれていて良い。異なる吸音材料から作られる隔膜キャップは同一のハチの巣状体構造体において又は同一のハチの巣状体セル内にでも使用して良い。構造体の寿命に亘ってセル壁に対する隔壁キャップの確実な接着を保証すべく、フランジ部分は比較的大きい固着表面領域をもたらす。また、比較的薄く、かつ、柔軟な隔壁キャップはハチの巣状体の柔軟性を低減することはなく、このことはエンジン室及び他の非平面吸音構造に対して考慮すべき重要なことである。
【0010】
本発明の前述したこと、及び多くの他の特徴付けられると共に、付随する利点は、添付した図面と合わせられるとき以下の詳細な説明を参照してより良好に理解されることとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明による例示的吸音構造体の斜視図である。
図2図2は本発明による例示的隔膜キャップの斜視図である。
図3図3は3−3平面で取った図2に示す例示的隔膜キャップの断面図である。
図4図4は2組の隔壁キャップがハチの巣状体セル内の2つの異なる深さに位置する本発明による例示的吸音構造体の断面図である。
図5図5は2つの隔壁キャップが各ハチの巣状体セル内に位置する本発明による例示的吸音構造体の断面図である。
図6図6は隔壁キャップが吸音材料のシートから形成されると共に、ハチの巣状体に挿入されてプレカーサー構造体を形成してなる吸音構造体を作成する製造工程の一部分の概略的表現である。
図7図7は、共鳴器部分ではなく、隔膜キャップのフランジが接着剤と接触するようにしてプレカーサー構造体を接着剤のプールに浸漬することによって隔膜キャップ及びハチの巣状体壁の固着部分に接着剤を塗布する例示的な好ましい方法を示す断面図である。
図8図8図9に示す型式の吸音構造体を形成すべく、一緒に組み合わせる固体膜状体、吸音構造体、及び孔あき膜状体の一部分を示す展開斜視図である。
図9図9はノイズ源(ジェット・エンジン)の近傍に位置する例示的吸音構造体(エンジン室)の部分断面図である。吸音構造体は中空でない膜及び孔あき膜の間に挟まれた吸音ハチの巣状体を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明による例示的吸音構造体が図1及び8に10で一般的に示されている。吸音構造体10はノイズ源に最も近接して位置すべき第1の縁14と、第2の縁16とを有するハチの巣状体10を備えている。ハチの巣状体10は2つの縁14及び16の間に伸長して複数のセル20を形成する壁18を備えている。セル20のおのおのは2つの縁14及び16の間の距離に等しい深さ(コア厚さとも称する)を有する。各セル20はまた、セル壁18に垂直に測られた断面積を有する。ハチの巣状体は、金属、セラミックス、及び複合材料を含むハチの巣状体パネルを作成する際に使用する任意の従来の材料から作ることができる。
【0013】
本発明の特徴として、隔膜キャップ22はセル20内に位置している。必ずしもそうではないが、隔膜キャップ22は、全部ではないが、殆どのセル20に位置していることが好ましい。或る状況では、隔膜キャップ22をセルのうちの幾つかにのみ挿入して、所望の吸音効果を生むことが好ましい場合がある。代替的に、2つ以上の隔膜キャップを単一のセルに挿入することが望ましい場合がある。
【0014】
例示的隔膜キャップ22が図2及び図3に示されている。シートを、サイズ化してハチの巣状体セルの断面領域と一致させた六角形状キャップに折り込むことによって、隔膜キャップ22を吸音材料のシートから形成する。吸音材料のシート60をプランジャー63を使用してキャップ折り込みダイ62を介して強制的に差し込むことによって、隔膜キャップ22は図6に示すように形成されることが好ましい。シート60は僅かに矩形形状であり、一巻の吸音材料64からカットされるのが好ましい。シート60は図3に示すように厚さ(t)と、外周65とを有している。シート60のサイズ及び形状は、シートが挿入されるハチの巣状体セルの形状/サイズに応じて広く変えても良く、シート60の厚さ及び特定の吸音材料が使用される。
【0015】
図2及び図3を参照すると、隔膜キャップ22は外側縁25を有する共鳴器部分24を備えている。隔膜キャップ22は、摩擦係止、続いて適切な接着剤を使用した永久的接着によって最初はセル壁18に取り付けられる固着表面27を有するフランジ部分26を更に備えている。固着表面27は幅(W)を有している。
【0016】
固着表面の幅(W)は、セルの断面積、吸音材料の厚さ、吸音材料の型式、及び接着剤を含む多数の因子に応じて変えても良い。0.635cm(1/4インチ)から2.54cm(1インチ)のセルを有する典型的なハチの巣状体に対して、0.127cm(0.05インチ)から1.27cm(0.5インチ)のオーダーの固着表面の幅は、0.00254cm(0.001インチ)から0.254cm(0.10インチ)のオーダーの厚さを有する吸音材料に好適である。0.0102cm(0.004インチ)から0.0152cm(0.006インチ)の厚さを有する標準的吸音材料にとって、少なくとも0.508cm(0.20インチ)の固着表面幅が好ましい。一般に、固着表面の幅は吸音材料の厚さに比して十分大きいことが好ましい。「十分大きい」とは、固着表面の幅が吸音材料の厚さの少なくとも5倍大きく、好ましくは少なくとも20倍以上大きいことを意味する。
【0017】
標準的吸音材料のどれも、隔膜キャップを形成するのに使用して良い。これらの吸音材料は一般に、ノイズ減衰をもたらすべく設計された孔あき、多孔質、又は目の粗いメッシュ生地である比較的薄いシートとして提供されている。種々の材料(金属、セラミクック、プラスチック)の孔あきで多孔質のシートを使用して良い。一つの好ましい実施例において、吸音材料は単一フィラメント繊維から織られた目の粗いメッシュ織物である。繊維はガラス、炭素、セラミクック又は高分子から構成されても良い。ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフルオロエチレンプロピレン(FEP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド6(ナイロン,6PA6)、及びポリアミド12(ナイロン12, PA6)から作られた単一フィラメント高分子繊維は極僅かの例である。PEEKから作られた目の粗いメッシュ生地は高温用途には好ましい。本発明による隔膜キャップを形成すべく使用する場合がある目の粗いメッシュ吸音織物及び他の吸音材料は多種多様な商業的供給源から入手される。例えば、目の粗いメッシュ吸音織物のシートは、シーファー・ペテックス(SEFAR PETEX)、シーファー・ニテックス(SEFAR NITEX)、及びシーファー・ピークテックス(SEFAR PEEKTEX)という商品名でシーファーアメリカ株式会社(SEFAR America Inc.)(14043ニューヨーク州バッファロー市ヘッドクォーターズ111カルメット通りデピュー所在(Buffalo Division Headquarters 111 Calumet Street Depew, NY14043)から得ても良い。
【0018】
別の好ましい実施例は、隔膜キャップが形成される前又は後の何れかで穿たれた孔が材料に形成される吸音材料の固体シートの使用を含む。上記に示した型式の金属、セラミック、及びプラスチックはこの実施例向けに使用しても良いが、吸音材料はPEEKが、又は高温用途に適した同様の化学的耐性を有する高分子材料であることが好ましい。PEEKのシート又は膜状体はビクトレックス(VICTREX)(登録商標)・ピーク(PEEK)TM(商標)高分子の商品名でPEEKのシートを生産するビクトレックス・ユーエスエー社(Victrex USA)(南カロライナ州グリーンビル市所在)(Greenville, South Carolina)等の多数の供給源から商業的に入手可能である。
【0019】
PEEKは、非晶質又は結晶質相の何れかにあるシートを形成すべく処理することができる結晶質の熱可塑性物質である。膜状体は一般に、0.00254cm(0.001インチ)から0.0152cm(0.006インチ)の厚さを有する。結晶質PEEK膜状体と比較して、非晶質PEEK膜状体はより透明で、かつ、より熱成形し易い。30%から35%のオーダーの結晶性の度合いを達成するのに十分な時間をかけて非晶質PEEKのガラス転移温度(T)を上回る温度に非晶質PEEK膜状体を加熱することによって、結晶質PEEK膜状体が形成される。結晶質PEEK膜状体は非晶質膜状体に比してより優れた化学的耐性及び摩耗性状を有する。結晶質PEEK膜状体は非晶質膜状体に比して柔軟性に劣るが、より高い跳ね返り(bounce−back)を有する。跳ね返りは、折り込まれた膜状体が元の予め折り畳まれた(平坦な)形状に戻る方向に発揮する力又はバイアスである。
【0020】
特定のハチの巣状体セル向けに特定の隔膜キャップを設計するときに2つの材料の間の柔軟性及び跳ね返りの差を考慮に入れるとすれば、結晶質及び非晶質のPEEK膜状体の双方を隔膜キャップとして使用しても良い。一般に、非晶質PEEKのより厚い膜状体は、より薄い結晶質膜状体によってもたらされる同一の度合いの摩擦固定を有する隔膜キャップを提供するのに必要とされる。例えば、特定の隔膜構成の適正な摩擦固定をもたらすべく所要の剛性及び跳ね返りを有するように厚さが0.00508cm(0.002インチ)の結晶質PEEKの膜状体を決定すれば、同程度の摩擦固定を達成するために厚さが0.00762cm(0.003インチ)の非晶質膜状体を使用する必要があろう。
【0021】
PEEK又は他のプラスチックの固体膜状体を、固体膜状体に多数の開口を設ける任意の技術を使用して孔を穿って良い。穿った孔又はホールは機械的に又は化学薬品を使用して穿設しても良い。穿った孔は、比較的薄いPEEK膜状体を貫通してホールをレーザーで穿設することによって作ることが好ましい。一実施例では、隔膜キャップに膜状体を形成するのに先立って、平坦なシートのPEEK膜状体をレーザーで穿設して所要数の穿った孔をもたらす。この手順の利点は、膜状体によってもたらされた平坦な表面によって、穿設動作の際にレーザー光を膜状体上に焦点を合わせたまま維持することが一層容易になることである。また、隔膜キャップの共鳴器部分及びフランジ部分は、レーザーの焦点を再び合わせる必要が無く穿設される。図3に示す隔膜キャップ22は共鳴器部分24及びフランジ部分26に穿たれた孔又はホール31及び33をそれぞれ備えている。膜状体全体を折り込んで隔膜を形成する前に膜状体全体に予め穿設することの付加的な利点は、フランジ部分24のホール33が、接着剤が入り込んでセル壁に対するフランジの接着を改善することができる付加的表面領域及び開口をもたらすことである。
【0022】
別の実施例では、隔膜キャップがハチの巣状体に挿入された後になって初めて隔膜キャップの共鳴器部分がレーザー穿設される。図6に示すように、PEEK 60の固体シートは隔膜キャップ22NP(穿設せず)に作り込まれて、ハチの巣状体12Pに挿入される。次いで、隔膜キャップの共鳴器部分がレーザー穿設によって穿孔されてホール35をもたらす。共鳴器部分のレーザー穿設は隔膜が永久的にハチの巣状体に接着される前又は後に行っても良い。隔膜が所定の位置に永久的に接着される後までレーザー穿設を遅らせることが好ましい。この手順の利点は、場合によっては、特に、膜状体において多数の穿った孔が必要なところでは、隔膜の膜状体が予め穿設される場合に比してより薄い膜状体を使用することができるということである。多数のホールを膜状体に含むことは、セル中の隔膜の結果として得られる摩擦固定も低減するように膜状体の剛性及び跳ね返りのレベルを低減する傾向がある。従って、隔膜がセル内に挿入され、摩擦固定され、かつ、永久的に接着された後までホールの穿設を遅らせることによって、一定の膜状体において可能な最大の跳ね返り及び摩擦固定を得ることができる。また、隔膜を所定の位置に置いた後にホールをレーザー穿設することによって、間違った位置の接着剤により穿たれた孔が不注意に塞がれる可能性が回避される。この実施例の欠点は、レーザーが穿設動作の際に焦点を再び合わせる必要があって良いように折り込まれた隔膜の共鳴器部分が全体に平坦でない場合があるということである。
【0023】
隔膜22をハチの巣状体のセルに挿入して、多種多様な吸音設計を提供するようにしても良い。例えば、隔膜は図4の24a及び24bに示すようにハチの巣状体12a内で異なるレベルに位置して良い。この種の設計によって吸音構造体のノイズ減衰特性の微調整が許容される。図4に示す2つのレベルの設計は、本発明に従って可能である多種多様な可能な多レベルの隔膜配置の例としてのみ意図されている。当業者によって十分理解されるように、異なる可能な隔膜配置レベルの数は極端に大きく、特定のノイズ減衰要求を満たすべく調整することができる。
【0024】
隔膜22用の挿入構成の別の例が図5に示されている。この構成において、2つのセットの隔膜22cC及び22dをハチの巣状体12bに挿入して、2つの隔膜を有する各セルをもたらす。明らかなように、3つ以上の隔膜キャップが所定のセル中に挿入される多数の可能な追加の構成が可能である。また、図4に例示した多レベルの挿入設計を、図5に例示したセル設計当たり多数の挿入と組み合わせて、ノイズの所定の源に対して最適のノイズ減衰をもたらすべく吸音構造体を微調整するのに使用することができる無制限の多数の可能な隔膜挿入構成を提供しても良い。
【0025】
前述したように、隔膜キャップをハチの巣状体に挿入する好ましい方法は、隔膜キャップが折り込みダイ62及びプランジャー63を使用して予め形成された図6に示されている。図6のハチの巣状体構造体を特定するのに使用する参照番号は、構造体が隔膜キャップが未だセル壁に永久的に接着されていないプレカーサー構造体であることを示す“P”を含んでいる点を除き、図1と同じである。
【0026】
要求されるものではないが、吸音材料の個々のシートから隔膜キャップを形成するのにキャップ折り込みダイ62を使用することが好ましいことに留意すべきである。ダイとしてハチの巣状体を使用すると共に、プランジャー63を使用して単に強制してシート60をセルにはめ込んで隔膜キャップをセルに形成することができる。しかしながら、パネルは製造工程の際に一般的にハチの巣状体のより大きなブロックからカットされるために、多くのハチの巣状体の縁は比較的ギザギザにされる傾向がある。従って、材料の平らなシートを強制的に直接セル中に挿入するとき、ハチの巣状体の縁は吸音材料を捕え、引き裂き、かつ、汚す傾向がある。従って、平らなシート材料を強制的に直接セル中に挿入するとき、ハチの巣状体の縁は吸音材料を捕え、引き裂き、かつ、汚す傾向がある。従って、必要に応じて、ハチの巣状体の縁を、如何なる粗い又はギザギザにした縁をも除去すべく処理する場合に限り、キャップ折り込みダイを取り除いても良い。
【0027】
吸音材料に損傷を与えること無く、一方、同時にプレカーサー構造体の続く処理の際に隔膜キャップを所定の位置に保持するのに十分な摩擦接触を固着表面及びセル壁の間にもたらすようにして、吸音材料のシートのサイズ/形状、及びダイ/プランジャーのサイズ/形状(又はダイを使用しなければ、プランジャーのみ)を選択することが重要である。接着剤を使用して固着表面をセル壁に永久的に接着するのに先立って、プレカーサー構造体の所定の位置に隔膜キャップの必要な摩擦固定又は保持を達成するために要求される吸音シートの種々のサイズ及び形状を決定するのに日常の実験を使用することができる。プレカーサー構造を処理の際に不注意に落としたとしても、摩擦固定又は保持の量は隔膜キャップがハチの巣状体から落下するのを防止するのに十分であるべきである。
【0028】
例えば、繊維ガラス、フェノール、ノメックス(Nomex)、及びアルミニウム等の従来の材料から作られた標準の0.953cm(3/8インチ)の複合ハチの巣状体に対して、PEEK膜材料のシート(厚さが0.00254cm(0.001インチ)から0.0381cm(0.0015インチ))は矩形65又は図6に示すようなセル形状に匹敵する形状67であることができる。矩形シートに対しては、矩形は(縦)1.27cm(0.5インチ)から1.78cm(0.70インチ)に(横)1.52cm(0.60インチ)から2.03cm(0.80インチ)に亘る寸法を有する必要がある。セルの形状に匹敵するようにカットされた膜材料に対しては、シートは所望のフランジ部分の幅を有する隔膜キャップをもたらすのに十分な量に特大である必要がある。隔膜キャップに折り込まれる矩形シートに関して、吸音材料のシートは、シートの折り込みを増進するために切り込みを入れなかったりさもなければカットされないことが好ましい。切り込み無しのシートは、ハチの巣状体壁に隔膜キャップを接着することを増進した固着表面に皺を有した隔膜キャップに折り込まれたことが見出された。また、切り込みを入れることは、そうでなければ、隔膜キャップのフランジ部分に存在することとなる一部の外向きの張力又はバイアス力(跳ね返り)を解放する傾向がある。この外向きの跳ね返り又はバイアス力は、折り込まれたシート中の高分子が本質的に未だ折り込まれていない位置に偏っていることの結果である。この外向きの力又は跳ね返りは、隔膜キャップ及びセル壁の間の摩擦固定の重要な部分である。
【0029】
隔膜キャップの摩擦固定は、フランジ・サイズ、ハチの巣状体の隅部における隔膜材料の膜剛性/跳ね返り及びパッキングの組合せを使用することによって達成される。矩形状シートの材料65から形成される六角形隔膜キャップは、低い跳ね返りを有する比較的薄い膜状体を使用するときに付加的摩擦固定をもたらすべく、セルの隅部に押し込むことができる余分な材料を有する傾向がある。膜状体の重量及び皺を低減するために、隔膜キャップを形成するのに使用する膜状体のシートは、一層均一なフランジを形成するように最終的な隔膜キャップ形状とより酷似する外周(図5の67)を有する。好ましい構成において、フランジのサイズ及び膜状体の跳ね返りはセル壁に対する隔膜キャップの全摩擦固定を実質的にもたらす。この種の好ましい隔膜キャップ構成に対して、より柔軟であり、かつ、跳ね返りに劣る材料は一般に、柔軟性に劣り、より一層の跳ね返りを有する材料に比してより大きいフランジを必要とする。
【0030】
ハチの巣状体に対する隔膜の摩擦固定の度合いは、隔膜上に検査分銅を置くと共に、隔膜の結果として得られた移動がいくらかあるか否かを決定することによって測定することができる。例えば、隔膜が以下の試験を通れば、隔膜は許容量の固定力によってハチの巣状体の壁に摩擦的に固定されていると考えられる。27グラムの検査分銅を挿入した側から乾燥した隔膜の頂部に置く。乾燥したキャップがハチの巣状体セルから滑り落ちること無く27グラムを支持することとなる場合、摩擦固定力は許容範囲にある。例示的試験において、27グラムの検査分銅は、直径が0.935cm(0.368インチ)で長さが5.08cm(2.00インチ)の鋼棒である。
【0031】
PEEKの膜状体(0.00254cm(0.001インチ)から0.0381cm(0.015インチの厚さ)に関して、膜状体は隔膜キャップに形成するのに十分柔軟性がある。しかしながら、特定のサイズ及び形状の隔膜キャップに対して使用する特定の膜状体は、膜状体の跳ね返りと、隔膜をセル壁に摩擦固定するのに必要なフランジ幅との組合せを確立すべく、膜厚及び膜型式(結晶質又は非晶質)を変化させると共に、フランジ幅を変えることによって膜状体の跳ね返りを変化させて決定されることとなる。
【0032】
ホールのパターンは勿論、隔膜キャップに穿設したホールの数及びサイズは、吸音構造体用の所望する最終的吸音特性に応じて変えても良い。ホール又は穿たれた孔は一般にサイズが0.00508cm(0.002インチ)から0.0381cm(0.015インチ)の範囲で変化することとなると共に、好ましくは形状が円形である。必要に応じて、円形ではないホールを使用しても良い。他の適切なホール形状には、楕円形、正方形、又は穴があるものがある。共鳴器部分に穿設したホールの数はホールのサイズ及び所望の吸音特性に応じて変化することとなる。直径が0.00508cm(0.002インチ)から0.0381cm(0.015インチ)のホールに対して、ホールの数は大抵の吸音用途向けで6.45cm(平方インチ)当たりの100から700に亘る。ホールの数及びホールのサイズは、個々の吸音用途向けに要求されるレイル値(Rayl value)及び非線形要素(NLF: Non Linear Factor)をもたらすべく選択されることが好ましい。Rayl要求を満たすのにより大きなホールがより少なく使用される程NLFは増加することとなり、一方、より低いNLFは同様のRayl要求を満たすべくより小さなホールの数を増加させることによって生成される。
【0033】
膜状体の完全性を維持すると共に、セル壁に対する摩擦固定に十分な跳ね返りをもたらすために、ホールの表面積は共鳴器部分の表面積全体の20%を下回るように保つべきである。必要であれば、ホールの数及びサイズは共鳴器部分及びフランジ部分の間で変化させても良い。このことによって、共鳴器部分の1つのホール構成の使用が吸音特性を最大化することが許容され、一方、フランジにおける別のホール構成の使用が接着剤相互作用及びセル壁に対する結果として得られる接着を最大化することが許容される。
【0034】
プレカーサー構造が、隔膜キャップ22が摩擦固定によってのみ所定の位置に保持されている図6に10pで示されている。前述したように、摩擦固定は、隔膜キャップが適正な接着剤を使用して永久に接着することができるまで隔膜キャップを所定の位置に安全に保持するのに十分である必要がある。使用する接着剤はハチの巣状パネル製造に使用する従来の接着剤のどんなものでも使用することができる。好ましい接着剤には、高温(148.9〜204.4℃(300〜400゜F))で安全な接着剤がある。例示的接着剤には、エポキシ、アクリル、フェノール、シアノアクリレート、ビー・エム・アイ、ポリアミド−イミド、及びポリイミドがある。
【0035】
接着剤は種々の既知の接着剤塗布手順を用いて固着表面/セル壁界面に塗布して良い。考慮すべき重要なことは、接着剤はフランジ固着表面/セル壁界面にのみ選択的に塗布すべきであり、隔膜キャップの共鳴器部分には塗布すべきではないということである。接着剤を共鳴器部分に塗布することによって、メッシュ又は他の吸音材料における開口を閉じてしまうか又は少なくともそのサイズを低減することとになる。固着表面/セル壁界面に対する接着剤の選択的塗布をもたらすことができる如何なる接着剤塗布手順も使用して良い。
【0036】
例示的接着剤の塗布手順が図7に示されている。この例示的手順において、隔膜キャップ22pのフランジ部分のみが接着剤に浸されるようにハチの巣状体12Pは接着剤のプール70に単に浸漬される。隔膜キャップが浸漬に先立って同一レベルで正確に置かれるとしたならば、接着剤をこの浸漬手順を使用して固着表面/セル壁界面に正確に塗布することができたことが見出された。異なるレベルに位置する隔膜キャップに対して、多数の浸漬段階が必要とされる。代替的に、接着剤はブラシ又は他のサイト固有の塗布技術を用いて塗布することができた。これらの技術の中には、隔膜キャップが挿入される前にコア壁を接着剤で被覆するのに使用しても良いものがある。代替的に、コアへの挿入前に接着剤を隔膜材料上にスクリーン印刷し、実施しても良い。
【0037】
吸音材料の折り畳んだシートに存在するどんな皺も、毛細管現象によって接着剤をより容易に上方に逃がすことができる固着表面及びセル壁の間の小さいチャンネルをもたらすために、図7に描いたように接着剤を塗布する浸漬手順は特にうまく正常に機能することが見出された。この上方への逃げは共鳴器部分の外側縁及びセル壁の交差部分にフィレット形成を提供する。共鳴器部分の縁での接着剤フィレットの形成はセル壁に対する良好な接着を提供するだけでなく、接着剤及び共鳴器部分の間にうまく形成された境界を提供して、共鳴器部分の吸音特性が接着剤によって無意識には影響されないことを保証する。
【0038】
本発明による吸音構造体はノイズ減衰が必要とされる種々の状況に使用しても良い。構造体はノイズ減衰が通常、争点となる発電所システムと関連しての使用にうまく適している。ハチの巣状体は比較的軽い材料である。従って、本発明の吸音構造体は特に飛行機システムでの使用にうまく適している。例示的使用には、ジェット・エンジン用のエンジン室、大型タービン又は往復機関のエンジン・カバー、及び関係する吸音構造体がある。
【0039】
本発明の基本的吸音構造体は一般に、エンジンのエンジン室の最終形状に熱成形し、次いで、外側材料の膜状体又はシートを、(複数の)接着剤層を用いて形成済み吸音構造の外側縁に接着する。この完成したサンドイッチ状体を、接着の際にエンジン室の複雑な形状を維持する固定用工具の中で硬化する。例えば、図8に示すように、吸音構造体10は、最終形状に熱形成される。このサンドイッチ状体は、固体シート又は膜状体80に接着されることにより、形成される。次に、接着剤層は、膜状体80につけられる。そして、形成された吸音構造体10が付加される。接着剤フィルムの第2層が付加されてから、上部の膜状体82が付加される。これで、サンドイッチ状体が完成する。この構造は、熱や圧力により接着される。最終形状は、接着用工具に左右される。図9において、パネルは、90で図示されたジェット・エンジンを囲むようになされる。
実施の諸例は以下の通りである。
【0040】
(例1)
以下の例は本発明による例示的吸音隔膜キャップハチの巣状体を注視する詳細を提供する。多種多様の寸法、ハチの巣状体材料、吸音メッシュ材料、及び接着剤を使用して良いことが当業者によって認識されることとなろう。一般に、特定の構造体及び吸音用途は、コア密度、隔膜深さ、音響インピーダンス、コア厚さ、スライス長さ、スライス幅、及びメッシュ材料寸法を含む種々の設計要求を決定することとなる。
【0041】
例示的隔膜コア製品:
例示的吸音隔膜キャップ・コアは0.953cm(3/8インチ)のセルを有する繊維グラスハチの巣状体から作られた。隔膜は、3.18cm(1.25インチ)の厚さのコアの縁から1.27cm(0.500インチ)のところに位置していた。隔膜コアの音響インピーダンスは70raylであることが判った。
【0042】
材料:
ハチの巣状体はヘキセル社(Hexcel Corporation)(カルフォルニア州ダブリン市所在(Dublin, Calfornia))から供給され、部品番号−HRP−3/8−(1.6990立方メートル当たり(立方フィート当たり))(pcf)2042.784グラム(4.5ポンド)(フェノール樹脂を有する0/09度繊維グラス・アーキテクチャー)として特定された。ハチの巣状体の密度は1.6990立方メートル(立方フィート)当たり2042.784グラム(4.5ポンド)であった。
吸音メッシュは、部品番号−17−2005−W022(45から60raylの音響インピーダンス範囲を有する非金属の織りメッシュ)として特定され、シーファーアメリカ株式会社から得られた。
接着剤はヘキセル社から得られ、部品番号−899−55として特定された。
接着剤はポリアミド−イミド族であり、特許材料である。例えば、エポキシ、アクリル、フェノール、シアノアクリレート、及びポリアミド等の他の接着剤は必要に応じて使用して良い。
【0043】
吸音コア寸法は以下のとおりであった。
コアセルサイズ: 典型的なセルサイズは壁間から測定した1.01cm(0.396インチ)の六角形内寸であった。六角形のセルに挿入したメッシュは典型的には(縦)1.78cm(0.700インチ)に(横)1.65cm(0.650インチ)の矩形形状であった。メッシュはキャップを形成すべく折り込まれ、ハチの巣状体セルに挿入された。キャップの頂部はセル形状及びサイズ(1.01cm(0.396インチ)の内寸を有する六角形状)に適合している。キャップの側面は接着剤取付け用のハチの巣状体セル壁に適合している。キャップの両側面は典型的に0.476cm(0.188インチ)の長さであり、隔膜キャップをハチの巣状体に取り付けるために接着剤中に浸漬される。
【0044】
接着剤浸漬及び硬化処理:
各セルに挿入された隔膜キャップを有するハチの巣状体コアは以下の通りに浸漬される。
a.隔膜の頂部を上にしてコアを接着剤のタンクに入れる。
b.薄片を設定レベルに下げ、このことによって、接着剤をハチの巣状体薄片厚さを上に移動させることができると共に、キャップの底部側を覆うことができる。
c.キャップの側面上方への接着剤浸漬レベルは一般に0.381cm(0.150インチ)である。接着剤は最後の典型的な0.0953cm(0.0375インチ)上方へ逃げることとなり、メッシュ繊維を閉じて固定すると共に、ハチの巣状体壁にキャップを接着することとなる。
接着剤硬化サイクルは以下の通りに完遂される。
浸漬及び脱接着剤の直後に、コアを148.9℃(300゜F)のオーブンに入れる。接着剤を148.9℃30分、176.7℃(350゜F)30分、204.4℃(400゜F)30分の硬化サイクルにかける。
【0045】
メッシュ及び隔膜コアの音響試験:
1.シーファーアメリカ株式会社によって提供された前記メッシュは、25から120raylの音響インピーダンスの範囲をもたらすべく供給業者によって調整することができる。
2.隔膜コア用の音響インピーダンスの範囲をメッシュ上に置かれた接着剤の量によって調整することができる。ハチの巣状体に挿入された50raylメッシュの例を使用する。接着剤の浸漬レベルがキャップの側面上方へ0.254cm(0.100インチ)であるとする。接着剤ライン上方の付加的な未シールのメッシュはセル中の最終的コア・インピーダンスを典型的な42raylに低減することとなる。このことは、この設計において利用できる最低のインピーダンスである。接着剤が0.476cm(0.188インチ)レベルまでシールするのであれば、典型的インピーダンスは70raylとなろう。
【0046】
メッシュ及びコアの試験方法:
2つの試験方法を音響評価用に使用することができる。レイロメーター(Raylometer)又は通気性用の個別のセル真空試験。レイロメーター装置はraylであり、個別のセル真空装置はケー・パスカル(K Pascal)である。以下の表は、キャップがメッシュのみ(接着剤なし)の場合、及びキャップが前述したように接着剤で所定の位置に接着された場合の吸音隔膜キャップハチの巣状体の音響評価の結果を説明するものである。

メッシュのみのコアに対する真空見解は、開口に対してメッシュをシールした状態で0.635cm(0.250インチ)ID真空試験ヘッドを使用して行われた。隔膜コアに対する真空見解は1つの0.953−cm(3/8−インチ)隔膜セル内部で行われた。これは1.01cm(0.396インチ)ID試験ヘッドに類似している。真空ヘッドは以下のように調整された:大気20KPaに開かれているとき、及び大気80KPaに完全にシールされているときの真空見解。
【0047】
メッシュ(より多くのホール)の領域が増大するにつれて音響インピーダンス測定値が減少することに留意すべきである。典型的共鳴器のメッシュは2%から4%の開口領域を有する。音波が吸音メッシュを通過するとき、音波の圧力によってメッシュの粒子が動かされる。音響インピーダンスは圧力とこの圧力がメッシュ中に生成する粒子速度の比率である。換言すると、音響インピーダンスはメッシュの瞬間の微粒子速度によって除算したメッシュ上の音波の圧力である。前述したように、ここで音響インピーダンスに対する測定の単位はraylである。実際のrayl単位は「メートル当たりのパスカル−秒」である。メッシュ材料間の音響インピーダンス及び真空圧力降下は、開口面積の関数(単位領域当たりのホールの数及びサイズ)である。
【0048】
例えば、シーファー(Sefar)メッシュ部品番号17−2005−W022を使用するとき、(前述のように準備された)隔膜コア中の異なるサイズの円形メッシュ領域に対する圧力降下は以下の通りであった。

この表はメッシュ面積と共にホールの数は増加し、より大きな隔膜メッシュ間の圧力降下がより低くなることを示している。
【0049】
前述したように、例示的隔膜コアに使用するSefarメッシュ部品番号17−2005−W022は、隔膜キャップ・メッシュに直径0.902cm(0.355インチ)の開口を有しており、このことがこの設計に対して31K−Pascal及び70rayl真空測定値を与えた。
【0050】
真空降下が、0.953cm(3/8インチ)のハチの巣状体セルの吸音メッシュ間で測定されるとき、測定値は25から35K−pascalに亘ることができると共に、0.953cm(3/8インチ)のハチの巣状体セルのメッシュの音響インピーダンスは50raylから120raylの範囲に亘ることとなろう。
【0051】
上述の例から明瞭のように、ハチの巣状体に隔膜キャップを接着するのに異なる量の接着剤を使用することによって、六角形セルにおけるメッシュの領域の実効量を増大又は減少させる能力が設けられる。このことによって、音響rayl値を制御することができる。例えば、60raylメッシュを隔膜キャップに使用するとする。キャップの上面の周りのメッシュが接着剤で覆うことができないようにすることによって、セル・インピーダンスを50raylに低下させることができる。このアプローチによってセルにおいてメッシュのより大きい開口領域が発生され、実効音響インピーダンスを低下させることとなろう。キャップの垂直側面及び隔膜キャップの水平頂部の間の放射状の範囲の側面及び一部分を接着剤が完全に覆っていれば、インピーダンスは75raylに増加することとなろう。
【0052】
(例2)
吸音構造体は、結晶質VICTREX(登録商標)PEEKTMの固体膜状体がPEEKメッシュ材料の所定の位置に代用されている点を除き、例1と同じ方法で作られる。固体膜状体は0.00254(0.001インチ)及び0.0381cm(0.015インチ)の間の膜厚を有する。膜状体は、六角形セルの内寸1.01cm(0.396インチ)に比して0.254cm(0.1インチ)から1.02cm(0.4インチ)大きい六角形シートを形成するようにカットされる。このことによって、幅が約0.254cm(0.1インチ)から約1.02cm(0.4インチ)の範囲に亘るフランジ部分を有する隔膜キャップがもたらされる。PEEKの六角形シートは、六角形セルの内寸1.01cm(0.396インチ)に匹敵する共鳴器部分を有する隔膜キャップに形成される。次いで、27グラムの分銅を隔膜上に置くという前述した試験方法を用いることによって、ハチの巣状体に対する隔膜の適正な摩擦固定を試験する。試験を通り、ハチの巣状体に摩擦固定されたままのこれらの隔膜は大量製造及び、例1で述べた最終的接着のためのハチの巣状体への挿入に適している。接着の後、隔膜の共鳴器部分がレーザー穿設されて、ホールの直径が0.00508(0.002)から0.0381cm(0.015インチ)のサイズにある6.45cm(平方インチ)当たり100から700ホールを有する孔あき隔膜キャップをもたらすようになっている。
【0053】
(例3)
結晶質VICTREX(登録商標)PEEKTMの固体膜状体を隔膜キャップに折り込む前にレーザー穿設して、ホールの直径が0.00508(0.002)から0.0381cm(0.015インチ)のサイズにある6.45cm(平方インチ)当たり100から700ホールを有する孔あき膜状体をもたらすようになっている点を除いて、吸音構造体は例2と同じ方法で作られる。
【0054】
本発明のこうして説明された例示的実施例を有すると、開示内のことは例示的なものに過ぎず、かつ、種々の他の代替案、適応、及び変更を本発明の範囲内で行い得ることは当業者にとって留意すべきである。従って、本発明は前述の好ましい実施例及び例に限定されることは無く、以下の請求の範囲によって限定されるに過ぎない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9