【実施例】
【0039】
実施例1〜8で使用した全ての成分の量は、以下に示す量と同じである。後の実施例との比較のために、実施例9における量は、他の例における量の約半分とされており、以下の括弧内に示してある。カルシウムスルホネートコンプレックスグリースのこれらのバッチは全て、次の処理に従って製造した。720.0グラム(実施例9では360.0グラム)の400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加えて、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する、667.5グラム(実施例9では339.8グラム)の溶媒中性グループ1(solvent neutral group 1)パラフィン基油と、100°Cにて4cStの粘度を有する、20.0グラムのPAOとを加えた。加熱することなく、遊星混合パドル(planetary mixing paddle)を用いて混合を開始した。その後、72.00グラム(実施例9では28.4グラム)の第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、151.6グラム(実施例9では75.80グラム)の、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する微細に分割された炭酸カルシウムを加え、20分間混合した。次いで、36.00グラム(18.0グラム)のヘキシレングリコール、及び90.0グラム(実施例9では45.0グラム)の水を加えた。混合物を、温度が190°Fに達するまで、加熱した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、温度を190°F〜200°Fに45分間保った。直ちに、56.80グラム(実施例9では28.40グラム)の12−ヒドロキシステアリン酸を、5.60グラム(実施例9では2.8グラム)の氷酢酸と共に加えた。その後、38.00グラム(実施例9では19.0グラム)の75%リン酸水溶液を加えた。これら3つの酸は、このバッチのコンプレックス化酸であった。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達すると、55.60グラム(実施例9では27.80グラム)のスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが250°Fまで冷えると、最終のグリースがNLGI第2等級稠度になるように、追加のパラフィン基油を徐々に加えた。グリースの温度が200°Fに下がると、10.00グラム(実施例9では5.0グラム)のポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースを混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。試料番号で表す特定の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを用いて製造したグリースバッチは、次の表1に示す特徴を有していた。
【0040】
【表1】
【0041】
本発明の趣旨として、「良」品質カルシウムスルホネートへの言及は、上述の(及び同時係属出願第13/664574号に開示の)炭酸カルシウム組成物及び方法、及び/又は、何れかの従来技術の組成物及び方法を用いて、575°F超の滴点を有するグリースをもたらすであろう任意のものを含んでいる。同様に、本発明の目的のために、「低」品質カルシウムスルホネートへの言及は、上述の(及び同時係属出願第13/664574号に開示の)炭酸カルシウム組成物及び方法、及び/又は、何れかの従来技術の組成物及び方法を用いて、575°F以下の滴点を有するグリースをもたらすであろう任意のものを含んでいる。
【0042】
実施例1〜5は全て、異なった過塩基性油溶性カルシウムスルホネート試料(つまり、異なる市販製品)を使用しており、全てが、600°F超の滴点を有するカルシウムスルホネートコンプレックスグリースをもたらした。実施例6〜9に使用した過塩基性油溶性カルシウムスルホネート試料は全て、同じ商業的供給源に由来しており、同じ市販製品であったが、これらの実施例で経験される問題が、特定のバッチの過塩基性油溶性カルシウムスルホネートに孤立しないことを確実にするために、実施例8及び9で使用した試料(それぞれ6B及び6Cと表記)は、実施例6及び7で使用した試料(6Aと表記)とは異なる他の2つのバッチに由来するものとした。実施例6〜9では全て、575°F以上という所望の滴点よりも大きく低い、510°F未満の滴点という結果になった。これらの実施例のバッチのグリースの製造における唯一の変更点(実施例9における成分の低減を除く)は、使用した過塩基性油溶性カルシウムスルホネートであるので、滴点の差異は、使用した特定のカルシウムスルホネートの特異性に起因するに違いない。
【0043】
上記の実施例で使用した、良品質又は低品質である同じ過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、本発明に基づく過塩基性カルシウムスルホネートグリース組成物を製造するために使用した。本発明に基づいてそのような組成物を製造するためのこれらのグリース組成物及び方法を、以下の実施例に関連してさらに説明する。
【0044】
実施例10:カルシウムスルホネートコンプレックスグリースを以下のように調製した。実施例8で使用したもの(過塩基性油溶性カルシウムスルホネート試料番号6B)と同じ720.0グラムの低品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加えて、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する697.9グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油、及び、100°Cにて4cStの粘度を有する20.0グラムのPAOを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。その後、72.00グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する微細に分割された151.6グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトを加え、20分間混合した。この量のカルシウムヒドロキシアパタイトは、変換後に加えられるであろう12−ヒドロキシステアリン酸及び酢酸(コンプレックス化酸)と反応して中和するための水酸化物塩基性の必要量を超える量をもたらすのに十分であった。次いで、36.00グラムのヘキシレングリコール及び90.0グラムの水を、変換剤として加えた。温度が190°Fに達するまで、混合物を加熱した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、190°F〜200°Fに45分間温度を保った。56.80グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を、5.60グラムの氷酢酸と共に、直ちに加えた。これら2つの酸は、このバッチのコンプレックス化酸であり、変換前に加えたカルシウムヒドロキシアパタイトによってもたらされた水酸化物塩基性と完全に反応し、それによって中和された。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達すると、55.60グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが250°Fまで冷えると、174.5グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。グリースの温度が200°Fに下がると、10.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、248の未混和稠度を有していた。グリースを混合器に戻し、さらなる177.4グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。グリースを30分間混合した。グリースを取り出して、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な質感とした。グリースは、276の混和稠度を有していた。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は33.1%であった。滴点は、643°F超であった。
【0045】
この実施例10のグリースは、575°Fという所望の目標値よりも大きく高い滴点を有していた。実際に、この滴点は、良品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用した実施例1〜5のグリースに匹敵した。本発明のこの実施形態に基づいたグリース組成物及び方法を使用すると、このグリースの滴点は、炭酸カルシウム及び実施例8のものと全く同じ過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用して製造したグリースの滴点よりも、約150°F高かった。過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合が36%未満(実施例10では33.1%であり、これは実施例8の31.4%よりも僅かに高いだけである)であったので、増稠剤収率も、所望の目標値に合致していた。
【0046】
実施例11:この実施例は、カルシウムヒドロキシアパタイトが、単にリン酸トリカルシウムと水酸化カルシウムとの混合物ではないこと、及び、カルシウムヒドロキシアパタイトが、実際に、水酸化物当量の水酸化カルシウムと比べて優れたカルシウムスルホネート系グリースをもたらすことを実証するために調製された。この実施形態では、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースを以下のように調製した。実施例8及び10で使用したもの(過塩基性油溶性カルシウムスルホネート試料番号6B)と同じ720.0グラムの低品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加え、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する697.9グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油と、100°Cにて4cStの粘度を有する20.0グラムのPAOとを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。その後、72.00グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有するように微細に分割された、食品等級純度の11.2グラムの水酸化カルシウムを加えて、20分間混合した。カルシウムヒドロキシアパタイトが単にリン酸トリカルシウムCa
3(PO
4)
2と水酸化カルシウムCa(OH)
2との混合物であると考えた場合、11.2グラムが、151.6グラムのカルシウムヒドロキシアパタイト(先の実施例10において変換前に使用した量のカルシウムヒドロキシアパタイト)中の水酸化カルシウムの量になるので、この量の水酸化カルシウムを使用した。次いで、36.00グラムのヘキシレングリコール及び90.0グラムの水を加えた。温度が190°Fに達するまで、混合物を加熱した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、190°F〜200°Fに45分間温度を保った。直ちに、100.6グラムの同じ水酸化カルシウムを加えて混合した。この追加の水酸化カルシウムは、(後に加える)対応する量のリン酸と反応して、カルシウムヒドロキシアパタイトが単にリン酸トリカルシウムと水酸化カルシウムとの混合物であると考えた場合に151.6グラムのカルシウムヒドロキシアパタイト中に存在するであろう量のリン酸トリカルシウムCa
3(PO
4)
2を生成するのに、必要であった。
【0047】
その後、56.80グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を、5.60グラムの氷酢酸と共に加えた。これら2つの酸は、このバッチのコンプレックス化酸であった。その後、118.40グラムの75%リン酸水溶液を加えて、追加した水酸化カルシウムと反応させた。追加した水酸化カルシウムと反応して、151.6グラムのカルシウムヒドロキシアパタイト中に存在するであろう量のリン酸トリカルシウムCa
3(PO
4)
2を生成するのに、この量のリン酸が必要であった。このバッチをこのように構築することで、このバッチの最終反応後組成物と、処理のこの段階における先の実施例10とは、同一である。唯一の差異は、実施例10においては、コンプレックス化酸との反応のための水酸化物が、変換前に、カルシウムヒドロキシアパタイトによって供給されるのに対し、実施例11においては、同量の水酸化物が、変換前に、実際の水酸化カルシウムによって供給されることである。コンプレックス化酸の重量は、両バッチにおいて同じである。低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの重量は、両バッチにおいて同じである。他の全ての成分の重量も、両バッチにおいて同じである。
【0048】
その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達すると、55.60グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが250°Fまで冷えると、174.5グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。グリースの温度が200°Fに下がったとき、10.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、236の未混和稠度を有していた。グリースを混合器に戻し、さらなる288.0グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。この追加の基油は、実施例10とほぼ同じ混和稠度を有する最終のグリースを得るために加えた。実施例10のグリースの滴点とこの実施例のグリースの滴点とを極めて正確に比較するためには、それらの最終稠度(60往復混和稠度)をできるだけ等しくすることが重要である。グリースを30分間混合した。グリースを取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な質感とした。グリースは、271の混和稠度を有していた。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は30.4%であった。滴点は、530°F超であった。
【0049】
実施例10及び11のグリースは、どちらも、増稠剤収率が向上しており(過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの使用が、両方とも、36%よりも大きく低い)、それらの60往復混和稠度は、ほぼ同一であった。しかしながら、実施例11のグリースの滴点は、実施例10のグリースよりも、110°F超低かった。実施例10と11との比較は、カルシウムヒドロキシアパタイトが、単なるリン酸トリカルシウムと水酸化カルシウムの混合物ではないことを実証している。さらに、両者の比較は、優れた滴点特性を有するカルシウムスルホネートコンプレックス増稠剤成分を形成する反応性に関して、カルシウムヒドロキシアパタイトは、水酸化カルシウムと等価ではなく、実際に塩基源として水酸化カルシウムよりも優れていることを証明している。最後に、実施例11の結果は、従来の方法に従って、コンプレックス化酸と反応するカルシウム含有塩基として、水酸化カルシウムを用いてカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造する場合に、低品質の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用すると、満足な滴点値は得られないことを示している。しかし、本発明の組成物及び方法の実施形態(実施例10に示す)によれば、カルシウム塩基源としてカルシウムヒドロキシアパタイトを使用することは、低品質の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用する場合に、許容可能な滴点値をもたらす。これらの結果は、公知の従来技術においては見られず、予想されてもいない。
【0050】
実施例12:実施例4の良品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネート(過塩基性油溶性カルシウムスルホネート試料番号4)を使用したことを除いて、実施例10のグリースと類似した別のバッチを製造した。最終のグリースは286の混和稠度を有していた。過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は28.9%であった。滴点は643°F超であった。
【0051】
実施例13:実施例3の良品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用したことを除き、実施例10のグリースと類似した別のバッチを製造した。最終のグリースは265の混和稠度を有していた。過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は33.1%であった。滴点は650°F超であった。この実施例及び前の実施例は、実施例10に示した本発明が、良品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用した場合にも、優れた結果をもたらすことを示している。
【0052】
実施例14:同じ低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用して、実施例10のグリースと類似の別のバッチを製造した。唯一の差異は、このバッチにおいては、カルシウムヒドロキシアパタイトを、変換後、かつ、コンプレックス化酸である12−ヒドロキシステアリン酸及び酢酸の前に、加えたことである。最終のグリースは267の混和稠度を有していた。過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は33.1%であった。滴点は646°F超であった。この実施例は、低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用するとき、カルシウムヒドロキシアパタイトは、コンプレックス化酸と反応するカルシウム含有塩基として、変換の前又は後の何れにも加えることができること、並びに、優れた滴点及び増稠剤収率を有するカルシウムスルホネートコンプレックスグリースが得られることを、証明している。
【0053】
実施例15:同じ低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用して、実施例10と類似のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースのバッチを製造した。しかしながら、このバッチにおいては、コンプレックス化酸である12−ヒドロキシステアリン酸及び酢酸の全てを、変換後ではなく変換前に加えた。このバッチは、以下のように製造した。実施例10で使用した同じ720.0グラムの低品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加え、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する697.9グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油、及び、20.0グラムの、100°Cにて4cStの粘度を有するPAOを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。その後、72.00グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有するように微細に分割された151.6グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトを加え、20分間混合した。この量のカルシウムヒドロキシアパタイトは、後に加えるであろうコンプレックス化酸と反応して中和するための水酸化物塩基性の必要量を超える量をもたらすのに十分であった。その後、56.80グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、10分間混合した。次いで、36.00グラムのヘキシレングリコールを加えた。温度が150°Fに達するまで、混合物を加熱した。その後、90.0グラムの水及び5.60グラムの氷酢酸を加えた。温度が190°Fに達するまで加熱を継続した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、190°F〜200°Fに温度を45分間保った。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達すると、55.60グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが250°Fまで冷えると、174.5グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。グリースの温度が200°Fに下がると、10.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、220の未混和稠度を有していた。グリースを混合器に戻し、さらなる409.1グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。グリースを40分間混合した。グリースを取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な質感とした。グリースは、273の混和稠度を有していた。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は29.9%であった。滴点は、583°Fであった。このように、このグリースは、575°Fという所望の目標値よりも高い滴点を有していた。増稠剤収率も、過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合が36%未満なので、所望の目標値を満たしていた。
【0054】
実施例16:実施例4の良品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用したことを除いて、実施例15のグリースと類似のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。最終のグリースは、288の60往復混和稠度を有していた。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は31.4%であった。滴点は、644°Fであった。この実施例は、実施例15に示した本発明が、良品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用した場合でも、優れた結果をもたらすことを示している。
【0055】
実施例17:実施例10で使用した低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用して、別のバッチのカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。ただし、このバッチにおいては、カルシウムヒドロキシアパタイト及び炭酸カルシウムの両方を変換前に加えた。また、12−ヒドロキシステアリン酸の全量の40%及び酢酸の全てを、変換前に加えた。12−ヒドロキシステアリン酸と酢酸は、このバッチにおけるコンプレックス化酸であった。グリースは以下のように製造した。実施例10で使用した同じ720.0グラムの低品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加え、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する585.9グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油、及び、100°Cにて4cStの粘度を有する20.0グラムのPAOを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。その後、72.00グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する微細に分割された151.6グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトを加え、10分間混合した。この量のカルシウムヒドロキシアパタイトは、後に加えるであろうコンプレックス化酸と反応して中和するための水酸化物塩基性の必要量を超える量をもたらすのに十分であった。その後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する微細に分割された140.0グラムの炭酸カルシウムを加え、10分間混合した。次いで、22.72グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、10分間混合した。その後、36.00グラムのヘキシレングリコールを加えた。混合物を、温度が150°Fに達するまで、加熱した。次いで、90.0グラムの水及び5.60グラムの氷酢酸を加えた。190°Fに達するまで、加熱を継続した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、190°F〜200°Fに温度を45分間保った。グリースが非常に濃厚なので、追加で146.5グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達すると、55.60グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが250°Fまで冷えると、73.24グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。グリースの温度が200°Fに下がると、10.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、227の未混和稠度を有していた。グリースを混合器に戻し、さらなる380.0グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。グリースを40分間混合した。グリースを取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な質感とした。グリースは、265の未混和稠度を有していた。その60往復混和稠度は、265〜295であった。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は29.4%であった。滴点は、583°Fであった。
【0056】
実施例18:実施例4の良品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用したことを除き、実施例17のグリースと類似のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。最終のグリースは、296の60往復混和稠度を有していた。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は、30.1%であった。滴点は、645°Fであった。
【0057】
カルシウム含有塩基としてカルシウムヒドロキシアパタイトを使用した先の実施例においては、カルシウムヒドロキシアパタイトによってもたらされた水酸化物塩基性は、全てのコンプレックス化酸と反応して中和するのに十分であった。カルシウムヒドロキシアパタイト及び炭酸カルシウムの双方を加えた実施例17においても、カルシウムヒドロキシアパタイトの量は、全てのコンプレックス化酸と反応して中和するのに十分であった。以下の実施例は、カルシウムヒドロキシアパタイトによって中和されなかったコンプレックス化酸を中和するのに十分な量で、炭酸カルシウムが存在することを条件に、カルシウムヒドロキシアパタイトが、全てのコンプレックス化酸を中和するには不十分な量で、どのように使用されるかを示すために、提供される。
【0058】
実施例19:実施例9の低品質過塩基性カルシウムスルホネートを使用し、カルシウムヒドロキシアパタイト及び炭酸カルシウムを変換前に加えて、本発明の実施形態に基づいてカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。このグリースは次のように製造した。360.0グラムの低品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加え、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する272.6グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油、及び、100°Cにて4cStの粘度を有する10.0グラムのPAOを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。5分間混合した後、84.00グラムの、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有するカルシウムヒドロキシアパタイトを加え、30分間混合した。その後、28.40グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する微細に分割された75.80グラムの炭酸カルシウムを加え、5分間混合した。その後、18.00グラムのヘキシレングリコール及び45.0グラムの水を加えた。混合物を、温度が190°Fに達するまで、加熱した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、190°F〜200°Fに温度を45分間保った。直ちに、2.80グラムの氷酢酸を加え、次いで、28.40グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加えた。その後、19.00グラムの75%リン酸水溶液を加えた。これら3つの酸は、このバッチのコンプレックス化酸であった。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達したとき、27.80グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが250°Fまで冷えると、68.16グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。グリースの温度が200°Fに下がると、5.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、233の未混和稠度を有していた。挽いたグリースを混合器に戻し、さらなる180.0グラムの同じパラフィン基油を徐々に加え、30分間グリースに混入させた。最終のグリースを混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通した。グリースの60往復混和稠度は、279であった。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は30.5%であった。滴点は、588°Fであった。
【0059】
この実施例における幾つかの特徴に注意すべきである。第1に、カルシウムヒドロキシアパタイトを、C
12スルホン酸の前に加えた。カルシウムヒドロキシアパタイトを加えた先の全ての実施例においては、C
12スルホン酸をカルシウムヒドロキシアパタイトの前に加えた。このバッチの結果は、これら2つの成分を加える順序が、本発明の成功にとって特に重要ではないことを示している。後述の実施例も、同様に、このことを示すであろう。第2に、このバッチで加えたカルシウムヒドロキシアパタイトの量は、過塩基性カルシウムスルホネートに存在する少量の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと合わせて、C
12スルホン酸を含む加えた全ての酸の約64%と反応して中和するのに十分であるにすぎない。しかしながら、加えた炭酸カルシウムは、残りの酸と反応して中和するために必要なものよりも、はるかに多かった。この実施例の試験結果を先の実施例9(カルシウムヒドロキシアパタイトを使用しなかったことを除き、同じ成分及び同じ方法を使用した)と比較すると、両グリースにて同じ低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用したにも拘わらず、本発明のこの実施形態は、滴点の改善をもたらすことが明らかである。
【0060】
実施例20:実施例9及び19の同じ低品質過塩基性カルシウムスルホネートを使用し、カルシウムヒドロキシアパタイト及び炭酸カルシウムを変換前に加えて、本発明の他の実施形態に従うカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。また、12−ヒドロキシステアリン酸及び酢酸の総量の40%を、変換前に加えた。このグリースは次のように製造した。360.0グラムの低品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加え、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する272.6グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油、及び、100°Cにて4cStの粘度を有する10.00グラムのPAOを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。5分間混合した後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する84.00グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトを加え、30分間混合した。その後、28.40グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、1.12グラムの氷酢酸及び11.36グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、10分間混合した。その後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する75.80グラムの微細に分割された炭酸カルシウムを加え、5分間混合した。その後、18.00グラムのヘキシレングリコール及び45.0グラムの水を加えた。混合物を、温度が190°Fに達するまで、加熱した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、190°F〜200°Fに温度を45分間保った。直ちに、1.68グラムの氷酢酸を加え、次いで、17.04グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加えた。その後、19.00グラムの75%リン酸水溶液を加えた。これら3つの酸は、このバッチのコンプレックス化酸であった。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達すると、27.80グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが250°Fまで冷えると、68.16グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。グリースの温度が200°Fに下がると、5.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。グリースが非常に濃厚に見えたので、追加の102.2グラムの同じパラフィン基油を徐々に加え、30分間混合した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、235の未混和稠度を有していた。挽いたグリースを混合器に戻し、さらなる211.1グラムの同じパラフィン基油を徐々に加え、40分間グリースに混入させた。最終のグリースを混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通した。グリースの60往復混和稠度は、298であった。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は27.4%であった。滴点は、605°Fであった。
【0061】
実施例20のグリースについて、四球極圧試験ASTM D2596に従う評価も行った。溶着荷重は620kgであった。このバッチに加えたカルシウムヒドロキシアパタイトの量は、過塩基性カルシウムスルホネートに存在する少量の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと合わせて、C
12スルホン酸を含む加えた全ての酸の約64%と反応して中和するのに十分であるにすぎなかった。しかしながら、加えた炭酸カルシウムは、残りの酸と反応して中和するために必要なものよりも、はるかに多かった。
【0062】
実施例21:同じ低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用して、本発明の実施形態に従う他のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。このグリースは、炭酸カルシウムの50%を変換前に加えたことを除いて、先の実施例20のグリースと同じであった。残りの50%の炭酸カルシウムは、グリースを約390°F超に加熱し、その後300°F未満に冷却した後に加えた。このグリースの製造の他の特徴は、実施例20と同じであった。グリースの60往復混和稠度は283であった。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は25.7%であった。滴点は579°Fであった。このグリースは、四球極圧試験ASTM D2596に従う評価も行った。溶着荷重は620kgであった。このバッチに加えたカルシウムヒドロキシアパタイトの量は、過塩基性カルシウムスルホネートに存在する少量の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと合わせて、C
12スルホン酸を含む加えた全ての酸の約64%と反応して中和するのに十分であるにすぎなかった。しかしながら、変換前の最初に加えた炭酸カルシウムは、残りの酸と反応して中和するために必要なものよりも、はるかに多かった。
【0063】
実施例22:低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用し、本発明の実施形態に従う他のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。このグリースは、変換後にコンプレックス化酸としてホウ酸を加えたことを除いて、実施例21のグリースと同様に製造した。このグリースは次のように製造した。360.0グラムの低品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加え、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する264.6グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油、及び、100°Cにて4cStの粘度を有する10.00グラムのPAOを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。5分間混合した後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する84.00グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトを加え、30分間混合した。その後、28.40グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、1.12グラムの氷酢酸及び11.36グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、10分間混合した。その後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する微細に分割された37.90グラムの炭酸カルシウムを加え、5分間混合した。その後、18.00グラムのヘキシレングリコール及び45.0グラムの水を加えた。混合物を、温度が190°Fに達するまで、加熱した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、190°F〜200°Fに温度を45分間保った。グリースが非常に濃厚に見えたので、82.52グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。直ちに、1.68グラムの氷酢酸を加え、次いで、17.04グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加えた。この時点で、10.00グラムの結晶性ホウ酸末を約15ミリリッターの水に分散させて、グリースに加えた。グリースが非常に濃厚に見えたので、追加の68.84グラムの同じパラフィン基油を加えた。その後、19.00グラムの75%リン酸水溶液を加えた。これら4つの酸は、このバッチのコンプレックス化酸であった。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達すると、27.80グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが300°F未満に冷えたとき、さらなる37.9グラムの炭酸カルシウムを加えた。グリースが250°Fまで冷えたとき、142.8グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。グリースの温度が200°Fに下がると、5.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、255の未混和稠度を有していた。挽いたグリースを混合器に戻し、さらなる120.4グラムの同じパラフィン基油を徐々に加え、40分間グリースに混入させた。最終のグリースを混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通した。グリースの60往復混和稠度は、285であった。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は26.7%であった。滴点は、618°Fであった。このグリースについて、四球極圧試験ASTM D2596に従う評価も行った。溶着荷重は800kgであった。このバッチに加えたカルシウムヒドロキシアパタイトの量は、過塩基性カルシウムスルホネートに存在する少量の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと合わせて、C
12スルホン酸を含む加えた全ての酸の約50%と反応して中和するのに十分であるにすぎなかった。しかしながら、加えた炭酸カルシウムは、残りの酸と反応して中和するために必要なものよりも、はるかに多かった。
【0064】
実施例23:同じ低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用し、本発明の実施形態に従う別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。このグリースは、ホウ酸の量を増したことを除いて、実施例22のグリースと同様に製造した。また、ホウ酸を増したことに応じて、変換前に加える炭酸カルシウムの量も増した。このグリースは次のように製造した。360.0グラムの低品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加え、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する237.9グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油、及び、100°Cにて4cStの粘度を有する10.00グラムのPAOを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。5分間混合した後、84.00グラムの、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有するカルシウムヒドロキシアパタイトを加え、30分間混合した。その後、28.40グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、1.12グラムの氷酢酸及び11.36グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、10分間混合した。その後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する微細に分割された57.3グラムの炭酸カルシウムを加え、5分間混合した。その後、18.00グラムのヘキシレングリコール及び45.0グラムの水を加えた。温度が190°Fに達するまで、混合物を加熱した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、190°F〜200°Fに温度を45分間保った。グリースが非常に濃厚に見えたので、59.48グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。直ちに、1.68グラムの氷酢酸を加え、次いで、17.04グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加えた。この時点で、24.00グラムの結晶性ホウ酸末を約20ミリリッターの水に分散させて、グリースに加えた。グリースが非常に濃厚に見えたので、追加の128.8グラムの同じパラフィン基油を加えた。その後、19.00グラムの75%リン酸水溶液を加えた。これら4つの酸は、このバッチのコンプレックス化酸であった。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達すると、27.80グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが300°F未満に冷えると、さらなる37.9グラムの炭酸カルシウムを加えた。グリースの温度が200°Fに下がると、5.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、245の未混和稠度を有していた。挽いたグリースを混合器に戻し、さらなる161.2グラムの同じパラフィン基油を徐々に加え、40分間グリースに混入させた。最終のグリースを混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通した。グリースの60往復混和稠度は、275であった。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は27.9%であった。滴点は、607°Fであった。
【0065】
実施例23のグリースは、四球極圧試験ASTM D2596に従う評価も行った。溶着荷重は800kgであった。このバッチに加えたカルシウムヒドロキシアパタイトの量は、過塩基性カルシウムスルホネートに由来する少量の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと合わせて、C
12スルホン酸を含む加えた全ての酸の約39%と反応して中和するのに十分であるにすぎなかった。しかしながら、加えた炭酸カルシウムは、残りの酸と反応して中和するために必要なものよりも、はるかに多かった。
【0066】
実施例24:同じ低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用し、本発明の実施形態に従う別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。このグリースは、カルシウムヒドロキシアパタイトの半分を水酸化物当量の水酸化カルシウムで置き換えたという変更を除いて、実施例22のグリースと類似していた。このグリースは次のように製造した。360.0グラムの低品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加え、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する295.76グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油、及び、100°Cにて4cStの粘度を有する10.00グラムのPAOを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。5分間混合した後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する42.00グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトを加えた。続いて、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する3.10グラムの食品等級純度の水酸化カルシウムを加えた。30分間混合した後、28.40グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、1.12グラムの氷酢酸及び11.36グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、10分間混合した。その後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する微細に分割された37.90グラムの炭酸カルシウムを加え、5分間混合した。その後、18.00グラムのヘキシレングリコール及び45.0グラムの水を加えた。混合物を、温度が190°Fに達するまで、加熱した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、温度を190°F〜200°Fに45分間保った。グリースが非常に濃厚に見えたので、73.94グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。直ちに、1.68グラムの氷酢酸を加え、次いで、17.04グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加えた。この時点で、10.00グラムの結晶性ホウ酸末を約15ミリリッターの水に分散させて、グリースに加えた。その後、19.00グラムの75%リン酸水溶液を加えた。これら4つの酸は、このバッチのコンプレックス化酸であった。グリースが非常に濃厚に見えたので、追加の110.9グラムの同じパラフィン基油を加えた。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達したとき、27.80グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが300°F未満に冷えたとき、さらなる37.9グラムの炭酸カルシウムを加えた。グリースの温度が200°Fに下がると、5.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、235の未混和稠度を有していた。挽いたグリースを混合器に戻し、さらなる212.7グラムの同じパラフィン基油を徐々に加え、30分間グリースに混入させた。最終のグリースを混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通した。グリースの60往復混和稠度は、291であった。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は27.2%であった。滴点は、603°Fであった。
【0067】
このグリースについて、四球極圧試験ASTM D2596に従う評価も行った。溶着荷重は800kgであった。このバッチに加えたカルシウムヒドロキシアパタイト及び水酸化カルシウムの量は、過塩基性カルシウムスルホネートに由来する少量の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと合わせて、C
12スルホン酸を含む加えた全ての酸の約50%と反応して中和するのに十分であるにすぎなかった。しかしながら、加えた炭酸カルシウムは、残りの酸と反応して中和するために必要なものよりも、はるかに多かった。
【0068】
このバッチと実施例22及び実施例11のグリースとを比較すると、変換前にカルシウムヒドロキシアパタイトを加えることの有利な効果は、カルシウムヒドロキシアパタイトの半分を水酸化物当量の水酸化カルシウムで置き換えた場合にも現れることが、明白である(実施例22と実施例24を比較されたい)。しかしながら、全てのカルシウムヒドロキシアパタイトを水酸化物当量の水酸化カルシウムで置き換えると、はるかに低い滴点が得られる(実施例11)。換言すると、低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用してカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造する場合にて、加える唯一の水酸化物源としてカルシウムヒドロキシアパタイトを使用することによって生じる滴点における利点の向上は、カルシウムヒドロキシアパタイトの半分までを水酸化物当量の水酸化カルシウムで置き換える場合は、保たれる。しかし、全てのカルシウムヒドロキシアパタイトを水酸化物当量の水酸化カルシウムで置き換える場合は、滴点向上は失われる。この結果は、公知の従来技術からは予想できない。
【0069】
実施例24A:同じ低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用し、本発明に従う他のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。このグリースは、カルシウムヒドロキシアパタイトの75%を水酸化物当量の水酸化カルシウムで置き換えたことが大きく異なるだけで、先の実施例22のグリースと同様に製造した。
【0070】
このグリースは次のように製造した。360.0グラムの低品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加え、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する311.28グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油、及び、100°Cにて4cStの粘度を有する10.00グラムのPAOを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。5分間混合した後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する21.00グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトを加えた。次いで、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する4.70グラムの食品等級純度の水酸化カルシウムを加えた。30分間混合した後、28.40グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、1.12グラムの氷酢酸及び11.36グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、10分間混合した。その後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する微細に分割された37.90グラムの炭酸カルシウムを加え、5分間混合した。その後、18.00グラムのヘキシレングリコール及び45.0グラムの水を加えた。温度が190°Fに達するまで、混合物を加熱した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、190°F〜200°Fに温度を45分間保った。グリースが非常に濃厚に見えたので、77.82グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。直ちに、1.68グラムの氷酢酸を加え、次いで、17.04グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加えた。この時点で、10.00グラムの結晶性ホウ酸末を約50ミリリッターの熱水に分散させて、グリースに加えた。その後、19.00グラムの75%リン酸水溶液を加えた。これら4つの酸は、このバッチのコンプレックス化酸であった。グリースが非常に濃厚に見えたので、追加の116.73グラムの同じパラフィン基油を加えた。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達すると、27.80グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが300°F未満に冷えると、さらなる37.9グラムの炭酸カルシウムを加えた。グリースの温度が200°Fに下がったとき、5.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、253の未混和稠度を有していた。挽いたグリースを混合器に戻し、さらなる75.04グラムの同じパラフィン基油を徐々に加え、30分間グリースに混入させた。最終のグリースを混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通した。グリースの60往復混和稠度は、275であった。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は30.2%であった。滴点は、650°F超であった。このグリースについて、四球極圧試験ASTM D2596に従う評価も行った。溶着荷重は620kgであった。このバッチに加えたカルシウムヒドロキシアパタイト及び水酸化カルシウムの量は、過塩基性カルシウムスルホネートに由来する少量の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと合わせて、C
12スルホン酸を含む加えた全ての酸の約50%と反応して中和するのに十分であるにすぎなかった。しかしながら、加えた炭酸カルシウムは、残りの酸と反応して中和するために必要なものよりも、はるかに多かった。
【0071】
このバッチと先の実施例11,実施例22及び実施例24とを比較すると、変換前にカルシウムヒドロキシアパタイトを加えることの有利な効果は、カルシウムヒドロキシアパタイトの半分を水酸化物当量の水酸化カルシウムで置き換えた場合(実施例22と実施例24を比較されたい)のみならず、カルシウムヒドロキシアパタイトの75%を水酸化物当量の水酸化カルシウムで置き換えた場合にも現れることが、明白である(実施例24と実施例24Aを比較されたい)。
【0072】
実施例25:同じ低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用し、本発明の実施形態に基づいて別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。このグリースは、グリースを390°Fに加熱して300°F未満に冷却した後に、全ての炭酸カルシウムを加えたことを除いて、実施例24の先のグリースと全く同様に製造した。先の実施例24のグリースとは異なり、変換前に炭酸カルシウムは加えなかった。最終のグリースは、281の60往復混和稠度を有していた。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は27.0%であった。滴点は、623°Fであった。このグリースは、四球極圧試験ASTM D2596に従う評価も行った。溶着荷重は800kgであった。
【0073】
この実施例は、カルシウムヒドロキシアパタイトの半分を水酸化物当量の炭酸カルシウムで置き換えることの有利な効果が、加える炭酸カルシウムの存在に依存しないことを示している。C
12スルホン酸、C12−ヒドロキシステアリン酸、酢酸及びホウ酸は、全て、カルシウムヒドロキシアパタイト、加える水酸化カルシウム、並びに、過塩基性油溶性カルシウムスルホネートに存在する少量の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムによってもたらされる水酸化物塩基性で中和された。しかし、この塩基性の量は、リン酸と反応して中和するには不十分であった。リン酸を加えた場合のこの実施例における他の唯一の中和源は、このグリースを製造するために使用した過塩基性油溶性カルシウムスルホネートに元々存在した分散炭酸カルシウムであった。この非常に微細に分散した炭酸カルシウムの約18.4%が、リン酸の中和において消費された。カルシウムスルホネート由来の炭酸カルシウムの非常に微細な分散の超高表面積が、全ての単純カルシウムスルホネートグリース及びカルシウムスルホネートコンプレックスグリースの、主要な増稠源である。従って、この非常に微細に分散した炭酸カルシウムのほとんど20%の消費が、増稠剤収率に負の影響を及ぼすであろうと予想されよう。しかし、(使用した過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの30%未満に基づいた)この実施形態における増稠剤収率は優れていた。この実施例は、本発明のこの実施形態に基づいた組成物及び方法の予期せぬ利点を示している。
【0074】
実施例26:同じ低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用し、本発明の実施形態に従う別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。このグリースは、12−ヒドロキシステアリン酸の40%だけではなく、12−ヒドロキシステアリン酸の全てを、変換前に加えたことを除いて、先の実施例25のグリースと全く同様に製造した。最終のグリースは、283の60往復混和稠度を有していた。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は28.1%であった。滴点は、643°Fであった。このグリースについて、四球極圧試験ASTM D2596に従う評価も行った。溶着荷重は800kgであった。この実施例は、低品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを利用するカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造する場合に、カルシウム含有塩基としての、カルシウムヒドロキシアパタイトの半分を水酸化物当量の水酸化カルシウムで置き換えることの不変の利点を、依然として示している。先の実施例25のグリースと同様に、C
12スルホン酸、C12−ヒドロキシステアリン酸、酢酸及びホウ酸は、全て、カルシウムヒドロキシアパタイト、水酸化カルシウム、並びに、過塩基性油溶性カルシウムスルホネート由来の少量の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムによってもたらされる水酸化物塩基性で中和されたが、この塩基性は、リン酸と反応して中和するには不十分であった。リン酸は、カルシウムスルホネートに存在する分散炭酸カルシウムによって中和された。この非常に微細に分散した炭酸カルシウムの約18.4%が、リン酸の中和において消費された。それにも拘わらず、最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの低い割合によって示されるように、優れた増稠剤収率が再び得られた。
【0075】
実施例25及び実施例26も、過塩基性油溶性カルシウムスルホネートに由来して存在するかも知れない少量の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウム、並びに、加えるカルシウムヒドロキシアパタイト及び加える任意の水酸化カルシウムの合計によってもたらされる全塩基性が、加える酸と反応して中和するには不十分であるときでさえ、本発明のこれらの実施形態に基づいて、塩基源としてカルシウムヒドロキシアパタイトを使用することによって、増稠剤収率及び滴点の改善が達成され得ることを示している。そのような場合、加えた酸の未反応の部分は、過塩基性油溶性カルシウムスルホネートに由来する非常に微細に分散した炭酸カルシウムの一部分によって中和されて、得られるグリースの質に悪影響を及ぼさないであろう。
【0076】
本発明に従う実施形態のさらなる実施例を、「良」品質の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを用いて、調製した。
【0077】
実施例27:実施例4の良品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用し、本発明の実施形態に基づく他のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。実施例22のグリースと同様に、コンプレックス化酸としてホウ酸を加えた。また、12−ヒドロキシステアリン酸の40%を変換の前に加え、炭酸カルシウムの50%を変換の前に加えた。このグリースは次のように製造した。360.0グラムの良品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加え、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する263.3グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油、及び、100°Cにて4cStの粘度を有する10.00グラムのPAOを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。5分間混合した後、84.00グラムの、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有するカルシウムヒドロキシアパタイトを加え、30分間混合した。その後、36.00グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、11.36グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、10分間混合した。その後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する微細に分割された47.60グラムの炭酸カルシウムを加え、5分間混合した。その後、18.00グラムのヘキシレングリコール及び45.0グラムの水を加えた。温度が190°Fに達するまで、混合物を加熱した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、190°F〜200°Fに温度を45分間保った。グリースが非常に濃厚に見えたので、29.26グラムの同じパラフィン基油を徐々に加えた。直ちに、17.04グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加えた。この時点で、24.00グラムの結晶性ホウ酸末を約50ミリリッターの熱水に分散させて、グリースに加えた。その後、19.00グラムの75%リン酸水溶液を加えた。グリースが粘稠になったので、追加の88.03グラムの同じパラフィン基油を加えた。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達すると、27.80グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが300°F未満に冷えると、さらなる47.6グラムの炭酸カルシウムを加えた。グリースの温度が200°Fに下がると、5.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、239の未混和稠度を有していた。挽いたグリースを混合器に戻し、さらなる141.1グラムの同じパラフィン基油を徐々に加え、40分間グリースに混入させた。最終のグリースを混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通した。グリースの60往復混和稠度は、299であった。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は29.3%であった。滴点は、650°F超であった。このグリースについて、四球極圧試験ASTM D2596に従う評価も行った。溶着荷重は800kgであった。このバッチに加えたカルシウムヒドロキシアパタイトの量は、C
12スルホン酸を含む加えた全ての酸の約48%と反応して中和するのに十分であるにすぎなかった。ただし、加えた炭酸カルシウムは、残りの酸と反応して中和するために必要なものよりも、はるかに多かった。
【0078】
実施例28:実施例4の良品質過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用し、本発明の実施形態に基づく別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。このグリースは、12−ヒドロキシステアリン酸の全てを変換前に加えたことを除いて、実施例27のグリースと全く同様に製造した。最終のグリースは、285の60往復混和稠度を有していた。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は33.3%であった。滴点は、650°F超であった。このグリースは、四球極圧試験ASTM D2596に従う評価も行った。溶着荷重は800kgであった。このバッチに加えたカルシウムヒドロキシアパタイトの量は、C
12スルホン酸を含む加えた全ての酸の約48%と反応して中和するのに十分であるにすぎなかった。ただし、加えた炭酸カルシウムは、残りの酸と反応して中和するために必要なものよりも、はるかに多かった。
【0079】
実施例29:実施例5の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用し、本発明の実施形態に基づいた別のカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを製造した。この過塩基性カルシウムスルホネートは、滴点に関しては良好な品質を有していたが、その増稠剤収率は、実施例5で使用した39.3%のカルシウムスルホネートで示されたほど良くはなかった。この実施例に従うグリースは次のように製造した。360.0グラムの低品質400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを、開放混合容器に加え、次いで、100°Fにて約600SUSの粘度を有する250.4グラムの溶媒中性グループ1パラフィン基油、及び、100°Cにて4cStの粘度を有する10.00グラムのPAOを加えた。加熱することなく、遊星混合パドルを用いて混合を開始した。5分間混合した後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する84.00グラムのカルシウムヒドロキシアパタイトを加え、30分間混合した。その後、36.00グラムの第一級C
12アルキルベンゼンスルホン酸を加えた。20分後、1.12グラムの氷酢酸及び11.36グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加え、10分間混合した。その後、5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する微細に分割された47.6グラムの炭酸カルシウムを加え、5分間混合した。その後、18.00グラムのヘキシレングリコール及び45.0グラムの水を加えた。温度が190°Fに達するまで、混合物を加熱した。非晶性炭酸カルシウムの結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が生じたことが、フーリエ変換赤外(FTIR)分光分析で示されるまで、温度を190°F〜200°Fに45分間保った。直ちに、1.68グラムの氷酢酸を加え、次いで、17.04グラムの12−ヒドロキシステアリン酸を加えた。この時点で、24.00グラムの結晶性ホウ酸末を約50ミリリッターの熱水に分散させて、グリースに加えた。これら3つの酸は、このバッチのコンプレックス化酸であった。グリースが濃厚に見えたので、さらなる31.0グラムの同じパラフィン基油を加えた。その後、攪拌を継続しながら、混合物を電気マントルヒーターで加熱した。グリースが300°Fに達すると、27.80グラムのスチレン−イソプレン共重合体を、粒状固形物として加えた。グリースを約390°Fまでさらに加熱し、このとき、全ての高分子が融解してグリース混合物に完全に溶解した。マントルヒーターを取り除き、開放空気中で攪拌を継続することによって、グリースを冷却した。グリースが300°F未満に冷えると、さらなる47.6グラムの炭酸カルシウムを加えた。グリースが濃厚に見えたので、さらなる51.2グラムの同じパラフィン基油を加えた。グリースの温度が200°Fに下がると、5.00グラムのポリイソブチレン高分子を加えた。グリースが170°Fの温度になるまで、混合を継続した。その後、グリースの一部を混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通して、滑らかで均質な最終の質感とした。グリースは、243の未混和稠度を有していた。挽いたグリースを混合器に戻し、さらなる67.7グラムの同じパラフィン基油を徐々に加え、40分間グリースに混入させた。最終のグリースを混合器から取り出し、3本ロールミルに3回通した。グリースの60往復混和稠度は、281であった。最終のグリースにおける過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は33.0%であった。滴点は、650°F超であった。このグリースは、四球極圧試験ASTM D2596に従う評価も行った。溶着荷重は800kgであった。
【0080】
このバッチに加えたカルシウムヒドロキシアパタイトの量は、過塩基性カルシウムスルホネートに存在する少量の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと合わせて、C
12スルホン酸を含む加えた全ての酸の約79%と反応して中和するのに十分であるにすぎなかった。しかしながら、加えた炭酸カルシウムは、残りの酸と反応して中和するために必要なものよりも、はるかに多かった。カルシウムヒドロキシアパタイトを加えなかった実施例5のグリースと、実施例29のグリースを比較すると、本発明のこの実施形態は、優れた滴点を維持しながら、増稠剤収率をかなり改善している。従って、本発明は、低い滴点の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用する場合に、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースの滴点及び増稠剤収率を一貫して改善するだけでなく、滴点が良好でありながら劣った増稠剤収率特性を有する過塩基性油溶性カルシウムスルホネートを使用する場合に、増稠剤収率も向上させた。
【0081】
本明細書で提供した実施例は、主としてNLGI第2等級又は第3等級に入り、第2等級が最も好ましいが、本発明の範囲には、第2等級よりも硬い又は軟らかい全てのNLGI稠度等級が含まれることを、さらに理解すべきである。しかしながら、当業者には理解されるように、NLGI第2等級ではない、本発明に基づいたそのようなグリースについて、それらの特性は、第2等級製品を提供するためにより多くの又はより少ない基油を使用した場合に得られるであろうものと合致すべきである。
【0082】
本明細書で使用し、本発明に適用する「増稠剤収率」の用語は、通常の意味であり、つまり、潤滑グリース製造において一般に使用されている標準的な稠度試験ASTM D217又はD1403により測定されるような、特定の所望の稠度を有するグリースを提供するために必要とされる高度過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの濃度を意味するものとする。同様に、本明細書で使用するグリースの「滴点」は、潤滑グリース製造において一般に使用されている、標準的な滴点試験ASTM D2265を用いて得られる値を指すものとする。本明細書で使用する、百分率又は部で指定される成分の量は、特定の成分(水など)が、最終グリースに存在しなくても、又は、成分として加える指定の量で最終グリースに存在しなくても、最終グリース製品の重量に基づく。当業者は、本明細書及び含まれる実施例を読めば、組成物及び組成物製造の手法の修正や変更を本発明の範囲内で行ってよいこと、並びに、本明細書に開示した発明の範囲は、発明者が法的に権利を有する添付の特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ制限されることが意図されていることを、理解するであろう。