特許第6042945号(P6042945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042945
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ガラス基板を熱処理する装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 27/012 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   C03B27/012
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-126529(P2015-126529)
(22)【出願日】2015年6月24日
(62)【分割の表示】特願2013-527159(P2013-527159)の分割
【原出願日】2011年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-214482(P2015-214482A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2015年7月24日
(31)【優先権主張番号】12/871,204
(32)【優先日】2010年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】フランク ティー コッポラ
(72)【発明者】
【氏名】モニカ ジェイ マシェウスケ
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−537864(JP,A)
【文献】 特表2007−526978(JP,A)
【文献】 特開2007−084379(JP,A)
【文献】 特開2007−032918(JP,A)
【文献】 特開2006−016265(JP,A)
【文献】 特開平06−247730(JP,A)
【文献】 特開昭55−136142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 25/00 − 27/06
C03B 32/00 − 32/02
F27B 9/00 − 9/40
B65D 85/00
B65D 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側エンクロージャ壁と、内側エンクロージャ壁と、第1側面と、第2側面とを備えている炉であって、複数のガラス基板を該炉内に鉛直配向で支持する炉、
前記炉の前記第1側面を貫通して、前記炉により画成される内部容積内へと延在している、運動しないように制限されている第1の複数の拘束ピン、および、
前記炉の前記第2側面を貫通して延在しており各々がそ長手軸に沿って可動である、第2の複数の拘束ピン、
を備えてなる、複数のガラス基板を熱処理する装置であって、
前記第2の複数の拘束ピンは、前記複数のガラス基板と接触状態にあり、かつ、前記第2の複数の拘束ピンの各拘束ピンは、付勢力を加えるための付勢アセンブリを備えており、
前記複数のガラス基板が前記第1の複数の拘束ピンと前記第2の複数の拘束ピンとの間に接触状態で配置されるように、前記複数のガラス基板は、前記付勢力により前記複数の第1の拘束ピンに接触するように付勢されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1の複数の拘束ピンの各拘束ピンが、前記複数のガラス基板のうちのあるガラス基板に接触する接触部材と、前記付勢アセンブリに連結される延長部材とを備え
接触部材および該延長部材が、継手により可動に接続されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第2の複数の拘束ピンの各拘束ピンが、前記複数のガラス基板のうちのあるガラス基板に接触する接触部材と、前記付勢アセンブリに連結される延長部材とを備え
接触部材および該延長部材が、継手により可動に接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
記炉内へと延在している誘導部材をさらに備え
記複数のガラス基板を前記炉の外部位置から前記炉の内部位置へと移動させる間に、前記複数のガラス基板のうちのあるガラス基板が前記誘導部材と滑動接触することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が引用されその全体が参照することにより本書に組み込まれる2010年8月30日に出願された米国特許出願第12/871,204号の優先権の利益を、米国特許法第120条の下で主張するものであり、さらに米国特許法第120条の下で優先権の利益がここに主張される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ガラス基板を熱処理する方法および装置に関し、より具体的には、複数のガラス基板を同時に圧縮する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイ(LCD)は典型的には、液晶材料の薄層を密閉した2枚の平坦なガラス基板から構成される。基板の1つに設けられた透明薄膜電極のアレイによって液晶材料の光透過特性を変調し、それにより画像を生成する。ダイオードや薄膜トランジスタ(TFT)などの能動素子を各画素に組み込むことによって、高コントラストおよび高速応答が達成され、高解像度ディスプレイを生み出すことができる。通常アクティブマトリクスLCD(AMLCD)と称される、このようなフラットパネルディスプレイは、コンピュータやテレビなどの高性能ディスプレイにとって有力な技術となっている。
【0004】
LCDの製造プロセス、および特に多結晶シリコン(poly−Si)ディスプレイの製造において使用されるものの製造プロセスは、典型的には薄膜の連続的な成膜およびパターニングから成り、このとき基板を加熱することになる昇温プロセスが使用される。これらの薄膜に対するパターニングステップ間の位置合わせ要求が高いため、ガラス基板にはプロセスを通じて5〜20の百万分の一(ppm)の範囲内の寸法安定性(低収縮)が要求されることが多い。5から20の百万分の一の収縮とは、例えば、長さ500mmの基板に亘る収縮が2.5〜10μmであることを意味する。5〜20ppmを超える収縮が生じると、続いて適用される部品間で位置合わせエラーが発生する。
【0005】
poly−Siは従来、アモルファスシリコン(a−Si)を化学蒸着(CVD)技術を用いてガラス基板上に成膜し、続いて被覆されたガラスを十分な時間高温に曝して、a−Siをpoly−Siに結晶化することにより作製される。この結晶化ステップは、典型的には約600℃で数十時間行われる。さらに、いくつかの他の高温プロセスが結晶化ステップに続くことがある。このようなプロセスステップとして、ゲート酸化物の成膜およびアニールや、ソース/ドレインのアニールが挙げられる。
【0006】
poly−Si TFTの製造中に受ける結晶化および続く処理ステップは比較的高温であり、これによりガラス基板が収縮する可能性が大幅に増加する。
【0007】
ガラス基板(例えば、液晶ディスプレイすなわち「LCD」ガラス基板)の製造者らは、ガラス基板を熱処理して、ガラスを発送前に事前に収縮させる、すなわち圧縮することが多い。ガラス基板の圧縮は、ガラス基板の歪点未満の様々な温度で行われ得る。圧縮または緻密化は、顧客がガラス基板を処理する際にガラスの寸法の変化を最小限に抑えるために行われる。ガラス基板が事前に収縮されていなければ、基板の形状が変化してしまう可能性があり、これは完成したディスプレイの品質に悪影響を与え得る。圧縮は、ガラス表面を汚染し得るガラス片を生成しないように、あるいは空間的に非均一な加熱および/または冷却のパターンを通じてガラス基板の表面を変形させないように、行われなければならない。
【0008】
従来、熱処理中にガラス基板を支持するために閉鎖したカセットが使用されている。中には開口したカセットを利用している用途もある。閉鎖カセットによる支持方法では、多数のガラス基板がカセットの包囲された部分の中に鉛直配向で保持される。ガラス基板は、水平および鉛直の支持体(ステンレス鋼で作られたものなど)で支持される。実際には、ガラス基板をその外周の周りで支持することで、表面品質を維持しかつ歪みを防ぐ。ガラス基板は、典型的には、4つ全てのエッジの全長に沿って捕捉される。
【0009】
開口カセットによる支持方法では、多数のガラス基板がカセットの中に鉛直配向で保持される。ガラス基板は、そのエッジの位置で、鉛直および水平の支持体で支持される。閉鎖カセットによる支持方法と同様に、ガラス基板を外周の周りで支持することで、その物理的特性を維持する。開口カセットおよび閉鎖カセットの両方法は、一般に、加熱処理中のガラスへの重力の影響を最小限に抑える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
閉鎖カセットおよび開口カセットの両方の支持設計において、ガラス基板は少なくとも3つのエッジの実質上全てに沿って接触する。この接触によって、基板の損傷または損失がしばしば生じる。全接触の支持体は、システムの熱的特性にも影響を与える。明らかであろうが、ガラスに到達する前にエッジおよび角部に沿って金属を通って移動せざるを得ない熱のために、各基板のエッジ沿いに集中している支持体の金属塊は、エッジでの温度プロファイルに影響を与える。さらに両支持設計において、破片(ガラス粒子およびガラス片を含む)が底部エッジの支持体内で増大し、これを清掃して取り除くのは困難であり、すなわち結果として、これらの支持設計によれば、ガラス基板が著しく破片で汚染される可能性がある。さらに、金属の支持体とガラス基板との間の熱膨張係数の差が大きいと、支持体に対する基板の運動が大きくなり、基板を損傷する可能性がある。
【0011】
上述の両支持設計は、シート材料(ステンレス鋼など)を曲げかつ成形して必要なアセンブリにすることにより製造されている。本来、こういったやり方は正確ではなく、生成するのが困難であり、かつ製造費用がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施の形態によれば、複数のガラス基板を炉内で熱処理する方法が開示され、この方法は、複数のガラス基板の隣接するガラス基板対の間に、少なくとも1つのスペーサ部材を位置付けるステップであって、少なくとも1つのスペーサ部材が、内部開口の境界をつける閉鎖した外側フレーム部分を備え、このときこの1以上のスペーサ部材のCTEと複数のガラス基板のCTEとの差が10×10-7/℃未満であるステップを含む。いくつかの実施形態において、ガラス基板の寸法は、複数のガラス基板のうちの各ガラス基板の主表面の表面積が、少なくとも5m2であるようなものでもよい。
【0013】
隣接するガラス基板と少なくとも1つのスペーサ部材とが、隣接するガラス基板と少なくとも1つのスペーサ部材とで境界付けされた、包囲された空間を形成する。
【0014】
複数のガラス基板は実質上鉛直配向で支持され、このとき複数のガラス基板と、隣接するガラス基板間に位置付けられた1以上のスペーサ部材とが、付勢力により共に付勢されて接触関係にあり、さらに炉内で加熱される。加熱プロセスの後、ガラス基板を冷却してもよい。複数のガラス基板の冷却後の面外の歪みは100μmを超えない。
【0015】
複数のスペーサ部材を、隣接するガラス基板間に、鉛直アレイおよび/または水平アレイの状態で配列して採用してもよい。同じ隣接するガラス基板対の間に位置付けられた隣接するスペーサ部材は、各隣接するスペーサ部材の外側の非品質エッジ部分で互いに接触することが好ましい。
【0016】
複数のガラス基板は、複数のガラス基板のアニール点を上回りかつ複数のガラス基板の軟化温度を下回る温度まで、加熱されることが好ましい。いくつかの実施形態では、ガラス組成に応じて、複数のガラス基板は700℃を超える温度まで加熱される。
【0017】
少なくとも1つのスペーサ部材はガラスから成るものでもよい。少なくとも1つのスペーサ部材のガラスの組成は、複数のガラス基板のガラス組成と同じガラス組成であることが好ましい。
【0018】
いくつかの実施形態においては、炉が、外側エンクロージャ壁と、内側エンクロージャ壁と、第1側面と、第2側面とを備えている。第1の複数の拘束ピンが、炉の第1側面の内側エンクロージャ壁と外側エンクロージャ壁とを貫通して延在し、支持構造に堅く取り付けられている。第2の複数の拘束ピンは、炉の第2側面の内側エンクロージャ壁と外側エンクロージャ壁とを貫通して延在し、このとき第2組の拘束ピンの各拘束ピンは拘束ピンの縦軸に沿って可動である。付勢力が、複数のガラス基板に対して第2の複数の拘束ピンで加えられる。別の実施形態においては、複数のガラス基板を熱処理する装置が説明され、この装置は、外側エンクロージャ壁と、内側エンクロージャ壁と、第1側面と、および第2側面とを備えている炉、炉の第1側面の内側エンクロージャ壁と外側エンクロージャ壁とを貫通して、炉により画成される内部容積内へと延在している第1の複数の拘束ピンであって、内側エンクロージャ壁に対してピンが運動しないように制限されている、第1の複数の拘束ピン、を備えている。第2の複数の拘束ピンが、炉の第2側面の内側エンクロージャ壁と外側エンクロージャ壁とを貫通して延在し、第2の複数の拘束ピンの各拘束ピンは拘束ピンの縦軸に沿って可動である。第2の複数の拘束ピンは、複数のガラス基板に対して付勢力を加えるための付勢アセンブリを備えている。付勢アセンブリは、例えば、空気圧シリンダおよび/またはバネを含んでもよい。第2の複数の拘束ピンの各拘束ピンに、ポジションセンサを連結してもよい。ポジションセンサは、拘束ピンの位置に関する情報を、第2の複数の拘束ピンの各付勢アセンブリと電気通信しているコンピュータに伝える。コンピュータは、受信した位置情報に基づいて、拘束ピンの位置を個々に制御する。
【0019】
内側壁の膨張および収縮を、例えば加熱および冷却中に受容するために、炉の内側壁は波形でもよい。
【0020】
第1の複数の拘束ピンの各拘束ピンは、複数のガラス基板のうちのあるガラス基板に接触する接触部材と、付勢アセンブリに連結される延長部材とを備え、このとき接触部材および延長部材は、継手により可動に接続されている。
【0021】
同様に、第2の複数の拘束ピンの各拘束ピンも、複数のガラス基板のうちのあるガラス基板に接触する接触部材と、付勢アセンブリに連結される延長部材とを備えてもよく、このとき接触部材および延長部材は、継手により可動に接続されている。いくつかの事例において、第2組の拘束ピンの運動は、第2の複数の拘束ピンと複数のガラス基板のうちの最も外側のガラス基板との間の接触点が加熱プロセス中に同一平面上となるように制御される。
【0022】
この装置は、複数のガラス基板を鉛直配向で支持する、炉内へと延在している1以上の誘導部材を含んでもよく、このとき複数のガラス基板を炉の外部位置から炉の内部位置へと移動させる間に、複数のガラス基板のうちのあるガラス基板は1以上の誘導部材と滑動接触する。
【0023】
本発明のさらなる特徴および利点は以下の詳細な説明の中に明記され、ある程度は、その説明から当業者には容易に明らかになるであろうし、あるいは本書で説明したように本発明を実施することにより認識されるであろう。添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、また本明細書に組み込まれかつその一部を構成する。本書および本図面において開示された本発明の種々の特徴は、任意の組合せで、また全て組み合わせて、使用することができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】複数のガラス基板を鉛直配向で圧縮する装置の断面端面図
図2】連結式拘束ピンの側面図
図3】複数のガラス基板を直立(すなわち鉛直)配向で支持および運搬するためのカートを示した側面図
図4】隣接するガラス基板を分離させるために使用されるスペーサ部材を示した斜視図
図5】スペーサ部材で分離されているガラス基板の積層体を基板のエッジから見て示した断面図
図6図5のガラス基板の積層体の側面図であって、スペーサ部材を示している図
図7図5のガラス基板の積層体の断面端面図であって、スペーサ部材により形成されたガラス基板間の区画を示している図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の詳細な説明においては、説明のためであって限定するものではないが、具体的詳細を開示する実施形態例を明記して本発明の完全な理解を提供する。しかしながら、本開示の利益を得たことのある通常の当業者には、本発明をここで開示される具体的詳細とは異なる他の実施形態で実施し得ることは明らかであろう。さらに、周知の装置、方法、および材料に関する説明は、本発明の説明を不明瞭にしないよう省略することがある。最後に、適用できる限り、同じ参照番号は同様の要素を示す。
【0026】
図1は、複数の鉛直に配向されたガラス基板12を、圧縮プロセスにおいて同時に熱処理するための装置10の透視図を示したものである。装置10は内側炉壁16と外側炉壁18を有する炉14を備え、内側炉壁および外側炉壁は断熱材20で分離されている。加熱素子22が炉14により画成される内部容積23内に位置付けられ、これらは概して内側炉壁16に隣接して配列されている。炉14はさらに第1側面24および第2側面26を含み、複数のガラス基板が炉内に装填されているとき、これらの側面は概してガラス基板に平行である。第1および第2側面は、内側炉壁および外側炉壁の一部から構成される。炉14の動作中、複数のガラス基板12は内部容積23内で可動カート28上に鉛直に配列され、かつスペーサ部材30によって互いに分離される。装置10のこれらおよび他の構成要素を、以下でより詳細に説明する。
【0027】
図1をさらに参照すると、内側炉壁16は内側壁の熱膨張を受容するように構成することができる。例えば、図1に示した内側炉壁は、腐食を最小限に抑えるように選択された金属(例えば、ステンレス鋼またはインコネル(Inconel(登録商標)))から形成され、かつ壁の熱膨張を受容するよう波形となっている。
【0028】
加熱素子22は内部容積23の中に配置され、かつカート28上に配列された複数のガラス基板のうちの最も外側のガラス基板の脇に、すなわちこの基板に隣接して、配列される。加熱素子22は、例えば、電気抵抗加熱器でもよい。いくつかの実施形態においては、多数の個々に制御される加熱素子を、組み立てられたガラス基板の各側に沿って採用してもよく、そうすることで、必要であれば、加熱素子を使用して複数のガラス基板を横切って異なった温度プロファイルを生成することができる。すなわち、その結果、最も外側のガラス基板の表面に対して放射される温度を、所望であればその表面を横切って変化させることができる。加熱素子22をさらに炉14の上方部分に、そして炉14の端部に追加して配列し、ガラス基板のエッジ部分を確実にさらに加熱するようにしてもよい。
【0029】
さらに図1には、炉の第1側面と第2側面に沿った外側炉壁18および内側炉壁16を貫通して、炉の外部から炉の内部へと延在している複数の拘束ピン34が示されている。拘束ピン34は、複数のガラス基板のうちの最も外側のガラス基板に接触するように位置付けられ、鉛直に直立している基板を安定させる。いくつかの実施形態において、第1の複数の拘束ピン36すなわち第1組の拘束ピン36は、炉の第1側面24を貫通して(例えば、外側および内側エンクロージャ壁を貫通して)延在し、かつ複数のガラス基板のうちの最も外側のガラス基板に接触するように構成され、さらに各拘束ピンがその拘束ピンの対応する縦軸に沿って運動しないよう堅く固定されている。例えば、第1組の拘束ピン36を、図1に示したように炉に堅く連結してもよい。あるいは、第1組の拘束ピン36を、炉と離れている炉外の支持構造に連結してもよい。
【0030】
炉の反対側の第2側面26の、第2の複数の拘束ピン38すなわち第2組の拘束ピン38は、もう一方の最も外側のガラス基板に接触するように構成され、かつ複数のガラス基板が炉内に位置付けられているときに、もう一方の最も外側のガラス基板に対して付勢アセンブリ40により付勢される。付勢アセンブリ40は、第2組の拘束ピン38の個々の拘束ピンに連結された、バネおよび/またはピストン(例えば、空気圧または油圧操作のピストン)を含み得る。図1に示されているように、付勢アセンブリ40は個々の空気圧制御弁42とガス供給ライン44とを経て加圧ガス源46に接続してもよく、さらに制御ライン52を介してコンピュータ48により個々に制御することができる。個々の付勢アセンブリからの位置情報を、付勢アセンブリを備えたポジションセンサ(図示なし)で制御してもよいし、またデータ回線54を介してコンピュータ48に伝えてもよい。付勢アセンブリは、力センサを、すなわち個々の拘束ピンからガラス基板に加えられる力に関してコンピュータに情報を提供するロードセル(図示なし)を、さらに含んでもよい。コンピュータ48は、各ポジションセンサおよび/または力センサからの位置および/または力の情報を利用して、各ピンの先端(すなわち、ガラス基板に接触している各拘束ピンの接触面)が同一平面上でありかつガラス基板を確実に平坦に保持するのに十分な力を加えるように、各拘束ピンを位置合わせして維持する。
【0031】
拘束ピン34は、最も外側のガラス基板に接触する、継目で繋がっている先端接触部材をさらに含んでもよい。熱処理炉内で温度が変化(例えば、加熱および冷却)しているとき、ガラス基板が十分に膨張または収縮して、継目で繋がっている拘束ピンと最も外側のガラス基板との間で相対運動が生じ、ガラス基板の潜在的な損傷に繋がる可能性がある。そのため、図2に示したように、各拘束ピン34は延長部材58に連結される端部すなわち接触足部56を、玉継手などの1以上の継手60を介して含んでもよい。この連結式の(継目で繋がっている)構成によって、複数のガラス基板が膨張および収縮する際などには、拘束ピンの接触足部部分が延長部材部分に対して動くことができる。
【0032】
明らかであろうが、拘束ピンとガラス基板との間での接触は、複数の組み立てられた基板のうち最も外側の2つのガラス基板を損傷させる可能性がある。これは、各拘束ピンの接触足部が最も外側のガラス基板に接触する際に、基板の、後に機器内で使用されない部分、いわゆる非品質領域のみで接触するように、拘束ピンを配列することによって回避することができる。しかしながら、拘束ピンは炉の各側に沿って一般に容易に再設置できるものではないが、あるガラス基板のサイズに対して機能する拘束ピンの配列が別のサイズを受容しない可能性は高い。別の手法は、最も外側のガラス基板に犠牲ガラス基板を採用するものである。すなわち、拘束ピンと犠牲ガラス基板との間の接触により生じる表面の損傷は、犠牲ガラス基板間に位置付けられた内部のガラス基板には影響しない。犠牲ガラス基板は、洗浄して再利用してもよいし、あるいは廃棄してもよい。
【0033】
複数のガラス基板はカート28上に組み立てられる。カートは、炉の底部としての機能をさらに果たし得る。カート28は、ガラス基板が載る位置に、断熱された上部部分61を備えていることが好ましい。このカートの断熱部分の外側を、例えば合金鋼で覆ってもよい。カートはガラス基板の重量を支持し、かつガラス基板を炉の内外に運搬するよう炉の外部位置と炉の内部位置との間で可動である。ガラス基板の底部を加熱して温度の均一性を向上させるために、カートの上部部分の上または中かつガラス基板の下に、加熱素子22を位置付けて含んでもよい。直立支持部材62をカートの一端部に設けて(図3)、基板が装填されるときにカート上でガラス基板を支持するために使用してもよい。例えば、装填中にガラス基板のエッジを支持部材62で支持するように、カートを後方に傾けてもよい。支持部材62は、カートが炉内に位置付けられたときに炉を閉鎖する手段(例えば、ドア)を形成し得る。すなわち、支持部材62は炉の壁を形成し得る。さらに支持部材62も加熱素子22を含んでもよい。すなわち加熱素子22が、炉またはカート28の一部を形成するものであっても、さらに基板が炉14内に位置付けられたときにガラス基板のエッジに沿って位置付けられるものであっても、このように加熱素子22を組み合わせることで、ガラス基板の加熱と応力の低減がさらに確実になる。
【0034】
好適には、ガラス基板を熱処理炉の内外に運搬するのを助けるために、カート28はキャスター63を備えている。例えば、キャスターは1以上のレール64上に乗るように構成してもよい。いくつかの実施形態においては、キャスターをカートの一方の側に設けてもよく、同時に他方の側には脚を設ける。脚はプラットフォームを傾ける助けとなり、これはプラットフォームにガラス基板を装填するときに有利となり得る。
【0035】
さらに、少なくとも1つの誘導部材66が炉の外部位置から炉内へと延在している。この誘導部材66は、カート28を炉内へと動かすとき、プラットフォームがその距離を炉内へと移動するよう、少なくとも1つの誘導部材で複数のガラス基板に接触しかつこれを支持するように延在している。例えば、特定の実施形態において、誘導部材はカートのレール64に沿って炉内へと延在するケーブルである。カート28がカート上に位置付けられた複数のガラス基板とともに炉14内に移動するとき、複数のガラス基板のうちの少なくとも1つのガラス基板が誘導部材66と接触し、複数のガラス基板が鉛直配向から離れて傾斜するのを防ぐ。特定の他の実施形態においては多数の誘導部材を使用してもよく、例えばガラス基板のいずれの側にも傾斜することを防ぐため、2つの誘導ケーブルを複数のガラス基板の各側に1つずつ配列して使用してもよい。好適には、この接触するガラス基板は犠牲ガラス基板である。
【0036】
図4は単一のスペーサ部材30の斜視図を示したものである。図示のように、スペーサ部材30は絵画用フレームのような閉ループ形状の外側壁部分68を備えており、すなわちスペーサ部材30は、スペーサ部材の外側壁部分に囲まれた開口内部70を有している。各スペーサ部材は、加熱および冷却サイクルの際のスペーサ部材とガラス基板との間の相対運動を最小限に抑えるために、ガラス基板の熱膨張係数(CTE)に実質上一致するCTEを有する材料から構成するべきである。スペーサ部材とガラス基板との間のCTEの差は10×10-7/℃を超えないものとするべきである。例えば、スペーサ部材を、ガラス基板を形成しているガラスと同じガラスから形成してもよい。すなわち、スペーサ部材とガラス基板とは同じガラス組成を有することが好ましい。あるいは、ガラス基板のガラスとのCTEの差が10×10-7/℃を超えないものであれば、スペーサ部材をガラスセラミック材料から作製してもよい。
【0037】
スペーサ部材は、例えば鋳造により形成してもよい。単一のガラスの厚板を鋳造し、研削および研磨してスペーサ部材の表面を確実に平坦かつ平行にし、さらに各厚板の中心部分をウォータージェット切断などで切除してもよい。あるいは、厚板またはプレートを他のプロセス(例えば、延伸)で形成してもよく、その切断の後に、研削および研磨を行ってもよい。
【0038】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つのスペーサ部材30が複数のガラス基板の隣接するガラス基板間に位置付けられ、ガラス基板とスペーサ部材とが交互になって構成された積層体72が形成される(図5)。
【0039】
片側の表面積が5m2以上のガラス基板などの大型のガラス基板(または小サイズのスペーサ部材)では、複数のスペーサ部材30を複数のガラス基板の隣接するガラス基板間に配置してもよく、このときスペーサ部材は図6に示したように水平アレイおよび鉛直アレイの状態で配列される。例えば、4つのスペーサ部材30を2×2のアレイでエッジからエッジまで配列してもよい。好適には、使用できない(被接触)ガラス表面エリアの生成を最小限に抑えるよう、複数のスペーサ部材はそれらの外側エッジの少なくともいくらかが接触した状態で位置付けられる。隣接するガラス基板間に位置付けられるスペーサ部材の数、およびアレイの寸法は、分離されるガラス基板のサイズおよび形状に依存する。
【0040】
隣接するガラス基板12間に位置付けられた1以上のスペーサ部材30によって、隣接するガラス基板12間に狭いポケットすなわち区画74が生成され、各ガラス基板は第1および第2の平行な主表面76および78を有する。図7は、図6のガラス基板とスペーサ部材との積層体の断面端面図を描いたものであり、さらに積層体の隣接するガラス基板の隣接する主表面間にこれらと接して位置している、複数の区画74を示している。この隣接するガラス基板間の区画化により、ガラス基板間のガスの流れが最小限に抑えられ、そのため応力を生み出し得るガラス基板上の温度差も最小限に抑えられる。例えば、4つのスペーサ部材が各隣接するガラス基板対間に配置されるように、複数のガラス基板を配列してもよい。夫々が2m×2mの寸法を有する8つの正方形のガラス基板がある場合、各隣接するガラス基板対間に1組ずつ、7組のスペーサ部材が採用され、さらにこの各組は、接触関係にある2×2のアレイの状態で配列された4つの1m四方のスペーサ部材から構成される。スペーサ部材はフレーム状の壁を有しているため、フレーム状スペーサ部材の中心開口エリア内ではガラス基板との接触はない。スペーサ部材が隣接するガラス基板間に挟まれているとき、各隣接するガラス基板対間に4つの区画が生成され、各区画はガラス基板とスペーサ部材の壁とで境界付けされる。スペーサ部材の壁が区画間のガスの流れを防ぎ、かつ著しい対流がガラス表面上を動くのを効果的に防止し、そうでない場合はガラス内に望ましくない温度変化を生じさせる可能性もある。
【0041】
LCDディスプレイ産業などの特定の産業では、ガラス基板との接触は(例えば、潜在的な接触損傷により)もはや使用不可能なエリアを基板に生成するため、スペーサ部材間の接触はガラス基板の非品質領域内のみで行われることが好ましい。例えばガラス基板は、典型的には、後に複数のより小さい基板に分割される大型のマスターガラス基板の状態で、設備製造者(例えば、ディスプレイユニットを作製する製造者)に供給される。マスター基板をサイズに合わせて切断するのは、通常設備製造者によって行われる。設備製造者がオリジナルのマスターガラスから生成する分割片の数を、事前にガラス製造者が知ることで、意図されている切断パターンにしたがって熱処理中にスペーサ部材を配列することができる。前の例の2m×2mのガラス基板で続けると、オリジナルのマスターガラス基板が4つの同サイズの1平方メートルのセグメントに分けられると分かっている場合には、隣接するガラス基板間に2×2アレイで配列された4つの1mスペーサ部材の間の「合わせ目」―各スペーサ部材が隣接するスペーサ部材に接触するライン―が、ガラス基板を別々の分割片に分離する切断ラインと一致する。すなわち、複数のスペーサ部材は、隣接するガラス基板間に配置されたガラス壁の格子を形成する。各スペーサ部材を形成する壁の幅を最小にした場合、得られる分離した基板の分割片夫々の表面積のうち、任意の所与のスペーサ部材が接触する面積は最小になる。例えば、各スペーサ部材の壁が1cm幅である場合、2つの隣接するスペーサ部材の組み合わさった壁の幅はこの例において2cmとなるが、切断すなわち分割された各基板の、スペーサ部材が接触した周囲エリアは1cmのみである。
【0042】
あるいは、ガラス基板に対するスペーサ部材の接触エリアをさらに減少させるために、スペーサ部材の壁のうち、他のスペーサ部材と接触する壁の部分を、他のスペーサ部材と接触しない壁の部分よりも薄く作製してもよい。上記の例を用いると、長方形のスペーサ部材の壁のうち、他のスペーサ部材と接触する側の幅を、上述した1cmではなく0.5cmのみとするように作製した場合、隣接するスペーサ部材の隣接する壁が合わさった幅は、前で得られた2cmではなく1cmのみとなる。すなわち、1以上のスペーサ部材を使用してもよく、このときスペーサ部材の壁の幅は異なっていてもよい。つまり、スペーサ部材の1つの側壁がある幅を有し、かつスペーサ部材の別の側壁が異なる幅を有してもよい。
【0043】
いくつかの実施形態においては、複数のガラス基板を2つの積層体に分けて、各積層体が複数のガラス基板を含んでもよい。このとき炉14は、炉内の中心に鉛直に配置された追加の加熱素子22の組を含んでもよく、中心に配置されたこれらの加熱素子は、ガラス基板がカート28によって炉内に位置付けられたときに、ガラス基板の第1アセンブリと第2アセンブリとの間に位置付けられるようにしてもよい。
【0044】
複数のガラス基板を熱処理するプロセスは以下のように行ってもよい。第1ステップでは、第1ガラス基板をカート28上に装填する。装填を助けるためにカートを一方の側に傾けてもよく、かつガラス基板がカート28の上部部分61と支持部材62とによって同時に支持されるように、カートの一端部をさらに持ち上げることもできる。この最初に装填されたガラス基板は最も外側のガラス基板の1つとなって拘束ピンの組と接触することになるため、犠牲ガラス基板を使用してもよい。
【0045】
次に、少なくとも1つのスペーサ部材が第1ガラス基板に隣接して位置付けられる。ガラス基板が十分に大きい場合、複数のスペーサ部材を第1ガラス基板に隣接して位置付けてもよい。このとき、ある1以上のスペーサ部材が適切に配列され、第2のガラス基板が前に配置されたスペーサ部材に隣接して位置付けられ、さらに別の組の1以上のスペーサ部材が第2ガラス基板に隣接して位置付けられる。ガラス基板と1以上のスペーサ部材との層を交互に位置付けるこのプロセスは、所望の数のガラス基板が積層体に組み立てられるまで続けられる。最後に装填されるガラス基板は、他方の反対側の最も外側のガラス基板となり、これも犠牲ガラス基板としてもよい。
【0046】
最後のガラス基板が位置付けられると、組み立てられたガラス基板の積層体72を備えたカート28を直立させて、ガラス基板の積層体をそのエッジでU字クランプなどを用いて固定してもよい。カート28をその後、ガラス基板の積層体が少なくとも1つの誘導部材66と接触している状態で、この積層体とともに炉14内に移動させる。
【0047】
炉内では、ガラス基板の積層アセンブリ72の片側に、炉の第1壁を貫通して延在している第1組の固定拘束ピン36が接触し、一方ガラス基板の積層アセンブリの反対側には第2組の可動拘束ピン38が付勢され、ガラス基板のアセンブリを2つの拘束ピン群間で実質上鉛直配向の状態で効果的に固定する。積層アセンブリ72は鉛直から10°以内、鉛直から5°以内、鉛直から3°以内、を維持することが好ましく、かつ熱処理プロセス中に熱が加えられるとき鉛直から1°以内であることが好ましい。炉は積層されたガラス基板を適切な時間の間、適切な熱処理温度まで加熱する。実質上鉛直に配向された積層アセンブリ72の合わさった重量は、熱処理中下方にカート28に対してかかるため、ガラス基板の面外の歪みが生じ得る可能性は低い。面外の歪みとは、所与のガラス基板の表面により表される平面から外へと延びる、ガラス基板の無重力下形状の変化を意味する。すなわち重力がなければ、ガラス基板の対向する主表面は実質上平面的(すなわち、平面からの逸脱が基板の全主表面に亘って100μm以下)であるべきであり、熱処理後にこの平面性を維持するべきである。より簡単に言うと、面外の歪みは平坦ではないガラス基板をもたらす。
【0048】
したがって、例示的な非限定的実施形態は以下のものを含む。
【0049】
C1.複数のガラス基板を炉内で熱処理する方法において、前記複数のガラス基板の隣接するガラス基板対の間に、少なくとも1つのスペーサ部材を位置付けるステップであって、前記少なくとも1つのスペーサ部材が、内部開口の境界をつける閉鎖した外側フレーム部分を備え、このとき前記1以上のスペーサ部材のCTEと前記複数のガラス基板のCTEとの差が10×10-7/℃未満であるステップ、前記複数のガラス基板を支持プラットフォーム上で実質上鉛直配向で支持するステップであって、このとき前記複数のガラス基板と、隣接するガラス基板間に位置付けられた前記少なくとも1つのスペーサ部材とが、付勢力により共に付勢されて接触関係にあるステップ、前記複数のガラス基板を前記炉内で加熱するステップ、前記複数のガラス基板を冷却するステップ、を含み、さらに、前記複数のガラス基板の冷却後の面外の歪みが、100μmを超えないことを特徴とする方法。
【0050】
C2.前記少なくとも1つのスペーサ部材が、各隣接するガラス基板対の間に鉛直アレイおよび/または水平アレイの状態で配列された、複数のスペーサ部材を備えていることを特徴とするC1記載の方法。
【0051】
C3.前記複数のスペーサ部材の隣接するスペーサ部材が、各隣接するスペーサ部材の外側のエッジ部分で互いに接触していることを特徴とするC2記載の方法。
【0052】
C4.前記複数のガラス基板が、該複数のガラス基板のアニール点を上回りかつ該複数のガラス基板の軟化温度を下回る温度まで、加熱されることを特徴とするC1からC3いずれか1つに記載の方法。
【0053】
C5.前記複数のガラス基板が、700℃を超える温度まで加熱されることを特徴とするC1からC4いずれか1つに記載の方法。
【0054】
C6.前記少なくとも1つのスペーサ部材が、ガラス材料またはガラスセラミック材料であることを特徴とするC1からC5いずれか1つに記載の方法。
【0055】
C7.前記少なくとも1つのスペーサ部材がガラスであり、かつ該スペーサ部材のガラスが、前記複数のガラス基板のガラス組成と同じガラス組成であることを特徴とするC6記載の方法。
【0056】
C8.前記隣接するガラス基板と該隣接するガラス基板間に位置付けられた前記少なくとも1つのスペーサ部材とが、該隣接するガラス基板と該少なくとも1つのスペーサ部材とで境界付けされた、包囲された空間を形成することを特徴とするC1からC7いずれか1つに記載の方法。
【0057】
C9.前記複数のガラス基板のうちの各ガラス基板の主表面の表面積が、少なくとも5m2であることを特徴とするC1からC8いずれか1つに記載の方法。
【0058】
C10.前記炉が、第1側面および第2側面と、前記炉の前記第1側面を貫通して延在している第1の複数の拘束ピンであって、該第1の複数の拘束ピンが運動しないよう堅く保持されている、第1の複数の拘束ピンと、前記炉の前記第2側面を貫通して延在している第2の複数の拘束ピンであって、該第2組の拘束ピンの各拘束ピンが該各拘束ピンの縦軸に沿って可動である、第2の複数の拘束ピンと、を備え、さらに前記付勢力が、前記複数のガラス基板に対して前記第2の複数の拘束ピンで加えられることを特徴とするC1からC9いずれか1つに記載の方法。
【0059】
C11.複数のガラス基板を熱処理する装置であって、外側エンクロージャ壁と、内側エンクロージャ壁と、第1側面と、および第2側面とを備えている炉、前記炉の前記第1側面を貫通して、前記炉により画成される内部容積内へと延在している第1の複数の拘束ピンであって、該ピンが運動しないように制限されている、第1の複数の拘束ピン、および、前記炉の前記第2側面を貫通して延在している第2の複数の拘束ピンであって、前記第2の複数の拘束ピンの各拘束ピンが該拘束ピンの縦軸に沿って可動である、第2の複数の拘束ピン、を備え、さらに前記第2の複数の拘束ピンの各拘束ピンが、前記複数のガラス基板に対して付勢力を加えるための付勢アセンブリを備えていることを特徴とする装置。
【0060】
C12.前記内側エンクロージャ壁が波形であることを特徴とするC11記載の装置。
【0061】
C13.前記第1の複数の拘束ピンの各拘束ピンが、前記複数のガラス基板のうちのあるガラス基板に接触する接触部材と、前記付勢アセンブリに連結される延長部材とを備え、さらに該接触部材および該延長部材が、継手により可動に接続されていることを特徴とするC11またはC12記載の装置。
【0062】
C14.前記第2の複数の拘束ピンの各拘束ピンが、前記複数のガラス基板のうちのあるガラス基板に接触する接触部材と、前記付勢アセンブリに連結される延長部材とを備え、さらに該接触部材および該延長部材が、継手により可動に接続されていることを特徴とするC11からC13いずれか1つに記載の装置。
【0063】
C15.前記付勢アセンブリが空気圧シリンダを備えていることを特徴とするC11からC14いずれか1つに記載の装置。
【0064】
C16.前記付勢アセンブリがバネを備えていることを特徴とするC11からC15いずれか1つに記載の装置。
【0065】
C17.前記第2組の拘束ピンの運動が、該第2の複数の拘束ピンと前記複数のガラス基板のうちの最も外側のガラス基板との間の接触点が加熱中に同一平面上となるように制御されることを特徴とするC11からC16いずれか1つに記載の装置。
【0066】
C18.前記複数のガラス基板を鉛直配向で支持する、前記炉内へと延在している誘導部材をさらに備え、かつ前記複数のガラス基板を前記炉の外部位置から前記炉の内部位置へと移動させる間に、前記複数のガラス基板のうちのあるガラス基板が前記誘導部材と滑動接触することを特徴とするC11からC17いずれか1つに記載の装置。
【0067】
C19.前記各付勢アセンブリにポジションセンサが連結されていることを特徴とするC11からC18いずれか1つに記載の装置。
【0068】
C20.前記各付勢アセンブリと電気通信しているコンピュータをさらに備え、かつ該コンピュータが前記各付勢アセンブリの位置を個々に制御することを特徴とするC11からC19いずれか1つに記載の装置。
【0069】
上述した本発明の実施形態、特に任意の「好ましい」実施形態は、単に実施可能な例であって、本発明の原理を明確に理解するための単なる説明であることを強調したい。本発明の精神および原理から実質的に逸脱することなく、上述の本発明の実施形態に対して多くの変形および改変を作製することができる。全てのこのような改変および変形は、本書において本開示および本発明の範囲内に含まれ、かつ以下の請求項によって保護されると意図されている。
【符号の説明】
【0070】
12 ガラス基板
14 炉
16 内側炉壁
18 外側炉壁
20 断熱材
22 加熱素子
23 内部容積
24 第1側面
26 第2側面
28 カート
30 スペーサ部材
34 拘束ピン
36 第1組の拘束ピン
38 第2組の拘束ピン
40 付勢アセンブリ
56 接触足部
58 延長部材
60 継手
63 キャスター
64 レール
66 誘導部材
68 外側壁部分
72 積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7