(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1固定部は、前記壁体部における前記クランク部との境界を成す境界部であって、略板状の境界壁に形成され、前記第2固定部は、前記ピストンロッドにおける、前記境界壁から前記クランク部側に延びる部分に形成されている
請求項4に記載の往復動圧縮機。
前記取付部は、前記下死点に位置している前記ピストンが前記クランク部側のシリンダヘッドに近づくことを制限するストッパ部材を前記クランク部側のシリンダヘッドに取り
付け可能とするものであって、前記クランク部側のシリンダヘッドに形成されているものである
請求項3に記載の往復動圧縮機。
ガスを圧縮する圧縮部と、クランクシャフトを有し、前記圧縮部を駆動するクランク部と、を備え、前記圧縮部が、シリンダを含み、前記圧縮部の壁体を構成する壁体部と、前記シリンダに取り付けられたシリンダヘッドと、前記シリンダ内を往復動するピストンと、前記クランクシャフトと前記ピストンとを連結するピストンロッドと、前記壁体部に固定され、前記ピストンロッドの周囲に配置される少なくとも1つのシール部材と、前記クランク部と分離された場合において前記ピストンが前記シリンダヘッドに接触しないように前記シリンダ内における前記ピストンの往復動方向の移動を制限するストッパ部材を取り付けるための取付部とを備える往復動圧縮機に関し、
前記往復動圧縮機における前記圧縮部と前記クランク部との結合を解除する解除工程と、
前記少なくとも1つのシール部材よりも前記クランク部側において前記クランク部との境界を成す前記壁体部の境界部から前記圧縮部を前記クランク部に対して分離する分離工程と、
前記分離工程の後に、前記分離した圧縮部に代わる別の圧縮部を前記クランク部に組み付ける組付工程と、
前記解除工程、前記分離工程、及び、前記組付工程の前に、予めメンテナンス作業を行えるように事前準備するとともに、前記ストッパ部材を予め用意する準備工程と、
前記往復動圧縮機に対し前記ストッパ部材を前記取付部に取り付ける取付工程と、を有する
往復動圧縮機のメンテナンス方法。
クランクシャフトを有するクランク部と、シリンダ、シリンダヘッド、前記シリンダ内を往復動するピストンを有する圧縮部とを備え、前記クランク部と前記圧縮部とは分離可能に形成されるとともに、前記圧縮部は、前記クランク部と分離された場合において前記ピストンが前記シリンダヘッドに接触しないように前記シリンダ内における前記ピストンの往復動方向の移動を制限するストッパ部材を取り付けるための取付部を備える往復動圧縮機に関し、予めメンテナンス作業を行えるように事前準備するとともに、前記ストッパ部材を予め用意する準備工程と、
前記往復動圧縮機に対し前記ストッパ部材を前記取付部に取り付ける取付工程と、
前記往復動圧縮機における前記圧縮部と前記クランク部との結合を解除する解除工程と、
前記取付工程及び前記解除工程の後に前記圧縮部を前記クランク部から分離する分離工程と、
前記分離工程の後に、前記分離した圧縮部に代わる別の圧縮部を前記クランク部に組み付ける組付工程とを有する
往復動圧縮機のメンテナンス方法。
前記往復動圧縮機が、前記シリンダの吸入部と吸入配管との間に配置され、前記吸入部及び前記吸入配管に対して着脱可能である第1スペーサと、前記シリンダの吐出部と吐出配管との間に配置され、前記吐出部及び前記吐出配管に対して着脱可能である第2スペーサと、を備え、
前記解除工程又は前記分離工程において、前記第1スペーサ及び前記第2スペーサを前記シリンダ、前記吸入配管及び前記吐出配管から取り外す
請求項10ないし12のいずれか一項に記載の往復動圧縮機のメンテナンス方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような往復動圧縮機にあっては、部品の摩耗が激しいピストン、シリンダ等の部品を交換するためのメンテナンス作業を定期的に行うことが好ましい。しかし、特許文献1に開示される往復動圧縮機をメンテナンスする際には、圧縮ステージのシリンダの上部を取り外し、ピストンをシリンダから上方に向かって引き抜く必要がある。このように、往復動圧縮機の内部の部材の取外作業が大掛かりなものとなってしまう。
【0006】
また、新たなピストンをシリンダ内に収容する際には、シリンダの上部からピストン及びピストンが取り付けられたピストンロッドを挿入する必要がある。このとき、ピストンロッドが、シリンダ等に保持されるシール部材に接触してしまう虞がある。
【0007】
本発明は、往復動圧縮機の圧縮部のメンテナンスを容易に行うことを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する往復動圧縮機は、往復動圧縮機であって、ガスを圧縮する圧縮部と、クランクシャフトを有し、前記圧縮部を駆動するクランク部とを備え、前記圧縮部が、シリンダを含み、前記圧縮部の壁体を構成する壁体部と、前記シリンダに取り付けられたシリンダヘッドと、前記シリンダ内を往復動するピストンと、前記クランクシャフトと前記ピストンとを連結するピストンロッドと、前記壁体部に固定され、前記ピストンロッドの周囲に配置される少なくとも1つのシール部材を備え、前記壁体部が、前記少なくとも1つのシール部材よりも前記クランク部側において前記クランク部との境界を成し、前記クランク部と前記圧縮部とが分離される場合の分割面となる境界部を有する。
【0009】
この往復動圧縮機によれば、圧縮部とクランク部との間における分割面よりもクランク部側にシール部材が位置するものに比べて、圧縮部とクランク部との分離時又は結合時に、ピストンロッドがシール部材に干渉することが防止される。このため、往復動圧縮機の圧縮部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0010】
上記課題を解決する往復動圧縮機において、前記圧縮部は、前記クランク部と分離された場合に前記ピストンが前記シリンダヘッドに接触しないように、前記シリンダ内における前記ピストンの往復動方向の移動を制限するストッパ部材を取り付けるための取付部を備える。
【0011】
この往復動圧縮機によれば、圧縮部とクランク部とを分離する前にストッパ部材を取付部に取り付けることにより、圧縮部とクランク部とが分離された場合にシリンダ内におけるピストンの往復動方向の移動が制限される。このため、ピストンとシリンダヘッドとの接触を制限することができ、往復動圧縮機の圧縮部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0012】
上記課題を解決する往復動圧縮機は、往復動圧縮機であって、クランクシャフトを有するクランク部と、シリンダ、当該シリンダに取り付けられたシリンダヘッド、前記シリンダ内を往復動するピストン、及び、前記クランクシャフトと前記ピストンとを連結するピストンロッドを有する圧縮部とを備え、前記クランク部と前記圧縮部とは分離可能に形成されるとともに、前記圧縮部は、前記クランク部と分離された場合に前記ピストンが前記シリンダヘッドに接触しないように、前記シリンダ内における前記ピストンの往復動方向の移動を制限するストッパ部材を取り付けるための取付部を備える。
【0013】
この往復動圧縮機によれば、圧縮部とクランク部とを分離する前にストッパ部材を取付部に取り付けることにより、圧縮部とクランク部とが分離された場合にシリンダ内におけるピストンの往復動が制限される。このため、ピストンとシリンダヘッドとの接触を制限することができ、往復動圧縮機の圧縮部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0014】
上記課題を解決する往復動圧縮機において、前記取付部は、前記ピストンが下死点に位置するときに前記ストッパ部材を取り付け可能に形成されている。
ストッパ部材が必要となる圧縮機は、一般に大型のものである。また、大型の圧縮機においては、圧縮部を上部に配置する一方、クランク部を下部に配置するように設置されるものが多い。このため、ストッパ部材を取り付けるときのピストンの位置は、安定した位置である下死点の位置であることが好ましい。ここで下死点とは、ピストンがクランク部側のシリンダヘッドに最も近づく状態位置をいう。
【0015】
この往復動圧縮機によれば、取付部は、ピストンが下死点に位置するときにストッパ部材を取り付け可能に形成されているため、ストッパ部材を取り付けやすい。
上記課題を解決する往復動圧縮機において、前記圧縮部は、前記シリンダを含み、壁体を構成する壁体部を有し、前記取付部は、前記ストッパ部材を前記壁体部に固定する、前記壁体部に形成された第1固定部と、前記ストッパ部材を前記ピストンロッドに固定する、前記ピストンロッドに形成された第2固定部とを有する。
【0016】
この往復動圧縮機によれば、第1固定部及び第2固定部にストッパ部材が固定されることにより、シリンダ内におけるピストンの往復動方向の移動が制限されるため、ピストンとシリンダヘッドとの接触が制限される。
【0017】
上記課題を解決する往復動圧縮機において、前記第1固定部は、前記壁体部における前記クランク部との境界を成す境界部であって、略板状の境界壁に形成され、前記第2固定部は、前記ピストンロッドにおける、前記境界壁から前記クランク部側に延びる部分に形成されている。
【0018】
この往復動圧縮機によれば、圧縮部とクランク部との分離作業とストッパ部材の取付部への固定作業とを近くで行うことができるため、作業効率が高められる。
上記課題を解決する往復動圧縮機において、前記取付部は、前記下死点に位置している前記ピストンが前記クランク部側のシリンダヘッドに近づくことを制限するストッパ部材を前記クランク部側のシリンダヘッドに取り付け可能とするものであって、前記クランク部側のシリンダヘッドに形成されているものである。
【0019】
ストッパ部材が必要となる大型の圧縮機では、圧縮部を上部に配置する一方、クランク部を下部に配置するように設置されるものが多い。この往復動圧縮機によれば、クランク部側のシリンダヘッドに形成された取付部にストッパ部材を取り付けることにより、下死点に位置しているピストンがクランク部側のシリンダヘッドに近づくことが制限される。このため、ピストンとクランク部側のシリンダヘッドとの接触が制限される。
【0020】
上記課題を解決する往復動圧縮機は、前記シリンダの吸入部と吸入配管との間に配置され、前記吸入部及び前記吸入配管に対して着脱可能である第1スペーサと、前記シリンダの吐出部と吐出配管との間に配置され、前記吐出部及び前記吐出配管に対して着脱可能である第2スペーサとを備える。
【0021】
この往復動圧縮機によれば、第1スペーサを吸入部及び吸入配管から取り外すことにより、圧縮部をクランク部から分離する際に、吸入配管が圧縮部に干渉してしまうことが防止される。また、第2スペーサを吐出部及び吐出配管から取り外すことにより、圧縮部をクランク部から分離する際に、吐出配管が圧縮部に干渉することが防止される。
【0022】
上記課題を解決する往復動圧縮機は、前記圧縮部が、前記シリンダと前記クランク部との間に配置され、前記圧縮部からの漏れガスを一時的に蓄える筒状のアダプタをさらに備え、前記アダプタと前記アダプタにパージガスを送る供給管との間に配置され、前記アダプタ及び前記供給管に対して着脱可能である第1繋ぎ配管と、前記アダプタと前記アダプタからパージガス及び前記漏れガスを排出する排出管との間に配置され、前記アダプタ及び前記排出管に対して着脱可能である第2繋ぎ配管とを備える。
【0023】
この往復動圧縮機によれば、第1繋ぎ配管をアダプタ及び供給管から取り外すことにより、圧縮部をクランク部から分離する際に、供給管が圧縮部に干渉することが防止される。また、第2繋ぎ配管をアダプタ及び排出管から取り外すことにより、圧縮部をクランク部から分離する際に、排出管が圧縮部に干渉することが防止される。
【0024】
上記課題を解決する圧縮部ユニットは、シリンダ、当該シリンダに取り付けられたシリンダヘッド、及び、前記シリンダ内を往復動するピストンを有する圧縮部と、前記ピストンが前記シリンダヘッドに接触しないように前記シリンダに対する前記ピストンの往復動方向の移動を制限するストッパ部材とを備え、前記ストッパ部材は、前記圧縮部に着脱自在に取り付けられている。
【0025】
この圧縮部ユニットによれば、シリンダに対するピストンの往復動方向における移動がストッパ部材により制限されるため、圧縮部ユニットを搬送しているときに、ピストンとシリンダヘッドとの接触を制限することができる。このため、往復動圧縮機の圧縮部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0026】
上記課題を解決する往復動圧縮機のメンテナンス方法は、ガスを圧縮する圧縮部と、クランクシャフトを有し、前記圧縮部を駆動するクランク部と、を備え、前記圧縮部が、シリンダを含み、前記圧縮部の壁体を構成する壁体部と、前記シリンダに取り付けられたシリンダヘッドと、前記シリンダ内を往復動するピストンと、前記クランクシャフトと前記ピストンとを連結するピストンロッドと、前記壁体部に固定され、前記ピストンロッドの周囲に配置される少なくとも1つのシール部材と、を備える往復動圧縮機に関し、前記往復動圧縮機における前記圧縮部と前記クランク部との結合を解除する解除工程と、前記少なくとも1つのシール部材よりも前記クランク部側において前記クランク部との境界を成す前記壁体部の境界部から前記圧縮部を前記クランク部に対して分離する分離工程と、前記分離工程の後に、前記分離した圧縮部に代わる別の圧縮部を前記クランク部に組み付ける組付工程とを有する。
【0027】
この往復動圧縮機のメンテナンス方法によれば、圧縮部とクランク部との間における分割面よりもクランク部側にシール部材が位置するものに比べて、分離工程又は組付け工程において、ピストンロッドがシール部材に干渉することが防止される。このため、往復動圧縮機の圧縮部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0028】
上記課題を解決する往復動圧縮機のメンテナンス方法において、前記圧縮部は、前記クランク部と分離された場合において前記ピストンが前記シリンダヘッドに接触しないように前記シリンダ内における前記ピストンの往復動方向の移動を制限するストッパ部材を取り付けるための取付部を備え、前記解除工程、前記分離工程、及び、前記組付工程の前に、予めメンテナンス作業を行えるように事前準備するとともに、前記ストッパ部材を予め用意する準備工程と、前記往復動圧縮機に対し前記ストッパ部材を前記取付部に取り付ける取付工程とを有する。
【0029】
この往復動圧縮機のメンテナンス方法によれば、取付工程の後に分離工程を行うことにより、分離工程においてシリンダ内のピストンの往復動方向の移動が制限され、ピストンとシリンダヘッドとの接触が制限される。これにより、圧縮部の再利用を容易にすることができる。
【0030】
上記課題を解決する往復動圧縮機のメンテナンス方法は、クランクシャフトを有するクランク部と、シリンダ、シリンダヘッド、前記シリンダ内を往復動するピストンを有する圧縮部とを備え、前記クランク部と前記圧縮部とは分離可能に形成されるとともに、前記圧縮部は、前記クランク部と分離された場合において前記ピストンが前記シリンダヘッドに接触しないように前記シリンダ内における前記ピストンの往復動方向の移動を制限するストッパ部材を取り付けるための取付部を備えて成る往復動圧縮機に関し、予めメンテナンス作業を行えるように事前準備するとともに、前記ストッパ部材を予め用意する準備工程と、前記往復動圧縮機に対し前記ストッパ部材を前記取付部に取り付ける取付工程と、前記往復動圧縮機における前記圧縮部と前記クランク部との結合を解除する解除工程と、前記取付工程及び前記解除工程の後に前記圧縮部を前記クランク部から分離する分離工程と、前記分離工程の後に、前記分離した圧縮部に代わる別の圧縮部を前記クランク部に組み付ける組付工程とを有する。
【0031】
この往復動圧縮機のメンテナンス方法によれば、取付工程の後に分離工程が行われるため、分離工程においてシリンダ内のピストンの往復動方向の移動が制限され、ピストンとシリンダヘッドとの接触が制限される。これにより、圧縮部の再利用を容易にすることができる。
【0032】
上記課題を解決する往復動圧縮機のメンテナンス方法において、前記取付工程は、前記ピストンを下死点に位置させた状態で行う。
この往復動圧縮機のメンテナンス方法によれば、例えば、圧縮部を上部に配置し、クランク部を下部に配置するように設置された往復動圧縮機の場合、ピストンを下死点に位置させると、自重によるピストンの移動を防ぐことができるため、ピストンを一定位置(この場合は、下死点位置)に安定させることができる。これによりストッパ部材の固定作業を容易に行うことができる。
【0033】
上記課題を解決する往復動圧縮機のメンテナンス方法は、前記往復動圧縮機が、前記シリンダの吸入部と吸入配管との間に配置され、前記吸入部及び前記吸入配管に対して着脱可能である第1スペーサと、前記シリンダの吐出部と吐出配管との間に配置され、前記吐出部及び前記吐出配管に対して着脱可能である第2スペーサと、を備え、前記解除工程又は前記分離工程において、前記第1スペーサ及び前記第2スペーサを前記シリンダ、前記吸入配管、及び、前記吐出配管から取り外す。
【0034】
この往復動圧縮機のメンテナンス方法によれば、吸入配管及び吐出配管が圧縮部に干渉することが防止される。このため、往復動圧縮機の圧縮部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0035】
上記課題を解決する往復動圧縮機のメンテナンス方法は、前記圧縮部が、前記シリンダと前記クランク部との間に配置され、前記圧縮部からの漏れガスを一時的に蓄える筒状のアダプタをさらに備え、前記解除工程又は前記分離工程において、前記アダプタと前記アダプタにパージガスを送る供給管との間に配置され、前記アダプタ及び前記供給管に対して着脱可能である第1繋ぎ配管、及び、前記アダプタと前記アダプタからパージガス及び前記漏れガスを排出する排出管との間に配置され、前記アダプタ及び前記排出管に対して着脱可能である第2繋ぎ配管を取り外す。
【0036】
この往復動圧縮機のメンテナンス方法によれば、供給管及び排出管が圧縮部に干渉することが防止される。このため、往復動圧縮機の圧縮部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0037】
上記往復動圧縮機、この往復動圧縮機のメンテナンス方法、及び、上記圧縮部ユニットによれば、圧縮部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(実施の形態1)
図1に示される往復動圧縮機1は、液化天然ガスの貯蔵タンクで発生するボイルオフガス(いわゆる、BOG)を圧縮するための大形の往復動圧縮機であって、例えば、船舶に搭載される。このような大型の往復動圧縮機は、船舶においては、貯蔵タンク内で発生するボイルオフガスを圧縮して船舶のエンジンに供給している。
【0040】
往復動圧縮機1はガスを圧縮する圧縮部20と、圧縮部20を駆動するクランク部10とを備える。往復動圧縮機1は縦型機であり、圧縮部20はクランク部10よりも重力方向における上側に配置される。
【0041】
クランク部10は、取付基礎(図示略)に固定され、クランクシャフト11、クランクシャフト11の回転運動を往復直線運動に変換するコネクティングロッド12、及び、コネクティングロッド12に連結されているクロスヘッド13を有する。また、クランク部10は、クランクシャフト11及びクロスヘッド13を収容するクランクケーシング101を有する。以下、クランクケーシング101のうち、クランクシャフト11を収容している部位をシャフトケース14という。シャフトケース14と結合され、クロスヘッド13を収容する部位をヘッドケース15という。シャフトケース14は、コネクティングロッド12に連結されているクロスヘッド13を往復直線運動させる摺動用孔部を有する。
【0042】
ヘッドケース15の側面には、メンテナンス作業時に作業員がヘッドケース15の内部に入り込むための作業用扉16が取り付けられている。なお、
図1において、作業用扉16は、図面簡略化のため仮想線である二点鎖線で示している。
【0043】
圧縮部20は、駆動時に動かされない静止物からなる静止部30と、駆動時に動かされる駆動部50とに大別される。
すなわち、静止部30には、シリンダ31、シリンダ31のクランク部10側の開口に取り付けられているクランク部10側のシリンダヘッド32、シリンダ31のクランク部10と反対側の開口に取り付けられているシリンダヘッド33、及び、ピストンロッド52の周囲に配置されるシール部材45,46,47,49の静止物が含まれる。シリンダ31の中心軸は重力方向に一致する。また、静止部30には、シリンダ31とクランク部10との間に配置される筒状のアダプタ40も含まれる。ここで、圧縮部20において壁体部というときは、シリンダ31及びアダプタ40、すなわち、圧縮部20における静止部30の壁体を構成する部位すべてを総称するものとする。シール部材45,49は、アダプタ40に固定されている。シール部材46,47はシリンダヘッド32に固定されている。シール部材45,46,47,49はシリンダ31からの漏れガスの防止、クランク部10からシリンダ31へ向かう油の流れの遮断、シリンダ31への埃の進入の防止など種々のシール機能が果たされてよい。
【0044】
アダプタ40の内部には、シリンダ31の内部からの漏れガスを一時的に蓄えるための空間44が形成されている。アダプタ40は、第1繋ぎ配管401を介して供給管991に接続される。第1繋ぎ配管401は、アダプタ40及び供給管991に対して着脱可能である。また、アダプタ40は、第2繋ぎ配管402を介して排出管992に接続される。第2繋ぎ配管402は、アダプタ40及び排出管992に対して着脱可能である。アダプタ40では、供給管991からパージガス(例えば、窒素ガス)が送られ、排出管992を介してパージガス及び漏れガスが排出される。
【0045】
一方、駆動部50には、シリンダ31内を往復動するピストン51、及び、コネクティングロッド12とクロスヘッド13とを介してピストン51とクランクシャフト11とを連結するピストンロッド52等の動きのある部材が含まれる。なお、ピストン51の往復動方向は重力方向に一致する。
【0046】
圧縮部20において、シリンダ31の吸入部35には、ボイルオフガスをシリンダ31の圧縮室34に吸入させる吸入配管200が連結されている。吸入配管200は、端部に配管接続用のフランジ210が取り付けられている。フランジ210と吸入部35との間には第1スペーサとしての吸入側スペーサ80が配置され、ボルト220により吸入側スペーサ80、シリンダ31及びフランジ210が着脱可能に固定されている。
【0047】
また、シリンダ31の吐出部36には、駆動部50により圧縮されたボイルオフガスを吐出する吐出配管300が連結されている。吐出配管300は、端部に配管接続用のフランジ310が取り付けられている。フランジ310と吐出部36との間には第2スペーサとしての吐出側スペーサ90が設けられ、ボルト320により吐出側スペーサ90、シリンダ31及びフランジ310が着脱可能に固定されている。
【0048】
吸入配管200は吸入側バッファタンク410に接続され、吐出配管300は吐出側バッファタンク420に接続されている。吸入側バッファタンク410及び吐出側バッファタンク420は、駆動部50の往復直線運動にともない生じるボイルオフガスの脈動を抑制する。
【0049】
アダプタ40は、ピストンロッド52の中心軸を中心として垂直方向に広がる略板状の第1境界壁41、シリンダヘッド32に接する第2境界壁42、及び、第1境界壁41と第2境界壁42とを繋ぐ略円筒状の外周壁43を有する。第1境界壁41は、クランク部10との境界を成す境界部である。第1境界壁41はシール部材45,46,47,49よりもクランク部10側に位置する。
【0050】
第1境界壁41の中央には、ピストンロッド52を貫通させる貫通孔41Aが形成されている。貫通孔41Aの空間44側には、シール部材45が取り付けられている。第1境界壁41の端部には、ヘッドケース15に向かって伸びる穴部411が設けられている。穴部411は貫通孔である。ヘッドケース15は穴部411に対応する位置にボルト孔151が設けられている。穴部411及びボルト孔151にはボルト48が第1境界壁41側から挿入される。圧縮部20では、ボルト48及びボルト孔151により、アダプタ40とクランク部10とを分離可能に締結する締結部が形成される。また、ボルト48の頭部が外部(すなわち、アダプタ40及びヘッドケース15の内部空間以外の空間)に露出しており、ボルト48の締結及び解除の作業が容易に行われる。
【0051】
往復動圧縮機1では、第1境界壁41がクランク部10と圧縮部20とが分離される場合の分割面となる。
第2境界壁42の中央には、ピストンロッド52を貫通させる貫通孔42Aが形成されている。貫通孔42Aの上方には、シール部材46が取り付けられている。シール部材46の上方のシリンダヘッド32の内部には、ピストンロッド52を貫通させる貫通孔32Aが形成されるとともに、貫通孔32Aにシール部材47が取り付けられている。
【0052】
ピストンロッド52における、第1境界壁41からクランク部10側に延びる部分の端部にはフランジ53が形成されている。そしてこのフランジ53がボルト54によりクロスヘッド13に固定されることにより、ピストンロッド52とクロスヘッド13とが連結されている。
【0053】
以上のように構成された往復動圧縮機1は、部品の摩耗が激しいピストン51及びシリンダ31等の部品を交換するためのメンテナンス作業が定期的に行われる。メンテナンス作業においては、往復動圧縮機1が搭載されている船舶が寄港した際に、クランク部10と圧縮部20とを分離して新しい圧縮部20がクランク部10に組み付けられる。
【0054】
また、メンテナンス作業においては、圧縮部20がクランク部10と分離された場合にピストン51がシリンダヘッド32,33に接触しないようにシリンダ31内におけるピストン51の往復動方向の移動を制限するストッパ部材70(
図3参照)が、圧縮部20に形成された取付部60に取り付けられる。
【0055】
本実施の形態の往復動圧縮機1において、取付部60は、第1固定部61と第2固定部62とから成る。第1固定部61は、圧縮部20の壁体部を構成する第1境界壁41と、この第1境界壁41に形成されたストッパ部材70の先端固定用の複数のねじ孔41Bとから構成される。また、第2固定部62は、ピストンロッド52の下端(すなわち、クランク部10側の端部)のフランジ53と、フランジ53の側面に形成された、ストッパ部材70の下端固定用の複数のねじ孔53Aとから構成される。
【0056】
図2〜
図5を参照して、本実施の形態に係る往復動圧縮機1の作用とともにそのメンテナンス方法について説明する。
往復動圧縮機1のメンテナンス方法は、準備工程、取付工程、解除工程、分離工程、及び、組付工程の順に行われる。
【0057】
準備工程は、使用している往復動圧縮機1をメンテナンスできるように予め準備するとともに、後の工程で必要となるストッパ部材70及び交換する新しい圧縮部20としての圧縮部ユニットを予め用意する工程である。
【0058】
往復動圧縮機1の予めの準備としては、運転を停止して吸入配管200及び吐出配管300に介装されている閉鎖弁(図示略)が閉じられる。
図2及び
図4に示すように、取付工程はストッパ部材70を取り付ける工程である。なお、ストッパ部材70の取り付けは、クランクシャフト11を回転させてピストン51を下死点の位置に移動させてから行われる。ここで、ピストン51の下死点とは、往復動圧縮機1の通常運転時において、ピストン51がシリンダヘッド32に最も近づく状態位置をいう。また、ストッパ部材70の取り付けは、ストッパ部材70を第1固定部61及び第2固定部62に固定することにより行われる。なお、ストッパ部材70の取付位置は、
図2において二点鎖線で示される。
【0059】
図3(a)及び(b)に示すように、ストッパ部材70は、ピストンロッド52の周囲に分割して配置するように構成されている。ストッパ部材70は、本実施の形態においては、一例として2つに分割されたものを示す。ストッパ部材70を構成する分割部材70Aは、2つとも同一の形状及び構造であって、ピストンロッド52の往復動方向に延びる胴部71、及び、胴部71の一方の端部に形成されているフランジ72を有する。また、
図3(b)に示すように、ストッパ部材70は、分割部材70Aがピストンロッド52の周囲に配置された状態において、ピストンロッド52の周囲の一部をストッパ部材70の外方に開放するように構成されている。
【0060】
胴部71のうちのフランジ72と反対側の端部には、貫通孔71Aが2個形成されている。貫通孔71Aにボルト63が挿通され、このボルト63がピストンロッド52のフランジ53のねじ孔53A(
図4参照)に螺合されることにより、ストッパ部材70が第2固定部62に固定される。
【0061】
フランジ72には、貫通孔72Aが2個形成されている。貫通孔72Aにボルト64(
図4参照)が挿通され、このボルト64が第1境界壁41に形成されたねじ孔41Bに螺合されることにより、ストッパ部材70が第1固定部61に固定される。
【0062】
このようにしてストッパ部材70が第1固定部61及び第2固定部62に固定されることにより、ピストンロッド52がストッパ部材70を介して圧縮部20の壁体部に固定される。また、これによりピストン51は、下死点位置においてシリンダ31内の往復動方向の移動が制限される。
【0063】
上記のように、ピストン51を下死点の位置に移動させてからストッパ部材70の取付作業を行うのは、次の理由による。まず、ピストン51を一定位置に安定的に維持しないとストッパ部材70を取り付けることが難しいこと、さらには、ピストン51は下死点よりも下方には移動することがないこと等による。
【0064】
解除工程は、圧縮部20とクランク部10との結合を解除する工程である。
図2に示すように、この解除工程においては、圧縮部20の壁体部とクランク部10の壁体部とを連結するボルト48を穴部411から取り外す。ボルト48の頭部が上方を向いた状態で外部に露出しているため、作業者が容易にボルト48の取外作業を行うことができる。また、ピストンロッド52とクロスヘッド13とを連結するボルト54が取り外される。ボルト54の取り外しは、作業者がストッパ部材70の開放部分(
図3(b)参照)からピストンロッド52のフランジ53に近づいて行われる。
【0065】
分離工程は、圧縮部20をクランク部10から分離する工程である。
まず、ボルト220がフランジ210から引き抜かれ、吸入側スペーサ80が吸入部35及び吸入配管200から取り外される。ボルト320がフランジ310から引き抜かれ、吐出側スペーサ90が吐出部36及び吐出配管300から取り外される。また、アダプタ40と供給管991及び排出管992との間に配置された第1及び第2繋ぎ配管401,402が取り外される。なお、スペーサ80,90の取外作業と、第1及び第2繋ぎ配管401,402の取外作業は同時に行われてもよく、一方が他方に前後して行われてもよい。
【0066】
図5に示すように、この分離工程において、圧縮部20はクレーンにより吊り上げられることにより、第1境界壁41からクランク部10に対して分離される。このとき、ピストンロッド52が第1境界壁41から下方へ突出したままであり、かつ、ストッパ部材70により圧縮部20の壁体部に固定された状態である。
【0067】
この分離工程において、前述のようにストッパ部材70によりピストンロッド52が圧縮部20の壁体部に固定されているので、ピストン51も拘束される。したがって、シリンダ31内におけるピストン51の往復動方向の移動が制限され、ピストン51がシリンダヘッド32,33に接触することが回避される。また、クランク部10は、取付基礎(図示略)に固定したままで良いので、圧縮部20の分離作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0068】
組付工程は、圧縮部20が分離されたクランク部10に対し、予め用意された新しい圧縮部20を組み付ける工程である。
新しい圧縮部20は、ストッパ部材70が、取付部60に予め取り付けられた圧縮部ユニットとして現地まで搬送され、クレームにより吊り上げられてクランク部10に取り付けられる。そして、新しい圧縮部20はクランク部10に取り付けられた後、ストッパ部材70が取り外される。これにより組み付け工程が終了する。なお、分離工程において分離した圧縮部20は、補修されて再利用される。
【0069】
本実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)圧縮部のクランク部に対する分割面よりもクランク部側にシール部材が位置する場合、分離工程時にピストンロッドが当該シール部材に干渉することがある。また、組付工程時にピストンロッドを当該シール部材に挿入する必要が生じるため、ピストンロッドが当該シール部材に干渉することがある。これに対し、本実施形態の往復動圧縮機1では、分割面(すなわち、第1境界部41)が全てのシール部材45,46,47,49よりもクランク部10側に設けられるため、ピストンロッド52がシール部材45,46,47,49に干渉してしまうことが防止される。このため、往復動圧縮機1の圧縮部20のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0070】
(2)往復動圧縮機のメンテナンス作業において、圧縮ステージとクランク部との連結を解除して圧縮ステージをクランク部から分離しようとすると、ピストンが往復動圧縮機の通常運転時の往復動の範囲を超えて移動することが可能となるため、ピストンとシリンダヘッドとが接触する虞がある。これに対し、本実施の形態の往復動圧縮機1では、取付工程においてストッパ部材70が取付部60に取り付けられるので、分離工程で圧縮部20とクランク部10とが分離されたときにシリンダ31内におけるピストン51の往復動が制限される。このため、往復動圧縮機1のメンテナンス作業時に、ピストン51とシリンダヘッド32,33との接触を制限することができる。さらに、往復動圧縮機1に新たに取り付けられる圧縮部20がストッパ部材70を取り付けられた状態で現地まで搬送されることにより、搬送途上にピストン51とシリンダヘッド32,33との接触を制限することができる。
【0071】
(3)往復動圧縮機1の取付部60は、ピストン51が下死点に位置するときにストッパ部材70を取り付け可能に形成されているため、取付工程をピストン51が下死点に位置している状態で行うことができる。このため、取付工程において自重によるピストン51の移動を防ぐことができ、ピストン51を一定位置、すなわち、下死点に安定させることができる。これにより、取付工程におけるストッパ部材70の固定作業を容易に行うことができる。
【0072】
(4)第1固定部61は、第1境界壁41に形成される一方、第2固定部62は、ピストンロッド52における第1境界壁41からクランク部10側に延びる部分のうちのフランジ53に形成されている。このため、取付工程と解除工程とを近くで行うことができるので、取付工程及び解除工程の作業効率が高められる。
【0073】
(5)組付工程において搬送されてくる圧縮部ユニットは、ストッパ部材70を取り付けた状態で行うようにすれば、シリンダ31に対するピストン51の往復動方向における移動がストッパ部材70により制限される。このため、圧縮部ユニットを搬送しているときのピストン51とシリンダヘッド32との接触を制限することができる。
【0074】
(6)分離工程においてピストン51とシリンダヘッド32との接触が制限されるため、圧縮部20の再利用を容易にすることができる。
(7)第2固定部62のねじ孔53Aがピストンロッド52のフランジ53に形成されているため、ねじ孔53Aをピストンロッド52の軸部に設ける必要がなく、ピストンロッド52の耐久性を維持することができる。
【0075】
(8)シリンダ31と吸入配管200及び吐出配管300との間にスペーサ80,90が設けられることにより、圧縮部20をクランク部10から分離する際に、吸入配管200及び吐出配管300が圧縮部20に干渉することが防止される。
【0076】
(9)アダプタ40と供給管991及び排出管992との間に第1及び第2繋ぎ配管401,402が設けられることにより、分離工程において、供給管991及び排出管992が圧縮部20に干渉することが防止される。
【0077】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
実施の形態2に係る往復動圧縮機1は、実施の形態1のストッパ部材70を変更したものである。また、ストッパ部材70の変更に伴い、第2固定部62が変更される点において相違する。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一の構成要素には、実施の形態1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0078】
図6に示すように、本実施の形態のストッパ部材270は、半円板状である一対の第1固定部材280及び第2固定部材290を有する。
第1固定部材280は、周方向の両端部に段部281が形成され、段部281にボルト283が挿通される貫通孔282が形成されている。また、第1固定部材280の板状部には、これを貫通する複数の貫通孔284が形成されている。さらに、第1固定部材280の径方向における内周面の中央には、ピストンロッド52の中間高さ位置の外周面と摩擦係合される半割孔部285が形成されている。
【0079】
第2固定部材290は、周方向の両端部にボルト283を螺合するねじ孔292が形成されている。また、第2固定部材290の板状部には、これを貫通する複数の貫通孔291が形成されている。さらに、第2固定部材290の径方向における内周面の中央には、ピストンロッド52の中間高さ位置の外周面と摩擦係合される半割孔部293が形成されている。
【0080】
図6及び
図7を参照して、本実施の形態の往復動圧縮機1の作用とともにストッパ部材270の取付工程を説明する。
ストッパ部材270は、取付工程において、ピストンロッド52の外周面のうちの第1境界壁41から突出している部分に取り付けられ、ねじ孔292にボルト283が螺合されることにより、半割孔部285と半割孔部293とでピストンロッド52の外周面を挟持する。このため、半割孔部285及び半割孔部293とピストンロッド52の外周面との摩擦によりピストンロッド52のストッパ部材270に対する位置が固定される。したがって、本実施の形態における第2固定部62は、ピストンロッド52が第1境界壁41から突出している部分のうちの第1境界壁41の近傍の部分をいう。
【0081】
次に、第1固定部材280及び第2固定部材290は、実施の形態1の場合と同様に貫通孔284及び貫通孔291に複数のボルト64が挿通されて、これらボルト64がそれぞれ第1固定部61のねじ孔41Bに螺合され、ストッパ部材270が第1固定部61に固定される。
【0082】
このようにしてストッパ部材270が第1固定部61及び第2固定部62に固定されることにより、分離工程において圧縮部20とクランク部10とが分離された場合に、シリンダ31内におけるピストン51の往復動が制限される。このため、往復動圧縮機1のメンテナンス作業時にピストン51とシリンダヘッド32,33との接触を制限することができる。
【0083】
実施の形態2に係る往復動圧縮機1は以上のように構成されているので、実施の形態1に係る効果(1)〜(6)、(8)、及び、(9)に準じた効果を奏するとともに、さらに次の効果を奏することができる。
【0084】
(10)ストッパ部材270は、第1固定部61への取り付けと第2固定部62への取り付けとが共に第1境界壁41付近で行われるので、作業性が良好となる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3の往復動圧縮機1について説明する。
【0085】
実施の形態3は、実施の形態1における取付部60とストッパ部材70とを変更したものであり、この変更に伴いクランク部10側のシリンダヘッド32が変更されている。また、
図8(a)に示すように、この実施の形態に係る往復動圧縮機1は、実施の形態1に係る往復動圧縮機1においてアダプタ40の第2境界壁42を有さない場合の形態に適用される。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一の構成要素には、実施の形態1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0086】
図8(a)及び(b)に示すように、本実施の形態に係る往復動圧縮機1は、クランク部10側のシリンダヘッド32において、シリンダ31の中心軸に対し対象的な位置に2個のねじ孔32Bが軸方向に貫通するように形成されている。そして、このねじ孔32Bには、シール剤を塗布したボルト32Cが取り付けられ、このねじ孔32Bが密封されている。ボルト32Cは、ねじ孔32Bに螺合した状態で、ねじ部の先端がシリンダヘッド32のピストン51側の表面と面一になる長さに形成されている。したがって、通常の運転においてこのボルト32Cが障害となることはない。
【0087】
この実施の形態に係る往復動圧縮機1におけるストッパ部材の取付部60は、クランク部10側のシリンダヘッド32と、このシリンダヘッド32に設けられた2個のねじ孔32Bから構成されている。
【0088】
また、
図9に示すように、この実施の形態に係る往復動圧縮機1に用いるストッパ部材370は、シリンダヘッド32の2個のねじ孔32Bに螺合される2個のボルト371から構成される。このボルト371は、ねじ孔32Bに螺合された状態において、寸法LA突出する長さに設定されている。この長さLAは、ピストン51が下死点位置にあるときの、ピストン51とシリンダヘッド32との隙間に相当するものである。
【0089】
なお、ストッパ部材370を取り付けるためには、作業者がアダプタ40の内部に入る必要があるので、アダプタ40の外周壁43には、作業者が出入りするための作業用扉(図示略)が設けられている。
【0090】
次に本実施の形態に係る往復動圧縮機1の作用とともにストッパ部材370の取付工程を説明する。
取付工程においては、まずアダプタ40の外周壁43に取り付けられた作業用扉(図示略)、及び、その他の個所から空間44内のボイルオフガスが外部に排出される。次に、作業者がアダプタ40の作業用扉を介して運転中に取り付けられているボルト32Cを取り外し、このボルト32Cに代えて、ストッパ部材370を構成するボルト371をねじ孔32Bに螺合させる。
図9に示すように、これによりボルト371の先端部が寸法LA分だけシリンダヘッド32から突出した状態となる。取付工程は以上により終了する。
【0091】
ストッパ部材370は、ピストン51が下死点よりさらにクランク部10側に移動することを制限することができる。このように、クランク部10が下方に位置し、圧縮部20が上方に位置するように設置される往復動圧縮機1の場合には、クレーンにより圧縮部20の向きを維持しつつ、圧縮部20をクランク部10から分離することができる。このため、少なくとも重力方向における下側のシリンダヘッド32とピストン51とが接触しないように、ストッパ部材370によりピストン51の往復動方向の移動が制限できればよい。
【0092】
実施の形態3に係る往復動圧縮機1は、以上のように構成されているので、実施の形態1に係る効果(1)〜(3)、(5)、(6)、(8)、及び、(9)に準じた効果を奏することができる。なお、本実施の形態に係る往復動圧縮機1は、クランク部10側のシリンダヘッド32が下方となるように取り扱われるとは限らない用途には適用を控えた方が好ましい。
【0093】
(変形例)
上記の各実施の形態に関する説明は、本発明に従う往復動圧縮機、圧縮部ユニット及び往復動圧縮機のメンテナンス方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う往復動圧縮機、圧縮部ユニット及び往復動圧縮機のメンテナンス方法は、例えば以下に示される上記の各実施の形態の変形例、及び、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0094】
・実施の形態1及び実施の形態2において、第1固定部61を第1境界壁41に形成したが、第1固定部61を形成する位置はこれに限定されない。第1固定部61は、例えば、静止部30に含まれる壁体部のうちのストッパ部材70,270の取付作業が容易である位置であれば他の位置に形成してもよい。例えば、外周壁43、シリンダ31を形成するシリンダブロック等でもよい。
【0095】
・実施の形態1において、取付工程で取付部60に取り付けられるストッパ部材70を構成する分割部材70Aは2つであるが、ストッパ部材70は1つの略円筒状の形状としてもよい。また、ストッパ部材70を分割する場合は、個々の分割部材70Aの形状が同一であることが好ましく、さらには、複数の分割部材70Aが互いに組み合わせられたときの形状が略円筒状又は円筒状の大部分を形成する形状であることが好ましい。なお、分割部材70Aの数は、特に拘るものではない。
【0096】
・各実施の形態では、取付基礎(図示略)に1台の往復動圧縮機1を固定する構成を例示したが、共通の取付基礎の上に複数台の圧縮部20が設けられてもよい。複数の圧縮部20のピストン51は共通のクランクシャフト11により駆動される。この場合であっても、取付要領及びメンテナンス方法は、各圧縮機とも前述のものと同様である。
【0097】
・各実施の形態において、往復動圧縮機1のアダプタ40が省略されてもよい。この場合、シール部材45,49はシリンダ31に固定される。また、アダプタ40及びシリンダ31に他の筒状部材が加えられて壁体部が形成されてもよい。なお、壁体部に固定されるシール部材の数は特に拘るものではない。
【0098】
・各実施の形態において、アダプタ40の第1境界壁41及び第2境界壁42はそれぞれ外周壁43に対して別部材にて形成されてもよい。
・実施の形態1及び2において、解除工程を取付工程よりも前に行うようにしてもよい。また、実施の形態3においては、取付工程において作業者がシリンダヘッド32に近づき作業を行う必要があるため、解除工程を取付工程の後に行うことが好ましい。
【0099】
スペーサ80,90の取外作業、並びに、第1及び第2繋ぎ配管401,402の取外作業は上記解除工程にて行われてもよい。
・実施の形態3において、ストッパ部材370を構成するボルト371の数、及び、ねじ孔32Bの数は、1個又は3個以上であってもよい。また、実施の形態3において、ストッパ部材370は、ピストン51がシリンダヘッド32に接触することを制限する形状の部材であれば、ボルト以外の他の部材であってもよい。
【0100】
・各実施の形態において、ピストン51を下死点以外の位置で安定的に固定できる場合には、取付工程をピストン51が下死点以外の位置で行うようにしてもよい。