特許第6042911号(P6042911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042911突出する横当接面を有する割出し可能な両面−ネガティブ切削インサートおよび切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042911
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】突出する横当接面を有する割出し可能な両面−ネガティブ切削インサートおよび切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20161206BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20161206BHJP
   B23C 5/20 20060101ALI20161206BHJP
   B23C 5/22 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B23B27/14 C
   B23B27/16 A
   B23C5/20
   B23C5/22
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-555385(P2014-555385)
(86)(22)【出願日】2013年1月13日
(65)【公表番号】特表2015-505519(P2015-505519A)
(43)【公表日】2015年2月23日
(86)【国際出願番号】IL2013050032
(87)【国際公開番号】WO2013121413
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年11月26日
(31)【優先権主張番号】13/367,983
(32)【優先日】2012年2月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ダニー
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/131816(WO,A1)
【文献】 特表2010−530314(JP,A)
【文献】 米国特許第03762005(US,A)
【文献】 米国特許第7419338(US,B2)
【文献】 米国特許第6227772(US,B1)
【文献】 登録実用新案第3050537(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00 − 29/34
B23C 5/20 − 5/22
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
割出し軸(A)を有する割出し可能な両面−ネガティブ切削インサート(14)であって、前記割出し軸(A)の周りで前記インサートが割出し可能であり、
それぞれが少なくとも1つの第1機能面(50)を含む、2つの反対側にある端面(36)と、
前記端面(36)の間に延びる周囲面(38)であって、少なくとも1つの凸状突出部(54)と、隣接する端面(36)および前記少なくとも1つの突出部(54)の間にそれぞれが少なくとも延びる少なくとも2つの第2機能面(56)とを含む周囲面(38)と、
前記端面(36)間の真中に位置付けられ、かつ前記周囲面(38)を通過する正中面(P)と、
前記周囲面(38)と、前記反対側にある端面(36)のそれぞれとの接合部にそれぞれ形成された、少なくとも2つの反対側にある横切れ刃(46)と
を含み、
前記少なくとも1つの突出部(54)が、前記正中面(P)に向かって外方に収束する2つの横当接面(60)を含み、
各端面(36)の平面図において、前記突出部(54)が前記切削インサート(14)から外方へ延び、
反対側にある両方の横切れ刃(46)を通過しかつ同じく前記少なくとも1つの突出部(54)を通過する、前記正中面(P)に対して垂直な各断面において、前記周囲面(38)のいかなる部分も、前記反対側にある横切れ刃(46)を接続する仮想線(L1)の内側にない、割出し可能な両面−ネガティブ切削インサート(14)。
【請求項2】
前記周囲面(38)が、複数の周囲横部分(52)を含、請求項1に記載の切削インサート(14)。
【請求項3】
前記周囲面(38)がコーナー周囲部分(58)を含み、前記コーナー周囲部分(58)が2つの隣接する各周囲横部分(52)の間に延び、各コーナー周囲部分(58)が、反対側にあるコーナー切れ刃(48)の間に延び、かつ張出し部分のない湾曲形状を有する、請求項2に記載の切削インサート(14)。
【請求項4】
各周囲横部分(52)が、前記少なくとも1つの突出部(54)の少なくとも一部と、2つの第2機能面(56)とを含む、請求項2または3に記載の切削インサート(14)。
【請求項5】
前記周囲横部分(52)だけが、前記少なくとも1つの突出部(54)を含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項6】
前記面(P)および前記周囲面(38)に対して垂直に取られた前記少なくとも1つの突出部(54)の断面において、各横当接面(60)が、前記面(P)と鈍角な外角βを形成する、請求項1〜のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項7】
前記外角βが92°〜135°である、請求項に記載の切削インサート(14)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの突出部(54)が細長く、かつ前記周囲面(38)に沿って前記面(P)と平行な方向に延びる、請求項1〜のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項9】
前記周囲横面(38)が複数の突出部(54)を含み、
前記複数の突出部(54)が、前記割出し軸(A)に対して均等に分配される、
請求項1〜のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項10】
前記面(P)の両側に位置付けられた各2つの横当接面(60)が、突出部頂端(62)で交わる、請求項1〜のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項11】
反対側にある横切れ刃(46)の両方および同じく前記少なくとも1つの突出部(54)を通過する、前記面(P)に対して垂直な各断面において、
前記少なくとも1つの突出部(54)が、前記周囲面(38)の他のいかなる部分よりもさらに外側に位置付けられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項12】
前記第1機能面(50)がすくい面であるように構成され、前記第2機能面(56)が逃げ面であるように構成される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項13】
前記切削インサート(14)が、前記面(P)に対して鏡面対称である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの突出部(54)が、前記面(P)に対して鏡面対称である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項15】
各端面(36)が、前記反対側にある横切れ刃(46)のうち対応する1つに関連付けられた第1機能面(50)を含み、
前記周囲面(38)は、前記少なくとも1つの突出部(54)と、前記反対側にある横切れ刃(46)のそれぞれとの間に第2機能面(56)が設けられ、
反対側にある横切れ刃(46)の両方および同じく前記少なくとも1つの突出部(54)を通過する、前記面(P)に対して垂直な前記各断面において、前記逃げ面(56)のいかなる部分も、前記仮想線(L1)に対して奥まって配置されない、請求項1〜14のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項16】
前記第2機能面(56)だけが、各横切れ刃(46)と前記少なくとも1つの突出部(54)との間に延びる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項17】
前記第2機能面(56)が前記面(P)に対して垂直である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項18】
工具本体(12)と、前記工具本体(12)のポケット(16)に固定される請求項1〜17のいずれか一項に記載の切削インサート(14)とを含む切削工具(10)。
【請求項19】
前記ポケット(16)が、
インサート座面(18)と、
前記座面と鋭角を形成するインサート支持面(20)と、
前記切削インサート(14)を前記ポケット(16)内に締め付ける締付部材と
を含む、請求項18に記載の切削工具(10)。
【請求項20】
第1端面(36)の少なくとも一部が前記インサート座面(18)に当接し、
第2端面(36)に隣接する複数の横当接面(60)が、各インサート支持面(20)に当接し、
前記締付部材が前記切削インサート(14)を前記インサート支持面(20)に押し付ける、
請求項18に記載の切削工具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[001]本出願の主題は、割出し可能な両面−ネガティブ切削インサートが着脱可能に固定される切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[002]割出し可能な両面−ネガティブ切削インサートを備えた切削工具は、例えば米国特許第5702210号に開示されている。開示されている切削インサートは、反対側にある端面の切れ刃の間に完全に延びかつ当接面として機能する平坦な横面を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要
[003]本出願の主題は、直角の逃げ角に関してISO標準によればN型として知られている切削インサートに関する。切削インサートは、2つの端面と、それらの間の周囲面とを含み、周囲面は端面に対して概ね垂直であり、2つの外方に収束する横当接面を有する少なくとも1つの突出部を含む。そのような切削インサートの考えられる利点は、突出部を含まない他の従来のN型切削インサートと比べて、ポケット内の切削インサートの当接構成が突出部によって改良され、一方で向きが一定に維持されることである。
【0004】
[004]本出願の主題によれば、割出し軸Aを有する割出し可能な両面−ネガティブ切削インサートが提供され、割出し軸Aの周りで切削インサートが割出し可能であり、切削インサートが、
それぞれが少なくとも1つの第1機能面を含む、2つの反対側にある端面と、
端面間に延びる周囲面であって、少なくとも1つの凸状突出部と、隣接する切れ刃および少なくとも1つの突出部の間にそれぞれが少なくとも延びる少なくとも2つの第2機能面とを含む周囲面と、
端面間の真中に位置付けられ、かつ周囲面を通過する正中面Pと、
周囲面と、反対側にある端面のそれぞれとの接合部にそれぞれ形成された少なくとも2つの反対側にある横切れ刃と
を含み、
少なくとも1つの突出部が、正中面Pに向かって外方に収束する2つの横当接面を含み、
各端面の平面図において、突出部が切削インサートから外方へ延び、
反対側にある両方の横切れ刃を通過しかつ同じく少なくとも1つの突出部を通過する、正中面Pに対して垂直な各断面において、周囲面のいかなる部分も、反対側にある横切れ刃を接続する仮想線L1の内側にない。
【0005】
[005]本出願の主題によれば、工具本体と切削インサートとを含む切削工具がさらに提供される。
【0006】
[006]以下のことが理解される。すなわち、上の記載は概要であり、上記態様のいずれも、他の態様のいずれかに関連して記載されるか本明細書中以下に記載される特徴のいずれかをさらに含むことができる、またはそれら特徴のいずれかによってさらに定義されることができる。例えば、以下の特徴は、本出願の主題の上記態様のいずれかに適用可能であり得る。
【0007】
[007]周囲面は、複数の周囲横部分を含むことができる。
【0008】
[008]全ての周囲横部分は、同一であることができる。
【0009】
[009]周囲面は、2つの隣接する各周囲横部分の間に延びるコーナー周囲部分を含むことができる。
【0010】
[0010]各周囲横部分は、突出部の少なくとも一部と、2つの第2機能面とを含むことができる。
【0011】
[0011]周囲横部分は、突出部を含む切削インサートの唯一の部分であることができる。
【0012】
[0012]面Pおよび周囲面に対して垂直に取られた少なくとも1つの突出部の断面において、各横当接面は、面Pと鈍角な外角βを形成することができる。
【0013】
[0013]外角βは92°〜135°であることができる。
【0014】
[0014]外角βは94°〜101°であることができる。
【0015】
[0015]少なくとも1つの突出部は細長い形状であることができ、周囲面に沿って面Pと平行な方向に延びることができる。
【0016】
[0016]横当接面は、面Pと平行な方向において細長い形状であることができる。
【0017】
[0017]切削インサートは、割出し軸Aに対して均等に分配できる複数の突出部を有することができる。
【0018】
[0018]面Pの両側に位置付けられた各2つの横当接面は、突出部頂端で交わることができる。
【0019】
[0019]少なくとも1つの突出部において、横当接面だけが当接用に構成される。
【0020】
[0020]切削インサートの平面図において、頂端の幅W1は横当接面の幅W2の長さの半分より短い。
【0021】
[0021]各端面の平面図において、少なくとも1つの突出部の大部分、またはその全体は、周囲面の他のいかなる部分よりもさらに外側に位置付けることができる。
【0022】
[0022]第1機能面はすくい面として構成可能であり、第2機能面は逃げ面として構成可能である。
【0023】
[0023]切削インサートは、面Pに対して鏡面対称であることができる。
【0024】
[0024]少なくとも1つの突出部は、面Pに対して鏡面対称であることができる。
【0025】
[0025]切削インサートは、面Pの同じ側に位置付けられた隣接する切れ刃の間に延びることができるコーナー切れ刃を含む。
【0026】
[0026]各端面は、反対側にある横切れ刃のうち対応する1つに関連付けられたすくい面を有し、周囲面は、少なくとも1つの突出部と、反対側にある横切れ刃のそれぞれとの間に逃げ面が提供され、反対側にある横切れ刃の両方および同じく少なくとも1つの突出部を通過する面Pに対して垂直な各断面において、逃げ面のいかなる部分も、仮想線L1に対して奥まって配置されない。
【0027】
[0027]第2機能面は、各切れ刃と少なくとも1つの突出部との間に延びる唯一の表面であることができる。
【0028】
[0028]第2機能面は面Pに対して垂直であることができる。
【0029】
[0029]各端面は少なくとも1つの端部当接面を含むことができる。
【0030】
[0030]突出部の合計長さは、周囲面の合計長さの少なくとも半分であることができる。
【0031】
[0031]工具本体はポケットを含むことができ、ポケットは、
インサート座面と、
座面と鋭角を形成するインサート支持面と、
切削インサートをポケット内に締め付ける締付部材と
を含む。
【0032】
[0032]締付部材はレバーであることができる。
【0033】
[0033]組み立てられた位置において、第1端面がインサートポケットのインサート座面に当接可能であり、
第2端面に隣接する複数の横当接面が、各インサート支持面に当接し、
締付部材が切削インサートをインサート支持面に押し付ける。
【0034】
図面の簡単な説明
[0034]本出願の主題をより深く理解するため、およびどのように本出願の主題を実際に実行できるかを示すために、ここで添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】切削工具の等角図である。
図2図1の切削工具の等角分解図である。
図3】工作物に切削動作を実行する図1の切削工具の平面図である。
図4図3の線IV−IVに沿って取られた断面図である。
図5図3の線V−Vに沿って取られた断面図である。
図6図3の線VI−VIに沿って取られた断面図である。
図7図3の線VII−VIIに沿って取られた断面図である。
図8】切削インサートの平面図である。
図9図8の線IX−IXに沿って取られた断面図である。
図10】切削インサートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[0035]適切と考えられる場合、一致する要素または類似の要素を示すために、参照番号は図面を通して繰り返される場合がある。
【0037】
発明の詳細な記載
[0036]以下の記載において、本出願の主題の様々な態様が記載される。説明のため、特定の構成および詳細が、本開示の主題の完全な理解を実現するのに十分な詳しさで記載される。しかしながら、本出願の主題は本明細書に提示された特定の構成および詳細なしに実行できることがまた当業者には明らかであろう。
【0038】
[0037]図1および2を参照する。切削工具10は、工具本体12および割出し可能な両面−ネガティブ切削インサート14を含む。工具本体12はポケット16を含み、ポケット16に切削インサート14を着脱可能かつ割出し可能に固定することができる。
【0039】
[0038]ポケット16は、インサート座面18、およびこの例によれば3つの横インサート支持面20を含むことができる。図2および図4〜7で分かるように、ポケット16は、ポケット底端部24に固定される敷き金(shim)22を含むことができる。インサート座面18は、敷き金上面26に形成することができるか、その一部であることができる。インサート支持面20およびインサート座面18は、概ね連続的であることができる。図5〜7で分かるように、インサート支持面20は、インサート座面18を横切る方向に延びる。インサート支持面20の全ては、インサート座面18と鋭角を形成する。ポケット16は、切削インサート14および/または敷き金22を締め付けるための締付装置を含む。この例によれば、締付装置はレバー28を含むことができ、レバー28はインサート座面18の開口30を通って突出する。レバー28はレバー本体32およびレバーヘッド部34を含み、切削インサート14をポケット16に締め付けるように使用される。
【0040】
[0039]図8〜10を参照する。切削インサート14は、2つの反対側にある端面36と、それらの間に延びる周囲面38とを含む。切削インサート14の平面図において、各端面36は多角形形状を有することができる。図8で分かるように、この非限定的な例によれば、端面36は三角形であることができる。各端面36は少なくとも1つの端部当接面40を含むことができる。切削インサート14は締付穴42を有することができ、締付穴42は両方の端面36に開口可能である。締付穴42は円筒軸Cを備えた円筒形状を有することができる。切削インサート14は正中面Pを有し、正中面Pは端面36間の真中に位置付けられ、周囲面38を通過する。切削インサート14は面Pに対して鏡面対称であることができる。
【0041】
[0040]切削インサート14は割出し軸Aを有し、その周りでインサートは割出し可能である。割出し軸Aは面Pに対して垂直であり、端面36のそれぞれの幾何学的中心を通過する。本例では、割出し軸Aと円筒軸Cは同軸である。
【0042】
[0041]図9および10で分かるように、切削インサート14は2つの刃44を含むことができる。各刃44は、周囲面38と、端面36のそれぞれとの交差部分に形成可能である。刃44は連続的であることができる。三角形を有する例示される例によれば、各刃44は、6つの横切れ刃46、および6つのコーナー切れ刃48を含むことができる。各端面36に、機械加工用途およびポケット16の向きに依存して、切削インサート14は、3つの稼働横切れ刃46および3つの稼働コーナー切れ刃48を有することができる。各コーナー切れ刃48は、面Pの同じ側に位置付けられた2つの隣接する横切れ刃46の間に延びることができる。
【0043】
[0042]本例によれば、各端面36は、刃44から割出し軸Aに向かって延びる複数の第1機能面50を含む。各第1機能面50は横切れ刃46と関連付けることができ、およびすくい面として機能するように構成することができる。
【0044】
[0043]周囲面38は複数の周囲横部分52を含むことができる。この非限定的な例では、周囲面38は、同一の6つの周囲横部分52を含む。各端面36の平面図において(図8で見られる)、各周囲横部分52は、隣接する周囲横部分52とコーナー角γを形成する。本例では、コーナー角γは、鋭角か鈍角のどちらかであることができる。
【0045】
[0044]本例によれば、周囲面38は、各2つの隣接する周囲横部分52の間に延びるコーナー周囲部分58を含むことができる。各コーナー周囲部分58は、面Pの両側に位置付けられた反対側にあるコーナー切れ刃48の間に延びることができる。コーナー周囲部分58は湾曲形状を有することができる。各端面36の平面図において、コーナー周囲部分58は、曲線として現れることができる。換言すると、本例では、コーナー周囲部分58は張出し部分がない。
【0046】
[0045]各周囲横部分52は、切削インサート14から外方へ延びる凸状突出部54と、突出部54の両側に位置付けられた2つの第2の機能面56とを含むことができる。各第2機能面56は、隣接する刃44と突出部54の間に延びる。各周囲横部分52において、第2機能面56は、面Pの両側に位置付けることができる。本例によれば、第2機能面56は、刃44と突出部54の間に位置付けられる唯一の表面である。各第2機能面56は、隣接する第1機能面50と、および共通の横切れ刃46と関連付けることができる。各第2機能面56は、共通の横切れ刃46から面Pに向かって延びる。各第2機能面56は、逃げ面として機能するように構成することができる。
【0047】
[0046]各周囲横部分52は、面Pに対して実質的に垂直である。特に、第2機能面56は、面Pと直角の逃げ角αを形成することができる。換言すると、割出し可能な切削インサートの等級を規定するISO標準によれば、切削インサート14は、N型として分類可能である、すなわち直角の逃げ角の等級文字符号[N]を受けることができる。N型として分類された切削インサートは時にネガティブ切削インサートと呼ばれる。本出願の主題による切削インサート14は、両面かつネガティブの両方である。従って本明細書中、「両面−ネガティブ」切削インサート14と呼ばれる。
【0048】
[0047]各端面36の平面図(図3および8)において、突出部54は、面Pと平行でありかつ周囲面38と概ね垂直な方向に切削インサート14から外方に延びることができる。本例によれば、周囲横部分52のそれぞれにおいて、突出部54の大部分は、面Pと平行な方向において、周囲面38の他のいかなる部分よりもさらに外方に位置付けられる。より詳細には、周囲横部分52のそれぞれにおいて、突出部54全体は、周囲面38の他のいかなる部分よりもさらに外方に位置付けられる。
【0049】
[0048]図8および9で分かるように、面Pに垂直な断面において、その断面は反対側にある両方の横切れ刃46a、46bを通過し、かつ少なくとも1つの突出部54aも通過するが、周囲面38のいかなる部分も、反対側にある横切れ刃46a、46bを接続する仮想線L1の内側にない。これは同じく、割出し軸A(図8参照)を通過しかつ突出部54cが存在する周囲横部分52において周囲面38と交差する半径方向の線GおよびHに沿って取られた断面など、半径方向断面にも当てはまる。そのような場合、そのようなどの半径方向断面にも沿った周囲面38全体が、その断面において反対側にある横切れ刃46a、46bを接続する仮想線L1よりも、割出し軸Aから遠くにある。
【0050】
[0049]突出部54は細長くてもよい。図に示される例によれば、突出部54は、面Pと実質的に平行な方向において細長くてもよい。突出部54は、面Pに対して鏡面対称であることができる。突出部54は、割出し軸Aに対して周囲面38に等しく分配することができる。突出部54は、周囲横部分52の間で等しく分配することができる。この例では、周囲横部分52だけが突出部54を含み、コーナー周囲部分58はそれを含まない。この例では、突出部54の長さの合計は、周囲面38の長さの少なくとも半分であることができる。各突出部54は、各周囲横部分52の長さの半分超にわたって延びることができる。
【0051】
[0050]各突出部54は、面Pの両側に位置付けられた2つの横当接面60を含む。各突出部54において、横当接面60だけが、ポケット16のいずれかの表面と当接または接触するように構成される。面Pおよび周囲面38に対して垂直に取られた、図9の突出部54の断面で分かるように、横当接面60、またはそれに接する各面は、面Pと平行な方向において外方に収束する。換言すると、面Pおよび周囲面38に対して垂直に取られた、突出部54の断面において、各横当接面60、またはそれに接する面は、面Pと鈍角な外角βを形成する。外角βは92°〜105°であることができる。好ましくは外角βは94°〜101°であることができる。
【0052】
[0051]切削インサート14がポケット16に固定されるとき、および切削工具10が稼働するとき、すなわち工作物に切削動作を実行するとき、横当接面60の上記の向きが、確実な当接の点で優れた結果を与える。周囲面38および面Pに対して垂直に取られた断面(図4)において、工作物100に切削動作を実行する間の切削工具10が示されている。突出部逃げ角CLは、現在稼働中の横切れ刃46に隣接する横当接面60と、同じ横切れ刃46によって機械加工される工作物の部分との間で測定される最も短い距離として定義することができる。図4において、突出部逃げ角に選択された特定の位置は、単に例であることに留意されたい。実際には、この位置はいくつかのパラメータに依存して変化してもよい。一般的に、上記の突出部の設計、および結果的に外角βは、切削動作の間の切削インサートと工作物の接触を回避するために、横当接面60と工作物の間に十分な突出部逃げ角CLが維持されるように選択される。
【0053】
[0052]周囲横部分52における周囲横面38の断面を示す図9に注目する。各突出部54は突出部頂端62を含むことができ、突出部頂端62は突出部54の最も外側の部分であることができる。面Pの両側に位置付けられたそれぞれ2つの横当接面60は、突出部頂端62と接続可能であるか、それと交わることができる。切削インサート14の断面(図9)に示されるように、突出部頂端62は線として現れることができる。突出部頂端62の頂端幅W1は、2つの収束する横当接面60間に延びる線の長さとして定義される。図9に示される断面では、各横当接面60は同じく線として現れることができる。横当接面60のそれぞれの横当接幅W2は、突出部頂端62と各第2機能面56の間に延びる線の長さとして定義される。頂端幅W1は、横当接幅W2に対してかなり狭い状態であることができる。特に、頂端幅W1は横当接幅W2の半分未満であることができる。結果として、突出部54の十分な空間が残り、その結果、横当接面60はポケット中の接触面積を最大化するために比較的広い設計を有することができる。
【0054】
[0053]この例によれば、各端面36は6つの第1機能面50を含むことができる。本例において、第1機能面50は、すくい面として機能するように構成可能である。換言すると、刃44に隣接して、1つの端面36の各第1機能面50は、部分的に反対側の端面36に向かって、概ね内側に延びることができる。各第1機能面50は、関連する横切れ刃46から割出し軸Aに向かって延びる。各第1機能面50は、所与の隣接周囲横部分52と関連付けることができる。
【0055】
[0054]切削工具10の組み立てられた状態において、切削インサート14はポケット16内に確実に締め付けられる。レバーヘッド34が締付穴42の一部に当接し、切削インサート14をポケット16のインサート支持面20の方に押す。端面36の一方がポケット16のインサート座面18に当接する。それは本明細書中、非稼働端面36と呼ばれる。詳細には端部当接面40がインサート座面18に当接する。他方の端面36は本明細書中、稼働端面36と呼ばれる。この例では、稼働端面36に隣接する横当接面60のうち3つが、各インサート支持面20に当接する。
【0056】
[0055]前に開示されているように、本例の切削工具10は6つのコーナー切れ刃48を有することができるが、三角形の場合、用途およびポケット16の向きに依存して、3つの非連続的コーナー切れ刃48だけが、稼働コーナー切れ刃48として構成される。本例では、鈍角コーナー角γに関連付けられたコーナー切れ刃48が、稼働コーナー切れ刃48である。
【0057】
[0056]上に記載されたような突出部54およびインサート支持面20の特定の向きの考えられる利点は、切削インサート14の両面−ネガティブ特性(またはその周知の利点および特徴)が維持される一方、同時に、当接のより効果的な形態が得られることである。換言すると、切削インサート14は、例えば本出願によって開示されるような突出部54および横当接面60を含まない他のN型切削インサート14のように、工作物に対して同じ向きでなおも固定されることができる。当接構成を改善しながら同じ配向状態を維持する可能性により、工具本体12およびポケット16を設計するのにかかる時間が短縮され、次には開発費が低減される。
【0058】
[0057]突出部54の別の考えられる利点は、他の両面−ネガティブインサートと比べて、突出部54が切削インサート14の構造強度全体を増大させることである。詳細には、横切れ刃46に隣接する周囲面の領域、および結果として横切れ刃46自体は、突出部のない、または周囲面38に凹部のない他の切削インサート14と比べて、破損に対する抵抗性が高まる。
【0059】
[0058]突出部54のさらに別の考えられる利点は、それによって、切屑の流れを妨害しかつ製造費を増大し得るポケット16の上部クランプを必要とせずに、切削インサート14をポケット16に確実に締め付けることが可能になることである。上部クランプのない切削インサート14の締付けは、切削インサート14をポケット16のインサート支持面20に(例えばレバー装置によって)押し付け、次にインサート座面18の方に部分的に下方へ向けられる法線抗力を発生させることによって達成される。
【0060】
[0059]上記の記載は、必要に応じて、特許請求される主題の実施可能のための例示的実施形態および詳細を含み、例示されない実施形態および詳細を、本出願の特許請求範囲から排除しない。
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