(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
材料試験装置の操作方法において、試験を、可変試験周波数で材料試料に変動荷重を印加し、前記荷重の印加中に前記試料の温度を測定し、前記測定された温度に基づいて前記試験周波数を変更し、それにより、前記試験中に前記試料が所定の最大温度を超えることを防止することによって行うことを含む材料試験装置の操作方法。
【背景技術】
【0002】
材料試験機は、材料試料または成分の物理的特性を試験するために使用される。疲労試験は、変動荷重下での材料の挙動を決定することを含む。通常、指定された平均荷重(ゼロとすることができる)および交番荷重が試料に印加され、破壊に必要なサイクル数(疲労寿命)が記録される。荷重は、例えば軸荷重、捻れ荷重、曲げ荷重、せん断荷重、摩擦荷重またはこれらの組合せとして与えることができる。
【0003】
材料の試料およびサンプルを機械的に試験するプロセスでは、試験中に加えられる機械的な力および変形によって試料にエネルギーが与えられる。このエネルギーの一部分が、試料の自己加熱として発現する。サイクル疲労試験では、力および変形が反復的に加えられ、エネルギー吸収率は一般に試験周波数に比例する(すなわち、試験周波数が速くなるほど、試料が熱くなることになる)。
【0004】
より高い試験周波数では、試料に対する自己加熱効果によって著しく温度が上昇することがある。これは、試料に引張り荷重や捻り荷重その他の荷重が印加されるかによらず、複雑な繰返し荷重印加を含む任意のサイクル荷重試験や、疑似ランダムスペクトル波形を用いた試験において当てはまる。
【0005】
金属試料の場合、こうした疲労試験は、一般に、比較的高い試験周波数で実施可能であるが、ある種の試料材料、例えばプラスチックおよび複合材料の場合、疲労試験の自己加熱効果によって、試料温度が所定の試験限界を超えてしまう場合があり(例えば、複合材内の樹脂は、その使用温度を超える場合がある)、そのことが、試験結果の妥当性を低下させてしまうことがある。
【0006】
そうした事態を回避するために、疲労試験を行うオペレーターは、一般に、試験中に使用温度を超えないであろうと考えられる控えめな試験周波数値に設定する。試験規格(例えば、ISO規格または製造業者若しくは顧客によって制定された規格)によって、試験中に超えてはならない最大温度、或いは、最大許容可能温度上昇が指定されることがあり、オペレーターは、自己加熱によってこの限界を超えないよう疲労試験周波数を制限することを要求される。結果として、控えめな試験周波数が使用され、これによって試験の継続時間が不必要に延長し、試験機によって実施される試験のスループットが減少し、1試験当りのコストが増加する。場合によっては、試験規格は、試料が過熱することを防止する単純でかつ非常に慎重な方法として、最大試験周波数を単に指定することができる。関連する規格の例は、EN ISO 13003、ASTM D3479/D3479M「Standard Test Method for Tension-Tension Fatigue of Polymer Matrix Composite Materials」、およびASTM D7615/D7615M「Standard Practice for Open-Hole Fatigue Response of Polymer Matrix Composite Laminates」である。
【0007】
高温または低温で試料を試験するように設計された試験システムを含む、多くの異なる材料試験システムが従来技術において知られている。特許文献1は、材料試料を試験する方法およびデバイスを開示しており、試料は、試験中、液体チャンバー内に保持され、試料温度は、チャンバーを通る液体の流れを調整することによって一定に維持される。
【0008】
特許文献2は、反復的せん断力に対する材料の応答を試験するデバイスを開示しており、材料試料は、加熱要素および冷却要素を有する環境制御チャンバー内に位置決めされ、チャンバーは、PID制御システムを用いて試験全体を通して、所望の温度にセットされ、一定温度に保持され得る。
【0009】
然しながら、これらのシステムは、試験試料を取巻く環境の温度を制御することに頼り、装置の複雑さを増加させる。さらに、冷たい空気を導入するかまたはファンを使用することによって同様に達成され得るそのような強制冷却は、関連する試験規格がそれを許す場合にしか試料加熱を制限するために使用することができない。強制冷却は試験環境を変化させるため、これは、常に当てはまるわけではなく、或る特定の試験規格は、こうした冷却のない試験条件を指定する。さらに、強制冷却は、試料にわたって大きな温度勾配を生成し、真の試料温度を推定することをより難しくする。従って、試料を取巻く環境の温度を制御する必要なく、試料の自己加熱を制御することによって、試料温度が特定の温度限界を超えることなく、試験時間を最小にし、スループットを最大にすることが可能な試験装置および方法を提供することが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
従来の材料試験装置では、変位、荷重、歪等の指定された試験パラメータまたは指令変数に基づいてアクチュエーターが試料に荷重を印加する。疲労試験では、指定された試験周波数で変動荷重が試料に印加される。必要な試験周波数が波形発生器に入力される。波形発生器は、指示された変数に従ってアクチュエーターを駆動するのに必要とされる制御信号を発生する。試料に実際に印加される荷重が所望の荷重印加パターンに密接に追従するために、通常、フィードバック制御を用いて、指示された変数と測定値との誤差を最小にし、誤差は、アクチュエーターを駆動するコントローラーに提供される。
【0019】
通常の疲労試験では、オペレーターは、試験周波数を、指定された試験規格に基づくか、或いは、試験中に試料を過熱させないようにするのに十分に低いことが明らかな値に基づく適切な値に設定することになる。いずれの場合も、試験周波数は、通常、特に複合材料を試験するとき、控えめな値にセットされる。その理由は、試料温度が、その材料についての使用限界を超えると、試験結果が損なわれることになるからである。
【0020】
本発明は、試験中に試料の温度を監視し、試料温度が許容可能な限界内に留まるように試料のサイクル荷重印加の周波数を制御することによって、試料の指定された使用温度を超えることなく、試験装置のスループットを高めることを目標とする。換言すれば、試料の温度は、試験周波数を調整することによって制御される。
【0021】
図1は、検出された試料温度に応答して試験周波数を調整する制御システムを含む、本発明の一実施形態による試験装置を示す。この実施形態では、装置は従来の疲労試験システムの構成要素を備えており、この構成要素には、試料104にサイクル荷重を印加するアクチュエーター102が含まれる。該アクチュエーターは、入力として所望の試験周波数を有する発生器106によって生成される指令信号に従って荷重を印加する。上述したように、試料に印加される実際の力は測定され、制御ループ内で適当な信号処理108を経てフィードバックされ、指令値と該測定値との差がコントローラー110に供給され、該コントローラーがアクチュエーターの駆動信号を生成する。こうした従来の特徴は全体的に破線100内に示されている。一例では、コントローラー10は、比例、積分、微分、およびラグ(PIDL)コントローラーであるが、他のコントローラーを使用することができる。疲労試験を、制御パラメータとして荷重ではなく位置を用いて実行することができることもできよう。その場合、位置が測定され、任意の必要とされる位置信号処理を経てコントローラー110にフィードバックされる。
【0022】
本発明に従って試料の温度を制御するために、装置は、外部ループ制御システムを備え、外部ループ制御システムは、試料温度2を測定する手段と、測定温度を目標温度6と比較して温度誤差値を生成する手段4と、温度誤差値を受取り、該温度誤差に基づいて必要な試験周波数を決定し、それに従って試験周波数を調整する出力を波形発生器106に提供するコントローラー8とを備える。温度制御機能を外部ループ制御システムとして提供する利益の1つは、外部ループ制御システムを、指定された特徴部100に対応することができる既存の試験システムに後付けすることができることである。
【0023】
オペレーターが、最大試料温度および/または最大試験周波数10を装置に入力する、或いは、オペレーター以外の手段によって、こうしたパラメータをシステムに生成または入力するようにできる。これらの最大値は、通常、試験が適切な動作限界を超えないことを保証するために使用される。試料が指定された最大温度に達する場合、これは、一般に、制御が適切に機能しておらず、試験が停止されるべきであることを示している。最大周波数は、通常、試験機の指定された最大動作限界であり、試験は、不特定期間この周波数で継続することができる。最大周波数に替えて、最大試験周波数を自動的に導出することができる最大歪速度を指定することが好ましい場合がある。
【0024】
以下、
図1を参照して、温度制御システムの作用を説明する。
図1に示すコントローラー8は、周知のタイプの比例積分(PI)コントローラーからなり、PIコントローラーは、以下の変数に関して動作する。
−プロセス変数(PV)は試料温度、
−操作変数(MV)は試験周波数、
−設定値(SP)は目標試料温度、
−誤差(e)=SP−PVである。
【0025】
他の実施形態では、コントローラーは、比例−積分−微分(PID)コントローラーとすることができる。或いは、PDPコントローラーまたはIコントローラーのように、比例、積分および微分制御の他の組合せを用いてもよい。任意のこうしたコントローラーを、当業者に明らかになる適切な修正によって、以下で述べる実施形態のうちの任意の実施形態で使用することができる。
【0026】
例示の実施形態では、PIコントローラーは、
【数1】
の形式である。ここで、K
Pは比例利得であり、K
Iは積分利得である。
【0027】
上述した構成では、PI制御は標準的形式から修正され、積分器は試験周波数に関する(すなわち、K
Ieが積分される)。これは、試験の始めに試験開始周波数を積分器初期値として使用することによってシステムの簡単な初期化を可能にする。
【0028】
図1の実施形態では、比例利得K
Pおよび積分利得K
Iを、オペレーターによって、適切な入力によってコントローラー8に設定することができる(図示せず)。
【0029】
測定された試料温度と入力された目標温度との差は温度誤差値として求められ、温度誤差値は、その後、PIコントローラー8への入力として提供される。目標温度はオペレーターが直接入力するか、或いは、他の適した手段によって決定するようにできる。例えば、試料温度が試験中に最大温度を超えないことを保証するように、目標温度を最大温度から導出するようにできる。PIコントローラーは、上述の形式でフィードバック制御を実行し、生成された試験周波数を波形発生器106に送出することによって従来の試験システム100と連動する。
【0030】
図1の実施形態では、試料温度が熱電対を用いて測定される。熱電対の信号は、必要な処理3を経て外部制御ループにフィードバックされる。こうした処理は、周知の電子モジュールによって実施することができる。典型的に、熱電対は試料表面に接合されるが、1または複数の熱電対を試料に埋設したり、或いは、試料内に一体的に形成することができる。他の温度測定構成、例えば赤外線検出器、放射温度計または熱イメージングカメラを代替的または付加的に用いることができる。複数のセンサを試料中の異なる部位に配置して温度を測定するようにできる。また、制御ループで使用される温度測定を複数の測定から種々の異なる方法で取得するようにできる。例えば、複数の測定値を平均したり、或いは、個々の測定の最大値を用いることができる。例えば、熱イメージングカメラまたは他の手段によって、ピーク試料温度を特定、管理することが可能になる。こうして、温度分布を、単一点ではなく、試料全体にわたって測定可能となり、試料にピーク温度が生じる場合には、検出されたピーク温度を用いて試験を制御可能となる。さらに、試料温度を、任意の関連する試験規格で指定されであろう任意の方法で求めることができることが想定される。
【0031】
図示するシステムの実施形態では、試験試料は、オペレーターによって試験装置内に配置され、比例利得および積分利得はオペレーターによって設定、或いは、デフォルト値に設定される。通常、試験が継続する間、利得は固定されるが、幾つかの実施態様では、試験中にオペレーターが利得を調整するようになっている。オペレーターは、また、最大試料温度および/または最大試験周波数を設定することができる。温度測定が、試料内に一体化されるか或いは試料に取付けられる測定システムによって実施される場合、測定システムは、試験を開始する前に試験装置に適切に接続される。
【0032】
試験は従来の方法で開始され、指定された荷重パターンで試料に負荷が印加される。試料温度が、
図1に示す外部フィードバックループによって測定され、目標温度と比較されて、温度誤差を生成し、温度誤差がPIコントローラー8に提供される。PIコントローラーは、温度誤差を用いて試験周波数信号を生成し、試験周波数信号は波形発生器106に提供され、試験周波数は、それにより、試料温度を制御するように調整される。こうして、試料が使用温度または任意の他の指定された最大温度を超えることなく、試験時間を最小にし、スループットを最大にするように試験周波数を最大することができる。
【0033】
特に効果的な方法で試験時間を低減するために、制御利得および初期試験周波数に応じて、異なる制御パターン(すなわち、試験周波数パターン)を用いることができる。例えば、試料温度をできる限り迅速にほぼ目標値まで上げるために、試験の開始時に初期周波数として最大周波数を選択することができる。高い制御利得を選択することによって、周波数は、目標温度に達するとすぐに迅速に減少することになる。然しながら、このアプローチでは、制御温度に一定程度のオーバシュートを生じ、それにより、次に、試料の過熱を防止するために、より控えめな目標温度を設定することが必要となる。従って、長期試験を行うとき、代替のアプローチは、予想される長期周波数値未満の周波数で試験を開始することであり、それにより、目標温度がより保守的でなくなることが可能になり、長期試験の過程にわたって試験時間が更に減少する。
【0034】
図1に示すように、更なる限界メカニズムを、或る特定の状況下で試験を一時停止するために設けることができる。特に、システムを、「温度限界超え」検出12で示すように、指定された最大値を超える測定試料温度を検出するように構成することができる。「センサ不具合検出器」14で示すように、温度センサ不具合の更なる検出を設けることができる。センサの不具合は、センサ自体の障害か、試料からのセンサの脱離か、またはPIコントローラーに対する温度測定のフィードバックにおける何らかの他の不具合に起因する場合がある。こうした不具合を、試料温度信号を監視し、温度フィードバックの中断(完全なセンサ不具合または接続不良を示す場合がある)または測定温度の突然の低下(例えば、試料からの熱電対の離脱を示す場合がある)を検出することによって検出することができる。他のエラー検出を、例えば、PIコントローラー8からの目標値試験周波数出力が高過ぎるか或いは低過ぎる等の制御エラーを検出するために設けることができる。こうした制御エラーは、
図1で「周波数限界未満」検出16で示すように、関連する制御信号を監視し、その信号を指定された閾値と比較することによって検出され得る。指定される限界メカニズムの任意のメカニズムを、問題が検出されると試験を停止または一時停止するように、或いは、適切な補正処置を提供するように構成することができる。
【0035】
図2は、温度制御式試験システムの更なる実施形態を示し、外部ループ温度制御のチューニングが自動的に実施される。好ましくは、この実施形態は、外部温度制御ループの全自動適応的チューニングを提供する。試験システムの主要な構成要素は
図1に示す構成要素と同じであり、同様な構成要素は同じ参照番号を与えられる。
図2のシステムの主要な差は、PIコントローラー28によって使用される比例利得および積分利得を計算するための熱モデル同定モジュール26が提供されることである。利得は、システムからの種々の入力、すなわち、測定される試料温度2、波形発生器106によって提供される実行周波数(すなわち、指示される試験周波数)、および好ましくは、測定される周囲温度に基づいて熱モデル同定モジュールによって決定される。周囲温度22を、熱電対等の任意の適した測定手段によって求め、任意の必要な信号処理24を経て熱モデル同定モジュール26に提供することができる。更なるダイナミクスを導入することによって同定プロセスの有効性を減少させないために、熱パラメータ同定によって使用される全ての信号(具体的に、試料温度および周囲温度、試料温度の変化レート並びに試験周波数)を同じフィルタダイナミクスによって処理することが望ましい。例えば、試料温度信号がローパスフィルタリングされる場合、同じローパスフィルタリングは、好ましくは、同定アルゴリズムによって使用される、周囲温度、試料温度の変化レート、および試験周波数に適用されるべきである。
【0036】
図2に示す周囲温度の測定に対する代替法として、熱モデル同定モジュールによって使用される周囲温度を、固定値として入力することができる。周囲温度値は、オペレーターが入力することができるかまたは別のソースから導出することができる。この構成は、周囲温度が一定でかつ既知である状況において適切であり得るので、アクティブな周囲温度測定の必要性がなくなる。例えば、試験装置を、温度制御式環境で使用することができ、その場合、オペレーターは、既知の温度を入力することができるか、または代替的に、温度は、制御される環境の温度を制御するシステムからの出力として試験装置に提供され得る。
図3は、熱モデル同定モジュール26を含む、
図2の構成と同様の構成を示すが、この実施形態では、モジュールは、入力として、
図2の実施形態の測定周囲温度の代わりに固定周囲温度30を提供される。
【0037】
代替の実施形態(図示せず)では、測定周囲温度を、たとえフィードバックパラメータの適応的チューニングが存在しない場合でも、試験周波数を左右するフィードバックコントローラーへの入力として使用することができる。例えば、プリセット式またはオペレーター制御式フィードバック利得を、
図1の場合と同様に、試験周波数の制御において使用することができるが、フィードバック制御についての設定点は、試料温度自体ではなく、試料温度と周囲温度との差とすることができる。この場合、測定周囲温度またはそうでなければ仮定周囲温度値が入力として使用されることになる。
【0038】
図2、3の双方のシステムにおいて、熱モデル同定モジュール26によって計算される利得は、その後、PIコントローラー28に出力される。PIコントローラー(例えば、PIDコントローラー)の代わりに異なるタイプのコントローラーが使用される場合、必要とされる利得は、相応して計算される。
【0039】
示すPIコントローラー28を用いて、熱モデル同定モジュール26は、比例利得および積分利得の理想的な値を決定し、オペレーターが利得を手作業で調整する必要性をなくすように設計され、それにより、試料温度のより効率的な制御および更に改善された試験スループットを可能にする。これは、以下で詳細に述べる熱モデルを用いて利得を計算することによって達成されるが、他の熱モデルを用いて同様の結果を達成することもできる。述べる熱モデルは、利得が、試料温度、周囲温度、および試験周波数に基づいて効果的に計算されることを可能にする。
【0040】
試料の熱パラメータおよび適切な制御利得が試験中に推定されると、それらは、物理的に同様な試料に関する他の試験に適用可能であることになる。実際には、適切な熱パラメータまたは制御利得が、それぞれの後続の試験の開始時に固定値としてセットされる場合、同様の試料に関する後続の試験についてより正確な周波数制御、従って、より迅速な試験を可能にすることになる。便宜上またよりよい物理的理解のために、ユーザは、後続の試験をセットアップするとき、コントローラー利得ではなく、熱パラメータ値を記録(note)し再使用することを好む場合がある。従って、制御システムは、固定制御チューニングまたは適応的(自動推定式)制御チューニングを使用するオプションを与えることができる。すなわち、制御チューニングが固定である場合、ユーザは、コントローラー利得を直接指定するかまたはコントローラー利得を決定する熱パラメータ値を指定する更なる選択を与えられ得る。
【0041】
本実施形態では、単純な熱モデルが使用され、その熱モデルは、試験周波数および試料温度と周囲温度との差が与えられる場合、試料温度の変化レートを予測する通常の微分方程式である。
【数2】
ここで、
dθs/dt=試料温度の変化レート[℃/s]
c
F=加熱係数[℃/(sHz)]
c
L=冷却係数[1/s]
F=試験周波数[Hz]
θ
s=試料温度[℃]
θ
a=周囲温度[℃]
である。
【0042】
各試験サイクルが同じ量のエネルギーを試料内に導入し、冷却によるエネルギー損失レートが試料温度と周囲温度との差に比例すると仮定すると、モデルは、試料内へのエネルギー流を考慮することから得られる。
【0043】
各サイクルにおいて試料に印加される動的荷重が一定のままでなければならないことに留意されたい。そうでなければ、c
Fは変動することになる。
【0044】
同定方程式
方程式(1)による熱モデルは、単純な線形代数方程式として書換ることができる。
【数3】
ここで、ν=dθ
s/dtであり、δ=θ
s−θ
aである。
【0045】
このように方程式を書くことによって、標準的なパラメータ同定技法(例えば、Karl J. AstromおよびBjorn Wittenmarkによる書籍「Adaptive Control」第2版参照)を用いてc
Fおよびc
Lを推定することができる。方程式の標準的な形式は、
y=C
Tx+
εy (3)
である。ここで、
yは、誤差
εと、C
Txから計算された正しい値とから構成されるノイズを含む測定値である。Cは同定すべきパラメータの行列であり、
xは、誤差がないと考えられる「既知の」入力である。一連の値
【数4】
および
【数5】
が利用可能である場合、Cの「最小2乗」最適推定は、
【数6】
である。ここで、P=(X
TX)
-1であり、Q=X
TYである。
【0046】
「適応」制御に対してオンライン推定を適用すると、これらの方程式は、多くの場合に、新しいデータのために古いデータがどれほど迅速に「忘れられるか」を左右する「忘却係数」を有する「再帰的」形式に変換される。古いデータは最終的に忘れられるため、精度が維持されるために、測定変数は頻繁に変化しなければならず、そうでなければ、推定は「ドリフト」し始めることになる。然しながら、本出願では、パラメータは、一定であると予想され、また、測定における最も有意の変化は、試験の開始時にあると予想されるため、方程式(4)が、以下の手順を用いて直接適用される。
【0047】
方程式(3)を方程式(2)と比較することによって、
【数7】
であることがわかる。
【0048】
熱パラメータ同定プロセスが更新される度に行列Pinv(最初に便宜上Pの代わりに使用される)、方程式(4)からのQ、および、パラメータ推定値は、次のように更新される。
【数8】
【0049】
これらの方程式は、通常、一定の条件が満たされると更新されるだけである。一定の条件は、
・温度が、最後の更新以来、指定された最小量だけ変化しており、かつ、δの大きさが十分である(以下でより詳細に論じる)ことと、
・Pinvが数値的に良条件(numerically well-conditioned)となり、したがって反転可能となるのに十分な更新が存在するまでPinvが反転されないこととを含むことができる。
【0050】
K
PおよびK
Iを設定するためのルール
比例利得K
P、積分利得K
I、および目標温度θ
tに基づいて試験周波数Fを設定するための制御方程式は、(ラプラス変換形式で)
【数9】
である。
【0051】
オリジナルの熱方程式(1)をラプラス変換形式に変換し、Fについての方程式(7)をこの方程式に代入することによって、コントローラーを含む熱システムについての伝達関数が導出され得る。
【数10】
【0052】
方程式(8)は、「自然周波数」(ゼロ誤差に向かう応答速度)を
【数11】
とし、「ダンピング係数」を
【数12】
として、周囲温度が一定のままである場合、誤差がゼロになる傾向があり、ダイナミクスが「2次」であることを示している。
【0053】
方程式(9)を書換えることによって、積分利得K
Iについての方程式は、他の表現で導出することができる。
【数13】
【0054】
この実施態様では、コントローラーは、2つの設計パラメータnおよびζ
designを用いて設計された。K
PおよびK
Iは、ダンピング係数ζ
designを達成し、K
Pがゼロであった場合に比べてn倍速い制御式応答を与えるように選択されるべきである。これらのルールは、K
PおよびK
Iについて以下の方程式をもたらす。
【数14】
【0055】
当業者に明らかであるように、K
PおよびK
Iをチューニングするために、多くの他の設計ルールを使用することができることが留意されるべきである。
【0056】
自動チューニングの性能を改善するために、制御利得の決定に対して更なる修正を行うことができる。
【0057】
特に、温度ノイズが不十分な熱モデル同定をもたらす場合があると判定された。熱モデル同定に対する温度ノイズの影響を低減するために、デルタ温度(試料−周囲)が指定量よりも多く変化したときだけ、モデルに対する更新を実施することが望ましい場合がある。
【0058】
別の難点が、温度測定のオフセットに対するシステムの感度から生じる場合がある。熱モデルは、パラメータ同定プロシージャによって「誤差なし」と仮定される入力δ=θs−θaに依存する。どんな誤差も、同定されたパラメータ値にバイアスをもたらすことになる。δの値が小さい場合、θsとθaとの間の較正オフセットの差は、δにおいて比例的に大きな誤差をもたらすことになる。これが推定値に著しく影響を及ぼすことを回避するために、一実施形態では、制御パラメータの推定は、δの指定された最小値に達するまで開始されない。さらに、試験プロシージャは、好ましくは、周囲温度に対する測定試料温度の較正を含む。
【0059】
本発明の試験中に、周波数が一定である試験のまさに開始時に、測定試料温度が、指数関数的に上昇する(すなわち、温度レートが増加する)傾向あることがわかった。この1つの理由は、試料の表面に取付けられた熱電対によって温度が測定される場合に、内部の熱が熱電対に達するのにかかる時間である。これに抗するために、1つの構成では、熱モデルは、温度の変化レートが降下し始めるまで試料温度の値を拒否する。
【0060】
試験開始直後に、熱モデルc
Fおよびc
L誤差、従って、導出されたK
PおよびK
L誤差がかなりある場合があり、制御ループの不安定性をもたらし得ることもわかった。これに抗するために、未処理のK
PおよびK
L係数を、PIコントローラーに送出される前に、指数移動平均フィルタを用いてフィルタリングすることができる。EMAフィルタは、試験の開始時にゼロで初期化されるため、フィルタリングされたK
PおよびK
L値は、ゼロから最終値に向かって徐々に移動する(ゼロのK
PおよびK
Lは、試験周波数に対する変化が起こらないことを事実上意味する)。この修正は、試料温度制御ループの安定性の改善をもたらす。
【0061】
上述した熱モデルと異なるモデルを、PIコントローラー用の比例利得および積分利得、または、PIコントローラー以外のコントローラーを使用するときの関連する制御利得を決定するのに使用することができることが認識されるであろう。熱モデルの更なる開発では、試験周波数をより正確に制御するために、他のパラメータを使用することが可能である。例えば、試料の温度を測定するときに、温度センサが試料内に埋め込まれることが可能であるが、熱電対等の1または複数のセンサが、試料表面に接合されることがより通常でかつより簡単である。こうしたセンサは、表面温度よりかなり高い場合がある、試料内の温度の真の指標を必ずしも与えるわけではない。結果として、試料の内部温度は、材料の使用温度を超える場合があり、一方、検出される表面温度は、依然として作業範囲内である。このことは、許容可能な表面温度閾値を下げることによって考慮され得るが、内部温度と表面温度との実際の差は、試料の荷重印加プロファイルおよび他の要因に応じて変動することになる。例えば、試験周波数がゆっくり増加する場合、表面温度は、試験が高い周波数で開始される場合に比べてわずかな量だけ内部温度より遅れる場合がある。従って、内部温度がより高い場合があることを反映するために、表面温度の温度閾値を単に下げることは、著しく控えめな温度閾値が適用されることをもたらす可能性があり、或る特定の状況において試験時間を不必要に増加させる場合がある。
【0062】
この影響を反映するために、熱モデルを、表面温度並びに試料および環境の他の情報、例えば試料の寸法または形状、材料の熱特性、および荷重印加プロファイルに基づいて試料の内部温度を予測するように構成することができる。より具体的には、熱モデルは、材料の比熱容量および熱抵抗(複合材料の場合、ウィーブまたは層の方向に対する伝導方向に応じて熱抵抗が異なり得ることに留意されたい)、周囲温度における材料表面と空気質量との間の熱抵抗、試料と装置の残りの熱質量との間の熱抵抗、熱電対と一方向における周囲空気および他方向における試料表面との間の熱抵抗等のうちの1または複数を使用することができる。こうした更なる情報を用いて、温度制御の精度が改善され、試験時間を低減し、かつ、スループットを増加することができる。
【0063】
本発明は、従来の疲労試験での使用に関して述べられたが、種々の修正が可能であり、また、本発明の原理を、同じ利点を達成するために他の用途に適用することができる。特に、本発明を、回転曲げ疲労試験および多軸疲労試験(例えば、十字試験)を含む、変動荷重が制御可能試験周波数で材料に印加される任意の材料試験構成に適用することができる。回転曲げ疲労試験では、試料は、回転され、回転軸に垂直な曲げ力を更に荷重印加される。従って、変動荷重は、特に試料の表面で急速な引張り−圧縮荷重を提供する、曲げた試料の回転によって供給され、従って、試験周波数は回転速度に依存する。従って、試料温度は、回転速度を調整することによって制御され得る。